第9節延期分
9月7日(水)
【J2第9節】(うまスタ)
熊本 0-1(前半0-0)横浜FC
<得点者>
[横]佐藤謙介(85分)
<警告>
[熊]清武功暉(10分)
[横]中里崇宏(27分)、田所諒(37分)
観衆:3,108人
主審:今村義朗


切ないなあ…。悔しいでもなく、歯がゆいでもなく、哀しいでもなく、情けないでもなく。そんな気持ちです。

試合後、ゴール裏に挨拶に来た選手たちに、「もっとやれよ!」と罵倒するような声が飛ぶ。しかし、今日の選手たちは間違いなく”戦っていた”じゃないか。今日は全員が。
(もともとそんなキャラではありませんが)だからこそ野次を飛ばす気持ちにはなれませんでした。

今日だけは「たら・れば」が許されるならば。あの24分の清武のシュートがポストに嫌われなければ。あるいは86分の片山からのアーリークロスに、清武のヘッドがもっと厚く当たっていたら…と。

後半も終わりに近づく時間帯。この試合(内容)なら引き分けでも選手たちに拍手を送れる。そこまで思っていたのですが。ほんの一瞬。本当にほんの一瞬、そこまでしっかり寄せて厳しく行っていた守備のバランスが崩れると、警戒すべき横浜のボランチ・佐藤の前がポッカリ空いてしまった。佐藤がここぞとばかり、ゴール右隅に巻くようにミドルシュートを決めて決勝点としました。敵ながらあっぱれの技術を見せた一撃でした。

熊本には、ホームだというだけでなくアドバンテージがありました。横浜は、この4日前の天皇杯2回戦で長崎を倒すのに延長戦という時間を費やしていたし。熊本はといえば、連戦とはいえ、ターンオーバーよろしく4日前に先発したのはこの日のスタメンでは片山ひとり。ほとんどのメンバーが、通常のリーグ戦と同じ日程間隔のなかでゲームを迎えられた。

20160907横浜

だからこそ、昇り調子の横浜FCとはいえ、その相性もあって、展開は互角でした。厳しい球際、切り替えの早さ、縦へのスピード…。巻が落ちてきて空中戦を制する。岡本が、菅沼が気の利いたところに顔を出す。高柳が敵の攻撃の芽をつぶしては、鋭くパスを出す。横浜の長身FWイバには園田、小谷が身体をしっかり当てて自由にさせない。どちらが先に点が取れるか。1点をめぐる息をのむような好ゲームでした。

しかし、一瞬の守備の乱れが勝敗を分けてしまった。

終了のホイッスルが鳴って、その場にうずくまる熊本の選手たち。顔を覆う選手も。何故勝てないと自問しているようで…。


これで震災後延期されていた5試合を全て消化しました。5試合で得た勝ち点は、引き分けの1のみ。震災前は5位だった順位も、暫定順位でなくなった今、16位に大きく後退しました。

でも。これで暫定順位という曖昧な状況が吹っ切れたことでもあります。思えば他のチームより5試合未消化数があることを、何となく順位や勝ち点の含み資産であるかのように想像を膨らませていたのかも知れません。しかし、途中で誰もが気付いたようにそれは決してアドバンテージなどではなく、ただただ過密日程という自分たちだけが背負う重い重いハンディキャップでしかなかったのです。


試合数は揃いました。これで振り出しに戻った。16位。降格圏から勝ち点差6。震災直後には、チームが存続できるかどうかを覚悟していた時期もあったこと。再開初戦でのパフォーマンスを見て、これからまともにリーグを戦っていけるんだろうかと心配したこと。そしてここまで戦ってきての16位。もちろん背負っていた重荷によるダメージがすぐに消えるわけではありません。

