7月22日(土)
【J2第24節】(正田スタ)
群馬 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[群]山岸祐也(51分)
[熊]八久保颯(63分)
<警告>
[熊]片山奨典(8分)、八久保颯(62分)、三鬼海(90分+3)
観衆:3,179人
主審:河合英治

森下監督。随分小賢しいことをするな…。などというのは言い過ぎでしょうか。

元々、阿部も 舩津もチーム登録上はDFの選手。それをこの試合のオーダーではわざわざMFで登録し、パク・ゴンにチェ・ジュンギ、そして加入したばかりのヨ・ソンヘ3人をDFとしたオーダー表で、いつものとおりの3バックと見せかけました。しかし、蓋を開けてみれば、森下・群馬としては初の4バック。この”奇襲”とも言えるシステム変更に、池谷監督のスカウティングも外されて、勢いもあって開始直後は随分苦しめられました。

まぁ群馬としては、前回対戦のとき今シーズンの初勝利を収め、その後1敗を挟み怒涛の3連勝。勢いを掴みかけたと思ったものの、現在7連敗中で降格圏内に沈んでいる。何かを変えるためにヨ・ソンヘを獲得し、そして4バックを試したい。その恰好の相手が相性のいい熊本だったのかも知れない。

そう思うと癪に障ると同時に、まんまと策にはまるところを、撥ね返してなんとかドローに持ち込み、勝ち点1を得て帰ってきたことは、とりあえず良しとしなければならないかも知れません。

もちろん池谷監督も、試合前から「受けてたつのではなく、チャレンジャーとして(前回敗戦の)リベンジする」(DAZN)と、選手たちを引き締めていました。熊本の先発は、光永を片山に、一人入れ替えたのみ。

20170722群馬

しかし、目の前の相手が試合前、監督やコーチから示されたスカウティングとは違うばかりか、ホームサポーターの声援を背にして勢いを持って攻めてくる。熊本は押し込まれます。それに、試合開始前の土砂降りの雨を十分に吸い込んだピッチに足を取られる。

12分頃。山岸がPアーク手前付近から右にスルーパス。そこに左から岡田が流れてきてPA侵入。熊本DF二人がスライディング。コースなく撃った岡田のシュートは、GK畑がクリアしますが、ちょっと危ない。

粘り強く対応していた熊本も、徐々に相手のシステムのなかでボールを動かせるようになる。

33分頃。右サイドからクロスを入れると、群馬DFのクリアが小さい。Pアーク付近で拾った八久保がすかさず足を振った。ゴール右上を襲ったシュートに、群馬GK牲川がわずかに触ると、ボールはバーに当たりこぼれる。そこに安が詰めましたが、牲川がなんとかセーブする。これは惜しかった。

前半を終えてベンチをあとにする際、レポーターからコメントを求められた森下監督。「粘り強くやっていくだけ」と、短く言い捨てるように去っていく。この”奇襲”作戦で前半のうちに先制点が取れなかったことを、相当悔しがっているように見えます。

「前半立ち上がりからの相手の圧力を耐えれた。後半立ち上がりも圧力をかけてくるかもしれないが、落ち着いてきたらDFラインから整えていこう」(公式)。それがハーフタイムのわが指揮官の指示でした。ピッチ内でイレブンも、時間は掛かったものの相手にアジャストした。それにこのハーフタイムで、池谷監督から細かい修正が図られたに違いない。

けれど、予想どおりの後半開始早々からの群馬の猛攻を耐えていましたが、遂に均衡が破れます。51分、カン・スイルが落としたボールを岡田が右へサイドチェンジのパス。右サイドから舩津が大きなクロスを送ると、右から山岸が小谷の背後にするすると流れる。ファーサイドでヘディング。先制点をもぎ取ります。飛び上がって喜びを爆発させる森下監督。

しかし、勢いづいた群馬にこのあと追加点を上げさせなかったことが大きい。まだ時間は早い。何も焦らず、切れずに粘り強く戦えるようになった。

そんな熊本に、相手の群馬に焦りが芽生えたかも知れない。解説の渡辺氏が、「(群馬は)開幕からずっと失点が続いている。選手の堅さが出るかも知れない」と言っていた矢先の63分でした。

