【J2第24節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半0-0)徳島
<得点者>
[熊]清武功暉(87分)
<警告>
[熊]片山奨典(45分)、上原拓郎(70分)、佐藤昭大(90分)
観衆:3,701人
主審:岡宏道


うまスタ復帰第2戦となった徳島戦は、中3日のミッドウィークの試合。この節は、J2リーグ全体の日程であり、表面的には相手徳島も条件は同じと言えましたが、繰り返す真夏の過密日程は、じわじわと効いてきますね。

月曜日に梅雨明け宣言があったばかりの熊本の夜は蒸し暑く、両チームの選手たちとも身体が重そうに見えましたが、試合のほうは集中の途切れない、激しい攻防に終始する素晴らしい内容でした。

前々節からリーグは後半戦に入っていますが、前節の横浜FC戦は今季初対戦でした。しかしこの徳島とは震災前に戦い、1-0で下しています。そのリベンジとばかりに乗り込んできた徳島は、目下2連勝中で12位と調子を上げている。清川監督も、「徳島は前回対戦とは別のチーム」(スカパー)と、警戒を怠らない。

熊本は巻の出場停止を受けて、前節連敗を止めたラッキーボーイの八久保を再び先発。平繁との2トップに据えた。ボランチから後ろは変わらないが、SHは岡本、嶋田に入れ替え、そして清武はベンチスタート。

20160720徳島

3-4-3にシステムを変更した徳島は、ボランチのカルリーニョスを中心にボールを散らす。ポゼッションは徳島にありますが、要所でボールを奪うと、熊本も素早いカウンター攻撃で徳島のゴールを襲う。特に、ホーム初お目見えとなった八久保の思い切りの良さには、メインスタンドも沸く。

前半20分頃、PA近くで嶋田がボールを貰うと、反転してゴール左上に巻くようなシュート。バーに嫌われるも、ポストに当たり落ちたボールは、ゴールラインを越えたかに見えましたが、ノーゴールの判定。嶋田もガッツポーズの両手を下ろします。

そんな決定機が何度かあり、その度に決まらないでいると、なんだか嫌な雰囲気を感じてしまうものですが、守備陣も攻撃陣を信じて粘り強く跳ね返している。不思議とやられる感じはまったくなかった、とは同僚の声。

徳島も手をこまねいているわけにはいかず、「相手のDFラインに圧力をかけるには、DFラインの背後を狙うのが大事」(徳島・長島監督*熊日)と、後半17分に渡、そのあともアレックス、前川とカードを切ってきます。それに対して熊本は、エースの清武、スピードの齋藤、そして最後のパスが出せる中山。

息をのむような緊迫した展開。均衡を破ったのは、やはりこの男でした。齋藤が右サイド奥まで持ち込むと中には入れられずマイナスに戻す。エリア内の嶋田が粘って、詰めてきた上原に繋げると、上原は思い切りよく左足を振り抜いた。ちょうどゴール前中央に陣取っていた清武が、それを頭で反らして角度を変える。GKも一歩も動けず、ボールはゴールネットを揺らします。

「オフサイドではないよな?」思わず副審を確認しましたが、その旗は上がっていない。メインスタンドから揺れるような歓声が湧き上がりました。

「ゴールには背を向けていたが『自分のポジションは分かっていた。コースを変えるだけでいい』」(熊日)と瞬時に判断した清武。この試合、徳島のGK長谷川が特に当たっていただけに、その反射神経と一瞬の判断がなければ決勝点は生まれていなかったでしょう。清武がピッチにいるかどうか、そのコンディションはどうか。熊本の戦いのカギは大部分をこの男が握っているのは確かです。

「前半戦1-0で負けたので、今日は2-0以上で勝ちたいと思っている」。倍返しと戦前言っていた長島監督(スカパー)。再び1-0で敗れ連勝にもストップがかかり、忸怩たる思いに違いない。

DF植田はラジオ番組(RKK・VIVAロアッソRadio)で、わがチームについて、「いいときもあるが、悪いときはトコトン悪い。沈みこむと這い上がるのにエネルギーがいる。できるだけ波を小さくしたい」と語っていました。徳島の猛攻にも慌てずにしぶとく対応し、DF陣を統率し、7試合ぶりになる完封勝利に貢献しました。

