【J2第31節】(大銀ド)
大分 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]田中達也(90分+1)
<警告>
[大]伊佐耕平(56分)
[熊]園田拓也(22分)、クォン・ハンジン(59分)、齊藤和樹(72分)
観衆:6,890人
主審:荒木友輔
副審:中井恒、勝又弘樹


20150913大分

ヤバイ試合でしたね。

終わってみればシュート数は大分の14に対して熊本はわずかに3。90分間を通して一方的に攻められたようにも感じた。ヤバイ!と感じた大分の決定機が少なくとも3、4度ありました。それをスーパーセーブで防ぎ続けたのがGKのダニエル。シュートに対する反応は半端なくヤバイ。そして後半アディショナルタイムで田中の劇的な決勝点。このアシストの嶋田のパスもヤバイほど凄かった。

現在リーグ最下位に甘んじる大分との九州ダービー。天皇杯の中断を明けてリーグ再開戦。この試合に賭けるホーム大分の意気込みは相当のものがあるはず。そんな予感そのままの序盤でした。

スカウティングどおりにロングボールで押し込んでくる大分。分かってはいたものの、熊本はなかなかDFラインを高く保てない。押し上げようと試みるロングフィードは、大分のCBダニエルにことごとく跳ね返され、セカンドボールもうまく収められない。

拮抗した展開も、前半30分過ぎからは完全に大分のペースに。左サイドから為田。養父をドリブルで抜き去って放った強烈なシュートは、間一髪GKダニエルが片手ではじいて外に出す。その為田、さらに続けて左から突破。伊坂のヒールパスを貰いなおして三平に送る。しかし三平のシュートはアウトに掛かって枠の右に反れてくれる。すぐそのあとも左サイドで為田が溜めたあとのクロス。ファーサイドに走り込んだのはSBの西。至近距離からのダイレクトシュートは、GKダニエルが、大きな体躯で立ちはだかってブロック。神がかっている。まさに守護神。

前半、熊本のシュートは巻が放ったミドル1本のみ。そして後半もこの一方的な流れは続きます。

伊佐のスパイクが額に入って、園田が止血のためにピッチの外にいる間、大分の波状攻撃にさらされた熊本はクリアにつぐクリアで精一杯。大分の右からのクロスをエリア内でバウンドさせてしまい、マイナスに折り返されたところに走り込んだのは兵働。しかし、このグランダーの決定的なシュートもスーパーセーブで防いだGKダニエルでした。

いっこうに熊本にペースが来る気配がない。大分のDFダニエルに自由を奪われている斎藤が珍しくイラついているように見える。熊本は巻に代えて清武、中山に代えて田中を投入。ただし田中をトップに、清武をサイドに。

「田中達也はサイドで使うことが多いんですけれど、トップで使ってサイドに流れるような形、相手がラインを上げてくるタイミングでその裏を衝くということを徹底しようと」(九州J-PARK)とそのポジショニングの意図を語る小野監督。この指揮官のちょっとした閃きが、今日の勝機を呼び込んだ伏線だったと言えるかも知れません。

この二人の投入もあり、終了間際になって少し熊本のペースかなと思われ始めましたが、時間も時間。拮抗状態のまま、今日は引き分けが御の字かとも思ったアディショナルタイムでした。右CKの流れから作りなおして嶋田が右サイドから入れる。左足のアウトに掛けた低いボールに大分のDFもGKも一瞬躊躇したところに飛び出したのは田中。左足で押し込み、土壇場で熊本が得点します。

まさかのような失点に、天を仰ぎ、うなだれる大分の選手たち。残ったわずかな時間、高松のシュートも枠を外れると、大分にとっては勝ち点1さえも奪えない、痛恨の、そして残酷な敗戦となりました。ホームでは決して目にしたくない結末。

「相手は細かくラインを上げ下げすると言われていたので、絶対オフサイドにならないようにと思っていました」と言う殊勲の田中。天皇杯に続き、リーグ戦初ゴールを飾りました。

それにしてもです。圧巻だったのはそれをアシストした嶋田のクロス。いやこれはラストパスとも言うべきか。何と言えばいいのか。通常あの右サイドから入れる左足のクロスならインフロントでゴールマウスに向かって弧を描くボールを送るはず。しかしそれならばDFもGKも対処はし易い。けれど、嶋田が選んだカットを掛けるようにアウトサイドで蹴った低いストレート系の軌道は、前述したように意外性がありすぎて、瞬間、DFもGKもその意図が量りかねたのか、反応できず触れなかった。

