9月18日(日)
【J2第32節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)岡山
<警告>
[熊]上原拓郎(74分)
[岡]篠原弘次郎(45分+1)
観衆:4,404人
主審:大坪博和


「だから我々も謙虚に、熊本相手に1をしっかり取ったということで。次ホームに帰って、よりアグレッシブに進んでいけるように準備したいと思います」(熊本蹴球通信)。敵将・長澤監督は、ドローに終わったこの試合後のインタビューで、最後そう結びました。

「このゲームに入るにあたって、熊本が連戦を終えて、気力十分に来るよと。要は、開幕でスタートダッシュした時の状態で必ず来るはずだという入りをしました。本当に熊本は大変ななかをくぐり抜けてきたチームでスピリットは十分なので、そういう意味では本当にタフなゲームになると。だから、順位とかお互いの持っている背景とか、ほぼ関係ないということでゲームに入りました」(長澤監督)と言う。さすがのチームマネジメントでした。

リーグ4位の岡山は勝ち点56。「リーグ4位の44得点という強力な攻撃、同時にリーグ5番目の失点の少なさを誇る守備と、攻守にバランスが取れたチーム」(熊本蹴球通信)と井芹さんも書くように、前線にはガンバからレンタルの赤嶺がいて、熊本キラーの押谷がいて、中盤には五輪代表の矢島が控え、DFラインには元日本代表岩政、加地までいる。リーグ5連敗中の熊本。ホームのアドバンテージはあるとはいえ、強敵を迎えました。

20160918岡山

熊本は相手の3-4-3のシステムに対して、テヨンをアンカーに置いた4-1-4-1の布陣で対する。前節の愛媛の3バックに対しては、ほとんど練習でも試していなくて、「奏功したようには見えませんでした」と書いたわれわれは、今日も少なからず不安がありましたが、1週間という本来の準備期間に戻ったせいもあるのか、この試合ではその良さが発揮されましたね。

試合開始早々、岡山に与えたCKからゴール正面、岩政の高い打点のヘディングにヒヤリとさせられる。同じような場面は28分頃も。これは植田、小谷がきっちりと寄せて岩政も枠の上に飛ばさざるを得ない。それにしてもセットプレーは怖い。

4-1-4-1は、中盤の厚さを活かすシステム。この布陣だと、特に上村の良さが引き出されるような気がします。プレスもはまる。短いパスも回る。26分頃、清武が左にはたくと上原がダイレクトでクロスを入れる。ニアに飛び込んだ高柳でしたがDFのブロックに阻まれる。

前半終了間際には、清武がDF3人を相手に抜きさり、右サイドからグラウンダーのクロスを入れますが、ファーに届く前にGKが入ります。

「できるだけ下がらずに、できるだけ前で押し上げていこう」とハーフタイムで指示した清川監督。後半に特に得点力のある岡山を警戒します。

前半は神経戦のような様相でしたが、後半は一気にオープンなカウンター合戦に。スタジアムが沸く。嶋田が痛んで八久保に交代。岡山は押谷を下げて豊川を入れる。豊川も凱旋試合で気合十分。

ここからは両チーム守護神の意地のぶつかり合い。スーパーセーブの競演。

敵陣中央やや左で得たFKを清武が壁のむこうワンバウンドでゴールを狙うと、GK中林が横っ飛び、片手でクリア。今度は、岡山の右サイド奥からマイナスぎみのクロスに伊藤の右足アウトに掛けたシュートは佐藤がパンチングで逃れる。

決定的だったのは、矢島のパスがずれたところを逃さず奪った上村のスルーパスに清武が抜け出しゴールに迫った場面。しかし、追いかけたDFの右からスライディングでシュートコースを失い、GK中林のブロックに。高く上がったボールもキャッチされてチャンスを逸しました。ワンテンポ遅れる…。まだ本調子とは言えない。

終了間際にも、岡山のスローインを佐藤がパンチングクリアからのカウンター攻撃。巻が右を追い越した清武にパスすると八久保も追い越してきましたが自ら撃つ。しかしシュートは枠のわずかに上。

