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7月14日(日)
【J3第16節】(えがおS)
熊本 2-1(前半0-0)富山
<得点者>
[熊]伊東俊(71分)、中山雄登(77分)
[富]ルーカス・ダウベルマン(47分)
観衆:5,093人
主審:野堀桂佑


いやぁ、先制点を与えてしまうのは反省すべきですが、またまたそこからの5度目の逆転劇。試合後の“カモン!ロッソ”も大賑わいでしたね。

今節、北九州がセレッソU23に敗れたため、勝ち点差を4に広げることにもなりました。まだまだ首位固めというには早すぎますが、このまま勝ち点を積み上げていきたいものです。

富山とは5年ぶりの対戦。DAZNの実況アナも触れていましたが、あの年、富山には中島翔哉、うちには橋本拳人が居て対戦しています(2014.08.25 富山戦。巻初得点で完封勝利)。今では二人とも日本代表選手ですから感慨深いものがあります。

伊東、八久保、中原、村上。熊本は先発を4人入れ替えた新鮮な布陣。伊東は第3節以来の出場。

20190714富山

試合は、序盤から富山が迫力を持って攻撃を仕掛けてきました。全体的に高さもあるし、スピードもある。ワントップの田中が落として、シャドーの佐々木からのスルーパスに伊藤が抜け出しGK山本と1対1。これは反応良く山本が防いだが、危ないシーンでした。

一方、守るときは3バックの脇に中盤が下りて、5-4-1でスペースをつぶす。熊本はサイドへのロングフィードを狙うしかない。

「少し新しいことを守備ではトライしたので」(熊本蹴球通信・渋谷監督)、「前半は巧くんを左に落とす感じだった」(同・上村選手)と両者が言うように、ボールを持ったら高瀬を上げて、そのスペースを村上が埋める。そこを前節いいように使われたからの狙いだったのでしょうが、今度は上村の脇を相手ボランチに使われてピンチを招きます。

35分頃だったでしょうか。富山の田中が痛んで試合がストップしている間に、さかんに北嶋コーチが選手たちに指示を送っている姿がありましたが、この時点でポジショニングの修正があったのではないでしょうか、村上がアンカーぎみにプレーし始めます。「慣れている景色の方がいいんではないかということで」(同・渋谷監督)後半からはさらに立ち位置を元に戻したようです。

ただ、先制点は富山でした。後半開始早々のCKからの混戦をDFルーカス・ダウベルマンが押し込む。

しかし、熊本はこの後のベンチワークが冴えていました。「落ち着くところを作りたかった」(同・渋谷監督)と、北村に代えて中山を送り込み、伊東と八久保の2トップにすると、次は中原に代えて三島を投入し、伊東を右にスライドさせた。すると71分、高瀬からのアーリークロスを三島が落とすと、八久保のシュートはDFに当たってファーサイドに跳ね上がった。そこに入りこんだ伊東がダイレクトボレーで同点弾とします。

やっと、あの壮行会での約束を果たしてくれました(2019.02.22 出陣前)。

続く77分には、右で作って伊東がえぐると、グラウンダーのマイナスパス。Pエリア内の中山に通ると、落ち着いてゴールに突き刺し逆転。富山の守備の要、ルーカスの動きの逆を捉えた伊東のパス。ルーカスはニアの八久保へのパスと読んで、即座に詰めに行ったのかも知れませんが、ぽっかりとエリア内にスペースが空きました。

ベンチでは3枚目のカードを田辺で準備していたようでしたが、この追加点を得て、急遽小谷に変更。残りの時間を使い切り、逃げ切りました。

ポジショニング、交代カードを含め、試合中の修正が相手を苦しめ、勝利を手繰り寄せた。際どい勝負ではありましたが、痛快なゲームとも言えるでしょう。

試合前は、岡本の鳥栖移籍が噂され、そのためのフォーメーション変更と思っていましたが、試合後、公式サイトでは故障が報告されました。移籍であれ、長期離脱であれ、いずれにしても重要な“駒”を失うことには代わりなく。

そんななかで試された新しい戦術、新たな組み合わせ、戦列に復帰した選手・・・。

やがて折り返しを迎えるリーグ戦にあって、研究され、また首位相手に一泡吹かせてやろうと、がむしゃらに向かってくるだろうと今後も想像できる。そんななかで、さらに一歩進化していく。大事なことだと思いました。