冒頭の「もっとやれよ!」の声もあるかとは思いますが、今シーズンのテーマが残留にあることはわれわれだけでなく、多くのファンも思っていることではないかと。

これまで降格したチームを横目で見ていて思うのは、最後は選手、チーム、そしてファン・サポーターがバラバラになってしまうことの怖さ。お互いの不信感やないものねだりが止めようのない悪循環を招いていく。

震災と言うとんでもないアクシデントに見舞われながらも、ここまで一体となって戦い、踏みとどまり大いに面目を保ってきた“チーム熊本”。うまくいかなかったことも、反省することもあるだろうけれど、今はそれよりもまず、よくやってきたじゃないかと、自分たちを称えてもいいんじゃないかと。これまでやってきたことも、これからわれわれがやるべきことも何のぶれることはありません。ただただチームを後押しするということのみ。覚悟は決まりました。ここが新たな出発点です。

【J2第23節】(ニッパツ)
横浜FC 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[横]イバ(86分)
[熊]八久保颯(3分)
<退場>
[熊]巻誠一郎(45分+4)
<警告>
[横]イバ(45分+1)
[熊]巻誠一郎2(13分、45分+4)、片山奨典(40分)、嶋田慎太郎(85分)
観衆:3,296人
主審:藤田和也


ふと思い立って横浜に行ってきました。何年ぶりでしょうか。飛行機が遅延して、三ツ沢に着いたのはキックオフぎりぎり。ゲーム直前にあったという南や市村の熊本へのメッセージ映像は見られず。

落ち着かないアウェーのスタンドで、自分ひとりまだ試合に入りきれない(笑)でいると、南が横っ飛びして横浜のゴールネットが揺れている。ん?八久保?

あとで録画を確認しましたが、自陣奥深くからの植田のFK。前線の巻が競って落としたところにDFのクリアが小さい。そこに詰めた八久保がダイレクトボレーで抑えたシュートを撃つ。ゴール左に突き刺します。開始3分の先制弾。初先発となった八久保が、幸先良くリーグ戦初ゴールを決めてくれました。

しかしすぐあと。横浜の左CKにニアサイド、190センチのイバが頭で反らしたボール。わずかに右に外れてくれましたが、ヒヤリとします。

「これまで3試合かなり失点が多かったので、もう一度、守備から入ろうと、それもただ守るとうことではなくて、ボールを奪いにいく守備が自分たちのサッカーだということをもう1回確認した」と言う清川監督(公式)。久しぶりにミッドウィークの試合のなかった熊本は、この試合、布陣を4-4-2に戻すと、球際が実に激しい。ファウルの笛も致し方ない。

そしてそれは、ここ10試合中1勝しかしておらず、しかも現在2連敗中という横浜も同じ。特に右SBの市村は、被災地である古巣との対戦に特別な感情を持つのか。対面する元同僚の片山との攻防も激しくやり合っています。

20160716横浜FC

12分頃、熊本のハーフウェイライン付近からのFK。前線で巻と競った田所が頭から流血し、巻にイエローが示される。ここで主審の巻への印象、肘の使い方の印象みないなもの…、が決まってしまったように思います。

イバの身体の強さ、懐の深さに手を焼きながらも、なんとか守っている熊本。八久保がボールを持つとドリブルで駆け上がりゴール裏を沸かせる。前半終了間際の連続したピンチもなんとか凌いでこのまま先取点を守って前半を終わりたい。もうラストプレーだろうというときでした。自陣手前のGK佐藤の蹴ったロングボールに競った巻。笛が吹かれ、肘を使ったと主審が右手で2枚目のイエロー、続いて左手でレッドカードが提示されます。

「退場は皆が戦った結果だ。ここは皆がもう1つチームとして頑張れるか。絶対パワーを落とさず、あきらめないこと」(公式)。ハーフタイムで指揮官は、巻をかばうと同時に、残った10人の選手たちをそう鼓舞して後半のピッチに送り出しました。