仕留められない。まさしくそんな感じ。終了の笛を聞いてピッチを叩く清武。

「前節や前々節も自分にチャンスがあって、必ず決めなければいけないなかで、(今日の決定的な場面で)シュートが遅れてしまい申し訳なかった。そこを決めないとチームも勝てないので、練習からまたしっかりやりたい」(公式)とは、清武の反省の弁。

ただ、「残りの試合が少なくなって、勝点を取らなければいけないので、今日の勝点1は大きいと思う」とも言う。

ゴール裏は、選手たちの奮闘に拍手を送り、翌日の熊日の見出しも「泥臭く 待望の勝ち点」とうたう。5連敗から脱し、ようやく手にした引き分け勝ち点1は、順位こそ18位と後退したものの、降格圏からの差を6から7(2試合分以上)にした貴重な1でもありました。そして同じく岡山も順位を下げたとはいえ、冒頭の長澤監督の言葉。「熊本相手に1をしっかり取った」と評価する。

痛み分け。

ようやく他のチームと同じように1週間のサイクルで戦えるようになった熊本。「必要としているトレーニングを入れることができた部分もある」と清川監督は言う。「この先また、1週間のサイクルでやれるので、もう1度いい状態で、ホームでの山形戦に備えたい」と。この試合の翌日も久しぶりに北九州とのTMが組めた。

そういう意味でも、強敵・岡山から得たこの勝ち点1は結構重みがありそうです。選手たちのメンタルにもいいように作用して、あの試合がターニングポイントだったと、シーズンが終わったあとに言えるように。次節・山形戦も気を引き締めて戦って欲しい。いい準備をして欲しいと思います。

【J2第16節】(Cスタ)
岡山 2-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[岡]田中奏一(24分)、矢島慎也(65分)
[熊]アンデルソン(51分)
<警告>
[岡]矢島慎也(59分)
観衆:7,308人
主審:清水修平
副審:伊東知哉、福岡靖人


なかなか勝てません。震災を挟んでついに6連敗。順位は暫定ながらも19位まで落ちてしまいました。

前節のエントリーで、わが熊本は「相手を圧倒する球際と、圧倒する切り替えと、圧倒する運動量があって初めて勝機が見いだせるんだ」と書きました。その点で言えば、今節のこの試合は、復帰直後の千葉戦は除くにしても、震災後一番の内容の悪さだったではなかったでしょうか。いやむしろ岡山が良すぎたのか。90分間ほぼ岡山に主導権を奪われた。そんななかでリーグ復帰後、ようやく初得点が生まれたことが、唯一の収穫と言えました。

ちょっと選手のメンタル面が気になっています。コンディションの面でいえば、ゲーム体力は戻ったように見える。しかし、メンタルのコンディションは、ちょっと戻っていないのかもと。いや、戻るというより、“調整”されていないかも知れないと。

清川監督は試合前、岡山のことを十分リスペクトしつつ、しかし「岡山のいいところをつぶしにかかるより、こちらが仕掛けることで先手を取りたい」(スカパー)と、ゲームプランを描いていましたが…。仕掛けて先手を取られたのは熊本の方でした。

20160604岡山

熊本の狙いは、岡山の3バックのサイドのスペースを使って揺さぶり、DFの間隔を空けることによって崩すということだったでしょう。岡山の特徴であり、弱点でもある部分。前監督の小野さんに言わせれば「砂をまぶして隠している」部分です。

そこをロングボールでアンデルソンや清武を走らせようともしましたし、黒木や片山の両SBが高い位置を取り、侵入することも狙っていました。しかしサイドは逆に岡山の両WBの速さに翻弄された。そのベースになっていたのは、岡山の組織的な守備、球際の強さ、攻守切り替えの早さ。それこそ本来熊本がやりたかったサッカーでした。

今季初先発となったアンデルソンには、3人掛かりで奪いに来る。奪ったらワンタッチパスで素早くバイタルを脅かす。ボランチの矢島が、前線の豊川目掛けて幾度もボールを出す。いずれもリオオリンピック代表を目指す選手同士のホットラインのように。