8月24日(日) 2014 J2リーグ戦 第28節
富山 0 - 2 熊本 (18:04/富山/3,371人)
得点者:52' 養父雄仁(熊本)、75' 巻誠一郎(熊本)


後半30分。熊本のFKの際の小競り合いで巻が倒され、相手DF秋本にはレッドカードが。与えられたPKの機会。真っ先にボールを持ったのは巻自身でした。「利き足は頭」と自らが認める男が、PKを蹴る姿はこれまで見たことがない。見ているこちらも動悸がするほど。画面の向こうのサポーターも手を合わせて祈っている。放たれたシュートがゴールネットを揺らした瞬間、本当にホッとため息がでました。想像していたようなシーンとはちょっと違うけれど、待ちに待った巻の移籍後初ゴールでした。

20140824富山

2-0での勝利。2試合連続の無失点。この字面だけなら、熊日が書くとおり「理想的な展開」と言うことですが…。実際のゲームは、主導権を取っているように見えて、なかなか攻めきれない時間帯が続く。逆に危ういシーンもあり、なんとか守り切ってくれと祈るような前半でした。

「パスをつなぎボールを動かせる時間は長かったが、前半はそれが相手のシナリオの上で進んでいて、危ないシーンがあることが気になっていた。」(小野監督)
「スピードを上げさせずに相手の特長を消し、ボールを持つ時間を長くしながら決定機を探る前半だった。」(富山・安間貴義監督)

両監督の見立ても符合する。熊本は、ブロックとは言わないまでも、自陣全体をゾーンディフェンスしているような富山の守備にスペースを消され、持ち味のタテの速さが封印され、サイドで行き詰まり、攻め手が見つからない格好。フラストレーションの溜まる展開。

これまでであれば、前半の終わりあたりに先制をくらって、一気にゲーム運びが厳しくなるような展開…などとテレビの前で不吉な想像をめぐらせていました。

それでも、富山にはそれ以上に攻勢に出るパワーは感じられず、熊本も焦れてバランスを崩すということもなく、何とか前半を終了。

そしてハーフタイム。「相手DFをいかにして後ろ向きにするか。前半はゴールを背にして守られていたので、なんとか裏返すことを考えようと話した。」という小野監督。
それに対して、「後半は熊本がまだ出してきていない養父君の飛び出しやミドルシュートがあるぞ、とハーフタイムに話していたが(養父選手に)先制点を決められた。その直前の斜めからの進入には対応したが、2次攻撃に反応できなかった。」という安間監督と、これもまた何となく同じようなイメージを描いているようで面白い。

「なんとか裏返すことを考えよう」という表現で選手にイメージを植えつけた指揮官。事実、後半は出だしからボール奪取のエネルギーがさらに高まり、高い位置の起点から攻勢を強めます。

このあたりのベンチワークの攻防。安間監督は、後半11分に井澤に代えて木本を投入した理由を問われて、「後半に入って中盤でパスがひっかかる場面があったので、もう1つ前に飛ばすことでゲーム(のテンポ)を速くしようとした。」「DFの背後にボールが行かなくなっていたので、ボールを隠すよりも、仕掛けるために早めの交代になった。」と答えます。

2-0ではあるが、印象としては“辛勝”。富山にはしっかり守られてしまいました。ただ、先制の場面、熊本の2次攻撃の揺さぶりに、一瞬、斎藤、養父への対応が遅れてしまった。熊本はこの一瞬を逃さず決めることができた。結果論ですが、いつものように勝敗を分けたのは後半の立ち上がり10分ということでした。

ある意味で、前半、受けて勝機を窺った富山に対して、あくまでも主導権を握ろうとした熊本は、後半への入り方、向かい方の部分で、具体的な攻撃面のバリエーションがイメージできていたのではないでしょうか。また、そのイメージの多彩さとそれを実際にプレーできたということ。そして、それを裏付けたのは誰の目にも明らかな、ボール奪取という基本戦術。プレスだけに終わらない、奪い切る連携。

