3月19日(日)
【J2第4節】(レベスタ)
福岡 2-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[福]冨安健洋(54分)、ウェリントン(76分)
[熊]巻誠一郎(66分)
<退場>
[熊]黒木晃平(73分)
<警告>
[福]石津大介(83分)
[熊]上里一将(68分)、グスタボ(83分)
観衆:9,008人
主審:廣瀬格


「自分の名前を呼ばれた時に福岡の皆さんも拍手していただいたので、すごく嬉しかったです」(熊本蹴球通信)。福岡の下部組織で育ちトップ昇格した光永にとって、この”古巣”との対戦は待ち望んでいたものだったでしょうが、けれど、まさか自分がCBというポジションでレベスタに立つとは思ってもいなかったでしょうね。しかし、緊急避難的とはいえなかなかどうして。ニューイヤーカップからの実戦経験もあってのことか、あの福岡のFWウェリントン相手に一歩も引かない堂々とした戦いぶり。そして、この日の熊本の得点の起点まで作りました。

戦前、「厳しいゲームになることは予想できる。どこまで身体を張れるかが勝負になる」(DAZN)と言っていた清川監督。序盤からそれを体現する熊本の選手たちの姿がありました。前から猛烈なプレッシング。後ろも連動した組織的な守備。そもそもこれが熊本の持ち味でしたが、開幕から3試合はこれが”はまらず”、課題を残していました。

しかし今日の熊本は見違えるほど出足が早い。二人、三人でボールホルダーに詰め寄る、奪う。奪いきる。J1を1年で降格してきた福岡も、今季はよりポゼッションを目指していますが、切り替えの早い熊本に手を焼きます。

前節と同じ布陣となった巻と八久保の2トップもはまっていました。巻が収める。頭で反らしたところに八久保や嶋田、林が飛び込む。そんな巻の存在感を、福岡のDF陣が煙たがっていたのは間違いないでしょう。

20170319福岡

12分頃だったでしょうか。中盤でのボールへの競い合い。頭で競りに行った巻に対して、福岡・岩下のハイキックが完璧に顔面に入ります。もんどりうった巻が動かない。目も開けていない。急きょ安とグスタボにアップが命じられます。

結局、巻は血の滲んだユニフォームを着替えて、ピッチに戻りますが、しかしこの岩下の危険きわまりない(ひょっとしたら巻の選手生命まで奪いかねない)プレーに対して、何のカードも示されなかったのは何故なのか。にこやかに試合を再開する廣瀬主審。理解に苦しみます。

前半から左SB・片山からの攻撃がいい。右サイドで粘って繋いで左に大きく展開。片山からのアーリークロスにファーの巻のヘディング。これはGKがセーブしますが、非常にいい展開。押し込む熊本。

40分には片山が上がって、アーリークロス。福岡DFのクリアが右へ。林が拾って、巻くように撃ったシュートはGKの手が届かない軌道。しかし、ゴールマウス直前でDF富安のヘッドに阻まれます。

逆に福岡は前半終了間際、石津からの右CKにウェリントンのヘッドが炸裂。しかし、これはバーに当たり難を逃れました。

「やろうとしていることはできた。後半それをより一層強めていきたい」(DAZN)と前半を振り返った清川監督でした。後半は、開始早々から攻守の切り替えが更に早い、見応えのある試合展開になります。

そんな中、福岡に与えた右CK。ファーのウェリントンに飛んだボールには対処したものの、そのヘディングが中央にいた富安に繋がる。フリーでヘディングできた富安。ゴール左ポストに当てるとボールはゴールに転がり込みます。福岡が均衡を破る。

熊本は八久保に代えて安を入れました。開幕戦で2得点の安は、臀部の負傷でここ2試合を欠場していた。満を持しての投入でした。対する福岡は松田をポッピにスウィッチ。

すると66分、ボール保持から左で光永が持ち上がっていきスルーパスを送る。「ボールを受けた時にプレッシャーに来る選手がいなかったので、顔を上げながら運べて、パスコースが見えました」(熊本蹴球通信)という光永。その先にいたのは片山。追いついてサイドをえぐる。柔らかいクロス。ファーで巻が動きなおす。福岡DFのブラインドからマイナスぎみになったクロスを頭を振ってゴール右に押し込みます。同点!

