11月20日(日)
【J2第42節】(金鳥スタ)
C大阪 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[C]杉本健勇(80分)
<警告>
[C]丸橋祐介(22分)、杉本健勇(45分+1)、酒本憲幸(85分)
[熊]キム・テヨン(3分)
観衆:11,452人
主審:塚田健太


いやホントに…。
まずは前節のエントリーに対しての過分の拍手をいただきお礼申し上げます。三桁の数字は、何年ぶりだろうかとも思いますが、これも多くの方々にSNS上でご紹介いただいたおかげなのかと。そんななかでも関東サポの”ときやん”さんの”伝播力”は恐るべしで、特に他チームサポーターからいただいた拍手が多かったことを本当に嬉しく思います。この場を借りてお礼申し上げます。

ただ、一方でわれわれの”言い分”にも、少なからずご批判あるいは反対意見があることも承知しています。それらのご意見にも耳を傾けながら、常に悩みながら、しかし最後はわれわれのホームチームのことを思う気持ちは同じと信じて書き綴っていきますので、どうぞこれからもお付き合いください。

さて、アウェー最終節。残留を確定させたわがチームの対戦相手は、これもまたプレーオフ4位を確定させているセレッソ大阪でした。6月の長崎戦で負った右足関節靭帯損傷の大手術を経て、エース柿谷が直前のゲームから復帰。そして今やW杯最終予選の日本代表の重要なピースになっている山口蛍を擁するC大阪。ただ、このリーグでの対戦もすっかり馴染んだ感じで。少なくとも、もう名前負けなんてことは頭にありませんでした。きっとC大阪にも、4位に甘んじている”理由”があるはずだと。

熊本は、ワントップに平繁を置き左に清武、右に齋藤。中盤はキムテヨンを逆三角形の頂点に置いた上村、村上の3ボランチ。4-3-3の布陣で挑みます。

20161120C大阪

リーグ残留を確定させた熊本。この試合のテーマは「次年度に繋がる試合」。そういう意味では、これまで背負っていたプレッシャーから解き放たれ、自分たちのサッカーを試す、あるいはそもそも”サッカーを楽しむ”、そんな雰囲気もあったかも知れません。序盤からC大阪に互角に挑みます。

13分、右サイド齋藤がそのスピードで裏を取ってエリア内侵入。角度のないところからシュートしましたがGKがクリア。この最終節、今シーズンの見納めとばかり大阪に駆けつけた多くのゴール裏の赤いサポーターを沸かせます。

見どころは21分。セレッソのFKを撥ね返すと熊本のカウンター。清武が平繁に預けると、ゴールに向かって爆走した清武に再び出る。おもわずセレッソDFは後ろから倒すしかない。ファール。イエロー。

Pアーク前からのFK。キッカーももちろん清武。直接狙ったキックに、GKも一歩も動けませんでしたが、ボールはバーかポストか。跳ね返り、ゴールなりません。「前半のうちに決められるシーンもあったし、思っていた程プレッシャーも早くなかったので、前半のうちに決めるべき所で決めきれていれば良かったなと思います」と齋藤が言うとおりの前半が終わります。

ハーフタイムに柿谷がチームメイトに、「もっとクロスを入れてくれんと、FWは攻撃できへん」(RKKラジオ:ビバROASSO RADIO)というようなことを要求していたのだといいます。

この要求どおり。後半俄然ギアをシフトアップしてきた大阪が、文字通りのアーリークロスで、熊本のCBを押し込んでくる。

間延びした陣形に、押し上げられなくなる熊本。セカンドも回収され防戦一方に。

「泣いても笑っても、あと45分だ」(スカパー)。清川監督のハーフタイムの言葉は、まるでこの一年を凝縮した言葉だとスカパーのアナウンサーも言います。

しかし、「後半は押し込まれて、奪ってから出て行く力がなくなってしまったように思います。そこで上げていって、相手陣内でボールを持てるような展開にしたかったんですけど。奪っても、パスをつけたところですぐに取られて押し込まれる悪循環で。粘り強くやっていたんですけど結局失点してしまった」(熊本蹴球通信)と、植田が試合後に言う。

