5月28日(日)
【J2第16節】(えがおS)
熊本 2-3(前半0-3)水戸
<得点者>
[熊]安柄俊(52分)、林祥太(57分)
[水]林陵平2(25分、28分)、前田大然(37分)
<警告>
[熊]嶋田慎太郎(49分)
[水]前田大然(60分)
観衆:5,300人
主審:小屋幸栄



「自分の伝え方が悪かった」(熊本蹴球通信)。試合後の記者会見で、清川監督はそう反省の弁を述べました。アウェー2連戦で岐阜に勝利し、千葉に引き分け、「戦えている」と書いた矢先にこの敗戦、というより前半3失点。われわれもガッカリしたのですが、指揮官は原因の整理ができているようでした。

20170528水戸

4-4-2のミラーゲーム。ロングボールの応酬で陣地を取り合うような試合の入り方。水戸は前線の前田を狙い、熊本は安を狙う。徐々に水戸がボールを持ち、熊本が熊本らしくカウンター狙いの様相に。安が平繁に預け、右の林に。林が戻して、この試合リーグ戦初出場となった右SBの三鬼が縦に速いパス。平繁がこれに追いつけず。

戦績も全くのイーブンの水戸に対して、この試合もここまでは全く互角のようでもあったのですが。しかし、どこか球際の部分でしょうか、この午後1時キックオフの”暑さ”を考え、消耗しないような戦い方に見えなくもありませんでした。

それは、試合後の植田のコメントで証明されました。「前半は暑さもあって、全部行ってたらもたないので、ある程度持たせてから行くということでやっていた」(熊本蹴球通信)。

「守備に関しての運動量が上がらず」(同)と指揮官は言う。「二度追いなどでもう少しプレッシャーをかけていければ、相手の攻撃の起点にも圧力をかけることができたかな」と。

それが出来ずに25分、奪われた左CK。ニアでクリアを図った片山のヘッドをファーで水戸・林に押し込まれる。すぐあとの28分にはロングボールを左サイドで落とした水戸。それが前線の前田に渡る前に植田がクリアしましたが、それが小さく。林に拾われると思い切りよく左足を振りぬかれ2点目を献上。3点目も前田へのロングボールが園田の頭を越え、前田が収めると園田は対応で出来ず滑る。シュートを一度はGK野村がはじき返すものの、拾いなおした前田。野村の動きを見極めて打ち直します。

ひとつ一つのところでは、選手個人のミスもフォーカスされがちな場面。確かにそれもありますが、しかし、ここまでの事態を招いたのはどうしても局面での球際の緩さに見えました。CBの一角の植田は、「11番(橋本晃司)のところで持たせすぎて、どんどん配球されて。プレッシャーがかからず後ろに下がってしまった」と言う。嶋田は、「なるべく食いつきすぎないようにとは言われていた」「ボランチが持った時には前を向かせないくらいのプレッシャーをかけないといけなかった」と反省する。

林と前田。取るべき人がきっちりと仕事をした水戸に対して、後半熊本はグスタボを投入します。この暑さのなかで、さすがのグスタボも本来のコンディションではないようでしたが、やはりこの人が前を向こうとすると相手のDFも人数を掛けるし、下がらざるを得ない。

52分。熊本のスローインから。片山が左からクロスを送ると、ニアで水戸DFがクリアしきれず中央の安に納まる。これを落ち着いて安がゴールに沈めます。

勢いを持った熊本は57分、右CKからファーサイドの安(それとも水戸・細川か)の折り返しのヘディング。それを中央に陣取った林が頭で反らしてゴールイン。2点目を奪います。

この後は攻勢の奪い合い。1点差に迫られた水戸は船谷を入れてくる。熊本は試合体力を考えたのか三鬼に代えて黒木。林に代えて田中。

1点のビハインドを、大事に水戸が保持しようと図るのに対して、熊本がボールを奪取しても、バックパスで安全策を取ろうとするプレーに対して野次が飛ぶ。「前を向けよ」「ホームだぞ」と。そう、負けている状況。「少しアバウトに入れてもいいとも思うんですけど」とDAZNの解説者もじれったそうに言うように…。

あとはアディッショナルタイム4分をしっかり水戸に守りきられて、熊本が敗戦の笛を聞く。

熊本の敗戦の全てが前半の戦いに集約されるのでしょう。指揮官が描いた「前半凌いで、後半勝負」という狙い(ゲームプラン)は、この午後1時という時間のキックオフ、先発とベンチの布陣、水戸の消耗を想定した交代カードと、理解できなくもないのですが。