顔に入った岩下のキックによって、唇も顎も腫れていました。おそらく口の中も切っているに違いない。それでもこのチャンスに懸命に首を振った。ゴールのあとに片山としっかりと抱き合う。しかし痛みもあって、言葉を発せられなかったに違い有りません。

69分には逆転のチャンス。嶋田が右サイドの黒木に通すと、低くて早いシュート性のグラウンダーのクロス。誰かが触ればというところでしたが、抜けていきます。

同点にされた福岡は、ボランチ・ダニルソンに代えてFW坂田を入れる。熊本は殊勲の巻に代えてグスタボ。

しかしそのすぐ後、前がかりになっていた熊本。福岡の大きなキックに園田がかぶって、それを拾ってポッピが運ぼうとするところ。抜ければGKと1対1。横から黒木がスライディング。しかしこれが決定機会阻止として一発レッドカードが示されます。

一人少なくなった熊本。右SBには村上が下がり、中盤は上里を底辺にした3枚に。その直後、連続した福岡のリスタート。左CKのクリアを拾った福岡・石津がクロスを入れる。大外に構えていたのはウェリントン。高い打点のヘディングで押し込む。落ち着かないところを突いてきた、福岡の”勝負強さ”が感じられました。

熊本は嶋田に代えて齋藤を入れ、4-3-2に。アディッショナルタイムのFKのチャンスには、前節と同じようにGK佐藤も上がりましたが得点できず。敗戦の笛を聞きました。

いつも以上に悔しさがにじむ敗戦でした。それはバトルオブ九州だからということもありますが、手応えを感じる内容だったのにもかかわらず勝負には負けたこと。あるいは、あれほどの傷を負いながら同点弾を決めた巻の意地が報われなかったことか・・・。

しかし、敗戦のなかでは忘れ去られがちになる自チームの得点のなかで、今日の巻の得点だけは、きっとずっと忘れられないものになるだろうとも思いました。

【J2第33節】(うまスタ)
熊本 0-1(前半0-0)福岡
<得点者>
[福]ウェリントン(83分)
<警告>
[熊]シュミット・ダニエル(82分)
[福]三島勇太(12分)、ウェリントン(52分)、末吉隼也(88分)
観衆:10,142人
主審:井上知大
副審:山村将弘、櫻井大輔


悔しい敗戦でした。全体的に熊本が押しに押していたんですが、まるで蜂の一刺しのようなワンプレー。PKでの失点の前に膝をつきました。

「最終ラインと最前線に力を持っているんで、そこの撃ち合いになると苦しくなる」(九州J-PARK)と福岡を警戒していた小野監督。前回対戦はまだリーグ序盤戦の3月。開幕から連敗中の福岡が、ロングボールを仕掛けてきてそれにお付き合い。自分たちのサッカーができなかった試合。そしてその勝利から福岡は連勝街道に乗り、現在4位に位置している。

今日も福岡は守備の際は3バックに両サイドを加えスペースを消す。前線には186センチのウェリントンという高さも加わっています。それに対して熊本は過密日程の3連戦のなか「戦術的な面とコンディション面のローテーション」(小野監督)を考慮して、トップ下に岡本、サイドに藏川、CBに前節同様園田を入れて、鈴木をSBに回します。ちょっと守備的な布陣なのかなと戦前は思いましたが、「間をしっかり取って行ってこちら側がゲームを支配していく」“地上戦”を展開するためのものでした。

20150923福岡

「前節うまくいかなかった」と反省しきりだったボランチの上村が、今日はセカンドボールをよく回収し、チームプレスから敵ボールを奪っては前を向き、散らす。アンカーよろしく動き回る上村のおかげで高柳が高い位置をとれる。齋藤のポストプレーが光り、その高柳と岡本がアタッキングサードを脅かす。

ただ、ゴールネットが揺らせない。

30分には齊藤が落として高柳から嶋田。嶋田が返したところを高柳のダイレクトボレーは枠の上。続いても嶋田がドリブルで右サイドを上がってエリアに侵入すると、中央の岡本にパス。これを更に左の藏川に渡したパスがカットされる。

前半、終わりごろからでしょうか。ちょっと“攻め疲れ”といった印象も受けた熊本。GKダニエルに言わせると「ボールは回っていたというより、回させられてたという感じもしました」と。福岡はこの最終ライン3バックで凌げるという相当の自信があるのでしょう。

