FC2ブログ
4月11日(日) 2010 J2リーグ戦 第6節
熊本 0 - 1 甲府 (13:03/熊本/6,350人)
得点者:29' 養父雄仁(甲府)


90分間を振り返ってみると、本当にあの一瞬だけ。後半の熊本の猛攻を考えると、どっちに勝利が転んでもおかしくはなかった。負け惜しみでもなんでもなく、きっぱりそう言い切れる惜敗でした。

シーズン前にはわれわれも昇格戦線の一画と予想していたあの甲府が、開幕ダッシュに失敗して苦しんでいる。甲府の試合はこれまで、福岡との開幕戦、前節の鳥栖との試合をテレビ観戦したんですが、林健太郎なき後の中盤がなんとも落ち着かなくて、強力な前線3トップと堅いDFラインとの3列のラインが、なんだかちぐはぐでかみ合っていない。そんな印象を受けていました。調子が出ないうちに叩いておきたい。川崎からレンタル中の養父はテクニックもあってやっかいな選手だけど、前節鳥栖戦では焦れた甲府側が後半途中でマラニョンとの交代で引っ込めてしまった。あとは前線への単調なロングボール頼みの展開で自滅。わが熊本も、前半をうまくしのいでいけば、十分にそんな展開に持ち込める。そうなれば必ず相手はミスを犯す。戦術面でも、プレー面でも。素人ながら、そんなイメージを持っていました。

甲府 (先発フォーメーション)
 15パウリーニョ 
11マラニョン9大西
10藤田8養父
 2秋本 
13内山6吉田
4山本5ダニエル
 1荻 

この季節、一週間一週間暖かくなる。曇りのち雨の週間天気予報を吹き飛ばし、雲の合間からもう初夏のような強い陽が差し、気温はグングン上がっていきました。

試合は開始序盤からがっぷり四つ。甲府の藤田がロングシュートでゴールマウスを狙う。西森がDF裏に浮き球を出すと、松橋がヘッドで西に繋ぎますがDFがクリア。今度は甲府がカウンター攻撃。左から切れ込んでのマラニョンのシュートは枠を越える。熊本はGK南からの低いキックをDFが反らしたところに井畑が頭で落とし、松橋が走り込んでGKを交わしますが、シュートは右にそれていきました。

そして何の前触れも予兆もなく前半29分、甲府のスローインから左でマラニョンが一人粘って一度は下げる。今度は右から作り直して右サイド奥、フリーの大西に渡ったと思った瞬間ダイレクトに入れた。人数は足りていたものの、バイタルエリアを大きくしてしまった熊本は、Pエリア中央に入ってきた養父をフリーにしてしまう。ダイレクトでしっかりとボレーで合わせた養父のシュートは勢いよくゴールネットに突き刺さりました。

6千人のファンのどよめきにも似たため息。「あれを決められたら仕方ない・・・」という声。「まだまだこれから」という声。

しかしなんとか前半のうちに追いつきたい熊本だったのですが、その後は選手間の距離に難があるのかセカンドボールが一向に拾えない。パスが寸断される。井畑にはがっちりダニエルが密着していて潰される。先制点を上げた甲府は自信を取り戻したようにバランスを配慮して守る。堅い。これで養父も今日は後半交代で下がることもなくなっただろう。今日の甲府に果たして付け入る隙を見つけられるのだろうか。前半終了時点ではそう思ったものでした。

今思えば、さすがの甲府も、好調と噂される熊本を、きっちりスカウティングしてきたということなのでしょう。いつもならこういった強豪チームに見られるような“油断”が感じられませんでした。わが熊本は好調さ故にスタメンも固定ぎみ、前線の井畑のところで収めて、という戦術も読まれていました。だからこそ今日は後半早めに藤田を投入して、いわば“戦術変更”した。更には右サイド西森を左SBにスウィッチして、そこにまだ“知られていない”平木を置いたのだろうと思いました。

そして交代の意図通り、誰が見てもわかるくらい、藤田が入ったあとの熊本は一変します。ワンタッチパスが増え、中盤での縦への推進力が増す。ゴール前をワン・ツーで崩していく。ちょっと甲府が慌て出す。もう一度、前線に起点を作りたい甲府は、パウリーニョを下げてキム・シンヨン。なんとも嫌な相手が入ります。

