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5月24日(土) 2014 J2リーグ戦 第15節
栃木 1 - 1 熊本 (13:03/栃木グ/3,536人)
得点者:29' 養父雄仁(熊本)、60' 湯澤洋介(栃木)


またも引き分けでした。熊日が“息切れドロー”と見出しをとったように、いい形でゲームに入り、主導権を握り、先制しながら、その後失速し追いつかれるパターン。

得点経過は様々ですが、ここ数試合、同じようなパターンが続いているような気がします。

20140524栃木

前半、スカパー解説者にも指摘されていたように、中盤でポゼッションし、よくボールが回って主導権を握っているかのように見えた栃木。ただ、確かにジワジワと前に進めてはいるが、攻守の切り替え素早くブロックを作る熊本に対し、完全に攻めあぐねている様子。逆に熊本は、取りに行くところ、受けるところをうまく使い分けているような。カウンターの形を狙って一気のプレスに行く。

29分の先制点は、そんな熊本の狙いが結実しました。中盤で齋藤が戦って縦に出す。中山はワンタッチでさらに縦へ。エリア内に侵入した養父もこれをダイレクトでシュート。ゴールの左隅に決まりました。完全に崩した。

後半、確かに失点自体は相手のシュートのうまさも光るものでしたが、運動量やスピードが落ちかけたところで、目に見えて対応が“雑”になっていました。

防戦一方のような展開になりながら、それでも守り切った。それどころか最終盤では、巻、大迫の2枚替えで見事に主導権を奪い返した。カウンターの切れ味も戻り、何度も相手ゴールを脅かしたのですが…。

結果的には両チーム、シュート数は同じ9本。

「前半の試合を監督も言っていたように、1分でも2分でも長くやることが、これからの課題になってくると思う。そこを修正できれば、ドローが勝ちになる」(養父)
「今のウチは1点ではなかなか勝ちきれない。その状況のなかで前半にいくつかチャンスがあり、その中で追加点が取れれば優位に試合が運べたと思う。」(片山)

これだけドローが続くと、われわれファンの心理というのは実に欲深いもので、ついつい揺れてしまいそうになります。

しかし、同じドローでも、“やっと追いついて”とは違うし、ただ“ひたすら引いて守って”でもない。ましてやドローで幸運だったという印象では決してない。むしろここ数試合の手応えとして“勝ち点1はとれる”というデザインされたゲーム運び、基盤のようなものができつつある、と見てみてはどうでしょうか。

「前半はミスが多すぎるし、自分たちがやろうとしたことができていなかった。よく1失点で済んだ。」(栃木・廣瀬浩二)と相手は感じている。

「ちょっともったいない失点だった」と小野監督が悔やむように、押し込まれているからといって、それが即、失点につながるわけでもなく、実際に怖いのはカウンターであり、この試合も結局は押し込まれた局面からの失点ではなかったわけで。

さて、今日の選手起用はと言えば、仲間を休ませ、養父が一列前に。

「ここからシーズンを通してチームを成長させていくために、いくつかのポジションをやっていこうと。それと、DF、ボランチを含めて選手層を厚くしていこうと。」と、指揮官はその意図を語っています。色々と試してくるなあ…。

4-2-3-1のなかで前線4枚の連携と運動量がカギになることは、「相手に押し込まれたときこそ、前線の選手が良い守備をしないといけない。」(中山)と、選手自身に明確な自覚がある。今日の選手起用にそこのところを厚くしていくための起用という長い目での考えがあるのはもちろんでしょうが、このゲームに限っても、養父を一列前で使うことで、裏への飛び出しで彼のゴールがあり、また仲間の後半投入が可能になったわけで、なかなかに深く戦略的だなあと感じるところです。(橋本のミドルが決まっていればさらに凄みが増すはずだったのですが…)

“引き分けるべくして、引き分けられる”というのは変な言い方かもしれませんが、サッカーの神様のご機嫌に関係なく、“勝つべくして、勝てるチーム”、“勝ち点3を取るためのデザイン”へ向けて進んでいるようにも見えるチーム。打つべき手を丁寧に積み重ねて…。今日のこのゲームもその成長のために無くてはならないものだったと思うことにしよう。われわれはこの試合をそう位置づけました。