「最低でも0−0で終われたゲームだった」と清武が言う。けれど持ちこたえられない。それは、後半も残り10分のところでした。熊本が得たFK。これをクリアしたセレッソのカウンター。右サイド途中から入った酒本が持ち上がるとアーリークロス。Pエリア、ファーで待っていた柿谷が胸トラップで落としてマイナス。杉本が意表を突く右足アウトでプッシュするようにシュートすると、GK佐藤も触ったもののゴールに突き刺さります。これが決勝点になりました。

0-1の敗戦で、最終戦を終えました。「来季に繋がる試合」。それをテーマにしていた熊本でしたが、この試合、今季を象徴するような、そして来季への課題を明らかにした試合でしたね。前半の試合の入り方はいい。そこで先制点が取れるかどうか。後半の入り方。後半の運動量の落ち方。先制されたらそこからの巻き返し方。あるいは先制したらそこからの凌ぎ方・・・。90分の試合の運び方。それはある意味、ベンチワーク。そしてベンチに控える選手の力も・・・。「自分たちがボールを持つメリットを、今日の試合で改めて感じることができました」(熊本蹴球通信)と、薗田選手が言うように。

C大阪にギアを上げられたときに、それまでできていたトラップにミスが出て、あるいは味方へのパスがずれる。そんな基本的なこと(ベース)を上げる必要もあるように感じました。

今日もスーパーセーブで幾度かもゴールを守った守護神・GK佐藤の言葉が一番チームを言い表しているように思います。「失点は残念でしたけど、おおよそ僕たちが1年間やってきたことはしっかりできたかなと思っています。1対1で守るのではなくてチームとして守ることを意識して、0点で抑えることができた時間も長かったので」。「あとはそのなかで少ないチャンスを生かすというのが足りなかった部分かなと思います。その質を上げることが来季に向けての課題だ」(熊本蹴球通信)と。

イレギュラーなことがあったとしても、それがPO圏内に入るかどうかの差ではないかと・・・。

熊本はこの敗戦で、今シーズン12勝10分20敗。リーグ16位に終わりました。この最終節までもつれたJ1昇格、J3降格は、結局札幌が金沢と引き分けて首位を確保。清水も松本も勝利したものの、清水が2位で自動昇格権利を確保。降格圏内は、岐阜が勝利して自力で脱出。北九州が敗戦して自動降格。金沢が入れ替え戦に回ります。

「目標でもあったプレーオフに届かなかったことは自分の責任ですし、今シーズンは熊本でいろんなことがあり、内容も含めてなんとかしのいでいかなきゃいけない時期もあったなかで、選手、フロントも含めて1年間、本当に戦ってくれたと思います。まだ全体を振り返る整理はついていないんですが、J1という目標を持って、来年またJ2のカテゴリーで選手達が躍動することを期待したいと思います」(熊本蹴球通信)。最終節を終えて、そう清川監督はコメントしました。

おそらく熊本にとって激動と言ってもいい今シーズンがこれで終わりました。今シーズン、リーグ残留という成果をかちえたことこそ、大きな成果だということは前節書いたとおりです。

昨日から熊日では恒例とも言える今シーズンを振り返る連載記事がスタートしました。どこまでチームの内情を明らかにしてくれるのか。いつにも増して興味深い。

われわれも今シーズンを振り返らなければいけないと思っています。わかってはいますが、しかし、ちょっと時間をいただきたいとも思います。ああ、また1シーズンが終わった…。寄る年波か。どっと疲れが出ました(笑)。


【J2第21節】(うまスタ)
熊本 1-5(前半1-3)C大阪
<得点者>
[熊]薗田淳(8分)
[C]清原翔平(13分)、ブルーノ・メネゲウ(27分)、リカルド・サントス2(35分、90分+1)、杉本健勇(64分)
<退場>
[熊]薗田淳(25分)
<警告>
[熊]清武功暉(33分)、嶋田慎太郎(62分)、植田龍仁朗(68分)
観衆:9,322人
主審:窪田陽輔


大差がついてしまいました。残念な“ホーム復帰戦”となってしまいました。

戦前、清川監督が対戦相手のセレッソをして、「選手個人個人はJ1クラス」と言っていたのを捉えて、井芹さんが「九州J-PARK」のプレビューでも指摘されていたとおり、ならば“組織”で戦うしかない熊本でした。しかし、そこでの一人退場。数的不利はあまりにも大きい損失でした。

