8月27日(日)
【J2第30節】(えがおS)
熊本 0-1(前半0-1)岡山
<得点者>
[岡]オルシーニ(45分+1)
<警告>
[熊]木村祐志(38分)、植田龍仁朗(73分)、安柄俊(83分)、モルベッキ(90分+4)
[岡]オルシーニ(69分)
観衆:4,517人
主審:窪田陽輔


前節のエントリーでは、勝ち負けや点差の結果だけでは内容は計り知れない。という意味のことを書きましたが、今節翌日の熊日は「スコアは0-1。しかし、それ以上に力の差を見せつけられた」と書き出してありました。惜敗、とも見えるような点差ですが、この岡山戦の評価については、全くの同感でした。

次節の町田戦も見据え、『ここで2つ(連勝)取れるとだいぶ状況が変わって、目標値をクリアできればおのずと次も見えてくる』(熊本蹴球通信)と戦前、指揮官も意気込んで臨んだ試合でした。練習でも、相手のスカウティングの上、「守備陣はロングボール対応とセカンドボール回収、そしてそこからの切り替えにフォーカスしたメニューに取り組んで」いました(同)。井芹さんも、「入りから流れを引き寄せる」ことを課題として、見出しを付けられました。しかし…。

20170827岡山

開始早々、先手を取ったのは岡山でした。選手入場から整列した段階から「でかいな」と思っていたのですが、故障しているらしい赤嶺に代わって前線を張るFW・オルシーニを目がけたロングボールが収まり、DFラインを押し下げる。シャドーの豊川の出来はいまいちにも見えましたが、それでも変幻自在な動きは、捕まえきれないことこのうえない。

『攻撃のところはイージーなミスがかなり多かった』(熊本蹴球通信)と池谷監督は試合後の会見で述べていますが、これは岡山が周到なスカウティングから戦術を徹底し、“はめて”きたせいも大きいかと。『試合を通じてボールの失い方が良くなかった』(熊日・監督談話)とも言うように、ボランチの二人に前を向かせず、サイドに逃げるとそこからの長いグラウンダーパスもことごく奪われ、鋭いカウンターを食らいます。

もちろん岡山の各選手のポジショニングも、ボールへの出足も良かった。球際も強かった。熊本の選手たちは、出しどころが見つからずミスを犯していったかという印象。それに加えると、プレスをかいくぐるようなワンタッチパスのテンポも出ませんでした。終始、ツータッチで出しどころを探していました。

前半は全くと言っていいほど攻撃の形が作れず。連続したCKも耐え続け、後半巻き返しを、と思った前半も終了間際でした。スローインを貰った喜山がドリブルで中に運ぶとオルシーニにパス。オルシーニは貰ってターンするとDFラインの前ですかさず足を振った。これがゴール左隅に突き刺さりました。痛い失点。

後半も開始から岡山の攻勢。モルベッキが出てからすぐ、大きなサイドチェンジパスに片山が左サイドえぐってクロスを入れるチャンスシーンが2度ほど見られましたが、あとはまた岡山に対処されていきます。

小谷を下げてグスタボを入れ、システムも4-3-3にしたあたりから勢いも出てきましたが、遅きに失しました。指揮官も「もう少し早く動いても良かったかなとは思います」(熊本蹴球通信)と言う。

上里の出場停止もあって、先日加入したばかりの木村がシャドーで初先発を図りましたが、彼が活きるようなシーン、展開はなく、残念な熊本デビュー戦となりました。今季出場回数が減り、試合勘がまだ取り戻せていないのかも知れません。

前日に讃岐が5連勝を飾り、一気に抜かれていたので、今日はどうしても勝って抜き返さなければいけない試合でしたが、落としてしまいました。20位に転落。熊日が書くように「残留争い抜け出せず」。

それより何より、今季のワーストゲームと言いたくなる内容でした。

直近4試合、勝利がなかった岡山は、この勝ち点3で9位に上昇。まだまだPO圏内への望みを残しました。その長澤監督の、『(リーグ戦は)最終コーナーを回った』(熊日)という試合後のコメントが、同じく4試合勝利無しになったわれわれに、重くのしかかるように感じられます。