久々の勝ち点3。ちょっと浮かれて、結果論というのもわかりきっているけれど、チームの成長というより、少しばかり強くなってきたな。そんなことを言ってみたくなる。

「シーズン立ち上げ当初は前線でアグレッシブにボールを奪いにいって素早くゴールを目指した。少しずつチームを成長させるために主導権を握るかたちを採り入れていった。夏場ということもある。かじを切り過ぎて、カウンターを食らったり、自分たちの良さが出なかったりした試合も何度かあり苦い経験はしてきた。つなぐところと脅威を与えるところのバランスが必要。」と、チームの現在を語る小野監督。

勝ちゲームだからこそ聞けるコメントでしょうが。引き分けの前節・千葉戦を今シーズン最高のゲームだったと振り返った指揮官。今日も、思うようにいかなかった前半から、より戦術的に、さらにアグレッシブに切り替えての後半。ラッキーもアンラッキーも含めてのこのゲーム。前節とは違った意味で、新たな到達点を示してくれるゲームではなかったかなと思います。

5月31日(土) 2014 J2リーグ戦 第16節
熊本 2 - 0 富山 (14:03/水前寺/3,580人)
得点者:34' 岡本賢明(熊本)、39' 養父雄仁(熊本)


前節、讃岐に敗れて5連敗中の富山。開幕前、七城での練習試合で見た富山からしたら、こんなに不調なのが不思議で仕方がない。養父も戦前「いまの順位を見て試合をやると痛い目にあう」(ERGOLAZOweb版)と警戒を怠りませんでした。

もちろんこちら熊本も7試合未勝利。引き分けてはいるが、勝てていないことは同じ。お互いに多くの課題を抱え、何より、どうしても勝ちたいという気持ちが溢れ出るようなチーム状態なのに違いはありませんでした。

しかしながら…。確かに、勝った。勝ち切った。押し切った。とは思ったけれど、それはそこまでで。突き上げるような喜びではなく、なんかホッとしたというような。

熊本もこの間、決して下を向いていたわけでなく、ひとつの答えを求める生みの苦しみのような状態だったわけで。まさに今日の勝利という結果に対しては「勝点3というものでチームの成長とやっているサッカーに対する自信、それからさらに1歩前に出て行く力というものが絶対に必要」と小野監督が言うように、さらに先を見据えた受け止めというのが正直なところでしょう。

「今日は、前半はいつも通りに入れて、後半から自分たちの時間をどれだけ長くするかが課題だった…」と園田が振り返るように、熊本の課題は明確でした。この点は、監督も選手も、そしてわれわれファンも共通していました。

そしてこの課題は、戦術、メンタル、フィジカル…様々な要素が複雑に絡み合ってはいますが、少なくとも、リーグ戦の今のこの時点で“決定力不足”とか“守備に不安”などという掴みづらいものではなく、チーム全体がかなり先に進んだ結果としてこの課題を共有できている。“成長したなあ”と実感させられます。

20140531富山

試合への入り具合はいつも通りアグレッシブ。はっきりと主導権を握りましたが、その後は「局面局面では非常に技術があり」「どんな試合でも必ず決定機を作っている」(小野監督)と警戒していた富山のシンプルなサイドへの展開に後手を踏む場面もあり、防戦にまわる時間帯もありました。

しかし、「リードして後半に追いつかれるという展開が何回かあったんですけど、今週はそれに関して、特に紅白マッチで激しくやって、しっかりと課題を克服してくれて、この試合に臨んでくれたんじゃないかと」と言う小野監督。練習の意識もそこに集中していたことが分かります。

さらに「勝利に貢献できてよかったなという気持ちと、これで油断して次から勝てなくなるのも怖いので、しっかり危機感を持ってやりたい。」とは、この日先制点をあげた岡本。ベテランのこの言葉、すでに次へ向けてのメンタルを具体的に方向づけています。

そして、この試合のもうひとつのエポックは、上村周平。チーム創設10年目、ユース出身選手が、初めてトップチームの公式戦に出場機会を得たこと。われわれは、決して大げさではなく、チームの歴史に新たな、大きな一章が書き加えられたと感じました。全くゼロの何もないところからスタートした下部育成組織。選手本人の努力はもとより、関係の方々のご苦労に心からの敬意を申し上げます。

