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3月31日(日) 2013 J2リーグ戦 第6節
熊本 1 - 1 富山 (13:03/うまスタ/5,012人)
得点者:7' 西川優大(富山)、77' 黒木晃平(熊本)


“あの場面以外は…”というのが、この試合の“たら、れば”でしょう。試合後の吉田監督が、「ちょっとした隙で失点してしまうというのが、特に前半の立ち上がりであると、なかなかゲームをうまく運べない」、そう言いたくなる気持ちもわかる。1点ビハインドを背負って、残り90分近くを戦わなくてはならないというのは、もちろんゲームプランには全くなかったわけで。

またもや1対1。カバーもフォローもなし。裏を取られるタイミングと位置取り、地のスピードであっさりと振り切られてしまう。攻撃に人数をかけ、少ない枚数で守る、という単純なコンセプトではないはず。プレーの“軽さ”と言ってしまっていいのかどうか。別に、選手に真剣味が足りないと言っているわけではなく、あれだけラインを高く保つならば、その備え、緊迫感は尋常のものではダメだろうと。強いて言えば、同じ失点パターンが続くのは、課題のハードルがいかに高いか。それを共有できているかということかなと。

20130331富山

前節と同様で、試合開始直後の“入り方”が悪い。「G大阪戦は立ち上がりは良かった」「その時は我々はチャレンジャーという感じだった」「もしかしたら少し受けて立っているところがあるのかも分からない」と指揮官はこの2戦を悔やみます。

富山にしても、熊本のウィークポイントであるDFラインの裏を、一発であっさりと突いて早々と先制したことで、逆に拍子抜けの感があったのかも知れません。その後思ったほどのプレスもなく、連携のミスも目立つ。しかし、そんな富山に対して熊本も“お付き合い”している感じ。アタッキングサードまで持ち込んでも、最後のフィニッシャーとの意識が合わない。撃てるところで、もうひとつ崩し切ろうとパスを選択して潰される。片山のクロスにも切れがない。

「前線で起点を作るために」(吉田監督)、後半から高橋に代えて北嶋を投入。逆に前半を反省した富山は、後半に入って強烈にプレスを掛けてきたように見えました。早く同点にしたい熊本と、追加点を取りにきた富山の正面からのぶつかり合い。

その状況を見た吉田監督の、次のカードがこの試合のポイントでしたね。原田を下げて、怪我から復帰したばかりのファビオを前線に投入。4-1-3-2に見えたのですが、黒木をアンカー、藤本を頂点とするダイヤモンドの中盤だといいます。相手の厚い中盤に混乱をもたらそうという意図。これが奏功します。

同点の場面は、オープンな展開になった77分。最終列の吉井から貰った黒木が、ファビオに預けると、自ら猛然と上がっていく。すでにエリア内にいた齊藤までもを大外から追い越すと、ファビオから出されたパスをダイレクトで撃ち抜いた。「キーパーは多分、クロスを意識してたから」と素早く見切ると、角度のないところからニアにぶち込みました。

開幕前の練習試合からレギュラーポジションを取り、吉田サッカーを体現する“申し子”のような彼の名前(活躍)を、いつ書けるのか、早く書きたくて仕方がなかったのですが、ようやくやってくれました。高い技術に裏づけされた安定したプレーぶりもさることながら、誰もが感心する献身的な運動量。機を見て攻撃に参加する姿勢は積極的で、前半もこの男のドリブルからの惜しいシュートが。後半この時も、ひとりアンカーという重責を任されている状況での“瞬時の判断”。試合前から「常にゴールは狙っている。1点取れれば乗っていける予感がある」(スカパー!)と言っていた黒木。乗ってほしい男です。

同点に追いついた熊本は齊藤に代えて養父を投入。再びダブルボランチ、4-4-2に戻します。これはもちろん逆転を狙っていくものの、落ち着きも持とうという意思のカード。前節、藤本、北嶋が憂いた“玉砕”モードの反省を見た気がしました。一方の富山は木本、苔口といったスピードスターを相次いで投入。完全に熊本DFの裏狙いを鮮明にしてきます。

一度リセットしたあと追加点の隙を窺おうという熊本でしたが、時間が足りませんでしたね。やはり前半のモヤモヤとした時間帯がもったいなかったし、後半早々は意外なほどの富山の圧力に少々手こずった。

