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5月30日(土) 2009 J2リーグ戦 第18節
熊本 1 - 2 鳥栖 (13:03/水前寺/3,732人)
得点者:11' 島田裕介(鳥栖)、49' ハーフナーマイク(鳥栖)、64' 木島良輔(熊本)


こんなに一週間が長く、次の試合が待ち遠しく感じたのは、ミッドウィークの試合間隔に慣れてしまったからではなく、前節の結果にかなりへこんでいたせいかも知れません。ふがいない敗戦を清算して迎えたい第2クールの初戦。水前寺競技場に12位の鳥栖を迎えて九州ダービーの第3戦。鳥栖から駆けつけたサポーターはゴール裏以外にもはみ出し、一方のホームのファンもスタジアムを赤く染めました。日なたは焼け付くような陽射し。久しぶりの水前寺のゲームでした。

鳥栖 (先発フォーメーション)
35ハーフナー 34山瀬
10島田26武岡
14高橋6高地
3磯崎32山田
5飯尾20渡邊
 21室 
得点力不足に悩む鳥栖は、直前に横浜FMからレンタルした山瀬とハーフナーマイクの2トップを敷いてきました。対する熊本は、左SBに矢野をスライドさせ、初めて原田拓を中盤に上げてきました。藤田、原田、石井のトライアングルで「ボールを落ち着かせたかった」北野監督。しかし、試合後の岸野監督のコメントで明らかになったように、その策が“裏目”に出てしまったようです。「熊本は詰まったら石井選手のところを経由してボールを逃がす」とスカウティングしていた敵将は、徹底してそこを奪いどころと指示していました。確かに原田がゴールにより近く位置して、随所にいいパスを供給する場面もありましたが、もう少しボランチのエリアまで下がって石井をカバーするなりして、もうひとつの“落ち着きどころ”として機能すれば…と。石井はやはり今の熊本の“心臓”。全体の連携不足は“急増シフト”の印象が否めませんでした。なんだか中盤の人数不足と、互いの距離の遠さを感じた前半。11分には早くも左サイドをえぐられ、ゴール前にこぼれたボールを島田に押し込まれてしまいます。2列目、3列目からのフォローと飛び出し。全く熊本がやりたい形を見せつけられました。

もともと玉際に強く、厳しくくるのは鳥栖の持ち味でしたが、今日はそれに激しく身体をぶつける意欲と、ハーフナーという“ランドマーク・タワー”のような前線のポイントが加わって、なかなか前を向かせてくれない。こちらが中盤で保持しても、“中盤で潰す”という鳥栖の意図が徹底しているのか、アタッキングサードに運ぶどころか、GKまで戻してしまう場面が続きます。

20分すぎ、敵DF裏をうかがう原田の右サイドへのロングパスあたりから熊本もリズムを得て、チャンスを作ります。CKからの混戦。エリアにカットインした藤田のマイナスパスに誰も感じておらず、合わせられません。しかし、そういう藤田のプレーを他の誰かがやろうとしない。単にゴール前でボールを譲り合うシーンは、相変わらずの課題でした。

カウンターを含めてボールの出どころを潰す鳥栖に対して、熊本の守備は緩慢と言わざるを得ません。まるで何かコンディションに問題があるような“ゆるさ”さえも感じます。後半早々は同点に追いつくための大事な頑張りどころにもかかわらず、島田からエリアに侵入した高地に渡り、そのクロスをハーフナーに難なく押し込まれます。随所にチェックの遅さ、守備の偏りが連続した結果でしかありませんでした。

熊本は小森田に代えて井畑、宇留野に代えてチャ・ジホを投入。1点を返したのは19分、前線での井畑のプレス。ボールが木島の前にこぼれるとドリブルで持ち込み、対峙したGK室の意図したタイミングよりいち早くゴール左角にねじ込みました。

苦しい時間帯に入って、同点への恐怖や追加点への焦りが生まれるものと思いましたが、今日の鳥栖、失点後も「下がりすぎるな」と岸野監督が激しい指示を繰り返し、選手の距離も間延びせずコンパクトを維持していました。そして、見るからに疲れの見えるハーフナーを最後までピッチに残し、中盤の選手だけを次々にフレッシュしていきます。すでにこの試合は、鳥栖の低迷を救うためにレンタルされたこのニューフェースの「90分間戦えるか」という“メンタル面”を試すことに使われていました。