群馬のCK。まるでアメフトのショットガンフォーメーションのように固まって散っていく群馬の選手。松下のキックはファーの選手へ。のけぞるように頭に当て、ミドルシュートに入って来い、というようなボールを拾ったのは八久保。クリアでなくそこからのカウンター。最初は「DFラインを上げる時間を稼ごう」(熊日)とドリブルで持ち上がると、「嶋田選手が良いところにいたので、出して入っていこう」と方向転換。左から上がった嶋田に預けると、その俊足を飛ばしてDFを交わしゴール前に入り込んだ。そこに嶋田からふわりとした絶妙のクロス。あとは頭で決めるだけ。今季2点目とします。

なんとか勝ち点3を奪いたい群馬も諦めませんが、このピッチ状況は、ホームの選手たちの足も止めさせ始めます。カン・スイルや岡田がサイドの奥に走り、クロスを上げますが、ゴール前に走りこむ選手の数も薄い。

熊本は安に代えて巻をワントップにしますが、特段、巻の頭をターゲットにしたロングボールを送るでもなく。嶋田と八久保が最後までバイタルを襲いますが、時間切れ。引き分けで終わりました。

相当に悔しがる森下監督と群馬の選手たちを見て、この一戦に掛けていた思いを感じました。よく言われる「この試合は勝ち点3ではなく6の価値がある」、そんな思いだったのかも知れない。降格圏に引きずり込もうと狙っていたのかも知れない。そういう意味では足をすくわれなくてよかった。勝ち点差を詰められなくてよかった。ドローにも価値がありました。

しかし、「同点より勝ちにこだわりたい」と言う八久保の言葉を待つまでもなく。前回対戦では、終了間際で勝ち越された相手。何があるかわからない終盤の戦い方には、少し不満も残ります。が、「どちらにも消耗戦だった」と池谷監督が言うとおりの試合ではありました。

指揮官も認めるように、90分間我慢強く戦うことができるようになってきている。それには自陣ゴール前で最後まで諦めない守備。そしてGK畑のナイスセーブも貢献している。

「最後のサイドやクロスはまだまだ改善が必要だ」と、攻撃への不満を口にした池谷監督。次の段階に進んだということでしょうか。次節、名古屋戦を控えてこの1週間は、どんな落とし込みをするのでしょう。負けなしで来ている7月の最後のゲーム。次はホーム。なんにしても楽しみです。

【J2第23節】(えがおS)
熊本 1-0(前半0-0)千葉
<得点者>
[熊]黒木晃平(63分)
<警告>
[熊]上村周平(16分)、黒木晃平(38分)
[千]熊谷アンドリュー(90分+4)
観衆:5,692人
主審:吉田哲朗


いやぁ、色々と身体に悪いゲームでした。うだるような暑さのなか軽い”熱中症”かと思うほど頭の芯に痛みを感じる一方、先制点を奪ったものの、度重なる相手のセットプレーに、胃も痛むという。

まあ、それもこれも、勝利が全てを吹き飛ばしました。これで今シーズン千葉に対しては、1勝1分の勝ち越しです!

3日前の天皇杯浦和戦をターンオーバーで凌いだ熊本は、その中から3バックの一角に小谷をチョイス。その後の選手交代でも、浦和戦での実戦経験が選手起用に生かされることになります。

対する千葉は、熊谷アンドリューをアンカーに置いて、前線には指宿とラリベイ、少し下がった位置に清武という布陣。これについて池谷監督は試合後、「若干、メンバーが予想と違ってややこしさがあったんですけど、うまくオーガナイズできた」(熊本蹴球通信)と、勝因を語っています。

3連勝中の千葉は、混戦の上位陣のなかにあって下位相手に取りこぼせない。試合前のエスナイデル監督は、熊本に対して「前回対戦とは違った印象。攻撃的に来るだろう」と予想していました。

20170716千葉

そのとおり。開始早々左サイドを崩すと、光永がクロス。ファー黒木のシュートはDFにブロックされますが、こぼれ球を今度は左から八久保、抑えの効いたシュートを放つ。しかし、これは千葉GK・佐藤がパンチングで防ぎます。

今節の熊本は、無理して中央を縦パスで通すのではなく、高い千葉のSBの裏のスペースに、パス交換やサイドチェンジで、黒木、光永の両WBを走りこませる狙いのよう。一方の千葉は、身体能力の高い指宿にボールを収めて、そこにラリベイや清武を絡ませる。

千葉のセットプレーが徐々に増えてくる。16分頃の中央からのFK。距離はあったものの清武のキックは、得意の無回転ブレ球。ゴールバーの手前で、スッと落ちましたが、畑がクリア。ナイスセーブ。

