8月11日(金)
【J2第27節】(味スタ)
東京V 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[東]ドウグラス・ヴィエイラ(89分)
<退場>
[熊]村上巧(11分)
<警告>
[東]田村直也(52分)
観衆:4,372人
主審:高山啓義


時間にしてアディッショナルタイムを入れてもあと4分守りきれれば・・・。この置かれた状況からすれば全く「良し」と言えた勝ち点1が、目前で手から滑り落ちました。

20170811東京V

前半10分頃のことでした。開始早々から勢いを持って仕掛けてくるヴェルディの攻撃を凌いで、ようやく落ち着いて、敵陣にも入れるようになっていた熊本。スローインから上村が受けて村上にバックパスをしようとすると、それが弱いと見るや、上村に猛然とプレスを掛けに行っていたヴェルディ・渡辺はきびすを返すようにそのままスピードを落とさずボールを奪った。ここで突破されればGKと1対1。CB村上は迷わずスライディング。そして渡辺を倒す。これには主審もレッドカードを選ぶしかありませんでした。決定機阻止で一発退場。

池谷監督も、「ボールを動かせるようになった分、落とし穴にはまったような感じ」と、そのシーンを振り返る(熊日)。

すぐさま黒木と片山の両WBを下げて4-4-1にするものの、アラン・ピニェイロ、カルロス・マルティネス、高木大輔の3トップを抑えるにはまだスペースがあり過ぎる。と見るや、指揮官は登録が済んだばかりでこの日初めて帯同させていたDFジュニオールを迷わず投入。これにはDAZN解説の柱谷氏も「早い決断」と評価する。

187センチの高さ。ジュニオールを最終ラインの真ん中に入れて5-3-1に。5と3の2列のブロックを敷く。3がバイタルを埋めチェックは出来ているがサイドまでは追えない。しかし中を厚くした分、クロスは撥ね返せる。

それでも一方的にボールを持たれて波状攻撃を受け続ける。それを粘り強く我慢して守り続ける熊本。ピンチの場面を書き連ねても仕方がないので、いちいち書きませんが、最後は今日も畑の攻守が救っている。

「DFがコースを切ってくれて対応しやすいシュートだった」と、好セーブを連発した畑は試合後謙遜しますが、後半ヴェルディのミドルシュートがDF植田の足に当たって角度を変えたボールへの片手一本の反応は、間違いなくビッグプレーと言えました。

52分には距離のあるFKをジュニオールが蹴る場面も。曲げて落としたボールでしたが、わずかに枠の左。しかしパンチ力のあるところも見せます。

71分には黒木のクロスが中央でクリアされるところに、ファーで片山がボレー。これも惜しくも枠の左。しかし、この終盤に来ても、ここぞという場面では両SBが上がっていく”勝利への執念”が熊本にもありました。

前回対戦で大敗して以来、調子を崩したのかリーグ戦で勝利のないヴェルディ。ひとり少ない熊本に対して猛攻を続けるものの、組織的に守られてゴールが割れない。時計は進み、もうすぐアディッショナルタイムも告げられる。そんな時間帯でした。

熊本のゴール前で次々にボールを入れては撥ね返されると、右に回した。そこに上がっていた右SBの田村が狙いすましたようにクロスを入れると、途中から入っていたドウグラス・ヴィエイラがファーでジャンプした。小谷も身体を当てていましたが、ドウグラスの高さ。長い首がしっかり振られると、叩きつけられたボールがゴール右に転がり込みます。これにはさすがの畑も反応できませんでした。

膝を着く熊本の選手たち・・・。

古くは吉井の決勝弾で勝利した札幌戦。あるいは最後の最後に原田のゴールで追いついた栃木戦など、退場者を出し数的不利になった試合でも、”ドラマ”があったことを思い出して、最後まで信じるように見ていました。この日のゴール裏でも、最後まで諦めず、声を枯らして赤いサポーターたちが、選手たちを後押ししている姿が映っていました。

