11月21日(土) 2009 J2リーグ戦 第49節
東京V 0 - 2 熊本 (17:03/味スタ/4,736人)
得点者:16' 吉井孝輔(熊本)、43' 小森田友明(熊本)


日テレから経営権を譲り受けた新会社「東京ヴェルディホールディングス」が、リーグから課せられた、“存続条件”である“スポンサー料5億4千万”を確保し、理事会が来期もJ2に参戦できることを承認したのは、この試合のたった4日前でした。この“締切日”=“裁定の日”の直後の対戦相手がうちとわかっていたので、承認されて胸をなでおろしたのが正直なところです。名門ヴェルディの灯が消えなかったこと、関係者の努力にこころから拍手を送ります。

その直後には多くの契約満了選手と、今期途中から指揮を取ることになった松田監督の退任も発表されて。また、この試合には大黒やレアンドロの姿もなく…。腕組みしながら見守る崔暢亮会長の姿が画面に映し出されるのを見ると、すでに新生ヴェルディの歩みが始まっていることを実感させられました。

熊本も北野監督の退任が発表されてから初めての試合。ひょっとしたら、各選手も契約交渉が始まっているかも知れません。しかし、画面越しに見る彼らの表情には動揺など微塵も感じられず。北野監督の表情もしかり。「残り3試合をしっかり勝つ」。その一点。そして先発フォーメーションもいつもどおりのものと言えました。

東京V (先発フォーメーション)
13井上 7河野
16飯尾18永里
28弦巻8柴崎
3廣井2福田
14富澤17土屋
 1土肥 

戦前のインタビューで藤田は「ヴェルディというパスサッカーチームに、堂々とパスサッカーで戦いたい」と言っていたそうです。試合は、そんな両者が互いの持ち味を前面に出した展開になりました。高い位置から果敢にボール奪取を試みるヴェルディに若干の優位を感じさせる序盤でしたが、10分、最終ラインで西が落として吉井のミドル。熊本の得点の形を思わせる“伏線”のようなプレーがありました。先制点は16分、熊本のポゼッションから藤田がDFを背にしてキープするも倒されて奪われる。しかしこのDFのクリアを拾った吉井が豪快に振り抜く。横っ飛びのGK土肥も届かない角度で、ヴェルディゴールに突き刺さりました。

ヴェルディは、短いパス回しの熊本のボールを、高いところでインターセプトする狙いのようでしたが、これもまた、ある意味で想定内の熊本、うまくかわしながら、“こんな時間帯だ”とばかりに割り切って凌ぎ、長短を混ぜて、なかなか思うようにいかせない。奪っても、熊本の戻りが早く攻めきれないヴェルディ。右の永里が何度もエリアを脅かしますが、しっかり人数をかけて守り、ポジションを間違えない熊本に遮られ、決定機にはなりませんでした。

そして前半も終了間際、左サイドでもらった西がカットインでエリア内に突っかける。切れ味の鋭さに、ヴェルディDF福田も倒すしかありません。主審も躊躇せずPKの判定。これを小森田がゴール右角にきっちりと決め、土肥を再びピッチ上に横たわらせました。この日の西。サイドから、正面から、挑むようなドリブル突破を見せていました。まさにこのPK奪取の伏線のように。

2点のビハインドを覆すために、後半早々ヴェルディはFW平本、すぐあとにはDFを下げMF藤田を入れ前掛かりにしてきました。しかし熊本がペースを握らせない。ヴェルディの攻撃をうまく潰し、セカンドを拾ってはポゼッションに持ち込む。石井の故障・離脱以来続いている吉井と原田のダブルボランチの完成度は試合ごとに増し、パスを出してはスペースに動き出す。攻守の役割分担が阿吽の呼吸。パスサッカーの本家とも言えるヴェルディ相手に、自信を持って“回し”“つなぐ”熊本。往時を知るロートルファンからすれば夢のようです。

2点リードの熊本は、ここしばらくの戦いぶりそのままに、まったく予定どおりに小森田を下げて中山、松岡に代えて宮崎。ヴェルディは注目の高校生・高木で最後のカードを切ってくる。新生ヴェルディにとって、河野や高木といった日本代表をも伺うユース育ちのタレントたちが今後の重要な資産。いえ、そういう伝統的な下部組織の育成システムこそが、今後もこのクラブの大きな資産だと言えるでしょう。

しかし反面、そんな“若い”ヴェルディには、今日の2点のビハインドを払拭するテコのような力がなかった。ちょうど第1クールの対戦で、反撃の狼煙を上げた熊本の藤田のような精神的支柱の存在に欠きました(せめて服部でもピッチにいれば…)。うまくいかない、それどころか目の前で小気味よくパスが回る熊本のポゼッション。イライラも相当なものがあったはずです。カメラが追いきれず、経緯はよくわかりませんでしたが、CKからの一連のイザコザで平本が矢野を突き飛ばし一発レッドで退場。矢野に対してもイエローが出され、今後の残り2試合を棒に振るという非常に残念な結果になりました。

