9月11日(日)
【J2第31節】(ニンスタ)
愛媛 1-0(前半1-0)熊本
<得点者>
[愛]内田健太(2分)
<警告>
[愛]茂木力也(26分)、白井康介(87分)
[熊]清武功暉(68分)、藏川洋平(90分+4)
観衆:2,955人
主審:清水修平


出会いがしらにガツンとやられた感じでしたね。開始2分、瀬沼の落としをクリアしましたが、左から内田がダイレクトで振りぬいた。アウトに掛かったシュートがゴール右隅に突き刺さる。ゴラッソで早々に先制点を許してしまいます。

前節のエントリーで「ここが新たな出発点です。」と結びました。同じように井芹さんの「熊本蹴球通信」によれば、清川監督は「3度目の開幕のような気持ちでやろう」と、この試合に向けて選手たちに話したそうです。

ただ、“立ち合い勝負”が身上だったはずの熊本ですが、「前半は0で抑えるプランだった」(公式)と小谷がコメントしているように、最近のゲームプランは妙に消極的に映る。それはとりもなおさずこの試合が3週間で7試合の過密日程の最後の試合だったからでしょうか。選手たちは想像以上に疲れているのでしょう。

その7連戦のなかのひとつに愛媛との前回対戦もありました。愛媛にとってはリーグ戦としては連続して熊本と戦うという珍しいパターン。その試合の反省をもとに、清川監督は「少しシステムを変えて」臨みます。テヨンをアンカーに置いた3ボランチシステム。しかし、これが奏功したようには見えませんでした。

20160911愛媛

とにかくこの試合も愛媛の出足の早さ、球際の強さに押されて、セカンドボール争いでも後手を踏む。特に相手のボランチを捕まえきれず自由にボールを運ばれている。

愛媛左サイドからのアーリークロスに瀬沼のシュートは枠の右に外れてくれる。右サイドから入ったボールに阪野、振り向きざまのシュートは佐藤がセーブ。いずれも追加点を与えそうな危ないシーンでした。

熊本が攻撃を組み立てられるようになったのは、後半平繁や菅沼を投入してから。システムも元の4-4-2に戻しました。そして、最後のカードは巻。

その巻が落として清武の足元。フリーでしたがシュートは枠の上に浮いてしまう。右サイドからのクロスに、ニアに飛び込んだ清武が頭で反らしますが枠の左。どちらも完璧な決定機でした。が、決まらない。

これまでの清武なら、どちらかは確実に決めていただろうシーン。どうも体調不良で欠場して以来、ゴールが遠い。以前も書いたことですがこのエースの不振が、チームの不振に直結している面も大きいようです。

愛媛相手に追加点こそ許しませんでしたが、結局開始早々の失点が決勝点になっての敗戦。順位をひとつ落として17位としました。

リーグ戦5連敗。これからも難敵との対戦が続く。さらに厳しい状況になってきました。

まあ、しかし、終わったことを悔やんでもしかたありません。選手たちにはまず身体と、そして同時に心も十分に休めて欲しい。コンディションが整わなければ戦術も何もあったものではないわけで。とにかく、ケガなく調整して欲しい。この一週間はそう願うばかりです。

8月31日(水)
【J2第11節】(うまスタ)
熊本 1-2(前半1-0)愛媛
<得点者>
[熊]菅沼実(28分)
[愛]白井康介(54分)、藤田息吹(88分)
<警告>
[熊]植田龍仁朗(45分)、キム・テヨン(75分)
[愛]小島秀仁(20分)
観衆:2,562人
主審:岡宏道


リーグ戦だけでいえば3連敗になりました。ホームで逆転負け。いかんですね。

震災後のスキップした5試合のうちのひとつ愛媛戦は、ミッドウィーク水曜日の開催。天皇杯を挟んでの連戦です。

熊本は3日前の天皇杯1回戦と同じスタメンは高柳と上原のみ。内容のよかった先週の札幌戦のメンバーをベースにした陣容にも思えました。

愛媛は勝ち点36で13位。ここ4試合は引き分けが続いている。

20160831愛媛

熊日も含めて多くの報道は、試合前半の熊本は悪くなかったという戦評ですが、それは、地上波放送初登場の解説・瀧上氏のいつにないポジティブな解説と、押されつつもしぶとく凌いで奪った先制点の印象がそうさせるのではなかろうかと。心配性のわれわれは、逆に試合開始からの愛媛の激しいプレス、DFの出足の早さ、切り替えの早さに苦しむ姿に不安を感じていました。