24分、またしても先制点を奪われてしまいます。熊本の右サイド。黒木が喰いついたところを交わされると、三村がそのスペースからゴール前を横切るようなグラウンダーのクロス。ファーには対角の田中が待ち構え、左足で巻くようにゴール左上隅に流し込む。前節町田戦の1点目のような崩され方でした。

「相手をこわがっている部分がある。負けてたら試合にならない」。ハーフタイム、指揮官はそう言って選手を鼓舞しました。

その言葉が効いたのか、雨の強まった後半、最終ラインからのロングフィードのこぼれたところを嶋田がPアーク前からシュート。これは岡山GK中林が横っ飛びでクリア。そのCKからの流れ。左サイドからの嶋田のクロスにアンデルソンのスライディングシュートは、惜しくも枠の上。

そんな熊本の勢いからの得点でした。51分、岡山の執拗な攻撃を守り切ると、自陣から縦に展開。アンデルソンが落として清武につなぐと、清武が猛スピードで持ち上がりクロスを入れる。ゴール前のDFが一度は触るものの、上がっていたアンデルソンがそれを奪って流し込んだ。同点!

復帰後初得点者はアンジー。FW2人で作った攻撃と得点と言ってもいい位のシーンでした。

しかし、喜びもつかの間でした。岡山の左右に振った波状攻撃。中盤も含めてボックス内で跳ね返していましたが、シュート体制に入った田中を、その殊勲のアンデルソンが後ろから倒してPKを与えてしまう。

キッカーは矢島。落ち着いて決めます。

熊本はこの失点の前から岡本を入れていましたが、失点後はテヨンを最終ラインに下げて3-4-3に。岡山の両WBに片山、黒木を対峙させます。そして前線には巻。最後は平繁も投入しますが、熊本の入れるクロス攻撃に岡山のゴール前は厚く、跳ね返され続けると、敗戦の笛を聞きました。

試合後、主審の横に整列した熊本の選手たちの誰もが、苦虫を噛み潰したような表情に見えたのは、“自分たちのサッカーが出来なかった”という悔しさではなかったでしょうか。「もっとやれるだろ!」というゴール裏の叱咤を、顔を上げて聞いている。選手たち自身が当然そう思っているのだろう…。

ただしかし、相手を上回れない。そういう“現実”と選手たちは立ち向かっているのだと思います。

ハーフタイムで清川監督が選手たちに指示したことで、あとの二つの言葉も気になります。「ボールを奪った後、あわてずにプレーしよう。反応は早く。」「1人で頑張るのはきついが、全体で頑張ればやれる」。いずれもメンタルに訴えている。

前節、自陣のゴール前の高いボール処理に躊躇してバウンドさせたように、水戸戦では消極的な横パスやバックパスに終始したように、あるいは今節全員が球際に強くいけなかったように。選手たちは「サッカーが出来る喜び」を感じつつも、「被災地に早く勝利を届けたい」という思いが強すぎて、しかし相手を上回るほどのコンディションや連携には届かないもどかしさのなかで、ボールを大事にしたいというネガティブさと、縦に急ぎたいというポジティブさに混乱してはいないだろうか。

冒頭書いた「メンタルコンディションが“調整”されていないのでは?」というのはそういう意味です。震災を挟んで、フィジカルコンディションの復活ばかりに目が行きがちでしたが、思えばこの震災で選手たちは得体のしれない重いものを抱え込んだわけで。この試合前に敵将・長澤監督が「熊本は、今一番、おそらくJ2だけでなくJ1のどのチームよりも戦う気持ちが強いはず」(スカパー)と言っていたように。

その震災後の難しいメンタルコンディションについて、ちょっとわれわれも含めて甘くみていたのではないかと。“調整”というより“整理”、場合によっては選手ひとり一人にカウンセリングやセラピーといった対処が必要なのかもという気さえします。

「これが今の現実だと思うので、受け入れてやっていかなければいけないと思う」。巻は試合後そうコメントしました。ただし「得点と勝点、勝利が欲しかったが、1ゴールを取れたことは前に進めたのかなと思う」とも。