今シーズンの3回の対戦で、それぞれ違った顔を見せた感のある東京ヴェルディ。それは今期、まさに再建問題の只中にあったことも多分に影響しているのかも知れません。一方、ここにきての熊本の好調さは、いつかのエントリーで書いた“変数”が、ちょうどうまいように“最大値”を描いている感じがしています。周りを見回せば、破綻とも言えるような大分の財政。縮小を余儀なくされている福岡の来期事業計画。ただでさえ儲かるビジネスとは程遠い日本のプロサッカー。この不況下において、クラブが歩む道は、とてつもなく厳しい。そして他人事でなく、われわれも同じ場所を歩いていることに違いはないわけで…。
今まさに契約交渉の真っ最中(多分…)、場外にいるわれわれは報道に振り回されがちになりますが、どんなことがあっても信じて支えていくしかないだろうと。味スタのゴール裏。画面に映るわがホームチームのサポーターたちの“ロアッソレッド”の美しさが目に染みるようで。決意を改めるような気持ちで見入っていました。


昨日、北野監督が来期契約を更新されないことがクラブから発表されました。リーグ終盤とはいえ、ある意味で電撃的です。鳥栖・岸野監督のケースと同様に監督自身の今後の転進に配慮したタイミングということなのかも知れませんが、「クラブ側は『熊本をJに上げた功労者』としてユースチームの監督として残留を打診」(12付・熊日)しているようで、その去就は今のところ見えていません。ともかくはっきりしているのは北野監督が今期限りでその任を終えるということです。

ロッソ発足時、招聘された池谷監督(現総監督・GM)とともにヘッドコーチに就任した北野誠氏。日立製作所(現柏)時代の池谷氏の同僚選手であり、引退後は京都のジュニア育成部門を長く手がけていました。1年目の九州リーグ、2年目、3年目のJFL、そしてJ2昇格の昨年とヘッドコーチとして池谷体制を支え、S級取得と同時にJ2年目の熊本の監督を任されました。当初から「プレーしている選手も、観ている人も楽しいサッカー」を標榜し、J一年目で直面した課題に対して、ボールも人も動く攻撃的サッカー、アタッキング・サードを崩して行くダイナミックなパスサッカーを目指しました。

シーズン序盤は、単にボールポゼッションに固執した、攻撃のアイデアに乏しい試合内容が続き、また「1点取られたら2点取り返すサッカー」というほど偏重したその攻撃性の裏返しとして、どうしようもない守備崩壊の試合が続きました。しかしシーズン終盤にきて、攻守のバランスも安定し始め、辛勝ながらも「熊本は面白いサッカーをする」という評価が定着し始めていたところでした。

「成績面で今季掲げた目標(10位以内)を達成していない。県民運動としてピッチ外の活動についても、考え方の違いがあった」(池谷GMコメント・12日熊日朝刊)

どんなにいいサッカーをしたとしても、当初クラブが掲げた10位以内という順位目標(ミッション)に到達できなかったことに対し、プロとして責任はとらなければいけないのだろうし、だからこそ選手起用を含め、試合に関する全権を委ねられているのが監督という職業なのでしょう。スタンドから見守るしかないわれわれには推し量ることもできない、色々な事情がこうさせたのだと思われますが…。また「県民運動としてピッチ外の活動についても、考え方の違いがあった」という部分も気になるところです。

昨日のテレビ報道のなかでは「J1昇格を目指すという目標と合わせて総合的に判断した」(というニュアンスだったと思います)というGMコメントもあったようです。ただ、現実的なものを見回せば、熊本の今の体制、状況のままでの“J1”というのはとても考えられないということも認めざるを得ません。しかしそれでも、そういった状況を打破すべく、ここにきて、再度、「県民運動」の巻き直し、官民からの人材補強で体制強化が進んでいるという動きも耳にしています。こういったもう一度大きな流れを作っていこうというなかで、チーム、フロント一体となって進んでいくべきところで、“考え方に違いがあった”のは決して小さな問題ではなかったのではとも推察します。

「サッカー批評」の44号の中で、日本の元祖GMと評された岐阜の今西社長兼GMがこう言っていました。「J1とJ2、JFLでは求められる監督のタイプは違う。(中略)トップリーグ(J1)では戦術や戦略に長けた人物、J2などはそれよりも教育者の人格を持った人材が向いている」と。先日機会があって、その話を池谷GMにしたら、「そういうこともあるかも知れませんね」と笑いながら頷いていたのを思い出しました。