熊本としてはこの攻勢のバランスを崩すのが怖かったでしょうね。交代カードは難しい判断でした。岡本が足を攣ってしまったのは予想外だったでしょうが、中山に代えると、待ってましたとばかりに城後を入れてきた福岡。「前半は守備から、後半に攻めるというプラン」(福岡・金森)。これが反撃の狼煙だったのかも知れません。そして続いて平井。いずれもFWのカードを切ってくる。

それでも足を止めず拮抗した展開に収めていた熊本だったのですが、福岡GK中村からの一瞬の素早いロングフィード。前線で競ったウェリントンに「本来カバーに行く選手が競ってしまって、後ろが誰もいなくなり」(ダニエル)、ボールが金森に収まるとエリアに侵入。これを倒したダニエルにイエローが示され、PKをウェリントンにきっちり沈められてしまいました。

熊本はその前に藏川に代えて清武、失点後も前線に巻を投入したのですが、今の福岡には1点もあれば十分。終了間際にもFW中原を入れて牽制すると、3度あった熊本のCKのチャンスにGKダニエルも上がって参戦しましたが、それも凌ぎ切り、敵地で勝ち点3をもぎ取ることに成功しました。

ちょっと唖然として終了のホイッスルを聞きました。これが井原監督の作り上げた今の福岡。凌いで凌いで、後半攻撃的カードを切って仕留める。こちらは全く崩されたという実感がない。

しかし結果は結果。凌いで凌いで、凌がれてしまった。およそ戦術的とは言えないような福岡のゲーム運び。この結果は福岡という対戦相手より、むしろ自らに敗因があるような。今の熊本、戦術的にはっきりとした形が見えていて、そこから先は、良くも悪くも齊藤という攻守の中心選手がいて、そのパフォーマンスが勝敗のカギを(少なくとも半分くらいは)握っているというのが現状ではないでしょうか。しかし、心なしか、その動きが冴えない、ように見えました。それは齊藤個人のプレーと同時に、チーム全体にも波及してしまっているような。
しかし、その斉藤のコンディション問題を補える可能性を持っている嶋田のプレーぶりも、やや壁に当たっているような印象がありました。あれだけの視野、技術を持っているのに、もっともっとタテに、速い判断があっていいのではないかと。失礼な言い方かもしれませんが、昔の悪いときの中村俊輔、みたいな。

ちょっと心配性過ぎますか。

いつにも増してゴール裏を青く染めた福岡サポーターの勝利のチャントが鳴り響く。それも相当な声量で。最後は「井原!井原!」という監督のチャントまで。試合前からその福岡サポーターのゴール裏から繰り出される力強いチャント。メインにもバックスタンドにも、青いレプリカユニフォームの人数を見るにつけ、否が応でもわれわれのボルテージも上がっていたところでした。それは同じ九州のチームでも、大分でもない、北九州でもない、長崎でもない。どことも違った感覚。

九州初のJリーグチームとして発足した「福岡」。長いこと憧れの存在であり、追いつけ追い越せと強く意識してきたチーム。その背中に手が届きそうで届かない。いつまでも鳴り続ける福岡のチャントが、この敗戦を一層悔しいものに感じさせたのは、そんなせいかも知れません。

【J2第4節】(レベスタ)
福岡 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[福]濱田水輝(47分)
観衆:8,361人
主審:福島孝一郎
副審:佐藤貴之、関谷宣貴


20150328福岡

「九州ダービー?そんなのは関係ない。今日は是が非でも勝ちに行く」。試合前に福岡のキャプテン・城後は、そうコメントしていたそうです。(スカパー!より)

開幕から3連敗で最下位に沈む福岡。「前線からのプレスというのは熊本の特長だったので、こっちは少し割り切ってボールを前線に入れていくというサッカーに徹した」(九州J-Parkより)と打ち明ける福岡の井原・新監督。自分たちのスタイルを崩してまでも、熊本対策を敷いてきました。そして「結果が出てほっとしております」と正直な心境を吐露しました。

ニューイヤーカップで対戦した浦和のように熊本のプレスをうまく剥いで繋いでくるというわけではなく、いわば第1節水戸、第2節群馬のように、すばやく前線のターゲットにロングボールを入れてくる。福岡の前線には、今季仙台から完全移籍した中原という長身のターゲットがありました。

ロングボールで押し込まれると、お付き合いしてロングボールで押し戻そうとする悪い癖。選手間の距離が空いていきます。低い位置から攻め上がっても、今度は福岡のプレスに引っかかる。福岡の出足が一歩、一瞬早い。 蔵川も片山も蓋をされ、サイドが詰まってしまう。養父が消えていました。