藤田が散らすボール。左サイドを松橋がえぐってクロスを上げますがファーに抜ける。ポゼッションは圧倒的に熊本。長短交えて攻撃できることをファンに示す。しかし、甲府は最終ラインで必死に跳ね返す。

70分には決定的場面。藤田が溜めて松橋が中央突破。追いかけるDF二人に挟まれながらもシュートを放ちますが、GK荻にクリアされてしまいました。遠い。今日のゴールは実に遠い。前節の敗戦後、あえて厳しい言葉でチームを鼓舞したGKの荻が、今日は砦のようにゴールマウスに立ちはだかる。こんなに甲府の守備の時間が長いのは、甲府を自陣に貼り付け守らせたのは、熊本にとっても初めてではなかったでしょうか。

ただ、攻守の切り替えの早さは、甲府に一日の長があったのは確かでした。予想外の陽気に疲れが増したのか、熊本は徐々に戻りが遅くなってきているのがわかります。Jリーグ・デビューになった平木でしたが、出場機会がなく試合勘が鈍っていたのか、あるいは彼のプレースタイルなのか、走り込んでほしいスペースに走りこまない。ドリブルで仕掛けない。捌き屋、テクニシャンであることは彷彿とさせましたが、パサーばかりが並んで、ゴールへの迫力を感じさせるフィニッシャーがいない状況にも見えました。

残り15分。渡辺を原田に代えて投入。甲府陣内でのプレーが続く。西森の左からのクロスはファー市村が折り返しますが繋がらない。アディショナルタイム。矢野も上がる。諦めない熊本。残り1分を切っても“何か”起こりそうな期待を感じさせるのが今年の熊本。しかし、前節を思わせるような福王のロングシュートが残念ながらゴールポストの上を通過すると、試合の終わりを告げる主審の長い笛が吹かれました。

守りきった甲府。“あの”甲府がいわばなりふり構わぬ、といった感じで1点を守り抜くことに専念しました。それほどとにかく“結果”が欲しかった。それほど追いつめられていたのかも知れません。不調だった甲府でしたが、今日は前節のような“ミス”は皆無でした。これで熊本が何かきっかけを提供してしまったようにも思われます。

そしてわが熊本。課題は少しフォーカスされてきました。アタッキングサードでのプレー、それもフィニッシュの前のプレー。クロスの精度とか、パスのアイデア、呼応する動き等々…。高木監督が言うように、攻撃の熟成には時間がかかることは確かです。しかし、今日、藤田が長い時間を与えられ、昨年ファンを大いに湧かせたような“パス回しで崩す”熊本のスタイルが今も健在だということも証明してくれました。熊本には硬軟、長短の武器があることを確かめられたのは何よりの収穫でした。

試合終了後、イレブンへの拍手もそこそこに家路を急ぎました。今日の結果に対して、満たされないものが沸々と湧き上がってくるからでした。本当に悔しい。

これまでは“相性が悪い”と言われ、われわれもそう意識するほど、チカラの差を見せつけられ、大量失点に膝を着かされてきた甲府。そんな相手にワンチャンスだけの最少失点。相手を自陣に釘付けにし、シュート数も上回り…と。しかし、さすがのポジティブ・シンキングなわれわれも、この結果をもって“あの”甲府に善戦した、いい試合だったと言う気にはもうなれません。いや、なんだかこれまで以上に悔しい。負けて悔しいのは当たり前。この負けが悔しくなければならない。熊本3年目のJリーグ。何だかサッカーの原点に返ったような気持ちになってきます。おそらく監督、選手と共に、今一心でその悔しさを共有しているのだと。第二クール、絶対にこの借りは返すぞと。

12月5日(土) 2009 J2リーグ戦 第51節
甲府 2 - 1 熊本 (12:33/小瀬/13,104人)
得点者:2' 金信泳(甲府)、23' 金信泳(甲府)、28' 小森田友明(熊本)