7月20日(土) 2013 J2リーグ戦 第25節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,676人)
得点者:79' 片山奨典(熊本)


前半戦、水前寺での対戦では1-4で大敗を喫している栃木を相手に、アウェーの地でとにかく勝った。スカパーの画面を通じて、本当に久々に見る「カモン!ロッソ」。画面越しにではありますが、スタンドで飛び跳ねるサポーターのその腕に、声に、確かに力がこもり、思いが溢れそうになっているのがわかります。これだけのアウェーへのサポーターの数。これも難敵・栃木が相手だったからでしょうか。

金曜日朝刊の熊日予想フォーメーション。その分析は詳細でした。前節、岐阜戦途中から3-4-3にしたことを踏まえ、栃木戦はスタートから3バックを予想。18日の練習では両サイドのMFが最終ラインに下がる動きを確認し、池谷監督代行の「守備に戻るときは素早くスペースを埋めることが大事」というコメントを引いていました。しかも橋本が最終ラインに下がり、片山・黒木・原田・藏川というMF陣。何がなんでも守るという決意のようなものさえ感じました。

「守りが乱れてきたら、5-4-1の守備的な位置取りに引くよう指示している」という試合後の池谷代行のコメントもそれを裏付けている。対する栃木・松田監督は「熊本は3バックがこなれておらず、後半は4-4-2も想定したが、徐々に慣れたようだ」とみている。

栃木もここ6試合勝利から遠ざかり、前節の敗戦でプレーオフ圏内の6位の座を福岡に明け渡してしまいました。優勝、昇格を掲げるチームとしては、このホームゲームは下位・熊本を相手で立ち直りのきっかけにする試合だと“計算”しているに違いない。試合序盤から押し込む攻撃的姿勢に、その気持ちが表れていました。

20130720栃木

厳しいプレスに手を焼き、ボールを保持できない熊本。人数を掛けた栃木の猛攻。失点も時間の問題かと思われましたが、跳ね返し、詰めて、最後は身体を投げ出し凌ぎ続けます。杉本の決定機は守護神・南がスーパーセーブ。

ただ、押し込まれてズルズル下がったということではなく。押し込まれたら戦局に応じてのオプションのひとつとして準備していた。-----これは見た目は同じでも、まったくの別物。プランだと思ってやるのと、あわててて対応するのとではまったく違う。

「前半は『耐えよう』という共通理解があった」と吉井が言い、北嶋も「前半は割り切って守る意識を共有できた」と言う。

前節のエントリーでも引用したように、吉田前監督交代のきっかけになった飯田本部長の要望3点。①勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び、②攻撃時のリスク管理など守備の改善、③チーム内の意思統一

今日も、その意識を感じられたし、特に③は完全に一本の筋が通っていた。

0-7の惨敗を喫した北九州戦。われわれは「誰もいない。誰も行かない」と書きました。しかし、今日のこのゲーム、前半は確かに3バックが「こなれていなかった」こともあって攻め込まれましたが、指揮官のプラン通りに決定的なスペースは消されており、決定機にも誰かが行っていてフリーにはさせなかった。

最終的な栃木の精度の低さにも助けられたようにも見えますが、やはり、これは守備時のプレスの速さ、集中の高さとみるほうが正しいでしょう。

それでも、あれだけゴールマウス近くで戦えば、どうしてもファウルが避けられず、セットプレーのリスクは高かった。今日もかなりな数のFKを与えています。そこは不安の種でした。

ハーフタイムの指示で、松田監督は「うまくいっている。このまま我慢強く続けていこう」としました。当然の発言だったでしょう。一方、池谷代行は、「セカンドボールを取れないと試合にならない!」と叱咤した。そのうえで、ハイプレスの栃木も、「必ず緩くなるので後半必ずチャンスが来る」(J's Goal)と読んでいました。

その言葉どおり、後半から熊本はセカンドボールを拾いだし、「サイドチェンジを有効に」使い出し、「相手の背後を取る」。

この試合の決勝点となった得点は、79分。攻撃をフィニッシュできない栃木のボールを、自陣深くで奪ったのはファビオ。藏川に預け、堀米。「完全にコースが見えた」という堀米の右サイド奥へのスルーパスに追いついたファビオは中央齊藤にクロス。齊藤は持ち替えてさらに左、遥か後方から駆け上がってきた片山にパス。片山がダイレクトで左足を一閃。GKがこれをはじいてゴールネットを揺らしました。

