2015.08.02 連勝。栃木戦
【J2第27節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半0-0)栃木
<得点者>
[熊]クォン・ハンジン(73分)、嶋田慎太郎(88分)
<退場>
[栃]桜井繁(85分)
<警告>
[栃]廣瀬浩二(59分)
観衆:5,116人
主審:荒木友輔
副審:藤井陽一、佐藤裕一


「ゲームコントロールもできていたし、勝てる試合だった。大きなミスから流れを失ったのが痛かった」とは、試合後の栃木・倉田監督のコメント(2日付・熊日)。われわれですら「たら・れば」を良しとしないのに、これはどうしても「ミスさえなかったら」としか聞こえない(笑)。サッカーのあらゆる失点は、必ずその前にミスがあってのことなのですが。

というよりも、早めに強気で交代カードを切っていき、残り20分近くもあったにも係わらず、最後の切り札・中美を投入し勝負に出た。けれどこれが裏目に出て、あのキーパー退場のシーンで交代要員がいなかった。そんなベンチワークを問われまいとする心理が働いているように感じるのは、深読み過ぎるでしょうか。

われわれの目には、今日のゲームの流れにしては栃木の交代カードの切り方が早い。逆に、ここ数試合のペースから較べるとじれったいほど熊本のカードが遅く感じる。それはスタンドで観戦していて感じていたことですが、帰って録画を見直し、紙媒体も含めた色々なコメントを合わせ読むと、両監督のこの試合に向けたスカウティングとゲームプラン、その裏側の心理、ベンチワークの妙と合間って、こんな面白い試合はなかったように思えてきました。まあ、これも勝ったからこそ言えることでなんでしょうが(笑)。

20150801栃木

対する小野監督が「点差ほど優位に進めたわけではなく、かなり苦しい試合でした」(九州J-PARK)と言うのは、誰しも見てのとおりの感想でしょう。熊本は、試合の入り方こそ悪くはなかったものの、栃木の球際の強さや、出足の早さでボールを失い、短いパス回しで崩されると、幾度となくゴールを脅かされる。頼みの齊藤は、栃木の坂田、ハン・ヒフンの高さのあるCBに自由にさせてもらえません。

ただ、ここを耐え切れる守備の意識が、あるいは戦局観が今の熊本にはある。倉田監督は、最後のシュートの精度を悔やみますが、ゴールマウスに大きく立ちはだかり、コースを切っているダニエルの存在は大きかった。まさにペナルティエリア全域を睥睨し支配している。最後の最後のところで、ハンジンや鈴木の足もよく出ています。

そうやって耐えていれば、後半必ずチャンスはある。指揮官はそう見ていました。「栃木は監督が代わって、かなりアグレッシブなサッカーに持ってきてます。」「その分、今は後半になると少し息切れするところが、ここまでの試合で見えました」(小野監督)。確かにこの日のうまスタも、日が暮れたとはいえ、うだるような暑さが残っていましたが、前半も終わりごろから栃木の選手たちのユニフォームが、汗でぐっしょり濡れ始めているのが、スカパーの画面ごしに見て取れました。

後半開始早々から栃木は、前半目立っていた湯澤に代えて松村を入れてきます。さらに63分には、面倒くさい相手だった河本まで引っ込めてくれる。これが確かにあとから考えると、「とにかくスタートから飛ばしてくる」(小野監督)チームの戦術なのでしょう。ガソリンが切れた選手を入れ替えて、チームのパワーを維持する道を早めに選びます。

そんな攻防のなかで小野監督は、前半途中から清武と嶋田のポジションをチェンジさせた以外は、どっかりとベンチに腰を据えて一向に動こうとしません。いつもだったら、巻を入れて押し上げを図ってもよさそうなのに。いやいや、攻撃の形も作れているので、このバランスを崩したくないのだろうか…。などとスタンドで勝手な思いを巡らせていました。

ようやく指揮官が動いたのは71分。清武に代わって入ったのは田中。このスピードスターの登場にスタジアムが沸き上がります。間髪を入れず栃木は最後のカード、中美を投入。前半戦で2点を決められて同点引き分けに持ち込まれた相手。この選手に栃木は勝負を賭けたというところでしょう。