まさしくプチ・パンデミック(爆発的感染)。その名のとおり、ホーム最終戦の感傷も癒ぬこの一週間、熊本はインフルエンザ感染に見舞われました。最初に公式に発表されたのは市村。続いて松岡、宮崎、原田、河端の発症。他にも体調不良の選手がいることも噂され、これで果たして最終戦が戦えるのだろうか、11人のメンバーが揃うのだろうかとまで心配させました。

それでもなんとか試合の2日前には、かなりの人数が練習に合流。ほとんどの選手の発症は11月30日から12月1日。通常、タミフル(あるいはリレンザ)を投与した日から2日後に熱は下がるものの、その後も数日間は安静が必要(というよりフラフラの状態が普通ですが…)とされます。そういう意味では、甲府・小瀬のピッチに立っていた市村と原田。恐るべき回復力。まさしくギリギリの復帰だといえるでしょう。

前節のエントリーの最後に、「このチームとしての最後の戦い、このシーズンの到達点をしっかりと見届けたい」と書いたものの、こんな状況で最終節を迎えることになるとは思ってもみませんでした。DFラインは前節、前半半ばで痛んでリタイアしたチョ・ソンジンと福王をセンターに、右に市村、左に網田。ベンチには控えのDFは一人もいない。しかも小瀬のスタンドは、この最終節で勝利して、逆転でのJ1昇格を信じる甲府のファンの声を限りのチャントがテレビから伝わってくる。更に追い討ちをかけるような、12月の冷たい雨。

甲府 (先発フォーメーション)
 18キム・シンヨン 
11マラニョン9大西
7石原10藤田
 31林 
3御厨20吉田
4山本5ダニエル
 34阿部 

古巣に対して序盤からアグレッシブな宇留野の動き。右サイドを崩していきます。(試合途中では、今期限りとなった甲府の安間監督に、ピッチサイドで肩を叩かれる場面も。)しかし、試合は思わぬ展開に。甲府の1点目も2点目も、マラニョンの切り替えしのキレに振り切られたことや、人数は居るのにボールウォッチャーになってキム・シンヨンを放してしまったことなど、DFの若さが露呈してしまいました。どうしても、球際に厳しく来る甲府に押され、各人の判断がやや遅れがち。そこかしこにチームのコンディションの悪さが見えるようで。そんななか、早い時間帯での2点のビハインド。本当に久しぶりのシチュエーションです。しかし、以前であれば“キレて”しまって立て直せなかったような試合の流れ。今日は辛抱強く自分達に引き寄せていきました。

徐々に甲府の攻撃がロングボールの放り込みで単調になります。対照的に熊本はしつこいくらいパスで繋いで、前線に運んでリズムを作っていく。ひとつの目指すべきモデルとしてあったパスサッカーの甲府を相手に、自分達のパスサッカーを貫こうとする選手たち。彼らもやはり今シーズンの“到達点”を探っているように思えました。

28分、原田の強烈なロングシュートをGKが弾いたところに、詰めていた小森田が押し込む。「今日が僕の開幕戦です」と言った栃木戦からまさかの4連続ゴール。そのときのエントリーで「FWにはFWのDNAがある」といったことを書きましたが、今日の小森田、もらったパスをワンタッチで反らしDFを交わしたり、2列目でパスを出したあとエリアに侵入したり…。“タメる”ことへのこだわりから一歩抜け出し、随所にFWっぽい、いい働きを見せました。もちろん、周りが彼の使い方にうまくなったということもあるのでしょうが、終盤での4連続ゴールは、その“ご褒美”ではないかと思いました。

それにしても特筆すべきは原田の働き。得点シーンの前にも、「あわや」と思わせる直接FKがあったり、その時の「フィーリングが良かった」とはいうものの、とても数日前まで高熱でうなされていた選手とは思えない左足の冴えぐあい。ボールのスピード、変化、球筋など、これまでにないキレを感じました。「後半は咳が止まらず正直苦しかった」(熊日)と言いますが、最後は左SBまで努めた90分の運動量。吉井とのダブルボランチは安定感を増し。来期、熊本の中心でチームを引っ張る選手であることは間違いないと思わせました。