富山が攻め込んでもバイタルから早々と撃ってくれたのもありますが、“あの場面”以外は、そうそう決定機は作らせませんでした。流れは色々ありましたが、熊本は富山の厳しく、早い寄せに対しても、決してロングボールを蹴らないぞ、という決意めいたものさえ感じるように、繋ぐ繋ぐ。ほぼ90分間、息もつかせず、激しくコンタクトして奪い、富山のプレスをサイドチェンジとワンツーダイレクトでかわしまくる。

但し、それは富山に攻撃面でサッカーをさせなかったという点において。富山にしてみればあれでよかったし、意図したことではないにせよ、あの流れのなかではよく粘り、よく守って、ゲームの裏側ではこれまた支配していたようにも思える。90分間、これまた途切れず走る。これが安間流なのか。真面目なチーム。そういう意味では、難しい相手であったし、内容の濃い試合でした。

3試合連続で先制されてから同点に追いつくという試合。引き分けは敗戦と同じというわれわれの見方はこれまで通りです。ただ、富山の変則的なシステムに対しても何ら戦術を変えず、自分たちのサッカーでぶれずに“勝ち”を目指した吉田・熊本。前述のように各試合、試合の入り方こそ違いがありましたし、東京Vも予想したほどのプレスがなかった。今日この富山が、ここのところでは一番プレスも強く、走り、最も上り調子のチームではなかったでしょうか。そういう意味では、同じ戦い方、同じ同点劇だからこそ、自チームの出来(完成度)が比較しやすいように思えます。

もうひとつ。この試合を見ていても気づかされる今年の特色は、中盤でのボールの奪い方。相手への体の入れ方、当たり方。前を向くテクニック。そしてこの新監督の教えと戦術にフィットしているのが仲間であり、齊藤、そして藤本だと思いました。今季の藤本はフリーマンであり、バランサーでありパサー。ピッチ上欠くべかざるその存在は、この試合で遂に今季初の90分間出場を果たしました。そして、実は今シーズンの養父が、なかなか途中から試合に入っても消えていることが多く感じるのも、今季のこのチーム戦術に訳があるのかと。養父の使い方はどうすれば一番効果的なのか。縁台将棋さながら、われわれは勝手に頭を悩ませています。昨季は藤本に対して悩んでいたんですが(笑)。

3月3日に開幕したわれわれのリーグも、早くも1カ月の日程を終えました。選手入場時にタオルマフラーを回すことにも徐々に慣れ、そして今節は新しく「HIKARI」の熱唱も加わりました。試合前のピッチ練習に現れた選手たちに注入する“魂”。共に闘うという“儀式”。それは感動的で、他のどのチームでも見たことがない、実に熊本らしいオリジナルのパフォーマンス。だからこそ今日こそはホームで初の勝ち点3を奪いたかったのですが…。

ホームのゴール裏で歌い踊る「カモン・ロッソ」は、4月17日の愛媛戦までおあずけ。溜りに溜まった鬱憤の発散で、そのときは大騒ぎになるかも知れませんね(笑)。もちろん、その前のアウェー連戦を一戦一戦大事に戦って、2連勝を飾って帰ってきてくれることが、まず望みですが。さあ、反転攻勢の4月になる予感がします。


8月26日(日) 2012 J2リーグ戦 第31節
熊本 3 - 0 富山 (19:06/熊本/10,530人)
得点者:30' 養父雄仁(熊本)、33' 片山奨典(熊本)、90'+3 大迫希(熊本)


KKウィングに向かう道の向こうに雨上がりの虹が架かっていて、何かちょっと悪くない兆しを暗示しているようで。夏休み最後の日曜日。久しぶりの動員試合。多分、昨年の富山戦以来となる本格動員。2試合連続の不完全燃焼の引き分け。何よりも”結果”が欲しいところでした。

富山は14試合勝ちから遠ざかり、最下位に沈んでいる。しかし、その変則的なシステムに、これまでもあまり相性はよくなかった。人に対して前から、速く、厳しく来るチーム。この試合もまさにそう。非常にタイトなゲームをしてきました。

富山20120826

試合序盤。これはもう主導権の奪い合い。ボールは落ち着かず、セカンドのつぶし合いに終始。富山のCK。一瞬の隙をついたように中央から福田が叩きつける。決められた!と思いましたが、ここ一番の南のファインセーブ。守護神から「この試合は絶対にゴールを割らせない」という気迫が伝わってくる。

振り返ってみればこの試合、完封したとはいえ危ない場面がなかったわけでは決してありませんでした。しかし最終ラインを割られた後ろには、最後の砦、ゴールに立ちはだかる南の絶対的な存在感がありました。一方、富山を見ると、明らかにDFとGKの連携に難が見られた。その”差”もこの勝敗を分けた要因のひとつではないかと思いました。