前節での勝ち点1を次の勝利につなげたいと言っていたのは清川監督。まさしくこのふたつの試合が、再び浮上のきっかけになればと思います。

次節は中3日、金沢でのアウェー戦。移動距離の長い敵地での試合。ほとんど体を休める時間もないでしょう。あらためて各選手のコンディションの見極めと選手起用、戦術の選択。そしてそのなかで清武をどう投入していくか。清川、財前、久藤の3人体制で戦う、コーチ陣の総力戦でもありますね。まさに今シーズンの熊本の正念場に差し掛かってきていると思います。

2016.03.08 徳島戦。連勝
【J2第2節】(鳴門大塚)
徳島 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]齋藤恵太(83分)
<警告>
[徳]岩尾憲(25分)、福元洋平(70分)、渡大生(73分)、濱田武(88分)
観衆:4,413人
主審:池内明彦
副審:松井健太郎、高寺恒如


勝ちました!開幕2連勝。「クラブ史上2度目のリーグ開幕2連勝」と翌日の熊日にあるので、いったいいつだったかとわれわれの備忘録でもある過去のエントリーを手繰ったら、2011年、開幕戦後に襲った東日本大震災でリーグが中断し、変則開催として再開なった第8節との連勝を指しているようです。あれから実に5年目の春…。

鳴門・大塚スポーツパークでの徳島のホーム開幕戦でした。この鳴門での徳島との対戦成績を上げて揶揄するスカパーのアナウンサー。もちろんわれわれも多少の不安はあるものの、いやしかし、以前の苦手意識もすでに一昨年の勝利で払拭されているつもりなんですが…。

「勝った試合のあとはメンバーをいじらない」というセオリーは、小野監督の頃から熊本にはないものでしたが、清川新監督もまた同じようです。前節から2人メンバーを入れ替え、ボランチに上原、サイドハーフに中山を起用してきました。ベンチには八久保を外して同じニューカマーの齋藤。この齋藤がデビュー戦早々やってくれることになります。

対する徳島は開幕戦で、先制しながら後半ロスタイムで千葉に同点さらには逆転されるという痛すぎる敗戦。しかし、逆に内容には手ごたえがあったのか、先発メンバーは全く触らず。

20160306徳島

前半は五分と五分。やや徳島がポゼッションする時間が長いが、熊本もここぞとのカウンターの好機にはワンタッチパスで繋いで勢い鋭く攻め上がる。

7分、清武がカウンターでエリア前まで持ち込むと、徳島DFがブロック。そのボールがチェイスした上原にうまいぐあいにこぼれた。DFを左に避けた上原。キーパーとの1対1をシュートするも、徳島GK相澤がここは右足に当ててクリア。

22分頃には植田からのパスに嶋田が左から持ち上がってクロス。マイナスぎみのグラウンダーのボールを清武がスライディングで残すと、合わせた上村が抑えた強烈シュート。これも相澤に阻まれます。惜しい。

雨が降ってきた後半、早々に訪れたFKのチャンス。キッカーは清武。放ったボールは壁を越えて落ちるボール。これもポストに嫌われる。惜し過ぎる。

ただ、ホーム開幕戦で勝利を掴みたい徳島もギアを上げてきました。62分には、大きなアーリークロスを熊本GK佐藤がパンチングで跳ね返すも、前に出た佐藤を見て、ダイレクトのヘディングでゴールを狙われる。ここはゴールマウス内まで戻った園田がなんとかヘディングでクリア。

そして、徳島は北九州から移籍した渡を徹底して裏に走らせる。DFが振り切られ、Pエリアに侵入されるも、GK佐藤が横っ飛びでセーブ。その再三の好セーブがこの試合光りました。

徳島が、大崎に代えて内田、山崎に代えて佐藤と、より攻撃的に襲い掛かってきた。そのあとでした。「あまり早く出すと、一発の体力が出るかどうか分からないので、またギリギリの判断」(熊本蹴球通信)で、清川監督が嶋田に代えてようやく後半33分に齋藤を投入。「相手に押し込まれている時間が長かったので、相手の背後にスペースが空くと思っていた」と言う齋藤。するとその齋藤がいきなり見せ場を作る。