できれば対等な面子での90分間の戦いを観たかったのが正直な気持ちですが、起こしてしまったのはこちら側だから仕様がない。一方で、アクシデントにしっかり対応していったベンチワークも、出ている選手たちの奮闘にも”頼もしさ”を感じることができました。

この試合は、メンタル的にも体力的も引きずることのないようにしたいですね。あまり日にちは空いていませんが、「次、次」と言いたいところです。

7月1日(土)
【J2第21節】(えがおS)
熊本 4-0(前半3-0)東京V
<得点者>
[熊]八久保颯(26分)、安柄俊(44分)、上村周平(45分+2)、黒木晃平(72分)
<警告>
[熊]園田拓也(65分)、光永祐也(70分)
[東]アラン・ピニェイロ(90分+3)
観衆:10,208人
主審:藤田和也


このカテゴリーには勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないわけで。そんなことは百も承知でしたが、4試合負けなしで3位につける好調ヴェルディ相手に、こんな大勝を演じることになるとは正直思ってもいませんでした。

試合前のインタビューで「(相手は)監督が代わって分析する試合も少ない。ただいつもの自分たちの試合をやっていくだけ」と、ヴェルディのロティーナ監督は言う(DAZN)。なんとなく普通にやれば勝てるだろうというようにも聞こえ。それは山口戦のときのわれわれがそうではなかったかとも思い出させる。

一方の池谷監督は、「追い込まれた1週間だった」(熊本蹴球通信)と試合後振り返る。「相手のゲームはかなり見たし。そういう意味では、うまく対策がとれた結果」だと。そして、監督が代わってから「やってきたことがやっと実った。選手たちが約束事を守って、その上で点も取れた」(DAZN)と答えます。

熊本は、スタメンを前節から5人入れ替えてきました。しかし、奏功した天皇杯・水戸戦にどちらかといえば近いのではないかという印象を受けた。それは3バックの真ん中にキーマンの村上が入ったからでしょう。水戸戦は直には見ていませんが、評判どおり持ち上がったりパスを散らしたり、最後尾からタクトを振る。

あとは左WBに入った光永、シャドーの八久保の働き、そしてなんと言っても1トップの安に期待が持てました。

20170701ヴェルディ

開始から熊本は、CBのイムから右の裏のスペースにロングボールで安を走らせる。左の光永もアーリークロスをDFの背後に送る。まずはボールを持ったらすばやく裏を狙う意図が見える。

相手のボールのときは5バック。前の5人でプレスに行く。敵の前線に入ろうかというボールには素早くチェックに行く。ミスも少なくないが、チャレンジし続けている姿勢は、前節山口戦にはなかったこと。

あとで見返したDAZNの中継で、レポーターが八久保の良さを「スピードアップ、間で受ける、裏を突ける。この3つだとコーチが言っている」と紹介し、それに対して解説の水沼氏が、「今まさに熊本に必要なこと。局面に応じて休みなくやって欲しい」と要望した、ちょうどそんな時間のあとでした。

園田のカットから上里。上里がゴール前に走った八久保に長いパスを送るがこれは収まらず。しかし、続いても後ろで回して、左サイドタッチライン際の園田がワンタッチでワンバウンドのスルーパスを送ると、八久保が裏をうまく取った。落ち着いてGKも交わすと、ゴールに流し込みます。先制点!