横浜は後半開始からカズに代えて野崎を投入。出だしから猛攻を仕掛けます。

ボールを持ち続けられる熊本。当然、前線からのファーストプレッシングはかからず、横浜のサイドを大きく使ったボール回しに、必死にスライドして対応する。奪われるスタミナ…。

指揮官は、「ある程度のところはブロックを引かなければいけないし、そこからボールを奪いに出て行って、カウンターを仕掛けようと思って」(公式)、平繁に代わって齋藤を入れる。続いて中山に代えて嶋田。

しかし、齋藤を一人前戦に残して、残りの9人がエリア内で懸命に横浜の波状攻撃を撥ね返している熊本。なかなか齋藤にいいボールが渡る気配はない。

一方の横浜も、単調なクロスは中が厚い熊本に撥ね返され、最後のシュートも精度がない。時間はどんどん過ぎていき、横浜のゴール裏のフラストレーションも貯まります。

残り時間も15分近くになって、横浜が高さのある大久保を入れると、清川監督はDFラインに鈴木を入れて3バックに。決して、このまま逃げ切ろうという意図ではなかったとは思うのですが…。

40分、エリア内まで戻って守備をしていた嶋田が、市村を倒したという判定でイエロー。主審がPKを宣告します。もはや4試合連続になるPK。

キッカーはイバ。佐藤も読みきったのですが、その手をかすめてゴールネットを揺らされます。

贔屓目と言われればそれまでですが、横浜はこの1点を取るのがもはや精一杯で、熊本はまだたっぷり残されたアディッショナルタイムまで勝ち越し点を狙いにいったと思います。決して悪い戦いではなかったし、選手たちの意図も明確に見えていました。赤く染まったゴール裏も、応援の声を最後まで緩めませんでした。

結局、八久保の初ゴールは決勝点にはなりませんでしたが、大敗が続いた連敗をここで食い止めたということの成果は決して小さくない。山形戦のとき、「こういうときこそ新しい力、フレッシュな戦力の台頭が必要な気がします」と書いたことも、現実になりました。

ただ、もっともっと新しい力が出てきてほしい。それについては、紅白戦しか出来ず、対外練習試合が行えない、若い選手のゲーム勘がなかなか養えないというのも、震災の大きな影響なのかも知れません。今後の国体や天皇杯に期待したいものです。

布陣を変更してからの失点で、3バックに疑問符を付ける向きもありますが、「震災前から後半を凌ぎきれるかどうかが課題だった」といつかも書いたとおり、今日はしかも一人少ない状況で走らされ続け、あの時間帯にきたときの指揮官の選択肢としては、間違いではなかったと思います。

それにしても、毎試合毎試合、退場やらPK献上やらでゲームが落ち着かない。これもまた連戦を含めた何か熊本に課せられたもののように思えて来たりします。新米監督も試され続けますね。

「判定は言い訳にならないし、チームとして一人一人が強さを出してくれていたので、10人でも耐えていた。後半は外から見ていて、勇気ももらえた」(公式)。そう巻は仲間たちを称えました。きっと今も時間があると避難所まわりを続けているのでしょう、この暑さも加わって疲れているに違いない。出場停止の次節は、ミッドウィークの試合。チームとしては、巻に休養を取らせるちょうどいい機会と、これもまたポジティヴに捉えたい。

そんなことを考えながら、港方面で上がる花火を横目に、三ツ沢球技場をあとにしました。皆さん、お疲れさまでした。

【J2第24節】(ニッパツ)
横浜FC 0-3(前半0-1)熊本
<得点者>
[熊]岡本賢明(22分)、嶋田慎太郎(54分)、藏川洋平(73分)
<警告>
[横]中島崇典(83分)、市村篤司(90分+1)
[熊]園田拓也(87分)
観衆:7,506人
主審:上村篤史
副審:桜井大介、藤沢達也


「今日の試合は自分にとってはサッカー人生のターニングポイントくらいの意気込みで臨んでいました。このチャンスを生かすか生かさないかで今後が変わってくるというゲームだったと思いました」(ゲキサカ)。