3月5日(日)
【J2第2節】(Cスタ)
岡山 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[岡]豊川雄太(47分)
[熊]小谷祐喜(90分+2)
<警告>
[熊]村上巧(66分)
観衆:10,286人
主審:上村篤史


劇的な引き分けでした。と書こうと思っていたら、熊日も同じような見出しでしたね(笑)。

第2節はアウェー岡山戦。「何とか勝ち点を、欲を言えば3を取って帰りたい」と言う、わが清川監督(DAZN)。確かに難敵・岡山相手とはいえ、ちょっと消極的かなと。だが、前節のデビュー戦でわれわれにも、他チームにも強烈な印象を残したFW安の姿が、スタメンにもサブにもない。怪我なのでしょうか。代わりに前線に入ったのは俊足ドリブラーの田中。高めの岡山のDFラインの裏のスペースを突く戦術でしょうか。

一方「我々のベストを引き出せるかが(この試合の)ポイント」(同)と敵将・長澤監督は冷静に語ります。しかし、開幕戦で名古屋に敗れ、黒星スタートとなった岡山。ホーム開幕戦となったこの試合に掛ける思いの強さは言うまでもない。開始早々から厳しい球際と寄せ、数的優位のボール奪取で迫ってくる。

20170305岡山

岡山のプレスをなかなか剥がすことができない。奪って運ぼうとしても縦パスがカットされる。徐々に出し手と受け手の意図もずれ、ミスも増えます。

長澤監督のスカウティングだったのでしょう。ボールサイドに寄ってコンパクトに守備をする熊本の大外へ、大きなサイドチェンジのパスを通す。21分、スローインからのアーリークロスを豊川がダイレクトシュート。これはGK佐藤がセーブします。

33分には前線の3人で運んで大竹がシュートモーションからパスを選択。PA内の藤本に通ればというところでしたが、園田が潰して難を逃れます。

一方的に攻め込まれる展開。しかし凌いでいる。試合前、「前節(開幕戦で)勝利しているというアドバンテージを、いいメンタリティに利用したい」と言ったのはGK佐藤(DAZN)。たしかにその“気持ちの差”が猛攻にも冷静に対処させたのか、スコアレスで前半を終えます。

前半を終えたあと、それと後半の笛の前、両チームの監督にベンチ前でインタビューする。まるでNHK中継のようでもあるのが、DAZNになってからの特徴でしたが、前半を終えた長澤監督は、この展開を当初の予定どおりだと言いながら、「後半の頭のところと、最後のところに勝負どころが来ると思うので、しっかりとマネジメントしたい」と言っています。全くのところ、この後の試合展開を”読んで”いました。

後半開始早々。まず最初の岡山の右サイドからの攻撃。伊藤のクロスは不発に終わりましたが、右奥へ再び運ぶ。今度は加地が追い越してえぐると、右足でフワリと上げた。ニアでジャンプした藤本。後ろで飛んだ小谷もかぶって、更にその後ろにいた豊川の頭に。ゴールマウスに突き刺します。文字通り”シャドー”の働き。後半開始早々から圧をかけて、岡山が均衡を破ります。

その後も岡山の攻勢。左サイドからのクロスに中には豊川が構えていましたが、その前で佐藤が止める。間一髪。ただ、この勢いを止めない岡山の攻勢に対して、気落ちせず、追加点を許さなかったことが、この試合展開のなかで、非常に大きかったと思います。

平繁に代えて巻を入れると、熊本の”重心”が少し前に移動したように感じました。更に岡本に代えて八久保が入ると、巻との2トップ。田中が2列目に。八久保の運動量とスピードで岡山を次第に押し込む。岡山も、豊川を下げて三村を入れ、対抗する。

予兆は80分のシーンにあったかも知れません。CBの小谷が右サイド高いところにいてDFからボールを奪うとエリアに侵入。GK櫛引との1対1でしたが、シュートは阻まれる。

しかし…。なんでそこに小谷がいたのか?

