第一クールのこれまでの戦い。対戦する全てのチームがある意味で格上。われわれファンもまずは“胸を借りる”という気持ちで臨んできました。しかし、どうしても負けられない、いや“負けたくない”チームがひとつだけあります。
そう、FC岐阜です。

このJ昇格同期のチーム。緒戦に甲府と引き分け、次は仙台に黒星を喫したものの、3節に山形に撃ち勝つと、その後も徳島や福岡、水戸に白星を挙げ、現在4勝6敗2引分の堂々9位。昇格チーム旋風を巻き起こし、熊本を見下ろす位置につけています。

なんだか、同期入社のライバルが、大学は現役合格のひとつ年下で、会社に入ってからも派手な仕事振りで差をつけているといった心境。こちらは一浪のうえに、今コツコツと下積み仕事からこなし、なんとか会社に慣れようとしているのに・・・。
なによりJFL時代の二度の対戦、ここに勝ったことがないのです。なんとなく漂う相性の悪さ、根拠のない苦手意識。

しかも、あの時と今の“岐阜”は全く別物です。メンバーも戦術も。
確かにリーグ序盤のころは、昨年の面影がありました。すばやく自陣にリトリートして、相手がハーフウェーラインを越えたあたりでチェックを入れる。手数を掛けずに前線のFWにあずけるカウンター戦法。
ポゼッションは明らかに相手にあるのですが、守備の要である小峯の執拗なまでのマーク、福岡から移籍した高さのある川島の壁で攻撃を辛抱強く跳ね返し続けると、徐々にペースが転がりこむといった印象。ちょうど、テニスや卓球で守りのうまいストロークプレーヤーが、ラリーを続けて相手の自滅を待っているような。

ところが最近の試合では、攻撃力が上がっている。現時点の総得点21は広島の22に次いでリーグ二位です。
地域リーグから新加入のFW片山がひとりで6ゴールも取っていて注目がいきがちですが、実は中盤まで下がったり、サイドに開いたり、ドリブルで仕掛けたりと縦横無尽な動きの地元選手・片桐が攻撃の起点。
それに大分から獲得した右サイドの梅田がアタックしてくるし、高知大卒ルーキーのボランチ菅あたりがバランスよく上がってくる。
小峯、片桐といった従来のメンバーに、こういった新戦力がうまくはまって、いまの好調さがあるのだと思われます。

熊本としては、これまでとはちょっと違った試合運びになる可能性もあります。ある意味、ボールを“持たされ”たら、変なペースに持ち込まれそう。
お互いがコンパクトな陣形で、ポゼッションを奪い合う、文字通り「人もボールも動く」展開に持ち込みたい。だからと言ってサイドからの単調な放り込みや、後方からのロングフィード狙いでは、小峯の統率するDFラインの思うつぼにはまる恐れも。

“すっぽん”のような小峯のマーク。あのサッカープレイヤーに似つかわしくない体型に油断は禁物。読みに長けたポジショニングが身上で、後方からチームを鼓舞します。
高橋対小峯といった構図も避けたい。逆に小峯をペナルティエリアの外まで引き出したら勝機です。両サイドからの攻撃は、ファーサイド狙いで落とす、折り返すような揺さぶりが欲しい。その意味では、サイドプレーヤーの運動量への期待はかなり高くなるでしょう。

とまぁ、こんな素人のスカウティング以前に、池谷監督とスタッフは、しっかり岐阜を研究しているでしょう。前節、上村が奪ってすぐ前線に徹底してフィードを送り続けたのも、「(福岡の)最終ラインがロングボールの処理、セカンドボールの処理が良くないと感じていた」(J‘sゴール:池谷監督インタビュー)という事前のスカウティングの成果でした。