熊本がロングボールで栃木のDFラインを押し込もうとしていました。栃木DFの坂田のヘディングの処理が悪く自陣ゴールラインを割る。熊本の右CKに、SBからキッカーの養父が駆け上がるとき、養父はコーナーのボールボーイではなく、途中ピッチサイドのボールボーイにボールを要求して自ら抱え、そして急いでセットします。栃木の選手たちとしては、なんとはない小さなミスからのCK。そして、ちょっと水分補給でもしようかという緩慢な気持ちもあったかも知れない。そんな一瞬の素早いリスタートでした。

セットするなり蹴られた養父のキックを、ニアで齊藤が叩きつけるように頭で反らすと、中央に入ってきたハンジンが左足で押し込む。ボールも人も、あまりの速さに栃木の選手は対応できません。前半戦の栃木戦で決めたのと同じようなハンジンの得点で、熊本が先制に成功します。

残り15分。さすがに熊本も疲れが見えてきました。俄然、栃木も反撃に転じ、再び熊本ゴールを脅かす。ゴール前の混戦のなかでハンジンが倒れこむ。おいおい大丈夫か。メディカルスタッフもピッチ内に呼ばれ、ハンジンはピッチの外へ。すぐに大谷が準備される。

あとでスカパーで知ったことですが、これは選手とスタッフとベンチの情報連携のミスだったようですね。ハンジンは恐らく少し時間稼ぎをして、この流れの悪さを断ち切りたかったのでしょう。「まだ出来たのに」とでも言いそうに苦笑いして、ハンジンがベンチに退く。ベンチでは監督もコーチ陣も苦虫でも噛み潰したような表情。この大事な時間帯と、この展開のなかで、いただけないベンチワークの凡ミスでした。

動揺も走りそうなそんな展開を、きっちりと締めたのは、ここでもGKのダニエルでした。栃木の右からのCKをジャンプ一番パンチングで凌ぐと、続いても阪野からのパスを受けた松村のシュートをがっちりとセーブ。栃木に流れを渡さない。

すると85分、栃木の攻勢のなかでのパスミスを齊藤が逃さずダイレクトで広く開いた栃木陣内へ出すと、そこに走り込んだのは田中。相手GK桜井が一瞬、躊躇したぶん、田中のボールに。ドリブルで突っ込もうとした瞬間、桜井は田中を引っ掛けて一発レッド。

冒頭書いたように、栃木にはもう残された交代カードはありませんでした。一旦ハン・ヒフンがグローブを着けるものの、コーチ陣の指示で荒堀がキーパーユニに着替えます。

このFKのチャンスに立った嶋田。前半、同じようなFKをバーに当ててしまったイメージが残っていないはずはありません。ただ今度は左からではなくゴールに向かって右側から。嶋田の得意とする左足から放たれたボールは、綺麗に弧を描いてゴール左隅に突き刺さる。荒堀も手を伸ばしましたが、急造GKとしては苦笑いするしかないコースでした。

このレッドカードからFKに至る流れ。いつも思うのですが、エリア外であっても、このプレーは得点機会阻止のための確信犯。桜井も一発退場に代えて、失点阻止に賭けたのだと。それからすれば一種の認定PKみたいなルールがあるべきではないかと思うのです。逆にこのFKを決めるのはたとえフィールドプレーヤーがGKだとしても至難の技。そのFKを“入れ返した”嶋田の今日のプレーは理屈では測れない価値を持っていると思います。

このシーンの前に、嶋田に代えて巻が準備されていました。「相手が1人少なくなるというのはある意味、メンタル面での危険が出るんで、そこに弛みがないように、入って声をかけてくれ」という指揮官の意図。しかし、FKのキッカーは誰だと藏川に尋ねてそれが嶋田だと知ると、「タイミングを1つずらし」た。「ここは1回託そうと」。その嶋田がきっちりと”仕事”を成し遂げると、残された時間、巻きも託された役割を全うしてアディッショナルタイム5分を凌ぐと、熊本がクリーンシートで連勝を飾りました。