「熱くなれ」。この日の試合前、震災ボランティア時の巻との約束を果たしに来たと言って、大黒摩季さんが迫力ある歌声で場内を盛り上げてくれましたが、その歌のとおり一気にスタジアムのボルテージは上がってヤバイ”ハイテンション”。

しかし、ヴェルディもまだ落ち着いていました。勢力を立て直すとFKやCKで熊本のゴール前を襲う。前節の2失点も含め、セットプレーの失点の多さが目立つ熊本はこの試合、ゾーンディフェンスからマンツーマンに変更。「責任をハッキリしようということだ」と言う水沼氏。

試合の流れというのは面白いもので、先制点は奪ったものの、このあとすぐに同点にされなかったことが、この試合の勝因とも思えます。その立役者はなんと言ってもGKの畑でした。

ヴェルディの右WB安西が一度アランに預けて、ヒールパスで貰いなおすと右45度からシュート。これを畑がスーパーセーブ。続いても右からの安西の強烈シュートを横っ飛びでパンチング。拾った左WB安在のシュートは枠の上。今度は右から回して中央の高木に繋ぐと、高木が反転するように村上を交わしてシュート。これも枠内でしたが、わずかに畑が触ってバーに当てる。再三の決定機を防ぎます。

移り気な勝利の女神がヴェルディにソッポを向くと、今度は熊本に微笑みかけます。「このまま追いつかれずに前半を終えたい」とわれわれが思っていた44分、上里が前の安にパスをつけると、安が持ち上がりながら、追い越して上がって来る八久保へのパスと見せかけ、意表を突くミドルシュート。無回転のボールがGK柴崎の前で変化してゴールに突き刺さる。

それだけで収まりません。前半アディッショナルタイムに入ると、スローインを受けた安が一人でPエリア内に持ち込む。3人に囲まれながら、潰されそうになりながら出した。信じて顔を出した上村が貰ってゴール左隅に蹴り込みます。上村はうれしいプロ初ゴール。

なんとなんと3-0という点差で後半に折り返した熊本。しかし、ヴェルディは前節4点で町田を下しているし、その前は愛媛に3点で同点に追いついている。短い時間で一気に得点を加算する力を持っている。安心はできませんでした。

熊本は時間を消費するように、ゆっくりと攻める。「絶対ゆるめないこと」「最後までさぼらないこと!」というハーフタイムの指揮官の指示を守りながら。

渡辺に代えて梶川。畠中に代えて橋本。そして4バックにしてヴェルディが勢いを持とうとしていた72分でした。上里が自陣から、右サイドで高く上がっていた黒木にピタリとパスを当てる。黒木がドリブルで勝負すると見せかけて、フリーでミドルシュートを撃つ。地を這うようなグラウンダーのシュートは、ファーポストに当たり、ゴールに吸い込まれ4点目とします。

こうなるとあと欲しいのはクリーンシート。既に八久保に代えて岡本が投入されていましたが、次に中山が足を攣って上原に交代。布陣は完全に5バック。選手全員がかなり疲れていました。上里を右に回して、上原がボランチに入る。

次々に襲うヴェルディのシュート。熊本はPエリア内に林立してクリア一辺倒。あとはもう0(ゼロ)で終わりたいという気持ちだけ。不甲斐ない失点で敗戦を見せ続けたホームのファンのためにも。それはまるで「1-0のように守った」と水沼氏が言う。

園田も足を攣った。しかし、残り時間を耐えられると判断したベンチは、最後の最後のカードで安に代えて巻。前線からの守備をゆだねる。アディショナルタイムには大チャンス。カウンターから岡本、巻、岡本と繋いで、右から上がってきた上村。上村のクロスはしかし、中央の巻はもちろん、ファーの岡本の頭も越えて抜けてしまう。そして、終了の笛が吹かれました。

4得点のうち、組織的に崩したのは1点目と3点目。安の2点目と黒木の4点目は、個人の技術のようにみえます。しかし、その2点もまた、フィニッシュで終えるというチーム戦術が浸透したからのゴールではないかと。

無失点で勝利したことについて指揮官は言う。「クロスに対してまず良いポジションに戻るということ。後半はズレてきたところもありますけど、そこで良いポジションを取れているということ」(熊本蹴球通信)だと。しかし、それに加えて「ボールに対する執着というか。最後も皆がシュートブロックに行っていたし、迫力もあったし、選手がより勝ちたいという気持ちを持ってプレーしていたんじゃないか」と。