初先発からの今シーズン初得点。この大勝3得点の口火を切った殊勲者・岡本は、この試合に賭けていた並々ならぬ思いを語りました。

「シーズンオフにヒザの手術を受けた」のだという。「リハビリに半年近くかかってしまい、その間チームの状態も良くありませんでした。そのときに自分がチームのためにプレーできないことが、本当にもどかしかった」(ゲキサカ)と心情を吐露しました。チームの選手会長として、いつも明るく振舞っているその心の奥では、計り知れない焦りや不安や苦しみと戦っていたのであろうことが、”ターニングポイント”という言葉に集約されているように思います。

「立ち上がりは、なかなかゲームに入れなかった」(岡本)。コイントスでエンドを替えた横浜が、強風を背にして、縦に早い展開を仕掛けてくる。開始早々、市村のアーリークロスがハンジンの頭を越えると大久保に。これはハンジンがトラップをクリアして事なきを得ます。

大久保の高さ。「それを嫌がってこちらがラインを下げるか、ラインを上げてボールにプレッシャーを掛け続けられるかの勝負だった」と小野監督は言います。熊本は今日も勇気を持って高いラインを保つと、前線からプレスを掛ける。ボールの出所の寺田は齊藤と岡本が自由にさせず、攻撃に転じたら、岡本がボックス内に”神出鬼没”よろしく侵入する。徐々に横浜を追い詰めていく。

それが実ったのが先制点の場面。22分、左サイドのスローインから齊藤が右足を伸ばしてそらすと、ボックス内の岡本に収まる。すかさず岡本が前を向きなおしてDFを置き去りにするとシュート。猛然と前に出てきたGK南にも当たったかと思われましたが、ボールはネットを揺らしました。ガッツポーズの岡本。それに駆け寄る選手たち。

20150718横浜

後半開始から横浜は、なかなかボールを引き出すことの出来なかったカズを諦め、ボランチに渡辺を投入。寺田をトップ下に移すことでマークを外しに掛かります。ただ、確かに寺田がボールを触れるようにはなったものの、チームの随所でミスが出る。FKを得てもダイレクトで狙うものの大きく枠を外すばかり。淡白な攻撃が目立ちます。

熊本はロングボールを齊藤が落とすと、詰めていた藏川がシュート。こればボールごとGK南が枠内に入っていたかと思われましたがノーゴールの判定。しかし続く54分、右サイド奥で岡本がDFにチェックに行くと、嶋田がそのパスをカット。齊藤とのワンツーでボックス内に侵入すると、DFを交わして左足に持ち替えた。瞬間、南の反応より速いタイミングでゴールを打ち抜き、追加点としました。

いまさらですが、前線からのプレスと言っても、熊本の場合、90分間やみくもにプレスを掛けるのではない。ボールの”うばい所”(それは時間であり、場所であり、相手のバランスであり)を狙って、しかもチーム(組織的に)で奪う。単にプレッシャーを掛けるのではなく、”奪い切る”ことなのだと。この得点シーンが特に物語っていました。

“プレス”というサッカー用語だけでは誤解してしまいそうです。今の熊本の戦術の根幹は“奪うこと”。相手の攻撃を遅らせるでもなく、ボールを下げさせるでもない。奪うその一瞬が守備と攻撃を一体にした戦術の起点になる。どうも、奪ったボールが“ものにならない”状況と判断したときには、思い切って(リスクの少ない)スペースに蹴って、相手にポゼッションを渡してでも、奪い直しにリスタートしているような、そんな意図さえ感じます。

たまらず横浜は、小池に代えて黒津を投入。入ったばかりの黒津が、大久保とのワンツーで左から崩すとDFを振り切ってボックス内に侵入。この試合、最大のピンチはしかしダニエルが身体を投げ出し、足でブロックし防ぎます。2-0が一番危ないスコアとサッカーでは言われるとき、絶対絶命のピンチを救ったダニエルのファインプレーが、またチームメイトを奮起させ、勝利を呼び込みます。