順位は暫定ながら14位まで上がりました。指揮官も「ようやく目指すところ(プレイオフ圏内)が見えてきた」と口にしました。しかし、下位グループは相変わらずの団子状態。

このゲーム、大きなプランを描いたのは小野監督だったのですが、それをピッチ上で微調整、微修正したのは選手たち自身だった。そんな今日の試合の実感が、指揮官を自信めいた口調にさせたに違いないでしょう。

冒頭、書いたようにこのゲームの行方を左右した選手交代のベンチワーク。まさに勝った後の結果論ですが、お互いに決めるべきチャンスを生かせない展開のなかで、小野監督が描いたのは、「悪くはないが思うようにいかない」「こんなゲームはじっくり構える」そんな判断ではなかったかと。逆に敵将には、「決めきれない」焦りからくる、「何らかの手を打たなければならない」と思うような思考回路ではなかったかと。そこまで言っていいのかどうかわかりませんが、その底には選手に対する信頼や自信のようなところがあるのではないかと。

ようやく梅雨明けした熊本はこれからが夏本番。いつもこの時期失速していた熊本のもうひとつの敵”夏の暑さ”を、今日のように”味方”にすることができるのか。まだまだ確信の持てない心配性のわれわれですが、今夜ばかりは(先週もでしたが(笑))勝利の美酒に酔いしれたいと思います。

【J2第11節】(栃木グ)
栃木 2-2(前半0-1)熊本
<得点者>
[栃]中美慶哉2(64分、88分)
[熊]クォン・ハンジン(42分)、齊藤和樹(47分)
観衆:3,761人
主審:窪田陽輔
副審:高橋佳久、西橋勲


なかなか勝たせてくれませんねぇ。しかし、久々の得点。そしてようやく連敗からは脱することができました。前を向きましょう。

過密日程のなかでの連戦。この試合、熊本は大きくメンバーを入れ替えてきました。前節途中投入で奏功した巻を先発でワントップに。DFには左に上原。クォン・ハンジンと園田がいて、右SBに鈴木。この最終ラインも含め、今日の布陣は魅力的でしたね。試合前から何か期待させるものがありました。

20150503栃木

その期待どおり、開始からアグレッシブに押し込むのは熊本。巻という明らかなターゲットがあることで、細かく繋ぐばかりでなく、早めに放り込む戦法と織り交ぜることができるから、相手に狙いを絞らせない。何より、行けるところまで行くような。激しい気持ち、闘う意思が伝わってきます。

巻が落としたところに齊藤。中山の前線の守備も効いている。上村も高柳も縦の意識が高い。黒木がミドルを狙う。プレースキッカーとしての上原の魅力。鈴木もボックスを脅かす。

何度もあったCKのチャンス。ようやく実を結んだのは42分。上原のキックをニアで反らした齊藤。そこに大外から飛び込み、右足を出したのはハンジン。おそらく練習どおりのプレーでしょう。実に6試合ぶりの得点で、熊本が先制。しかも前半終了間近、いい時間帯でした。

さらには後半開始早々の47分。「キックオフで相手の出鼻をくじこう」というハーフタイムでの小野監督の指示どおり、スローインのボールを巻が奪うと齊藤に渡る。さぁどうする、どうする、と見ている間に齊藤がスルスルっと持ち込みながらDFを交わすと、迷いなく撃った。ボールはゴール右隅に突き刺さります。

これまでの鬱憤を晴らすかのような2点先取。この時点で、勝利に大きく近づいた気がしていました。しかし、栃木は確かに”出鼻”こそくじかれたものの、ここから底力を発揮していく。前半こそ連戦の疲れを感じさせ重い動きだった栃木でしたが、”後半しぶとい”というチームカラーを発揮してくる。

上村に代えて養父を投入したのは、今年から解説者になった小針の言うとおり「落ち着かせる役割」だったでしょう。しかし、栃木は広瀬に代えて杉本。小柄ながらスピードのある嫌な選手でした。熊本の選手たちの足が目に見えて止まってくる。鈴木が入れ替わられる。ボックス内に中美が侵入。堪らず園田がひっかけてしまいます。