「プレスに行くところと、少しブロックを組んで我慢しようといったところのバランスが引き気味で、行きづらくなった原因になってしまったかなと。そこは自分の伝え方が悪くて、重たいような動きになってしまったかなと」と、指揮官は具体的に反省します。

「(3失点は)ディフェンスラインのミスです」と植田は素直に言う。「前から行くと、寄せられなかったときにボランチとDFラインの間が空いてしまって、動かされてセカンドも拾われるから、それだったら行かずに後ろで守ろうというのが、それが持たせすぎちゃったのかなと」。2列目の橋本を自由にさせすぎたというのが、ここに表れます。

指揮官が描いたゲームプランと、その具体的指示。そこに問題があったことは間違いないでしょうね。「自分の伝え方が悪かった」という冒頭の指揮官の言葉が重い。

「そんなに器用なチームではないし、それなら”どっちかに”腹をくくらないと、中途半端になっていたかなと」という植田の反省の弁が、今のチーム状況を物語っているわけで。

さらにコンディションは厳しくなる真夏のサッカー。さぁこの敗戦をどう糧にするのでしょうか。次の試合、真価が問われます。

【J2第28節】(Ksスタ)
水戸 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[水]ロメロ・フランク(53分)
[熊]黒木晃平(30分)
<警告>
[熊]黒木晃平(58分)
観衆:4,952人
主審:小屋幸栄


この試合は評価が分かれるところでしょう。追いつかれての引き分けは悔しいところですが、われわれは最低限でも勝ち点1を手土産にして帰ってきたチームに対して、拍手を送りたいと思います。

中三日の連戦は、アウェー水戸戦。あの感動的な柏台での”復帰後初ホーム戦”で破れてから、もう3ヶ月近く経とうとしているんですね。

その間、水戸では、あの試合決勝点を決めたチームのトップスコアラーFW三島が、シーズン途中でなんと同カテゴリーの松本山雅に電撃移籍。その穴埋めに、これも同カテゴリーの岡山から久保をレンタルしたばかり。控えに名を連ねます。ここ5戦は2勝2分1敗と、14位につけている。

2連敗中の熊本は、本来の球際の強さを取り戻したい。腰の違和感を訴えて休んでいた巻が、前線に復帰して”戦う姿勢”をチームメイトに示したい。DFラインでは植田を休ませその代わりに薗田。そして右SBが黒木。

20160811水戸

互いに探りあうような試合の入り方のなか、徐々にホームの水戸がペースを掴み始める。再三のCK。拾っては入れてくる水戸のボールを、最終ラインで撥ね返している熊本。

そんな展開のなかで熊本にもCKのチャンス。清武のキックをニアで園田が反らすと、中央で上原が飛び込みますが、ヘッドは枠の上。惜しい。

その後も水戸が押し込む。熊本はボールを持っても攻撃にスピードが出ない。その間にミス。次第にDFラインが大きくクリアするのみになり、前線の巻にも繋がらない。

しかし試合はわからない。先制したのは熊本。30分、左SB片山からのアーリークロスは、ゴール前で競る巻を横切って抜けていく。それを右から猛ダッシュで上がってきた黒木が拾うと、クロスではなく切り返してボックスに入ってくるなり左足を振り切った。微妙にバウンドしながらのグランダーのシュートが、GKの手をかすめてニアに決まります。

ここのところやや出場機会が減っていた黒木。意地の一発。彼の持ち味であるモビリティからくる、鮮やかな活躍でした。

自分たちが試合を支配していたという感じだった水戸は、首を傾げる。前半のうちに同点にしておきたい。熊本のDFの裏へスルーパス。船谷が抜け出しますが、この1対1をGK佐藤がナイスセーブ。アディッショナルタイムにも、スローインをボックス内で落とすとマイナスパス。これを水戸の佐藤がシュートも枠の右。熊本は全員の足が止まっていた。前節の1失点目の瞬間のようでしたが難を逃れます。前半のシュート数は水戸の6本に対して、熊本は2。

後半から水戸は、この日は前線の一角を務めていた船谷を下げて、久保を入れてきました。曲者の船谷がいなくなって喜んだものの、「立ち上がり、相手は出てくるぞ!」というハーフタイムでの清川監督の叱咤どおり、一方的に水戸が押し込んでくる。「シンプルにやっていこう!」という指示でしたが、耐え切れない。