20分の福岡。鈴木の低い弾道のCKを、ファーから末吉がボレーシュート。バウンドしたボールをGK原がなんとか触ってバーが跳ね返す。その跳ね返りを詰められるが、原が立ちはだかり、触って再びバー。なんとかDFがクリア。さらに続くスローインからイ・グァンソンがバックヘッドで逸らす。後ろからくるボールを坂田が絶妙のボレーシュート。万事休すと思われましたが、これもポストに嫌われ事なきを得ました。

「これは運がある。こんなときはワンチャンスがこちらにある」、とも思っていました。31分、嶋田からのアーリークロスに、常盤がPAで上手に胸トラップで落として持ち込みますが、相手DFに身体を入れられて、シュートはGK神山ががっちりキープ。惜しい。

しかし、エンドが代わった後半早々。福岡左ウィングの阿部からのクロス。中央で中原が左足を振りぬきましたがゴール左に外れる。それが、誰に当たったとも思えなかったのですが、福岡にCKが与えられました。嫌な予感。

鈴木のCKが蹴られた瞬間、城後がニアに流れる。いつものようにゾーンで守る熊本でしたが、一人つられると、その空いたスペースに入ってきたのはCB濱田。フリーのヘッドを決められてしまいます。

結局、この得点が決勝点。福岡も、セットプレー以外はノーチャンスだったのですが、熊本のゾーンディフェンスを研究していましたね。それに対して、熊本のセットプレーはいかにも淡白でした。

後半14分。熊本は前線に起点を加えようと巻を投入しましたが、直後のジャンプの着地で痛んでしまいます。試合展開的にはこれが痛かった。平繁も投入しますが、最後は巻を引っ込めざるを得ないことに…。大誤算でした。

それにしても、蹴ってくる相手に対してどう対処するのかという課題は、依然としてあります。高い位置での勝負に持ち込めず、セカンドボール争いで後手を踏むと、劣勢を強いられる。

そして、敵陣に踏み込んだらワンタッチパスを多用しますが、ここはまだまだ意思疎通が十分ではないようです。もったいないミスが目立ちます。

全体に緩い動きだったといわざるを得ないでしょう。3連敗の福岡に隙を見せてしまった。相手を削る厳しさがなければこんな情け無い負け方になってしまう。

「1節、2節と同じで、自分たちも崩れてしまうところがあるので、そこを乗り切ればチームも成長すると思うので、もう、こういうことがないように、次からやっていきたいです」(九州J-Parkより)。そう養父は答えました。成長過程だと信じて、期待したいと思います。

11月23日(日) 2014 J2リーグ戦 第42節
福岡 1 - 3 熊本 (14:04/レベスタ/7,799人)
得点者:12' 藏川洋平(熊本)、28' オウンゴール(熊本)、45'+1 金森健志(福岡)、50' 澤田崇(熊本)


2014シーズンを締めくくる最終戦は福岡とのバトルオブ九州。奇しくも開幕戦と同じ対戦相手。「このシーズン、開幕戦から積み上げたものを両者見せたい」といったのはスカパー実況のアナウンサー。そんな集大成のゲーム。熊本は3つのゴールでシーズンの戦いを締めくくりました。

20141123福岡

前半12分。ボックス内の左寄りでキープするアンデルソン、DFを背負いながら壁を作り、大外を追い越した斉藤に出す。フリーの斉藤は、速いグラウンダーのクロスを送る。ゴール前に猛烈なスピードで走り込んだのは何と右SBの藏川。相手DFより一瞬先に触れて先制弾。

前半28分。澤田からのショートコーナー。走り寄る嶋田が受けるとそのままドリブル、中央まで回り込んで養父に預ける。ボールは養父、藏川、養父と回り、相手DFとオフサイドライン上でせめぎ合うアンデルソンに渡る。収めたアンデルソンから追い越す養父にワンツー。完全にフリーの養父はゴールライン付近まで持ち込み、高速のグラウンダーのクロス。相手DF堤のクリアはオウンゴールに。追加点。