怪我で痛んだ渡辺に代えて、松下を入れてくると、中盤での激しい奪い合いの様相になる。熊本は横浜のパスをヘッドでカットしてDFの裏に出す。そのボールを齊藤が持ち上がってシュートしますが、さすがの南がコースに立ちはだかって、ボールは左ポストに嫌われる。跳ね返りのボールを拾った寺田が、前の松下に短いパスを送ったところでした。猛然と走り込んだ藏川がそれを奪うと、南も一歩も動けない速くて強いシュートでゴールにぶち込み3点目とします。

ポストを叩いて悔しがるのは南。前回対戦後は、「今年の熊本はスマート。怖さはあまり感じなかった」とうそぶかれましたが、この日は3度そのゴールマウスを打ち抜いた。南がボールを持つたび大きなブーイングを送り続けたゴール裏の赤いサポーターたちも、きっと溜飲を下げたに違いない。それにしてもアウェーの地・三ツ沢に多くのサポーターが駆けつけ、よくぞあれほど赤く染めてくれました。

その後も熊本はラインを下げることなくプレスも怠らない。巻を入れ清武を入れ、走り続ける。横浜は完全に戦意を喪失、後ろで回すしかない。アディッショナルタイム3分、右サイド奥から途中投入の中山からのクロスに巻の頭が触ったか触らなかったか。ボールはゴールの左隅に吸い込まれ、4点目かと思わせましたが、これはオフサイドの判定。そして終了の笛が吹かれると、この日も熊本はクリーンシート。シーズン初めての連勝を敵地でもぎ取りました。

「点差よりは苦しい試合だった。選手が最後まで走り切ってボールに果敢にプレッシャーを掛け続けてくれたことが勝点3につながった」。そういう指揮官の試合後の言葉が、この試合の全てを物語っているでしょう。やはり”走ってなんぼ”。そして、玉際で激しくいくチームスタイルが、横浜をして、「自分たちから相手にプレゼントしたようなプレーが多かった。信じられないミスが多かった」と、ミロシュ監督を嘆かせました。

初連勝を飾り、順位こそひとつ上がって16位にしたものの、この節、下位グループも勝ち点を積み上げたことによって、その差はあまり広がりませんでした。まだまだ浮かれるわけにはいかない。

試合終了後のピッチ。途中退いた岡本が、選手たちを労い、一人ひとりと笑顔で握手を交わす。「まだまだ自分たちは苦しい順位にいる」(スカパー!ヒーローインタビュー)と言う彼の自覚の言葉もそうですが、何よりまた一枚、前線のカードが完全に戻ってきたことは頼もしい限りですね。

【J2第7節】(うまスタ)
熊本 0-1(前半0-1)横浜FC
<得点者>
[横]オウンゴール(19分)
<警告>
[熊]クォン・ハンジン(56分)
[横]南雄太(59分)、松下年宏(69分)、佐藤謙介(82分)
観衆:7,040人
主審:小屋幸栄
副審:藤井陽一、福岡靖人


試合終了後、スタンドに挨拶に来た選手たちに、「ホームだぞ!」と一言罵声を浴びせたのは初老の男性でした。それは、ホーム初勝利が掛かっていたにも関わらず低調に推移したこの日のチームのパフォーマンスに対する叱咤に違いありませんが、同時に前半19分の得点者がキング・カズだとアナウンスされたとき、スタンドの赤い恰好の人たちからも大いに拍手が上がった(その後オウンゴールに変更されましたが)、そんな人たちへも向けられていた言葉ではなかったかと思うのは考え過ぎでしょうか。

