10月30日(日)
【J2第38節】(うまスタ)
熊本 2-0(前半1-0)札幌
<得点者>
[熊]清武功暉(11分)、平繁龍一(65分)
<警告>
[熊]齋藤恵太(90分+7)
[札]永坂勇人(10分)、前貴之(45分+2)
観衆:7,880人
主審:池内明彦


今節の前日の熊日では(先週の「勝ち点3を取らないといけない」という発言と違い)、残り5試合に向けて清川監督はこう語っていました。「勝ち点を最低でも『1』ずつ積み重ねる必要がある」(29日付・朝刊)。やはりはっきりと「勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び」に舵を切った、とわれわれは思いました。首位・札幌を迎えて、より手堅く試合に入ってくるだろう。そう思わせました。

しかし、それも笛が鳴ってしまえば、なんのなんの序盤から積極的に前に行くのは熊本。非常にいい入り方でした。左サイドで得たFKの連続で、清武が札幌ゴールを脅かすと、続く右CKのこぼれ玉を、村上がミドルで狙う。枠内にストレートに向かっていたと思いましたが、これはバーに嫌われる。前節に続いて実に惜しいシュート。

続くゴールキックを村上がヘッドで跳ね返すと、それを齊藤がやはり頭ですかさず平繁につなぐ。平繁はワンタッチで裏のスペースに出すと、そこに再び齊藤がスピードを活かして飛び出した。エリア内、キーパーとの1対1直前、追走する札幌DFに倒されて笛が鳴る。主審が示す先はPマーク。よし!

PKのキッカーに志願したのは清武でした。札幌の大型GKソンユンが両手を広げて立ちはだかると、さらにひときわ大きく見える。かたずをのんで見守るスタジアム。緊張の瞬間。清武の蹴ったシュートは、ソンユンの逆を突いてゴール右隅に突き刺さります。

決めれば一気に勢いづく。決めなければ意気消沈。このゲームの行方を左右するような、そんな重い仕事を清武がきっちりと決めてくれました。秋晴れのうまスタに8千人近くを集めた熊本サッカーフェスタのこの日、益城町や嘉島町といった被災地からもバスを貸し切って無料招待が行われました。スタンドでは赤いタオルマフラーがぐるぐる振られます。

札幌は内村、上原をシャドーに従えた都倉の3トップのように見えました。繋いだあとに、都倉に当てて内村、上原が突破していくという狙いだったのでしょう。前線に厚みを見せる布陣でした。

20161030札幌

しかし今日の熊本は、前節中盤が空いて機能しなかった4-4-2を捨てて、4-3-3に。この村上、上原、テヨンの中盤3枚が非常に効いていましたね。セカンドの回収にしても、相手へのプレスにしても、距離間がよくて。だから都倉に当てに来る札幌のボールにも、最後列の植田と薗田が余裕を持って対応できた。テヨンの存在感と、村上と上原の二人があれだけ前に行けるなら4-1-4-1とも言えるシフトでした。もちろんそこには、久しぶりにトップを張った平繁からスウィッチが入る組織的プレスの成果もありました。戸惑うように成すすべもない札幌は、前半シュート1本に終わりました。

ただ、さすがに札幌もこのままではない。後半、俄然テンポを上げてきます。アバウトなクリア一辺倒になってきた熊本でしたが、徐々に齋藤のスピードを活かしたカウンター攻撃で、ゲームをオープンにさせていきます。

攻守切り替えが速く選手たちの疲労も激しい展開。しかし、熊本にとって先制点1点ではまったくセーフティではありませんでした。追加点が欲しい。追加点がないと危ない。

それは左サイドのスローインからでした。片山から清武。清武が溜めて片山に戻すと丁寧に置くようなクロスをニアに入れる。平繁がうまくDFのマークを外して入りこむと頭で反らした。GKソンユンの反応も追いつかず、ファーサイドのネットに当たってゴールにこぼれこみました。

後がない札幌は前寛之から神田。永坂からジュリーニョに2枚替え。対する熊本も清武、平繁を岡本、巻に代え、最後は倒れこんだ薗田にバツが出て鈴木を投入。残されたピッチ上の選手も含めて、多くの選手が足を攣っていたことが、この試合の攻守切り替え、運動量を物語っていました。

絶体絶命のピンチは84分頃。内村に代わって入った菅が都倉からボールを受けてPA内右から強烈なシュート。これをGK佐藤が右手一本でクリア!