とにかく、決定的失点の場面を逃れた熊本は、富山の厳しいプレスをかいくぐり、パスワークでいなし、ずらして徐々に主導権を握っていきました。たとえば以前の富山だったら3-3-3-1の蛇腹のようなシステムで、入れ替わり立ち替わりのプレスが、まるで人数が多いように感じられた。しかし、この日はただの3-4-3にしか見えず、3人目、4人目と加わってワンタッチでボールを動かす熊本の方が、富山より人数が多いように見える不思議。

「『これは連戦でやっているのかな』というぐらいのパフォーマンス」と、高木監督も賞賛するほど。さらに、「選手たちがまだ秘めている力を引き出してもらった」のは、「今日駆けつけてくださった方達」だと、詰め掛けた大勢のファンにも感謝を示しました。

先制点は30分。Pアーク付近で貰った養父が切り返し、利き足ではない左足を振りぬいた。グラウンダーのシュートは、一度DFに当たってしまいますが、角度が変わってゴール隅に突き刺さる。

「やっと取れました(笑)」と本人も言うように、ようやく、ようやく決めてくれた。養父の移籍後、初ゴール。ゲームの重要な先制点を奪取しました。

追加点は片山。デザインされたCKからのサインプレー。これもPAの外から打ち抜くと、一旦DFに当たり、GKが反応できない弾道でゴールを割ります。

先制点、追加点とも相手選手に当たってのゴール。南は、「スタジアムの雰囲気や、サポーターの皆さんの“気”みたいなものが伝わって入ったゴール」(ブログ)と表現します。幸運のようにも思えますが、しかしそれは偶然でもまぐれでもなく。養父が「いつもよりシュートを打つ位置がゴールに近かったからああいう結果になったと思う」と冷静に言うように、十分にゴールに近い位置でゲームができたというところで「勝負あり」と言うべきでしょう。

後半、2点のビハインドを追いかける富山が、猛烈に押し込んできたのを”受ける”時間が長く続いたのは、致し方なかったかも知れません。前線の黒部に、苔口という速さ、さらには西川という高さを加えてきた富山。しかし、それにしても熊本にイージーミスが顔を出す。相手が技術やスピードで上回る、ということではなくての自滅的なミス。それは敵将・安間監督の「3点目を取られる前に1点差にするチャンスが何度もあった」という台詞を待つまでもなく、たまたま失点につながらなかったというだけで。確かにその後、ゲームはどちらに転んでも不思議ではありませんでした。

それまで前線からの守備、そして攻撃での崩しの一角として”汗をかいて”いた西森が、アクシデントで故障退場。その代わりに入った大迫。そして「前でポイントを作って攻めることも含めて」(高木監督)起用した北嶋というカードが良かった。

北嶋の登場に沸くスタジアム。予想以上に早い復帰。誰もがまさかこんなに早く出てくるとは思っていなかったでしょう。これも彼の”強い意志”なのか。これは富山のDFも、細心の注意を傾けざるを得ない。一気にチームは楽になる。みるみる熊本の士気が上げる。北嶋にゴールが生まれたときに発されるチームの雰囲気がどんなものか。そのときスタジアムは、どれぐらい”揺れる”のか。そんな想像さえしてしまいます。早くその瞬間が見たい。

2点差のままアディッショナルタイムに突入。このまま凌いで終わるのだろう。そう考えて家路を急ぐ人も現れた頃でした。最後の交代カードで入った仲間。カウンター攻撃で持ち込んだ。十分に相手DFを引き付けると、右から追いかけてきた大迫に渡す。大迫が冷静にこれをゴールに流し込み、駄目押しの3点目を決めました。

3度振られたタオルマフラー。スタンド中でくるくるとたくさんの赤い風車(かざぐるま)が回っているように振られる。色々なタイミングでタオルを振るほかのJチームのパフォーマンスより、われわれはこのわがチームの「得点シーン」で振られるタオルマフラーが一番好きです。どんなスポーツより難しくて貴重だと言われる1点の喜びを、スタジアム中一丸となって表現していると思うからです。

試合後、南や北嶋、藤本が、ゴール裏を指差し、ファンを誘導します。この勝利を一緒に喜ぼうと、栃木戦から始めた「come on rosso 」のチャントとパフォーマンス。この呼びかけにメインにいたファンも、バックにいた人々も大移動。南がまるで「赤い壁のような」と表現したゴール裏。全員での大合唱。真っ赤な壁が揺れている。