堀米がファビオに長いグラウンダーを通した瞬間には、まだ自陣のエリア付近にいた片山。「逆サイドの僕が行くしかない」(熊日)と思ったという。栃木DFを全てに遅れを取らせた鮮やかなカウンター攻撃。守備重視で点を取るにはこうして一人余らせるしかない。そんなシーンでした。

「サッカーは90分。90分の駆け引きで勝てた感覚が自信になる」と、試合後北嶋はtwitterに書きました。ハーフタイムには「『こういう試合をしたたかに勝とう!ワンチャンスで仕留めよう。今日はそういう日だ』とみんなで確認しあった」のだと言います。

こうやってワンチャンスが得点に結びつきましたが、やはり今日のゲームは無失点を評価すべきなのだろうと思います。実に11試合ぶり。ゲームプランは失点しないで、まずスコアレスドローをめざすことだったはず。前半の猛攻に、シュート数ゼロは致し方なかった。そして、主に相手の出方(栃木のペースダウン)に対応して、うまく戦い方を整理できた。まさしく「ワンチャンスで仕留めた」。

「決めるところで決めきれないと何が起こるかわからないですよ」と、スカパーの実況アナウンサーは何度も何度も不安を繰り返しましたが、熊本の”90分の駆け引き”に栃木は膝を着いた。こんなドキドキしびれるような勝利ゲームを見たかった。

試合終了を告げるホイッスル。選手も、スタッフも、ベンチも、ゴール裏も、誰彼かまわず抱き合う。長かった、重苦しかった鬱憤を一気に晴らすように、喜びを爆発させる。涙を流すファンの姿も。

9戦勝ちなし。降格圏に限りなく近づいたチーム存亡の危機。監督交代という初めてで、そしておそらく最後の一手を打った熊本。

直後の岐阜戦に終盤の失点で引き分けた。誰も口にはしないし、言葉にするのが憚られるような。しかし、実はこの試合は、チームの歴史の分水嶺になるようなゲームだった。

勝負の世界とはいうものの、この”賭け”ともいうべき大勝負に出た熊本。そして、多分、この勝負には勝てたのではないか。そうわれわれは思います。

下は向かない、上も見ない。前も気にせずただひたすら、この時を戦う。泥臭く戦う。われわれの今は、まさにそんな感じではないでしょうか。


5月19日(日) 2013 J2リーグ戦 第15節
熊本 1 - 4 栃木 (13:03/水前寺/3,381人)
得点者:25' 杉本真(栃木)、51' 近藤祐介(栃木)、76' 當間建文(栃木)、81' クリスティアーノ(栃木)、90'+2 吉井孝輔(熊本)


今シーズンはこれまで“風”“雪”など気候条件によってゲームの行方が影響されることが多かったのですが、今日は“雨”。それも豪雨でもない、いわゆる“こぬか雨”。影響するのかしないのか。とても微妙な気象条件でした。

熊日朝刊では“高さ”を敗因としていました。確かに高さの差は明らかでしたね。それはまず純粋な空中戦。ヘッドでほとんど勝てなかった熊本。これはDFも前線も同様。ここまで徹底して勝てない光景を見るのもあまりない。完全に制空権を奪われてしまいました。そしてセカンドボールもことごとく栃木が支配。それにしても序盤から人数を掛けて攻めかかる。

ゲーム観というか戦局観というか(戦術のもっと手前にあるゲームの“枠組”みたいなものでしょうか…)。選手の心理的な問題にも波及するような。この日の栃木の戦局観はとにかく思い切ってエリア内、ゴール近くへズドンとボールを運んで、滑りやすいピッチで守るリスクのほうが高い条件のもとでゲームを進める、というものだったのでしょう。ラグビーではないけれど、とにかく地域を進めるとでも言うような。

そして、高さの勝負の影響がもうひとつ。ボールの収まり具合。雨天ということで、やはりピッチは滑りやすく、コントロールが難しいグラウンダーのボールより、どうしても浮き球でつなぐ比率が多い。これを栃木の選手は上背を活かした高い位置での胸トラップで、うまくコントロールしておさめていた印象が強い。これは、高さと、それにともなう身体の強さ、そして技術の高さも。雨の中でもボールがきちんとおさまる。