どういうタイプが選ばれるのか分かりませんが、新たな熊本の指導者に対して、もうすでに交渉が始まっているのでしょうか。ただ、監督が変わってもこれまで積み上げてきたものの“継続性”だけは重要視してほしいものです。毎年のように変わる指導者(とその方針)に迷走させられるようなチームにだけはなりたくない。そう思います。だいぶ以前、池谷前監督の采配への批判が集まった時期。われわれは監督解任論争以前に、クラブにとっては監督を評価・裁定するGMという存在が先決なのだと、そもそもの建前論を述べたことがあります。そして今回は、そのGMがクラブの現状と将来を見据えて出した“総合的な”結論だと信じます。熊本というクラブが生まれて初めて、GMと監督とそしてファンとの間に敷いた“緊張感”のようなものを実感しました。

われわれは、今季、北野監督が掲げた“戦術面”でのビジョンは決して間違ってはいないと思っていますし、今回の退任で今期の熊本の戦い自体が否定されるものでは決してないと思います。サッカークラブにとって、経営ビジョンや(今の熊本なら)J1昇格を目指すためのプランを示すのは社長という立場だし、その昇格プランへのプロセスをチーム強化という(監督人事も含めた)仕事で示していくのがGMという立場なのだとしたら、今期の北野サッカーが決して“熊本サッカー”の完成形ではなく、これからも積み重ねていくものこそが、“熊本サッカー”と呼べるものになるのではないでしょうか。それはある意味誤解を恐れずに言えば、誰が監督になるにせよ“継続”されて“積み重ね”られていくもの。ひょっとしたら、終わりのない、ずっと追い求めていくべきものなのかも知れないと思うのです。これからのクラブのビジョンと、それに呼応するファンがともに行う息の長い大切な積み重ねの作業。例えれば、ガウディの遺志を継いですでに100年以上も建設の続く「サグラダ・ファミリア」のように。「あそこのあのレンガは私が積んだものだ」ということなのかと…。

縁あって、何もない熊本のチームに集い、共に戦った北野監督。狭き門であるS級資格を取得し、1年ではあったがJ2熊本の監督として腕を奮った日々。監督としても、ヘッドコーチとしても、熊本のサッカーの飛躍のために本当に力を尽くしていただいたことに、改めて感謝のことばを贈ります。あと3試合。これまでの5年間に思いを巡らせながら精一杯の応援をしたいと思います。

11月8日(日) 2009 J2リーグ戦 第48節
栃木 0 - 2 熊本 (12:33/栃木グ/3,180人)
得点者:44' 藤田俊哉(熊本)、79' 小森田友明(熊本)


いつものように試合後、J‘sゴールの監督インタビューを覗いたら、敵将・松田監督のコメントに驚かされました。「今の時点では何が敗因なのかちょっと整理できていない。」終了直後とはいえ知将で鳴らした彼らしからぬ言葉。何か言いたいことが喉に詰まっているのかとも邪推してしまいますが、現状の悪循環に対して「1番の薬は年度が変わることなのかもしれない。」とまで言ってしまって・・・。チーム作り(選手補強)に加われなかった今期への恨めしさなのか。それにしてもスカパーのアナが言ったとおり、戦前熊本を“ダイヤモンド型”と想定して練習していたのだとしたら、スカウティングはどうなっているのでしょう。チームスタッフ全体の脆弱さを憂えているのかも知れません。

6月以来の栃木戦。3回目の対戦には、前線にチェ・クンシクとレオナルドという新たな顔がいて、左サイドには河原を置いてきた栃木。「熊本には勝ちたい」「勝てる」という気持ちがあったのでしょう、序盤からゴリゴリと押し込んできました。

栃木 (先発フォーメーション)
30チェ・クンシク 28レオナルド
20河原18向
13米山15鴨志田
6入江2岡田
5落合32宮本
 1柴崎 

熊本は木島と小森田の2トップにしてボックス型の中盤にシフトされていましたが、藤田が単純に左で張っているはずもなく、いつものように流動的に動き回る。栃木には適当にフリーにさせてもらいながら、原田、吉井のボランチを助け、西や松岡の上がりを促します。15分頃から栃木のプレーが少しずつラフになってくる。パスミス。コンビネーションの乱れ。最初に苛立ち始めたのはチェ。そしてそれがレオナルドに伝播すると、最後は河原までイライラし始めたのがわかりました。