それに何の何の、顔見せ程度の出場などではなく、まだまだ時間はたっぷりあるという場面。戦術的にも、“今日の課題”をクリアできるかどうかの胸突き八丁の時間帯での投入。いやむしろ、どっちに転ぶかわからない“今日の課題”を熊本に引き寄せるための切り札として起用されたようにも見えました。

激しいボディコンタクトから何度もボールを奪取。プレー選択の判断は的確で、チームのリズムを加速させる。視野の広さとセンスを見せつけるような正確なサイドチェンジ。ゴール前の巻へのピンポイントのクロスはあわや初アシストか…と。待てよ…。上村が送ったクロスに巻が飛び込む…。熊本のサッカー今昔物語がギッシリと凝縮されたような瞬間。思いもかけずこんな凄いシーンが目の当たりに…。一瞬、思考が止まってしまいました(笑)。
ああ…。なんて幸せなんだろう…。

1995年、益城町の生まれ。18歳。これはもう、この年寄りの胸が久しぶりに高鳴ります。ワクワクです。

そして今日の小野語録は、なんといってもハーフタイムのコメント。「誰もいない芝生を味方に」は、かなり深い。

「もらいたいスペースにあまり早く入りすぎるな。相手を引き連れてそこに入ってきちゃいけないと、できる限り空けて、最後の瞬間まで空けてからそのスペースを使えと。」
試合後、丁寧に解説してくれましたが、なかなか想像力を駆り立ててくれる言葉です。われわれは、試合の終盤近く、“この誰もいない芝生”に大きく展開することで、相手の最後のスタミナと戦意を挫くような、そんな意図さえ感じてしまいました。

高校総体の余波での水前寺開催。30度以上の酷暑のなかでの14時キックオフのゲーム。しかし、澤田のスピードは終盤になっても全く衰えず、巻は「このくらいの暑さが心地よい」(スカパー)と言ってのけました。そうか、彼らはそれこそ高校時代、この暑さのなかの熊本で総体を戦ってきたのでした。(その当時から準決勝、決勝は、この水前寺競技場でしたね)。地元出身選手が多いという特徴は、意外にこんなところでチームの強みになってくるのかも知れません。

10月6日(日) 2013 J2リーグ戦 第36節
富山 1 - 2 熊本 (13:04/富山/4,942人)
得点者:18' 高橋祐太郎(熊本)、27' 大迫希(熊本)、75' キムヨングン(富山)


リーグ戦連勝です。徳島、東京V、水戸、札幌、富山。これで天皇杯以来、5試合負けなし。何と4勝1分け。勝ち点1差の富山との戦い。勝っても順位こそ変わりませんが、われわれの精神衛生面は申し分ないといった感じです(笑)。

今節、熊本は3トップの一角に仲間を入れてきました。前節、札幌相手に勝利したものの、ウーゴ、養父、齊藤のトライアングルには正直不満が残りました。それは足元へのパスを欲しがるタイプばかりだったからかも知れない。今日は、仲間の裏への飛び出しに大いに期待が持てました。

対する富山は、池谷監督代行の言葉を借りれば、「前からプレッシャーをかけ、縦に速く攻める。うちが一番苦手にしているタイプ」。前節、ハットトリックで福岡を沈めた苔口には、うちも過去に煮え湯を飲まされたこともある。要注意人物でした。

20131006富山

しかし。「かなり厳しくプレッシャーにくると想定していたが、始まってみると前を向けたし、パスコースも見つけることができた」と吉井が言うように、試合開始から序盤、寄せも緩く、きちんとボールを持てる。いつぞやのエントリーで「まるで蛇腹のようだ」と表現した、変則的で流動的に数的優位を作るシステムではなく、4-2-3-1というある意味現在ではオーソドックスな布陣が、相対する熊本にマッチしたせいもあるのでしょうか。相手ペースにはまることなく、うまく、無難にゲームに入ることができました。

「富山は普通ならボランチにパスするケースでも苔口に出してきた」(熊日)と言う青木。苔口への飛び出しへのケアを第一に。要所のタテを入れさせない。「一度振り切られた」ところでは高橋がカバー。「祐太郎が頼もしく見えた」と青木も言う。だって、巻、高原、鈴木という元日本代表FWを連戦のなかで相手にしてきた。そして彼らと厳しいせめぎあいを重ねてきたのですから。