対山口戦以来、実に85日ぶりの「うまスタ」でした。開門前にスタジアムに到着すると、パークドームまで続く長蛇の列。キックオフまでまだ2時間以上。これは…。熊本がJリーグに“昇格”した年、初めて迎えたホームゲームを思い出させて。皆がみんな、この日を待ちわびていたのです。

熊本に来てくれたセレッソサポもそのことをよく分かってくれていました。スタンドに掲げられた横断幕には「熊本にJリーグが帰ってきたこの日をオレ達も忘れない」と。この記念すべき日の対戦相手となったセレッソ。サポーター代表も、そのことを光栄に思うと、試合前に拡声器でわれわれに呼びかけました。しかし、最後にはこう付け加えることを忘れませんでした。「試合には絶対勝たせてもらう」と。

その言葉どおり、5連勝中のC大阪。その重圧は容赦なくのしかかってきました。

20160703C大阪

熊本がこの日選んだ布陣は3-4-3。前節からは植田、薗田、高柳、岡本、清武と5人先発を入れ替えてきた。試合の入りは決して悪くはなかった。

8分、いきなり試合が動きます。熊本の左CKはショートコーナー。清武が入れ直すと、ファーサイドで園田が折り返す。中央3人の選手が詰めていましたが、真っ先にヘッドで押し込んだのは薗田。先制点!

その時、この日ようやく安全が確認され開放されたメインスタンドを、ぎゅうぎゅう詰めに埋め尽くした9千人あまりの赤のサポーターが一斉に立ち上がり、歓声を上げた。われわれも喉が枯れるほど吼え、ガッツポーズしました。

しかし喜びも束の間。13分にC大阪左CKから詰められ同点にされると、この試合の分岐点になった27分、左SBから上がったロングパスにリカルドサントスが薗田と競って入れ替わるとエリア侵入。思わず薗田が手を掛けてしまうと倒れるリカルド。主審がすぐに笛を吹くと、Pマークを指差し、そして薗田には赤いカードが示される。

厳しい判定ではないかと正直思いました。一発レッドなのかと。ピッチに一礼して薗田が去る。

熊本は4-4-1にシステム変更。しかし冒頭に書いたとおり、これでは前線から組織的に仕掛ける熊本の守備は機能しない。ボールを奪って清武がエリアに入ってもフォローが遅い。2列目の連動が難しい。

リカルドサントスに3点目を決められ、前半のうちに1-3になると、後半熊本もリスクを負って黒木を下げて鈴木を入れ、再び3バックにします。

しかし、中盤でカットされると杉本の4点目。終盤は連戦の疲れも隠せず、アディッショナルタイムに5点目を献上。思わぬ大差となってしまったのでした。

C大阪がDFラインの後ろに大きなスペースを空けていたのも係わらず、途中交代が巻でよかったのか疑問もあります。スピードスター齋藤が投入されたのは76分になってから。やはりまだ傷が癒えないせいなのか。見せ場はわずかでした。

この日、殊勲の先制点を上げながら、退場の対象となった薗田は「試合を壊してしまって残念です」と言いながら、次のように言っています。是非読んでいただきたいのでリンクを貼っておきます。

自身Jリーグ初ゴールでした。プロになって10年、才能がありながら怪我に悩まされ、不遇を極めた選手でした。一念発起して移籍した熊本で、身体と相談しながら日々練習を積み、そしてつかんだ先発の座。その”記念すべき試合”での初ゴール。はち切れんばかりの笑顔。サッカーの神様の贈り物だと思いましたが…。

「天国と地獄を味わった気分です」という薗田。「ゴール後の立ち上がり喜ぶ姿。赤く染まったスタンド。また違ったかたちでそんなシーンを残りの試合で見たいしお見せしたい」「早くサッカーがしたい」と繋げています。

「本来はもっと11人でやりたかったなあと。これだけの雰囲気だったので、それが正直なところです。でもなによりもホームに戻ってこられたというのが大きいことで、帰れる場所があるというのは本当にありがたいことです」(サッカーダイジェストweb)。巻はそう試合後述べました。嶋田は「この試合を絶対に忘れずに進むことが大事」と。