栃木のアグレッシブな試合への入りと、その後のバタバタした展開に、試合自体が落ち着かず、熊本もなかなか好機が作れないままでした。それでも、栃木の攻勢は予想していたことのように受け止め、いなし、あえてリスクを冒さず、機を見たカウンターを仕掛ける熊本。試合を“運んでいる”なという感覚が。逆に栃木には“うまくいかない感”が広がってきます。それでもボランチに入ったベテラン米山が孤軍奮闘。ゴール前30メートルのところから無回転FK。あるいは右サイドから回してフィニッシュ。と熊本ゴールを脅かします。そんな感じの前半ロスタイム、右サイド宇留野からのクロスを中央の小森田がシュートできず、そのこぼれ玉をエリア内右で拾った藤田がDF宮本を切り返しで交わして左足で流し込みました。絶好の時間帯で先制。

後半早々、MF向に代えてFW若林を入れてきた栃木。3トップか、あるいはレオナルドを一列下げたようにも見えました。二度、三度、レオナルドがドリブルで右サイドを破ってくる。市村の代役として右SBは初めて努める松岡の負担が増える。鋭いクロスを上げられますが、その精度と栃木の“上がり”の薄さに助けられました。ここで松岡が宮崎と交代。その直後、カウンター気味のロングパスが木島に渡る。振り向けば2対1。そのままドリブルで突っかける。わずかにエリアの外でしたが、木島が宮本に倒され、宮本に一発レッドカードが示されます。守りの中心を失った栃木。一人少なくなった栃木はそれでも点を取りに行かなければいけない逆境に、要の米山をCBに下げました。

この相手の焦りと混乱を見逃さなかった熊本。右CKを宮崎が蹴ると、ボールは米山の頭上を越えて、飛び込んできた3人(いや待ち構えていた4人と言えるかも知れません)の赤いユニフォームのかたまりのもとへ。一番ファーの小森田の頭がそれを捕らえると、栃木のゴールネットに突き刺しました。栃木がゴール前をゾーンで守ることをスカウティングしていた熊本ですが、それにしても・・・。退場した宮本のゾーンが修正されていなかったのかどうか、CKの守備としてはあまりにも手薄で不備なシフトでした。

さらに熊本は木島を下げて山内を投入。これまた予定通りとも言える“攻撃的な”逃げ切り策。栃木はチェと鴨志田を下げて石舘、伊藤で追いすがる。しかし栃木の波状攻撃からのミドル弾にも、吉井が飛び出しチェックする。今日は守備に専念していた感のある原田がソンジンと交代。時間を使う。ロスタイム3分を消化し終了のホイッスル。「してやったり」の満面の笑みの熊本イレブン。崩れ落ちるようにピッチに大の字になる栃木選手。その瞬間、90分間猛烈な声量で歌い続けた栃木のゴール裏が、異様なほど静まり返りました。時おり響く栃木サポーターの怒りの声。関東サポの勝利のチャントだけが遠くから、やけにくっきりと聞こえてきます。

「システムは、機織り(はたおり)に似ている。」と言ったのは誰だったでしょうか。4−4−2や3−5−2など色々なシステムがあるにせよ、それは結局、フィールド上に縦の糸と横の糸を紡ぐことなのだと。そして機織り機がそうであるように、最も重要なのは「縦の糸」なのだと。流動的な熊本のシステム、追い越す動きもあることを考えると、ちょっと複雑で分かり難さがありますが、要は縦の選手同士の関係なのかと。今日の熊本は選手間の距離が良かった。いつかも書いたように、小森田と藤田、吉井と原田とCB、その縦の距離間がいいときの熊本は強い。そんな感じがします。コンパクトということでしょうか。今日の実況アナがゲーム中、藤田、木島、宇留野、藤田、吉井・・・の位置関係が刻々とシフトするのをいちいち伝えてくれていました。テレビ画面では捕らえきれない流動性ですね。

一方、栃木はチェやレオナルドが加わって、縦の推進力は確かに力強くなりました。しかし、その2人だけの推進力頼みでは、点に結びつかないのかと。それは縦に伸びきってしまった糸なのかも知れません。

「ちょっと遅かったですけど・・・。」試合後のインタビューにハニカミながら答えた小森田の今期初ゴール。今日は試合展開のなかでフルタイムを任されました。今期の北野監督の構想でFWにコンバートされた小森田。われわれがシーズン前、期待半分であまり根拠も無く書いた“小森田ゼロトップ”が、意外や意外、実際に姿を現して・・・。それでも結果が伴ったとは言えなかった今シーズンの状況に、われわれもちょっと居心地の悪さに似たものを感じていました。それでも、形は変わったものの北野監督はここにきて“意地”のように使い続けている。