このPKを中美が決めると、さらに栃木は湯沢を投入。足の止まった熊本を見越してさらに”速さ”を加え、熊本の右サイドを執拗に攻めます。攻めどころを見つけたという栃木の勢い。

このあたりでの指揮官の意識はどうだったのでしょうか(このあたり監督の詳しいコメントが見られなくなって残念。J's Goalがなくなった損失はこのあたりにもあります…)。小野監督には目の前の課題が見えていなかったはずはないでしょう。守りを優先したのか、まだ勝ち越しているから選手を替えられなかったのか…。選手交代も含めたゲームのマネジメント。どうだったのでしょう。

もう守り切るしかないという時間帯といえた88分。栃木が中盤で奪うと中美がドリブルで仕掛ける。誰もチェックに行けない熊本。思い切りよくPアーク前で足を振った中美。ボールは弧を描いて、熊本ゴール右に吸い込まれました。ガックリと膝を折る熊本の選手たち…。

熊本はようやく黒木に代えて常盤を入れる。カウンターから常盤がGKと1対1に成りかけましたが、プレスバックで奪われる。勝利まで”紙一重”ではあったのですが…。

アディッショナルタイムに入って巻から田中の交代。しかし、時すでに遅し。同点のまま、終了のホイッスルが吹かれました。

試合の入りからやりたいことが出来たのは熊本の収穫でした。特に巻というポストプレーヤーを置くことで、時々にロングボールを交え、セカンドを拾い、アグレッシブに守備をする昨年のようなサッカーが戻ってきた。縦への意識。相手を狙う。速攻。長短織り交ぜた攻撃の形。また、養父、鈴木と二人のロングスローはなかなかの飛び道具でした。

収穫はセットプレーから点が取れたこと。そして、前線からの守備から得点したこと。球際の危険なところで相手を圧倒する勇気。実に”うち”らしい。忘れていた感覚を少し思い出したような。そして、新たなSB候補も現れた。

ただ、チーム全員の足が止まったときのカンフル剤のなさ。前線でポストプレーやキープができるアンデルソンの不在が、この試合ほど悔やまれたことはありませんでした。

9月20日(土) 2014 J2リーグ戦 第32節
熊本 2 - 1 栃木 (16:03/うまスタ/5,218人)
得点者:58' 齊藤和樹(熊本)、69' 齊藤和樹(熊本)、88' 大久保哲哉(栃木)


気温20.3度。16時キックオッフのゲーム。このあいだまでの真夏日がうそのような。スタンドでは肌寒さを感じる季節になりました。

この日の栃木にも、前線には西川という”高さ”が立ちはだかり、さらには近藤という高さ、強さを併せ持つ”曲者”の存在がありました。立ち上がりこそ、熊本が出足良くチャンスをつくり、ゲームをコントロールしましたが、徐々に栃木ペースに。サイドでうまく起点を作り、人数をかけてドリブル、ワンツーで仕掛け、熊本のクリアやファウルを誘う栃木。CKやエリア近くでのFKなど危険なセットプレーが延々と続いた前半でした。

20140920栃木

「コーナーキックも多かったので、どこかで1本でも決めなきゃいけなかったと思います。」と栃木・西川優大。

しかし、スタンドのわれわれのドキドキ感とは違って「前半はたくさんコーナーを取られたけど、前節コーナーキックからやられていることもあって、皆すごく集中して跳ね返せた。」(片山奨典)
「前半は我慢する時間かなという感じだったけど、前節セットプレーで2本やられているので、皆にも集中しようと声かけしていました」(園田拓也)

崩されているわけでもなく、相手の攻勢というわけではないけれど、うまくセットプレーの状況を作られているような感じ。相手のロングボールもあって、熊本のハイプレスも今ひとつハマり方が不十分。園田の言うように、ここは“我慢”。そんな前半をスコアレスで終了しました。思えば、ここを凌いだことがひとつの勝敗の分岐点だったような。