一人少なくなった時点で、守りながら終わらせることはできました。しかし、真っ赤に埋まった85日目の”ホーム”で、そんなことはできなかった。指揮官は、やはり”攻める”ことを選びました。この連戦のなかで、それがどんなにキツイことかわかっていても、です。

試合後、熊本の選手たちはC大阪のサポーターに挨拶に行き、C大阪の選手たちもまた熊本に挨拶に行く。スタンドはメインだけで、それはまるで高校生や社会人の試合の礼儀のようでもありましたが、違ったのは、満杯の座席と、そして”震災”を経た互いへのリスペクト、「支援をありがとう」「頑張れ」という気持ちの交換でした。

そんなシーンに、C大阪サポから「ロアッソ熊本!」のコール。お返しの「セレッソ大阪」のコールがかぶさる。

このスタジアムは、震災後、全国からのありとあらゆる支援物資が運び込まれた場所。全国からの”気持ち”が集まってきた場所。そんな場所で85日ぶりに開催された熊本の真の”ホーム戦”。

結果は残念でしたが、ここに僕たちのチームが帰ってきました。熊本はようやくここに帰ってきました。サッカーが戻ってきました。復興への確かな一歩を進めました。そしてもう切り替えるしかありません。次の試合は、中2日で迫っています。

【J2第39節】(金鳥スタ)
C大阪 1-1(前半0-1)熊本
<得点者>
[C]パブロ(53分)
[熊]上原拓郎(37分)
<警告>
[C]山口蛍(39分)、田代有三(77分)
[熊]清武功暉(4分)、嶋田慎太郎(81分)
観衆:10,194人
主審:上田益也
副審:村田裕介、津野洋平

「勝点1じゃダメなんだと、勝点3を俺たちは取りに行くんだという試合を、最後のアディショナルタイムまで、お互いが出し切った試合だった」(Jリーグ公式 小野監督コメント)

プレイオフ圏内の6位までの勝ち点差が7の熊本。そしてセレッソ大阪も3位福岡までの差7という、互いに”負けは許されない”という対戦でした。

C大阪の前線には玉田と田代がいて、中盤は山口蛍や扇原が締める。こんなガチンコのメンバーのセレッソと、この終盤こんな状況(モチベーション)で対戦する楽しさ。緊張感と高揚感。そんな気持ちでキックオフを待ちました。

20151101C大阪

いつも通りの自分たちのサッカーをすることをわが指揮官は言い渡して選手を送り出したはずです。熊本は、相手が格上のセレッソだろうがなんだろうが、強い気持ちで前から奪いに行く。前節は磐田に研究されて交わされたプレス。しかし、躊躇など微塵もなく、今節もいつも通り貫いていく。

平繁が右サイドからドリブル。股抜きでエリア内に侵入しようとしてクリアされる。対するC大阪も、園田が玉田を倒してPアーク左でFK。玉田の左足から放たれたボールは壁でブロック。

しかし、1万人のホームの応援を背にしたC大阪。徐々にポゼッションを高める。右サイドからのクロスに、中央で田代のヘディングはダニエルがキャッチ。続いても、裏へのボールにオフサイドを狙った園田に対し、マグノクルスがそれをかいくぐった。前に出てきたダニエルが入れ替わられる。エリアに侵入するマグノクルス。なんとか園田がカバーに入ってクリアします。危ない危ない。

熊本はセレッソの攻勢を”受ける”かたちが続く。バイタルでボールを回すセレッソ。最後のところで撥ね返す熊本でしたが、ここでセレッソにアクシデント。マグノクルスが痛んで、自らバツ印を出す。代わって急遽パブロを入れることになった。「予期せぬカードを1枚切らせることになった。よしよし」とわれわれは思ったのですが、いやいやパブロという選手、前回も対戦していますが…。入ってすぐに左サイドのパス交換から股抜きでシュートまで持っていく。後半に”痛い目”に合うことになるとは…。この交代劇。果たして”よしよし”と言えたのかどうか。