今日のゲームだけで原田の中盤に駄目出しをするつもりは毛頭ありません。監督としても、苦況を打破するためのひとつの“チャレンジ”でしょうから。ただ、その組み合わせと、使いどころと使う相手を今回は間違っていたのかも知れないなと…。もうひとつ、4-3-3で“いいとき”のロアッソは石井、藤田、小森田の縦の関係、距離がうまくいっているとき。そういう意味では、今日の小森田、状況を判断してもう少し下がってボールを貰いにきてもよかったのかなと思うのですが…。原田が前へ前への意識が高かっただけに。

シュート数4本という結果。ゴールへの意識の低さを表しているということですが、実はここ2試合は、ゴールへの意識以前にシュートに至るまでのところに問題が発生しているように思えてなりません。ボールを持てる、回せるという段階から一歩後退しているような。いつの間にか、できていたことができなくなっているような。自分たちが成長する以上に他のチームは成長している。われわれは“チャレンジャー”なんだという初心が忘れられているような。

試合後、バックスタンドへの挨拶を忘れかけたイレブン。いつものKKとは逆のホームサイドに何となくアウェー感覚に陥ったとすれば、それも笑えない笑い話です。しかし敗戦の結果に、「行かなくてもいいかな」という気持ちが浮かんでいるような足の重さも感じられました。もし、そんな気持ちが少しでもあったとしたら、問題は根が深い。それはファンの期待やチームへの思いを浅く見ているということだけでなく、そんな気持ちがプレーに反映していないかと。「行かなくてもいいかな」。そんな気持ちでラインを割るボールを見送っているとしたら…。

いずれにせよ今日久しぶりに見た熊本の得点が、組織的なものではなくて、井畑の果敢なチャレンジから生まれたことが象徴的だと思います。当たり前のプレーでは打破できない。気迫のこもったプレーが相手を脅かす。それはボールを回しているときでも通じることであり、つまりは“チャレンジする”“闘う”気概がほしいということ。極論を言えば、負けてもいい。まだ圧倒的な強さなど持っていないのだから。ただ、チャレンジする気持ちだけはファンに示してほしい。

90分間なんとか走り抜き、ヘロヘロになっているものの満足感に満ちたハーフナーマイクの横顔。鳥栖から駆けつけたファンに移籍挨拶よろしく手を振る姿を見ながら、そんなことを思っていました。

4月19日(日) 2009 J2リーグ戦 第9節
鳥栖 0 - 1 熊本 (13:03/ベアスタ/6,527人)
得点者:44' オウンゴ-ル(熊本)


今季初めての鳥栖との対戦。九州ダービー第2戦ということで、熊本からも大勢の赤いサポーターが駆け付け、アウェーのゴール裏を染め、中継画面からもはっきりと分かるくらいの圧倒的なコールを響かせます。われわれはこの日、ダービーという“意地”よりも更に強く、この試合での“勝敗”にこだわる気持ちが上回っていました。同じ2勝2分4敗で並んだ11位と12位。今日の勝敗がはっきりと互いの順位を分かつのはもちろんなのですが、ここ2戦、内容は伴っているものの勝ち点3という“果実”をもぎ取っていないなか、熊本としてはなんとかこの一戦で勝利して、中位戦線に喰らいついていきたい。最下位・横浜とは1試合以上の差があるものの、その上とはまだわずか勝ち点3の差しかない。負ければその下位の混戦にも呑み込まれかねない状況。加えて、前節書いた「掴みかけているようで確信までには至っていない今期の熊本の新しいサッカーの“強さ”」。それをなんとか早く実感したいというファンの気持ちそのものでした。

一方の鳥栖にも人一倍この試合に掛けるものがあったはずです。東京Vとの前節、開始早々の相手選手の一発退場によって、ほぼ90分間数的優位で戦ったにもかかわらず、2失点のうえ完封負けを喫した。その不甲斐なさを挽回する。この一戦に向けたその“余分な”モチベーションに、熊本は手こずることになりました。

鳥栖は昨年の草津(大宮からのレンタル)の好調を支えた島田が左サイドハーフ、C大阪から移籍した柳沢が右サイドバックに入る4-4-2の布陣。どちらも警戒すべきクロスキッカーでした。対する熊本は前節と同じ先発陣での4-3-3。