中盤で相手のボールをカットすると、一騎駆け上がる。そのスピード。速い! しかしGKと1対1に成りかけたエリア内で、DFに入られクリアされた。そのプレーで得たCKでした。

清武が蹴ったボール。中央で植田が潰れると、うまく齋藤の頭に。ゴールに突き刺さる。相手GKと絡んだ植田のファールを訴える徳島イレブン。しかし主審が示したのは、確実に熊本のゴール。それを確認した清川監督の喜び様が画面に映し出される。開幕戦よりもちょっとだけ緊張が解けていたように見えました。ベンチ全員と喜びを分かち合います。

その後は、前節と同じように全員が身体を張った守備。バイタルエリアに鈴木を入れて。開幕戦に続いてウノゼロの完封勝利。

「連勝したことは選手達にとってすごく力になるし、勝ちたいという気持ちは強くなりますけれども、そこは1回リセットして、1戦1戦をすごく大事にして、トレーニングをしていきたい」(公式サイト)と新指揮官は言う。なんだかこんなところにも前監督の影響を感じるのはわれわれだけでしょうか。

J2デビュー戦でいきなりの結果を残した齋藤。スカパーのアナウンサーは得点の瞬間、「(熊本の)齋藤は和樹だけではない!」と叫びました。

「これから自分が出た時に、どういうことを求められているか、FWなので得点を取るというところをもっと追求して、どんどん結果を出していきたい」(公式サイト)と試合後コメントした齋藤。まだ、受け答えも初々しいばかりですが。

以前、ファビオのことを”褐色の駿馬”などと形容したことがありますが、この齋藤というスピードスターはまるで、中央アジアの大草原を駆け回っている野生馬のようなしなやかさ。俊足だけでなく、ジャンプ力などその身体能力の高さも期待される。熊本は”飛び道具”を手に入れたような気がします。

今節も、新加入の植田と佐藤がきっちりとした役割を果たし、既存の選手からのプラスワンを発揮したチーム・熊本。さらにはニューフェイス齋藤が、起用に応える活躍で結果を残した。ちょうど5年目のあの日を迎える今節に、宮城県出身の彼の得点で連勝したのも、なにかの縁(えにし)でしょうか。

しかし、今節も特に後半、相手に押し込まれる時間帯の対処が課題として残りました。連勝にも「1回リセットして」。指揮官もそこのところは十分に分かっていて、一喜一憂せず、チームの進化を進めていく方針のようです。まだまだ、長いリーグ戦ははじまったばかりですね。

【J2第41節】(鳴門大塚)
徳島 2-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[徳]濱田武(33分)、大崎淳矢(66分)
[熊]清武功暉(83分)
<警告>
[熊]岡本賢明(52分)
観衆:4,124人
主審:塚田智宏
副審:林可人、関谷宣貴


この試合後、北嶋コーチは自身のtwitterでこうつぶやきました。

「今日の敗戦で2015年ロアッソのPO進出の挑戦は終わりました。 悔しさよりも、寂しさが強い。 心の中に大きな穴が空いた感じ。 本気で行けると信じてたんだけどな。」

数字上、可能性がゼロではないという状況でしたが、客観的に見れば非常に厳しいことに違いありませんでした。6位を含めた3チームが勝ち点57で並ぶ状況。それに対して勝ち点52。その差5で追いずがる熊本。どこかが勝ったら追いつかない。とにかく勝つしかなかった。しかし、その試合を落としてしまいした。

試合自体は熊本が支配していたと言っても過言ではないでしょう。シュート数は徳島10に対して熊本15。コーナーキックの数も4対13と圧倒している。しかし、サッカーはゴールに入れた数で優劣を競うゲーム。その点でいえば、どんなにいいサッカーをしたとしても、今日徳島に敗れたという事実は変わることはありません。

20151114徳島

熊本は、前節復帰を果たしていい働きを見せたアンデルソンを先発で起用してきました。そして点を決めた嶋田に、久しぶりの高柳を入れた4-4-2。

雨が降り出した鳴門大塚ポカリスウェットスタジアムのピッチ状態は、徐々に悪くなっていく。グラウンダーのパスにも水しぶきが上がる状態に。そのピッチ変化をうまく把握した方が先んじる。スリッピーな状況を利用した方が上回る。