歓喜はそんななかで熊本に訪れました。37分、上村が右サイドの養父にパスを送ると、それまでボックス内ニアサイドに味方を走らせていた養父が、それをチョイスせず、中央に張っていた齊藤にクロスを入れる。齊藤がDFを背負いながら胸トラップで落として左にはたくと、上がってきたのは上原。トラップして浮いたボールを得意の左足で振り抜いた。ゴール右隅に突き刺さります。養父の選択、齊藤の技術と判断、上原の思い切りのいいプレーが生んだゴール。上原にとっては嬉しいJリーグ初ゴールでした。

さらにその直後、右から縦に平繁が入れて、齊藤がマイナスに落とす。上がってきた清武のダイレクトシュートは惜しくも枠の右。完璧な崩しでしたが追加点は成らず。

セレッソは、その意図するとおりサイドチェンジを多用してピッチを大きく使う。最後のクロスはダニエルがその高さでセーブする。あるいはエリア内の短いパス交換には、喰らい付くようなディフェンスでカットする熊本でした。

ハーフタイム。1点ビハインドを背負ったセレッソ。アウトゥオリ監督の指示はどんなものだったのか。具体論それとも精神論に終始したのでしょうか。後半開始すぐに、右サイドから、この日無尽蔵の運動量で気を吐いていた関口。パブロ、小暮とパス交換。再びパブロに渡りグラウンダーのクロス。これをマイナスに出すと山口が狙いすましたミドルシュート。しかしこれは左ポストに跳ね返り事なきを得ます。セレッソらしい攻撃でした。

そして迎えた53分。セレッソの右CK。玉田の左足から放たれたボールに、ニアに飛び込んだのはパブロ。「(CKで)あの位置から枠に飛んでくるのは、自分のなかでなかった」(熊日・ダニエルのコメント)と言うとおり、ゾーンで守る上原の前に入って頭で反らしたボールは、見事に角度を変え、ダニエルの手をかすめ、ゴールに吸い込まれました。

流れのなかでは点が取れなかったセレッソ。セットプレーで取り返す。

その後は、互いにオープンな、攻守の切り替えの早い展開。激しいゲーム。熊本もサイドチェンジを使いながらエリアに入れていく。セレッソはエリア内中央を崩そうとする。

熊本の左CK。ショートコーナーのクリアからセレッソがカウンター。関口が持ち上がると、左の山口に。1対1とも言えた山口のシュートをダニエルがクリア。超ファインプレー。

右・田代から左・パブロへのパス。パブロが切り返してのシュートは枠の外。仁王立ちのダニエル。その存在感、威圧感に恐れをなしたかのように。熊日が書いたようにダニエルの「獅子奮迅の活躍」が、熊本のゴールマウスをセレッソに破らせません。われわれの目には、すでにシュートを打つ前に勝負あったようにも見えました。

熊本も再三のチャンス。決定機は右サイド養父からの低いクロスが嶋田、齊藤の前を抜け、巻が完ぺきなダイレクトボレー。一瞬、決まったか…と。しかしGK真正面。サッカーの女神は微笑まなかった。

互いに勝ち越し点を奪えないまま終了のホイッスルを聞いてしまいます。激闘でした。ちょっと感動すら覚えるような。膝を抱えるように座り込む両チームの選手たちの多さが、この試合の両者の”ハードワーク”と、そして失った勝ち点2の”重さ”を物語っているようでした。セレッソは、これで自動昇格圏内を諦め、プレーオフを戦うことを覚悟せざるを得なくなった。

強豪・C大阪とアウェーで戦いドロー。これまでだったら”御の字”の結果と言えたでしょう。終盤は引き分け狙いのゲーム運びもあったはず。しかし、今はまったくそんな意識はない。この相手こそ、プレーオフなら倒すべき相手そのものなのですから。だからこそ勝ちたかった。勝たなくてはいけなかった。

順位は11位に下げたとはいえ、6位長崎との勝ち点差は6。熊日は「プレーオフに望み」と見出しを付けましたが、残るは3試合のみ。勝ち続けて勝ち点9を上積みするしか”可能性”は残っていない。他チームの勝敗を計算するもなにもない状況。けっこうじゃないですか。