鳥栖 (先発フォーメーション)
25池田 7廣瀬
10島田13日高
23島嵜14高橋
3磯崎2柳沢
5飯尾20渡邉
 21室 
互いに主導権を奪おうと激しくぶつかり合う序盤。なかなかボールは落ち着こうとしません。しかし、15分、20分頃から次第に鳥栖の激しいプレッシャーに軍配が上がってくる。高いポジションでアグレッシブにプレスを掛けてくるのが鳥栖本来の持ち味ですが、それに今日は“より以上”のモチベーションの高さを感じる。押し込まれ感のある時間帯。少し熊本としても集中力を欠いたプレーが目立ちます。

サイドの攻防にはやや鳥栖に分がある。ボランチを含めて厳しくチェックし、奪うやボールを前に推進していく。それは熊本の市村、原田を厳しくスカウティングしている故のことと映りました。そんななかで、熊本にもPAわずか外、右側からのFKのチャンス。どちらも原田の左足の射程距離。一度目はバーを越えましたが、押さえの利いた二本目のシュートは枠を捉え、GK室の肝を冷やします。そろそろ決まりそうな予感もしてきます。

先制点は熊本(結果的にはこれが決勝点でしたが)。PA右の最深部に入り込んだ藤田から木島にバックパス。最終ラインを押し下げ、誰もチェックに行けないところから木島が放ったシュートはゴール前の敵DFのオウンゴールを招くことになります。

そう、この日、振り返ってみれば、熊本の好機は数えるほどでしたが、勝敗を分けた大きな要因はこのPAへの侵入の度合いにありました。GKも出て行けない微妙な“場所”。自らシュートも選択できれば、追従する見方へのパスも選択できる。受けてのフィニッシャーは、ゴールはもちろんGKもDFも視野に入れて振りぬくことができる。最もゴールの可能性のある“場所”なのでした。後半も度々、この“場所”を藤田が侵します。ワン・ツーで市村を使う。市村の放った強烈なシュート。これは防いだGK室がみごとでしたが…。

後半の鳥栖、この日の強い日差しのなかで、足を止めるのは相手に違いないと信じて最後まで走り止むことはありませんでした。度重なるCK。試合後のスタッツを見ても、このCKの数は、どれだけ鳥栖が攻め込んでいたかを物語っています。しかし、熊本は後半開始早々から相次ぐ交代のカードを切り、そして集中力を持続させることで凌ぎ切りました。藤田に代わって宮崎が入った後半33分からは、ついにフィールドの11人中6人が熊本出身という布陣で、ファンを喜ばせます。一方で鳥栖は、サイドから確かに起点を作るものの、そこからの単調なクロスの放り込みに終始した。雨あられように放たれたクロスボール(CKも含めて)。しかし、今日の鳥栖にはその角度をゴール枠へ向ける場面はおろか、熊本の選手を制して足元に落とせる高さもなく、クロスボールは最後までも収まりどころを見出せないままでした。

「監督がやろうとしているサッカーとは違うかもしれないんですけど」(河端)
「僕の中ではロアッソらしくない戦い方だったんですけど」(原田)
「ウチにとってはいいゲームじゃなかったと思いますけど」(木島)

試合後の選手のコメントは異口同音に、“けど”が先行するものの、結果を得た喜びに満ち溢れています。それは、確かに相手を凌駕するポゼッションを示した圧勝ではなかったかも知れません。しかし、そこにあったのは先制したあと凌ぎきるというチームの総合的な“技量”。それは、質とともに時間という“量”を得た昨年からの経験値にほかならないと思うのです。今年目指している本来の熊本のサッカーを十分に発揮したとは言えなかったかも知れない“けど”、選手たちが言うほどじゃあない。お互いに読みと運動量で数的な優位を作って、プレッシャーをかけて主導権を取ろうというチーム同士。そのせめぎ合いのなかで、やろうとしていることをやり続けたこと。押される局面でもセンターラインでの早い潰しを忠実に実行し、相手を外に外に追いやったこと。そして結果を得ることができたこと。