南ひとりでは変えられなかったことがあるのかも知れない。しかし、藤本が来て、さらに北嶋が加わったことで、何かが少しずつですが、変わってきているような気がする。

熊本の10番を背負う男のようやくのゴール。交代で入った仲間のアシスト。大迫のゴールという両若手の活躍。しかし不用意な、する必要のない場所、局面でのファール。パスの出し手へのプレッシャーが、一瞬、緩む時間帯など。少なくない課題。

15試合、勝ちがない状況になった富山・安間監督は、「この勝てない状況の中で本当にリスクを冒して挑んでくれた選手には、続けて欲しい」「今できる作業、やることをやっているならば、胸を張って切り替えて、愛媛戦に挑みたいと思います」とコメントしました。
「残留」と書いた緊急的な弾幕を貼った富山サポーターはしかしそれでも、このどん底のなか、試合後ゴール裏に挨拶に来た選手たちを叱咤激励しようとする。

色々な思いがこのスタジアムの、ほんの2時間ほどの時間のなかで交錯した。たくさんのことがあったこの日のゲーム。サッカーというスポーツにはいつも、多くのことを教えられます。今日の1万人のなかには、次は自前のタオルマフラーを振っている人がきっといるはず。そんな赤一色に染まるスタンドを夢想しながら、KKウィングを後にしました。

6月24日(日) 2012 J2リーグ戦 第21節
富山 0 - 2 熊本 (18:06/富山/3,750人)
得点者:2' 齊藤和樹(熊本)、37' 武富孝介(熊本)


水戸戦の高橋の先制点も開始2分。前節の齋藤の得点は3分。そしてこの試合も、記録上は2分になっていますが、実際の時計は1分そこそこではなかったでしょうか。このところ続く開始早々の得点。それは、試合の入り方の問題。様子見をせず、自分たちのサッカーで序盤から押していく。そんな姿勢の表れでしょうか。

富山戦

養父の右CK。低くて早いニアへのボールに、一瞬フリーで脚を振ることができた齊藤。相手のマークのミスといえばミス。「事前の分析で『CKの守りに対し富山の守りがゴール正面に集中すると思ったので、その横のスペースを狙った』。」(熊日)と、当の齋藤は冷静に振り返りますが、養父のボールも狙っていたポイントに入っている。齊藤もダイレクトでしっかりボールを捕えている。かなり難しいシュートでした。

2試合連続でスタメンの座を射止めた齊藤。前節のエントリーで厳しい注文をつけましたが、連続得点で結果を出した。これまでの空回りするような動きが、徐々に、安定した出場機会を得るようになって、次のプレーにつながる動き、回りをうまく使う動きが多くなってきた。今は使うほどにうまくなっていくのではと、そう思わせます。

熊本の守備システムをなかなか破れないでいた富山でしたが、それでも高木監督に「非常に強さ、速さを感じた」と言わせたプレッシングに熊本は手こずります。なかなか前線の選手に収まらない。サイドにも繋がらず、攻撃の厚みが作れない。そんな嫌な流れを払拭したのは武富の2点目でした。

37分。アタッキングサードで拾って拾って波状攻撃の熊本。相手を押し込んだ結果の明らかなクリアミス。そのボールはPA内で高く上がって武富のところに落ちてくる。落ち着き払ってダイレクトボレーで打ち抜く武富。ゴールに突き刺しました。

「味方からのパスを要求する声も聞こえた」という武富。おそらく”以前”の彼ならそうしていたかも知れません。しかし、「自分が一番ゴールに近かったから」と言う彼は、迷わず右足を振った。それは何より”ゴールを狙う”ということに一心だったから。あのPKの失敗から明らかに彼は変わった。一皮向けたとでも言うべきか。それがこの6試合で5ゴール、チーム得点王として8得点という結果に繋がっているとすれば、あのPK失敗も小さな代償でしかなかったと言えなくもないかも知れません。

相手GK・守田の感覚としては、「1失点目はマークを確認し切れなかった。前に入られてブラインドからシュートがきた。2失点目もDFに簡単にクリアさせて流れを切る選択をさせる声を出すべき。ピンチらしいピンチはその2つだけ」。確かにその通りとも言えますが、富山は他にも多くの目に見えないミスを、守備面でも攻撃面でも繰り返している。せっかく掴みかけたモメンタムを自ら手放しているような。黒部も苔口も、さらには朝日も欠く満身創痍な状態の富山。そんな苦しい台所事情もあったのかも知れません。(逆に、熊本がそこにさらにつけ込めなかったということは反省点でもあるのですが。)しかし、曲者の大西をサイドの奥に封じ込め、ソ・ヨンドクにも仕事らしい仕事をさせなかった。