逆に、熊本はボールが落ち着かない。サイドチェンジを交え、ピッチを大きく使って揺さぶろうという意図は見えるものの、栃木陣内に入ってからの潰しは早く、密集地帯でパスが引っかかって繋がらない。起点のぼやけたゲームになってしまいました。結果、なかなかシュートにたどりつかないことに。

20130519栃木

岐阜戦と同じく両者とも高いラインで、コンパクトサッカー同士の対戦。狭い狭いエリアでの戦い。それでも熊本の意図はいつも通り丁寧につないでいくこと。そこにピッチコンディションの問題と、もうひとつ高さの問題が加わって、プレーの選択肢が微妙に“心理的に”狭められていたようにも思えます。結果、判断がワンテンポ遅れて、栃木の網に引っ掛かってしまい。カウンターを食らう。

それでも前半、先制点を奪われたあたりから逆に栃木のプレスに慣れはじめたのか、栃木サイドのバイタルまで長いパスが通るようになります。堀米のFKから、あるいは筑城のアーリークロスに養父のダイレクトボレーなど、惜しい場面も。同点には追いつけなかったものの、よく1点でしのいだ。後半、ゲームコンセプトを修正すればもっと戦えるとも思えたのですが。

たとえば、熊本も高さを入れてもっとオープンなゲームにすれば、得点のチャンスはまだまだあった。多分、大きくゲームを転換する必要があったわけで、結果論を承知で言えばファビオ、高橋の2枚替えなども選択肢ではなかったのかと。

そこでわれわれの間でも論議に及んだのは1枚目のカード、藤本。もちろんバイタルのスペースに入り込んで、パス回しのリズムを作るのに長けているのは藤本。そして熊本の攻撃のスイッチを入れる役回りの片山を活かすための藤本というチョイスだったのでしょうが…。しかし、それも更にファビオの高さが加わり、戦局のバランスが変わってはじめてのことだったようにも見えました。

そこで、試合後の吉田監督のインタビューで知った、試合前からの南の脚のアクシデント。確かに前半でしたか、左足でのプレースキックばかりを選択するそのプレーに首を傾げました。やはりベンチとしては選手起用、交代カードの切り方に、微妙に、いや大きく影響していたのではないかと。最終ラインとの連携、押し上げが厳しかったのも、そのあたりの事情かもしれません。

点差はつきましたが、それはある意味ありがちなことでもあり、われわれも意外なほどダメージはありませんでした。重要なのは、何より最後に1点とれたこと。流れさえ変えられれば、今日のゲームは打ち合いになるはず、と見えたので、このまま惜しいシーンだけでは残念と思っていました。あの1点は、今後の戦いのため、チームの自信のためには、とても大きな1点だった。「後半の中頃から回され始めて、あれを前半からやられていたら怖かったなと思います」。そう言う栃木・當間の言葉がそれを証明しています。

いつものように“タラレバ”はたくさんあったけれど、やはり今日は熊本の日ではなかった。

ピッチコンディションをものともしない栃木の前がかり。一芸に秀でた選手を集め、個人個人の能力で上回れたかと思わなくもありませんでした。しかし、試合前後の栃木の選手たちから漏れた言葉は、終了間際に同点に追いつかれた前節・長崎戦への猛省。そのことを“曖昧”にしなかった姿勢が、この試合、球際でも熊本を上回らせ、最後まで攻撃の手を緩ませなかったのではないかと。そして彼らはまた今日のこの1失点を課題にしている。

「そのあたりはまだ甘いなというか、これからそういうところは大事になってくるんじゃないか」という敵将・松田監督の言葉の先には、昇格圏を争う気概に溢れていて。彼我の差というなら、そこが一番悔しいところでした。

8月12日(日) 2012 J2リーグ戦 第28節
熊本 3 - 0 栃木 (19:04/熊本/4,526人)
得点者:15' 武富孝介(熊本)、71' 矢野大輔(熊本)、90'+6 片山奨典(熊本)