今日は“勝敗”にこだわっていた。元来、1-0という試合内容が大好きなわれわれだからではありませんが、そこには、相手の良いところを丹念に消していく作業があったことを見過ごすわけには行きません。本来PAに深く侵入する素早いパス回しは鳥栖の本領だった(昨シーズンの鳥栖は…)。その鳥栖にして、サイドからの淡白なクロス一辺倒に終始させたチーム全体に共有された守備意識。PA内に人数をかけさせないように、相手ボランチほかを押し込んでいたのも事実だったと言えます。

痺れる試合を制しました。そしてきわめて戦術的な試合運びだったなと。凌ぎきる重要な時間帯で、本来チームを落ち着かせる立役者・藤田を下げて“逃げ切る”ことができたのも、熊本にとっての今日の重要な経験値でした。終了のホイッスルが鳴った瞬間、ベンチを飛び出し、ハイタッチで喜びを表していた藤田自身がそう感じていたのではないでしょうか。まさに勝ち点を確実に積み上げていくサッカー。

「今日はここ2、3試合の中ではいちばんバタバタしたと思うけど、こうした試合をゼロで抑えて勝ちきるっていうのは、リーグ戦の中で何試合か続いてくると力になると思います。」(藤田:試合後のインタビュー)

もちろん課題もありました。FWのポジションで先発した西、後半45分の時間を与えられた山内。いずれも大きな期待を背負った出番でしたが、持ち味を生かすことができませんでした。おそらく彼らは、今日の試合のすべてのシーンを何度も反すうしながら眠れない夜を過ごしているでしょう。これもまた経験値。しかし、与えられるチャンスはそれほど多くはないのも事実です。頑張れ。

今日の勝利。51試合のなかでの1試合ではありますが、何か今季が終わったとき振り返ると、きっと重要な意味を持つ、“節目”の勝利であるように感じた試合。9節が終わって10位。まだまだ順位を云々する時期ではもちろんありませんが、なんとかこの中位(7~12位)をキープしていこうというモチベーションも、今季大事な要素になるのかと思っています。

9月20日(土) 2008 J2リーグ戦 第36節
鳥栖 1 - 2 熊本 (15:04/ベアスタ/21,029人)
得点者:30' 廣瀬浩二(鳥栖)、43' 中山悟志(熊本)、68' 木島良輔(熊本)


鳥栖から帰り、焼酎を片手に勝利の余韻に浸っています。ロアッソ久々の会心の勝利は、一方で鳥栖を絶望の淵に落とし込む結果になりました。

スポンサー・ブリヂストンの協力もあって、この試合の動員目標は2万人。そのあおりでわれわれ熊本サポーターは、ゴール裏の半分とメインの右隅というスペースしか与えられず…。いやいや、これでいいんです。これこそ完全アウェーの洗礼。サッカーの試合らしい。

シーズン前から敵将・岸野監督は「今年は鳥栖史上最高のチーム」と称し、昇格を標榜していました。そしてこの終盤の一戦にあたり「勝ち点1は負けに等しい」とまで言い表した。それはいい意味で選手たちを“追い込み”このゲームに向けての“戦意”を高揚させようという意図だったのでしょうが、しかし、結果、その言葉は選手たちに重くのしかかることにもなったのではないでしょうか。2万人動員達成はすばらしいプロジェクトであることに間違いないし、史上最高の観客の前での昇格争いをかけたゲームとなり、盛り上がることは確かなんですが。しかし、見ていて、その“2万人”が前面に出すぎて、キックオフまでの多種多様な“演出”は、選手たちの集中力をちょっと邪魔したのではないかと。よそ者のたわごとかも知れませんが、少し気になりました。

熊本は前節までの4-1-4-1から、中盤をダイヤモンド型にした4-4-2に変更しました。「高橋との距離、中盤の距離、そのあたりの問題で、バランスを少し変えた」(池谷監督:J‘sゴール)ということらしい。
一方の鳥栖は、キム・シンヨンが体調不良らしく、廣瀬と藤田の2トップ。サイドバックの長谷川、ボランチの鐡戸は共に“熊本スピリッツ”の選手。

スタジアムは9月も下旬だというのに非常に蒸し暑く、ピッチに差し込む西日もまだまだ厳しいものがありました。

鳥栖 (先発フォーメーション)
25藤田 7廣瀬
10高橋24清水
14船谷15鐡戸
13日高26長谷川
5飯尾20内間
 21室 
前半、全く互角の展開のなかで、ペナルティエリア内でうまく入れ替わられ、マークをはずされて廣瀬に先制点を奪われます。チャンスにはサイド、ボランチと次から次に選手が上がってくるし、シュートのあとにはこぼれ玉にきちんと詰める選手がいるし、全く鳥栖らしい“走る”サッカーを見せられました。