熊本が持つ時間が長くなると、長澤監督のイレブンへの「落ち着け、落ち着け」という指示のポーズ。けれどDAZNの解説者も、「この熊本の”やり方”なら、残り何秒かで得点もある」と言う。

まさしくその言葉を信じたいアディッショナルタイム3分も終わりに近づくころでした。片山からの、かなりアーリーなクロス。山なりのボールを放り込みます。ゴール前に”誰か”が飛び込めば…。ゴールマウスから飛び出した櫛引より先に頭に当てた。ボールがゴールに転がり込みます。同点!そして終了の笛が鳴る。やった!

その瞬間、勝利を確信してチャントを歌っていた1万人の岡山サポーターが静まり返る。

殊勲の同点弾を押し込んだのはなんとCBの小谷でした。それも、パワープレーを命じられて上がっていたわけではない。DAZNで見返してみると、その瞬間、流れのなかで右サイドを猛烈なスピードで上がって行っている。「残り時間も少ない。自分の判断で攻めあがった」(熊日)のだという。その”ステルス”な動きがあって、巻に集中していた岡山のDFの裏をかいて、完全にフリーになれた小谷が櫛引と競い合ったのでした。

「失点は悔しかった。最後に取り返せて良かった」と小谷が言う(熊日)。自責の念が、彼にあの終盤、右サイドを駆け上げさせたのでしょう。劇的とも言える同点弾を押し込み、それによって、岡山は目前にあった勝ち点3がするりと手の中からすべり落ち、勝ち点1に留まると同時に、手にしたのは大きな心理的ダメージでした。指揮官が「(後半の)最後のところに勝負どころが来る」と、言ったとおりになりました。

熊本は勝ち点1を加え、4位に位置しました。が、それよりなにより、劣勢のなかで勝ち点1を得られたことが大きい。いや、開幕戦も完勝とはいえないなかでの勝ち点3。そしてこの圧倒的に劣勢な試合での勝ち点1。課題が多いなかで、しぶとく積み上げたこの4点は、かなり価値のあるものだと思います。

開幕前の状況を思えば、シーズンのスタートとしては、なかなかです。次節は同順位の山形戦。ホームえがおスタに集結して、絶対勝たせましょう。

9月18日(日)
【J2第32節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)岡山
<警告>
[熊]上原拓郎(74分)
[岡]篠原弘次郎(45分+1)
観衆:4,404人
主審:大坪博和


「だから我々も謙虚に、熊本相手に1をしっかり取ったということで。次ホームに帰って、よりアグレッシブに進んでいけるように準備したいと思います」(熊本蹴球通信)。敵将・長澤監督は、ドローに終わったこの試合後のインタビューで、最後そう結びました。

「このゲームに入るにあたって、熊本が連戦を終えて、気力十分に来るよと。要は、開幕でスタートダッシュした時の状態で必ず来るはずだという入りをしました。本当に熊本は大変ななかをくぐり抜けてきたチームでスピリットは十分なので、そういう意味では本当にタフなゲームになると。だから、順位とかお互いの持っている背景とか、ほぼ関係ないということでゲームに入りました」(長澤監督)と言う。さすがのチームマネジメントでした。

リーグ4位の岡山は勝ち点56。「リーグ4位の44得点という強力な攻撃、同時にリーグ5番目の失点の少なさを誇る守備と、攻守にバランスが取れたチーム」(熊本蹴球通信)と井芹さんも書くように、前線にはガンバからレンタルの赤嶺がいて、熊本キラーの押谷がいて、中盤には五輪代表の矢島が控え、DFラインには元日本代表岩政、加地までいる。リーグ5連敗中の熊本。ホームのアドバンテージはあるとはいえ、強敵を迎えました。

20160918岡山

熊本は相手の3-4-3のシステムに対して、テヨンをアンカーに置いた4-1-4-1の布陣で対する。前節の愛媛の3バックに対しては、ほとんど練習でも試していなくて、「奏功したようには見えませんでした」と書いたわれわれは、今日も少なからず不安がありましたが、1週間という本来の準備期間に戻ったせいもあるのか、この試合ではその良さが発揮されましたね。