熊本は、養父が上がってのクロス。ニアでアンデルソンがトラップ一発、ボレーシュートは惜しくも左にそれる。続いても養父のアーリークロスからアンデルソンがファーで競る。クリアボールを嶋田が拾ってのシュートは枠の右に外れます。実に惜しい攻撃が続く。

アタッキングサードに入ってワンタッチパスでスイッチをいれ崩す熊本。次々に攻撃の形は作れている。しかし、ゴールを割ることはできない。そんなもどかしい時間帯でした。

徳島が持ったボール。バイタルで回す。左の大崎がチャンスなしとみてマイナスぎみで中に入れると、Pアーク前でそれを濱田が躊躇なくミドルで撃った。シュートはゴール左隅に見事に決まります。ダニエルの伸ばした手も届かず。

徳島にとっては”コストパフォーマンス”に優れた先制点といえましたね。熊本が繰れども繰れどもゴールを割れなかったのに比較すると。

後半開始から熊本は積極的にカードを切りました。高柳に代えてボランチの位置に岡本を入れてきます。そして早い時間帯で同点にするために、押し込む。

齊藤が楔のボールを受けて反転。シュートはGK正面。アンデルソンのポストプレーから嶋田に。このシュートもGK。続いては右サイド嶋田がヒールで戻すと、養父がそれをダイレクトでクロス。アンデルソンがヘッドで繋ぐと、中の清武のヘディング!これも惜しくもGK正面。しかし、連携は出来ている。

次々に、好機を演出している熊本だったのですが、ちょっと”攻め疲れ”があったのでしょうか。津田に代わって入った徳島のキム・ジョンミンが、右サイド濱田からの縦のボールを反転しながらシュート。これはダニエルがゴールラインにクリアしたものの。続く右からのCK。ファーの福元がヘッドで折り返したボール、ゴール前で大崎が反らしてゴールイン。追加点とします。

熊本としては痛恨の2失点でした。しかも、ポゼッションはこちらにあるにも係わらず…。

ただ、前回対戦では2点ビハインドから追いついた。時間はまだある。

熊本は2枚代え。斉藤から平繁。嶋田を下げて上原。その平繁への楔のボールから岡本がミドルでシュート。これは惜しくも枠の上。そして81分。ボックス内へのパスに走った清武を、福元が倒して笛が鳴る。PK!

これを清武自身で、きっちりと決める!1点差に追いすがる。

行ける、まだ時間はある、アウェイ徳島に駆けつけた赤いサポーターのチャントも勢いを増すのが画面越しに伝わります。

アンデルソンから岡本。左の平繁へのクロス。全てがワンタッチ。しかし、ファーのハンジンの前でDFが入る。残念。

思いは届かず。アディッショナルタイム3分も凌ぎきられ。熊本も追いすがったものの、徳島に逃げ切られてしまいました。

この敗戦で、プレーオフ進出の可能性は断たれました。小野監督は「なんとかJ1昇格の可能性を残して、最終戦ホームで戦いたいと、選手たちはその気持ちでしっかり戦ってくれました」とコメントし、キャプテンの園田は「自分たちで立てた目標が、残り1試合を残して消えてしまったのは残念」と言いました。

そう。プレーオフ進出は、選手たち自身が立てた目標でした。

熊本が、初めてプレーオフ圏内の可能性を持って終盤を戦ったリーグ戦は、自らの敗戦のため、残り1試合を待たずして終戦となりました。大宮に快勝し、讃岐を下し、最終コーナーを回ったところから、磐田、C大阪、水戸と。ちょっとつまづいてしまったのが残念でした。

ただ。二度の最下位を経験し、それでも開き直って這い上がってきた今シーズンも、とうとう来週のホーム最終戦で終了。しかし、決して消化試合にはしたくない。何故なら混戦模様の中位の勝ち点差。今季の熊本のがんばりを示すためにも、一個でも上の順位に収まりたい。このまま尻すぼみで終わりたくはない。