ハーフタイム、小野監督は「後半も引き続き、全体でハードワークをしよう。」「前線からプレッシャーをかけよう。」と、普段通りのアドバイスを送ると同時に、SB大迫を下げて、篠原を入れ、園田をサイドに出すという戦術的なカードを切りました。

ベンチにいた篠原が「前半、マッチアップで少しズレがあった…」と表現していますが、それはスタンドのわれわれもミスマッチを感じるくらい。何らかのシステム的な対処が必要だったのでしょう。

小野監督は「特に左の近藤(祐介)選手が攻守に渡って大きなキー…」「どうしてもあそこにロングボールを入れられて」「園田の場合…あそこをしっかり高さでも抑えることができて…」とその意図を説明しています。

しかし、指揮官が「大迫は決して悪くなかった」というように、前半24分にゴール前に走り込む斉藤にピンポイントで合わせたアーリークロス。前半36分に養父からのロングフィードに反応して、自らピッチ中央に駆け上がり相手DFとの勝負に持ち込んだシーン。いずれも決定的なシーンを演出しています。「それが得点になっていたらまた別の展開もあった」と言うように・・・。決まるかどうか。多分それだけ。試合展開のなかでの戦術的な交代ということなんでしょう。

そして後半。「相手は前から来ていたし、皆プレッシャーにビビっていたので、うまくいなせるぐらいのつなぎが特に中盤では必要だし、自分たちが奪っても相手が多い所に持って行ってまた取られてる。」(栃木・近藤祐介)

熊本のプレスがハマりはじめ、徐々に攻撃にもリズムが。後半11分、相手DFへのプレスから、中盤で奪ったボール。養父がタテに入れると澤田が抜け出して決定的なシュート。これはGKの左手一本のセーブに阻まれますが、得点の匂いは十分。
そして後半13分、最後列の橋本から、低く速い“パス”が右サイドのスペースを駆け上がる園田にピタリ。ダイレクトの折り返しに齊藤が一瞬GKより早く、アタマで合わせ先制します。

「アンジー(アンデルソン)が前節取って、アンジーじゃなきゃタメだと言われるのも嫌だし、後半しっかり取れたのでよかったです」という意地のゴール。そしてなんと彼の今季ホーム初ゴールでした。

待望の先制。1点リード。さぁ、どうする?

直後の後半18分、熊本は仲間 → 巻の交代。ここは明確に追加点を奪いに行くメッセージです。巻が入るとゲームがラクになる(ように見えます)。前線での空中戦の勝率が一気に上がります。

後半24分、畑からのフィードを巻が簡単に(簡単に見えるだけですが…)おさめ、養父に預ける。そのリターンを絶妙なタッチで澤田がエリア内に持ち込んで得たCK。ショートコーナーから出てきた中山のセンス溢れる浮き球のラストパス。斉藤がトラップ一発、豪快に蹴り込んでこの日2点目をねじ込み、一気にチームのトップスコアラーに踊り出ました。

中山は、そこに「誰かがいるだろう」と瞬時に判断した。齊藤は「(中山)はああいうプレーが得意」と準備し、GKを見ずに「感覚で撃った」。ようやく息がピッタリあってきたことを思わせます。

さて、2-0。2点リードして残り時間20分。本当なら、勝ち点3を皮算用できる状況なんでしょうが。この弱気な雰囲気。多分、スタジアムの誰もが、前節、横浜戦の悪夢がアタマによぎるのを振り払うように、ゲームに、目の前のプレーに意識を集中しようとしていたのではないでしょうか。

案の定、後半28分には イ・ミンス → 大久保哲哉のカードを切る栃木。西川とのツインタワーにして強力なパワープレーのシフトを敷きます。

まさに、ゲームはここから正念場。しかし、今日の熊本。前節の悔しいドローをバネにあくまでも前から激しく、時にはうまく時間を使いながら…、ゲームをコントロールしようと踏ん張ります。

「前節も追いつかれる経験をして、今日は皆で守り抜こう、絶対やらせないという気持ちが出ていて、やられる気はしなかったです。ラインを上げられる時にサボらず、押し込まれて下げる位置が低くならないように最初の段階で1歩でも2歩でも上げることは意識していました」(橋本拳人)