後半5分。右サイドでDF2枚を相手に粘るアンデルソン。DFの股間に押し込むように出したボール。走り込んだフリーの嶋田が受け、そのままスピードに乗ってドリブルで持ち込む。ゴールライン近くまで侵入し、中の選手の位置を確かめながらチョーンと折り返す。ニアに走り込んだ澤田。いったんは捕まえ損ねたものの落ち着いて流し込む。3点目。

いずれもエリアに侵入し、アンデルソンが収めて起点になり、追い越した選手がフリーでサイドを深く深くえぐって折り返す。絵にかいたような…。練習通りの…。そんなゴールを3本揃えて追いすがる福岡を突き放し、熊本の2014年のシーズンは終わりました。

「走るロアッソ 集大成魅せた」「攻守圧倒 成長手応え」の見出しが躍る翌日の熊日朝刊。スカパー解説・中払大介氏は試合中、「現代サッカーのあるべき姿をやっているように思う」とまでコメントしました。

最終戦。今日のこのゲームもまたわれわれに素晴らしいものを残してくれたんですが、同時に、2014年のこのチーム、このシーズンの色んなことが思い出されて…。

先制ゴールを決めた藏川が一目散にベンチに走る。真っ先に小野監督へ。そして控え選手、スタッフにもみくちゃに…。
「今年一年、一緒にやってきた仲間が取らせてくれたゴールだったと思う…」 (蔵川洋平)

「かなりチームワークを感じされる熊本ベンチの喜び方ですね…」とスカパーの実況アナウンサーも表現する。ベンチにはこの日ベンチ入りしなかった選手全員のユニフォームが掲げられていました。

「結束力」。試合後、小野監督が強調していたのもその言葉でした。

「プレシーズンの時に感じたのは、チームの結束力では絶対負けないぞという手応えはありました。それを宝として、磨きをかけてもっともっと大きくしていきたいというのが、この1年の自分の戦いだったと思います。」
「今日も実は、試合前に『俺達の最大の武器は何だ』と、結束力だと、ここに来られなかった選手たちの分までしっかり戦おうと。」
「…選手の方から『皆で行く』ということで駆けつけてくれて、試合前のロッカールームでは全員で円陣を組むことができました。1つ1つのことが、今日は自分にとっては非常に印象的で、本当に選手達に感謝したい、そういう1日になりました」
ベンチメンバーに入れなかった選手も全員がこの最終戦の地・福岡に帯同していたのだという。

チーム一丸。行くぞ!

そして。美しくも真っ赤に染まったアウェイゴール裏。スカパーの集音マイクが拾うのは、90分間、途切れることなく響き続けた、熊本サポの堂々たる大コール。軽快にリズムを刻み、時に野太く。うねり、飛び跳ね。選手の、チームの背中を押す。共に闘う。

「アウェイですけどホームの雰囲気やアドバンテージというのをサポーターが出してくれている」(スカパー解説・中払大介氏)

これも結束。

ベンチスタートの藤本主税がピッチに立ったのは、もう後半アディッショナルタイムが告げられようかという時間帯でした。この日で引退する藤本。19年前のデビュー戦と同じピッチでのラストゲーム。プロデビューの地が引退の地。入団したチームが、最後の対戦相手。

左サイドの守備で切り返されて抜けられる。ボックス内のごちゃごちゃをクリアしてCKに逃れる。

そして最後の福岡のCK。GKの神山も上がるが、キックはゴールラインを割り、今季の終了を告げる笛が吹かれました。

選手同士の握手のあと、藤本を囲み、福岡、熊本両チームの選手が敵味方なく胴上げを始める。熊本の「チカラ・チカラ・フジモトチカラ」のコール。なんと福岡サポーターからも「チカラ」コール。スタジアム中からの「チカラ」コールに、藤本の涙腺も決壊。

今日はうまくいかなかった福岡。しかし、教えられることの多い先輩。こうやってみんな繋がっているんだぞ…と。

「福岡の選手が一緒になって胴上げしてくれたのには、びっくりしましたし、素直に嬉しかったですね。涙がぽろっと出てきました。」「『チカラ、チカラ』と声援を送ってくれたことは、サッカー選手をやってきて良かったなぁと素直に思いました。ホント、感謝の気持ちでいっぱいです」(藤本主税)

そしてその偉大な先輩の引退の日に、Jデビューを果たした野田裕喜という逸材。17歳。大津高校2年生。

「…彼(野田)に伝えたことは、同じ土俵の中で18人に残るための、そしてピッチに出るための競争をしてくれと。」「…これは最後にピッチに立った(藤本)主税もそうなんですけれども、全てチャンスを彼らが勝ち取って、野田はトレーニングの中からそういうものをしっかりと見せてポジションを勝ち取ったと思っております。」(小野監督)