ただ、一方的に千葉に押し込まれていたわけでもない。両者球際厳しく、攻守の切り替えの早い、観ていてスリリングな展開。24分頃には、黒木のクロスがDFに当たってバックパスのようになるところを、ニアにいた安が強引にダイレクトで撃ちますが、これもGK佐藤が好反応でクリアします。

前半終了間際には、中盤のプレスからこぼれたボールを安が拾って持ち上がる。左から上がった上里もフリーでしたが、ここはストライカー心理。強引に撃つもDFにブロックされます。

「後半、体力勝負になってくる。どれだけ相手より勝ちたい気持ちを持ち続けれるかが大事」(公式)と、後半選手たちを送り出した指揮官。この亜熱帯のような暑さのなかで走り負けないよう、選手を鼓舞した。「相手のリスタートに絶対負けないこと」も加え。

それに応えるように、むしろ前半以上に千葉のDFラインでのボール回しにハイプレスを掛ける。いや、これは後半特に指示されたのかも知れない。これが後々ボディブローのように千葉を苦しめることに。

長く続いた千葉のCKやFKを、粘り強く凌いだ熊本。まずは60分頃、前線からのプレスを嫌がったキム・ボムヨンの横パスが、まるでクロスのようになり、八久保が頭から飛び込む。これはゴール左にそれますが、スタジアムは大いに沸きます。

すると63分、最後列の園田が右奥へ送った長いパス。千葉・乾がカットするも、猛然とプレスを掛けてきた黒木が視野に入ったのかGKへのバックパスが短い。躊躇せずそのままスピードを緩めなかった黒木。Pエリアまで侵入し、そのボールを奪うと、落ち着いてGKも交わして、無人のゴールに流し込みます。

総立ちのスタンド。暑さも吹き飛ぶ。

この熊本の先制点と前後して、千葉もベンチワークを始めますが、解説の小林氏が試合後言うように、千葉側は「時間さえあれば、いつか点は取れる」という楽観があったかも知れませんね。それほどの得点劇をこれまで演じてきただけに・・・。

指宿に代えてホルヘ・サリーナス。高橋に代えて羽生。町田には船山。もちろん代わって入った選手も曲者ではありますが、それまで手を焼いていた選手たちを”選ぶように”引っ込めてくれて、熊本にとってはラッキー。

それに対して熊本は、全体的に足が止まり始めたとみるや、まず中山に代えてシャドーの位置に三鬼を入れた。上里が足を攣ると無理させず、林をシャドーに入れて三鬼をボランチに回す。これによってチーム戦術も、バランスも維持した。浦和戦が活きましたね。

たびたび襲うセットプレーのピンチも、池谷監督になって変更したマンツーマンによって、責任持って身体を寄せて、相手に自由に撃たせない。「コーナーキック、リスタートの数が多かったので、それだけがちょっと不安材料ではありましたけど、多かった分、みんなが集中できたのかな」(熊本蹴球通信)と、試合後指揮官も言う。

何度もゴール前で敵と交錯し、痛みながらもボールを放さないGKの畑。安定感が備わってきた。

残り時間が少なくなって、千葉はDF近藤を上げてパワープレイ。熊本の最後のカードは、この日Jリーグ400試合出場のセレモニーが行われた巻。やはり”仕上げ”はこの男。4分と示されたアディッショナルタイム、ロングボールに抜け出そうとして熊谷に倒される。いや倒させる。古巣の千葉をイラつかせる。憎らしいほど頼もしい。

時間を考えたのでしょう。安のこのFKが大きく右に枠を外れると、終了の笛。DAZNの画面では監督を含めたベンチのコーチ陣が円くなって抱き合い、喜び合う姿がありました。試合後すぐのDAZNのインタビューで池谷監督は、「スカウティングがはまった」と言って、コーチ陣を褒め称えることを忘れませんでした。

攻撃力、得点力を自負する千葉を相手に完封です。しかも、苦手としていたセットプレーが続いていただけに、終始ドキドキさせられました。この勝利で熊本はホーム2連勝。勝ち点が22となり、前日の勝利で山口に抜かれていた順位も再び逆転。なにより降格圏の2チームとの勝ち点差を9に広げることができました。

ハードワークの勝利でした。そのハードワークのベースにあったのは、「どれだけ相手より勝ちたい気持ちを持ち続けられるか」でしたが、この試合を観ていると、選手たちがハードワークを苦にしていないように見えた。なんだかまるでそれを楽しんでいるようにも。