一気に同点も、と思わせましたが、そこはさすがの甲府。そのままの点差で押し切られてしまいました。しかし終始、切り替えの早い攻守の応酬に、最終節らしく両者いいゲームを演じてくれました。

ミスも多かったが交代で退くまで積極性を失わなかった網田。前節痛んだにもかかわらず出場を志願したというソンジン。おそらくまだ万全ではないだろう市村。インフルエンザではないものの、激しい咳き込みで背筋を痛めたという藤田。チーム全体が満身創痍。しかし、普通なら立っているのもキツイはずなのに、苦しい表情どころか、皆どこか笑顔で、スッキリしたような顔つき。契約満了が決まっている選手たちも、今日のこの最後のゲームを楽しんでいるようで。このチームでやる最後のゲームを…。

さて、勝利はしたものの、昇格を逸した甲府。長いシーズンのなかで、4強と呼ばれ、最初から最後まで昇格ラインを伺う位置にいました。命運を分けたのは、わずかに勝ち点差1という現実。51試合というかつてない試合数の積み重ねのあげく、わずか勝ち点差1の間にラインが引かれ、また来期、共にJ2を戦うことになりました。

そしてわれわれ熊本。今シーズンは甲府に対して一勝もできませんでした。しかし、この最終節、昇格を争うチームの“痺れる”ような状況のゲームの相手を演じられたことは、熊本の大きな財産になったことに違いありません。しかも、こんなアクシデントにも動じることなく、がっぷり四つで、最後まで甲府を脅かしました。昨年の最終戦、KKでの広島との戦い。スコアは偶然にも同じ1-2ですが、昨年感じたような、まだまだ埋めようがない落差といった感じではなく、また、それは、先日、水前寺で湘南に勝利したときとも違うさらに“僅差”の感覚を持ったのはわれわれだけしょうか。

仙台、C大阪、湘南を見送り、来期は柏、千葉、大分が落ちてくることになりました。JFLからは新しく名前を変えた北九州が参戦してくることに。われわれはといえば、今期果たせなかった目標を、もう一度掲げなおして戦うことになるのでしょう。果たしてどんなチームに構成されるのか。“場外”の戦いは既に始まっていると書きましたが、まずは指揮をとる次期監督が誰になるのかが、最大の関心事です。ただ間違いなく言えることは、誰が指揮をとり、どんな新しい選手が来ても、今年までに築いた熊本の財産がチャラになるわけではなく、更にその上に積み増していく作業になるのだろうということ。それをまた見続けていきたい、見守っていきたいと思います。その意味でも、この最終戦。敗戦ではあったけれど、今シーズンの“到達点”を見せてくれた価値ある一戦として、しっかりと記憶に留めておくべき戦いだったなと思いました。そして、去っていく選手たちも含めて、そんな気持ちにさせてくれた全ての選手達に拍手を送りたいと思います。

6月14日(日) 2009 J2リーグ戦 第21節
甲府 4 - 1 熊本 (16:03/小瀬/11,595人)
得点者:5' 金信泳(甲府)、31' 金信泳(甲府)、53' 木島良輔(熊本)、83' 山本英臣(甲府)、89' 國吉貴博(甲府)


湘南戦のあと、「いいときのイメージが常に“目標値”になり、その戦える時間量を増やしていくことが、今年積み上げるべき財産」だと書きました。これまでJ1昇格戦線を争うチームに対して善戦しているといえる熊本。そして迎えた甲府との第2戦。前回対戦時も書いたとおり「熊本が目指すパスサッカーの“本家”甲府への挑戦」。しかし、今日はその目標値に近づいた時間帯は目に見えないほど非常に短く、本家を脅かすまでには到底至りませんでした。まさに完敗。その差は歴然でした。

熊本は左SBの原田を累積警告で欠くばかりか、市村が練習中の怪我で離脱。さすがに開幕からの連続出場で疲労が貯まっていたのでしょうか。その代わりに福王、矢野をそれぞれのサイドに入れ、中央はソンジン、河端で埋めてきました。その代わりベンチには控えのDFはなし。前線はここ2試合続く、藤田を最前線に上げたいわゆるゼロトップ。