しかし今節の熊本、この失点のあとが“良かった”。
前節を大敗で終えて、池谷監督はこう述べていました。「点をとりかえすことに意識が向いて、守備が手薄になったところをカウンターでやられた。勝つときも分けるときも、いい試合をするときは2点目を失っていないことが多い。我慢強く守って、少ないチャンスを確実にものにしていくしかない。」(くまにち携帯サイト:がんばれロアッソ熊本)。まだ早い時間帯でもあり、慌てずにもう一度守備から入りなおす。この意識が全員に共有されていました。
相手の攻撃をしのぎつつ、徐々にペースを取り戻すと、43分という絶妙の時間帯に中山のゴールで同点。河端のフィードを高橋が落としたところに飛び込んだ中山。これも今節のフォーメーションから中山が“いい場所”に居た成果でした。

後半の入り方も悪くありませんでした。同点に追いついた方が、追加点を奪いにいくという勢いがありました。この日のコンディションを考慮して、前半ひょっとしたらボールを持たされているのかも知れない、という懸念も頭をよぎったのですが、徐々に足が止まり始めたのは明らかに鳥栖の方でした。熊本のアグレッシブなプレスに押されているのか、パスが繋がらない。
たまらず岸野監督が交代のカードを切ってきます。右サイドの清水に代えてレオナルドを投入。これに呼応するように池谷監督は、同点弾の中山を降ろして木島。この交代がまた功を奏します。
すばやいリスタートを木島が宮崎に送る。宮崎のクロスにPA内の敵DFのトラップが大きくなったところに走り込んできた木島。敵選手と交錯しながらも押し込む。みごとな逆転ゴール。そのとき、2万人のホームサポーターが陣取る鳥栖スタジアムの“ほんの一角”を占領した千人にも満たない“赤い”集団たちだけが狂喜乱舞。立ち上がり、マフラーを振り回し、拳を振り上げ、抱き合い、ハイタッチし…。

その後はまさに死闘。負けられない鳥栖の猛攻を全員ディフェンスで守る。GK吉田は絶対絶命のピンチを死守する。ゴール前、右から左からのクロスを、河端がヘッドで跳ね返す。PA内の選手が足でかき出す。中盤の選手が諦めずにスライディングで奪う。前線の選手がディフェンスする。
鳥栖も諦めずに走りますが、後半に入ってからは、連動した後ろからの追い越しが減ってしまいました。そしてミスが多くなる。何かが変わってしまっていました。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、膝を着き、ピッチに倒れこむ鳥栖のイレブン。中には涙を浮かべる選手も。それは実質的に昇格戦線から脱落してしまったという落胆の大きさなのか…。まだまだ、われわれにはうかがい知ることのできない悔しさなのか。
一方、ゴール裏に挨拶にきたロアッソイレブン。GK吉田の目にも光るものがありました。前節の失点の自責の念。それと同時に、“期待されている”ことへの自覚が、この19歳でゴールマウスを背負う選手にとって、逆に相当のプレッシャーになっていたのは間違いないでしょう。この日の達成感が、自然と涙腺を緩めたに違いない。これもまた経験。

そして何より、この日の、鳥栖にとっては長いシーズンのなかでも相当に重い意味を持つこの試合に、九州ダービーという名のもとにわが熊本がめぐり合わせ、果敢なチャレンジによって勝利を納めた。長い、幾多の苦難を乗り越えようやく掴んだ昇格のチャンスを引き寄せようと意気込む身近な先輩・鳥栖に対して、大敗、連敗というトンネルから脱出したいわがチームのモチベーションが勝り、まさに“走り勝つ”ことができた。
いつか、われわれにもきっと訪れるであろうと願う、そういった昇格の“好機”のことを思い、これもまたわがチームの大変な財産になった試合、そして鳥栖との新たな“因縁”になるであろう試合。そんな試合を目の当たりにし、立ち会えたんだと。ファンとしてちょっと気持ちが昂ぶっています。