そんななかの28分、若杉の右サイドでのパスから藏川がえぐってマイナス。高柳のミドルシュートを、ゴール前の菅沼が角度を変えてゴール。確かに素晴らしいゴールシーン。この日からようやく開放された真っ赤なゴール裏が、一気に沸きあがりました。

しかし前半アディッショナルタイムには、愛媛・西田が胸トラップからシュート。これはバーが撥ね返してくれ胸をなでおろす。危ない。

やはり問題は、後半の悪さでした。それにはいくつかの要因があったと思います。

「前線のアクション、サポートをもっと増やしていこう」(公式)。「ボールをもっと早く回せ」(スカパー)と、ハーフタイムでギアを一段上げた愛媛・木山監督に対して、そこまでの意識は、熊本にはなかったのではないでしょうか。清川監督いわく「後半、相手に押し込まれた時の全体として押し上げきれないところで失点して」(公式)しまいます。

54分、白井がアタッキングサード左からカットイン。一度Pアーク付近で藤田とワンツーすると、さらに右に回ってコースが見えると撃った。カーブを掛けてゴール右上角に突き刺します。

「1点目の失点は守れないゴールではないし、全体としてあそこで押し上げることができれば、競った点数でもあるので、本当に悔しい失点」(公式)と、指揮官は悔やみます。確かに、なんとなくなんとなく。誰もプレスにいかずにフリーで撃たせる。そうそう入るシュートではないとはいえ、足りている人数のなか、フリーで撃たせるのもどうかしている。隙があったということなんでしょうが。

このあと、植田が傷んで薗田という交代カードを先に切らなければいけなかったのがこの試合一番のアクシデントでした。想定外だったでしょう。

すぐあとの熊本の左CKは菅沼。GKが弾いたところをうまく巻が押し込むのですが主審の笛が鳴ってファールの判定。リプレーを見ても何がファールだったのか。これまで、あまり判定に異議を唱えてこなかったわれわれですが、これは全く納得のいかないものでした。判定ひとつでゲームが別のものになってしまいました。覆ることはないとわかっていますが、せめてどのプレーなのか説明くらいは聞きたいものです。

1-1。このイーブンの状態で、熊本は既にアクシデントで1枚カードを切らざるを得なかった。胸をなでおろした愛媛は、試合を動かすために、先に攻撃の手を打ってきました。西田に代えて阪野を投入。

それに対して熊本は巻に代えて清武。「いいタイミング」だと瀧上氏は言いますが、どうも後手に感じる。愛媛の圧力に押し込まれると、DFと前線との距離が空いてしまって、後方からのパスもカットされる。

愛媛は更に先手。河原に代えて鈴木。右SBに入った鈴木がそのスピードで突破。薗田が競り負ける。右サイド奥をえぐってのクロス。ニアで藤田がダイビングヘッドで押し込み、逆転弾とします。

熊本はすぐそのあとに岡本に代えて嶋田を投入しますが、それも活性剤にはならない。逆転に成功した愛媛の勢いは収まりません。最後はFW瀬沼をDF西岡に代えて、ゲームをきれいにクローズしました。

何と言うべきか。まず、植田に代えての薗田の交代カード。これは想定外だったはず。このあとに、愛媛に先に攻撃的交代カードを切られてから、熊本は後手後手の対応に。そのカードも奏功したとは決していえなかったわけですが。

それにしても、巻に代えて清武。岡本に代えて嶋田。という、誰もがベンチメンバーを見たら、ああそうだろうなというカード。定石というか、教科書どおりとでもいうのか、ベンチメンバーを見れば試合の前からそうだろうとわかっていたような交代カードが、予想どおりに切られて行って…。