「俺たちに残された使命は、最終戦で勝利し、1年間戦ってきてくれたサポーターを喜ばせること」。冒頭の北嶋コーチのtwitterは、そう締めくくられていました。そう。なにより、今シーズンのホームでの勝率の悪さを払拭して、この辛かったシーズンを支え続けたファンに応えて欲しい。まだまだ終戦ではない。

ホーム最終戦。夕暮れのスタジアムのゴール裏で、今シーズン最後の「カモン!ロッソ」を歌いたいものです。

【J2第5節】(うまスタ)
熊本 2-2(前半1-2)徳島
<得点者>
[熊]平繁龍一(45分+1)、齊藤和樹(46分)
[徳]橋内優也(26分)、長谷川悠(30分)
観衆:4,072人
主審:佐藤隆治
副審:名木利幸、櫻井大輔


いやー、流れからの理想的で見事な2得点でした。だからこそ、その前の淡白な2失点がなにより悔やまれるのですが…。小心者のわれわれとしては、前半30分での2点ビハインド。このままいいところなく2戦続けての零敗では、多分、気持ちが持たないかも…などと、弱気もいいところで戦況を見守っていました。

20150401徳島

ようやく帰ってきたという感じがする、今季初のうまスタでのホーム戦。ただし平日のナイトゲームとなりました。先発に起用されたのはワントップに平繁、そしてCBに大学新卒の鈴木。

”気持ち君”というあだ名を持つ鈴木。「強さ、それからハイボールに対して、気持ちの強さ、そういう部分を見て、思い切ってこの場面で起用しました」(九州J-PARK)と、小野監督は起用の理由を述べていますが、その”気持ち”の強さを持ってしても、デビュー戦は相当の重圧があったのでしょうか。「雰囲気にのまれた」(熊日)と言います。厳しい言い方かもしれませんが、明らかなミスや局面での競り負け…。前半、ゲームの流れを持っていかれた原因の一端はそこにもあると見えました。

前半26分には、CKから橋内にフリーでヘディングされ先制されると、30分にも木村のアーリークロスに、鈴木とGK原が交錯。長谷川に押し込まれ追加点を与えます。

「CKに対する守備で、熊本はGK寄りのゾーンに固まると分析していた」と、チームの守備に関して敵将・小林監督に分析されていたにしても、2点目に関しては、鈴木の原との連携の問題、ポジショニングの課題があったと思います。

ただしかし、わが指揮官が「ハーフタイムには普通は個別にはあまり話をしないんですけれど、いくつかの点は彼にアドバイスをして、それに関して非常によくやってくれた。逆にそれで少しプレーも楽になったかな」というとおり、後半は落ち着いてプレーしました。ヘディングの高さ、強さはもちろんですが、幾度となく見せた前線への”強気の”スルーパスは、彼の持つポテンシャルを感じさせてくれましたね。

この試合を迎える前にわれわれの頭にあったのは、1節、2節、そして前節のように、”熊本対策”として早めにロングボールを放り込まれたときの対応の問題でした。全体が間延びさせられて、プレスも効かず、セカンドボールも拾えなくなったとき、どう対処していくのか。ということでした。打開策はあるのか・・・。それに対する答えは、小野監督はすぐこの試合で返してくれました。

「ロングボールに対するセカンドボールというよりは、奪ったボールをしっかりと起点を作って、相手を押し込んで攻める、そうすると、ロングボールを蹴られても相手のFWが逆に孤立するので、我々の方がいい体勢でしっかりとセカンドボールを拾える。それをしっかりと、攻撃のところで意図的にサイドを変えながら、一気に攻めきるところとしっかりとつないでサイドを変えて起点を作っていく、これをやっていこうと。」(九州J-PARK:小野監督コメント)

指揮官の、そのコンセプト通りの1点目でした。自陣から一気にサイドのワンタッチパス交換で持ち上がる。平繁がDF3人と駆け引きでフリーになると、そこに片山が浅い位置からピンポイントでクロスを合わせた。前半アディショナルタイムという時間帯といい、絶好の追撃弾でした。