「だいぶ変わってきていると思います。また、そういうなかでああいう結果、ああいうシーンが生まれることによって、彼らが走ろうという気になっていくと思うんですよね。成功体験ができたということはすごく良いことだ」。得点シーンを交えながら、そう指揮官も言う。

もはや熊本だけでなく日本中が猛暑のこの列島。この熱い季節をこの戦術で戦い抜くことは大変なことだと、例年思うことなのですが、まずはこの”成功体験”を持ち続けたい。次節は降格圏内の群馬と再戦ですが、ゆめゆめ前回のような不覚を取らないよう。「順位は今、自分たちが上ですけど、チャレンジャーとして戦いたい」「自分たちらしく、アグレッシブにプレーすることが大事」。今日の無失点勝利に貢献したCB村上がそう言うように。ですね。

7月12日
第97回天皇杯全日本サッカー選手権【3回戦】(浦和駒場)
浦和 1-0(前半1-0)熊本
<得点者>
[浦]高木俊幸(45分+2)
<警告>
[浦]ズラタン(54分)
観衆:5,806人
主審:村上伸次


スカパーで観戦しました。翌日の熊日の見出しに取ってあるように「あと一歩」、惜敗というのが実感です。

2回戦で水戸を延長の末破った熊本が、J1浦和との対戦権利を勝ち取りました。本来、格下のホームで行われるはずだった3回戦ですが、15日に控えているドルトムントとの親善試合という浦和側の事情でしょうか、それともえがおスタジアムが空いていなかったのか、敵地・駒場での開催になったのは実に残念。浦和とは初めての対戦。ホームスタジアムに浦和を迎えることができたらどれほどの感慨だったでしょう。

リーグ8位を良しとしない浦和。ペトロヴィッチ監督は、リーグ戦の新潟戦、そしてこの熊本とのカップ戦での結果に、自らの進退を掛けると明言していたようです。新潟には勝利したものの、なんだか周囲の雑音も落ち着かないなかでの対戦。浦和は、スタメンを大幅に入れ替えて、熊本を迎え撃ちます。

対する熊本の先発も、リーグ戦のさなかの中3日とあって完全にターンオーバーが予想され、どんなスタメンかと心配されましたが。蓋を開けてみれば”総替え”、シャドーに林、嶋田。WBに齋藤、片山。ボランチにはコンバートされた三鬼。CBの中心には米原という布陣。しかし、これはこれでまた非常に興味深く、密かに期待を持たせる配置になっていて。試合前の池谷監督のコメントも「そんなにレギュラー組と控えとの力の差があるわけではない」(スカパー)と言う。

20170712天皇杯浦和

格上の浦和相手に、「チャンスは少なくてもいかに勇気を持って前につけたり背後に出したり、パワーを持ってやれるか」が大事と戦前話していた池谷監督(熊本蹴球通信)。いやなかなかどうして、開始早々から縦に付けるパス、裏を取ろうという意識のパスが、チーム戦術の浸透を感じさせる。

浦和は左サイドを破ってのアーリークロスから、FWズラタンのヘッド。しかし、これは枠を超えます。

しかし前半全体を通して浦和の攻撃は停滞している。「6:4か7:3くらいでボールを握られる展開になると思う」(同)と言っていた指揮官でしたが、熊本の守備がはまっている。浦和のボール運びは”型にはまっている”が、最後のところでパスミスや、フィニッシュの精度に欠ける。

熊本は後方から三鬼が縦に付けると、嶋田がすかさずスルーパス。齋藤が右から裏を取ってPエリア侵入。右足シュートはDFがスライディングで入りクリアされます。惜しい。解説の福田正博氏が齋藤のこのプレーに、「GKを二度見した間にDFに入られた」と言う。FWらしい解説。

ほとんど互角ではなかったでしょうか。前半のアディッショナルタイム。しかし浦和に与えたFK。このチャンスに立った高木の右足のキックは無回転。熊本がセットした壁を越え(グスタボのジャンプは甘かったかも知れません)、角度を落としてゴール右隅に転がり込む。これはGK野村にもノーチャンスと思える、高木を称えるべきゴールでしたね。