「前節、札幌のヴェルディ戦での最後のパワープレイにワクワクした」(スカパー)と言っていた佐藤。そのキーパーらしい”アドレナリン”が、この終盤で熊本のゴールを死守します。

アディッショナルタイムはなんと6分。何度も何度も札幌の攻撃に晒されます。それを身を挺して掃きだす熊本。そうやって、ようやく手にしたクリーンシート。首位・札幌を完封。快勝でした。

思えば昨年の終盤にも、首位を突き進む大宮相手に、ホーム水前寺で3-0の完封勝利を演じたことがありました。他にもこの時期、昇格目前の相手に土をつかせたことが何度もあった。終盤の熊本の”存在感”が、今年も発揮できたでしょうか。

中盤から前の6人。清川監督が練習のかなかでコンディションを見極めた人選でしたが、この組み合わせはいいですね。齋藤のスピード、清武の技も活かせる。また、見てみたい布陣でした。

熊本は勝ち点3を加え43となり、順位を15位まで上げました。多くのマスコミの論調は、残留に確信を得たようですが。北九州が岐阜と潰しあい、讃岐は町田に勝利して、勝ち点がジリジリと上がってきました。今季の降格ラインは高い。

AC熊本の池谷社長は、このサッカーフェスタ前の熊日の特集内(29日付)で、「首位札幌をたたく」と予言しつつ、「残留に必要な勝ち点は45」と読みました。勝ち点にしてあと2つ。勝利ならあと1試合。引き分けならあと2試合。残り4試合。いやいや、そんな抽象的な話ではありません。松本、京都、岐阜、大阪。です。まだまだ楽観はできません。

暮れなずむスタジアム。被災地からの都合バス10台の招待客の前で、勝利で沸く試合後の「カモン!ロッソ」。ゴール裏で踊るのは、震災後初めてのことでした。今日のところはひとまずホッとしたい。そして、本当に心底ホッとするときは、色々な苦労を思い起こし、少しわれわれも涙腺を緩めてしまっていいですか?早くその日がくればいいのですが…。


【J2第12節】(札幌ド)
札幌 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[札]オウンゴール(67分)
<警告>
[札]マセード(23分)、宮澤裕樹(55分)、上里一将(63分)
[熊]上原拓郎(57分)
観衆:9,834人
主審:高山啓義


翌日の熊日の見出しは、「闘志前面 ロアッソ惜敗」「首位苦しめ収穫も」というものでしたが、記事の論調も含めて、われわれも全く異論のないところでした。確かに結果は敗戦。しかし、熊本は前節のふがいない戦い、球際、切り替え、闘志といったもの全てを払拭し、首位・札幌相手に互角以上に戦った。結果的に勝敗を分けたのは、ただただ”勝負強さ”というほんの紙一重の差だったのではないでしょうか。

ミッドウィーク(木曜日)の札幌戦は、本来5月7日に組まれていた第12節の再設定試合。これから熊本は、天皇杯を挟んで愛媛戦、横浜戦と、震災後スキップした試合を消化する連戦に臨む過密日程になります。

そのなかで清川監督はこの試合、先発を7人も入れ替えるという大英断。累積警告の植田の代わりに一か月前にC大阪から期限付き移籍してきた小谷を初起用。その相方のCBには札幌を古巣とする薗田。左SBは片山。ボランチには上原。左SHは、先日獲得が発表された菅沼。そして2トップは巻と若杉。「試合に出たくてギラギラしている選手を選んだ」(熊日)と、指揮官は言う。

20160825札幌

試合の入りは良かったですね。セカンドボールをうまく回収している熊本。上原が、ハーフウェイライン付近からロングシュートを狙う。岡本もパスを受けると反転、ミドルを撃つ。前節の反省以上に、この二人には古巣対戦というモチベーションが明らかに見えました。

薗田も含めて、古巣対戦の選手のモチベーションに期待する。あえてぶつける。古くは池谷監督、それから高木監督もよく使ったなーと思い出されます。清川監督もその意図なのか。