実は、北野監督が小森田に求めたものは、ゼロトップというより、本来のFWの仕事ではなかったのかと思ったりもします。ゼロトップという働きは、シーズン途中、藤田が表現したプレーがわれわれのイメージには近かった。一方、小森田が託されたものは、あくまで前線でのターゲットマンであり、彼のテクニックによる“タメ”ではなかったのかと。しかし、タフなディフェンダーに身体をぶつけられながら前線で勝負するには、いくらチーム1、2を争う体躯とはいえ、あまりにも厳しすぎた。そこはやはりFWの“DNA”を持ったプレーヤーの戦場なのではないだろうかとわれわれは思ったのです。反面、2列目、3列目が追い越す動きで得点するというチームコンセプトからは、小森田の無得点にもあまり不満は感じていませんでした。それよりも何故こうまで“無理”をさせ続けるのか、という思いが強かった。彼自身が自分の役割について誤解、混乱をしてしまうのではないかと・・・。

「ここからが自分の開幕です。」と語った小森田。われわれ外野席からは推し量れない苦悩を乗り越えたような表情にも見えました。

10月31日(土) 2009 J2リーグ戦 第44節
愛媛 1 - 1 熊本 (14:04/ニンスタ/2,372人)
得点者:34' 木島良輔(熊本)、60' 大山俊輔(愛媛)


延期になっていた第44節・愛媛戦。ニンジニアスタジアムの芝は、テレビ画面を通しても美しさが伝わってきました。しかし試合後のインタビューで北野監督が「ピッチがやわらかく、ドリブルがやりにくいということはアップから選手が話していた」「ピッチのやわらかさもあって選手に筋肉系のダメージが多かった」と話しているように、そして藤田や木島が試合中、不意に足をとられるシーンがあったように、実はジワリジワリと選手の体力を奪っていくやっかいな芝だったようです。

望月監督が解任されバルバリッチ体制になった愛媛。直前には福田健二の入団が発表されるなど、すでに来期を見据えた動きも始まっているようですが…。さて、この試合には点取り屋の内村を累積警告で欠き、ジョジマールも怪我のせいなのか不在。しかし前線にはドド、DFにはチアゴという新顔が揃っていました。そういう意味では、前回対戦時とは全く別のチーム。あのベンチにGK2人、MF1人しかいなかった8月の試合から、多分、多くのことが変わっているのでしょう。対する熊本は、藤田がベンチスタート。小森田と木島の2トップ。いつもの西森の位置には宮崎が入っていました。

愛媛 (先発フォーメーション)
 11田中 
22横谷33ドド
24永井16赤井
 34渡邊 
14三上13関根
2柴小屋4チアゴ
 21山本 

序盤から市村と西の連携で愛媛の左サイドを崩す。次々にCKを奪う。守っては今や不動となった福王と矢野の両CBがきっちりと跳ね返す。吉井、原田の両ボランチのバランスを保ったポジショニングもそれを手伝っている。そして、愛媛のプレスを“剥がす”ようなワンタッチのパス回し。目の前が空くとみるやドリブルで仕掛ける西。あるいはくさびくさびの連続で崩してクロスを上げる。ポゼッションを維持しながら攻め続けます。

対する3トップの愛媛ですが、どうにも守勢に回り押し込めない。時おりドドがカウンターを仕掛けるぐらいか。そんな時間帯、中盤でのインターセプトからボールを貰った木島が、ハーフウェイラインより後方からドリブル。スピードに乗り、独特のステップで愛媛のファーストディフェンダーを交わすとその勢いのままミドルシュート。愛媛の最終ラインは揃っていたものの、そのボールは柴小屋の背中をすり抜け、GK山本が伸ばす手の脇でバウンドするとゴール左角に吸い込まれていきました。撃った本人もちょっと意外だった感じの先制点。左腕に巻いたキャプテンマークを示して喜びを表現しました。

ところがこの後、試合の展開を大きく左右するアクシデントが。前半も終了間際、市村が相手へのバックチャージでこの日2枚目のイエロー。本人にすればインターセプトに「行ける!」という“感覚”がそうさせるのかも知れませんが、警告を取られても仕方のないプレー。ちょうど累積をくらった福岡戦のときと全く同じようなプレーだけに、猛省を促したいですね。

後半折り返しを10人で戦うことになった熊本は右SBに宮崎を下げ、木島の1トップに。しかし、それでも十分に凌ぎきれると感じさせる流れが、(前半を見る限りにおいては)あったのですが。ただ、この数的劣勢の時間が水戸戦と比べるとあまりに長すぎた。厚別の札幌戦と比べると気温が高すぎました。そこに冒頭、書いたような今日のピッチ状態。選手の体力は想像以上に奪われていったようです。

早々に小森田に代えて藤田を投入するのは、戦前のプランどおりの交替カードだったのでしょうか…。ひとり少なくなった今日も、水戸戦と同じように前で時間を作れる働きを期待されました。愛媛は永井に代えて大山。「嫌な選手が入ってきた」。その予感は的中しました。60分、サイドチェンジを駆使したボール回しから左サイドの田中に振る。田中はマイナスぎみに中央に入ってきた大山に戻す。チェックに行く吉井が間に合わないと躊躇する。その一瞬のタイミングを見計らってミドルを撃った大山。DFラインの間を縫ってゴール右角に突き刺さります。まるで木島へのお返しのようなシュートで愛媛が同点に追いつきます。