一方、敵将・松永監督も徹底した分析家として知られています。両司令官の事前の準備がどうおこなわれ、そして試合のなかでどう発揮され、そして90分の間にどう修正されるのか、それもまた次節の見所かも知れません。
5月6日(火) 2008 J2リーグ戦 第12節
福岡 2 - 4 熊本 (13:04/レベスタ/10,822人)
得点者:8' 大久保哲哉(福岡)、28' 高橋泰(熊本)、33' 高橋泰(熊本)、41' グリフィス(福岡)、57' 小森田友明(熊本)、72' 高橋泰(熊本)


どんな状況でも、たとえ結果がともなわないことがあっても、応援の声を止めない。われわれのホームチームだから。そして、こんな試合を見せられたら、なおのこと・・・。

新・九州ダービーの第2戦となった今節はアビスパ福岡との戦い。敵地レベルファイブスタジアム(博多の森球技場)に多くのファンが乗り込みました。
前節、大差完封負けを喫している両者にとって、悪い流れを振り払いたい一戦。しかし、われわれ熊本にとっては、それ以上に、この福岡戦には期するものがありました。

ご存じのようにアビスパ福岡は、九州で一番最初にJ入りしたチーム。そのため、熊本にも博多の森に”九州のチームとして”応援に行ったという人たちが多い。はからずもそこで「福岡!福岡!」と叫んだという経験を持つ人を何人も知っています。

しかし、皆がそこでなにがしかの違和感を覚えて帰ってきた。
「熊本にもホームチームがほしい」・・・。その思いがようやく叶って、今こうして初めて博多の森の”アウェー側”に立つことができた。多くの熊本サポーターからすれば、そんな記念すべき日だったのではないでしょうか。
うちの八十になる年寄りも以前、無理やり連れていかれた博多の森のおぼろげな記憶をたどりながら、「格の上がったけん福岡と試合のでくっとたいね」とちょっと誇らしげでした。

熊本は、出場停止が解けたチャジホが左SHに帰ってきたほかは、C大阪戦から続く先発陣。中二日の疲れを憂慮するより、いい戦いをしているこのメンバーを優先しました。ベンチにはFWに北川、そして初めてMF熊谷の姿も。

対する福岡は、U−19の海外遠征を断ってこの試合に臨むという、ユース出身の鈴木惇がボランチで初先発。その意気込みが、開始早々からプレーに表れます。ゴール前右サイドからの鈴木のFKをロッソDF陣がクリアしてCKに。このCKからFW大久保をフリーにしてヘッドで決められてしまう。今日もまた先制された熊本。前節の嫌なイメージが襲います。

しかし、先制されても決して守りに引いてしまうのではなく、あくまでアグレッシブにという戦い方は前節も全く同じでした。しかし、今日は敵陣で無理に奪ったり、中盤で後ろから追いかけたりということではなく、自陣の最終ラインへの出所で、きっちりとチェックしていたという感じ。奪いに行くというのではなく、自由にさせない、相手のリズムを削ぐ。決して守備のバランスを崩さない。おそらく前節から、というより、ここ数試合の修正の積み重ねとして、条件に応じた攻撃的守備、守備から攻撃へといったところの“間合い”が見えてきたのではないでしょうか。

そこから両サイドや、前線の2トップにフィード。高橋の1点目、3点目はいずれもCB上村のそんな仕事から生まれたものでした。

もちろんハットトリックを達成した高橋の抜群の技量、活躍抜きに、この勝利はなかったでしょう。昨年の雨の水前寺、アルテ高崎戦を彷彿とさせるような2点目のFK、無回転シュートに敵GKはなすすべもなく。紛れもなく、今節Jリーグアフターゲームショー選定のベストゴールでした。

しかし、この試合でわれわれをしびれさせたのは、同点で折り返し、はては撃ち合いかと思われた後半。最後はパワープレーに及んだ福岡を零封した45分間の展開でした。

12分にチャジホの折り返しをうまく小森田が押し込んで勝ち越し。その後、反撃に出た福岡の文字通り”力ずく”の試合はこび。高さのある大久保に、黒部、ハーフナーまで入れられると、熊本のゴール前の制空権は完全に福岡のものになってしまいました。