それでも終了間際の後半43分。大久保の“パワープレイ”に屈し、1点を返されてしまう。そのとき、イレブンは円陣を組むように集まり、何かを確認しあうように声を掛け合いました。それは、忘れていましたが、今シーズンの開幕戦で見たシーンと同じでした。土壇場で福岡に1点返され、追いつかれそうになった試合。指揮官の教え。「失点したら一度集まれ」。

守るのか、攻めるのか。11人の意思をしっかりと統一しました。そして、5分に及んだアディショナルタイムを凌ぐ。栃木は最後の猛攻。ゴール前に入れられた大きなクロスに大久保が”かぶる”。味方に当たってこぼれたボールを畑ががっちりとキープした瞬間、終了の笛が鳴る。久々のホームでの勝利を手にしました。

ゲームの経過はドキドキでしたが、前節と似たような展開の”課題”も克服し、試合自体は、あるいはその内容は、前節も書いたように、手ごたえが着実に増している感じで、それは今日もまた少し積みあがったように思います。何となくだけど、確実に負けなくなってきているような、そんな感じですね。

「まだまだプレーオフは目指せると信じてます。」(小野監督)

いやいや、われわれも忘れているわけではありません。残り10試合。6位大分との勝ち点差は10“しか”ありません。中2日でまたゲームです。

5月24日(土) 2014 J2リーグ戦 第15節
栃木 1 - 1 熊本 (13:03/栃木グ/3,536人)
得点者:29' 養父雄仁(熊本)、60' 湯澤洋介(栃木)


またも引き分けでした。熊日が“息切れドロー”と見出しをとったように、いい形でゲームに入り、主導権を握り、先制しながら、その後失速し追いつかれるパターン。

得点経過は様々ですが、ここ数試合、同じようなパターンが続いているような気がします。

20140524栃木

前半、スカパー解説者にも指摘されていたように、中盤でポゼッションし、よくボールが回って主導権を握っているかのように見えた栃木。ただ、確かにジワジワと前に進めてはいるが、攻守の切り替え素早くブロックを作る熊本に対し、完全に攻めあぐねている様子。逆に熊本は、取りに行くところ、受けるところをうまく使い分けているような。カウンターの形を狙って一気のプレスに行く。

29分の先制点は、そんな熊本の狙いが結実しました。中盤で齋藤が戦って縦に出す。中山はワンタッチでさらに縦へ。エリア内に侵入した養父もこれをダイレクトでシュート。ゴールの左隅に決まりました。完全に崩した。

後半、確かに失点自体は相手のシュートのうまさも光るものでしたが、運動量やスピードが落ちかけたところで、目に見えて対応が“雑”になっていました。

防戦一方のような展開になりながら、それでも守り切った。それどころか最終盤では、巻、大迫の2枚替えで見事に主導権を奪い返した。カウンターの切れ味も戻り、何度も相手ゴールを脅かしたのですが…。

結果的には両チーム、シュート数は同じ9本。

「前半の試合を監督も言っていたように、1分でも2分でも長くやることが、これからの課題になってくると思う。そこを修正できれば、ドローが勝ちになる」(養父)
「今のウチは1点ではなかなか勝ちきれない。その状況のなかで前半にいくつかチャンスがあり、その中で追加点が取れれば優位に試合が運べたと思う。」(片山)

これだけドローが続くと、われわれファンの心理というのは実に欲深いもので、ついつい揺れてしまいそうになります。

しかし、同じドローでも、“やっと追いついて”とは違うし、ただ“ひたすら引いて守って”でもない。ましてやドローで幸運だったという印象では決してない。むしろここ数試合の手応えとして“勝ち点1はとれる”というデザインされたゲーム運び、基盤のようなものができつつある、と見てみてはどうでしょうか。

「前半はミスが多すぎるし、自分たちがやろうとしたことができていなかった。よく1失点で済んだ。」(栃木・廣瀬浩二)と相手は感じている。

「ちょっともったいない失点だった」と小野監督が悔やむように、押し込まれているからといって、それが即、失点につながるわけでもなく、実際に怖いのはカウンターであり、この試合も結局は押し込まれた局面からの失点ではなかったわけで。