あの名手ヴェルディの選手たちのシュートが、最後の最後に枠を外れたのも、畑の存在感に加え、そんなところが大きかったのかも知れない。

7試合ぶりの勝利。ホームに限っては実に4月16日の松本戦以来。そんな鬱憤が、1万人以上を集めたスタジアムの夜空に、勝利の凱歌「カモン!ロッソ」をこだまさせました。

4-0。大勝のようでもあるが、タイトルどおりの100%の完勝でもない。点差に隠れてしまいそうですが、課題もしっかり残りました。

けれど、自分たちの練習を信じて、自分たちで結果を得た。勝って当然の相手もいなければ、やる前から負けが決まっている相手もいないことを。シュートは打つべきだということを。今節の勝利の意味として、そのことが大きな自信に繋がったということは間違いありません。

【J2第26節】(味スタ)
東京V 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[東]高木善朗(78分)
<警告>
[東]杉本竜士(83分)
[熊]キム・テヨン(67分)
観衆:5,723人
主審:上村篤史


五分五分の戦いだと思いました。勝敗を分けたのは、”時の運”のようなものだと思ったのですが、指揮官・清川監督は想像以上に嘆き、怒っていました。

「若手に戦う姿勢が見えなかった」「今日の戦い方は満足できない」(熊日)と、この人が見せる温厚な表情とは違い、一刀両断なコメント。それは「前節のような(押し込まれる)立ち上がり方をして、前半途中までは何もできなかった」ことを、激しく嘆いているということだったのでしょう。

清武と上原を累積警告の出場停止で欠く熊本は、平繁との2トップのパートナーに、齋藤を初めて先発起用。2列目は右に八久保、左に嶋田という若い前線を組んできました。ボランチの一角にはキム・テヨン。

18位のヴェルディは、勝ったり負けたりとムラのある戦い。しかし、ガンバからべテラン・二川を獲得していて侮れない。

20160731東京V

常々われわれは、相手を圧倒するくらいの球際の強さがなければわがチームに勝機はないと書き続けています。その点において、試合の開始早々からヴェルディに、セカンドボールを拾われ続けた。この、前節の金沢戦同様の立ち上がりに、指揮官が大いに不満だったのは間違いありません。「意識していてもボールが自分の予測と違う方向に行って、違うことが起きた時に身体が反応していけなかった」(公式)と、八久保は釈明する。「スタメンで使ってくれることはなかったので、久しぶりだし、緊張で身体も硬くなっていた」と言う齋藤は、動きがいかにもぎこちなく、ファーストディフェンスがはまりませんでした。

27分のピンチ。ヴェルディがカウンターで持ち込むと、澤井がエリア中央に侵入して右足アウトでシュート。これを佐藤がなんとかクリアすると、今度はそれを左のゴールラインぎりぎりで拾った北脇の強烈シュート。それも佐藤が全身でブロック。守護神が立ちはだかり、先制点を与えません。

ただ、基本的には両者のチームコンセプトは違う。ボールポゼッションを重要視するヴェルディに対して、持たせて奪ってカウンターという狙いが熊本。そう見ていれば、徐々に前半も終わりごろになると、熊本にも好機がやってきます。流れを引き戻し始めた。

36分、嶋田がハーフウェイライン左サイドで奪って、ひとりで運んでエリアに入る寸前撃ったシュートは、ファーのポストに嫌われる。続いても、高柳が右へはたくと、藏川が縦に。八久保がえぐってグラウンダーでのクロス。ファーサイド平繁が詰めますが、DF田村へのプッシングのファールを取られる。うーむ、それは違うだろうと。

前半アディッショナルタイムには、守から攻への切り替え。齋藤がハーフウェイライン付近でもらうと反転。一騎鋭いスピードでドリブル。DFを抜き去りましたが、最後は敵GKに飛び込まれキープされました。