試合は、開始早々から甲府の圧倒的な攻勢。熊本はファーストディフェンスが甘く、いきなり最終ラインでの防戦に終始する状態に追い込まれます。前回対戦時、あれほど押さえ込んでいたマラニョンですが、今日のチェックは甘く、次々に裏をとられ、1対1のスピード勝負に持ち込まれます。一方、甲府はファーストディフェンダーがしっかりとボールをチェックして、アタッキング・サードまで入り込ませない。熊本は中盤で奪われる。足元へのパスを確実に狙われていました。狙われているのにその対処ができなかった。そこが今の実力なのかも知れませんが…。

前半5分、右サイドから迫るマラニョンに難なく振り切られる河端。エリア奥まで入り込まれグランダーのセンタリング。ボールは下がる福王の目の前を通って、ファーサイドから入りこんできたキム・シンヨンにぴったりと合わされます。期待していた対戦にして、早々の緩慢なディフェンス。なんともファンをがっかりさせる失点シーンでした。2失点目もキム。河端と矢野が二人ついても振り切られる。目を覆うばかりの惨状でした。

確かに熊本は、この強豪・甲府に対しても試合を通してDFラインを高くあげ、オフサイドも数多く奪った。しかし、明らかにゼロトップの攻撃を意識した中盤の配置に対して、甲府の二層になった守備網ががっちりと熊本の中盤の飛び出しを許さず、逆にワンボランチ石井の負担だけが目立ちました。甲府のパスサッカーのうまさに目を奪われがちですが、実はその本当の強さは堅い守備に裏打ちされているということがはっきりとわかった試合でした。

このままでは試合は終わってしまう…。流れを変えるべく、前半のうちに木島を投入(河端アウト)する意味は理解できました。福王をCBにスライドさせ西を右SBに下げる。それにより攻勢を引き寄せた熊本。後半早々に山本がエリア内で倒されPKを得ると、木島がきっちりとゴールに押し込みます。以前にも書いたとおり2-1という点差は、サッカーにとって非常に微妙な“心理的点差”。しかも熊本が徐々にリズムを掴み始めていました。しかし、この重要な時間帯に、わざわざ熊本はこちらからカードを先に切ってしまいます。宮崎に代えて井畑を前線に投入。確かに井畑の前線の運動量に期待したのかも知れませんが、良かったリズムは一気に萎んでしまったように感じました。さらに立て続けに3枚目のカード。右SBを西に代えて松岡。遠征直前に急遽帯同が決定されたらしい松岡。確かに練習試合でも徹底して右SBが試されていて、市村不在のこのときのプランとして準備されていた変更だったのでしょう。しかし、これもまた絶妙の交代とは言い難いものでした。

熊本がカードを使い果たした後、甲府はマラニョンを下げ吉田を入れると早いリスタートからPKを奪取。キッカーには熊本にPKを与えたDF山本を指名する“演出”までして、心理的にも突き放しを図ります。終了間際にはキムに代えて國吉。なんとこの伏兵にもロスタイムに駄目押し点を決められる結果となりました。文字通り、全て後出しじゃんけんに負けてしまったような展開。

何故、いい時間帯を持読させるための“我慢”ができなかったのか。まるで戦前に予め描いていた交代プランを、戦況を省みずに先手先手で打っていったような、あるいはそれがベンチワークの混乱にも感じられて、どうも腑に落ちないのです。また、先発フォーメーションを見ても、いいときの布陣を何故続けないのか。確かに層の薄さや、相手に対するスカウティングの結果があるのだとしても…。何が評価されるのか、何を求められているのか。選手の側も分からなくなってしまうのでは。何か采配にも迷いが生じているのではないだろうか。試合後のコメントを見ていてもそれが心配されます。

勝てない。結果がなかなかついてこないこの連戦に、ひょっとしたら眠れない日が続いているかも知れない新人監督。しかし、ここは頑張るしかない。踏ん張るしかない。もう一度、原点に立ち返り、落ち着いて現状を整理する作業を行うべきだと思うのです。今、熊本が目指している戦術は、他チーム関係者や多くのJ2観戦者からも高い評価を得ているのだから…。