前半のうちに先制されると厳しいのは熊本の常。浦和は後半開始早々から怒涛の攻撃を仕掛けてきますが、なんとか凌ぐ熊本。

そんななかで、中盤でカットした齋藤が浦和DFを置き去りにして一気にドリブルで持ち込み右から入れたクロス。しかし、ファーに走り込んだ林に合わない。バウンドのせいか。それにしても同点の絶好機を逃しました。

後半は、疲労したせいもありましたが、かなり浦和にボールを保持されて、攻められましたね。しかし、粘り強くゴールを死守したし、浦和の拙攻にも助けられました。浦和はおそらくうちをスカウティングしていなかったでしょうし、メンバーの連携も熟成度がありませんでした。

勝利した浦和側になにか新たな”収穫”があったかどうかは知りません。が、しかし、熊本の方はと言えば、間違いなく大きな収穫を得た”敗戦”だったのではないでしょうか。

池谷監督の志向する3-4-3のシステムにおいて、十分なバックアップメンバーがいることが、この試合で確認できた。出色だったのは、SBからコンバートされた三鬼の出来。そして、米原のルーキーとは思えぬような落ち着いたプレー。

前節称えた村上のCBの働きが本職がボランチ上のこともあるならば、その控えに米原という存在は適正かと。それもこれも、開幕前のニューイヤーカップから緊急避難的に米原をDFで使っていたことも奏効したのかも知れないなと思うのです。

そんなこんな、選手たちの能力を最大限に活かすように。そしてそれを自らが目指す”組織”のなかに落とし込む。この池谷戦術は、前回監督を引き受けた2013年とはちょっと違うような気がしていますが、もう少しリーグ戦を見てからということで、そのことを書くのはまた別の機会にしたいと思います。

7月8日(土)
【J2第22節】(Ksスタ)
水戸 2-2(前半0-1)熊本
<得点者>
[水]内田航平(83分)、山村佑樹(89分)
[熊]安柄俊(25分)、グスタボ(90分+5)
<警告>
[水]佐藤祥(62分)
観衆:4,306人
主審:清水修平


主審から示された後半アディッショナルタイムは4分。DAZNの画面に示されるTAG Heuer社の時間表示ではもう残り十数秒しかない時間帯でした。

その前の10分足らずで、同点、更には逆転に持ち込んだ水戸が、あとは時間を消費するだけのプレー。86分に交代で入ったグスタボが、ここまでボールを一度でも触ったかどうかと思っていました。けれど、そんなグスタボがアタッキングサードに入るところでボールを貰うと、躊躇せずに足を振った。シュートは実は枠外にはずれていたんでしょうが…。しかし、水戸のDF・細川の足に当たって角度を変えると、ゴールの右に吸い込まれます。スピードがあったればこそのグスタボのゴールで、熊本が同点に追いすがり、そのまま終了の笛を聞きます。まさにラストワンプレー。記録上もオウンゴールではなく、間違いなくグスタボのゴールとなりました。

前節の岡山戦での敗戦で、5連勝13試合負けなしというチーム記録が途絶えた水戸。しかし、この好成績ゆえに7位につける。この試合に向けても、「(熊本は)監督が代わってシステムが変わったが、天皇杯でやっているのでやり方はわかっている」と、西ヶ谷監督は豪語する(DAZN)。

それは、熊本は3バックで来るということはわかっていたということも含まれているのでしょうが、それでも水戸は4-4-2で、あえてミスマッチを選びました。そして、熊本は「勝った試合のあとはいじらない」というセオリーどおりのスタメン。

20170708水戸

水戸の強力2トップ。高さの林と、速さの前田をどう抑えるかという”局面的”な課題もありますが、前回対戦時は、ボールの出どころ、ボランチの橋本なりを自由にさせすぎたという反省もあります。

開始からアグレッシブに押し込んできた水戸の攻撃を凌ぐと、熊本もボールを持てるようになる。水戸の守備は、前線から来ると思えば、あるいはセットして構える。その守備を熊本は2人、3人のコンビネーションで崩そうと仕掛ける。水戸は奪うと、中盤を省略して前線の前田を走らせる。そんな展開。

試合後、敵将・西ヶ谷監督は「前半が悪すぎた。それに尽きる」(DAZN)と答えるのですが、前線からハイプレスで行くのか、セットして構えるのか臨機応変に変更しているのは、前回対戦のとき熊本が「前半は暑さもあって、全部行ってたらもたないので、ある程度持たせてから行くということでやっていた」(植田)と言っていたことにも似ているようでもあり。ただ、ボランチの橋本、内田を使わず前線に放り込むばかりの戦術は、熊本にとって対処のしやすさがありました。

