7月22日(土)
【J2第24節】(正田スタ)
群馬 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[群]山岸祐也(51分)
[熊]八久保颯(63分)
<警告>
[熊]片山奨典(8分)、八久保颯(62分)、三鬼海(90分+3)
観衆:3,179人
主審:河合英治

森下監督。随分小賢しいことをするな…。などというのは言い過ぎでしょうか。

元々、阿部も 舩津もチーム登録上はDFの選手。それをこの試合のオーダーではわざわざMFで登録し、パク・ゴンにチェ・ジュンギ、そして加入したばかりのヨ・ソンヘ3人をDFとしたオーダー表で、いつものとおりの3バックと見せかけました。しかし、蓋を開けてみれば、森下・群馬としては初の4バック。この”奇襲”とも言えるシステム変更に、池谷監督のスカウティングも外されて、勢いもあって開始直後は随分苦しめられました。

まぁ群馬としては、前回対戦のとき今シーズンの初勝利を収め、その後1敗を挟み怒涛の3連勝。勢いを掴みかけたと思ったものの、現在7連敗中で降格圏内に沈んでいる。何かを変えるためにヨ・ソンヘを獲得し、そして4バックを試したい。その恰好の相手が相性のいい熊本だったのかも知れない。

そう思うと癪に障ると同時に、まんまと策にはまるところを、撥ね返してなんとかドローに持ち込み、勝ち点1を得て帰ってきたことは、とりあえず良しとしなければならないかも知れません。

もちろん池谷監督も、試合前から「受けてたつのではなく、チャレンジャーとして(前回敗戦の)リベンジする」(DAZN)と、選手たちを引き締めていました。熊本の先発は、光永を片山に、一人入れ替えたのみ。

20170722群馬

しかし、目の前の相手が試合前、監督やコーチから示されたスカウティングとは違うばかりか、ホームサポーターの声援を背にして勢いを持って攻めてくる。熊本は押し込まれます。それに、試合開始前の土砂降りの雨を十分に吸い込んだピッチに足を取られる。

12分頃。山岸がPアーク手前付近から右にスルーパス。そこに左から岡田が流れてきてPA侵入。熊本DF二人がスライディング。コースなく撃った岡田のシュートは、GK畑がクリアしますが、ちょっと危ない。

粘り強く対応していた熊本も、徐々に相手のシステムのなかでボールを動かせるようになる。

33分頃。右サイドからクロスを入れると、群馬DFのクリアが小さい。Pアーク付近で拾った八久保がすかさず足を振った。ゴール右上を襲ったシュートに、群馬GK牲川がわずかに触ると、ボールはバーに当たりこぼれる。そこに安が詰めましたが、牲川がなんとかセーブする。これは惜しかった。

前半を終えてベンチをあとにする際、レポーターからコメントを求められた森下監督。「粘り強くやっていくだけ」と、短く言い捨てるように去っていく。この”奇襲”作戦で前半のうちに先制点が取れなかったことを、相当悔しがっているように見えます。

「前半立ち上がりからの相手の圧力を耐えれた。後半立ち上がりも圧力をかけてくるかもしれないが、落ち着いてきたらDFラインから整えていこう」(公式)。それがハーフタイムのわが指揮官の指示でした。ピッチ内でイレブンも、時間は掛かったものの相手にアジャストした。それにこのハーフタイムで、池谷監督から細かい修正が図られたに違いない。

けれど、予想どおりの後半開始早々からの群馬の猛攻を耐えていましたが、遂に均衡が破れます。51分、カン・スイルが落としたボールを岡田が右へサイドチェンジのパス。右サイドから舩津が大きなクロスを送ると、右から山岸が小谷の背後にするすると流れる。ファーサイドでヘディング。先制点をもぎ取ります。飛び上がって喜びを爆発させる森下監督。

しかし、勢いづいた群馬にこのあと追加点を上げさせなかったことが大きい。まだ時間は早い。何も焦らず、切れずに粘り強く戦えるようになった。

そんな熊本に、相手の群馬に焦りが芽生えたかも知れない。解説の渡辺氏が、「(群馬は)開幕からずっと失点が続いている。選手の堅さが出るかも知れない」と言っていた矢先の63分でした。