「サッカーが一人で全て解決するなんて考える方がどうかしている」。今節の出来は本人自身も悪かったはずだけれど、今日もまた藤田は名言を吐いてくれている。一言で言ってしまえばそれが経験というものなのでしょうが、かつて甲府が作った25連敗という記録を思えば、今のこの歴然とした力の差も、経験の道の途中なのだと納得するのは難しいことではありません。この結果を受け入れて、切り替えて次に向かう。われわれの選択肢はそれしか残されていない。満員のスタンドでホームゲームを演出する甲府のサポーターたちを画面で見ながら、そう思いました。

5月10日(日) 2009 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 1 甲府 (13:04/熊本/19,321人)
得点者:44' マラニョン(甲府)


2万近い観客が詰め掛けた今日のKK。真夏なみに気温も上がり、スタジアムグルメで賑わうコンコースはごった返していました。カキ氷の店には子供たちの長い行列が。それにしても今日はやけに親子連れが目立ちます。レプリカユニを浴衣に見立てると、まるで夏祭りかあるいは縁日の参道の景色のような。これもまた面白い楽しみ方と言えるのではないでしょうか。今季初の大動員に、こちらの気持ちも高揚し、年甲斐もなく(いつものように)屋根のない日なたで観戦していたら熱射病っぽくなって寝込んでしまい、更新が遅れました。5月というのに、30度を越える炎天下のピッチ。15日間で5試合という連戦の最後の試合にして、更に過酷な環境になりました。

甲府 (先発フォーメーション)
 14森田 
11マラニョン16松橋
10藤田9大西
 2秋本 
7石原32杉山
4山本19池端
 1萩 
しかし甲府は強かった。多くの評論が、熊本が目指すパスサッカーの“本家”甲府への挑戦と書き立てましたが、蓋を開けてみると甲府のパスサッカーは更に進化していました。熊本学園大付属高が初めて生んだJリーガー森田をトップに置き、松橋、マラニョンをサイドに配する3トップ。速さに優れるこの両ウイングに、早め早めにボールを入れてくる。それに影響されて、熊本もいつもの短いパス回しを忘れたかのように、前線への配球を急ぎすぎてしまっている感がありました。その両ウイングを警戒するあまり、原田、市村の熊本の両SBが最後列に押し下げられているようにも見えましたが、市村を含めわがDF陣は最大の要注意人物“マラニョン”の良さを消し、仕事をさせていませんでしたね。たった一度、あの失点の瞬間を除けば…。

前半20分、吉井が倒れたときの手のつきかたが悪く、ひじを負傷するというアクシデントが起こります。これで熊本のゲームプランは大きなリスクを抱え込むことに。交代としてあまりに早く宮崎を投入することになってしまいました。いえ、宮崎が悪かったということではありません。今のロアッソ、守備をベースに前線にも絡める吉井は、恐らく最後まで引っ張りたい選手だったはず、と思うのです。

37分、甲府は熊本のDFの裏に縦一本。松橋の強烈なシュートはGK稲田が弾く。そこに飛び込んだ森田のシュートは原田が身体で跳ね返します。前半も終了間際になった時間帯、少しずつ押し返し、形をつくりかけていた熊本に絶好のチャンスが。中央でのインターセプトから石井が小森田に預け右サイドに走り込む。小森田がターンして再び石井に。PA内に走り込んだ石井が右足で撃つ。しかし、ここは甲府GK萩がナイスセーブ。

この流れのなかで明らかに熊本は敵陣に前掛かりになっていました。自陣にはDFが二人。甲府はボールを奪うと、素早く前線のマラニョンに。その前には、広大なスペースが。ドリブルで突っかける。対応した矢野でしたが、追走してくる森田へのパスという選択も頭によぎり、マラニョンへのチェックを躊躇させました。エリア侵入前に撃つマラニョン。そのシュートは、稲田の手をかすめ、わずかな隙間を縫って、ゴールに突き刺さりました。少なくともスコアレスで終わりたかった前半の終了間際。痛恨の失点。それは、“止まった”マラニョンには完璧に対応していた熊本守備陣が、唯一犯した、“動き出す”マラニョンにボールもスペースも与えた失策(エラー)でした。