53分、水戸の右からの侵入。平松、久保と渡る。熊本も2人、3人で挟み込みますが奪えない。ちょうどスクリーンプレーのようになって、左に出すとロメロフランクの前には誰もいない。ロメロフランクが迷いなくゴールに撃つばかり。同点にします。

そこからまだ多くの時間が残されていました。勝ち越すことも、あるいは勝ち越されることも出来る時間が。

熊本は中山に代えて嶋田が入ると、そこを起点にしてアタッキングサードを突く。カウンターから清武が右サイド上がっていく黒木にパス。黒木がエリア内に入ってすぐに撃てば、というシーン。DFが入ってクリアされる。

残り15分。試合を決定付けるのは、ここからの戦い方という感じでした。

水戸が右からアーリークロス。中央久保のヘッドはポストの左。続いても右からグラウンダークロス。間一髪久保に合わず。

熊本は巻に代えて若杉を入れ、岡本に代えてテヨンを入れるとアンカーの位置に。中を締めます。

前節はちょっぴり苦いホームデビューとなった若杉でしたが、87分、左サイドから上原入れると高柳が反らしたボールを若杉がシュート。これはなんとかGKがクリアします。

終了間際、水戸のFK。繋いでからの縦パスを受けたロメロフランク。フェイントで持ち替えての素早いトーキック。あわやというところでバーが救ってくれました。

“フーッ”。守り切った、凌いだ、という印象の試合でした。個人的なMVPは、この試合もナイスセーブを連発したGK佐藤でしょうか。先制したからこそ、勝ちたかったのはやまやまでしたが、水戸の圧力は厳しかった。

勝ち点1しか積み上げられなかった熊本は、これで順位をひとつ下げて18位。下には4チームしかない状況になりましたが…。いやいや、最後にこの日のこの勝ち点1が貴重な積み上げだったと言えるといいなと思います。

「ここ数試合、後半の15〜20分で失点してしまっている。前半の得点に関わらず、あの時間帯で失点してしまうと、どうしても最後、押し込まれてしのぐ時間帯が長くなるので、修正していきたい」。それが指揮官の試合後のコメントでした。確かに後半早々の失点が多い。後半の入り方。90分の試合運びのなかでの重要な課題です。

闘将・巻は82分に退くまで、期待どおりにピッチの同僚たちに”戦う姿勢”を伝えてくれたと思います。まだ得点もなく、この日もシュートに絡むシーンもありませんでしたが、この人が前線に居る居ない、ファーストディフェンダーになるならないは大きい。やはりチームとって大きな存在です。

ただ、どうしても巻が前線で構えていると、さほど苦しい展開でもないのに中盤を省略して前線に預けたがる傾向がチームのなかにあるようで。単調なロングボールは相手に対応され、自らのリズムを手放す結果になっているような。せっかく巻が復帰したチーム。組み立ての攻めあがりと、まだまだうまくバランスしていないなあと思いました。

【J2第14節】(柏)
熊本 0-1(前半0-0)水戸
<得点者>
[水]三島康平(81分)
<警告>
[水]田向泰輝(68分)、細川淳矢(89分)
観衆:8,201人
主審:柿沼亨
副審:亀川哲弘、藤沢達也


それは遠い関東にありながら、まぎれもないホームスタジアムでした。

黄色いマフラーを巻いているにしても、家にある一番赤い服を身にまとってきてくれた。募金の代わりに配られた赤いポンチョの下には、青や紫のレプユニが見えた。あるいは赤黒のユニフォームで以前在籍した選手の応援に駆けつけてくれた人の姿も・・・。この特別な場所に居合わせられないわれわれも、代わって東京にいる息子に参戦を頼みました。

そうやって彩られた柏・日立台の熊本ゴール裏は、まさに真っ赤に染まり、この試合が熊本のホームゲームであることを実感させました。

水前寺清子さんが試合前の「HIKARI」の列に加わり、スピードワゴンの小沢一敬さんが若手を引き連れて応援に駆けつけ、高橋陽一さん、ツジモトさんといった人気サッカー漫画家がサイン会を開き、柏のスタッフだけでなくサポーターや流経大サッカー部員もボランティアとして手伝い、関東のロアッソサポーターもグッズ販売ブースの中に居ました。