そう、勝てはしなかったけれど、震災後初ゴールを決められたことは、半歩は前進できたということでないか。そう捉えて、一歩、二歩と前に進みたい。戦っていきたいと思います。

なんといっても次節は“隣町”鳥栖のベアスタを使用させていただいてホーム戦が開けます。この距離感は大きい。平日ではありますが、多くのファンがゴール裏から後押ししてくれることを期待したいと思います。

【J2第42節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)岡山
<得点者>
[熊]齊藤和樹(72分)
[岡]岩政大樹(86分)
<警告>
[熊]黒木晃平(14分)、上村周平(50分)、清武功暉(88分)
[岡]渡邊一仁(90分+1)
観衆:8,193人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、小曽根潮


試合が終わって、「なんだか今シーズンを象徴するような結果だったなぁ」という感想を持ったのですが、全く同じことを井芹さんが先に書いていました(笑)(九州J-PARK)。先制点を奪ったものの追加点が奪えないままで追いつかれる。1得点ではやはり勝ちきれない。ダニエルが移籍以降、1試合平均失点が1点以下になったとはいえ、勝ちきるためにはやはり1得点では辛いのです。

20151123岡山

ボランチに中山と上村というコンビも初なら、齊藤がスタメンにいないのも、累積警告での欠場以外、初めてのことではなかったでしょうか。
「齊藤が良くないということではなくて、90分の中での流れが必要になるかなと。あるいはそういうことを考えられるだけ、誰を先発で出しても全く遜色ない、そういうレベルにあったというのが1つです」。その意図を、小野監督はそう説明しました。そしてその点では策がうまくはまった。

序盤から攻勢があったのは岡山の方でした。熊本を上回る早い寄せ。セットプレーのチャンスを作る。しかし、熊本もセカンドボールを回収し、組織的なプレスでボールを奪い、少しずつ少しずつ挽回していく。

23分頃には岡山のFKをクリアしてカウンターに。黒木がキーパーの位置を見てロングシュートを放つも枠の左。31分頃には再び岡山のセットプレーからカウンターに転じ、清武が運んで最後は右から走ってきた嶋田に。しかしトラップが大きくてDFに入られる。

一番惜しかったのは38分、黒木からのパスに嶋田がダイレクトでシュートは相手GKが弾きますが、そこを拾った清武がシュート。これがポストに嫌われる。思わず腰を浮かせ、そしてガックリ座りなおしたシーンでした。

スコアレスで迎えた後半。知将同士のベンチワークの戦いにもなりました。「主導権を取るために」(長澤監督)、早めに岡本を入れてきた岡山。それに対して平繁を用意している熊本でしたが、岡山のCKのチャンスに交代をストップ。

それに対して72分、今度は自分たちのCKのチャンス。直前に中山に代えて齋藤を入れる。「熊本さんのセットプレーは十分に注意していたんですけど、交代選手のところのマーキングでズレがあった」と長澤監督が言うとおり、清武の蹴ったボールは、ポッカリとフリーになったど真ん中の齋藤が頭で捉えてゴールに突き刺しました。交代で入ったばかりの齋藤のファーストタッチでした。

残り10分。嶋田に代えて、それまではリスクを犯していたとも言えるボランチのところに藏川を入れた(中山が下がったあとは清武が務めていた)。この交代がイレブンに「1点を守りきるぞ」と伝わったに違いない。そうやって試合をクローズしようとした熊本。

それに対して岡山が黄と渡邊の2枚替えで、ゲームをオープンな展開に引きずり戻した。コンフュージョン(混乱)をもたらすかのように。

84分、FKからの流れでしたから、まだ岡山のDFが前線に残っていました。サイドスローから入れて竹田がドリブルでエリア内に侵入。このケアに遅れたのが痛かった。中央へのパス。ゴール前の岩政がヒールで流し込みます。

無情な同点弾。ため息のスタジアム。

さらにそのあとも岡山の強烈なミドルシュートをダニエルが弾いて止める。がら空きのゴールに、ボールを回されシュート。これはゴールマウスに立ちはだかった黒木が右足で間一髪クリアする。絶体絶命のピンチでした。