前節、札幌戦の試合後、「あくまでうちは5-4-1ではなくて3トップ。守る時が5-4-1で攻撃のときはFW3枚なので、そこをやっぱり3枚になる状況をいかに作れるか」「ウイングバックまで入れれば4枚、5枚になっていく、そういう状況を作れるようなゲーム展開が欲しい」と戦術を解説してくれた池谷代行。

今日も5-4-1の守備ベースではあるが、やや緩い相手の寄せに乗じて、3トップ、ウイングバック、ボランチまで連動して3枚、4枚、5枚で攻め込む場面が。

前半18分、右からのCK。大迫が蹴ったボールは、ゾーンで守る富山の守備から遠ざかるように弧を描く。それは、相手の頭ふたつ上、高橋の高い打点にまさにピンポイント。鋭いヘディングシュートは、GKが弾くもゴール内に転がり込みました。

前節に続いてセットプレーからの先制点。これは大きい。

10分後には追加点。富山・苔口がエリアに侵入。それを高橋がカットしてからの反転。吉井が、右サイドを駆け上がる大迫に出すと、ひとりDFを抜いた大迫が、角度のないところからニアに打ち抜く。素晴らしいシュート精度でゴールに突き刺しました。

さて、この試合もお互いの交代、ベンチワークが戦術に直結して、戦況を微妙に、また、大きく変えていった試合でした。

まずは、開始早々の原田の怪我というアクシデント退場に対する高橋の投入。吉井を1枚上げ、高橋を投入という立体的なシフト変更。養父を1枚下げる、もあり得たのでしょうが、守備ベースの基本線に則った交代と思えました。その吉井、高橋が攻守に絡み、単なる交代以上の効果を生み出していく。

そして、ハーフタイム、富山のDFヤン・ヘジュンからMFソ・ヨンドクの交代。これによって富山は、4バックで熊本の前線、中盤とのミスマッチが生じていたシステムを修正。後半、富山の攻勢のきっかけを作った戦術変更でした。

さらに、後半14分、熊本は仲間から筑城への交代。縦横に動きまわり、球際の強さも際立ち、間違いなく”躍動”していた仲間を、残り時間30分の段階で交代。5-4-1でブロックしていた熊本が、今度は4バックに変更します。ちょっと受けに回るのは早過ぎないか、とわれわれは思いました。しかし、より重心を後ろに、サイドのケアもしながら、“確信犯”で守りきる決断をしたような。そんなメッセージの交代だったのかもしれません。

後半22分に、富山は「最終ラインに圧力をかけられる、走れる選手」として村松をチョイスします。「熊本は札幌と対戦した前節、相手が長身のフェホ選手を入れたことで逆に楽になっていた。それもあって動きのある選手を中心にチャレンジすることにした」という敵将・安間監督のスカウティングによる判断でした。

さらに「5バックの両サイドを引き出し、中央のDFと勝負する状態もつくれたと思う。それによって村松のプレーも生きた」「相手の動きが止まってきた時に三根を入れ、押し込んだ状態からのクロスで得点を狙わせた」と言う安間監督。まさに、熊本が4バックにしてサイドを閉めようとした意図とその焦点が符合します。

熊本は後半29分に疲れの見える大迫に代えて齊藤。押し込まれる状況のなか、残り15分を前線からのプレッシャーや”溜め”で押し戻せればという意図でした。

しかし、直後の後半30分にキム・ヨングンの豪快なミドルで1点を返される。ボランチまで最終ライン際に押し込まれた状況のなか、あの距離を入れられた仕方ないとも言えるような、南も届くべくもない見事なシュートでした。

押されっぱなしの熊本。最後の最後まで危ない場面が続く。今日もおもわず目を覆うようなシーンが何度あったでしょう。しかし、アディッショナルタイムも3分、右からのクロスに中央で合わせた三根のヘディングが枠を外れたところで、ようやく笛が鳴ってくれました。

結局、後半45分を守り切ったようなゲーム。「ここ何試合かは押される中で球を足に当てたり、(体を)寄せたり、耐えることができている」と言う指揮官。最終的に、熊本は自ら重心を下げて、リスクはあるが、中途半端なスペースを消して、身体を張って守る戦術を選択している。それができると。今は、その集中力があると指揮官は言うのでしょう。

何より降格圏内から脱するためには、この窮地から這い上がるためには、キレイ事は言っていられない。取れる勝ち点は必ず取るという強い意思。苔口に絶対裏は取らせない。枠内のシュートは絶対ブロックする。「試合内容はともかく、勝点3を持って帰ろう」と、結果に徹した熊本。一丸となった執念が勝利をもぎ取り、自力で富山との差を4に広げさせました。

ほっと一息ついていいでしょうか?