平繁に関しての監督のコメント。「トレーニングのところでもどうしても周りとの連携をしっかり確認していく、その時間が今まで彼にとっては足りなかったと思うんですけれども、しっかりとトレーニングの中でできるようになって、非常にいいところを出してくれたし、周りも龍一のプレーを理解して、パスを出して、受けてというのが出てきてくれたかなと思っています。ただここはもっともっと良くしていきたい部分で、さらに良くなると思ってます」。まだまだ、と見えるし、もっとよくなるという期待も膨らみます。

そしてそして。後半キックオフ早々。タッチラインからのスローインを拾って、齊藤に渡る。ペナルティアーク付近でうまく相手DFをかわしてシュートアングルを作って右足を振り抜いた。うまく足に乗せたボールはカーブが掛かり、ゴール右隅上に突き刺さり同点としました。

待ちに待った、平繁、齊藤という熊本の得点源に期待されるエース候補の初ゴールでした。あとは、今日も途中投入されましたが常盤にゴールが生まれれば言うことないのですが・・・。

後半29分、平繁が担架で運ばれて退場したときは心底心配しましたが、足を攣っただけと分かって安堵。代わって入った巻は、前節に捻挫系の怪我で退いたのだと思っていたので、今節の復帰には驚かされました。

徳島は、佐藤晃大やキム・ジョンミンという、あくまで高さを投入してきましたが、クォン・ハンジンと鈴木が跳ね返し続けました。

2点先制されたものの、いい時間帯に同点まで追いつくことができた。それも理想に近い攻撃で。指揮官が「新しい可能性をしっかりと見せてくれた」(九州J-PARK)と言うように、これは大いなる進歩でした。ただし、同時に守備面での課題も、また明確になりました。

課題と進歩と。そういう意味では正当な結果と言える引き分けだったと思います。ただし、J1を経験してきた徳島相手に臆することなく、ビハインドをものともしない、しっかり根付いた強い気持ちを感じさせる戦いでした。

9月8日(日) 第93回天皇杯 2回戦
熊本 1 - 1(PK 4 - 3)徳島 (16:00/うまスタ/2,530人)
得点者:31' ドウグラス(徳島)、77' 養父雄仁(熊本)

延長戦突入が決まり、ピッチ脇に集まった選手たちが戦いの準備に余念がない短い時間。突如ゴール裏から湧き上ってきた「HIKARI」。いつもよりアップテンポなドラムで鼓舞する。それは「この試合は勝つぞ!絶対勝ちに行こう」という熱い後押しでした。

リーグ戦4連敗。降格圏がギリギリに迫っている今の熊本にとって、この試合の意味付けは難しいものだと思っていました。リーグ戦に集中したい、選手に怪我をさせたくないという気持ちの反面、ホーム公式戦で“負け癖”をこれ以上付けたくもない…。それはわれわれだけの屈折した思いだったのかも知れませんが、先発を少し入れ替えた布陣は、その微妙な雰囲気を反映しているように見えなくもありませんでした。

20130908徳島

久しぶりの先発となった五領、そして大迫が右サイドを中心にアグレッシブに動く。養父も止める、出す、その技術の高さを見せる。

徳島には相性の悪い津田の姿はなく、その代り高さのある2トップが。キムが再三裏への飛び出しを狙う。

ただ、やはりチームとしての課題の修正は一夜にしてならない。攻め込んではいるがなかなかフィニッシュまで行けない熊本。対する徳島の反転は素早い。31分、左SBのアレックスが駆け上がるとクロス。中にはドウグラスしかいなかったものの、競った矢野の頭の上から高い打点でヘディングシュートを決めました。まさにピンポイント。クロスの精度の差でした。

まるで恒例のように先制点を奪われた熊本。早くもがっちりとブロックを固めた徳島の守備陣形の前で、“持たされ”ている感もある。ボールを奪ってからの切り替えの遅さにはスタンドからブーイングにも似た声があがる。

ただ、後半から入った仲間、藤本が齊藤を助け、橋本が持ち上がり、黒木がミドルを狙うようになると、まだ選手間の呼吸はちょっとズレてはいるものの、少しずつではあるが、ゴールに近づいている予感が・・・。

同点弾はスローインから繋いで、バイタルでフリーになった養父が狙い澄まして右足を振り抜いた。ボールはキーパーの届かないところから孤を描くようにカーブして、ゴールの右上隅に突き刺さりました。