後半、熊本は修正を図ります。北野監督の指示は「もっとゆっくりビルドアップしよう。」というものでした。小森田から、藤田から、感じのいいパスが出始めます。しかし、甲府は松橋に代えてキム・シンヨン。“高さ”を増していく。さらに森田にはブルーノ。J1昇格を伺うチームにとっては、1点の優勢だけでは許されない。厳しい時間帯に、相手が嫌がる絶妙なカードを次々と切ってきました。

熊本は33分、小森田に替え満を持して宇留野を投入。福岡戦で負傷してから実に7試合ぶりの宇留野の勇姿。彼の復帰をファンはどれほど待ち望んでいたでしょう。やっぱりこの男にはHondaの頃から“赤”が一番似合っているのです。藤田も分かっている。いきなり右サイドにロングパス。そこに宇留野が必ず飛び込んでくることを。PA前で木島と絡む。仕掛ける。CKを取る。熊本に俄かに“点の匂い”が蘇ってきました。ショートコーナーから藤田のヘッドはバーをかすめる。攻撃のテンポが上がっている。得意のゴール前の回しから最後は石井のミドルシュート。惜しい。

攻守が激しく入れ替わる最後の時間帯。両者の猛攻。カウンターのリスクを覚悟で攻める熊本。ブルーノの決定機を稲田が神がかりのクリア。熊本もカウンターから山本がエリア内。切り返すがシュートではなくパスを選択。走り込んだ宮崎のシュートはバーを越える。遂に、後半45分間、両者ゴールを割ることはできず、終了のホイッスルが鳴り響きました。

わずか1点が勝敗を分ける結果になりました。高さや強さの差は決してチーム力の差ではありませんが、熊本と甲府の“力”の差は、点差以上のものがあったと言わざるを得ません。甲府は、パスサッカーをベースにしながらも、守備を強化し、さらに前線の“タレント達”の特徴を活かす戦術に磨きをかけていました。まだまだ届かない、点差以上の差が、立ちはだかっていたようにも感じました。

熊本にとっては、宇留野の復帰が何よりの吉報でした。いわゆる古巣との対戦。試合後の甲府メンバーとの握手でも、「頑張れよ」「頑張ってるな」と、互いにワンアクション多い。色々なことがあっての新天地・熊本。敗戦を詫びるように、ゴール裏に両手を合わせる宇留野。メインスタンドにも挨拶を終え、ロッカーに引き上げるチームメイトと別れて逆方向に歩き出します。そして、アウェイ側ベンチ横あたりから、それこそ向こうからは見えるかどうかわからないくらい遠くから、甲府サポに向けて一瞬、手を振りました。「オレは元気でやっているぞ」とだけ伝えたい。そんな感じがしました。出場時間はわずか15分。でも、どうしてもこの試合に出たかった。そんな気持ちが伝わりました。

メインスタンドには、青い甲府ユニを着た女性が二人。立ち上がると、なんと赤い熊本のタオルマフラーをしばし掲げました。これもまた宇留野本人に見えるかどうかというよりも、「宇留野、頑張れ」「宇留野をよろしく」というようなそんな気持ちだけを伝えるような。愛された選手。サポの思いや選手とのその距離感の清々しさを感じて、実に印象に残った光景。そして、この選手が熊本に来てくれて本当によかった。そう思った瞬間でもありました。

2008.09.01 大敗。甲府戦
8月30日(土) 2008 J2リーグ戦 第33節
熊本 1 - 5 甲府 (18:33/山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場/8,556人)
得点者:04' マラニョン(甲府)、37' 大西容平(甲府)、44' サーレス(甲府)、51' サーレス(甲府)、71' 羽地登志晃(甲府)、89' 斉藤紀由(熊本)