6月21日(土) 2008 J2リーグ戦 第21節
熊本 0 - 1 鳥栖 (15:04/熊本/3,292人)
得点者:44' 藤田祥史(鳥栖)


勝負には負けましたが、内容は五分五分だったと言えるでしょう。九州ダービーでのホーム戦は今節で最後。“隣町”のJリーグチーム・鳥栖をKKに迎えました。

鳥栖 (先発フォーメーション)
9 キム・シンヨン 25藤田
19山城7廣瀬
15鐵戸8衛藤
28谷田5飯尾
13日高2柴小屋
 21室 
熊本は朝から注意報が灯るほどの豪雨。開催が危ぶまれるほどでしたが、水前寺の福岡戦のときと同じように、千人近くの鳥栖サポーターの来襲。これで試合中止となっては、怖じ気づいたと言われかねません。
熊本の選手紹介の際、鳥栖サポからひときわブーイングを浴びたのは、矢野と高橋。矢野は元鳥栖戦士として“お約束”。一方、高橋に対しては前回対戦での同点弾を思ってのことでしょう。
その矢野がこの試合は奮起しました。タイミングよく上がり、幾度と攻撃に参加します。最後の最後に、決定的なシーンもあったんですが…。あれはさすがに悔しかったでしょう。

明らかなように、前半の20分過ぎくらいから、完全に熊本の時間帯でした。鳥栖の前線とボランチの間が空いてしまっているため、面白いようにセカンドが拾え、パスが繋がります。波状攻撃。ここが点の取りどころ!
しかし枠がとらえられない。前半スコアレスもやむなしと思ったロスタイム、中盤での奪い合いから鳥栖のボールは前線のキム・シンヨンに。思わず「そこは厳しく(行け)!」と叫んだんですが、河端がかわされてしまいます。なんだか前回対戦を思い出すようなシーン。切り返しもみごとに、センタリングに飛び込んだ藤田に決められてしまいます。

わずかな隙でした。1対1に敗れたというより、ライン自体が曖昧で緩慢だったのでしょう。
内容の悪いなかで奪った1点。攻めながらわずかな残り時間で奪われた1点。この1点が重くのしかかりました。

内容の悪さに、ハーフタイムで敵将・岸野監督の激しい“檄”が飛んだことは想像に難くありません。後半開始早々、鳥栖は猛烈に押し込んできました。
これまでの熊本ならこの時間帯で、追加点を奪われていてもおかしくなかったでしょう。
しかし今日は、これをいなす。
それは、熊本の成長を感じさせました。誰一人とも“怖がっていない”。「勝ちたい!この試合に」。この一心が全ての選手から感じられました。いずれ同点にする。そして逆転もある。そう感じさせるものでした。

後半途中、木島、西森を投入して攻撃的に。何度も好機があれど決めきれず。最後の最後まで、前節から続く鳥栖の泥臭い身体を張ったディフェンスに阻まれまれてしまいます。

敵を上回る14本のシュートに対して、その“決定力”を嘆く向きも多いかと思います。
しかし、この試合で見えたのは、コンディションが悪くても勝ち点に“執着”する鳥栖の勝負強さ。
熊本に足りないものは、ほんの一瞬の判断。それは、失点の場面だけでなく、攻撃の組み立てについても…。
足元にもらってから考えている余裕は、このカテゴリーにはない。味方のボールになったら、どう動き出すのか。ボールを奪ったらどこに出すのか。アイコンタクトはなくても、「きっと、そこに走り込んでいるはず。」というパス、そういったチーム全体での連動性がなければ…。個の力だけでは、敵の強固な守備はそうそう崩せない。

そういう意味で、お手本のようなサッカーをする鳥栖に対して、そのカウンター攻撃を芽の部分で完全に潰していただけに、この敗戦は非常に悔いが残りました。なによりホイッスルが鳴った瞬間の選手たちが、一番悔しそうだった。

あと一皮、あと少し。その差が、1失点であり、同点に追いつけない“1点”。ひいては勝ち点3という差なのではないでしょうか。
「負けに慣れないように…。」前節、池谷監督はそうコメントしましたが、選手たちはそんなことより、手応えと更なる課題、そして人一倍の”悔しさ”を感じているような気がします。

3月30日(日) 2008 J2リーグ戦 第5節
鳥栖 1 - 1 熊本 (13:03/ベアスタ/6,201人)
得点者:24' 金信泳(鳥栖)、60' 高橋泰(熊本)