逆にアディショナルタイム。カウンターから左サイドの藏川が持ち込む。右から走って来ていたのは齋藤だったでしょうか、それともアンデルソンだったでしょうか。しかし、PAに入るか否か、藏川はシュートを選び、それはGK正面に収まり万事休す。終了のホイッスルが鳴りました。

「最後はお互いにカオスの状態になって」「見ていた人はすごくおもしろいゲームだったと思います」と言ったのは長澤監督でした。熊本としても「選手達は死力を尽くして出し切ってくれた」(小野監督)と言うとおりの熱戦でした。

ただ、しかし。冒頭の感想のとおり、それでも勝ちきれないその薄皮一枚のような部分、それがこのシーズン最後まで付きまとった課題ではなかったかと。順位も近かった岡山との戦いだったからこそ、そう思った最終節でした。

終わってみれば13勝15敗14引き分け。順位はひとつ上げて13位で終了。それは昨季と同じ順位でした。今シーズンの総括は、改めて別のエントリーでさせていただくとして。とりあえずは最終戦の感想でした。皆さん今シーズンもお疲れさまでした。




さあ、そろそろこのエントリーをアップしようかと思っていたちょうどそのときでした。小野監督退任のニュースが…。

「…クラブからは来シーズン続投のオファーをいただきましたが、自分の中では1年1年強い覚悟をもってやっているなかで、J1昇格・プレーオフ出場という目標を達成できなかったことに対して、けじめをつけることを決めました。…2年間、本当にありがとうございました」
監督らしい、はっきりとした、潔い退任の弁でした。

九州の二部リーグチーム。なかなか思うような戦力や環境が整わないなかでの戦いは苦しいことのほうが多かったのではないでしょうか。しかし、日本サッカー界きっての智将を迎えたこの二年、われわれにとって、現代サッカーの水準を示してくれるような基本戦術がひとつひとつ組み立てられ、完成度を増していくプロセスを目の当たりにして、サッカーの面白さ、奥の深さを改めて噛み締める至福の時間でもありました。

小野監督。こちらこそ、ありがとうございました。

【J2第8節】(Cスタ)
岡山 3-0(前半1-0)熊本
<得点者>
[岡]伊藤大介(30分)、矢島慎也(67分)、押谷祐樹(70分)
<警告>
[熊]クォン・ハンジン(67分)、上村周平(90分+1)
観衆:7,060人
主審:上村篤史
副審:村田裕介、勝又弘樹


前線からのハイプレスで知られるチームとなったわが熊本。それを研究した対戦相手はこれまで、早めにロングボールを前線に放り込むという戦法で熊本に対してきました。今季初めて黒星を喫した相手、福岡などは特に、それまでの戦術を完全に捨ててまでそれを徹底してきた。

しかし、今日の岡山は、そもそも自分たちこそがハイプレスのチーム。それが熊本相手にどう戦うのか。「前節、横浜さんが少し、しっかりとスペースを閉めて戦うやり方をした」(そして勝利した)。新任監督・長澤氏は、しかし自分たちは「やりあう」(九州J-PARK)。そう決意しました。

20150419岡山

試合前、スカパー放送から、「ボール支配率が50%以上で高く、しかしシュート数はリーグ20位」という熊本のデータが示される。それはまさしく、最終ラインでのパス回しに終始し、なかなか攻撃のスウィッチが入れられなかった前節の展開を裏付けるデータでした。ボール支配率が相手より高いのは自分たちのゲームではない。ハイプレス、カウンタープレスを掲げるチーム特有の数字です。

「ギアを上げたときに、攻撃をやり切る」。この一週間それをテーマに練習をしてきたという小野監督のコメントが紹介される。確かに試合序盤、前線から激しく行く熊本が、前節とは比べようがないほど、積極的に攻勢を得て押し込みます。21分には、左からのショートコーナーからパス交換し、嶋田がゴールを横切るグラウンダーのパス。ファーの平繁が反転して切り返してシュート。これは枠の左。実に惜しい!