25分の先制の場面は、水戸のスローインから。プレスを嫌がった水戸がバックパス。Pエリアでもたつくところに安が果敢に走り込んだ。それを水戸DFが引っ掛ける。与えられたPKを安がきっちりとゴール左に沈めて、熊本が先制します。

水戸ももちろん黙ってはいない。すぐあと、内田のスルーパスに抜け出したPエリア右からの佐藤のダイレクトはシュートだったかクロスだったのか。GK畑も触れず、飛び込んだ前田も合わず。ゴール左に抜ける。

池谷監督になってからの新システム、新布陣で、CB中央の村上がキーマンだと書きました。「持ち上がったりパスを散らしたり、最後尾からタクトを振る。」(2017.07.03 東京Vに完勝。)と。しかし、この試合を観ていて思ったのは、本当に特筆すべきなのは敵のプレスに物怖じしない彼のボールキープ力なのですね。だからこそ、次のプレーに繋がるのだと。

その連動効果で、ボランチの上里のプレー振りがいい。WBの黒木、光永にピタリと付ける大きなサイドチェンジのパスで、実況のアナウンサーを唸らせます。ようやく池谷監督になって上里のよさが目だってきたようですが、これも最終ラインの村上、そして相方の上村とのコンビネーションと思う。パス成功率92%というすごさで貢献します。

しかし、39分には水戸が右からアーリーで入れると前田が収めて前を向こうとするところ。追い越してきた湯澤が奪うようにボールを拾うと強烈シュート。けれどシュートはバーに嫌われる。運も味方してきた熊本。前節のようです。

後半、水戸は3バックに変更します。折り返しを迎えたリーグ戦。相手が前回対戦を踏まえて”リアクション”した戦術で向かってくることに対して、「更にリアクションして応じる」と答えていた水戸の西ヶ谷監督(DAZN)。この試合でも、すぐに”Re・リアクション”を示してきた。

前田がワンツーで右サイドを抜けてエリア内。キックフェイントを加えて撃つが右サイドネット。

熊本は一方的に凌ぐ。しかし、前節ヴェルディ戦も簡単にクリーンシートが得られたわけではない。苦しい時間帯は長かった。その時間帯を凌いだ。その経験は生きている。

水戸は二枚代え。橋本を下げるのは嬉しいが、難敵・船谷が入ってくる。水戸の波状攻撃を撥ね返し続けるものの、少し足が動かなくなってきているのは明らかに分かる。それでも残り10分を切った、そんな時間帯でした。

水戸の左CK。白井のファーへのキック。内田が走りこんでヘッドが突き刺さる。同点。マンツーマン・ディフェンスのはずが、外されていました。

「終了間際の同点!」。と、この試合をまとめようとしている実況アナウンサーに対して、「終了間際というには早い。まだ見どころがあると思います」と言い切ったのは、この日のDAZNの解説の川端氏。まさしくこの後の試合展開を予測するようでしたね。熊本は、八久保を下げ、勝ち越し点をグスタボに委ねる。

しかし、水戸の攻勢は収まらない。89分、左サイド奥に船谷を走らせると、エンドギリギリから折り返し。中央、DFのリフレクションを右で拾った山村が素早く撃つ。ゴールネットを揺らして水戸が逆転します。

すぐに後半アディッショナルタイムに突入。水戸の選手も、サポーターも誰もが、勝利を確信していたことでしょう。水戸は時間を使うプレー。あとは終了のホイッスルを待つのみ。

ところが、AT4分。最後のドラマ。冒頭に書いたシーン。しかし、敵DFに当たって入ったゴール、これを”奇跡”と言ってはいけないでしょう。「シュートは打つべきだ」「打てば入るシュ―トがある」。前節に書いたとおりだと思います。

まるで勝ったように喜ぶ熊本のベンチ、そしてサポーター。対して水戸の選手たちは皆、下を向く。手に入れようとした勝ち点3が、1に終わったダメージはことのほか大きい。

”連勝できなかった熊本”、そして”連敗しなかった水戸”なのですが、それぞれの意味の重さは、皮肉にも逆のような気がします。

一時は、連勝で勝ち点3を手にしようとしていた熊本。しかし、この引き分けに関して指揮官は「最後よく追い付いてくれました。勝点1を持って帰るのをよしとしたい」と(リーグ公式)。