今季5月の千葉戦で敗戦し5連敗のなか、最下位に沈んだときのエントリーにこう書きました。「上等だ。わかりやすいじゃないか。ここから這い上がっていくしかない。」

そして、チームは文字通り這い上がってきました。この位置まで。あのときと状況は違いますが、気持ちは似ています。開き直って、勝ち続けるしかない。その先にしか結果はない。シンプルで分かりやすいです。ただ勝つしかない。それが次節のただひとつの目標です。残り3ゲーム。1試合1試合がラストゲーム。迷いも、雑念もない。澄みきった気持ちで存分に戦おうじゃありませんか。

【J2第15節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)C大阪
<警告>
[C]椋原健太(83分)
観衆:13,132人
主審:山本雄大
副審:清野裕介、正木篤志


6年ぶりのセレッソ大阪との対戦になりました。6年前も、香川や乾といった若手のタレント(才能)を擁する強豪クラブでしたが、現在のセレッソはそれにも増して。元ウルグアイ代表にして2010年W杯MVPのフォルラン、同W杯ドイツ代表のカカウ、日本代表(候補)の山口蛍、あるいは山下達也、さらにはGKのキム・ジンヒョンは韓国代表という、眩いばかりのスター軍団でした。

エース・フォルランの得点は10で、ゴールランキング1位。チーム総得点でも25はリーグトップ。しかし、失点が17と意外に多い。このあたりが15節を前にして8位に甘んじている原因のようで。守備に弱みがあるかと思わせたのですが…。

コイントスで、エンドを替えたのは熊本。この時間帯の日差しかあるいはこの日吹いていた強い風の向きを考えたのか。

20150524C大阪

前から果敢にプレスを掛ける熊本。もとよりC大阪に”名前負け”する気配は全くありませんでした。キム・ビョンヨンが初先発で左SBに入ったDFラインも、勇気を持って高く維持しました。

ただ、さすがのセレッソ。9分、楠神がハンジンとの1対1で入れ替わってクロスを入れると、山口のミドル。あるいはアタッキングサードでパスを回して熊本ゴールを襲う。なんとか最後のところで足を出してクリアする熊本。目を見張るのはカカウのボールコントロール。そしてフォルランとのコンビネーション。これぞ”プレーセンス”。しかし、絶対、中央は通させない熊本という図式。

38分、中山が拾ってスルスルっとエリア内に侵入してシュート。こぼれたところを齊藤がシュート。惜しくもブロックされます。その後もセレッソゴールを攻める時間帯がありました。

ハーフタイムを挟んだ後半。セレッソは、ピッチを大きく使い始め、揺さぶり始めます。

52分、セレッソの攻撃。左から作って中へ入れるとフォルランがスルー。パブロのシュートはハンジンが身体を投げ出してブロック。熊本は右の養父へ。養父が溜めてグラウンダーでクロス。しかし”溜めた”分だけニアに入った高柳はオフサイド。

攻守の切り替えが早い展開。66分には、養父のロングスローをGKがパンチング。カウンターを奪って黒木のモビリティー。アーリークロスにニアに巻が入りましたが、直前でキーパーがパンチングで凌ぐ。惜しい。

最初にカードを切ったのは熊本の方でした。その巻に代えて平繁。巻は今日もポストプレーヤーとして、文字通り身体を張って(その大きな体躯を生かして)、その身を削るように相手と競って、相手に身体を当てて、飛んで、転んで、セレッソの守備をかく乱しました。大きな働きでした。拍手。

対するセレッソは、なんとピッチにいる3人の外国人選手を一気に3枚替え。玉田、吉野、沖野を入れてきます。”個”で打開できないところを、”組織”で打開する策に出たのか、セレッソが攻勢を得る。それはサッカーの試合90分のなかで、一番きつい時間帯でしたし、しかもセレッソが実はこれまで一番点を取ってきた”怖い”時間帯でした。

熊本は嶋田に代えて藏川。ビョンヨンの前に置くことで、落ち着かせる。ここから少し持ち直しました。セレッソの攻勢を押し戻し、両者アディッショナルタイムに与えられた3分間も、勝ち越しの”1点”を奪うことに執着しましたが、”振り子”は傾かず。スコアレスドローのまま、終了の笛を聞きました。