後半、足に違和感を覚えた二川を下げて、アランピニェイロを入れるヴェルディ。熊本は齋藤から岡本にスウィッチ。右サイドに入れると、八久保を2トップの一角に。

攻守の切り替えの早さが増した試合展開。カウンターから熊本が右サイドを八久保に破らせ、そのクロスにニアに上がっていた植田の頭が合わず。ファーの嶋田のスライディングも届かない。
逆にヴェルディの安在のクロスにファーの澤井のダイレクトシュートは、佐藤ががっちりブロック。

熊本は嶋田を下げて、ユーティリティプレーヤーの黒木をそのまま2列目に入れる。ヴェルディがFW北脇を諦め、杉本を投入したのは、試合時間も残り15分を切るころでした。

熊本の攻勢のあとでした。反転してヴェルディがカウンター。中盤を省略してアランピニェイロに渡ると、強烈なミドルシュート。一旦はゴール左ポストに跳ね返るも、それを押し込もうとするヴェルディ。GK佐藤が右手で撥ね返したボールがゴール前にこぼれる。それを見逃さず拾った高木が、3試合連続ゴールを押し込むことになります。ヴェルディに先制点を与える。

後半39分、7月19日に加入発表があったばかりのFW若杉が登場。「緊張はなかった。プロ選手相手でも思った以上にやり合えた」と、前線で身体を張ったプレーを見せます。

そして迎えた後半アディッショナルタイムは残り4分。そのラストワンプレーだろうというシーン。DFライン園田からの縦のボールに抜け出した岡本がラインぎりぎりからクロスを上げる。中央の八久保のヘッドはしかし、バーに嫌われる。拾った選手のシュートも、GKの手中に収まり終了のホイッスルが吹かれました。

「決まった感触はあった」。八久保はそう熊日には語っています。

しかし、ゲキサカで、このときを振り返るコメントでは、「さっき、やっさん(岡本)と話したんですけど。やっさんも中の状況を見ていなかったそうで、僕もボールが来るとは思っていなかったんです。それでもあそこに走り込むことで、他のスペースが空くかなと思って走り込みました。ボールが来たときはしっかり当てようと思ったけれど、全然上にいってしまいました」と、ちょっと予測していたプレーではなかったことを吐露しています。

「運が悪いと言われるかも知れないけど、決めきれないわずかの差がある。それが実力の差」(熊日・八久保コメント)。そう総括した八久保。この日は、ラッキーボーイにはなれませんでしたが、恐らく一戦一戦のこの”実戦”での、プレーの細かいところの成功や失敗体験が、ルーキーにとってのなにものにも代え難い経験になっていること違いない。

公式サイトには書かれなかったけれど、熊日の記者は聞き逃さなかった若手に対する指揮官の”苦言”。それは期待の表れであり、そのベースの部分をキープしなければ、わがチームでの出場機会を逃すのだという”要求”でもあり。そのための叱咤。

結局、終わってみれば清武の不在がそのままチームの勝敗に結びついてしまう現状。八久保に斉藤はもちろん。そして今日の若杉。プレー時間はほんとうにわずかでしたが、このチームがもうひとつ上に行くにはこの新しい”若い力”が台頭してくる他にはないわけで…。選手にとってもチームにとっても、そのめったに巡ってこないチャンスだったゲーム。清川監督はこれを何としてでもモノにしたいと臨んだんでしょうが、それが選手の側からいまひとつ伝わってこなかったのかもしれませんね。

【J2第3節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半1-0)東京V
<得点者>
[熊]清武功暉(25分)
<退場>
[東]ウェズレイ(36分)
<警告>
[熊]藏川洋平(64分)
[東]高木純平(13分)、ウェズレイ2(24分、36分)、高木善朗(45分)
観衆:5,902人
主審:榎本一慶
副審:数原武志、熊谷幸剛


開幕から3連勝です。熊本としては初めての記録であり、そしてたった3試合を消化したこの時点ではありますがセレッソ大阪と並び同率首位の座につくのも初めてのこと。しかしながらわれわれを含めてわがチームのファン、サポーターは、多少ニヤついてはいるものの、浮ついたところは微塵もなく。これも9年目になるJ2暮らしからくる苦労と経験がそうさせているに違いありません(笑)。