大敗。一矢報いるも、ある意味木っ端微塵の内容でしたね。
開幕当初は調子の上がらなかった甲府。特に深刻な決定力不足を補うために、ちょうど前回対戦の第26節、新外国人マラニョンとサーレスを入れて我が熊本に快勝。そこから徐々に上向いてきました。
一方の熊本も、この敗戦を踏まえてシステムを4-1-4-1に変更。指揮官いわく「甲府にされて嫌だったことを相手に試す」というシステム変更。そこからは湘南に1敗するものの引き分けを含めて負けなしという好成績を収めてきました。
その4-1-4-1の本家本元との対戦。どの程度通用するのか、しないのか。いやがうえにも力の入る試合でした。が…。

甲府 (先発フォーメーション)
 15サーレス 
36マラニョン9大西
7石原10藤田
 31林 
33輪湖32杉山
4山本2秋本
 22桜井 
立ち上がり早々、大西のクロスにマラニョンが左サイドから走りこんで先制点。大西のクロスの時点も、マラニョンへの走りこみへのマークもDFの甘さによるものでした。
その後は、熊本も少し好機を演出しましたが、同点には至らず。逆に吉井のゆるいバックパスを奪われ左サイドのマラニョンに出されると、追いかけた宮崎が痛恨のバックチャージで一発退場。しかも、このFKを大西に見事に決められます。これでこの試合の流れが全て決まってしまいました。もちろん一人少なくなったくらいで試合を諦めるわけにはいかないのですが、前半終了間際にCKからサーレスのヘッドで3点目を決められてしまいます。これもPA内で上村が競っていませんでした。

DFのマークの甘さばかりを責められません。この日は中盤のチェックも全く後手後手。「ある程度引いてボールを奪う」というこの日の戦術が、甲府のアタッキングゾーンと合致して、中盤の底の喜名のあたりでいいように数的優位を作られてしまいました。「プレスに行くかどうかが曖昧だった。ロングボールを使って相手のラインを下げさせようとしたが、意思統一が出来ていなかった。」と試合後、喜名がコメントするように混乱してしまいました。
後半も追加点を上げられるわけですが、斉藤が入ったあたりから熊本のアタッキングゾーンも高めに移行して、敵ゴールまでの距離が縮まり、ショートカウンターが出来るようになりましたね。最後に高橋からのスルーパスで斉藤のJ初ゴール。一矢報いる形となりました。

この敗戦。われわれも正直な気持ち、ショックを受けています。これまでも、厳しい敗戦にがっかりすることはありましたが、これほど気持ちの持って行き場のないことは初めてでした。「何もできなかった」「浮き足立ってしまった」というような試合後のコメントを見るにつけても、整理できない結果に、下を向くしかないのかと。

それだけに、まず高橋・斉藤のこの1点。試合の大勢は決してしまった後も、全く攻撃の手を緩めない甲府に対して、自分たちのゲームで押し返して奪った1点。最後の意地とプライドをつなぎとめたような。

しかし、この一方的なゲーム。どこかで見たような…。二点目の決定機をことごとく外してくれた福岡。試合開始早々、先制の決定機を外してくれた大阪。この引き分けの二試合、相手のフィニッシュの精度不足、あるいは幸運に恵まれた結果でもあることを思い出し、受け止める必要があるでしょう。この二試合の幸運の感覚がどこかで“ファーストディフェンス”や“グループでのチェック”を緩慢にしていたのではないでしょうか。トータルで見れば、ラッキーとアンラッキーのバランスは、必ず公平にもたらされるものなのだということも思い知らされます。

前節、大阪戦のエントリーで「上位チームにいい試合をしているという満足感」「勝ちきれないという悔しさ」「われわれにもごく自然な“欲”が出てきた」と書いていますが。…欲をかくにはまだ早い、われわれもまた幸運に恵まれたことを見失っていた、ということですね。

4-1-4-1の本家本元との対戦。どの程度通用するのか、しないのか。と言いましたが、同じシステムを謳っていても、「されて嫌だったこと」という意味では全く別次元のものでした。それを可能にするための技術とベースになるハードワークに大きな差があったということ。それが高橋のいう「止めて、蹴る基本技術が全然違う」という表現になるのでしょう。
なかなか受け入れがたい敗戦ですが、やはり徹底的に分析し、修正するかしかない、そう思います。