俄然、勢いを増す熊本。しかし、それに水を差したのは今日も不可解な判定が多かった野田主審の笛でした。徳島のCKの場面。ゴール前のいざこざで徳島の選手が倒れると、なんと矢野にこの日2枚目のイエローが提示されてしまいます。ひとり少なくなった熊本は4-4-1にシフト。ブロックをしっかり作ってカウンター狙いに戦術変更を余儀なくされます。なんとか守りきった後半。

「HIKARI」の熱唱に後押しされた熊本は、温存していた原田を延長戦になって投入。黒木を右SBに下げます。狙いがシンプルになった分、迷いなくカウンターでゴールを目指す。仲間がドリブルで持ち上がってシュートを放つ。藤本を追い越した黒木が右からグラウンダーのクロス。齊藤がスルーして仲間が撃ちますが、至近距離のシュートをGKがファインセーブ。

高崎を入れた徳島も、アレックスのサイドから攻撃の手を休めない。しかし、熊本も粘り強く対応する。この日がデビュー戦となったGK畑の好セーブにも助けられる。

両者とも相当に疲れていました。疲れているがそれでも走る。もう熊本の選手を突き動かしているのは、ここがホームだということ。ホームスタジアムの声援が選手を走らせている。そう思わせました。

トーナメントの決着をつけるためにPK戦に突入したときには、われわれはもう勝ち負けはどうでもいいやという思いがありました。ここまで選手の気持ちを見せられれば結果はもうどちらでもいいのだと。

守るべきゴールにゆっくりと向かう畑に向けて、ゴール裏からすさまじいばかりの拍手と「みのる!」コール。そして、徳島の選手がPKに立つときのブーイング。
徳島の2人目のキッカー、青山が枠を外すと、5人目のアレックスのシュートは畑が横っ跳びで弾いた。その瞬間、90分+30分の長い長い勝負に終止符が打たれ、ピッチサイドからコーチ、スタッフたちも一目散に駆け寄ってくる。

いつの間にかすっかり暗くなった秋の夕空に「カモン!ロッソ」のチャントが響きあう。ようやく。ようやく。リーグ戦ではないけれど、これが待ちに待ったホームに響く勝利の歌。

殊勲のGK畑の長身の雄姿がスタンドからもひと際目立つ。「ヒーローになるチャンスだということだけ考えて」プレーしたと彼は言う。同点弾の養父は、「悔しい気持ちをピッチで出そうと」思っていたと明かします。大迫は前節結果を残した。五領は行ける所までアグレッシブに行った。ヒーローになった者、なれなかった者はいるけれど、緊急避難的に使った黒木を入れた4バックを含め、指揮官に「迷うようなオプションも出てきたので、これは次につながるんではないかな」と言わせました。

Jに上がってから毎年、天皇杯に参加する意義についてわれわれなりに自問してきました。タイトなスケジュールのなかで行われるカップ戦の意味。天皇杯自体の存在の意義。

しかし今日の試合に限っては、今の熊本の状況を打開するという意味で大いに意義がありました。次々とやってくるリーグ戦の日程のなかでは、リスクを避けるあまり、新たな選手起用がどうしても消極的になっていたのではないでしょうか。今日は控えにまわることの多かった選手たちに試合勘を取り戻させ、自らアピールできる絶好の機会になった。それも同じカテゴリーの(しかも目下絶好調の)チーム、徳島との公式戦で。

そしてなにより、PK戦の末とはいえ、久々の、本当に待ち焦がれていた「勝利」という結果を得ることができたこと。内容はよくても結果が伴わないという状況が長く続いていたからこそ、勝利という結果がどうしても欲しかった。「勝つ事がこんなに嬉しいことか、そしてこんなにスタジアムが盛り上がるんだということを改めて感じたゲームでした」と指揮官が言うように。

ファンも同様でした。どんな内容であれ、勝利という結果がなにより欲しかったのです。だからこそ、今日のスタジアムは一体感が溢れていました。あるときは叱咤し、あるときは背中を押すことができたのではないでしょうか。

この勝ちは必ずリーグ戦にも好い影響を与える。きっと悪い流れを断ち切る契機になる。天皇杯を戦ってそんな気持ちになったのは初めての経験でした。