前節長崎に敗れ、今節”最下位”の熊本に引き分けたC大阪サポーターは、ゴール裏からブーイングを浴びせました。この日、1万3千人を記録したホームスタジアムの熊本ファンの評価は、拍手と叱咤が半ばするような。

「セレッソの調子が悪かったのにもかかわらず叩けなかった」という意見があるようですが、それには首を傾げます。サッカーは相対的(相手あっての)ゲーム。セレッソの作る攻略を、防ぐ熊本の守備戦術が奏功して、セレッソの”刃”を抜いていたとも言える。外国人選手の3枚替えは、敵将の思い切った戦術転換ではありましたが、裏を返せば、熊本が大阪の最大の強みをどれだけ消していたかということでもあります。それも”個”に依存しない、チームとしての泥臭いハードワークをベースにして…。

そのなかで熊本が勝ち点3まで得ることができなかったのは、突き詰めれば、そのカウンターにどれだけの切れ味があるかという問題ではなかったかと。そして、そこに立ちはだかったのはこれもまた何人もが身体を投げ出すセレッソのゴール前の守備。サッカーの基本のような”泥臭さ”に屈したということでしょう。

あのセレッソにしてこの泥臭さ。その意味では、スコアレスドローは妥当だったのだろうと思います。しかし、スコアレスドローとはいえ、攻守切り替えの早い、良質な試合を観たような気がします。そういう意味では、サッカーにしてもなんにしても、”うまい”相手と対戦しなくてはならない。スター軍団だろうがなんだろうが。そんなことを改めて思った試合でした。

大分が負けたことによって、この試合で最下位は免れ、21位に上がりました。

8月30日(日) 2009 J2リーグ戦 第36節
熊本 0 - 2 C大阪 (19:03/熊本/5,755人)
得点者:4' カイオ(C大阪)、69' 香川真司(C大阪)


昼間はまだ焼け付くような厳しい陽射しが残るとはいえ、夕暮れのKKウィング、スタジアムを吹き渡る風には、はっきりと秋の気配が感じられました。今季最後となるC大阪との戦い。首位、大阪ですが、さすがに今回は中心選手のマルチネスが不在とあって、勝機が見出せるかもしれない。しかし、熊本もこのところの得点源だった宇留野を怪我で欠き前線は非常事態。前日の熊日の予想スタメン通りに山内を中心に置いて、右に西、左に西森という3トップは、高さという面だけ見ても迫力不足は否めませんでしたが、反面、なかなか結果がでない苦しい状況を打開していくのは、こんな若い伏兵たちではなかろうか。などという淡い期待もありました。

C大阪 (先発フォーメーション)
 9カイオ 
8香川7乾
19石神13平島
11船山6濱田
2羽田5前田
 3チアゴ 
 21キム 

しかし、前半は全くいいところなし。開始4分、大阪の前線へのロングフィード。キック時点ではカイオはオフサイドポジションと思われましたが、香川とうまく交差して熊本の両CBを交わす。香川が裏に落としたボールはしっかりとカイオに治まり、そのまま豪快にシュート。早々に先制されます。その後も完全に大阪のペース。ただこの後は、決定機をことごとく外してくれる。二度、三度。こうやってチャンスを潰しているうちに、だんだんと相手にペースが移っていくものなのですが、しかし、今日の熊本はそれを手繰り寄せられない。逆に、自らのミスで決定機を献上してしまう。高さの代わりに機動力があるはずの3枚の前線。大阪の3バックの裏やサイドのスペースを突きたいのですが、供給されるべきパスが出てこない。

大阪の方が前線からのプレスが厳しい。ハードワークしている。背後からも激しく詰めよってファール覚悟でチェックする。しかし何度も何度も決定機を作りながらも決めきれないのが今の大阪の苦しさなのか。12本のシュートに肝を冷して終わった前半。0-1で折り返せたことが、まるで0-0で凌ぎきったような大仕事に感じたほどでした。

後半からの藤田の投入は予想されていました。前半を凌いで後半勝負というゲームプランだったのは確かでしょう。西森に代えて前での起点を作る。しかし、代えるべきは西森だったのか?ちょっと首を傾げてしまいました。さらに河端に代えて矢野。確かに今日の河端はゲームにフィットしていませんでした。迷わず早めに手を打ったこと自体は、今までになかった動きとして評価できますが、そもそもこんな交代は当初のプランにはなかったことでしょう。ここで貴重な交代カードを浪費してしまいました。