千葉戦以来の4-4-2のシステムで臨んだのは、7試合負けなしと好調を続ける栃木へのリスペクトがあってのことだろうと思ったのですが、高木監督はこう言います。

「システムによって何かが変わったということではなくて、何も変わっていない。それは今までやってきたプレーを継続して、本質を変えずにディフェンスもオフェンスもやった。それが今日の中では、勝つということとは別の、一番大きな収穫」。

連敗の中でも決して内容は悪くはないし、続けていくことが重要だと繰り返してきた監督にとって、その点は何よりも確認しておきたいことだったのでしょう。

そして「しっかりとしたプランの中で相手の良さを出させず、相手のウィークを衝きながら攻撃ができた」とも。確かに栃木の強みも弱みも見抜いたうえで徹底された今日のチーム戦術と試合展開は、指揮官やメンバーや点差こそ違え、07年8月、JFL時代、水前寺での同じ栃木との戦いを思い起こさせました。胸がすくような完勝という意味でも。

栃木側からは特に、立ち上がりがすべてだったと言う声が多い。熊本の速い出足に翻弄され守勢一方。守備の運動量と当たりの厳しさ、切り替えの速さ、シュートの意識で上回る熊本。アグレッシブでした。「熊本は守ってカウンターを狙ってくるだろう」とスカウティングしていた敵将・松田監督の表情も冴えない。

そして先制点。このシーンだけ見れば、これはもう偶然以外の何物でもない。しかし、偶然を引き起こす意図が確実にあったことも間違いない。

とにかくシュートを打った根占。打たなければ何も起こらないわけで。それもふかさず、事故の起こりやすいグラウンダーで通した。角度を変えた北嶋。触らなければそのまま抜けていたでしょう。トラップのつもりがパスになったのはこれまた偶然ですが、そんな偶然に相手が反応できるわけもなく。そして、そんな意外な展開にも反応し、角度もなく簡単ではなかったシュートを落ち着いて決めたのは武富でした。

4連敗中ゴールのなかった武富。試合前、スカパー解説の池ノ上さんは「周りとの兼ね合いを気にしすぎているのではないか」と指摘していました。それは暗に柏の“大先輩”のことを示していたに違いありません。鋭い指摘でした。

北嶋が試合後、ブログで明かしています。試合前日に武富にこう語ったと。
「タケは良いヤツだから、気を使っちゃったり、遠慮したりするんだよな。でもそういうの、グランドではナシな。俺もグランドで遠慮なんかされたら悲しいよ。おまえがこのチームのエースなんだよ。もっともっと偉そうにしてていい。俺に要求もガンガンして欲しいし、おまえが走れって言ったら俺は走るから。逆に俺がおまえに要求することだって当然ある。グランド上では常に対等。勝つために要求しあう。そんな関係でいようよ。」

試合前、スカパーの取材に対して「消極的だった。今日から思い切り行く」と応えていた武富。ゴール後、真っ先に抱きつきにいった先は北嶋でした。

栃木20120812

「個人的に慣れているシステムだったので、色々とスムーズだった」と北嶋はブログに書きました。藤本が、「ボールを回す時の配置が楽というか、中盤の人数が増えてまわしやすくなったし、前も2人なので距離も近くて、コンビネーションもあったんで、攻撃の面でいい面が見られたなと思います」と言うように、相手がプレッシャーをかけてきたときのボール回しのリスクが前節あたりと較べてだいぶ低減されていたような印象。結局、ここからボールを入れて攻撃に移っていくところのバタバタで奪われ、ショートカウンターを食らって失点、みたいなことが続いていたわけで。

ボールを引き出せなかったサビアを諦めて、後半から棗を入れてきた栃木。高さを加えます。広瀬のあとには佐々木。2トップの入れ替え。それに対して熊本も北嶋、藤本を高橋、斎藤と2枚替え。 

CKからの矢野の追加点は、このカードを切る直前でしたが、終盤の高橋、齊藤はかなり効いていたなと。この2枚替えで一気に試合の流れを引き戻したし、攻守両面で苦しい状況にあったチームの選択肢を増やしました。

高橋に関しては、この週の木曜日にようやく練習に合流したばかり。しかし、怪我明けの心配をよそに試合にうまく入っていく。“オフェンシブ・ストッパー”という、池ノ上さんからの新たな称号。