そうやって、たくさんの人たちの手助けがあって、柏レイソルのホームスタジアム日立台での、”異例”で、それは“歴史的”でもある熊本ホームゲームが運営されました。

水戸のゴール裏からは「ロアッソ熊本!」のエール。これに応えて熊本からは「サンキュー!水戸」のやりとり。水戸はここ3試合勝利から遠ざかっているものの、千葉やヴェルディを下している難敵。対する熊本は、佐藤や黒木、中山といった選手が復帰してきたものの、代わって清武、高柳が体調不良を訴え、齋藤は前節の接触で骨折し8週間の離脱。満身創痍のチーム状態に変わりはない。

そんななかで指揮官・清川監督が選んだ布陣は3-4-2-1。薗田がCBの真ん中で初先発、片山と藏川をサイドハーフに上げますが、実質守備の際には5人で守ることによって「最低でも勝ち点1を」(熊日)という”現実的”な策を取って来ました。

20160522水戸

そしてプレスに行くところと行かないところをチームとして意思統一。前節、断ち切られた”組織的に連動した守備”を再構築してきました。攻撃は主に大きなサイドチェンジで片山を走らせる。しかし、どうしてもチームの重心は後ろにあるためか、単発な攻撃に終始します。どちらも先に失点したくないというような、”堅い”前半でした。

ある意味今日のスタジアムの”異様”な雰囲気に、水戸の選手たちにも気後れがあったのかも知れません。そんなイレブンにハーフタイム、敵将・西ケ谷監督は「熊本に対して失礼」と一喝したのだという(熊日)。後半、水戸の球際が厳しくなり、熊本のピンチが増え始めます。

前節、後半に入って誰の目から見ても明らかにガタッと運動量が落ちた熊本でしたが、今日は随分違いました。「一試合やったことでコンディションは大分上がってきたのでは」と、スカパー解説者の水沼氏が言うように、水戸の攻勢にも粘り強く対応し続けている。

ただ、マイボールになっても攻守の速い切り替えどころか、攻撃の糸口を探せず後ろで回してしまう。68分には誰より試合から遠ざかっていた薗田が痛んで、鈴木と交代。アクシデントとも言えるカードを切ってしまった。

75分を過ぎるころから、少しずつ、少しずつ足が止まりはじめ、守りのチェーン(鎖)が断ち切られていくと、81分、右サイドでチェイスに行った藏川が交わされ、空いたスペースを船谷に使われると着ききれない。グラウンダーのクロスをニアで三島に合わされ、失点してしまいます。

熊本にも惜しいチャンスはありました。シュート数の記録には残らなくても、あと一歩という好機が。ただ、終盤の片山からのアーリークロス。ファーサイドで巻が落としたボールに、ゴール前飛び込める選手が誰もいない。嶋田も足を攣っていた。このゲームを象徴するシーンだったかも知れません。

熊本・新市街に設けられたパブリックビューイングの会場で、彼の地の”ホーム戦”の終了ホイッスルを聞いた700人あまりのサポーターたちは、「ロアッソ熊本!ロアッソ熊本!」と連呼し、選手たちを労いました。その大きなビジョンでは、これまた異例にも敗戦チームから巻のインタビューが映し出されていた。

インタビュアーの質問に感情を抑えるようにして言葉を選びながら。「僕らは・・・勝利というものを熊本に持ち帰って・・・みんなで笑いたい・・・。そのためには・・・歯をくいしばって・・・もう一回・・・何度でも、何度でもチャレンジして・・・勝ちに繋がるまで・・・這い上がっていきたい」(スカパー)。そう搾り出すように言った巻の頬に、最後こらえきれずに一筋の涙が流れました。

早く熊本に勝利を届けたい。リーグ戦復帰はなったものの、巻を始めとした選手たちの思いはそこにありました。だからこそ歯がゆい。だからこそ負けたことが悔しい・・・。

しかし、熊本蹴球通信で井芹さんが、「少なくとも前節からはコンディションも上がり、離脱者もいるためまだ万全とは言えないまでも、戦える状況に戻ってきた点では1歩前進したと捉えたい」と書くように、今日の試合は大きな収穫を得たような気がわれわれもします。