試合開始早々、岡山に与えたCKからゴール正面、岩政の高い打点のヘディングにヒヤリとさせられる。同じような場面は28分頃も。これは植田、小谷がきっちりと寄せて岩政も枠の上に飛ばさざるを得ない。それにしてもセットプレーは怖い。

4-1-4-1は、中盤の厚さを活かすシステム。この布陣だと、特に上村の良さが引き出されるような気がします。プレスもはまる。短いパスも回る。26分頃、清武が左にはたくと上原がダイレクトでクロスを入れる。ニアに飛び込んだ高柳でしたがDFのブロックに阻まれる。

前半終了間際には、清武がDF3人を相手に抜きさり、右サイドからグラウンダーのクロスを入れますが、ファーに届く前にGKが入ります。

「できるだけ下がらずに、できるだけ前で押し上げていこう」とハーフタイムで指示した清川監督。後半に特に得点力のある岡山を警戒します。

前半は神経戦のような様相でしたが、後半は一気にオープンなカウンター合戦に。スタジアムが沸く。嶋田が痛んで八久保に交代。岡山は押谷を下げて豊川を入れる。豊川も凱旋試合で気合十分。

ここからは両チーム守護神の意地のぶつかり合い。スーパーセーブの競演。

敵陣中央やや左で得たFKを清武が壁のむこうワンバウンドでゴールを狙うと、GK中林が横っ飛び、片手でクリア。今度は、岡山の右サイド奥からマイナスぎみのクロスに伊藤の右足アウトに掛けたシュートは佐藤がパンチングで逃れる。

決定的だったのは、矢島のパスがずれたところを逃さず奪った上村のスルーパスに清武が抜け出しゴールに迫った場面。しかし、追いかけたDFの右からスライディングでシュートコースを失い、GK中林のブロックに。高く上がったボールもキャッチされてチャンスを逸しました。ワンテンポ遅れる…。まだ本調子とは言えない。

終了間際にも、岡山のスローインを佐藤がパンチングクリアからのカウンター攻撃。巻が右を追い越した清武にパスすると八久保も追い越してきましたが自ら撃つ。しかしシュートは枠のわずかに上。

仕留められない。まさしくそんな感じ。終了の笛を聞いてピッチを叩く清武。

「前節や前々節も自分にチャンスがあって、必ず決めなければいけないなかで、(今日の決定的な場面で)シュートが遅れてしまい申し訳なかった。そこを決めないとチームも勝てないので、練習からまたしっかりやりたい」(公式)とは、清武の反省の弁。

ただ、「残りの試合が少なくなって、勝点を取らなければいけないので、今日の勝点1は大きいと思う」とも言う。

ゴール裏は、選手たちの奮闘に拍手を送り、翌日の熊日の見出しも「泥臭く 待望の勝ち点」とうたう。5連敗から脱し、ようやく手にした引き分け勝ち点1は、順位こそ18位と後退したものの、降格圏からの差を6から7(2試合分以上)にした貴重な1でもありました。そして同じく岡山も順位を下げたとはいえ、冒頭の長澤監督の言葉。「熊本相手に1をしっかり取った」と評価する。

痛み分け。

ようやく他のチームと同じように1週間のサイクルで戦えるようになった熊本。「必要としているトレーニングを入れることができた部分もある」と清川監督は言う。「この先また、1週間のサイクルでやれるので、もう1度いい状態で、ホームでの山形戦に備えたい」と。この試合の翌日も久しぶりに北九州とのTMが組めた。

そういう意味でも、強敵・岡山から得たこの勝ち点1は結構重みがありそうです。選手たちのメンタルにもいいように作用して、あの試合がターニングポイントだったと、シーズンが終わったあとに言えるように。次節・山形戦も気を引き締めて戦って欲しい。いい準備をして欲しいと思います。

【J2第16節】(Cスタ)
岡山 2-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[岡]田中奏一(24分)、矢島慎也(65分)
[熊]アンデルソン(51分)
<警告>
[岡]矢島慎也(59分)
観衆:7,308人
主審:清水修平
副審:伊東知哉、福岡靖人