しかし、岡山の好調さにも理由がありました。今季補強に成功した元日本代表のCB岩政が中央で大きな壁になる。同じく加地がサイドを崩す。そのほかにも前線にはテクニックも併せ持つ押谷、スピードの染谷など、経験豊かで個性のある選手が揃っています。

「熊本がプレスを掛ける。ここが岡山の分かれ道。これをかいくぐることができるかというところ」。スカパー実況の解説者がそう言う。実によく分かっている。

熊本が岡山陣内に4、5人入って組織的にプレスを掛ける。「すごいな」と感心していたときでした、大きくサイドチェンジを繰り返されると、戻れない、スライドできない。左サイドを上がってきた加地が全くのフリーで柔らかくクロスを上げると、これまた居場所を見つけるように入り直した伊藤が全くのフリーでヘッドで叩き込みます。

攻勢のなかでの失点。これが選手たちに、前節を思い起こさせ、”硬く”させてしまいました。

「ミスが怖くなって消極的になる部分があって。気持ちではそういうのはなくても、ちょっとそういうところが出ていたのかなと感じます。安全な方を選んで、逆にそれがカウンターの起点になったり、細かいミスも多かった」。途中出場になった巻は、ベンチでそう見ていました。

先制した岡山のカウンター攻撃はますます鋭くなり、熊本の攻撃への切り替えはそれに比べて明らかに遅い。

後半67分。岡山のFKをクリア。混戦から染谷ががむしゃらに撃つ。DFに当たったこぼれ球に、途中交代で入った矢島が飛び出し追加点。
続く70分には、ハーフウェイライン右から矢島が入れたロングボール。GK金井が出るが触れず、交わした押谷がワントラップして確実にゴールに押し込む。3点目。

このあと。熊本イレブンが円陣を組むように集まって、何かを話し合ったのは、素晴らしかったと思います。昨年を思い出す。もう一度ひとつになる。

しかし、その後平繁→中山、片山→上原の2枚替えや、嶋田に代えて巻を投入するも反撃はままならず。アディッショナルタイム、高柳のロングシュートは枠内を捉えていましたがGKにクリアされ、上村がスルーパスに裏を取ってPA内で撃ったシュートもポストに嫌われて万事休す。敗戦のホイッスルを聞きました。

岩政や加地を加えた岡山は、想像以上に強かった。これが対戦時リーグ順位6位(対戦後5位)の実力なのでしょう。熊本のハイプレスに、「やりあう」とした岡山の決意の裏には、これまでのJ1経験チームとの6連戦を、2勝3分1敗で勝ち越したという結果の自信、そしてさらにチームの力を積み重ねようという意思がありました。

熊本には辛い敗戦となりました。これで3連敗という現実。テレビ画面には、タオルマフラーで涙を拭う、何人もの女性サポーターの姿が映し出されました。

前節の反省・課題から攻撃のスウィッチの入れどころ、小気味よくワンタッチで繋いで崩していくところには成長が見られました。しかし、小野監督が言うように「ボックス近辺になったところでの精度」に課題を残す。そして「相手の出足の方がラストパスの精度より上回った」。そう言うとおりです。

サッカーコラムJ3Plusさんは、日ごろから熊本の試合もよく観てくれている人ですが、最近の熊本の状況、なかなか勝てない理由をこう書いています。「ボールを大事にする意識が高まってポゼッション率などは上がってきているが、その分、相手チームから見ると『戦いやすい相手』になってしまっている」。「やろうとしているサッカーの質がもう1ランクか2ランク上がって洗練されたサッカーになった場合か、もしくは1ランクか2ランク下の慌ただしいサッカーになった方が勝ち点にはつながりやすいように思う。今の成長段階がちょうど『もっとも勝ち点を得にくい。』と言えると思う」と。

ここが分かれ目。

「熊本はまだ”発展途上”というしかない。」前節のエントリーでわれわれはそう書きました。今節の試合後、「今後何か変えて行くところというのがあるのか、それとも今の形で進めていくのか」と記者に問われた指揮官は、「変えてくところというのは、絶えずどんな試合でも高めていく。今日の試合と次の試合とで同じというのはあり得ないと思うので、さらに高めなければいけないところ、それを続けるのは勝ったとしても負けたとしても同じことだ」。そう応えました。