インフルエンザの蔓延や怪我人は、リーグ戦のなかで普通に起こりうるピンチだし、これまでもあったこと。後半の試合運びの難は、開幕からのそもそもこのチームの課題。そんななかで最良のコンディションの選手たちを選び、そして現実的な戦い方で、1点でもいいから勝ち点を奪う。そんなフェーズに移ってきたのだということ。ただ、熊本も必死だが、相手チームも必死に闘っているわけで、そう簡単にいかないことはわかっています。

最後に、スタジアムの供用だけでなくあらゆる面で支援いただいた柏レイソルと、そのサポーターの皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。そしてわれわれはと言えば、今日までの感傷的な涙は拭い去って、さらに強い気持ちをもって次に向かっていきたいと思いました。「何度でも、何度でも…」。巻の決意に応え、支援いただいた皆さんに報いるためにも。

【J2第40節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半0-0)水戸
<得点者>
[熊]嶋田慎太郎(59分)
[水]船谷圭祐(63分)
<警告>
[熊]岡本賢明(30分)、清武功暉(83分)、巻誠一郎(90分)
[水]岩尾憲(75分)
観衆:8,781人
主審:吉田哲朗
副審:村井良輔、熊谷幸剛


いつものエントリーとは別に、われわれとしてもやはりこの事件に触れておかねばなりませんね。

この水戸戦の前日、7日付の熊日朝刊で突然報じられた小野監督およびクラブへのJリーグからの厳重注意処分。最初、記事を読む限りでは、小見出しに取った「嫌がらせ」という言葉からなんだかよくイメージがつかめず、パワハラ的な印象を持っていたのですが、その後のNHKなどの追っかけ、あるいはクラブ公式から発せられた報告などで、おぼろげながらこの実態が、小野監督によるスタッフへの”暴力行為”だということが理解できました。

「監督は常日頃から先頭に立って、試合はもとより、練習の際も選手の怪我、練習環境に大変気遣いをしており、今回もそういう思いが行動に表れた結果ひきおこされました」とクラブ公式は言います。確かに監督のその姿勢、それはわれわれにも伝わっています。公式の言葉をさらに借りれば、「8月26日県民運動公園補助競技場において、数名の選手とのミーティング後、合流した段階で、チームの紅白戦の前のピッチが整備されていないことに対し、チームスタッフの怠慢であるとし、スタッフの一人に行き過ぎた注意をした」と。その”行き過ぎた注意”という行為をクラブは具体的に書いていませんが、熊日によれば「顔を水たまりに近づけさせ、背中を踏み付けるなどした」のだと…。

思い起こせば、この26日は熊本がとんでもない強風に揺るがされて巨木などもなぎ倒された、あの台風15号が通過した翌日になります。恐ろしいほどの暴風雨がまだ記憶に鮮明です。トレーニング環境の整備。それに対してのスタッフの動き。当事者でもなく現場を覗いたわけでもないわれわれが、それ以上の情報や感想を持ちえているわけではありません。その状況下でもスケジュール通り紅白戦が組まれたということ自体、われわれとは異次元の緊張感、価値観を感じます。常にプロフェッショナルの仕事を求める勝負師の姿勢。われわれがこの経緯にコメントする資格はありません。

ただしかしひとつだけ言えることは、仮に事情を勘案したとしても、いえどんな事情があったにせよ、”暴力”だけは絶対に否定されるべきであるということ。この一点に関してはどんな真実にも優るといえます。

クラブからは、「今後、より一層コンプライアンス順守に努め、180万県民に愛され、信頼されるクラブとなるよう精進する所存です」と表明されました。幸いなことに、その後のチーム成績に関しても、一丸となった結果を見せてくれています。

今日の水戸戦。スタジアムのコンコースで逢った旧知のクラブスタッフに、「こんなときこそクラブの真価が問われます」と言われました。われわれが果たすべきことは、事の真実を見極め、クラブに対して正すべきところは正し、そのうえで、支え続けることだと思います。それがホームチームへの愛なのではないかと。

20151108水戸

さて長くなりました。試合はというと。

対戦する水戸は19位に沈む。この試合で勝てば降格圏内を脱し、残留が決まるという状況。ここ終盤においては、対戦する相手ごとに、それぞれ違ったモチベーションがあって向かってくる。それに対して指揮官は、「気迫で上回ること」(スカパー)を命じて、選手たちをピッチに送り出しました。

そんな水戸のモチベーションに押されたのかも知れない。あるいは今節敷いたダイヤモンドの中盤がどうだったのか。水戸が熊本のお株を奪うようなプレスでボールを奪うと、逆サイドへピッチを広く使った攻撃で熊本を脅かす。馬場と鈴木で左サイドを崩していく。受け身な熊本。