「逃げ切る意識が働いたのか、受けに回って、かなりの圧力を受けて失点を重ねて」しまったとも言う池谷監督。「課題であるセットプレーで失点して」しまった。「交代の選手の確認も次に改善しないといけない」と。

とりあえずドローに追いついたことは喜びたいが、「まだまだ修正すべきところ、課題が多い」(DAZN)というのが池谷監督の感想のようです。チームはまだまだ進化するのだと。

「勝ち点1を持って帰るのをよしとしたい」。それは、この試合展開のなかでも、そのとおりなのですが。19位で順位は変わらないまま、18位の岐阜との勝ち点差は実は、引き分け試合の差でしかないという事実を再認識すると、本当に今節は貴重な引き分け、勝ち点1を積み上げたのだとも思えるのです。

7月1日(土)
【J2第21節】(えがおS)
熊本 4-0(前半3-0)東京V
<得点者>
[熊]八久保颯(26分)、安柄俊(44分)、上村周平(45分+2)、黒木晃平(72分)
<警告>
[熊]園田拓也(65分)、光永祐也(70分)
[東]アラン・ピニェイロ(90分+3)
観衆:10,208人
主審:藤田和也


このカテゴリーには勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないわけで。そんなことは百も承知でしたが、4試合負けなしで3位につける好調ヴェルディ相手に、こんな大勝を演じることになるとは正直思ってもいませんでした。

試合前のインタビューで「(相手は)監督が代わって分析する試合も少ない。ただいつもの自分たちの試合をやっていくだけ」と、ヴェルディのロティーナ監督は言う(DAZN)。なんとなく普通にやれば勝てるだろうというようにも聞こえ。それは山口戦のときのわれわれがそうではなかったかとも思い出させる。

一方の池谷監督は、「追い込まれた1週間だった」(熊本蹴球通信)と試合後振り返る。「相手のゲームはかなり見たし。そういう意味では、うまく対策がとれた結果」だと。そして、監督が代わってから「やってきたことがやっと実った。選手たちが約束事を守って、その上で点も取れた」(DAZN)と答えます。

熊本は、スタメンを前節から5人入れ替えてきました。しかし、奏功した天皇杯・水戸戦にどちらかといえば近いのではないかという印象を受けた。それは3バックの真ん中にキーマンの村上が入ったからでしょう。水戸戦は直には見ていませんが、評判どおり持ち上がったりパスを散らしたり、最後尾からタクトを振る。

あとは左WBに入った光永、シャドーの八久保の働き、そしてなんと言っても1トップの安に期待が持てました。

20170701ヴェルディ

開始から熊本は、CBのイムから右の裏のスペースにロングボールで安を走らせる。左の光永もアーリークロスをDFの背後に送る。まずはボールを持ったらすばやく裏を狙う意図が見える。

相手のボールのときは5バック。前の5人でプレスに行く。敵の前線に入ろうかというボールには素早くチェックに行く。ミスも少なくないが、チャレンジし続けている姿勢は、前節山口戦にはなかったこと。

あとで見返したDAZNの中継で、レポーターが八久保の良さを「スピードアップ、間で受ける、裏を突ける。この3つだとコーチが言っている」と紹介し、それに対して解説の水沼氏が、「今まさに熊本に必要なこと。局面に応じて休みなくやって欲しい」と要望した、ちょうどそんな時間のあとでした。

園田のカットから上里。上里がゴール前に走った八久保に長いパスを送るがこれは収まらず。しかし、続いても後ろで回して、左サイドタッチライン際の園田がワンタッチでワンバウンドのスルーパスを送ると、八久保が裏をうまく取った。落ち着いてGKも交わすと、ゴールに流し込みます。先制点!

「熱くなれ」。この日の試合前、震災ボランティア時の巻との約束を果たしに来たと言って、大黒摩季さんが迫力ある歌声で場内を盛り上げてくれましたが、その歌のとおり一気にスタジアムのボルテージは上がってヤバイ”ハイテンション”。

しかし、ヴェルディもまだ落ち着いていました。勢力を立て直すとFKやCKで熊本のゴール前を襲う。前節の2失点も含め、セットプレーの失点の多さが目立つ熊本はこの試合、ゾーンディフェンスからマンツーマンに変更。「責任をハッキリしようということだ」と言う水沼氏。

試合の流れというのは面白いもので、先制点は奪ったものの、このあとすぐに同点にされなかったことが、この試合の勝因とも思えます。その立役者はなんと言ってもGKの畑でした。