しかし、GK小林の決死の守り。喜名、福王、熊谷というカードも投入のタイミングも迷いがない。「全員守備なんだ」という明快なメッセージ。そして、足が止まりそうになる時間帯での、高橋の貴重な貴重なだめ押し点。

エースの大活躍もあり、4点という初の大量得点になりましたが、後半を0点に抑えたゲームは、実に鳥栖戦以来。これまで、後半に運動量が落ちて失点を重ねていたのが熊本。しかし、ここにきて少しずつですが、それが改善されてきている証左ではないでしょうか。しかも、この過酷な連戦のなかで・・・。

紙一重の戦い。

前節終了後、横浜の都並監督が「先制点を奪われていたら、違った形のゲームになっていただろう」と言ったように、今日の試合も後半、相手に先に勝ち越されていたら、追いつく力はなかったかも知れません。とても表現しにくいんですが、それほど絶妙な試合運びだったと。

そしてそれは僅差で敗れ続けたこれまでの戦いが、なにがしか”糧”になっているように思えるのです。まさに紙一重の戦いを続けているのではないかと。
誤解を恐れずに言えば、前節、横浜戦、結果的には大敗でしたが、後半の失点は勝敗ではなくリスクを恐れず“1点”を取りにいった結果だったこと。5点差がついた後半20分以降も誰一人、下を向くことなく、ロスタイムまで1点を目指して、全力で走り、攻めていた。われわれのチームは紛れもなく“闘っている”と思うからです。

この連休、過酷な日程のなかで元J1勢との連戦。結果、この4連戦を2勝2敗で乗り切ってしまいました。振り返って「基本的に”得た”ものしかない。」と池谷監督にいわしめた貴重な経験。

連休最後の新たなダービー戦では、先輩福岡に勝利することによって、これまでの”借り”を返すことができました。
Jリーグの楽しさを、自分の町のチームを応援することの嬉しさを教えてくれた先輩福岡への”借り”。地域リーグ時代から、練習相手としてチームを鍛えてもらった”借り”。
最初は福岡の借り物だったチャント(応援歌)も、もうそろそろお返ししなくては。これから熊本も少しずつですがファンを増やして、いつかきっと“いいライバル”と思ってもらえるようになってみせます。

福岡にとっては連続での大量失点による敗戦。今後どう立て直してくるのでしょうか。次に戦うのは6月8日のホーム水前寺。あの水前寺競技場が、リベンジに燃える福岡サポーターで占拠されてしまうのではないかと、今からちょっと心配。しかし、それでこそのダービーなんですよね。
5月3日(土) 2008 J2リーグ戦 第11節
横浜FC 5 - 0 熊本 (13:03/ニッパ球/4,061人)
得点者:25' アンデルソン(横浜FC)、42' アンデルソン(横浜FC)、46' アンデルソン(横浜FC)、52' 難波宏明(横浜FC)、62' チョヨンチョル(横浜FC)


見るからにコンディションの差が明らかでしたね。思わぬ大差になりました。

出場停止のチャジホに代えて前節途中出場の宮崎。そのほかは、ほとんど前節、前々節と同じメンバーで挑んだロアッソに対して、横浜は前節休み。試合開始まで降り続いた雨でしっとりと濡れた三ツ沢のピッチも、アウェーチームにとっては厳しい条件となりました。

アンデルソンも、難波も、三浦知良もキレがあったことは間違いありませんが、ロアッソの選手達は、完全に競り負けていました。中盤でも前を向けない、チェックにはファールを取られる。
なにより、CBの二人が、今日はアンデルソンと難波に翻弄されていました。闘将上村も疲れは隠せず。ボールを追ってしまい目線が下がる分、視野が狭くなっていたのでしょうか。