ただ、どうも札幌戦になると力むのか岡本。藏川からのクロス。若杉が競って左に流すと、ファーの岡本の足元へ。絶好のゴールチャンスでしたが、枠の右にそれます。

久しぶりに先発起用されたFW若杉にとっても、結果を残したい試合でした。33分、高い位置でDFからボールを奪うとループで狙うが、これはバーの上。42分にも、奪って左サイドからドリブルで入ると、そのまま撃つがこれはキーパー。前半アディッショナルタイムには、FK上原のキックをゴール前どフリーで頭で捕らえますが、ゴール左に反れる。これは札幌も肝を冷やしたはず。得点に絡むプレーで沸かせたのですが…。

「前回、長崎戦で出場したが何もできず、今日、出場してチャンスをもらって、手応えはあったと思う」(公式)と語った若杉。このなかの1点でも決まっていれば、という展開だったのです。

初先発、そして90分間走りきった菅沼も存在感を示しましたね。清武が体調不良のため不在のゲーム。清武に集まりがちな今の熊本のボールを、随所で受けてさばく、あるいは勝負する。左に菅沼、右に岡本というのは、ちょうどチェスでいうところのナイトの動きを両翼に配したようで、頼もしくてそして面白い。

「後半も全体で良い入りをすること」という清川監督のハーフタイムの指示。そして敵将・四方田監督は、「攻守の切り替え、球際の部分など、全体的に足りない。後半は気持ちを強くもってたたかおう」と言うところが、前半の内容を物語っていました。後半も60分過ぎまでは、熊本がうまく試合を運んでいたのですが。

67分。札幌のリスタートからでした。宮澤のキックに都倉が飛び込むが合わず。福森が折り返すと、中でオウンゴールを誘ってしまいます。苦しみながらも、苦しみながらも、なんとか札幌がゴールをこじ開ける。そこが首位・札幌の底力という感じでした。そして、その後の試合運びも。

熊本は、巻に代えて齋藤。左サイドから菅沼がエリアに突破。絶好の好機も、齋藤とお見合いして譲りあう。岡本に代えて八久保が入る。八久保がえぐってマイナスパス。けれど、ゴール前には誰も入っていない。

熊本は、四方田監督が「今季ホームで最悪の内容」(熊日)と言う札幌に、しかしキッチリ点を取られ、守りぬかれました。「失点のところだけ隙が生まれた。結果として0-1というところが、首位との差」(同)というのは、また古巣から勝ち点が取れなかった岡本のコメント。人気ものの彼は、今日も試合後、高柳、薗田、上原とともに札幌ゴール裏に挨拶に行き、札幌サポーターから温かい拍手をもらいましたが、本当はこの試合、誰よりも勝利したかった一人に違いない。

”試合巧者”。これが、延期もあってこの時期今季初めて対戦することになった札幌の印象でした。さすがにこの位置にいるチーム。あなどれない。

しかし敗戦とはいえ、今節熊本が得たものは少なくなかったと思います。

過密日程とはいえ、大胆ともいえるように先発を7人も入れ替えたこと。少し選手を固定しがちだと感じていた清川監督の采配からすれば、勝ち試合のあとでも選手を入れ替え、選手間の競争を煽っていた前小野監督を彷彿とさせました。チーム内での競争なくして、チームの進歩はないのだという信念。

そして、1点ビハインドの終盤。園田を前線に入れてのパワープレー。清川采配としては、初めて見るような気がします。奏功こそしませんでしたが、最後まで諦めない意思表示のベンチワークは、高木監督時代を思い起こさせ。

そう。前節のエントリーでは、スカウティングについて嘆いてみましたが、清川監督には、長年仕えていた歴代監督たちの采配の引き出しがあるはず。掘るべき”井戸”はいくらでもあるはずなのです。

そんなこんなで、チームとしての奥行や可能性が感じられた敗戦だったから、冒頭の言葉となりました。そういう意味では、今週末天皇杯に関しても、チーム内の伏兵を試すチャンスが大いにあるだろうし。それを踏まえて、これからのチームの総合力の向上が期待できるだろう、そう思わせる起点となった試合。敗戦でしたけど、得るものも大きい試合でした。

【J2第30節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半1-1)札幌
<得点者>
[熊]巻誠一郎(33分)
[札]前貴之(22分)
<警告>
[熊]清武功暉(60分)、上原拓郎(81分)
観衆:6,532人
主審:前田拓哉
副審:清野裕介、正木篤志