群馬のCK。まるでアメフトのショットガンフォーメーションのように固まって散っていく群馬の選手。松下のキックはファーの選手へ。のけぞるように頭に当て、ミドルシュートに入って来い、というようなボールを拾ったのは八久保。クリアでなくそこからのカウンター。最初は「DFラインを上げる時間を稼ごう」(熊日)とドリブルで持ち上がると、「嶋田選手が良いところにいたので、出して入っていこう」と方向転換。左から上がった嶋田に預けると、その俊足を飛ばしてDFを交わしゴール前に入り込んだ。そこに嶋田からふわりとした絶妙のクロス。あとは頭で決めるだけ。今季2点目とします。

なんとか勝ち点3を奪いたい群馬も諦めませんが、このピッチ状況は、ホームの選手たちの足も止めさせ始めます。カン・スイルや岡田がサイドの奥に走り、クロスを上げますが、ゴール前に走りこむ選手の数も薄い。

熊本は安に代えて巻をワントップにしますが、特段、巻の頭をターゲットにしたロングボールを送るでもなく。嶋田と八久保が最後までバイタルを襲いますが、時間切れ。引き分けで終わりました。

相当に悔しがる森下監督と群馬の選手たちを見て、この一戦に掛けていた思いを感じました。よく言われる「この試合は勝ち点3ではなく6の価値がある」、そんな思いだったのかも知れない。降格圏に引きずり込もうと狙っていたのかも知れない。そういう意味では足をすくわれなくてよかった。勝ち点差を詰められなくてよかった。ドローにも価値がありました。

しかし、「同点より勝ちにこだわりたい」と言う八久保の言葉を待つまでもなく。前回対戦では、終了間際で勝ち越された相手。何があるかわからない終盤の戦い方には、少し不満も残ります。が、「どちらにも消耗戦だった」と池谷監督が言うとおりの試合ではありました。

指揮官も認めるように、90分間我慢強く戦うことができるようになってきている。それには自陣ゴール前で最後まで諦めない守備。そしてGK畑のナイスセーブも貢献している。

「最後のサイドやクロスはまだまだ改善が必要だ」と、攻撃への不満を口にした池谷監督。次の段階に進んだということでしょうか。次節、名古屋戦を控えてこの1週間は、どんな落とし込みをするのでしょう。負けなしで来ている7月の最後のゲーム。次はホーム。なんにしても楽しみです。

5月7日(日)
【J2第12節】(えがおS)
熊本 1-2(前半0-1)群馬
<得点者>
[熊]グスタボ(68分)
[群]チェ・ジュンギ(33分)、高井和馬(90分+5)
<警告>
[熊]黒木晃平(53分)、片山奨典(90分+1)
[群]岡田翔平(19分)、マテウス(90分+3)
観衆:4,777人
主審:清水修平


第4審判が表示した後半のアディッショナルタイムは4分。公式記録での高井の得点は「90分+5」となっていますから、その4分台に突入していたのでしょう。本当にラストプレーと言っていい時間帯でした。

熊本のゴールに迫った群馬。PA内で必死にブロックする熊本DF陣を前にして、何度も何度も入れ直す。その執念。最後は左へ回すと付ききれていない。高井が押し込んで、群馬が劇的な勝利をおさめます。

あとでDAZNで確認すると、ゴール裏では泣いている群馬女性サポーターもいましたし、ベンチから飛び出した控え選手やスタッフたちの喜びようも爆発していた。何よりもインタビューに答える森下監督の目も潤んでいるように見えた。

引き分けで得た勝ち点1しかなく最下位に沈んでいた群馬が、実に12試合目にして今シーズン初勝利を手にした瞬間。それは熊本がこの大型連休の3連戦で、3連敗を喫してしまった瞬間でもありました。

「何が何でも勝つためにやりたい」。そう試合前に言っていた森下監督でした(DAZN)。多くの対戦経験がありますが、この10試合は熊本に対して負けがない。相性は悪くない。そんな気持ちも群馬側にはあったでしょう。

迎え撃つ熊本は、連戦のなかでのコンディションを考慮して4人を入れ替えた。平繁、林、上原、園田が先発。

20170507群馬

「立ち上がりから向こうの食らいついてくるサッカーに対して受けるような形になっていまい、戦っていない姿勢の中でゲームを進めてしまい、情けないゲームをしてしまった」(熊本蹴球通信)。試合後、そう清川監督は反省します。