そんな中で12分頃。スローインからの流れ。齊藤が落として清武のシュートがPA内に残っていたハンジンの足元にこぼれた。シュートも、これは右サイドネット。

30分には清武が高い位置で奪って平繁にパス。平繁が左からグラウンダーでクロスを入れると、フリーで入ってきた齊藤のシュートはポストに当たって撥ね返されて絶好機を失う。(ただ、完全に崩したと思われましたが、あとでビデオで見返すと、齊藤の入りが遅れていた。丁度野球の振り遅れのファールチップのように、齊藤の振った足が遅れて外れて行っているのがわかります)。

なんとはなく“受けてしまった”前半を終えて。後半開始早々から熊本は岡本に代えて嶋田を入れました。こんなオープンに近い展開にこそふさわしいのは嶋田だったのかも知れない。そしてこれが奏功する。

59分。清武のロングスロー。低い弾道。ライナーで。ゴール近くニアで競った園田。こぼれる。それを嶋田が利き足とは逆の右足を振りぬいて、ゴールに押し込みました。

ここ数試合、精彩を欠いていたといえる嶋田。失点にも絡んだプレーを見ていて、われわれも書こうか書くまいかと悩んでいました。指揮官は言います。

「若い選手には常にありますが、ある程度試合に出続けていくと、途中でなかなか良くなっていかないことがあります。彼に限らず、多くの選手でそうでした。彼 が素晴らしいのは、そこでもう1回、昨年どうやってチャンスをモノにしていったかを見つめていました。終わってからもしっかり1vs1のトレーニングを し、ディフェンスを磨き、そこから攻撃の良さをもう1度つかんでいきました。立ち返るところを自分なりに見つめ、ひとつ壁を這い上がってきました。これは 本物になりつつあるなと感じました。そういうものが凝縮されたゴールだったんじゃないかと思います。 」(公式サイト)

タオルマフラーを全開にし、振り回して喜んだ8千人のスタジアムだったのですが、喜びも束の間でした。63分、水戸がPアークで粘る。熊本はブロックするも鈴木が出したパスに、途中から入った船谷がこれも利き足でない右足を振りぬいた。GKダニエルも横っ飛びで触りましたが残念。ボールはゴール左隅に吸い込まれてしまいます。

その同点弾の前、熊本は藏川を準備して、この1点を守ろうとしていました。同点に追いつかれた段階での交代は、アンデルソン。平繁が足を攣っていたせいもありました。

開幕前に右ヒザ前十字靱帯断裂という大怪我で戦列を離れたアンデルソン。その離脱は今シーズンのチーム戦略を狂わせてしまった最大の損失でした。

そのアンデルソンが、この大事な時期に、残り3試合となった時期に”間に合った”。帰ってきた。場内からは最大の拍手。

「コスタリカで手術」。そして長い長い辛抱強いリハビリの日々。「 こんなに長く試合から離れていたのは初めてで難しかったが、クラブ、サポーター、家族の支えがあって復帰できたので感謝したい」と言った。そして「(途中出場する時のサポーターの声援は)すごく嬉しかった。サポーターが自分のことを忘れていなかったことと、その声援で頑張ろうという気持ちになった」と…。

忘れるわけがないじゃないかアンデルソン。深刻な怪我からの復帰を思わせないそのプレー精度。前線で収める、前を向く。切り替える。サイドに開いてチャンスメイクする…。先々週、全体練習に復帰したばかりとは思えない躍動感。

ただ水戸もしぶとかった。鈴木雄斗に代えてアンダー代表の鈴木武蔵を入れてくると、81分には田中のミドルシュートがバーに直撃。アディッショナルタイムにも左からのクロスが抜けるが、前線の武蔵にも合わず。これは事なきを得ました。

終了のホイッスルが鳴ってピッチに倒れこんだ両チームの選手たち。手にした勝ち点1、こぼれ落ちた2点の重さを体全体で受け止めているかのようでした。

熊本は勝ち点1を上積みし52点とし、6位、7位、8位が57点にとどまり、のこり2試合。その差は5点。PO内への可能性は数字上ゼロではないものの、かなり厳しい状況になったことは間違いありません。順位は12位まで落としました。