というより前に、選んだベンチメンバーに、FWがいない。アンデルソン、齋藤、八久保…。試合展開によって、そんなオプションを用意する考慮は全くしなかったのでしょうか。それとも選手コンディションの問題なのでしょうか。

まるで、試合前から交代カードもプランされ、それが頑なに守られているようで、生きもののように変化する試合展開、持ちうる手駒を選りすぐって次の手を打つ。それによる形勢の逆転。押さえ込む、あるいは突き放す。そんなベンチワークの醍醐味が感じられず、それがこの試合、一番の残念でした。

震災後スキップした試合5試合。そのうち4試合をどうにかこうにか消化してきましたが、結果は1分3敗という状況。他チームと比べて、加えた勝ち点は1という厳しい結果です。残すところは来週の横浜戦。これで、他チームとも試合数が並び、そして”暫定順位”ではなくなります。

苦しいチーム事情のなか。とにかく勝ち点1づつでも積み上げたい。今はもうそんな心境です。

【J2第23節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半1-0)愛媛
<得点者>
[熊]クォン・ハンジン(36分)、齊藤和樹(71分)
<警告>
[熊]齊藤和樹(28分)
観衆:3,978人
主審:福島孝一郎
副審:村井良輔、熊谷幸剛


なんと、ホームうまスタでの勝利は、昨年9月の栃木戦以来、実に10か月、11試合ぶりだったそうです。それほど長いことこのうまスタで、勝利のカモン!ロッソを見ていなかったのか。試合後、赤く染まったゴール裏の勝利のダンスが、蒸し暑さを夜空に吹き飛ばしました。前半戦に続いて、愛媛に勝利。しかもクリーンシートというのが嬉しい。これで何とか17位に浮上しました。

20150712愛媛

敵将・木山監督の熊本対策なのでしょう。前半、試合開始から愛媛は、熊本のプレスを警戒するように、球離れ早く、縦に長いボールで裏を突いてきます。河原からのロングフィードを渡辺が落として、瀬沼が中央まで切り返すとシュート。今度は左サイドからのアーリークロスを、両CBの間で渡辺が必死に足を伸ばす。いずれもGKダニエルの手中に収まり事なきを得ます。

熊本の左サイドハーフは、前節活躍した清武ではなく藏川が入りました。その起用の理由を小野監督は、「(7月に入り)急に暑くなった日に、一番体の切れを見せて、ギラギラしていた」(13日付熊日夕刊)と。「周りの良さを引き出してくれる」(九州J-PARK)とも語っていますが、確かに愛媛の攻撃サイド、玉林の上がりを封じるとともに、ボールを預かると黒木を追い越させる形を何度も演出する。その上がったスペースを埋める。あるいは自ら、ダイアゴナルな動きで逆サイドまで侵入して攻撃に参加します。いいねえ藏川。

先制点もそんな藏川のアグレッシブさが活きた。右サイド養父のロングスローがクリアされると、右から再度作りなおす養父。ボックスに入れると、ニアに走りこんでいた藏川がおさめる。えぐり直してクロスを入れた。そのボールを、まだ前線に居残っていたハンジンが高い打点でズドンと押し込んだ。

なかなかセカンドボールが拾えず、手詰まり感もあり、”堅い試合展開”を息を潜めるように見守っていたスタジアム全体が、一気に湧き上がりました。タオルマフラーを振る振る。

しかし直後、愛媛に右サイド45度からのFKを与えてしまう。何度かやられた嫌な位置。先制点後にすぐに追いつかれた悪夢も蘇る。このヘディングは枠の上。ちょっと手を伸ばして見切るダニエル。ほっとため息と同時に気持ち余裕を感じる。今の熊本、先制しても変に浮つかない。しっかり落ち着いている。これもダニエル効果か。

前半40分、ハイボールを相手FW河原と競って背中から直接落下したダニエル。熊本リードの状況。普通なら大げさなジェスチャーで痛がって転がっていていいところ。しかし、顔をしかめながらも、サッと立ち上がってプレーを続ける。本当に一瞬のためらいもなく。清々しい。われわれファンも、リーグもこんなプレーをこそ認めていくべきではないだろうか。