さて、今日の選手起用はと言えば、仲間を休ませ、養父が一列前に。

「ここからシーズンを通してチームを成長させていくために、いくつかのポジションをやっていこうと。それと、DF、ボランチを含めて選手層を厚くしていこうと。」と、指揮官はその意図を語っています。色々と試してくるなあ…。

4-2-3-1のなかで前線4枚の連携と運動量がカギになることは、「相手に押し込まれたときこそ、前線の選手が良い守備をしないといけない。」(中山)と、選手自身に明確な自覚がある。今日の選手起用にそこのところを厚くしていくための起用という長い目での考えがあるのはもちろんでしょうが、このゲームに限っても、養父を一列前で使うことで、裏への飛び出しで彼のゴールがあり、また仲間の後半投入が可能になったわけで、なかなかに深く戦略的だなあと感じるところです。(橋本のミドルが決まっていればさらに凄みが増すはずだったのですが…)

“引き分けるべくして、引き分けられる”というのは変な言い方かもしれませんが、サッカーの神様のご機嫌に関係なく、“勝つべくして、勝てるチーム”、“勝ち点3を取るためのデザイン”へ向けて進んでいるようにも見えるチーム。打つべき手を丁寧に積み重ねて…。今日のこのゲームもその成長のために無くてはならないものだったと思うことにしよう。われわれはこの試合をそう位置づけました。

7月20日(土) 2013 J2リーグ戦 第25節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,676人)
得点者:79' 片山奨典(熊本)


前半戦、水前寺での対戦では1-4で大敗を喫している栃木を相手に、アウェーの地でとにかく勝った。スカパーの画面を通じて、本当に久々に見る「カモン!ロッソ」。画面越しにではありますが、スタンドで飛び跳ねるサポーターのその腕に、声に、確かに力がこもり、思いが溢れそうになっているのがわかります。これだけのアウェーへのサポーターの数。これも難敵・栃木が相手だったからでしょうか。

金曜日朝刊の熊日予想フォーメーション。その分析は詳細でした。前節、岐阜戦途中から3-4-3にしたことを踏まえ、栃木戦はスタートから3バックを予想。18日の練習では両サイドのMFが最終ラインに下がる動きを確認し、池谷監督代行の「守備に戻るときは素早くスペースを埋めることが大事」というコメントを引いていました。しかも橋本が最終ラインに下がり、片山・黒木・原田・藏川というMF陣。何がなんでも守るという決意のようなものさえ感じました。

「守りが乱れてきたら、5-4-1の守備的な位置取りに引くよう指示している」という試合後の池谷代行のコメントもそれを裏付けている。対する栃木・松田監督は「熊本は3バックがこなれておらず、後半は4-4-2も想定したが、徐々に慣れたようだ」とみている。

栃木もここ6試合勝利から遠ざかり、前節の敗戦でプレーオフ圏内の6位の座を福岡に明け渡してしまいました。優勝、昇格を掲げるチームとしては、このホームゲームは下位・熊本を相手で立ち直りのきっかけにする試合だと“計算”しているに違いない。試合序盤から押し込む攻撃的姿勢に、その気持ちが表れていました。

20130720栃木

厳しいプレスに手を焼き、ボールを保持できない熊本。人数を掛けた栃木の猛攻。失点も時間の問題かと思われましたが、跳ね返し、詰めて、最後は身体を投げ出し凌ぎ続けます。杉本の決定機は守護神・南がスーパーセーブ。

ただ、押し込まれてズルズル下がったということではなく。押し込まれたら戦局に応じてのオプションのひとつとして準備していた。-----これは見た目は同じでも、まったくの別物。プランだと思ってやるのと、あわててて対応するのとではまったく違う。

「前半は『耐えよう』という共通理解があった」と吉井が言い、北嶋も「前半は割り切って守る意識を共有できた」と言う。

前節のエントリーでも引用したように、吉田前監督交代のきっかけになった飯田本部長の要望3点。①勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び、②攻撃時のリスク管理など守備の改善、③チーム内の意思統一