20150411横浜

熊本はスロースタートな印象を受けました。出だしから横浜の攻勢の方が鋭い。8分にはカウンター。右からのアーリークロスをファーで松下がダイレクトボレー。これはこの日、原に代わって初スタメンとなったGK金井ががっちりキープ。14分には熊本ゴール前での空中戦での押し合い。PA内の大久保にこぼれると、すかさず撃たれますが、枠外。ヒヤリとさせられる。

ところが19分、横浜に与えたFK。松下がカーブの掛かったボールを右足で送ると、誰が触ったのかよくわからないままゴールに吸い込まれる。

横浜の選手たちが次々にカズの手にタッチする。場内でもカズのゴールとアナウンスされます。しかし、あとでVTRで見ると、ボールはジャンプした壁を越えて、平繁に当たって角度を変えて吸い込まれた。カズは触っていない。カズが”ダンス”をしなかったはずでした。

前節まではCKからの失点の連続に苦言を呈しましたが。この日もFKというセットプレーから。これで今シーズン8失点のうち、セットプレーから6失点目。何故にリスタートに弱いのか。

横浜が2列に敷いたブロックは非常にコンパクト。まるで生き物のようにその距離をキープしながら熊本のボールホルダーに圧力を加えます。中山や上村が受けてもなかなか前へ運べない。前線に入れるくさびのボールは、最終ラインからの激しいチェックに潰される。それはまるでカミソリのように鋭い。DFの裏には大きなスペースがあるのですが、前線の動き出しと、後方からの出し手のタイミングが全く合いません。次第にDFラインでボールを回す時間ばかりが長くなる。

そんななか、前半の36分、一度左を通しておいて大きく右にサイドチェンジ。素早い藏川のクロスから齊藤のヘッドは、惜しくも枠右に外れましたが、これが熊本の目指す攻撃パターンだったでしょう。ハーフタイムの小野監督の言葉も「幅を大きく使って、テンポを上げていこう」というものでしたし。

続く41分には、片山がアーリークロスをGKと平繁の間に送りますが、バウンドが高くなって平繁に合わず。あとは後半74分に中山が得意の浮き球パスをPA内の常盤に送るとシュート。GK南が弾いたところを平繁が押し込む。場内が沸きかえりますが、これは常盤のところで副審がオフサイドフラッグを上げていました。

熊本の見せ場はこれぐらい。常盤を入れ、黒木を入れ、巻を入れてもパフォーマンスは上がりませんでした。

「澤田や仲間がいた昨年はスピードでゴリゴリ攻めてきた。今年の熊本はスマート。怖さはあまり感じなかった」(12日付・熊日)と、試合後の南に”うそぶかれ”てしまいましたが。しかし、そんな横浜もオウンゴールで先制したあと、その1点を守り抜くような試合運びに終始した。まるで1-0を美学にしていた熊本や横浜で指揮した元監督の采配のようであり、ミロシュ・ルス新監督も「互いにけん制しあう試合で、観客にとって面白かったか分からない」と言いました。

熊本はまだ”発展途上”というしかない。こんなゲーム展開の日もある。相手もしかり。しかし、3戦勝利から遠ざかっていた横浜は、この日はオウンゴールでもその1点での勝利に捨て身でこだわったように、熊本もホームでの勝利に絶対にこだわるというメンタルをもっと前面に押し出してほしかったのは事実です。

そうでなかったら、この日のようなブーイングをまた浴びせられても仕方がないでと言えるしょう。

9月14日(日) 2014 J2リーグ戦 第31節
熊本 2 - 2 横浜FC (19:04/うまスタ/8,234人)
得点者:35' アンデルソン(熊本)、51' 仲間隼斗(熊本)、77' 野崎陽介(横浜FC)、84' 松下年宏(横浜FC)


ちょっといつもより遅れてスタジアムに到着したわれわれの耳に飛び込んできたのは、騒然とも言えるようなブーイングの嵐。それは場内アナウンスでアウェーチームのGK・南の名前が紹介された瞬間でした。