両サイドの激しい攻防は、黒木や養父の追い越す動きで先んじていた熊本。しかしエンドが替わった後半、開始早々から愛媛は、テンポを上げて、サイドから縦に長いボールを使い押し込んできます。特に右サイド(熊本の左サイド)の玉林を執拗に使う。

熊本は前線の巻にボールを送るが、なかなか収まらない。自陣ゴール前で懸命にクリアする時間帯が続きます。しかし、なんとかこの時間帯を凌ぎ、愛媛のサイド攻撃に蓋をすると、しっかりとDFラインを上げる。コンパクトな布陣の熊本。対照的にその熊本のブロックを崩せなくなる愛媛。

試合前、ここ2戦の引き分けを振り返って、「選手たちがピッチ上で解決していけるようになった」(スカパー)と語っていた指揮官。愛媛を押し返し、厳しい時間帯を”抜けた”感じがしました。

ただ、68分頃、巻からのマイナスパスを齊藤が打つも枠の上。続いても敵CBのパスをカットした齊藤が絶好機を外す。「こうやって好機を逸しているとマズイ。相手に流れを渡してしまうぞ」などと、つぶやいていた瞬間でした。ハーフウェイラインより少し自陣よりの位置からのダニエルのプレースキック。それを巻が頭でPエリア内に繋ぐと、齊藤がDFと競り合いながら右足でねじ込むようにゴール。追加点!

「簡単なゴールは外すが、難しいゴールを決める」と、サポーターからも妙な評価をされているエース・齊藤の真骨頂(笑)。われわれのどんよりした心配を吹き飛ばします。自身新記録になる9ゴール目でした。

まあ、ここまでも十分に面白かったのですが…。しかし、この試合の本当の見どころは、実はここからではなかったでしょうか。西田剛が入った愛媛の猛攻を、ゴール前でブロックし続ける熊本。それでも一歩としてラインを下げない。中山、常盤と入れて、終了間際最後の交代カードは”守りのサイン”上原で逃げ切りかと思いきや、なんと岡本を入れて更に追加点を狙い続ける。相変わらず養父が追い越して上がっていくし、黒木のスタミナもまだまだ残っている。なによりこの日1枚イエローを貰っている齊藤が、この時間帯にも激しくボディチェックして前線で守備をする。恐るべき運動量。愛媛は苦し紛れのシュートが精一杯。次第に足も止まってきます。

結局、最後まで走りきった方が勝ったという”原点”のような試合になりました。ミスもあった。しかし集中力は途切れなかった。いや、むしろ時間を追うごとに高まっていったような。そして、泥臭く勝ち点3をもぎ取った。小野監督が「消耗戦」と表現した試合。そして、「こういうスタイルのサッカーをやっていく上では、どうしても体力的な部分というのは欠くことができないんで、トレーニングを積みながらのゲームに身体も慣れてきて、最後まで走りきれるようになってきた」と自信を口にしました。

梅雨明けもまだの高い湿度に加えて、日ごとに暑さを増してきた熊本にあっても、小野監督はトレーニングの負荷を緩めないらしい。そして指揮官は、今日の藏川に代表されるように、そんなきついトレーニングの中から一番コンディションのいい選手を選ぶ。選手を固定しない。たとえそれが勝った試合のあとでも。誰が試合に出ても代わらないように、トレーニングから色々なポジションが試される。それが、この季節が来るたびに思い知らされる熊本のもうひとつの”敵”、夏の暑さと戦う小野監督の”戦術”なのだと、また深く思い知った一戦でした。

【J2第3節】(ニンスタ)
愛媛 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]養父雄仁(48分)
<警告>
[愛]玉林睦実(11分)、西田剛(51分)、西岡大輝(56分)
観衆:2,278人
主審:清水修平
副審:林可人、大友一平