初めて2点のビハインドを背負って迎えた後半。
前半もところどころでは熊本らしい攻撃を垣間見ることができていたので、立て直しも可能かと思われたのですが、開始早々のアンデルソンの3発目が、大きく効きました。今季初出場の町田、山内を投入するも流れは変わらず。逆に、横浜には次の試合を考慮して、アンデルソンや三浦淳を休ませる余裕すら与えてしまいました。

ここまでどんなFWにも決定的な仕事はさせてこなかったうちの両CB。しかし、どうも外人FWには、弱みを見せてしまうようです。福王は今日もしっかり自分の仕事をしましたが、限られた3人交代枠のなかで、彼の持つユーティリティ性ゆえにどうしてもベンチスタート、”置いておきたい”選手になってしまうのでしょう。

総体的な選手力の差が埋められているか。今節の見どころをそう書きましたが、それ以前にこのリーグ日程の厳しさに膝をついた感じがします。11日間で4試合。まったく未知の世界です。
チーム全体が常にトップコンディションの動きでなければ戦えないリーグ。それもまた全体の選手層の差と言っていいかもしれません。できれば、いいコンディションで2月のTMの借りを返したいところでしたが、全ては言い訳にしかなりません。

これもまた試練。

くしくも今節、多くの試合で大差完封試合となっているのも、そんな日程との調整力や選手層というチーム力の”差”が出ているのではないかと感じさせました。

次節戦う福岡も、本日の試合で湘南に0−4で敗れています。
どちらがこの嫌なイメージを引きずらず、切り替えて戦うことが出来るのか。対戦まで中二日。コンディションはある意味一緒。”新・九州ダービー” 初の福岡戦です。
われわれもまた、気持ちを切り替え、新たなモチベーションを胸に、福岡戦に臨みます。
さて、次節はアウェー。ニッパツ三ツ沢球技場で横浜FCと戦います。

現在3勝1敗5引分で8位。調子の波が激しいのか。
2月のTMでは、向こうがまだ調整中だというのに、点差以上に圧倒的なチーム力の差、控えも含めた選手層の差を感じたことをわれわれも記録しています。今、その差が少しは縮まっているのかどうか。興味深い戦いです。

また、前節退場のチャジホが1試合出場停止のため、左サイドをどうするのか。これも監督の采配を注目したいところです。
ここ2試合の山口、山本のボランチコンビ、前々節の河野健一、前節の宮崎 大志郎。いずれも練習やサテライトでのアピールでチャンスが巡ってきています。誰にもチャンスがある。裏返せば、誰にもレギュラーの保証はない。中山、高橋両FWの連携も高まっていますが、まだベンチ入りしていない小林陽、町田にもチャンスはある。厳しいけれどそれがチームの活力。そういう総体的な力も含めて差を感じた2月から、どれぐらい縮まっているのか、ということです。

さて横浜。要注意は、相変わらずFWのアンデルソンの動き、MFエリゼウの上がり、それと最近では前目で使われているという三浦淳のテクニックでしょう。因縁深い御給匠もここ数試合はベンチにも入っていないようです。逆にカズは最近5試合、連続スタメン出場しており、若い難波と前線をかき回しているようです。

難波宏明。この名前は見覚えがあります。

あれは2002年の1月。JFL昇格初年度で8位の好成績を残したアルエット熊本が、大津競技場で、初のセレクションを行いました。約30名の参加者のなかに、当時神戸を戦力外になったばかりの彼の姿がありました。
短・長距離走、5vs5でのミニゲーム、フルコートを使ったゲーム形式でのテスト。どのシーンでも、彼の能力の高さは群を抜いていました。なにより、ジャージの上からも想像できる強靭な筋肉、身体能力の高さは、大宮からのレンタルFW金川が抜けた穴を補う人材として、喉から手がでるほど欲しかったのは間違いないでしょう。