前節のエントリー。後味の悪い敗戦にも関わらず、また年甲斐もなくジャッジに対して毒を吐いたにも関わらず、思いがけない数の拍手をいただき恐縮しています。3連勝を飾り、6位の背中が見えてきて、さあこの一戦と臨んだ試合、大事な舞台を勝手に主審に”壊された”という思いが、キーボードを叩く指を滑らせてしまいました(笑)。ただ、その後spirits of roassoさんから頂いたコメントに、わが意を得たりと思うと同時に、冷静さを失った自分たちを恥じ入るばかりです。以下ご紹介したいと思います。

「昨年や今年の北九州戦後にいつも思うことがあります。結果が全ての世界で、負け惜しみと言われればそれまでですが、目前の戦いに向けた戦術と、長期を見据えた戦略という概念の中で、小野ロアッソはJ1でも通用するような戦略を重視した戦い方を目指し、北九州はその対比をなすという点です。結果は欲しいですが、課題を突きつけられながら、着実に成長することが更に重要と感じます。」
spirits of roassoさん、勝手にご紹介してすいません。コメントありがとうございました。

さて、札幌戦。1ー1の結果を受けて、「妥当なドロー」と書こうとしていたら、井芹さんは九州J-PARKで「必然」と表現されていました。もうまったくこの記事どおりで、これ以上われわれが書くこともないのですが…(笑)。

18時キックオフの“うまスタ”はまだまだ夏の暑い太陽が沈みきれず、気温を30度から下げきれずにいました。前節のキックオフ時間から1時間早いだけで、こんなに違うのかと。早くも消耗戦の予感。

この試合まで11戦勝ちがない札幌は、四方田体制になって5戦目。この四方田監督は、小野監督が日本代表に関わっていた頃の”戦友”らしく、互いに手の内を知り尽くしている間柄だったかも知れません。

20150823札幌

試合展開の詳細は先の九州J-PARKに譲るとして、実際のところ熊本は、DFラインを下げさせる札幌の徹底した裏へのロングボール戦術に苦められました。前線のナザリトが体躯を活かして空中戦は競り勝つ、ボールは納める、ときに両CBの間で受け、前を向かれるとドキッとしますが、シュートに精度がなくて助かります。

出場停止で斎藤を欠く熊本は巻を先発で使い前線のターゲットとしますが、「2トップの関係として(清武と)少し距離があった」(九州J-PARK)と反省するように、なかなか起点になれません。攻守にわたってなんとなくスイッチが入らない状態。激しさも、速さも…。

そんなFWの組み立てにやや違和感を感じていた前半も半ば頃、ゴール前でサイドに振られ着いていけずに失点。先制点を奪われると部が悪い熊本は、それまで五分五分の様相が、ここからちょっと意気消沈したように見えた。逆に四方田体制での初得点の札幌は、パス回しにも軽快なテンポが出てきたような。

ところが今日は前半のうちに同点に追いついた熊本。ハーフウェイラインあたりからのリスタート。黒木が素早く左の嶋田に送ると、嶋田からのクロスはゴールマウスファーサイドの巻。巻がDFの頭の上から一段高くヘディングを叩きつける。ボールは逆サイドのネットに突き刺さります。

巻の真骨頂。意外にも熊本移籍後、ホームでは初ゴールだったそうで。それにしてもこの男が点を取るとスタジアムが沸く。

さあ、試合は振り出しに戻った。後半に期待。熊本は「試合開始前に体調のよくない選手がいたため」(熊日・小野監督)、岡本、上原を途中投入。古巣対戦への高いモチベーションは狙い通りに前線を活性化します。対する札幌も上原で高さを加えると、元日本代表の小野、稲本とカードを切ってくる。互角。

しかし、いかんせん両者最後の詰めを欠く。幾度も決定機を外し、あるいは思わず目をつぶってしまう決定機を相手が外してくれて。最後は熊本も足が止まり始める。「これは引き分けでも御の字か」と思わせて試合が終了しました。