指揮官にブレはありませんでした。ランク(程度)を下げて勝ち点を取りにいくよりも、目指すところにランクを上げることを迷いはない。われわれファンにも、しばらく辛抱の時期が続く。そう覚悟しました。

2014.11.17 五分。岡山戦
1月15日(土) 2014 J2リーグ戦 第41節
岡山 1 - 1 熊本 (14:04/カンスタ/8,290人)
得点者:68' 押谷祐樹(岡山)、89' 澤田崇(熊本)


モチベーション…。ということを考えていました。

今節開始前の、あくまで計算上ではありますが、プレーオフ圏6位以内の可能性を残していた岡山。それに対して前節、ホーム最終戦を勝利で終え、次節のシーズン最終戦を控えたこの岡山とのアウェイゲームの熊本。われわれファンの側も何とも気持ちの持っていきどころが頼りないシーズン最終盤。選手たちを突き動かすのはいったい何なんだろうと。

試合前日14日の熊日朝刊のプレビューにはこうありました。
「小野監督は『選手たちはトレーニングからフルパワーでやってくれている。今週の紅白戦も気持ちの入った、ものすごい内容だった』と充実ぶりにうなずく。」
「FW斉藤和樹は『岡山はすごい気迫で臨むだろう。だが、自分たちが上回らなければいけない。攻守でハードワークに徹し、ペースを握りたい』と気持ちを高める。」

20141115岡山

ひとたびピッチに出れば、これが闘う本能というのか…。序盤の岡山ペースから主導権を取り戻すと、次々にサイドを破り、ゴールに迫る。

しかし、流れは熊本にある、と思って見ていた前半37分。早々と仲間隼斗→澤田崇の交代カードを切る小野監督。われわれの目には、仲間のプレーも悪くないし、ゲーム自体もコントロールしているように“見えた”んですが。何故?

その答えは試合後に明かされました。「彼(仲間)のプレースタイルと、ファジアーノのやろうとしているサッカーがマッチしてしまったので、それは仲間君に申し訳なかったんですけど、あれは私のミスです。そこから少し動きを作りくて、裏を取るところ、プレッシャーをかけるところを指示して、澤田選手を投入しました」(小野監督)。

代わって入った澤田への指揮官の指示は、「相手の右SBが起点となるので、そこをやらせないように、という感じでした…」(澤田)。監督が自らの選手起用を“ミス”ということばで表現するのは異例でしょう。それも前半37分。ハーフタイムを待つという“緩い”選択肢もあっただろうに。しかし小野監督にとっては、もっとやれる、あるいはこのままではやられる。そんなギリギリの判断を巡らしていたということ。

結果、さらに熊本の勢いは増し、岡山を圧倒。解説者も訝ったこのカード。その意図を大盤解説して欲しいような戦術的交代だったと思うと同時に、その打たれた一手には自らの采配に一点の妥協も許さない小野監督の気迫すら感じられて。モチベーションなどと結び付けて考えていたこと自体、申し訳ない気がしてきました。

しかし、先制したのは岡山。後半26分。ロングスローのどさくさに紛れた、いかにもありがちな失点でした。主導権を握っていてもえてしてやられてしまうのはこんなパターン。エリア内のあんなところでボールが止まってしまうなんて、危険きわまりないもの。逆に言えば、このロングスローというものがそういう性質をもっているということ。スピードがない分、ああいう状況が生まれやすい。攻めるも守るもさらに研究、強化が必要だなと痛感しました。

さあ、相手ホームの最終戦。岡山にとっては“懸ったゲーム”。真紅に染まったスタジアムが沸き返る。失点をきっかけに一気に流れがいってしまうのはこれまたありがち。

しかし、今の熊本。あの時間帯で先制されても落ち着いている。落ち着く術を知っているというべきか。前節、同点に追いつかれた直後、リセットするべくピッチ上で選手たちが円陣に集まった光景が浮かんできます。