しかし、彼のプレーを熊本で見ることはできませんでした。おそらく当時の彼はプロを志向していたでしょう。それに応えるクラブ環境に、当時の熊本はありませんでした。

その後、同じJFLの栃木SCに入団。14試合に出場したあとは、なんと流通経済大に入学(移籍?)し、06年の関東大学リーグ優勝に貢献。同年に横浜FCの強化指定選手に登録され、昨年正式にプロとして加入しました。

縁がなかったといえばそれまでですが、あれからの熊本にも紆余曲折があり、こうして今、敵味方として相まみえることに、なんだか不思議な運命の糸を感じます。

三ツ沢。われわれも一度だけ行ったことがあるんですが、屋根は少ないものの、ゴール裏からの見切りもよく、伝統を感じさせる素晴らしい専用スタジアムですね。
ちなみにネーミングライツの「ニッパツ」はあの日本発条。横浜で自動車のサスペンションやスタビライザー、シートを作るこれも伝統あるメーカーです。
きっとホーム側は、あのスカイブルーのレプリカユニとフラッグで埋まって、綺麗なんだろうなぁ。
連休初日。遠征される方も多いと思います。羨ましいです。われわれは、テレビの前で赤馬の勝利を祈ります。
4月29日(火) 2008 J2リーグ戦 第10節
熊本 2 - 1 甲府 (14:04/熊本/4,464人)
得点者:26' 小森田友明(熊本)、48' 藤田健(甲府)、52' 矢野大輔(熊本)


プロセスが結果に結びつかないここ数試合。正直、勝利という”結果”がすぐにでもほしいという気持ちと、2勝目まではもう少し時間がかかるかなという不安(覚悟)が、ない交ぜになったようなゲーム前の心境でした。しかし、ホームに迎えた甲府を相手に勝利。あの広島にも土をつけたJ1降格組。一般的に世間では、この勝利を”金星”と呼ぶのでしょう。

バックスタンドでは子供達が掲げる「小森田先輩。頑張れ」の横断幕。おそらくブレイズ・ジュニアの面々か。
その小森田も右サイドに入って、ロアッソは、前節、前々節と変わらぬ先発フォーメーション。強豪甲府相手にも、いつもどおり、真正面から自分たちの目指すサッカーで挑もうという監督の気構えが、無言のメッセージとしてわれわれにもしっかりと伝わってきます。
「チーム内にヘタッているやつは一人もいない」(上村健一4月27日熊日朝刊)。結果が出ていなくてもチームが浮き足立つ様子は全く見えません。

しかし、中二日の試合日程の疲れか、あるいは夏日となったこの日の暑さのせいか、それともペース配分を考えてのことか、試合の入り方としてはややスローな重たい感じがしました。セカンドボールはことごとく甲府に拾われ、ボールを支配されます。ただ、結果論かも知れませんが、ある程度、甲府にボールを持たせる戦略だったのかもしれません。甲府は自分たちが“意外に”ボールを持てるため、例の”狭い局面でのクローズ”といった特異な陣形を90分間、一度も見せず、いわば”普通”のサッカーをやってくれました。

逆に熊本は徐々に、ボランチ“山山コンビ”を中心として、甲府のパス回しを要所要所でカットしていく。自陣ゴール前でのドリブルや、ショートパスに対しても、きっちり準備できている。

両者押し合って、主導権を奪い合おうとする互角の展開。試合が動いたのは26分、エリアやや右手前、得意の位置からのFKを小森田が直接突き刺す。ロアッソにとって、実に開幕以来9試合目にして初めての先制点となった鮮やかなゴール。小森田にとっても今季初得点でした。

その後も、甲府の高いDFラインの裏をつきチャンスを作る”ロッソ”。加えて今日は、早いサイドチェンジから2列目、3列目が追い越してくるシーンが随所に見られる。決定的なチャンスも二度、三度。何より熊本も甲府もお互いに見事にコンパクト。そのためか攻守の切り替えは非常に早く、攻守の動きがつながっている「シームレス」な感じさえ受けました。