「枯れてもいない、ボコボコでもない、見事に整った芝生が熊本に味方した」。翌日の朝刊で熊日・山本記者はそう書きました。スカパーの実況によれば、ちょっと長めだったらしく、パスの球足が伸びなかったり、足をとられる選手もいたりで、ちょっと後半の疲労が心配されましたが、それにしても前節までよりいいコンディションなのには違いありませんでした。

そして、まさにそのホームの芝を武器に、愛媛が短いパスで組み立ててきたのが、熊本のスタイルにスポッとはまりました。「ここ2試合、一番内容が良かったり、一番良いサッカーをやっているのが愛媛」と、試合前に小野監督も相当警戒していた相手。今季からあの木山監督が指揮をとっていたのは恥ずかしながら知りませんでしたが、開幕から1勝1分という好スタートを切っていました。

20150321愛媛

熊本は上村と野田が初先発。小野監督のその起用に応えた若い二人が見事に役割を果たしました。上村はトップとボランチの間のスペースを、縦横無尽に走り回って、相手のボールを絡め取る。19度まで上がった気温もあって、これではいつか足が止まるだろうと思いましたが、とうとう90分間走り回った。野田は愛媛のエース瀬沼にぴったりと張り付いて仕事をさせない。高校2年生とは思えないほどの落ち着きぶり。安定感。

立ち上がり15分こそ愛媛の時間帯がありましたが、それ以降は熊本の流れが続きます。愛媛の前線とDFラインは大きく開いて、中盤はセカンドボールを含めて熊本が完全に支配する。これほど高い位置で狙ってボールが獲れ、一瞬の切り替えでシンプルに運べれば、チャンスの数は自ずと増えてきます。

そして後半早々の右CK。ショートコーナーで繋ぐと、中山がクロスを入れた。DFラインで競った齊藤が少しそらしたでしょうか、そのボールを養父がうまくゴールに流し込み、熊本が先制。そしてこれが決勝点となりました。

反省すべきはその後も何度となくあったチャンスを点に結び付けられなかったことでしょう。69分には途中交代で入った常盤からのマイナスなグラウンダーのパスを養父がシュートもわずかに枠外。71分には愛媛にゴール前を随分脅かされましたが、なんとかクリア。すぐあと、中山からの浮き球パスを常盤がDF二人の間でみごとにトラップ。そしてすぐさまシュートを振り抜きましたがGKがクリア。この試合一番の攻防でした。

点差は1点。残り時間を考えると追加点はのどから手がでるほど欲しい。愛媛には河原という熊本にとって実に面倒な選手が前線に加わった。三度(みたび)同点の嫌なイメージが頭をよぎります。

熊本は巻を入れて高さを加え、愛媛のパワープレーにも備えます。仕上げの上原は、「守りきる」という意思表示に思えました。

アディッショナルタイムになっても、何が起きてもおかしくはない。試合終了の笛を聞いたとき、おもわず大きく深呼吸してしまいました。1点差を守りきっての初勝利。90分間、相手より走り勝ってようやく手にした勝利。開幕から3試合目でやっと手にした勝ち点3。「プレーの精度、球際の強さで相手が上回りピンチを招いた。結果的に0-1でも内容的には完敗だった。」と木山監督は言いますが、内容がどうあろうと、改めて勝ち点3を取りきる大変さを、この日の愛媛に思い知らされた(思い出させてくれた)ような気がします。やっとシーズンがはじまったような感覚です。

「最後の最後まで選手達はボールにプレッシャーをかけて足を止めずやってくれた。最後の方は消耗しましたが、熊本からサポーターが多く駆けつけてくれ、最後まで大きな力になってくれた」と言う指揮官。よくよく見れば、本当にアウェイのゴール裏が赤く染まる量がっずいぶん増えたように思います。そんなサポーターたちには、今季初の勝利の「カモン!ロッソ」というご褒美が待っていました

11月9日(日) 2014 J2リーグ戦 第40節
熊本 3 - 1 愛媛 (14:03/水前寺/6,924人)
得点者:8' 嶋田慎太郎(熊本)、40' 西田剛(愛媛)、73' アンデルソン(熊本)、90' アンデルソン(熊本)