激しい競争を超えたところにあった結束。

試合後、藤本を中心にアウェイゴール裏でのカモンロッソ。帯同したスーツ姿の全選手、スタッフも、そして…サポーターからの「小野コール」に促されて、小野監督までもが・・・。

2012年8月12日。ホーム栃木戦の勝利後に初めて踊ったカモンロッソ。「南ひとりでは変えられなかったことがあるのかも知れない。しかし、藤本が来て、さらに北嶋が加わったことで、何かが少しずつですが、変わってきているような気がする。」当時のエントリーではそう書いています。「ファンとチームが共に喜びを分かち合えるものを…」と、南、藤本、北嶋の呼びかけではじまった勝利のパフォーマンス。

北嶋は引退、南の移籍、そして今日、ユニフォームを脱ぐ藤本。彼らがチームに残してくれたものが、今、みんなの胸のなかにしっかりと根をおろしたような、そんな感覚を覚えました。苦しくつらいことのほうが多かったかもしれないこのシーズン。長い長いシーズンを終えたその果てに、こんな気持ちが待ってくれているとは。

しかし…。

終わってみれば、今シーズンの成績は13勝14敗15分。勝ち点54。13位。30日から行われる昇格プレーオフ。その場に身を置くことができなかった結果、事実は厳然としてあります。「(昇格プレーオフ進出の)チーム目標が達成できず、心残りだ」という藏川の言葉は重い。「チームが良い感じだからこのままもっと試合をしたい気持ちもある」という養父のコメントも、その残念さを物語っているのかと。来季こそと思う気持ち。

そんな色んな思いが交錯する最中で知った原田拓の引退の報。チームもまた変わっていく。

これから始まるストーブリーグの行方に身構えながらも、とりあえずここではひとこと言っておきたい。選手、監督、スタッフのみなさん、本当にお疲れさまでした。記憶に残るシーズンをありがとうございました。

3月2日(日) 2014 J2リーグ戦 第1節
熊本 2 - 1 福岡 (15:05/うまスタ/9,679人)
得点者:33' 片山奨典(熊本)、52' 園田拓也(熊本)、57' 坂田大輔(福岡)


先週の水曜日。古くからの戦友であるクラブのスタッフS君と、開幕へ向けての激励、壮行会と称して今年も飲みに行きましたが…。しかし、その席で聞いたシーズン直前のチームのコンディションの良さも、何かしら鵜呑みにできない、そんなわれわれでした。それは、昨年の同じ時期に聞いた、あまりにも根拠に乏しい“好調”さのなかで、期待だけが膨んでしまって、手痛いしっぺ返しにあった反省からでした。

しかし、彼はさらに強い口調でこう言いました。「開始25分までに熊本が先制するでしょう」「もし、そうでなくても福岡には勝てると思います」と。まあ、酔った勢いはあるにせよ、いったいどこからくるのか、この自信は…

20140302福岡

確かに彼が「福岡は開始早々びっくりするでしょう」と言ったとおり、熊本の前線からの激しいプレスと、相手の高いDFラインの裏を突こうとするパスの狙いは、福岡DFを次第に混乱させていきました。新生・小野ロアッソを初めて公式戦で見るわれわれも、序盤からの数々のシュートシーンにワクワクしました。しかし、だからといってゴールを割るまでには至らない。

時間がたつに従って福岡も立て直していく。電光掲示板の時間表示は、S君が言った”約束の”開始25分を過ぎようとしている。

歓喜が訪れたのは、いくらか劣勢になった33分のことでした。CBの篠原が得たFKのチャンス。キッカーは右足が養父で、左足はルーキーの中山。おそらく用意されたサインプレー。養父が壁にたつチームメイトに指示を送っている”ふり”をしている間に、中山がちょこんと横にボールを出した。そこに助走をつけた片山が左足を振りぬいた。アウトに掛かったボールの軌道は、GK神山を逆に動かして、ネットに突き刺さりました。時間は押しましたが予言通りの”先制点”でした。

後半は、MF森村を早々と諦めてFW石津を入れてきた福岡に、さすがに押し込まれ始め、危険な場面が増えました。しかし、福岡のCKの流れから仲間が奪って持ち上がると、右からSB園田が猛然と駆け上がる。仲間からのパスを、園田がダイレクトでGKの頭を越えるループシュート。追加点。