次週は天皇杯・広島戦。得失点差ではありますが、前節J1の首位に再浮上した広島。これから当たるリーグ上位陣との戦いの前に、その広島の圧倒的なスピード感を受け止めるのも、次につながる。いい意味での切り替えになる。

そんなゲームになれば…。なんかまた、天皇杯がいい流れを作る契機になるような気がします。


3月31日(日) 2013 J2リーグ戦 第6節
熊本 1 - 1 富山 (13:03/うまスタ/5,012人)
得点者:7' 西川優大(富山)、77' 黒木晃平(熊本)


“あの場面以外は…”というのが、この試合の“たら、れば”でしょう。試合後の吉田監督が、「ちょっとした隙で失点してしまうというのが、特に前半の立ち上がりであると、なかなかゲームをうまく運べない」、そう言いたくなる気持ちもわかる。1点ビハインドを背負って、残り90分近くを戦わなくてはならないというのは、もちろんゲームプランには全くなかったわけで。

またもや1対1。カバーもフォローもなし。裏を取られるタイミングと位置取り、地のスピードであっさりと振り切られてしまう。攻撃に人数をかけ、少ない枚数で守る、という単純なコンセプトではないはず。プレーの“軽さ”と言ってしまっていいのかどうか。別に、選手に真剣味が足りないと言っているわけではなく、あれだけラインを高く保つならば、その備え、緊迫感は尋常のものではダメだろうと。強いて言えば、同じ失点パターンが続くのは、課題のハードルがいかに高いか。それを共有できているかということかなと。

20130331富山

前節と同様で、試合開始直後の“入り方”が悪い。「G大阪戦は立ち上がりは良かった」「その時は我々はチャレンジャーという感じだった」「もしかしたら少し受けて立っているところがあるのかも分からない」と指揮官はこの2戦を悔やみます。

富山にしても、熊本のウィークポイントであるDFラインの裏を、一発であっさりと突いて早々と先制したことで、逆に拍子抜けの感があったのかも知れません。その後思ったほどのプレスもなく、連携のミスも目立つ。しかし、そんな富山に対して熊本も“お付き合い”している感じ。アタッキングサードまで持ち込んでも、最後のフィニッシャーとの意識が合わない。撃てるところで、もうひとつ崩し切ろうとパスを選択して潰される。片山のクロスにも切れがない。

「前線で起点を作るために」(吉田監督)、後半から高橋に代えて北嶋を投入。逆に前半を反省した富山は、後半に入って強烈にプレスを掛けてきたように見えました。早く同点にしたい熊本と、追加点を取りにきた富山の正面からのぶつかり合い。

その状況を見た吉田監督の、次のカードがこの試合のポイントでしたね。原田を下げて、怪我から復帰したばかりのファビオを前線に投入。4-1-3-2に見えたのですが、黒木をアンカー、藤本を頂点とするダイヤモンドの中盤だといいます。相手の厚い中盤に混乱をもたらそうという意図。これが奏功します。

同点の場面は、オープンな展開になった77分。最終列の吉井から貰った黒木が、ファビオに預けると、自ら猛然と上がっていく。すでにエリア内にいた齊藤までもを大外から追い越すと、ファビオから出されたパスをダイレクトで撃ち抜いた。「キーパーは多分、クロスを意識してたから」と素早く見切ると、角度のないところからニアにぶち込みました。