試合終了の笛が鳴り、ゲームは熊本の勝利で終わった。もちろん、主役の藤本、吉井のまわりに選手たちが集まる。輪ができる。しかし、そのずっと後ろのほうでは、金井、橋本、園田の3人が。“守り切った…”とばかりに、今日の自分たちの仕事をしばし噛みしめるようにガッチリと抱き合っていました。

今年もまたホーム最終戦は特別なゲームでした。長いシーズンのなかの1試合ではあるものの、今日だけは、何としても結果が欲しい。ユニフォームを脱ぐ二人の、これまでの幾シーズンの物語を締めくくる大事な大事なゲーム。

20141109愛媛

午前中まで雨が残る水前寺開催のゲーム。にもかかわらず、およそ7000人が詰めかけました。ゴール裏はギッシリ。ほぼ満席。すでに開始前から最終戦モードがスタジアム全体に溢れていました。

そんなファンの思いと完全にシンクロしたように、序盤から一気に押し込む熊本。「相手3バックの脇を突く攻撃をうまく使えた」と右サイドの片山。左の藏川とともに、次々にえぐっていく。システムのミスマッチが奏功したのか、愛媛のアプローチが不十分なせいもあって、セカンドも完全に支配。

先制は前半8分。ハーフウェイライン付近から園田。相手DF裏のスペースに浮き球の長いパス。飛び出した嶋田がGKより一瞬早くループ。角度のないところから落ち着いて決めて先制。熊本の下部組織出身のJ初ゴール。最終戦の重圧があったかもしれないスタジアムはこれで一気に弾けます。

その後も、サイドから次々に突破していく。精度の高いクロスを雨あられのごとく浴びせかける。シュートも枠を捉える。延々と続く熊本の時間帯。が、しかし…。

これだけの決定機、シュート数。ここで試合を決めておかないと…。と思いはじめた瞬間、わずかに前がかりになった隙を突かれてショートカウンター。前半40分。同点弾を許してしまいます。

以後、ゲームの様相は一変。出足よくセカンドを拾う愛媛。幸いにも前半の残り時間はわずか。我慢の熊本は守り切り、ハーフタイムの修正を急ぎます。

そのハーフタイム、いつもならピッチに出て体を動かしているはずのリザーブの選手たちの姿も見えず。何やらミステリアス。さて指揮官はどんな策を打ってくるつもりなのか…。

修正の答えはアンデルソンでした。故障明け、7試合ぶりの出場。後半開始から中山に代えてピッチに送り出しました。前半のうちに貰ったカードのこともあったのかも知れませんが、決して悪くなかった中山。いやむしろ前半の多くのチャンスは中山が絡む攻撃でした。相当にキレていた中山。しかし(追加点は)決まらなかった。チームとして結果が出なかった。そこで、その軸になるプレーヤーを交代して、攻撃の組み立て自体を一変させる、そんな大胆な意図があったのではないかと。

とは言っても、ここで使う、この一枚のカードは重い。ゲームの結果を左右する局面で温情起用などあるわけないことはわかっているが。しかし、このゲーム展開のなかで勝利という結果と、ベンチにいる2人の交代枠をどうやって両立させるのか…。

試合後、そのあたりを問われた小野監督は、「自分にとって、そういう意味では難しい試合だったかもしれませんけれども、やはり勝ちに行く、それでポジションは自分でつかむ、その原則をもし崩したら、チームというのは違う方向に行ってしまう。」ときっぱりと答えながらも・・・。

「いくつかの準備はしてました。(藤本)主税を中央で使う、トップとして使うこと、それから(吉井)孝輔をセンターバック、あるいはボランチでと、その辺の準備はしておきました。それは、どういう状況になっても、戦力として彼らにピッチに立って欲しかった。彼らが力を与えてチームが勝つ方向に持っていきたかった」とも。

しかし、実際にこの展開。小野監督。悩みに悩んだに違いない。そしてたどり着いた結論。今シーズン一番の渾身の一手と見立てたい。それは“起用が当たった”などというような軽いことばは失礼で使えないような。試合の流れを読み切り、今日の“特別なゲーム”の舞台を大転換させる交代カードでした。