先制点もあって、これまでになく安心して見ていられたということはあります。主導権ということで注目すべきは、とくに後半。富山側から見てみれば、試合を終わらせてしまう3点目を奪われたくない、ということが最も大きかったのかもしれない。そのあたりの”心理的な攻防”というところも含めて、リーグ戦前半を戦ってきて、積み重ねたものが見えたのがこの後半だったと思います。ピンチらしいピンチはほとんんどなく(試合を通じても与えたCKは1本だけ)。繋ぐ、蹴るのプレーの判断がはっきりしている。吉井を中心にした3バックの読みベースの守備は、さらに的確さを増している。裏に抜けようとする相手FWの動きを完全に封じていました。試合自体(得点)は動きませんでしたが、非常に見ごたえのある後半45分だったといえましょう。したたかな零封勝利。

18位の順位は変わりませんが、これで21位富山との勝ち点差は9に広がり、直下の岐阜とは2試合差になりました。それにしても前半戦最後の試合にして、ようやくの敵地での初勝利。関東圏のサポーターに、やっとゴールシーンと勝利を届けることができたのも、今季の”苦しさ”を表しています。

次節は、5月の対戦で0-4の完敗を喫した千葉。あのフクアリのアウェーの雰囲気に呑まれた選手も多かった。しかし振り返ってみれば、あの大敗以来、実は6試合で3勝2分1敗と着実に勝ち点を積んできている熊本。前半最終戦で、きっちりとアウェー勝利のケジメをつけた熊本。後半戦のスタートにあたり、強豪相手にどんな試合ができるか。どれほど調子を上げたと言えるか。それは”もうひとつの開幕戦”ともいえるリ・スタートの大事な一戦。

今週の木曜日。NHK夜8時からの「仕事ハッケン伝」ではロアッソ熊本が特集されます。スピードワゴン小沢一敬の奮闘と涙を前に、スタジアムに足を運ぼうという機運もきっと高まるのではないでしょうか。フクアリにはまだまだ及ばないかも知れない。しかし、最高のホームの雰囲気で選手たちを後押ししたい。勝ちたい。勝たせたい。番組もとても楽しみですが、試合はもっと楽しみです。


7月17日(日) 2011 J2リーグ戦 第21節
熊本 1 - 1 富山 (19:05/熊本/25,005人)
得点者:22' 苔口卓也(富山)、74' 根占真伍(熊本)

試合前日の土曜日、夕方に床屋のイサムちゃんの店へ。椅子に腰掛けると、テレビにはスカパーの栃木・鳥栖戦のライブ映像が(スカパーのJ2を放送しているっていう床屋も珍しいですが…)。「堤が栃木に期限付きで移籍だそうですね。オレ割と好きな選手だったんですよ」などと旬な話題を振ってくる。「明日は動員かかってますよね」とも。でも最後はいつものように「今、誰が一番年俸が高いッスかね?」などという“興味”に行ってしまうところは、まるで「浮世床」です。そしてその動員の結果が2万5千人ということに。本当に隔世の感があります。

試合開始1時間半ほど前に、第二空港線側から休み休み自転車で向かいましたが、今まで目撃したことがない車の列、列。大渋滞。いくら動員試合とは言え、ここまでのものは経験したことがなかった。スタジアム・グルメの屋台はどこも長い行列で。強い西日の差しこむバックスタンドはあふれんばかりの人でごった返して。そして丁度、まるで約束したかのようなタイミングで、キックオフと同時に太陽は山影に隠れていきました。

しかしどうなんでしょうか。この大動員は果たしてチームの戦いに奏功したのか否かという意味では、ちょっと複雑な感じです。キックオフの笛が鳴っても、そこかしこで席を探して動いているスタンド。“買い物”に席を立ったままの人々。選手入場にマフラーを掲げても、どこかしらざわついたままのスタンドに、観ているこちらも集中力をそがれてしまいます。

熊 本
9長沢 27ファビオ
13大迫14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王18矢野
 18南 