2週間前の開幕戦とは違って、16時キックオフのこの日は小雨降る肌寒い気候となりました。連勝と好調なホームチームの試合にしては観客席が寂しい。学校行事などと重なったのでしょうか。

迎えたヴェルディは、前節讃岐に2-1で敗れていて、敵地とはいえ連敗は避けたいところ。いわずと知れた育成に秀でたクラブで、ユース上がりの選手が多く、その点を「調子に乗せたら怖い」と清川監督も警戒する(スカパー!)。

熊本が今節のスタメンでいじったのは2列目のところ。ピッチ状態が心配ながら主将・岡本を戻してきました。

20160313東京V

指揮官が「非常に大事」と言った立ち上がり。左SBの黒木が高い位置をとって左から攻める熊本。清武、平繁、さらには嶋田、岡本と、前線の距離間がよく、テンポよく前に運べる。”入り”は決して悪くはない。

ヴェルディもバイタルで回しますが熊本が粘り強く対応。ワントップのドウグラスに入るボールには植田が激しく潰しにいく。そしてそこからの攻守切り替えの早い展開が続き、見応えのある序盤になりました。

24分、上原のカットから繋いで、岡本→平繁→清武。清武が嶋田に預けて再びエリア内で貰おうとするところ。ウェズレイに足をすくわれて倒される。主審がすかさずPマークを指し示します。開幕戦に続いてのPK!

「蹴りますか?」と嶋田に問われて「もちろん!」と答えたのだという(試合後のインタビュー)。もう決して譲らないエースの自覚。相手GKもコースを読んではいましたが、その反応よりも速いスピードのシュートで、清武が開幕戦と同じようにPKを沈めます。

先制に沸きあがるスタジアム。ただ今日の清武は、開幕戦とは違ってベンチに駆け寄るほど喜ばない。ベンチも至ってクールそのもの。この1点で勝敗が決まる相手ではないと知っているから。その後の反撃を試みるヴェルディを落ち着いて撥ね返す熊本。守備の時間。33分には、自陣から大事に繋ぎながら右サイドの嶋田が中にカットイン。そこからのシュートは惜しくもポストに嫌われる。よし。追加点も行ける!

ただ、36分。右サイドで抜けようとした平繁を引っ張り倒してウェズレイがこの日2枚目のイエローを貰い退場。先制に成功し、更には相手が一人少なくなった。優勢この上ないような熊本でしたが、実はこのことがゲームを難しくしてしまったようです。

ここ2戦での熊本の”課題”は、いずれも90分のなかで、特に後半、押し込まれた際の”試合運び”をどうチームで共有するかでした。その課題を抱えたなかで、今日は一人少ない相手と戦うことになった。

指揮官は恐らく強い危機感でハーフタイムに叱咤したでしょう。「相手が一人すくないサッカーをやったら、やられるぞ。11対11でやっているという意識で!」「チャンスがあるならば必ずいこう。早くいける時は早くいくこと」「絶対、受け身のサッカーにならないように!」。点差は1点しかないのです。

ヴェルディは後半アラン ピニェイロを2列目に配置し、ロングボールをドウグラスが落として、アランが拾って攻め込む。熊本は一人少ないヴェルディのセットプレーにも前線に余らせず、全員守備で構えます。

ヴェルディがギアを上げてチームの運動量が増えているかというとそうでもない。ブラジル人二人に依存した戦術。しかし熊本も、ボールを大事にするためか、あるいは体力の温存か、後ろで回す時間が増える。なかなかクサビも打たない。

後半13分、嶋田のカットからカウンター。平繁→清武、右の岡本が中央の清武に戻す。清武が打つかに思えたタイミング。しかしエリア内の平繁にパス。これが合わず。もったいない譲り合いで追加点の機会を逸する。「シュートチャンスのところで打てなくて、どうしても1個、2個、手数かけてシュートで終われなかったという部分の残念なところもありました」と指揮官も言う。