しかしその5分後には、福岡・坂田に1点を返される。苦しい時間帯。それでも、失点した直後、熊本イレブンは円陣を組むように集まり、全員で何かを確認しあう姿が。それは、昨季までの熊本には見られなかったもの。練習試合で小野監督が指示したことでした。失点したら一度集まれと。

そこから終了までの長い長い30分あまり。お互いにいくつかの決定機があり、また、思わず目をつぶったピンチもあり、それをしのぎ切っての終了の笛。

足を攣った中山を五領に代え、仲間を岡本と交代させて推進力を維持し、追加点を狙おうと動いたあとは、最後、巻を吉井に代えて”守りきる”という明確なメッセージを伝えた小野・新監督の采配。それよりなにより、劣勢の時間帯もベンチにどっかりと座り、微動だにしない様は、「何も問題はないんだぞ」というメッセージを選手たちに伝えているようでした。

新監督を迎え、メンバーも入れ替わり、期待と不安が入り混じって、どちらかと言えば心細い、言いようのない不安のほうが大きい。そんな今年の開幕戦。

試合後、選手、スタッフがピッチ上で歓喜の円陣を組み、ぐるぐると回って思いっきり勝利の喜びを表現した。これも今までにない突然の出来事でしたが、われわれにも、それがごく自然に思われるくらい、こんなにも嬉しい、またホッさせられた初勝利でした。


見渡せば、うまスタを埋め尽くすにはまだまだだけど、スタンドにはおよそ1万人のファン。十年目のロアッソ熊本。十年目の開幕戦。

十年前にはまだ出会ってもいなかったカップルたち。まだ生まれていなかったような子供たち。その頃はサッカー観戦など思いもよらなかったような年配の方々。ひとりひとりのファンの人生と重なって、少しづつ、少しづつスタンドに広がってきた赤、赤、赤・・・。

試合後の監督インタビュー。繰り出される言葉は、単にボキャブラリーが豊富なだけではない。伝わり方、受け止められ方を意識した、心理マネジメント。これはもう、その場にいた1万に近いファンへのメッセージ。ファンとしてのモチベーションを掻き立てられた方も多かったのではないでしょうか。

「最後は選手も消耗しきっていた。それでも走りきれたのは“真っ赤な声援”が背中を押してくれたから」と。

日本サッカー界きっての“知将”。しかし、まずわれわれに見せてくれたのは、背筋の伸びるようなシンプルなサッカーの原点でした。闘うこと。そして走ること。

90分間ノンストップと言っていいくらいのゲームのテンポ。意図の不明なバックパスがほとんどない。ワンツーのためのワンツーみたいなプレーもない。そして目が離せないようなリスタートの早さ。

奪った瞬間に、可能性があれば前線のターゲットを1本でシンプルに狙っていく。犯したオフサイドは12。しかし、それはあくまでチャレンジの結果。合ってはいないが、どれか一本でも裏が取れれば、得点につながる。まだまだ出し手、受け手のタイミングはこれから。そんなことは意に介さないようにひたすら狙っていくところがいい。

シーズンははじまったばかりなのだから。これから、どうなっていくんだろう。どう成長していくんだろう。そう思わせます。照準は開幕ではないということがよく伝わってくる。

これで選手が消耗するのは仕方ないと納得できる。しかし、最後までチームとしてのパフォーマンスは落ちてはいなかったという感じもする。

当然90分のなかではピンチもあり、失点も喫してしまいました。しかしそんなピンチにも、相手シュートの瞬間には、3枚、4枚と体を張った守りがあった。“誰も行かない、誰も居ない”。そんなゴール前を見ることはなかった。

そして、今日のこの戦術には、巻の存在が大きい。いや、やはり小野監督が欲したとおり、小野・熊本の戦術に、巻は必要不可欠の存在なのかも知れないと思わせました。誰よりも走り続けた巻。失点のあとの円陣で、皆に何かを伝えた巻。交代で退く場面でも、選手たちに手を叩いて鼓舞した。この試合のMOMは、誰も異論なく彼だろうと思いました。

小野・新生熊本。これから徐々にその姿が明らかになっていくと思いますが、まず開幕戦で感じたのは、チームとしてのその”一体感”に違いありませんでした。