そうは言うものの、序盤の群馬のボール回しには最下位を納得させるような粗さも見受けられ、いつもよりボールを持てる熊本。ただそれが、指揮官が言うような「何とかなるだろうという気持ち」(同)に繋がったのかも知れません。前節の出来に相当危惧していたわれわれも、今日は前節よりは「いいんじゃないか…」という感触を持ってしまったのは、相手が攻守のバランスがまだ整わない群馬だという点を加算(減算)していなかったのかも知れません。

33分。その前にパク・ゴンが林からファールを受けて、回復のために長い時間が掛かります。その後に与えた群馬のCK。連続性が途絶え、ぽっかりと時間の空いたプレーに、「ちょっと危険だな」という予感がしました。松下の右足からのCK。ニアに入り込んだチェ・ジュンギが反らして流し込む。「1失点目のニアは練習から警戒していて、相手がそこを狙ってくるというアナウンスもあって全体で意識していたんですけど、実際はそこでやられてしまって。」(同)と、公式戦3試合目を迎えたGK野村が反省します。

前半のうちに同点にしておきたかった熊本でしたが、それは後半修正後の、68分になります。当初グスタボとの交代で用意した嶋田をなかなか入れないなと思っていたら、直前に痛んだ齋藤との交代。これが逆に奏功しました。68分、交代直後右CKに立った嶋田からふわりとしたボールに、ニアに飛び込んだグスタボが頭を振った。ボールはGKが弾いて、ゴールに吸い込まれます。沸き立つスタジアム。

追いついた熊本の方に運が見方すると思いました。後がない群馬の方が浮き足立つだろうと。11戦、群馬は勝ったことがない。焦りはゲーム運びに影響し、自信のなさが結局自滅に至らせるのではなかろうかと。熊本はそういう意味では、なにも焦る必要はないんだとも。

けれど群馬は、この試合を決して諦めなかった。FW高井を入れ、ボランチの松下を下げてまでも鈴木を投入。最後はマテウスを入れて、かき回します。

対する熊本も、グスタボの疲労を考慮して巻を入れますが、結局切れるカードはそこまで。前半早くに痛んだ小谷に代えて切った植田の交代カードがあったため、最後の最後で、ギアをシフトアップできません。

結局は、最後まで勝ちにこだわった群馬に対して、どれほど気持ちで上回れたのか。球際にしてもセカンドボール争いにしても、ハードワークしたのかという問題、それがメンタル面で問われるということになりました。

確かに、不甲斐ないと思うプレーがあちこちに…。何となくゲームに入っていった感じ。ミスを犯す以前にチャレンジさえしないプレー。前を向こうとしない消極的プレー。人任せのマイナスパス。守るにしても、取りきる姿勢のない間合いをとるだけのアリバイ・プレー…。低調なゲームでした。

われわれがそんなことを指摘する前に、指揮官・清川監督にも危機感があったようです。しかし、「どこかに隙があった」というほかないのでは、マネジメントを疑問視する気持ちも沸いてきます。

「1つ壁を越えましたけれど、まだスタートしたばかりなので、今まで通り、今まで以上にぶれずにやり続けたい」。わずか1勝手にしたばかりですが、群馬・森下監督はそう言い切ります。

”ぶれずにやり続ける”。そういう信念が、チームづくりにあるのかどうか。

この3連敗を受けて、ファンの声にも随分厳しいものがありますが、自戒を込めて言えば、その信念を感じられるかどうかが、チームを応援するに値するかどうかだと思うのですが。どうでしょうか。変えるべきところは変え、守るべきとこころは守れるか。それを今は観ていきたいと思います。

10月8日(土)
【J2第35節】(うまスタ)
熊本 1-1(前半1-0)群馬
<得点者>
[熊]清武功暉(21分)
[群]パク・ゴン(50分)
<警告>
[熊]園田拓也(6分)
[群]松下裕樹(53分)、イ・ガンウ(86分)
観衆:4,281人
主審:藤田和也


エース清武の、ようやくの復活弾ともいえる先制点がありましたが、それを活かせずドローに終わりました。勝ち点1差に追随する群馬を、この試合で引き離したかった。

キックオフの頃から雨が降り出したこの日のうまスタでした。群馬はオーソドックスな4-4-2の布陣。チームのトップスコアラーで11得点を誇る瀬川が、2トップの一角を張る。