試合後、公然と涙を見せていた清武。「今日は絶対勝たなければいけない試合だったし、僕にもチャンスがあったので悔しい」とコメントしました。「ロアッソ熊本にきて、結果を残さなければいけなかったので悔しい」と。それが涙を流させた理由だった。「自分が熊本にきた時は低迷していて、ダンや自分は結果を残してプレーオフまで上げるという強い気持ちなので、残り2試合、頑張りたい」。そんな気持ちで、熊本のために”悔し涙”を流してくれる”助っ人選手”がいる。

そしてわれわれはどうでしょう。その可能性は現実的にはあり得ないくらい厳しいものなのかも知れない。ただ、この最終盤。消化試合のようなものでは決してなく、こんなモチベーションで次の試合も臨んでいける。負けは許されないぞと臨んでいける。最後の結果はどうあれ、われわれ熊本の経験値に間違いなく上積みされる。これを楽しまないでどうする。そんな気持ちの、残り2ゲームです。

【J2第1節】(笠松)
水戸 0-0(前半0-0)熊本
<退場>
[水]石神幸征(90分)
<警告>
[水]石神幸征2(43分、90分)

観衆:4,787人
主審:岡宏道
副審:高橋佳久、大西保


20150308水戸

開幕戦はアウェー。笠松には冷たい(冷たそうな)雨が降っていました。スタメンには、GK原を始め、DFクォン・ハンジン、大谷、FW常盤、平繁と、移籍組が5人。大きく入れ替わった2015年の新・熊本の布陣でした。

このゲーム、水戸にとってのホームアドバンテージはふたつありました。ひとつは、もちろんですが待ちに待った開幕戦に湧き上がるホームサポーターの声の後押し。実際、熊本の選手は固かった。緊張が伝わってきました。

そしてもうひとつは今日のピッチ。中継画面が目に入った瞬間、“何だこれは?”と思われた方も多かったのではないでしょうか。最近はあまり見かけない枯芝のグラウンド。デコボコなのか、堅いのか。画面で見ていてもバウンドが不規則。選手たちも足許が覚束ないのか恐る恐るのボールコントロール。明らかに窮屈なゲーム運びを強いられます。

小野監督のハーフタイムのコメントも、「ボールをつなぐところ、スペースの使い分けをし、ピッチを味方につけよう。」でした。

パスミス、コントロールミスから何度も相手のカウンターにさらされ、ジリジリと下がる熊本。選手同士の距離が遠くなる。前線からのプレスがはまらない。縦パスが難なくカットされ、熊本らしい攻撃の起点が作れない。まさに悪循環。

そうして、監督も言うとおり「トレーニングしてきたのとは様相が違う試合」になってしまいました。

「こういうピッチの中でどうやって相手に対して圧力をかけて相手の嫌がるプレーをするか、そこへの対応が遅れてしまいました。」と指揮官は、反省の弁を述べる。

なかなかボールを引き出せなかったFW平繁も、「こういうグラウンドのときの戦い方もやっていった方がいいのかなと思います」と。やられても不思議でないゲームでした。

そのなかで活躍したのはGK原。前半も再三のピンチを救いました。後半は、ゴールマウスで片山が掻き出す場面も。79分、途中から入った水戸のFW三島にファーサイドから高い打点のヘディングでゴールを割られる。万事休したかに思われましたが、これはファールで事なきを得ました。

しかし原。数々のピンチを防いだスーパーセーブでしたが、それより印象に残ったのはその落ち着いたプレーぶり。ピンチの後にも見せるのは笑顔。決して仲間を怒鳴ったり、怒ったりしない。そういえば、原に限らず熊本のGKは、皆同じような振る舞いのような気もします。これも監督の教えなのでしょうか。ネガティブな声を発しても仕様がないとでも言うような…。

そんなGKの落ち着きがチーム全体の集中力に結び付いたのでしょうか…。ニューイヤーカップの浦和戦を思わせる(いやそれ以上かも知れない)ような、凌ぎきるゲームになりました。運も幾分か味方したとはいえ、決定的な場面にも、誰も諦めず、そこに誰かがカバーに入っていたことは事実です。こんな流れになってしまったゲームで、それでも得た勝ち点1は、十分に胸を張っていい結果のように思います。

来週はいよいよホーム開幕戦。あいにく現在、雨の予報ですが、それでも水前寺では、今度こそトレーニングどおりのゲームを見せてくれるものと思います。