後半10分までは両者押し合い。それから次第に熊本にもチャンスが訪れはじめます。数度のCKで、点の匂いのする組み立ても見られますが、熊本も決めきれず。69分、大阪は前線でインターセプトすると平島がPAを破る。これを福王が対処しますが、うまく体を預けられてPKの判定。ここまで最後の最後に身体を張って凌いでいただけに残念な判定。香川にきっちりと決められて2点差になりました。

前節を終えて池谷総監督・GMは、こうコメントしていました。「これまで選手たちの戦い方を見ていると、攻撃8割、守備2割の意識だったような気がする。これからは守備を8割意識するように北野監督を通じて指示している。攻撃を行かすための守備。昨季と同じ“積極的な守備からの攻撃”に取り組みたい」。第三クール、今シーズンの戦いを“結果”として残すための締めくくりのテーマが掲げられたということでしょう。

そういう意味では、今節のC大阪との戦いは、いい試金石だったと思います。大阪の決定力不足に助けられた面もありますが、よく守った。守備の意識は最後まで途切れなかったと思います。矢野も福王も、要所でくさびのボールをカットし反撃の起点をつくっていました。最後のところで深く身体が入っていた。CKを含めたセットプレーへの対応も注視していましたが、以前よりマンマークがきっちり着けていたかなと。これまでがっかりさせられた“ポカ”といえるような失敗はなかったといえるでしょう。しかしチーム全体を見渡せば“積極的な守備”にはほど遠かった。逆にそれを実行していたのは相手側だったと・・・。

そしてミスが多すぎました。ポジションをずらしてボールを運んでいくことが出来なかった。足元足元へのパスを完全に狙われていたにもかかわらず、そこが修正できなかった。逆に、お手本を見るような大阪。その根底には“無理のない”ハードワークがありました。

この試合は完全に力負け。それも個々の力、チームの力、選手層の差、ベンチワーク全てを通した現在の総合的な力の差だろうと思います。これまでの北野監督には、戦前に描いたゲームプランに固執するあまり、臨機応変な対応に欠けるような印象を持っていました。今日は後半勝負のゲームプランに藤田、木島がベンチスタート。これは確かに現状の選手層のなかでひとつの策だったと思います。そしておそらく前線の3枚目は大迫を投入したかったはず。しかし、河端を諦め矢野にカードを使った。もちろんこの早目の決断には拍手を送るべきでしょう。とは言え、初めて見せた“臨機応変さ”が、先発DFを1枚代えするというだけの、言うなれば“消極策”だったことが皮肉のようで・・・。これもまた選手層と言ってしまえばそれまでですが。

夏休み最後の試合、総選挙もあった慌しい日曜日、それでも6000人近い観客が詰めかけたことは大きな救いでした。これだけ負けが込んで、いい材料も見えない、客観的に見ても“きわめて厳しい”状態のなかでのこの観客数。これは正直なところすごいことだと思います。そして、そのメンタリティーにも少し変化を感じます。前半の一方的な劣勢にも関わらず、ハーフタイムには冷静に語り合っているファンの姿。野次は飛ばしながらも、最後まで席を立たなかった人たち。それは2点差をひっくり返す可能性、一矢報いる場面。それが叶わなくても、しっかりとしたハードワーク、戦う姿勢さえ見せてくれれば、敗戦であっても拍手を送るファンが確実に増えているということではないでしょうか。そう思うと、「決定的な2点目を失い『試合が終わってしまった』」(31日付・熊日)という指揮官のコメントは、たとえ言葉の綾だとしてもちょっと残念でした。以前にも書きましたが、新任監督はその重責に眠れず、連敗で食事も喉に通らない日々が続いているのかもしれません。しかし、けっして自分ひとりで戦っているのではない。そう思ってもらいたいなと。何もないところから縁あって出会い、九州リーグから這い上がってきた戦友じゃないですか。あの頃を思えば、何も焦ることはない。われわれはそう思っています。