熊本はこの日も4-1-4-1。ただし2列目は中山ではなく村上が初先発。ゲーム体力がついてきたということか。瀬川を警戒してのことか。

20161008群馬

序盤は互角。群馬が左サイド松下のファーを狙ったFKから坪内がエンドラインぎりぎりにスライディングしてのシュートは枠の右に外れ、熊本はスローインからもらった園田のクロス。クリアを拾った上村のシュートは枠の上。

この日光ったのは右サイドワイドの齋藤。カウンターから駆け上がる。速い。相手DFを追い抜いてマイボールにしたシュートは惜しくもブロックされますが、スピードとパワーを活かして群馬の守りを脅かします。

先制点もその齋藤のカウンターからでした。群馬のCKをクリアすると齋藤が左から持ち上がる。上村、村上と繋ぐと、村上は右から上がってきた菅沼へ。菅沼が間髪を入れずクロスを入れると、ゴール前の清武が頭で反らしてねじ込みました。

清武にしてみれば8試合ぶりのゴール。ここまで何度も決定的な場面はあったものの、ここにきて何故か入らない。長いトンネル。エースとしての重圧。「入ってほっとした」(熊日)と言う。ようやく二桁に乗せてくれました。

喜びに湧き上がるスタンドを背にしたチームの守備も完璧でした。セットされたラインが、よくスライドし、縦にボールが入るところでは出足早くチェックする。そこから奪って鋭くカウンター。後方からも追い越して、好機を何度も作ります。

園田が右サイド上がってグランダーのクロス。これはニアでDFに阻まれ前半を終えます。

しかし雨脚が強くなった後半、群馬は服部監督の檄を受けてギアを上げてきた。

カウンターから群馬の舩津が右サイドを駆け上がる。アタッキングサードに入る直前でブロックする熊本。こぼれたボールを「相手に当てて出そう」(熊日)とした村上のクリアは、シュート性になって自陣ゴールに向かってしまう。ポストに当たってエンドを割り事なきを得ましたが、あわやオウンゴールかと肝を冷やしました。そこから続くCKでした。

50分。右からの松下のCKをニアサイドのパク・ゴンが頭で叩きつけると、テヨンの足に当たってゴールを割ってしまう。

同点に追いついて勢いづく群馬に、熊本はこのあともヒヤリとする場面が続きます。鋭い前からのプレスに植田がボールを奪われると、常盤がループで狙う。CKのクリアが小さいところをグラウンダーのダイレクトシュートで狙われるがなんとかブロックする。

激しい雨で”重馬場”になったピッチが選手たちを疲れさせたのか。前半飛ばしすぎたのか。後手を踏む熊本は、セカンドをことごとく奪われ、押し込まれる。奪って組み立てる一歩目のパスを相手に渡してしまうので、また守りなおさなければならない。体力の消耗も激しい。

常盤を下げて吉濱を入れ、たたみ掛ける群馬。対する熊本も、菅沼に代えて嶋田を投入。反攻を託します。

雨足は更に更に激しく、容赦なく選手たちを打つ。そして90分のなかで一番きつい時間帯。熊本は上村を下げて巻を投入。群馬は小林に代えてイ・ガンウを前線に。互いに欲しいのは勝ち点3。

中盤で村上がスライディングで奪うと、今度は群馬・松下が同じくスライディングで奪い返す。ゲームは、次第にオープンな展開になるなか、アディッショナルタイムを迎えます。

ロングボールを巻が落として自ら入れる。岡本が更にえぐってクロスを入れますがクリアされる。その流れのなかでした。拾ったテヨンが左にはたくと、上原のアーリークロスはファーサイド大外に構えていた巻のところへ。相手DFの上から叩きつけてゴールイン。一気に湧き上がるスタジアム。われわれも「これで勝った!」とばかりに、立ち上がり、タオルマフラーをぐるぐる回したのですが。

短い主審の笛が何度も鳴らされると、なんとノーゴールの判定。認められません。

「『僕自身、あの形でご飯を食べてきた。確信はあったのに』と苦笑いを浮かべた」(熊日)という巻。ビデオで見返してみましたが、ヘディングの前、手を使って相手DFを制したということなのでしょうか。