まだまだ、同点にはできても逆転する力はなかった。

「改めていくつかの高めていかなくてはいけないところ、そういう必要性を感じた試合」(九州J-PARK)。そう指揮官は試合後振り返りました。そして「その週のトレーニングの全てが次の試合のための準備ではないです。いろんな考え方とか、自分たちのプレーの厚みを出したりさらに良くするためのことであったり、その中に少々、次の試合のための準備があるということ」とも付け加えた。それはまた冒頭のspirits of roassoさんのコメントとも相まって、われわれの狭窄した視野を押し広げてくれます。

個々人は別にして、チーム全体としても少し夏の疲れがピークに達している頃かも知れません。この試合を終えて、リーグ戦は一時中断。次の2週間の天皇杯期間をうまく利用して、多少なりともリフレッシュしてくれるといいのですが、しかしわが指揮官のハードな練習には“中断期”などないのかも知れませんが。

【J2第13節】(札幌ド)
札幌 2-3(前半0-2)熊本
<得点者>
[札]都倉賢2(75分、86分)
[熊]齊藤和樹2(2分、27分)、巻誠一郎(55分)
<退場>
[熊]園田拓也(79分)
<警告>
[札]内村圭宏(52分)
[熊]黒木晃平(83分)
観衆:10,405人
主審:東城穣
副審:手塚洋、宮部範久


勝ち点3を得るということが、こんなに大変なことなのかと思わせた試合でしたね。なんとか逃げ切って勝利。順位はひとつあげて20位。それにしても心臓に悪い試合でした。

20150509札幌

黄金週間を挟んだ過密日程5連戦の最後の試合は、アウェー札幌戦。札幌は7試合負けなしで7位につけていました。対する熊本は9試合勝ちなし。この前の4連戦を2敗2分という結果できていましたが、ここ2戦の引き分けは、内容に手ごたえを感じさせるゲームでした。その流れや勢いをそのまま持ち込もうというのか、なんと、前節痛んだ片山のあとに途中起用した右SB・養父をこの試合でも先発に。あとは中山と嶋田を入れ替えたくらい。3試合連続で巻を1トップに置いてきました。

そして、その勢いのとおり、熊本が3点を先取する。

1点目は開始早々。札幌の攻勢のなか跳ね返したボールを、まだ自陣にいた巻が大きく相手DF裏のスペースに蹴りだしてカウンター。齊藤が拾うと左からドリブルで持ち込む。エンドラインギリギリまで持ち込むと、そのまま撃つかと思わせて鋭く切り返し、追走してきたDFを交わし、素早く撃ったシュートは、構えたGKの股を抜いて、ゴールに流し込みました。うまい!

2点目も齊藤。27分、嶋田が右サイド、養父の前の大きなスペースにサイドチェンジのパス。養父は迷わずアーリークロスをゴール前に送る。そこに齊藤がダイビングヘッドで飛び込みゴールに突き刺しました。美しい!

3点目は後半10分の右CKから。中山のキックにニアで齊藤がそらすと、ボールはゴール前中央へ。キャッチしようとする相手GKもろとも、巻が身体ごと押し込んだ。実に泥臭い!ある意味巻らしいゴールでした。

後半開始早々、スカパー解説者の秋田豊氏に「2点では不安」と言われてしまった熊本。それはこれまでの試合結果からでもありましたが、いい時間帯で3点目を得ることができて、今日こそは間違いなく勝ち点3、そう思って観ていたのですが。やはり簡単に勝たせてはくれない。

札幌は後半開始から中原に代えて内村を投入していましたが、さらにナザリトを下げて古田を入れる。都倉をトップに置いて内村と古田をシャドーに。前3人の構えを変えてきました。これによって迫力を持って攻めてくる札幌。熊本はひたすら我慢するという構図に。

さらに巻の疲れを考慮してのことでしょうが、常盤と交代。4-4-2にシフトしますが、これによって栃木戦のときに感じたことと同じように、重要なポストプレーヤーを失い、前線での起点が作れなくなってしまいます。

75分。しかもボックスの外からでした。ペナルティアークを横切るようにドリブルした都倉が、DFを前にして倒れながらシュートを放つと、巻いたボールは、意表を突かれたGK原も触れず、ゴール左隅に吸い込まれる。敵ながらみごとなゴールでした。