富 山
10苔口
17木本8大西
7朝日
16谷田6西野
15平出
28福田2足助
4江添
21飯田

今日の試合は、前半の失点が全てと言ってもいいかも知れません。12分には市村からのクロスに長沢があと一歩早ければ。17分にも長沢のトラップから振り向きざまのシュートなど、熊本の攻勢が強かったのですが。22分、熊本が原田も上がっての攻撃のあと。富山はGKからすばやくそのサイドの大西に。そしてハーフウェイラインほどの大西は前線の苔口に。苔口は、福王の視界の外から鋭いスピードで裏を取ってきた。苔口の足元に収まったときは、時すでに遅しでした。“あっさり”“シンプル”という感じて、富山の先制弾が突き刺さります。まさしくワンチャンス。富山は最初のシュートを得点に結び付けました。

高木監督は「相手も押し込まれる時間があれば、カウンターというのは1つの狙いとしてある。それをスカウティングでも映像でも、言葉でも伝えた中で、ああいうシーンを作られてしまうのは、僕の力不足なのか…」と嘆きました。

大西と苔口のコンビネーションから奪われた先制ゴール。よくよく見ると、カウンターの切れ味というよりも、いったんタメてスローダウンして、熊本ディフェンスのタイミングをひとつ外して、フッと油断させてのラストパス。福王からすれば追いつけると思ったパスだった。しかし苔口の入り方がうまかった。戦前「知っているからこそ怖さが分かる」(J‘sゴール)と元同僚(セレッソ)の苔口のことを評していた福王でしたが、完全にしてやられた。高木監督が警戒に警戒していたものとはちょっと違うような。「その前の苔口選手がオフの時のポジショニングが良かったのかということを考えれば、非常に回答しづらいシーン」とまわりくどく言っているように、ちょっと残念な失点シーンでした。

富山に先制点を与えたことで、ゲームのコントロールを完全に相手側に奪われてしまったことがこの試合をさらに難しくしてしまいました。熊本はその後も波状攻撃。しかしゴールは割れない。狭いところ狭いところにボールを運んでしまう。ロングボールを多用して縦には揺さぶれるのですが、3-3-3-1の弱点たる横方向をワイドに揺さぶることはできない。

それでも35分には原田の鋭いFKにGKが弾いたところをエジミウソンとファビオが詰めますが富山がクリア。スローインから長沢が落としてエジミウソンのシュートはバーの上。惜しい場面は続きます。しかし、前半のうちに追いついておきたい熊本でしたが、富山の組織的な守りに対して、どことなく手詰まり感があったのも確かです。

「まず0-0の時間を長くしようということで入っています。J1を狙うチームにとっては、僕達みたいなチームとの引き分けは痛いと思います。いろいろなものを利用していかないと、僕たちは勝点を取れない状況です」と安間貴義監督。

苦手意識とまではいかないまでも、何とも言えない戦いにくさを感じる富山。現状での戦力面のウィークポイントなど、自らのポジションを正確に受け止めたうえでの知将・安間監督の知恵。熊本との心理面のやり取りも含めて「いろいろなものを利用する」戦い。前節・鳥栖に勝ち、そして熊本に引き分けたこの流れは、最高の結果なのでしょう。彼我の戦力差を冷徹なまでに見切ったうえで仕掛けてくる安間の“弱者の戦略”。恐るべしと言わざるを得ません。

そして2万5千人の大観衆。初めての経験。応援はパワーにもなるけれど、プレッシャーにもなりかねない。もともとリスクマネジメントが徹底している熊本。大観衆の存在が試合運びをより保守的にしたかもしれない。それは逆に言えば、この相手の大観衆をも敵将は巧妙に利用したのかもしれません。

大迫に代えて仲間。武富に代えて西森。熊本が同点に追いついたのは、ようやく後半も30分近くになってからでした。市村からのクロスに長沢のヘッドはどんぴしゃでしたがGKがクリア。拾って再び市村が入れる。中の仲間に当たってこぼれたところを根占が一閃。隙間のないエリア内でボールはゴールに突き刺さる。同点弾。吠えるスタジアム。そのとき2万5千人のスタンドが、ようやく一体になった感じがしました。

すぐさま熊本は福王を下げてソンジンを入れる。それも前線に入れて3タワーのパワープレーに。正直、あまりわれわれの好みの戦術ではありませんでしたが、エリア内に林立する富山の人数に対しては“高さ”で勝負するという選択だったのかも知れません。そしてこの素早い決断は、高木監督の何が何でも勝つという強い意思を感じるには十分でした。