井芹さんが「熊本蹴球通信」で書くとおり「死闘」と言えました。その後も群馬の波状攻撃を、身体を投げ出して何度もブロックし、ゴールを死守した熊本の選手たちに、試合後スタンドからは大きな拍手が送られました。

互いに欲しかった勝ち点3。しかし同時に相手に絶対渡したくなかった勝ち点3。大雨のコンディションのなか勝ち点1を分け合う”痛みわけ”に終わりました。

思えば、前半のうちに飛ばして先制点を奪い、後半を凌いでいくというゲームプランと展開は、うちらしさが戻ってきたとも言えるかも知れません。熊本はそこまでチームとして”戻って”きたのだと。

残り7試合。まだまだ上位陣との対戦を数多く残している熊本にとって、楽観は許されない状況が続きますが、エース清武の復活弾もあり、4-1-4-1も板に付いてきた。通常の試合スケジュールに戻ってからは4試合負けなし。毎試合、勝ち点1ずつでも上積みして、なんとか早く残留の資格を掴み取りたいものです。


【J2第18節】(正田スタ)
群馬 1-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[群]小林竜樹(90分+2)
[熊]黒木晃平(52分)
<警告>
[熊]園田拓也(61分)、キム・テヨン(74分)、アンデルソン(84分)
観衆:4,710人


サッカー、というか勝負事っていうのは、本当に難しいものですねぇ。あの時間帯、あのシーンで、いくら名手の松下といえども、162センチの小林の頭をピンポイントで狙ったとは思えないのですが…。ニアでつぶれた“長身”の永井の頭を越えたクロスボールは、その小林がうまくとらえて、ゴール左隅に流し込むと、熊本の手から勝ち点2がするりとこぼれ落ちました。

「攻撃陣のコンディションは上がってきた」(スカパー)と清川監督が戦前言うように、前節の勝利で暫定17位に浮上した熊本は、その勢いで20位に沈む群馬を相手に連勝をもくろむ試合でした。群馬もまた3連敗のあと、前節北九州を3-0で下し、連勝を目指す。警戒すべきはその試合でハットトリックを達成した大卒ルーキーのFW瀬川。

中3日の連戦ながら、熊本は先発メンバーをいじらない。試合開始早々からボールポゼッションは熊本。対する群馬は、「相手に持たれる時間があってもいい」(松下)というように、奪ってからのショートカウンターが狙いのようでした。

20160612群馬

23分には清武がドリブルで持ち上がってのミドルシュート。GK横っ飛びも触れませんが、これはポストに跳ね返される。続く24分にも、高柳、平繁のバイタルでの短いパス交換から嶋田が左足一閃。しかし今度はクロスバーに嫌われる。実に惜しい。

片山と黒木の両SBを高い位置取りにさせた熊本は、小気味のいいパス回しで群馬の厳しいプレスをはいでいく。しかし、得点には至らぬまま前半を終えます。

群馬もこのまま手をこまねいているわけにはいきませんでした。ハーフタイムで「怖がってはいけない」「勇気を出して狙っていこう!点をとるぞ!」と服部監督が鼓舞すると、球際が激しくなり、熊本のパス回しから徐々にボールを奪うようになります。そして前線の瀬川に集める。

しかし52分、先制したのは熊本でした。群馬の攻撃を凌いで左サイドから持ち上がると、右にサイドチェンジ。もらった黒木が中にカットインするとシュートコースが見えた。豪快に左足を振りぬくと、ポストに当たるものの、今度はゴールに吸い込まれました。

熊本は先制した試合の勝率は100%。そんな嬉しいデータを試合前のスカパーが紹介していました。

しかし63分、平繁が痛んでアンデルソンに交代すると、群馬もFW小牟田に代えて小林。その小林が右サイドで粘ってドリブルで突っかけると、間に一人使って最後は中村がエリアに侵入。しかしシュートは右サイドネットで助かる。

群馬のポゼッションが増え始めると、左右に振られ守る時間が長くなってきた熊本。岡本を下げて薗田を入れ、3バックというより5-4-1の布陣。虎の子の1点を守り、0で凌ぐというメッセージは、この時間帯のこの攻防ならセオリーどおりだったでしょう。