この1点が、大きく試合の流れを変える。熊本選手のメンタルの乱れを指摘する解説の秋田氏。勢いづいた都倉が縦横無尽にゴールを脅かす。

78分には、ロングボールに裏を取られた園田が相手を倒して一発レッドカードで退場。熊本は10人に。ペナルティアーク右からのFKは枠をかすめる。GK原は一歩も動けない。バタバタの選手心理が伝わってくるようです。

MF嶋田を下げてDF大谷を入れるベンチワーク。残り10分を託します。しかし札幌、右サイドからのアーリークロスに、中央の都倉が大谷に競り勝つとヘッドでゴールネットを揺らす。とうとう1点差に詰め寄りました。

告げられたアディッショナルタイムはなんと6分。「どこから6分が生まれたんですかね」と秋田氏も訝る。熊本にはもう攻撃の形を作れる力は残されていない。クリアに次ぐクリア。前線サイドでキープしようにも奪われる。攻撃にさらされる・・・。右クロスから都倉のヘディングは原キャッチ。左から入れられたボールはファーのイルファン。これは合わず。古田から宮沢のヘッドは左に反れ。ようやくようやく、主審の笛が鳴った。その瞬間が、実に10試合ぶりに熊本が勝ち点3を手にした瞬間でした。

それにしても、3点先取しながら、なにが試合をこんなに難しいものしてしまったのか。やはり連戦のなか、熊本の足が止まる、プレスが甘くなるということなのでしょうか。

そして都倉の凄み。前半、ナザリト頼みの札幌の戦術で、枠を外す都倉は、”今日は入らない都倉”でしたが、ワントップを張った後半からは、”怖い”選手に変貌しました。そこには、さすがにスカパーJ2実況のタイトルバック映像に使われる数少ないこのカテゴリーでの代表的な選手のひとりであるという”存在感”を感じさせるに十分でした。

また、後半途中「自分の事だけ考えてプレーしていては、チームの力は出せない。そこを理解しなければならない選手がいる。」として、看板のナザリトを引っ込め、前線の組み立てをガラッと変えて攻めに出たバルバリッチの采配。今日も熊本のベンチワークは、受け身に徹した感がありました。勝ち越している状況もあり、もちろん、園田の退場というアクシデントの混乱もあったのでしょうが・・・。

ただ、ひとつ思い当たる節もあります。指揮官は、90分間のなかでは、いいときばかりでなく苦しい時間帯も必ずあると常々言っている。その苦しい時間帯を、監督からの指示や選手交代というベンチワークに頼るのではなく、ピッチ上にいる選手たち自身の力で変えることができないものか。もしかしたらそのあたりを求めているのではと…。ああ、それが最近、ベンチワークが遅いと感じる点なのかも知れないなと。実は監督も我慢に我慢を重ねているのではないかと。

「勝点3ということ以上に、選手達が苦しいところを乗り越えながら、まだ大きな波ではないが、ひとつ掴みきれたと自分自身思います」。試合後の小野監督のコメントに、実はこのあたりの心境が隠されているのではないかと思うのは、深読みに過ぎるでしょうか。

8月31日(日) 2014 J2リーグ戦 第29節
熊本 0 - 2 札幌 (19:03/うまスタ/5,625人)
得点者:29' 都倉賢(札幌)、51' 上原慎也(札幌)


シーズン途中で監督が交代するという事態がどういうものか。われわれも昨シーズン、それを初めて体験したわけで。そのときのチームの状況、ファンの心境などがまだくっきりと思い起こされます。

後がない。瀬戸際。それはそうなんですが、とにかく、1ゲーム1ゲームがトーナメントの戦いのように、異様に集中力が高まっていったのを覚えています。

「監督が代わった時というのは、より前に、よりアグレッシブに、より球際も激しくなる。そういうことは選手も十分、わかった上で臨んでいます」。小野監督もそのあたりのことは想定しながらゲームに臨んだようでしたが。これまで比較的相性のいい、悪い記憶のないホームでの対札幌戦。何もよりによってこんなときに交代しなくても。

“やりにくい…”。われわれのゲーム前の胸騒ぎはこの一点でした。

もちろん札幌のチーム状態が決していいはずもなく、いかに監督交代という荒療治でチームを方向転換できるか、ひとつ歯車が狂えばさらに悪循環にも陥りかねないわけで。先週、財前監督が退任し、バルバリッチ後任監督が着任するまで名塚コーチが代行する体制。短い時間でどうチームをまとめてきたのか…。