アディッショナルタイム5分。その高橋がロングボールを競って落としたところに飛び込んだのは、今日も切れ味のある突進のドリブルで相手を翻弄していた片山。このチャンスにダイレクトで一蹴すると、駄目押しの3点目がゴールに突き刺さりました。

「100%集中が無かった」。松田監督は試合後、立ち上がりの失点がこの試合を決めたと言い、「90%以上の集中はあったと思いますが100%ではなかった」と表現しました。そしてこう説明する。

「サッカーというのは本当にちょっとしたことで点が入ったり入らなかったりするわけで、クリアボールがそのままつながったりすることだってある。そういう部分に対しても、水も漏らさない100%の集中というのが、特に立ち上がりは必要」だと。
「うちのサッカーではそれが生命線なので、それに対して95%であれば、残りの5%が致命傷になるということ」。「もちろんこれまでの試合でも、その5%が点にならなければ持ち直している。点が入るか入らないかというのは一番大事なことで、流れを決めることなので、(これまでは)入れさせずに連勝できていたということだと思います」と。

ややもすれば負け惜しみとして読みすごしてしまいそうな敗戦の将のコメント。しかし松田監督は、勝負としてのサッカーに向かう指揮官の確率論を的確に言い尽しているのではないでしょうか。

武富は、前回対戦で大敗している次節の松本戦に関して問われ、「気持ちを込めて1人1人がしっかり戦えば今日みたいな試合になると思います。そういうちょっとした所の差で先に失点するか取れるかが変わるのかなとも思ったので、強い気持ちで、自分自身もアグレッシブなプレーをしたい」と、これまた同じようなことを言っている。

前節のエントリーでわれわれがうまく言い表せなかった“クローズ”な意識と言うのは、本当にちょっとしたことで点が入ったり、入らなかったりするサッカーというゲームで、松田監督の言う100%の集中ということであり、武富の言う気持ちを込めて戦うということと同義語だったのかなと。それが冒頭の高木監督の「決してシステムを変えたからではない」という言葉や、「続けていくことが重要」ということとも符合するような気がして。4連敗のあとの快勝だったからこそでしょうか。そういうことを考えさせられたゲームでした。

4月8日(日) 2012 J2リーグ戦 第7節
栃木 2 - 0 熊本 (13:03/栃木グ/2,999人)
得点者:15' 棗佑喜(栃木)、83' 當間建文(栃木)


試合後の記者会見で、「今日は後味の悪い試合だったのか」という質問も出たようですが、まあ判定については色々とあるにせよ、わがチームの戦いぶりはと言うところでは、むしろ清々しさ(と言ったら誤解されるかもしれませんが)さえ感じるものでした。高木監督自身も「ネガティブな面ばかりがあったわけではなくポジティブな面もあったことを、僕はそこを重要視したいと思う」と述べたように…。

栃 木
22棗 8廣瀬
28菊岡10高木
14菅25小野寺
24ユ デヒョン17山形
29チャ ヨンファン6當間
 21武田 
後半22分 廣瀬 浩二 → サビア
後半29分 小野寺 達也 → パウリーニョ

熊 本
 9チェ クンシク 
14武富19五領
7片山13大迫
8原田10養父
4廣井5矢野
 22吉井 
 18南 
ハーフタイム 大迫 希 → 高橋 祐太郎
後半24分 五領 淳樹 → 白谷 建人
後半40分 武富 孝介 → 筑城 和人


互いに持ち味を出し合う序盤。互角の展開といえましたが、先に失点したのは熊本。菊岡に前を向かせると左サイドに走るユ・デヒョンに出される。大迫が追ったもののサイド奥から折り返されると、棗がニアで合わせてゴールイン。吉井も廣井も詰めていたのですが・・・。

さらに25分には、右サイドでの攻防。クンシクが當間への危険行為で一発レッドカードが示されて退場。

前半のあの時間帯、1点ビハインドで退場者を出してのアウェーの戦い。やれることも限られて、前半の残り時間は、とにかく失点を凌ぐので精いっぱい。時間が長く感じる試合になる。誰もがそう思ったはずです。