開幕前の練習試合からレギュラーポジションを取り、吉田サッカーを体現する“申し子”のような彼の名前(活躍)を、いつ書けるのか、早く書きたくて仕方がなかったのですが、ようやくやってくれました。高い技術に裏づけされた安定したプレーぶりもさることながら、誰もが感心する献身的な運動量。機を見て攻撃に参加する姿勢は積極的で、前半もこの男のドリブルからの惜しいシュートが。後半この時も、ひとりアンカーという重責を任されている状況での“瞬時の判断”。試合前から「常にゴールは狙っている。1点取れれば乗っていける予感がある」(スカパー!)と言っていた黒木。乗ってほしい男です。

同点に追いついた熊本は齊藤に代えて養父を投入。再びダブルボランチ、4-4-2に戻します。これはもちろん逆転を狙っていくものの、落ち着きも持とうという意思のカード。前節、藤本、北嶋が憂いた“玉砕”モードの反省を見た気がしました。一方の富山は木本、苔口といったスピードスターを相次いで投入。完全に熊本DFの裏狙いを鮮明にしてきます。

一度リセットしたあと追加点の隙を窺おうという熊本でしたが、時間が足りませんでしたね。やはり前半のモヤモヤとした時間帯がもったいなかったし、後半早々は意外なほどの富山の圧力に少々手こずった。

富山が攻め込んでもバイタルから早々と撃ってくれたのもありますが、“あの場面”以外は、そうそう決定機は作らせませんでした。流れは色々ありましたが、熊本は富山の厳しく、早い寄せに対しても、決してロングボールを蹴らないぞ、という決意めいたものさえ感じるように、繋ぐ繋ぐ。ほぼ90分間、息もつかせず、激しくコンタクトして奪い、富山のプレスをサイドチェンジとワンツーダイレクトでかわしまくる。

但し、それは富山に攻撃面でサッカーをさせなかったという点において。富山にしてみればあれでよかったし、意図したことではないにせよ、あの流れのなかではよく粘り、よく守って、ゲームの裏側ではこれまた支配していたようにも思える。90分間、これまた途切れず走る。これが安間流なのか。真面目なチーム。そういう意味では、難しい相手であったし、内容の濃い試合でした。

3試合連続で先制されてから同点に追いつくという試合。引き分けは敗戦と同じというわれわれの見方はこれまで通りです。ただ、富山の変則的なシステムに対しても何ら戦術を変えず、自分たちのサッカーでぶれずに“勝ち”を目指した吉田・熊本。前述のように各試合、試合の入り方こそ違いがありましたし、東京Vも予想したほどのプレスがなかった。今日この富山が、ここのところでは一番プレスも強く、走り、最も上り調子のチームではなかったでしょうか。そういう意味では、同じ戦い方、同じ同点劇だからこそ、自チームの出来(完成度)が比較しやすいように思えます。

もうひとつ。この試合を見ていても気づかされる今年の特色は、中盤でのボールの奪い方。相手への体の入れ方、当たり方。前を向くテクニック。そしてこの新監督の教えと戦術にフィットしているのが仲間であり、齊藤、そして藤本だと思いました。今季の藤本はフリーマンであり、バランサーでありパサー。ピッチ上欠くべかざるその存在は、この試合で遂に今季初の90分間出場を果たしました。そして、実は今シーズンの養父が、なかなか途中から試合に入っても消えていることが多く感じるのも、今季のこのチーム戦術に訳があるのかと。養父の使い方はどうすれば一番効果的なのか。縁台将棋さながら、われわれは勝手に頭を悩ませています。昨季は藤本に対して悩んでいたんですが(笑)。

3月3日に開幕したわれわれのリーグも、早くも1カ月の日程を終えました。選手入場時にタオルマフラーを回すことにも徐々に慣れ、そして今節は新しく「HIKARI」の熱唱も加わりました。試合前のピッチ練習に現れた選手たちに注入する“魂”。共に闘うという“儀式”。それは感動的で、他のどのチームでも見たことがない、実に熊本らしいオリジナルのパフォーマンス。だからこそ今日こそはホームで初の勝ち点3を奪いたかったのですが…。

ホームのゴール裏で歌い踊る「カモン・ロッソ」は、4月17日の愛媛戦までおあずけ。溜りに溜まった鬱憤の発散で、そのときは大騒ぎになるかも知れませんね(笑)。もちろん、その前のアウェー連戦を一戦一戦大事に戦って、2連勝を飾って帰ってきてくれることが、まず望みですが。さあ、反転攻勢の4月になる予感がします。