「いちばんはメンタルの部分ですけど、サッカーを変えるつもりはなかったし、今まで財さん(財前前監督)が1年半やってきたサッカー、プラスやっぱり前、ゴールへの意識をもう1つ出すためにトレーニングしたつもりです。」(名塚コーチ)

両チームの様々な意図が交錯しながらはじまったゲーム。熊本は、そんな札幌のメンタリティーに負けるものかと、序盤から激しくプレッシャーをかけていきます。

20140831札幌

「熊本の圧力に対して後手後手になり、特に前半は泡を食った面があった。内容的には完敗。」(名塚コーチ)

まあ、そこまで熊本が圧倒していたようには見えませんでしたが、確かに試合序盤は熊本がポゼッションを握り、札幌がカウンターを狙う展開に。これは多分、名塚コーチの想定にはなかった事態だったのでしょう。このチーム状況で的確なスカウティングができていなかったのかも知れません。そしてこれもどうしようもない結果論ですが、勝機はこの時間帯にあった、ということでしょう。

しかし…。前半29分、札幌は高い位置でボールを奪うと、ぽっかりと空いた左サイドに上原を走らせる。ファーに上げたクロスを折り返されると、最も警戒すべきだった都倉にあっさりと決められます。

それでも、まだまだ浅い時間帯。グッと我慢して前半を凌げばチャンスは十分にある。そう誰もが思っていたはずです。

「1点取られて、そこからいくつかのところを修正して、後半必ず取り戻せる、逆転できると思って入りました。決して悪い試合じゃなかったと思いますし…。」(小野監督)

そして、やはり今日も勝敗を分けたのは後半開始からの10分間でした。

CKから折り返されての失点。同じパターンで2点。苦境にある札幌を大いに勇気づける追加点。熊本にとっては非常に難しいゲームになってしまいました。

悔しいのは、混戦であれだけ相手の足が高く上がっているのに…。もし頭で競っていればファウルの判定もあったかもしれない。多分、ここが負けたところなのかも。

「相手に気持ちで上回られないようにということはミーティングで監督も話していたけど、そこで上回られたと思う。」(高柳一誠)

結果としては0-2。しかし、シュート数は熊本8。札幌も9。いかにも少ない。「攻撃はいい部分もあったけど、シュートまで行けてない、シュートで終われていないというので流れを持って行かれた。」(高柳一誠)

得たフリーキックは熊本13、札幌15。合計28。このゲームの背景を示すひとつのデータ。いつもの熊本のゲームと比較すれば、これまた少ない。ファウルを奨励するわけではありませんが、これはいかにも少なすぎる。

翌日の熊日紙面。「ロアッソ決め手欠く。激しさ不発。球際で完敗。」と嘆いています。まさにその通りの数字ですね。

小野監督も「ゲーム全体として、こちらが下回っていたとは思わないんですが…」としながらも、「球際で数段上回りたかった」と、チームの根幹がこの点にあることを、相手を圧倒するような激しさがチーム戦術の原点であることを強調しています。

試合終了の笛が鳴って、札幌の選手たちの多くが倒れこむようにピッチに大の字になった。これが監督交代という劇薬の“効果”だろうと。相手チームながらその姿には感じるところがありました。

もうひとつ、今日のゲーム、印象に残ったのは、橋本拳人。見ての通り、都倉とのマッチアップでことごとく“やられて”しまった。「力のなさを痛感して、センターバックとして必要な強さなどの能力をもっと上げていかないといけないと感じた。都倉選手が身体の入れ方や競り方がすごくうまくて、ほとんど勝てなかった」と自らの完敗を認め、「今日は自分のプレーを見つめ直すきっかけになった試合だと思う」とまで突き詰めた。ここまでのコメントは珍しい。それほどにショックだったのでしょう。

それは多分、自分が勝てなかったことだけでなく、結果として空中戦からの2失点がゲームの勝敗を決めてしまったこと。制空権を渡してしまったことへの自責の念も大きいのかもしれない。だけど…。

闘っているからこそ負けることもあるわけで。結果を受け入れ、他の何かのせいにせず、弱い自分を認め、強くなろうと努力する者だけが階段を一つのぼることができる。頑張れ拳人。