同点。数的不利ではあるけれど熊本は点を取りにいくべきであり、実際に取りに行ったわけですが…。吉井の絶好のミドルシュートはGKにセーブされる。愛媛は逆に嵩にかかって攻め立てる。左サイドが次々に襲われ、関根が粘って上げたクロス、田中に代わって入った内田のヘッドはわずかに左に反れる。赤井のシュートを木下がこぼしたところに詰められますが、これはオフサイド。肝を冷やします。

後半25分。松岡が足を攣ってしまい宇留野と交替。西がSBに下がります。直後に木島もダウン。山内を入れて藤田をトップに上げる。こうして“プランにない”アクシデントの交替カードを切っていくしかない熊本。実況のアナウンサーは熊本の布陣を苦肉の策と憂えてくれますが、彼には宮崎も西もSBが勤まるという情報がない。それにしても、思えばシーズン序盤はとても90分間持たなかった原田や西。その二人が最後までピッチで走れるようになっていたからこそよかったものの…。おそらく原田や宮崎もかなり痛んでいるのが、画面からも伝わってくる。しかし、もう交替のカードは残っていませんでした。

その後も攻め立てられはしますが、愛媛にも決定的な“策”はありませんでした。バルバリッチがベンチで怒るように、繋がりはなく、アイデアは乏しく。まだまだ彼の目指すスタイルにはほど遠いのか。画面越しにはよくわからなかったのですが、折角の大山が“作る”シーンがその後はあまり感じられなかったのは、熊本がしっかりチェックしたせいなのかも知れません。両者追加点なく終了のホイッスル。両チームの選手が天を仰ぐ。原田と宮崎は、ピッチ上に崩れ落ち身体を休めます。

前節・湘南戦でも書いたように、熊本の選手が途中で足を攣ってしまうのはもはやチームの“仕様”と言わざるを得ません。残念なことですが、幾人かの選手が90分は持たないだろうというのはベンチも織り込み済みのことなのでしょう。90分のなかで、どの選手が持ちそうになくて、そこでどの選手を投入するかは、流動的にせよ“プラン”としてあるのかもしれません。小森田を後半引っ込めて藤田を入れるのは当初のプランどおり。木島、松岡、西、宮崎のうち誰かが傷んだ時は宇留野を入れてシフトチャンジという選択だったのでしょう。そして次の(そして最後の)交替カードは山内。ということだったかと。ところが、今日はもうひとつ“退場”というアクシデントがそれに加わった。それに、選手の“痛み”も予想よりは早く、そして深かったのではなかったのかと…。全く予期しない緊急な状況が加わるのがサッカー。そこが盤面での“ゲーム”とは違う。生身の人間が行う仕業ならではのことなのですが…。

先発11人、ベンチ5人、交替カード3枚というレギュレーションのなかで、ユーティリティ性のある選手をどう配置していくかが、このリーグの肝であり、うちは薄い選手層のなかでも何とかうまくこなしているのだと思います。これについては昨年からの財産が寄与している部分も大きい。しかしながら、今日の事態はかなり危うかったなというのが実感。「勝てた試合」「勝ち点2を失った」と評価する人も多いのですが、われわれは薄氷を踏む引分だったというのが正直なところです。湘南戦では「型にはまった」と言えた攻撃的交替カード。今日は“事が起こってからの交替”に終始せざるを得なかったように思えます。この退場劇や故障が、もしCBやボランチで起こっていたならと思うと。そのときのベンチワークはどうなっていたのかと。

勝つための事前プランと危機管理。いつも“強気”と見せるベンチのプランが、決して勝利を約束するものではないのではないかと。結果オーライと危機管理は、実は表裏一体、“裏返し”なのではないかと。危機管理の目配りが徹底しているからこそ結果が伴うのだと。チーム初の3連勝のチャンスはまた逃してしまいましたが、相手との対戦ということ以前に、チーム全体が一人芝居、一人相撲を演じたような残念な試合。まだまだ道は遠いなぁ。そう思いました。

10月24日(土) 2009 J2リーグ戦 第47節
熊本 1 - 0 湘南 (13:03/水前寺/2,835人)
得点者:69' 矢野大輔(熊本)


残念だったのは、この歓喜の瞬間を3千人足らずの人たちにしか共有してもらえなかったことでしょうか。終了のホイッスルの瞬間、溜まっていた緊張感から解き放たれて、まるで雄叫びのような声を上げ、喜びを爆発させるホーム・スタジアムのファン。やはり勝利の歓喜に勝るものはありません。