4年間、熊本の守護神としてゴールマウスを守り続けた男が、今日始めて相手チームの一員として”うまスタ”のピッチに立っていました。そこに浴びせられる壮大なブーイング。しかし、自身のブログで書いたように、それは彼の”望むところ”でもありました。

キックオフ直前。熊本のゴール前にスタンバイした畑へ送られた「ミ・ノ・ル!」コールも、いつもより増して力強い。「今はミノルがわれわれの守護神」。畑にとっても、今日は特に期するところがあったに違いありません。

前半戦では、齊藤の貴重なゴールで下した横浜FC。しかしその後、ここまで13試合負けなしと好調を維持し、プレーオフ圏内を窺う9位につけている。なかなかの難敵です。

20140914横浜

千葉のケンペス。札幌の都倉。大分のラドンチッチ…。彼らの圧力と闘ってきたように、このチームにも前線にパク・ソンホという191センチの高さがありました。「相手のロングボールというのはわかっていたんですけども」(小野監督)と言うように、前線のパクをターゲットにして組み立てる横浜。対する熊本は、橋本、キム・ビョンヨンという若手コンビが初めてセンターを組むDFライン。完全に2枚でパクを挟み込むスタイルで相手のターゲットを潰しにかかります。

9月もなかばのナイトゲームは気温24.7度。選手もゲーム序盤からパワー全開の思い切った動き。「立ち上がりから相手にプレッシャーをかけ続けてくれて、何度もチャンスを作ってくれました」という小野監督。

ただ、今日のプレッシャーは、好調、横浜をさらに圧倒しようという気持ちというか、気迫というか、いつにも増して激しく、執拗。それはやはり、南の守るゴールを割りたい!という一心ゆえか。そんな選手の気持ちがスタンドにいるわれわれにもシンクロする。

「前半は相手の土俵で同じことをやってしまって…それ以上に相手のプレッシャーが強くて、それは想定していましたけど、もろに受けてしまって。」(横浜FC・松下裕樹)

先制点は熊本。横浜の波状攻撃を凌いでのカウンター。自陣から養父が前の仲間に出すと、見事に前に向き直りすかさず左に流れた齊藤へパス。仲間も飛び込みましたが、齊藤が入れたクロスにニアで合わせたのはアンデルソン。2試合連続のゴールとなりました。

ただ、横浜にもチャンスがなかったわけではなく。しかし、GK畑の片手一本のクリアや、ゴールマウス前の密集のなかでのキープなど、熊本の最後の守りに塞がれる。前に出る積極性も今日は光る畑。試合前のあのコールが気迫を注入して、”今日は当たっている”。そんな感じが伝わりました。

そして早めに欲しいと思っていた追加点は、後半6分。澤田からのスルーパスに仲間が飛び出してシュート。芯を捕らえていなかったのが幸いしたのかも知れませんが、南の脇をすり抜けて、ゴールに突き刺さります。もうスタジアムは歓喜の渦。

2点リードして残り40分。まあ、2点リードすれば、誰が何と言おうと、勝たなければいけないわけですが。これで終わるわけはないのが今の横浜の底力であり、敵将・山口監督の采配でもありました。飯尾、野崎という曲者を入れてくるなかで、「並びというか立ち位置をちょっと変えた」(山口監督)。そんななかで、さすがに熊本の運動量も多少落ち、やはり横浜の攻勢、バイタルへの侵入にチェックが遅れジリジリとラインが下がりはじめます。

対する熊本のベンチワークは、後半14分に仲間に代えて黒木。これは前節と同じく、まだ追加点を取りにいくんだというサインに見えました。しかし、24分に大迫に代えて藏川が入ったところでは、ピッチ上の誰もが「守りきる」ということで頭が一杯だったのではないでしょうか?しかし、それにはまだまだ長い時間が残されていました。