狙い通り、後半、ゲームはまず拮抗。恐らくは守備重視で入っている熊本。前半、飛ばしに飛ばした疲労もないわけがない。愛媛の決定機も…。

そして後半23分。遂に嶋田に代えて藤本。養父が駆け寄ると藤本の腕にキャプテンマークが巻かれる。スタジアムが沸き立つ、というよりもまったく違う雰囲気が出始める。

当初、ホーム最終戦というのに”箱”が水前寺というのは残念だなと思っていました。しかしその思いは一気に吹き飛びました。ピッチに近い水前寺の臨場感。選手を後押しする歓声がすぐ近くにある。渦巻くように。まさにホーム。これこそホーム。

一変したスタジアムのエネルギーがアンデルソンの勝ち越しゴールを呼びます。藤本交代のわずか5分後。後半28分。左サイド、斎藤からのパス。追い越したアンデルソンが角度のないニアから打ち抜く。

さらにその3分後。後半31分には、負傷した高柳に代わり吉井が。さらに盛り上がるスタジアム。確かに二人を出すための交代なのですが、結果はゲームの流れを引き寄せるための完全な戦術的な交代カードに“なった”。ロッソ戦士としての吉井の初ゴールが、この水前寺の地だったことも脳裏をよぎります。胸が、目頭が熱くなります。

「苦しい時間帯に彼らが入って、サポーターがそれに呼応して、絶対この試合をモノにするんだという思いは、ピッチの中だけではなくスタジアム全体に広がってくれた、それが大きな力になったっていうのは、この試合を振り返ってもその通りだと思いますし、それだけのものをやはり彼ら2人がここまで頑張ってきた、それがあったからこその、スタジアム含めての一体感だと思っております。」(小野監督)

「やっぱりサポーターが大切ということ、ホームっていうのはこういうことなんだなっていうのを今日は思った試合ですし、2人が入ることによって雰囲気がガラッと変わったんで。それは2人が持ってる力だと思いますし、熊本の力だと思う…。」(養父)

残り時間は15分。さあ、主役が登場し、舞台は整った。思う存分を見せてくれ!!

試合終了間際の追加点。左から上がってくる片山へ、藤本からのオートマチズムとも言える”らしい”スルーパス。えぐった片山のクロスのクリアを養父が撃つ。GKが堪らず弾くと、そこに詰めていたアンデルソンが押し込んでネットが揺れる。もうアタマのなかは真っ白に…。

計時システムも老朽化した水前寺。残り時間の感覚もつかめぬまま、ある意味あっという間に終了の笛が鳴ってしまいました。

が、まだまだ終わりではありません。勝った!さあ、カモン!ロッソができる。このホーム最終戦で…。

今日の水前寺。ホームゴール裏は満席のためファンは移動ができず、メインスタンドにもバックスタンドでもカモン!ロッソが…。場内一体となってのカモン!ロッソ。これぞホーム。そして、何とアウェイゴール裏でも愛媛サポがカモン!ロッソを踊りだす状況に…。愛媛ゴール裏へ向けて「ありがとう!」の声が飛ぶ。

サッカーに教えられることは多い。

引退セレモニーでマイクの前に立った二人。
「この熊本で引退することを誇りに思う」と言ってくれた吉井。「必ず監督になって帰ってきます。また会いましょう!」と誓った藤本。ファン冥利に尽きる言葉。

嬉しくもあると同時に。もう二人のこの赤いファーストユニフォーム姿は見納めになるのかと思うと…。この季節の常とはいえ、寂しくて哀しくて、仕様がありませんでした。

帰りのファンの人波に任せながら。みんな心地よい高揚感に浸って足取りも軽い。ふと見上げると、スタジアムに隣接するマンションの上層階の窓。赤地に11、22と書かれたフラッグが掲げられています。もう最高…。「最終戦。福岡。行こうね」の会話があちこちから聞こえてきます。あと2試合で今年のこのチームも見納め。もう二度と来ないこのシーズン。この目でしっかりと見届けたいなあと思いました。