さて、リードして前半を終えるのは、水戸戦以来です。

ハーフタイムの喫煙コーナーで同僚たちと後半予測。「後半2点入るよ。どちらに入るかはわからないが・・・。」「1点ずつ取って2−1ならベストかな。」などとうそぶいていたのは、皆の心に「今日は勝ちたい」という思いと、これまで何度と目にした後半のパフォーマンス低下への不安とが入り混じっていたせいでしょう。ドラマはまだ前半を終わっただけ。当然このままで終わるとは誰ひとり思っていなかった。

そして後半。まず悪いほうの予感が早々に的中。開始2分、やや不運とも見えたPK判定で同点に追いつかれてしまいます。
しかし、早い時間帯だったし、防戦一方というわけではなかったので、スタンドは比較的落ち着いて見守っていました。同点にされたわずか5分後、セットプレーから矢野のヘッドで再び勝ち越し。この瞬間、スタンドは総立ち。騒然としたスタジアムの雰囲気そのままに、さらに撃ち合いになるのか。押せ押せの熊本が追加点を上げるのか。観る側にとってもこれ以上はないシビれる展開。

しかしこのドラマ、さらに意外な展開を見せます。図らずもそれを“演出”したのは、同点PKを“演出”した田辺主審その人でした。
後半30分、チャジホは左サイドで、自らのコントロール下にあったタッチライン沿いの浮きダマを敵陣方向にクリアしようと果敢なオーバーヘッドキックを試みますが、これが相手の顔に入り、2枚目のイエローで退場。
一人少なくなった熊本。後はこの1点を守り抜くことに完全に集中していきます。中山を下げ、福王を最終ラインに入れ、上村をボランチの位置に。残り時間は15分。

しかしここにきて、もはや人数など問題ではありませんでした。
どちらの“勝ちたい”という気持ちが勝るかどうか。

前線に高橋ひとりを残した熊本は、甲府の攻撃を必死に跳ね返す。低いクロスボールに危険を顧みず頭から体を投げ出す河端。疲労困ぱいのはずなのに縦横無尽に走り回る山本、山口。退場劇直前に投入された宮崎大志郎は守備に追われながらもJデビューのチャンスを果敢に相手陣深く駆け上がる。削られ、倒されながらも孤軍奮闘する高橋。審判の視界外で行われる、甲府選手の狡猾なプレー。ひとりのミスも許されない。ノーファウル。オールクリア。懸命のタックルに大声援が応え、スタジアム中から沸きあがる手拍子が疲れ切った選手たちの背中を押す。長い長い3分のロスタイム。ドラマの終わりを告げる主審の笛。

実に一ヶ月半ぶりの勝利。待ち遠しかった勝ち点3。だからこそこの勝利の喜びはひとしお。なにより甲府の持ち味のハラハラ・ドキドキサッカーのお株を奪うようなスリリングな展開。
サッカースタイルも、クラブ経営もいわばお手本としたい先輩格の甲府にがっぷり四つ、勝ち点を奪えたことはまさしく“大金星”と言っていいでしょう。

もちろん、まだまだ課題は目に付きました。しかし、駐車場までの道すがら、家族連れや友達同士、大勢の人たちが、皆、一様に笑顔で、今日の勝利を喜び、選手の活躍を称え、ゴールシーンを思い出しながら、賑やかに語り合う姿を見ていると、そんな心配もどこかに吹き飛んでしまいました。

このハラハラ・ドキドキをスタジアムで体感した人たちは、次のホームゲームにはきっとまた足を運んでくれるでしょう。テレビや新聞で結果を知った人にも、その興奮とわれらがチームの逞しい戦いぶりを伝えてくれるに違いありません。
こうして一試合、一試合、みんなの胸に刻まれてゆく小さな歴史。このサッカーを続けていく先には、きっときっと真っ赤に埋まったKKウィングがあることを確信させる、そんなゲームでした。