なかなか勝てません。震災を挟んでついに6連敗。順位は暫定ながらも19位まで落ちてしまいました。

前節のエントリーで、わが熊本は「相手を圧倒する球際と、圧倒する切り替えと、圧倒する運動量があって初めて勝機が見いだせるんだ」と書きました。その点で言えば、今節のこの試合は、復帰直後の千葉戦は除くにしても、震災後一番の内容の悪さだったではなかったでしょうか。いやむしろ岡山が良すぎたのか。90分間ほぼ岡山に主導権を奪われた。そんななかでリーグ復帰後、ようやく初得点が生まれたことが、唯一の収穫と言えました。

ちょっと選手のメンタル面が気になっています。コンディションの面でいえば、ゲーム体力は戻ったように見える。しかし、メンタルのコンディションは、ちょっと戻っていないのかもと。いや、戻るというより、“調整”されていないかも知れないと。

清川監督は試合前、岡山のことを十分リスペクトしつつ、しかし「岡山のいいところをつぶしにかかるより、こちらが仕掛けることで先手を取りたい」(スカパー)と、ゲームプランを描いていましたが…。仕掛けて先手を取られたのは熊本の方でした。

20160604岡山

熊本の狙いは、岡山の3バックのサイドのスペースを使って揺さぶり、DFの間隔を空けることによって崩すということだったでしょう。岡山の特徴であり、弱点でもある部分。前監督の小野さんに言わせれば「砂をまぶして隠している」部分です。

そこをロングボールでアンデルソンや清武を走らせようともしましたし、黒木や片山の両SBが高い位置を取り、侵入することも狙っていました。しかしサイドは逆に岡山の両WBの速さに翻弄された。そのベースになっていたのは、岡山の組織的な守備、球際の強さ、攻守切り替えの早さ。それこそ本来熊本がやりたかったサッカーでした。

今季初先発となったアンデルソンには、3人掛かりで奪いに来る。奪ったらワンタッチパスで素早くバイタルを脅かす。ボランチの矢島が、前線の豊川目掛けて幾度もボールを出す。いずれもリオオリンピック代表を目指す選手同士のホットラインのように。

24分、またしても先制点を奪われてしまいます。熊本の右サイド。黒木が喰いついたところを交わされると、三村がそのスペースからゴール前を横切るようなグラウンダーのクロス。ファーには対角の田中が待ち構え、左足で巻くようにゴール左上隅に流し込む。前節町田戦の1点目のような崩され方でした。

「相手をこわがっている部分がある。負けてたら試合にならない」。ハーフタイム、指揮官はそう言って選手を鼓舞しました。

その言葉が効いたのか、雨の強まった後半、最終ラインからのロングフィードのこぼれたところを嶋田がPアーク前からシュート。これは岡山GK中林が横っ飛びでクリア。そのCKからの流れ。左サイドからの嶋田のクロスにアンデルソンのスライディングシュートは、惜しくも枠の上。

そんな熊本の勢いからの得点でした。51分、岡山の執拗な攻撃を守り切ると、自陣から縦に展開。アンデルソンが落として清武につなぐと、清武が猛スピードで持ち上がりクロスを入れる。ゴール前のDFが一度は触るものの、上がっていたアンデルソンがそれを奪って流し込んだ。同点!

復帰後初得点者はアンジー。FW2人で作った攻撃と得点と言ってもいい位のシーンでした。

しかし、喜びもつかの間でした。岡山の左右に振った波状攻撃。中盤も含めてボックス内で跳ね返していましたが、シュート体制に入った田中を、その殊勲のアンデルソンが後ろから倒してPKを与えてしまう。

キッカーは矢島。落ち着いて決めます。

熊本はこの失点の前から岡本を入れていましたが、失点後はテヨンを最終ラインに下げて3-4-3に。岡山の両WBに片山、黒木を対峙させます。そして前線には巻。最後は平繁も投入しますが、熊本の入れるクロス攻撃に岡山のゴール前は厚く、跳ね返され続けると、敗戦の笛を聞きました。

試合後、主審の横に整列した熊本の選手たちの誰もが、苦虫を噛み潰したような表情に見えたのは、“自分たちのサッカーが出来なかった”という悔しさではなかったでしょうか。「もっとやれるだろ!」というゴール裏の叱咤を、顔を上げて聞いている。選手たち自身が当然そう思っているのだろう…。