しかし後半に入ると。確かに序盤は一方的に栃木に攻め込まれますが。DF高橋をFWに入れた熊本。前線のターゲッを得ると、セカンドボールを支配し始めて、徐々に攻撃を形づくる。数的不利をまったく感じさせないばかりか、ポゼッションでも圧倒し、押し込み、決定機をつくる。DF高橋をピッチ上に送りこんだ意味は、守りぬくことではなく、攻撃に転じることでした。

「相手がひとり多いのにブロックを作り、こっちに余裕を持ってボールを持たせたのでチャンスを作れたところもある」(熊本・原田)という見方もありましたが、「後半は相手が蹴り始めて、それを跳ね返してセカンドボールを拾えたけど、そこからのパスが適当になってしまった。ミスが多く、そこから2次攻撃を受けてしまった」(栃木・菊岡)。そう相手は感じていました。確かに栃木は早く2点目を取って熊本の息の根を止めようと、攻め急ぐあまり、かえって”稚攻”に陥った。栃木の弱点があらわになりました。

思えば、前半クンシクの退場からのピッチサイド。戦術ボードを見つめて考え込む高木監督が映し出された。そのときピッチレポーターの佐藤悠介氏は言う。「熊本の戦い方はハッキリしたといえる」と。それはもちろん「守ってカウンター」しかないという意味でした。確かにポゼッションは栃木に分がある。しかし指揮官をはじめ熊本は、たじろいではいなかった。むしろ何も変わらないと。ひとりの少なさを感じさせずにポゼッションを目指しました。それが今年目指す熊本のサッカーでしたから。

高橋の前線起用も奇策を感じさせない落ち着きがありました。十分にターゲットになっていたし、相手DFに対してもとても粘り強かった。周囲との連携もよく機能していた。中盤陣は出足よくセカンドを拾うと、アタッキングサードでは人数をかけてパスを回し、ゴールに迫っていきました。

スカパー!の栃木側の中継はいつも楽しませてもらえます。解説の水沼氏と佐藤氏の二人が調子よく栃木を褒め称えているかと思えば、(それがフラグのように)一転、熊本が攻勢を強めると、手のひらを返したように苦言を呈し始める。今日もそんな苦笑する場面が見られました。同点に追いつくのも時間の問題に感じられた。

しかし、そこで敵将・松田監督が打った一手に熊本は完全に封じ込まれます。中盤の支配力の弱さ、特にボランチのところの活性化に、怪我から復帰したばかりのパウリーニョを起用した。昨夏、パウリーニョを欠いてから大失速した栃木。その存在は誰もが知るところでした。長い長いリハビリ期間からの生還。キャプテンマークを巻かれて走りだすパウリーニョ。迎える選手たち。万来の拍手・・・。パフォーマンスはまだ完全ではないかも知れない。しかし、栃木のイレブンを落ち着かせ、鼓舞させるには、それで十分でした。「してやられた」。テレビの前で地団駄を踏みました(笑)。一転して流れが変わりました。

「勝てた試合だったのに・・・」。

翌日、憤慨が収まらない同僚の言葉がありました。それは10人で戦うことを余儀なくされた不可解なジャッジに向けられたものではなく、その前の失点の場面、あるいは自分たちでつかんだはずの時間帯で、しかし詰めの甘さ、選手の勇気のなさを嘆いていました。いろいろな見方がある試合になりましたが、敗戦という事実だけを突きつけられました。アウェーではまだ勝ち星がない。その事実を。

監督は「ひとつ反省しないといけないのはセットプレーから失点したこと。そこは反省すべきだと思う」と言う。しかし、「苦いコーヒーだけを飲み続けたわけではない。甘いカプチーノもあった」とも。
それはきっと、佐藤悠介氏が定石どおりだったらと予言した”戦い方”ではないことができた、あのピッチサイドで首を傾げながら考え抜いた”攻撃的奇策”に、一時とはいえ選手たちが順応した手ごたえを意味しているのではないでしょうか。

借金を返済する機会を棒に振って、まだ負け越しの状態が続きます。さらにFWはひとり出場停止となり、先発陣の危機的状況も伝わってくる。しかし、そんな厳しいなかでも、今シーズン、なぜか次の試合を観たい、早く週末にならないかな、という気持ちが一層沸く…。わがホームチームだからというこれまでの気持ちともちょっと違う。今はまだそれをうまく説明できませんが。