今日も、その意識を感じられたし、特に③は完全に一本の筋が通っていた。

0-7の惨敗を喫した北九州戦。われわれは「誰もいない。誰も行かない」と書きました。しかし、今日のこのゲーム、前半は確かに3バックが「こなれていなかった」こともあって攻め込まれましたが、指揮官のプラン通りに決定的なスペースは消されており、決定機にも誰かが行っていてフリーにはさせなかった。

最終的な栃木の精度の低さにも助けられたようにも見えますが、やはり、これは守備時のプレスの速さ、集中の高さとみるほうが正しいでしょう。

それでも、あれだけゴールマウス近くで戦えば、どうしてもファウルが避けられず、セットプレーのリスクは高かった。今日もかなりな数のFKを与えています。そこは不安の種でした。

ハーフタイムの指示で、松田監督は「うまくいっている。このまま我慢強く続けていこう」としました。当然の発言だったでしょう。一方、池谷代行は、「セカンドボールを取れないと試合にならない!」と叱咤した。そのうえで、ハイプレスの栃木も、「必ず緩くなるので後半必ずチャンスが来る」(J's Goal)と読んでいました。

その言葉どおり、後半から熊本はセカンドボールを拾いだし、「サイドチェンジを有効に」使い出し、「相手の背後を取る」。

この試合の決勝点となった得点は、79分。攻撃をフィニッシュできない栃木のボールを、自陣深くで奪ったのはファビオ。藏川に預け、堀米。「完全にコースが見えた」という堀米の右サイド奥へのスルーパスに追いついたファビオは中央齊藤にクロス。齊藤は持ち替えてさらに左、遥か後方から駆け上がってきた片山にパス。片山がダイレクトで左足を一閃。GKがこれをはじいてゴールネットを揺らしました。

堀米がファビオに長いグラウンダーを通した瞬間には、まだ自陣のエリア付近にいた片山。「逆サイドの僕が行くしかない」(熊日)と思ったという。栃木DFを全てに遅れを取らせた鮮やかなカウンター攻撃。守備重視で点を取るにはこうして一人余らせるしかない。そんなシーンでした。

「サッカーは90分。90分の駆け引きで勝てた感覚が自信になる」と、試合後北嶋はtwitterに書きました。ハーフタイムには「『こういう試合をしたたかに勝とう!ワンチャンスで仕留めよう。今日はそういう日だ』とみんなで確認しあった」のだと言います。

こうやってワンチャンスが得点に結びつきましたが、やはり今日のゲームは無失点を評価すべきなのだろうと思います。実に11試合ぶり。ゲームプランは失点しないで、まずスコアレスドローをめざすことだったはず。前半の猛攻に、シュート数ゼロは致し方なかった。そして、主に相手の出方(栃木のペースダウン)に対応して、うまく戦い方を整理できた。まさしく「ワンチャンスで仕留めた」。

「決めるところで決めきれないと何が起こるかわからないですよ」と、スカパーの実況アナウンサーは何度も何度も不安を繰り返しましたが、熊本の”90分の駆け引き”に栃木は膝を着いた。こんなドキドキしびれるような勝利ゲームを見たかった。

試合終了を告げるホイッスル。選手も、スタッフも、ベンチも、ゴール裏も、誰彼かまわず抱き合う。長かった、重苦しかった鬱憤を一気に晴らすように、喜びを爆発させる。涙を流すファンの姿も。

9戦勝ちなし。降格圏に限りなく近づいたチーム存亡の危機。監督交代という初めてで、そしておそらく最後の一手を打った熊本。

直後の岐阜戦に終盤の失点で引き分けた。誰も口にはしないし、言葉にするのが憚られるような。しかし、実はこの試合は、チームの歴史の分水嶺になるようなゲームだった。

勝負の世界とはいうものの、この”賭け”ともいうべき大勝負に出た熊本。そして、多分、この勝負には勝てたのではないか。そうわれわれは思います。

下は向かない、上も見ない。前も気にせずただひたすら、この時を戦う。泥臭く戦う。われわれの今は、まさにそんな感じではないでしょうか。