だが、アンデルソンひとりの前線では、カウンター要員としては不十分。群馬が常盤を入れ、長身ドリブラー永井を投入した頃には守勢一辺倒。それでも凌ぎ、時間を使って、ようやくアディッショナルタイム3分に入って、連勝の喜びを今か今かと爆発させようとしていたとき。それが冒頭のシーンでした。

「連戦ということもあり、なかなか思った試合運びができなかったが、なんとか前半をしのいで、得点を取る機会を狙っていき、ああいう形で点が取れました」(公式サイト)。試合後の清川監督のコメントを読むと、前半を見る目が少しわれわれよりネガティヴだったのがわかる。ハーフタイムでも選手たちに「よく耐えている」と。

しかし「その後は少し守備的にして後ろの枚数を増やした。なんとか勝点3を熊本に持ち帰ろうとしたんですが、向こうの圧力もあって引き分けという形になってしまった」(清川監督)と。

われわれが見る以上に、連戦の中での選手たちのコンディションは苦しいものがあったのかも知れません。それでも指揮官は、3日前と同じ先発メンバーを選びました。また、残りの時間を考えても、あそこで守備的にしたのはセオリーどおりではあります。ベンチメンバーを見ても、そういう采配になるのも肯けるところです。

しかし。しかし、たったあと1分というところで凌ぎきれなかった。これはもう勝負の綾と言ってしまうほかないのか。

画面を通じてのわれわれの想像に過ぎませんが、どうもあの時間帯のワントップという戦術でアンデルソンが孤立したのかどうか、判定に対してすごく過敏になっていたような。イライラしていたような。最終盤、スカパーの実況によれば清川監督から“もっとお互いに話せ”といった指示がとんでいたようなピッチ内の状況。なんとなくそのイライラが全体に伝わって、チームのギリギリの集中力を削いでいたようにも見えました。

いや、個々の選手がどうこうではなく、勝負の綾はそんなところにあったんだと、納得したいだけです。

新人監督にとっての経験値が、またひとつ加わったことは間違いありません。言葉数の少ないコメントがその苦悩を物語っているような気がするのはわれわれだけでしょうか。「勝点1でしたが、持ち帰ることができたことはよかった」と言うのも、とても本心から出た言葉には聞こえず、悔しさに満ち溢れているように思えました。


【J2第22節】(正田スタ)
群馬 1-1(前半1-1)熊本
<得点者>
[群]野崎桂太(20分)
[熊]巻誠一郎(34分)
<警告>
[群]松下裕樹(12分)、吉濱遼平(45分+2)、夛田凌輔(84分)
[熊]シュミット・ダニエル(19分)、清武功暉(31分)、平繁龍一(79分)
観衆:1,618人
主審:荒木友輔
副審:蒲澤淳一、福岡靖人


小野監督就任以来、試合前日の熊日の予想フォーメーションは、あまり当たらないからとちょっと半信半疑で見ていたのですが…。この試合、先日2日に加入発表があったばかりの清武をやはりというか、早速使ってきた指揮官。その理由を問われると、「アウトサイドから崩していくところ」「プレースキックが武器」そして「なにより、早くフィットしていくために」(クラブ公式)と言っています。

鳥栖からの育成型期限付き移籍。ご存知のとおり日本代表・清武弘嗣の実の弟。大分の下部組織から福岡大学時代に鳥栖の強化指定を受けて、そのまま鳥栖に加入。兄と同じようなアタッカーと知っていましたが、さてその実力のほどは。どれほどチームとその戦術にマッチしているのか。この試合のひとつ重要な注目点でした。

20150708群馬

そんな、ちょっとネガティブが入ったわれわれのドキドキを、試合始まってすぐにワクワクに塗り替えてくれる。前節磐田戦後半の攻撃性を、うまくそのまま持続させたような試合の入り方。途切れのないパス交換から敵陣に入り込むと、ボールホルダーを後ろから追い越す動き。今日はその先のアタッキングサードでの崩しも連携がある。

特に左サイド清武のところで起点ができると、ときに齊藤、あるいは巻の2トップのどちらかがDFをつり出しスペースを広げると、右サイドへのチェンジも有効。群馬のラインを慌てさせます。