「残り20分あったので、まだ全然いける…」(澤田)
「うまく切り替えてやれた…」(篠原)

残り20分。攻め急ぎたい気持ちを抑え、バランスを崩さないように、しっかりと相手の勢いを切りながら、徐々にペースを上げていく熊本。後半33分には養父雄仁→巻誠一郎。そして後半40分あたりから、一気に…。そのスイッチの入り方はまるでひとつの生き物のように感じるほど。

熊本はアンデルソン、巻のツートップへのパワープレーを軸に。岡山は交代カードで3ボランチ、5バックで守りきろうと必死に跳ね返す。しかしこの終盤に至っても、熊本の鋭い出足は全く衰えず、フィフティフィフティか相手有利のボールも、体を当てながらことごとく拾う。置かれた状況や、時間帯も含めて、今シーズンのなかでも出色のプレーが繋がっていった5分間。(何度も何度もビデオを見返すほど。)

後半44分。そんな球際のせめぎあいから一瞬先に触った園田が得たFK。岡山・景山監督が「あの時間帯にあのボールを蹴って来るんだなあという思いがあります」とコメントした中山のキックは低く美しい軌道を描いてDFラインとGKの間へ。この日何度も外した澤田が、相手DFを置き去りにして頭で決める。

アディショナルタイムも4分。引き分けでいいとは誰も思っていない。勝ちに行くことだけしか見えていないような集中。

試合後「両チームプレーオフに進出できなかったが、それを表すようなゲームだった。」とまとめる解説者。勝ちきれない岡山、決めきれない熊本。ということなんでしょうが…。

まあ岡山のことはよくわかりません。ただ、熊本が主導権をとりながら決めきれないのは事実ですが、恐らくはその部分に目が行きがちだということでしょう。しかし、シーズン終盤時点での印象は、やられても押し返す。流れを変える、主導権を取り戻すことのできるチームになってきたということ。

終盤の同点弾、引き分けの結果にがっくりと膝をつく岡山の選手たち。そして岡山サポーター…。(結果的には、この試合での勝敗は関係なく他会場の結果で、その可能性はなくなってしまったのですが)。しかし、ホーム最終戦まで目標を持ち続けられたことは羨ましいし、岡山にとってはまた輝かしい、記憶に残るシーズンだったことでしょう。

シーズン前半戦はスコアレスドロー。そしてこの試合の結果からも言えるように、岡山とは五分(ごぶ)。かつてはミラーゲームとも称された相手。その昇格PO参戦の可能性を、われわれが自力で阻止したわけではありませんが、少しばかりは“壁”として立ちはだかったのかもしれません。あとから来て一気にJ1に駆け上がった松本への嫉妬に似た気持ち。この岡山にも「先を越されてなるものか」、そういう思いが沸々と湧いて。それは、あの地獄のような地域リーグ決勝を戦ったカンスタの地が、今はホームチーム・ファジアーノのために真っ赤に染まっている様を見たせいかも知れませんが。

負けられない…。ちょっと考えてみれば当然のことですが、選手や監督はプロとして最後まで闘うこと、いい仕事をすることがその存在意義なんでしょう。しかしわれわれ一ファンは、こんな実に器の小さい、狭量な対抗心や、勝手なライバル意識。そんなところにモチベーションを見出しているんだなと、改めて気づかされました。でも、まあ、それもまたいいじゃないですか。

いよいよ来週は福岡との最終戦アウェイ。昨シーズンは降格圏に沈み、そこからの脱出にもがき、それがシーズンの焦点になった(なってしまった)。去年のこの時点では、まだやっと終わった安堵感がすべてだったように記憶しています。しかし今は、最終戦へと同時に、われわれでさえすでに来シーズンに気持ちが向いているんじゃないかと。この時期にいささか不謹慎ではありますが、「来シーズンもぜひこの体制での積み上げを見てみたいなあ…」。今日の結果はドローでしたが、その戦いぶりに興奮させられ、ちょっと独り言を呟きたくなりました。