後半21分、嶋田に代えて、そこで投入したのは齋藤。早速、左サイドから平繁のスルーパスにPA侵入。ここは敵DFにクリアされる。しかしそれにしても速い。

ヴェルディは、高木善を諦め平本を投入。前節も讃岐相手に一矢報いた平本。怖い。熊本は平繁に代わって中山。中盤の守備を少し締める。徐々に徐々に、時間がなくなってきて。相手とのバランスのなかで、これはこのまま逃げ切りを望むべきなのかと。それにしてもヴェルディの攻撃のなかでの植田の撥ね返し。藏川の危機察知。最後はGK佐藤のボール捌き、その落ち着いた立ち振る舞いがチームに与える安心感。

今日のゲームのクローザーは、DF鈴木ではなくて、FW巻でした。前線で落ち着かせろと、撥ね返すだけの展開とは違った意図を試みました。アディッショナルタイム3分が告げられると、岡本に代えて入れられる。最後の最後、ヴェルディに与えたCKにGKも上がってきましたがこれをクリア。その瞬間、DF陣と佐藤が大きくガッツポーズ。熊本開幕3連勝の瞬間でした。

3試合連続のウノゼロの勝利となりました。開幕までの危機感の大きさがチーム戦術をまず守備からスタートさせたのでしょう。とにかく粘り強い。最後の最後でシュートブロックに体を張れるポジション取りができている。新加入の植田と佐藤の存在感も大きい。「堅守速攻」は今季の熊本のキャッチフレーズになるかも知れませんね。

課題の攻撃も、記録的にはセットプレーでしか取れていませんが、展開を見れば、惜しい機会は大いにある。献身的に動く平繁の得点も時間の問題だと思われます。

課題はやはり90分間のなかでの展開のマネジメントだと思います。そこに至る選手間の理解と技術。意思統一…。

その”勉強”に関しては、ちょっと参考にならない試合展開になったのが残念なヴェルディ戦でしたが。これはこれで反省点になりました。

「これからアウェイ2試合続いて難しいゲームが続くと思うので、3勝していますけれども、1戦1戦というところで戦っていかないといけないと感じています」(ロアッソ公式サイト)と指揮官は言う。われわれも全く同じ気持ちであって。

首位うんぬんと順位など口にする時期でもなく、次の一戦、その次の一戦。どうやって勝ち点を取っていくのか、わがチームは次にどの選手が出場し、どうチームとして成長していくのか。順位はその先にしかないのだと。この8年の経験が教えているから。次節、難敵である北九州。そして長崎との対戦を控えているからなおさらです。

【J2第25節】(うまスタ)
熊本 0-1(前半0-0)東京V
<得点者>
[東]高木善朗(74分)
<警告>
[熊]クォン・ハンジン(68分)、園田拓也(79分)
[東]三竿健斗(28分)、高木大輔(72分)
観衆:3,956人
主審:岡宏道
副審:相葉忠臣、中井恒


「点を取られたのは後半だが、残念なのは前半に積極性を出せなかったことだ」(23日付熊日朝刊)。試合後のインタビューで、小野監督はそう嘆きました。

前からアグレッシブにプレスに来るヴェルディ。ロングボールで押し込まれ、セカンドボールも次々に回収して2次攻撃、3次攻撃に繋げられると、少しずつ後手を踏んで来る熊本。本来、序盤は両者とも飛ばしてくるもので、このがっぷり四つ、あるいは鍔迫り合いの時間帯から徐々に押し戻し、自分たちのサッカーに持っていけていたのが、熊本のここのところの好調の要因でもありました。指揮官いわく「ピッチ上の選手たちが自分たちで解決できるようになった」と。冒頭のコメントは、この試合の前半それができなかったことを悔やんでいるように思えます。