終盤を迎えたリーグ戦。湘南は前節、鳥栖をロスタイムの劇的な一撃で下し、5試合ぶりにJ1昇格ライン3位に滑り込んでいました。残り試合は5。ひとつも落とせない連戦のなかで、反町監督は“流れ”を重視したのか、前節と全く同じ布陣を選択しました。しかし、湘南イレブンの疲れは隠せなかったですね。あるいは精神的にも、前節の“痺れる”試合。極度の緊張感。その集中力が底をつきかけていたのかも知れませんが…。

湘南 (先発フォーメーション)
 34田原 
11阿部22中村
8坂本7寺川
 21永田 
30島村5臼井
19村松3ジャーン
 32野澤 

開始早々、西が右サイドを抜けてシュート。湘南のゴールマウスを脅かす。湘南は寺川のロブに田原が中央を破り、飛び出した木下の頭越しにヘッド。これは右に外れる。累積で欠場の松岡の穴を埋める左SBの網田が果敢に上がり、前が空いた瞬間を見逃さず思い切りよくシュートする。相変わらず判断が早い。湘南・坂本もお返しのようにミドルを放つ。「もっとしっかり田原にぶつかっていけ」といわんばかりの北野監督のDF陣へのジェスチャー。時計を見たらまだ開始から15分。しかし、この15分までに既に互いのサッカーが凝縮されていて。全ての“役者”が次々に登場し、その存在をアピールし、まるで“顔見世興行”を見るような時間帯でした。

熊本はその後もワンタッチのパス回しでサイドから崩してアタッキング・サードを脅かす。練習でひたすら繰り返したというグラウンダーの早いクロスを、右から左から入れることにより、バイタルエリアを混乱させる。前半終了間際には、湘南・寺川のFKがバーをかすめ、あるいはDFラインをかいくぐった中村に決定的なシュートを撃たれますが、ポスト右に反れてくれました。多少の幸運もありましたが前半、互角の印象。しかし湘南側のオフサイドの多さと、熊本が得たCKの数が、後半の展開を占っているようでもありました。

戦前、スタメンの布陣を見て驚かされたのは、木島、宇留野、中山という本来のFWを全てベンチに休ませ、先発の2トップの一角に小森田を使ってきたこと。もう一方の藤田といい本来MFの選手。2トップにしてゼロトップなのか。2列目から西、西森、あるいは吉井が追い越してゴールに迫るというイメージは理解できないこともありませんでしたが、思い出すのは第2クールでの対戦。藤田のゼロトップが奏功し先行した試合展開のなかで、後半打った交替カードで“自滅”した感のあった試合。それは監督だけの“欲”だったようにも映り、今回の“奇策”にも不安を感じました。

しかし、それは結果的には全くの杞憂でした。前半をスコアレスで凌いだところで、試合は監督のプランにがっちりはまりましたね。セットプレーから1点をもぎ取って、そこから繰り出す交替要員のFW達は、前線でのタメを作るいわば“守備的攻撃要員”とも呼べるカードとして機能しました。

後半開始から湘南は中村に代えて菊池を投入。反町監督の狙いは「左SB(網田)の経験不足を突く」というものでした。しかし奏功しない。網田にも危なかっしさは残るものの、しっかり守備陣としてフィットしている。基本技術がしっかりしている。体が強い。今日の湘南、確かに攻めてはいるものの、どこか消極的。ある意味手堅いとも言えるのかも知れませんが、リスクを極力犯さない“負けない”ための戦いに映りました。これが昇格戦線を戦うチームというものなのか。JFL時代の熊本を思い起こさせます。

もちろん湘南には「リスクを犯さなくても点は取れる」という自信があったのかも知れません。寺川のスローインから波状攻撃。こぼれたところを右から阿部に撃たれますが、シュートコースは枠の外でした。ほっとため息をつくスタジアム。湘南の攻勢をどこまで凌げるか。

さあ、プラン通りに運んだゲームも後半15分。ここで熊本ベンチは、満を持したように木島を呼ぶ。ビブスを脱いで準備する木島。控え選手全員が駆け寄り、まるで“魂”を注入するように肩を叩く、手を握る、声をかける。「頼むぞ!」と。