ただしかし、相手を上回れない。そういう“現実”と選手たちは立ち向かっているのだと思います。

ハーフタイムで清川監督が選手たちに指示したことで、あとの二つの言葉も気になります。「ボールを奪った後、あわてずにプレーしよう。反応は早く。」「1人で頑張るのはきついが、全体で頑張ればやれる」。いずれもメンタルに訴えている。

前節、自陣のゴール前の高いボール処理に躊躇してバウンドさせたように、水戸戦では消極的な横パスやバックパスに終始したように、あるいは今節全員が球際に強くいけなかったように。選手たちは「サッカーが出来る喜び」を感じつつも、「被災地に早く勝利を届けたい」という思いが強すぎて、しかし相手を上回るほどのコンディションや連携には届かないもどかしさのなかで、ボールを大事にしたいというネガティブさと、縦に急ぎたいというポジティブさに混乱してはいないだろうか。

冒頭書いた「メンタルコンディションが“調整”されていないのでは?」というのはそういう意味です。震災を挟んで、フィジカルコンディションの復活ばかりに目が行きがちでしたが、思えばこの震災で選手たちは得体のしれない重いものを抱え込んだわけで。この試合前に敵将・長澤監督が「熊本は、今一番、おそらくJ2だけでなくJ1のどのチームよりも戦う気持ちが強いはず」(スカパー)と言っていたように。

その震災後の難しいメンタルコンディションについて、ちょっとわれわれも含めて甘くみていたのではないかと。“調整”というより“整理”、場合によっては選手ひとり一人にカウンセリングやセラピーといった対処が必要なのかもという気さえします。

「これが今の現実だと思うので、受け入れてやっていかなければいけないと思う」。巻は試合後そうコメントしました。ただし「得点と勝点、勝利が欲しかったが、1ゴールを取れたことは前に進めたのかなと思う」とも。

そう、勝てはしなかったけれど、震災後初ゴールを決められたことは、半歩は前進できたということでないか。そう捉えて、一歩、二歩と前に進みたい。戦っていきたいと思います。

なんといっても次節は“隣町”鳥栖のベアスタを使用させていただいてホーム戦が開けます。この距離感は大きい。平日ではありますが、多くのファンがゴール裏から後押ししてくれることを期待したいと思います。

【J2第42節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)岡山
<得点者>
[熊]齊藤和樹(72分)
[岡]岩政大樹(86分)
<警告>
[熊]黒木晃平(14分)、上村周平(50分)、清武功暉(88分)
[岡]渡邊一仁(90分+1)
観衆:8,193人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、小曽根潮


試合が終わって、「なんだか今シーズンを象徴するような結果だったなぁ」という感想を持ったのですが、全く同じことを井芹さんが先に書いていました(笑)(九州J-PARK)。先制点を奪ったものの追加点が奪えないままで追いつかれる。1得点ではやはり勝ちきれない。ダニエルが移籍以降、1試合平均失点が1点以下になったとはいえ、勝ちきるためにはやはり1得点では辛いのです。

20151123岡山

ボランチに中山と上村というコンビも初なら、齊藤がスタメンにいないのも、累積警告での欠場以外、初めてのことではなかったでしょうか。
「齊藤が良くないということではなくて、90分の中での流れが必要になるかなと。あるいはそういうことを考えられるだけ、誰を先発で出しても全く遜色ない、そういうレベルにあったというのが1つです」。その意図を、小野監督はそう説明しました。そしてその点では策がうまくはまった。

序盤から攻勢があったのは岡山の方でした。熊本を上回る早い寄せ。セットプレーのチャンスを作る。しかし、熊本もセカンドボールを回収し、組織的なプレスでボールを奪い、少しずつ少しずつ挽回していく。

23分頃には岡山のFKをクリアしてカウンターに。黒木がキーパーの位置を見てロングシュートを放つも枠の左。31分頃には再び岡山のセットプレーからカウンターに転じ、清武が運んで最後は右から走ってきた嶋田に。しかしトラップが大きくてDFに入られる。