終わってみれば両者のシュート数は熊本の13に対して富山の3。7回あったCKも、同じくFKも、熊本は十分には活かすことができませんでした。“あっさり”と奪った先制点のあと、しっかり富山に守られて焦らされた熊本。なんとか同点弾を沈めてドローに追いつくことが、今の精一杯の実力だったのかも知れません。

6勝2敗8分。3試合連続引き分けという結果。引き分け数は実にリーグトップ。こうなってくると引き分けの受け入れ方も微妙になってきます。メンタル的には“負けない熊本”であり“切れない熊本”。そして“波の少ない熊本”ということなんですが…。同じく上位陣がうまいぐあいに引き分けなどで足踏みしたこの節。浮上のチャンスを棒に振ったのかも知れないが、結果幸いだったかも知れない。いやいや、ここで迷ってどうする。熊本はまだまだ全くの発展途上。今シーズン、まだ一度も好調の波に乗ったことがない。我慢、我慢。時は必ずやってくるのだと。

さて、そんな複雑な気分の深夜未明。わがなでしこジャパンのワールドカップ初優勝という歴史に残る感動のシーンも、眠い目をこすりながら“目撃”しましたが、われわれの世代としては、サッカーの元日本代表にして日本代表監督も務めたあの森孝慈氏の突然の訃報に触れないわけにはいかないでしょう。選手として68年のメキシコ五輪で銅メダルを獲得するなど、日本サッカー界のために力を尽くされた森氏。そのご冥福を心よりお祈りします。


6月4日(土)  2011 J2リーグ戦 第15節
富山 1 - 1 熊本 (17:04/富山/2,390人)
得点者 : 28' 森泰次郎(富山)、77' 片山奨典(熊本)


上位陣がいずれも足踏みしてくれたこの節、結果的にはわがチームもまたお付き合いする格好になりました。「追いつけたのは少し成長した点だが、勝ちきれないのはまだまだということ」(熊日朝刊)という試合後の南の談話。それが全てを言い表しているような気がします。

安間監督率いる富山、昨シーズンの対戦でその3―3―3―1の斬新なシステムに翻弄された印象が強く残っていました。ただ、一方で今回は密かな期待も。変則とも言えるこのシステムに対しては、うちの中盤ダイヤモンドが“はまる”のではないかと。前回の対戦時も、後半途中に藤田を投入し中盤をダイヤモンドにしてからは攻勢を得た。それを思い出したからです。そういう意味でもこの試合、今シーズン一貫してトップ下を勤めるファビオに対する期待が大きかったのは確かです。そして次々と飛び出してくる富山の2列目、3列目に対しての対処。中盤の底のエジミウソンの働きの重要性も。そのエジミウソンの腕に、この試合のキャプテンマークが巻かれていました。

富 山
10苔口
7朝日8大西
9黒部
15平出6西野
25森
24松原19池端
27吉川
1内藤


熊 本
9長沢14武富
 27ファビオ 
23根占22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
16矢野4廣井
 18南 

開始早々、ロングフィードに長沢が飛び出す。うまく体を入れてDF3人を置き去りにしキーパーと1対1の決定的チャンス。しかしシュートは枠を外れます。この日、先発初出場の富山のDF松原は相当緊張していたらしい。「たら」「れば」は御法度ですが、ここを決めていたら、完全にこのルーキーを自滅させることができたのでしょう。しかし逆にこれで目が覚めた松原に、長沢が完全に密着される。まるでオーロイに熊本がしたことのように、長沢から制空権を奪ってしまいました。

それにしても安間監督によく研究されていましたね。それは現地のゴール裏からも感じられたらしい。富山のキープレーヤーの大西が、その攻撃性を封印して、左SBの原田を密着マーク。上がらせないだけでなく、ここが熊本のボールの出所とまで見切って自由にさせませんでした。当然、市村への大きなサイドチェンジのパスも通らない。サイドが隙の3バックの背後をなかなか突けずに、逆に密集する中へ中へと絞り込まれていくようでした。

立ち上がりのバタバタ感から次第に富山も落ち着いてきました。セットプレーからのロングボール。ポストで落として右に流れたところに俊足の苔口が走り込みクロスを入れるとファーにも何人も飛び込んでいる。富山らしい攻撃、熊本の危ない場面。失点は続くCKの流れからでした。クリアボールをボランチの森が詰めてきてミドルで打つ。DFに当たって角度を変えたシュートが、熊本のゴール左角に転がり込んでしまいます。