後半32分、CKから野崎に決められ、さらに、39分には、FKを直接松下年宏に突き刺される。いずれも横浜の得意とするセットプレーから。ここまで気を吐いていたGK・畑でしたが、セットプレーへの対応には、まだまだ未熟さを見せてしまいました。

それにしてもアンデルソン。日に日にフィットしてきている。コンディションが上がっているのがはっきりわかります。

「特にディフェンス面で、かなり効果的にプレッシャーをかけてくれて、前線で起点になって、ゴール前でも頑張ってくれました」と小野監督。

そしてこの試合の終盤、連続した2枚目のカードで退場。もちろん引き分けという試合結果も残念ですが、それにもまして…。この退場劇はどうなんでしょう。

熊本としてはホームで追いつかれて、終盤で「絶対に勝ち越してやる」と誰もが思っていた場面。遅延行為をする意味のない場面で、何であのプレーがカード(遅延行為)なのか?アンデルソンにそんな”意図”があったかどうか。

「彼としてはもちろん、オフサイドじゃないと判断してのプレーだったと思います。私も、声を出しても中には聞こえない状況でした。その中で、必死でゴールを奪おうとしていた姿勢、判定は判定として受け入れながらも、私は彼のゴールを目指す姿勢は評価しています」と小野監督はアンデルソンを庇いながら、やんわりとジャッジを批判しました。

そして何より残念なのは、このことでの次節の出場停止。これはもう、頭を抱えて参ってしまうくらい残念で仕方ありません。

それでもアンデルソン退場後も、アディッショナルタイム4分が告げられても、熊本がゴールへ迫る勢いは衰えませんでした。最後の最後の澤田の完全な決定機。完璧なシュートはしかし、名手・南の左手に触れられて、枠の外に追いやられてしまい、万事休しました。

振り返ってみれば、2点も先取したにもかかわらず、追いつかれた残念な試合。しかし、失点は結局セットプレー。それに繋がる”高さ”の課題。熊本の守護神・畑は今日、積極的な飛び出しで絶対絶命のピンチを数多く凌いだ自信とともに、たった一度の痛恨のミスの怖さを、改めて思い知ったのではないでしょうか。

そういう意味では、両チームのGKにスポットが当たった試合ではありました。後半、あれほど南の背中に激しいブーイングを浴びせた熊本のゴール裏は、試合後一転して、熱い「雄太」コールを送りました。それは彼が在籍した4年間のファンとの”蜜月”を感じさせるに余りありました。「これからは互いにライバルとして上を目指そう」。準備されていたメッセージがゴール裏に掲げられました。

南の守る横浜のゴールを、まずは古巣相手のアンデルソンが破り、在籍中ずっとシュート練習に付き合った仲間が破った。南を二度もゴール前で腹ばいにさせたことには、胸がすく思いでした。しかし敵もさるもの、セットプレーからの2得点で追いついた。そして最後は、南が熊本・澤田の決定機を防ぐ。”意地”のぶつかりあいのようなゲームでした。

最後に南が弾いたボールに詰めた岡本がDFに倒された場面は、主審に流されてしまいましたが、PKではなかったのかという意見があります。もしそうなっていたら、またドラマチックだったでしょうね。時間にして完全に最後のプレー。勝ち越し点を阻止するために両手を広げて立ちはだかる南。札幌戦でのPK失敗を背にして立つ岡本。ゴール裏からの怒涛のような声が想像できます。果たしてその結果はどちらに転んだのか…。

残念なゲームほど学ぶべき教訓、取り組むべき課題がてんこ盛りのはず。チームの進化、成長はいよいよ手応えを増してきました。選手たちも皆、最後の最後まで闘っている。

残念ではありましたが、それは、がっかりした、とか、意気消沈などとは違う。あと5分でも時間があれば、あるいはという感覚。次のゲームが待ち遠しい。もっと言えば、好調なチーム、上位チームとやってみたい。この残念な気持ちはそうやって晴らしたい。今はそう思ってしまうくらいの状況ではないでしょうか。