1週間もない短い期間でここまでフィットしているのは、清武自身の能力か。もともとのプレースタイルか、あるいはチーム練習の“質”なのか。そういえば左SBの黒木とは鳥栖時代に被っていたっけ?福大時代は黒木の双子の兄、恭平ともチームメイトだったから違和感ないのかもな…(笑)。などと、スカパー実況の某アナウンサーの”お株を奪う”ようなことを思いながら。

しかし、先制点を奪ったのは防戦一方だった群馬の方でした。自陣ハーフウェイラインくらいからのサイドチェンジぎみのロングボールを左から頭でエリア内に入れると、対応に遅れた鈴木の野崎に対するコンタクトがアフターで入ったとの判定。主審が指差した先はペナルティマーク。ちょっと厳しすぎないかあ。

ダニエルもイエロー覚悟で駆け引きしましたが、このPKを野崎自身が叩き込みます。

ただ、まだまだ早い時間帯。熊本は下を向くことはもちろん、変に焦って攻撃を急ぐということもなかった。なんかある意味、淡々と同じようなペースで。しかし執拗に敵陣を脅かし続けた。必ず追いつくチャンスは作り出せるという自信さえ感じさせ。小さくない成長と感じました。

34分、右サイド奥で得たFK。嶋田が入れた速いクロスは、一旦ニアにいた巻が頭で競るもののファーに抜ける。しかし、その跳ね返りを今度は巻がダイレクトで右足を振り抜き、ゴールに突き刺しました。

「トレーニングでやっている形」だという巻。今シーズン2点目。彼の献身的なチームでの役割が報われたような。彼の得点でよかった。心底そう思わせた同点弾でした。

振り出しに戻った後半。指揮官は「落ち着いてプレーしよう」「粘り強く戦おう」と、ちょっといつもとは違ったニュアンスで選手たちをピッチに送り出します。

早速、巻の落としから齊藤がキープしてシュートは残念ながら枠の右外。「不思議なボールタッチ」だと解説の都並氏が、齊藤のことを評価する。PKの場面で少し脳震盪を疑われたCBの鈴木も、その後も臆することなく前へのチェックを怠らない。このところ黒木のモビリティが光る。試合ごとに存在感を増す。養父の右SBも板に付いてきた。3人目の動きに参加。

ところが、いつも受け身にすぎるのではないかと注文をつけてきたわが指揮官のベンチワーク。今日は早い時間帯から先にカード切ってきます。後半も早々の7分、清武を下げて中山を投入。これまであまり試合に絡んでいなかった清武の、フィジカルコンディションを考慮してのことなのでしょうか。まだ、清武を観たかったし、なによりこの流れやバランスを変化させるのはまだもったいない気がしました。

チームのパフォーマンスが一段落ちた印象。ちょっとゴールから遠くなる。

群馬はオリベイラを投入。熊本は殊勲の巻に代えて平繁。群馬のサポーターから盛大なブーイング。さらに群馬はドリブラー永井という切り札を切る。それに対抗するように熊本は岡本。群馬今度は前半戦の熊本戦でも点を決めたアクレイソン。

熊本優勢から少しづつがっぷり四つ状態に変化していった印象。勝ち越し点が欲しいが、群馬もしぶとく守る。終了間際の群馬の速攻をオフサイドに仕留める。この時間帯にもラインを下げずに押し上げた熊本のDF陣。

結局後半はスコアレス。それが後半戦初戦の結果でした。熊本にとって「実のあるドロー」だと都並氏は言う。翌日の熊日の見出しは「粘りのドロー」と。うーむ…。そうかなあ…。

試合後のインタビューで、敵将・服部監督が「負けに等しい引き分け」と表現したとおり、前節に続いてこの試合も、”仕留める”ことができなかった残念さのほうが大きい気がします。勝機はわれわれにあった。

もちろん90分という時間のかなでは、いい時間帯もあればその逆もある。選手のパフォーマンスや相性という”変数”もあれば、相手あってのベンチワークも大きな”変数”。ただ、そのトータルを勘案したうえでも、今の熊本は進境著しい。そう思うと、中二日のアウェー連戦とはいえ、この2試合連続の引き分けは、ものすごくもったいない。これだけ得点の匂いが漂うゲームはものにしたい。そういうと欲張りでしょうか。リーグもいよいよ後半戦。われわれも結果が欲しくなってきました。