「因縁」。①物事の持っている定まった運命。②理由。由来。③ゆかり。関係。

ダービーと呼ばれるには、「因縁」が必要だと言われます。新・九州ダービーと銘打った鳥栖と熊本との初めての公式戦。これまでそんなものはさほど見あたらない。けど、新しい歴史を刻む一戦を見届けるために、鳥栖に旅立ちました。

春の嵐を思わせる横殴りの雨。屋根のないゴール裏では、もうすでに両チームサポーターがずぶ濡れのコール合戦でヒートアップ。さすが一番近いアウェーとあって、熊本からも大勢の”ロッソ”ファンが集結。
「よろしくサガン鳥栖!熊本です!これから頑張っていいライバルになります!」と叫んでいるよう。鳥栖スタ特有のスクラッチ感のあるBGMがコンパクトな会場にこだまして、否が応でも興奮してきます。

両チームとも目指すコンセプトは「積極的守備からの攻撃」。ところが、開幕前のTMで熊本に敗れた鳥栖は、大いに修正点が見つかったようで、これが結果的に開幕からの堅守、無失点に繋がったのか。

一方、わが熊本は、市村、有村の両SBをスタメンから外し、右から矢野、河端、上村、福王という、まるでオールCBの4バック。これも、TMでの対戦経験からサイドをケアして、守備的に入っていこうという、これまでの修正と対戦相手への対策がうかがえました。

しかし前半立ち上がりから熊本は全くいいところがない。鳥栖のプレスが早いのは覚悟していたものの、ここまでボールが繋がらないのか・・・。新布陣ゆえの連携の未熟さなのか。奪ったところで、意図のないパスは、単なるクリアのようで相手の懐にしか収まらない。
24分、最終ラインからのロングボール。上村が見送ったところに走り込んだのはキム・シンヨン。河端が対応しましたが、うまく身体を入れられてGK吉田の頭を越えるシュートで鳥栖が先制。
このあたりの時間帯は「う~ん。ここまで力の差があるか・・・」と思わせましたが。

後半に入って車に代わって西森投入。噛み合っていなかったのは関だったので、何故?と思ったのですが、後で車にアクシデントがあったと知りました。先の湘南戦では、少し消極性が見えた西森でしたが、今日は本来の”汗かき”な動き。もちろん、まだまだ無駄がありますが、なんか起点になってきます。それと同時にボランチ喜名にもボールが収まるようになり、次第に熊本がポゼッションを奪っていく。
パスミスを連発し、リズムを失っていく鳥栖。まるで前後半逆になったような展開のなか、後半15分、スローインの折り返し、福王からのクロスにファーサイドで待っていたのは、やっぱりこの男、高橋。鼻骨骨折のフェースガードをものともせず、ヘッドでゴールに押し込みました。

沸き上がる熊本サポーター。敵地で、ほら、こんな隣にも熊本ファンが拳を上げている。

その後は五分五分。お互いがお互いのチャンスを決めきれず、タイムアップ。鳥栖と熊本との初のダービーは引き分けに終わりました。

風もありました。雨の影響もありました。それ以上に力の差は歴然としていたように見えました。
しかし、後半”修正”したのはこちらであり、開幕から無失点の鳥栖のゴールをエース高橋がこじ開けて、追いついての価値あるドロー。勝負としての結果は”引き分け”だったのです。
どうでしょう、今日の布陣といい、ドローはゲームプラン通りではなかったかと。これまでの3試合とはまた違った試合の流れ。選手の経験値もそれぞれ上がったことでしょう。一試合一試合の文脈が実に深いなあと感じるのです。
ゴール裏に揃った白いユニフォームの”ロッソ”イレブンに、惜しむことなく拍手が贈られました。

鳥栖スタ名物「イブスキ」のホットドックの列に並んでいるとき、古くからのネット同胞と一緒になりました。「ようやく鳥栖スタで、”熊本”と叫ぶ日が来ましたね。」と握手。そのほかにも、昔なじみの笑顔の数々・・・。
電車で一時間ちょっとの”隣町”から帰った夕暮れ、自宅で勝ち点1を肴にビールをグーッとやりながら、これが”われわれのダービー”の始まりなのだと思いました。