事故といえば事故だし、クリアが小さい、クリアのセカンドに詰めていない、と言えば言えるし…といった失点でした。もちろん、先制されて慌てるほど、今の熊本は”若く”はないという落ち着きは確かにありました。しかし、それにしても同点に追いつくまでに時間がかかりすぎました。前線でボールが収まらない熊本。縦のボールが通らない。後半すぐに指揮官はファビオを諦め、片山を投入。吉井に代えて大迫。突っかけていく選手が前線で増えることによって、徐々に熊本がポゼッションを獲得する。市村が対峙する朝日を押し込み始めます。

ようやくの77分、根占からのパスに後方から走り込む市村。猛スピードのまま右サイドを突くと相手DFは付ききれない。速いクロスはファーサイドにこぼれて、フリーの片山のシュートが突き刺さる。完全に崩しきった一連の攻撃。やはり今日も市村のオーバーラップからでした。

ここからゲームはオープンな展開に。富山も勝ちたい。YKKのDNAを感じさせる鋭いカウンター攻撃。たぶんあの時代の選手はもはや朝日しか残っていないはずなのですが…。残り時間10分。ここで熊本はエジミウソンを下げて宇留野を投入。われわれは高木監督の強いメッセージを込めた交代と感じました。「点を取りに行く」という意志を、チームにだけでなく、彼のこと、彼の怖さをよく知っているはずの敵将・安間監督にも示す。

主導権の奪い合いはしかし、互いのゴールを揺らすことはできず、終了間際には前節・北九州に押し込まれた経験を逆に活かすように、富山が熊本のゴールを脅かし、それでも守りきった熊本が勝ち点1をもぎ取ったという終わり方になりました。

アウェイで勝ち点1。先制されたが、点を取りに行って追いついた。これで6試合負けなし…。これまでなら「悪くない結果だ」。そう言ってしまいそうです。しかし、今募るこのモヤモヤ感は何なのでしょう。評価の難しいゲーム。われわれが感じるこの難しさは何なのでしょうか。「昇格争いをしている熊本から勝ち点1を取れたのはとても大きい(熊日朝刊)」という安間監督のコメントはいかにも謙虚すぎるし、鵜呑みにはできません。が、あの戦略家に単なるスカウティングということだけでなく“研究”されていたということ。研究される対象になってしまったということは確かなようです。

この試合、前半だけならよく言う“何も得るもののない試合”だったし、全く安間監督にしてやられた試合ということだったでしょう。しかし、追いついた熊本。その修正力、復元力には確かなものが感じられました。ハーフタイムで監督が指示するだけでなく、選手一人一人にもそういったゲーム観が感じられる。ベンチには局面を打開できそうな選手がいる。選手の疲労度ではなく、戦術的な交代が目に付く。そういうチーム全体の成長も実感できていると思うのです。

前々節・千葉戦のエントリーで“試合後の高木監督のコメントを読んで、この戦術家がその試合に臨んだスカウティングやゲームプランを、素人分析ながらもあれこれと推測することが、われわれの楽しみのひとつになってきています”と書きました。この試合でも高木監督は気になるコメントを残しています。「自分の中でもまだ考えの整理がついていないが」と前置きし、主に前半の問題点を分析した後、「ここでは具体的には言えないが、自分に大きなミスがあって本来なら追加点が取れたかもしれないのに奪うことができなかった」(J'sGOAL)と。喰い付かずにはおれません。

思うに、大迫、その次の宇留野を入れたあたりの、選手起用なのか順番なのか。あるいは指示した”役割”について戦術的な反省があったのか。素人目にはそれ以上のことは読み取れませんが、ただ、それが追加点を奪いに行って、奪えなかったことと直結した反省であり、勝ち点1という結果に全然満足していないということだけは確かなようです。

冒頭の南の言葉が、このモヤモヤ感を言い表しているのでしょう。後半同点に追いつくことができるようになった”強さ”はしかし、昇格を目指すチームが持つべき逆転する”強さ”にまでは至っていないということ。それはわれわれファンにとっても言えることで、なんだかんだ言ってもまだ一喜一憂の根性が抜けていないような。強者の、上位の、昇格する者のメンタリティーが、まだ身についていないのかなと。

次節、いよいよ強敵、難敵・FC東京をホームに迎えます。これまた「相手のいいところを消すようなスカウティング」を得意とする高木監督にとっては、腕の見せ所のようなカード。監督の戦術、選手たちの闘志、そしてわれわれファンの総力。FC東京をねじ伏せて昇格ラインをはっきりと見据えたい。さあ、負けられない試合がずっと続きます。