わずか1カ月前、向こうのホームで対戦したときのヴェルディとは明らかに違っている。この間ヴェルディは、3勝1分1敗の成績を収め、順位も6位まで上げていました。「ホームのときとは違う牙をむいていける」(スカパー)。試合前の敵将・冨樫監督のコメントも、リベンジへの自信に溢れていました。

20150722東京V

ヴェルディは左から作って杉本がボックス内に侵入。ニアをぶち抜こうとしますが、これはダニエルが片手一本でクリア。FKから安在のシュートは、ダニエルが一旦弾いて再びキャッチング。ゴールマウスを割らせない。とにかくダニエルの好プレーに救われています。

前回対戦のときはしっかりマークできていた中後、三竿の両ボランチを、今日はなかなか捕まえきれない。途中から4ー4ー2にシフト変更を命じる小野監督。それでも伝統的な短いパス回しに、前からのアグレッシブな守備が加わっているヴェルディに対して、熊本も幾度か好機を作るものの、攻め上がっても少しチームの重心は後ろにあるように感じられ、とにかく0点で凌いだという印象で前半が終わります。

過密日程のなか、また降り続いた雨のため“重馬場”となったピッチ状態を考慮してか、膝に古傷のある岡本はベンチスタートになっていました。代わりに常盤の持つ古巣対戦へのモチベーションに期待しての起用でしたが、この展開のなかでは代えざるを得ない。熊本は後半から巻を入れました。

更には蔵川に代えて清武。清武はホーム初お目見え。そんな二人が加わって見せ場を作る。

巻が落として清武がミドルシュートで敵ゴールを脅かす。左サイド奥に侵入した斎藤からのマイナスパスを巻がミドルで打つがこれはキーパー。再び斎藤が持ち上がって清武に送ると、清武の反転からのシュートはブロックさせる。しかし、「よりギアを上げていこう」とハーフタイムで指示を送った冨樫ヴェルディに対して、五分五分のところまで盛り返した感じの熊本でした。

そんななかの一瞬の出来事でした。GKからのキックを中盤で落としたヴェルディ。途中投入の高木善朗にしっかりとつなぐと、PAの少し手前でした。思い切りよく高木が一閃した右足のシュートは、少し前に重心の掛かっていたダニエルの頭を越えて、ゴール右隅に突き刺さる。結局、この1点が決勝点になってしまいます。

残り10分となって熊本は岡本を入れる。ヴェルディはベテランの田村を入れて締めにかかる。コーナーキックからの清武のボールは、キーパーも触れない絶好のコース。しかし味方も触れずエンドラインを抜けてしまう。アディッショナルタイムのFKには、ダニエルも上がって”一発”の同点弾を狙い続けましたが、これもファーに流れて終了の笛を聞きました。

「たとえばファーストボールを競らないとか、あるいはフォワードもそういうところでしっかりと身体を当てないとか、そういうので相手にボールが渡るのがいちばん危険だと思っていたので、そういうところのゲームの入り方の修正をしました」(九州J-PARK)。富樫監督は勝因の一端をそう口にしました。

一方、小野監督は“アグレッシブさ”で劣った理由を記者に問われていわく、「相手がかなり徹底して裏に走ってそこへのロングボール、そこのセカンドボールの争いというのが序盤の大きな戦いだったんですけども、そこで1歩遅れることが多くて、こちらが後手に回った部分がちょっとあった」と。さらに「本来だったらそこでモノにしてもう1回押し返して、逆にこちら側がプレッシャーをかけて、苦しい体勢のボールをまた奪い返すという流れに早くもっていきたかった」。

そこが冒頭書いた「ピッチ上の選手たちが自分たちで解決」できなかったということではないかと。

「うちがやりたいことを逆にやられて」と園田は言う。全くそのとおり。更に言えば「やるべきこと」を逆にやられたとも言えます。

団子状態とも言える下位グループのなかで、これで19位まで後退。薄氷を踏むような感覚が続きます。