一番惜しかったのは38分、黒木からのパスに嶋田がダイレクトでシュートは相手GKが弾きますが、そこを拾った清武がシュート。これがポストに嫌われる。思わず腰を浮かせ、そしてガックリ座りなおしたシーンでした。

スコアレスで迎えた後半。知将同士のベンチワークの戦いにもなりました。「主導権を取るために」(長澤監督)、早めに岡本を入れてきた岡山。それに対して平繁を用意している熊本でしたが、岡山のCKのチャンスに交代をストップ。

それに対して72分、今度は自分たちのCKのチャンス。直前に中山に代えて齋藤を入れる。「熊本さんのセットプレーは十分に注意していたんですけど、交代選手のところのマーキングでズレがあった」と長澤監督が言うとおり、清武の蹴ったボールは、ポッカリとフリーになったど真ん中の齋藤が頭で捉えてゴールに突き刺しました。交代で入ったばかりの齋藤のファーストタッチでした。

残り10分。嶋田に代えて、それまではリスクを犯していたとも言えるボランチのところに藏川を入れた(中山が下がったあとは清武が務めていた)。この交代がイレブンに「1点を守りきるぞ」と伝わったに違いない。そうやって試合をクローズしようとした熊本。

それに対して岡山が黄と渡邊の2枚替えで、ゲームをオープンな展開に引きずり戻した。コンフュージョン(混乱)をもたらすかのように。

84分、FKからの流れでしたから、まだ岡山のDFが前線に残っていました。サイドスローから入れて竹田がドリブルでエリア内に侵入。このケアに遅れたのが痛かった。中央へのパス。ゴール前の岩政がヒールで流し込みます。

無情な同点弾。ため息のスタジアム。

さらにそのあとも岡山の強烈なミドルシュートをダニエルが弾いて止める。がら空きのゴールに、ボールを回されシュート。これはゴールマウスに立ちはだかった黒木が右足で間一髪クリアする。絶体絶命のピンチでした。

逆にアディショナルタイム。カウンターから左サイドの藏川が持ち込む。右から走って来ていたのは齋藤だったでしょうか、それともアンデルソンだったでしょうか。しかし、PAに入るか否か、藏川はシュートを選び、それはGK正面に収まり万事休す。終了のホイッスルが鳴りました。

「最後はお互いにカオスの状態になって」「見ていた人はすごくおもしろいゲームだったと思います」と言ったのは長澤監督でした。熊本としても「選手達は死力を尽くして出し切ってくれた」(小野監督)と言うとおりの熱戦でした。

ただ、しかし。冒頭の感想のとおり、それでも勝ちきれないその薄皮一枚のような部分、それがこのシーズン最後まで付きまとった課題ではなかったかと。順位も近かった岡山との戦いだったからこそ、そう思った最終節でした。

終わってみれば13勝15敗14引き分け。順位はひとつ上げて13位で終了。それは昨季と同じ順位でした。今シーズンの総括は、改めて別のエントリーでさせていただくとして。とりあえずは最終戦の感想でした。皆さん今シーズンもお疲れさまでした。




さあ、そろそろこのエントリーをアップしようかと思っていたちょうどそのときでした。小野監督退任のニュースが…。

「…クラブからは来シーズン続投のオファーをいただきましたが、自分の中では1年1年強い覚悟をもってやっているなかで、J1昇格・プレーオフ出場という目標を達成できなかったことに対して、けじめをつけることを決めました。…2年間、本当にありがとうございました」
監督らしい、はっきりとした、潔い退任の弁でした。

九州の二部リーグチーム。なかなか思うような戦力や環境が整わないなかでの戦いは苦しいことのほうが多かったのではないでしょうか。しかし、日本サッカー界きっての智将を迎えたこの二年、われわれにとって、現代サッカーの水準を示してくれるような基本戦術がひとつひとつ組み立てられ、完成度を増していくプロセスを目の当たりにして、サッカーの面白さ、奥の深さを改めて噛み締める至福の時間でもありました。

小野監督。こちらこそ、ありがとうございました。