ヴェルディの右WB安西が一度アランに預けて、ヒールパスで貰いなおすと右45度からシュート。これを畑がスーパーセーブ。続いても右からの安西の強烈シュートを横っ飛びでパンチング。拾った左WB安在のシュートは枠の上。今度は右から回して中央の高木に繋ぐと、高木が反転するように村上を交わしてシュート。これも枠内でしたが、わずかに畑が触ってバーに当てる。再三の決定機を防ぎます。

移り気な勝利の女神がヴェルディにソッポを向くと、今度は熊本に微笑みかけます。「このまま追いつかれずに前半を終えたい」とわれわれが思っていた44分、上里が前の安にパスをつけると、安が持ち上がりながら、追い越して上がって来る八久保へのパスと見せかけ、意表を突くミドルシュート。無回転のボールがGK柴崎の前で変化してゴールに突き刺さる。

それだけで収まりません。前半アディッショナルタイムに入ると、スローインを受けた安が一人でPエリア内に持ち込む。3人に囲まれながら、潰されそうになりながら出した。信じて顔を出した上村が貰ってゴール左隅に蹴り込みます。上村はうれしいプロ初ゴール。

なんとなんと3-0という点差で後半に折り返した熊本。しかし、ヴェルディは前節4点で町田を下しているし、その前は愛媛に3点で同点に追いついている。短い時間で一気に得点を加算する力を持っている。安心はできませんでした。

熊本は時間を消費するように、ゆっくりと攻める。「絶対ゆるめないこと」「最後までさぼらないこと!」というハーフタイムの指揮官の指示を守りながら。

渡辺に代えて梶川。畠中に代えて橋本。そして4バックにしてヴェルディが勢いを持とうとしていた72分でした。上里が自陣から、右サイドで高く上がっていた黒木にピタリとパスを当てる。黒木がドリブルで勝負すると見せかけて、フリーでミドルシュートを撃つ。地を這うようなグラウンダーのシュートは、ファーポストに当たり、ゴールに吸い込まれ4点目とします。

こうなるとあと欲しいのはクリーンシート。既に八久保に代えて岡本が投入されていましたが、次に中山が足を攣って上原に交代。布陣は完全に5バック。選手全員がかなり疲れていました。上里を右に回して、上原がボランチに入る。

次々に襲うヴェルディのシュート。熊本はPエリア内に林立してクリア一辺倒。あとはもう0(ゼロ)で終わりたいという気持ちだけ。不甲斐ない失点で敗戦を見せ続けたホームのファンのためにも。それはまるで「1-0のように守った」と水沼氏が言う。

園田も足を攣った。しかし、残り時間を耐えられると判断したベンチは、最後の最後のカードで安に代えて巻。前線からの守備をゆだねる。アディショナルタイムには大チャンス。カウンターから岡本、巻、岡本と繋いで、右から上がってきた上村。上村のクロスはしかし、中央の巻はもちろん、ファーの岡本の頭も越えて抜けてしまう。そして、終了の笛が吹かれました。

4得点のうち、組織的に崩したのは1点目と3点目。安の2点目と黒木の4点目は、個人の技術のようにみえます。しかし、その2点もまた、フィニッシュで終えるというチーム戦術が浸透したからのゴールではないかと。

無失点で勝利したことについて指揮官は言う。「クロスに対してまず良いポジションに戻るということ。後半はズレてきたところもありますけど、そこで良いポジションを取れているということ」(熊本蹴球通信)だと。しかし、それに加えて「ボールに対する執着というか。最後も皆がシュートブロックに行っていたし、迫力もあったし、選手がより勝ちたいという気持ちを持ってプレーしていたんじゃないか」と。

あの名手ヴェルディの選手たちのシュートが、最後の最後に枠を外れたのも、畑の存在感に加え、そんなところが大きかったのかも知れない。

7試合ぶりの勝利。ホームに限っては実に4月16日の松本戦以来。そんな鬱憤が、1万人以上を集めたスタジアムの夜空に、勝利の凱歌「カモン!ロッソ」をこだまさせました。

4-0。大勝のようでもあるが、タイトルどおりの100%の完勝でもない。点差に隠れてしまいそうですが、課題もしっかり残りました。

けれど、自分たちの練習を信じて、自分たちで結果を得た。勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないことを。シュートは打つべきだということを。今節の勝利の意味として、そのことが大きな自信に繋がったということは間違いありません。