左からの藤田のシュートなのか、折り返しなのか、何とも言いようのない絶妙なクロス。GK野澤は判断よくパンチで逃れる。そこから続く熊本のCK。1本目、右から原田。ファーにいた矢野にボールがいったん納まるも、対峙したジャーンを突破できずクリアされる。2本目、左からは西森。ニアに走りこんだ矢野、競り合うジャーンの足が僅かに早くクリア。そして3本目も左から西森。ややファーの位置からほぼ中央へ走りこんだ矢野、マーカーのジャーンは木島のブロックする動きに一瞬出遅れ、フリーの矢野は中央からドカンと突き刺す。GK野沢の手を掠めゴールネットを揺らす。「入ったー!うおーッ!」スタジアムは総立ち。ガッツポーズ。タオルマフラーを振る。飛び上がる。3本のCKがすべて矢野とジャーンのマッチアップという印象的な攻防。鉄壁のジャーンが見せた一瞬のスキでした。

時間にして69分。前節とほぼ同じ時間帯の得点劇。前節、ここからの水戸は「連敗を止めたい」という気持ちが焦りに変わり、単調な攻撃に終始しました。今日の湘南は「負けられない」という気持ちが、「負けてはいけない」というプレッシャーに変化していったのではないでしょうか。湘南は切り札的存在のアジエルを入れる。前節の鳥栖戦でも、奏功している交替カード。熊本は今日も中盤で攻撃を作り、相手の起点を潰していた原田が足を攣った様子。しかし宇留野との交替で退いたのは、同時に足を攣った網田。左SBには西が下がります。

残り10分。湘南のゴリゴリと押し込むような攻撃が続く。前回対戦で終盤2点差を追いつかれたシーンが浮かんでくる。アジエルがスルーしたところに右から臼井がゴールに迫る。敢然と飛び出す木下。入れ替わって矢野と福王、市村がカバーに走る。木下を交わした臼井のシュート。絶体絶命のシーン。シュートには福王、ゴールマウスには矢野、こぼれ球には市村。対応する福王を外してやや上を狙った臼井のシュートは、クロスバーに当たって跳ね返る。場内が大きくどよめく、安堵に天を仰ぐ。

直後、左サイド、坂本からのクロスになだれ込む臼井。体を張って守る西森。倒れ込んで動けない。最後のカード・中山と交替。これでもう原田は最後まで引っ張るしかない。木島が相手を倒して与えたFK。もうどの距離からのFKも怖い。田原のヘッドは木下がキャッチ。残り5分。湘南は永田に代えて田村。しかし焦りからか全体にミスが目立つ。ジャーンは上がったままのパワープレー。ゴール前への猛攻。体を張って阻止する熊本。後押しするようにスタジアム全体で響き出す手拍子。徐々に早くなるそのリズム。まるで「時間よ。早く進め」とばかりに。木島がFKで狙う。藤田が時間を使う。中山が前線で守備に走る。もう熊本は6人ぐらいDFラインに並んでいる。その中で福王が「下がるな!」と叫んでいる。ホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムDJが思わず大音量で発した「やったーー!」というアナウンスは、ホームの全てのファンの気持ちを代弁していました。

選手のみならずファンの全員が、最後のプレーまで安心できないことを知っている。それはここまで何回も高い代償を払って学んできたことでした。そしてここにきて2戦とも虎の子の1点を守りきれたことには、ただ単純に最終ラインで跳ね返すだけではなく、前線で自信を持ってパスを回せるという今シーズンやり抜いたことの成果でもあるでしょう。最終ラインのブロックで跳ね返したセカンドを、拾ってキープできるもうひとつ前のブロックがある。今日の湘南、引いて守って凌げる相手では決してありませんでした。

前回対戦のときだったでしょうか。勝利監督のインタビューで「湘南には足を攣る選手はいない」と反町氏に言わしめた。今回も最後、熊本は満身創痍といった状況でした。しかし今戦前、「今日は勝負強さが試される」とも言っていた反町監督。皮肉にもそれを発揮したのは熊本の方でした。ベンチも、久しぶりに出場した選手も含めた全員の総力で。

決めるところで決めなければ逆にやられる。サッカーではよくあること。それを今回はまるでプランどおりであったかのように、勝利へと結びつけた熊本の試合運びと交替策。“型”にはまった。その展開は、まるで歌舞伎の形式美とまでは言いませんが、水戸黄門や虎さんのドラマぐらいの“型”のはまりかたでしたね。

第1クール完敗時のエントリーで「この先なんとかひと泡吹かせたい」と書いていました。第2クールでは、収穫も多いと書きながら、今読み返すと実は悔しさが滲み出ています。一矢報いた。それも昨年と同じような状況、昇格戦線を戦うチームを相手に。一戦一戦が痺れるような最終タームなのでしょう。湘南のゴール裏にも、これまでになく多くのサポーターが詰めかけて、チームの昇格を信じ後押しをしていました。どの顔も期するところを感じさせる厳しい表情。まだそんな状況にわが身を置くことなど想像もできないJ2年目の終盤戦。しかし今日の水前寺での逃げ切り勝利は、間違いなく今期一番の痺れる試合に違いありませんでした。