「あのパスは自分の得意なキックで、少しアウト気味に入れました。中に3枚くらいいたので、誰か触るだろうというイメージで」(井芹記者@takash_i のtwitterから)という嶋田のコメント。あの瞬間、瞬時にそれを判断した嶋田。そしてそのイメージ通りのボールを出した。今週のベストゴールならぬベストアシストに選ばれそうな。ちょっと”変態”的な雰囲気さえ漂います。そしてそれに呼応したのはFWに入った田中。「ボールが来ると信じてゴール前に飛び込んだ」(熊日)、「慎太郎がいいボールをくれた」(九州J-PARK)と言う。若きホットラインの完成でした。

劇的な決勝弾を目の前で目撃したゴール裏の赤いサポーターたちも嬉しかったでしょうね。羨ましい。あの苦しい90分間の劣勢に、叫び飛び跳ね続け後押ししたご褒美が、この歓喜の瞬間だったのではないでしょうか。

劣勢のアウェー戦。最後は「引き分けでも良し」としようとしていたわれわれですが、この試合を勝ち試合にした意味は相当大きい。なんとかして勝つ。”勝ち切る”という強さが備わった。そういった”経験値”が増えてくれば、何よりチームの実力に”加算”されることは間違いありませんから。

【J2第12節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)大分
<警告>
[熊]齊藤和樹(41分)
[大]西弘則(79分)
観衆:12,770人
主審:吉田哲朗
副審:桜井大介、藤沢達也


こんな順位での隣県対戦になるとは思ってもいませんでした。大分は勝ち点8で20位、そしてわれわれは7で21位と、互いに降格圏を覗く位置。しかし、スタジアムには(動員もあって)1万人以上の観客。大分からもおよそ1,500人のサポーターが阿蘇を越えてやってきて、ゴール裏を青く染めていました。

20150506大分

立ち上がりは互いのチームの状況とスタメン起用の考え方がハッキリ出た展開になりました。不調のなかでも、前節徳島との戦いに追いついてドローにした大分は、「中2日の連戦のなかでメンバーを大幅に替えて、前回(徳島戦)の内容と同じことをフレッシュな選手に求めた」(大分・田坂監督)。それに対して、前節を追いつかれてドローにされた熊本は、そんななかでも得られた手ごたえを大事に、逆に先発を中山から常盤に代えるにとどめた。そんな個々の選手起用やチーム全体のコンディションの違いがはっきと表れた序盤だったように思えます。

大分の猛烈な押し上げ、波状攻撃に対して、熊本はアバウトなクリアに終始する。それに主審の笛の多さも加わって、集中力を持続するのも難しい時間帯。こんなときに耐え切れずに先制点を許してきたのが今季の熊本ですが、今日はここをしぶとく凌ぎきり、自分たちの展開に持ち込んだところが大きな進歩でした。もちろんそこには、前半途中から高柳のワンボランチから上村を加えた4-2-3-1にシフトチェンジした指揮官の好判断も奏功したのですが。

36分にはこの日連続して鋭いロングスローを放っていた鈴木から、常盤が素早く縦に繋いで齊藤がボックスを脅かす。いい連携だ。続いても齊藤からのパスを巻が折り返して常盤のシュートは惜しくもオフサイド。前半終了間際にも上原のFKを園田がファーで折り返し、鈴木がマイナスで入れると齊藤、そして高柳のミドル。そのあとも、カウンターから齊藤のスペースを狙ったサイドチェンジのボール。惜しくも常盤には通りませんでしたが、「ここが合えば」という攻めでした。

その勢いを加速するべく後半開始から熊本は左SB上原に代えて片山を入れます。しかし、ここでアクシデントが起きました。開始早々のプレー。熊本ゴール前でエヴァンドロがトラップしてシュート。これを止めようとディフェンスに入った片山の足がエヴァンドロのそれと交錯。もんどり打って倒れる片山。痛いのか悔しいのかピッチを叩く。すぐにチームメイトがベンチにバツを示します。

すぐに養父が右SBに入り、鈴木が左にまわります。練習試合では試されたこともあったとのことですが、公式戦では初めてみる養父のSB。まさに総力戦の雰囲気。

その後はそれほど見せ場があったわけではありません。互いの順位が物語るように、攻め上がりのなかでのミスもあれば、フィニッシュの精度の課題もあった。ただ、この試合で絶対勝ち点3をもぎ取るんだという大分のエネルギーは相当なものがあったし、連戦の中日、それを跳ね返すのに精一杯の熊本だったのかも知れません。

アディッショナルタイムには、カウンターから大分・西のシュートが左に反れ、対して熊本は黒木から田中、左から撃つも枠の上に外れる。最後までどちらに勝ち点3が転がり込んでもおかしくなかったのも確かです。

スコアレスドローという結果とはいえ、潜んでいた両チームそれぞれの”苦しい状況”、そのなかでの ”熱いプレー”は、きっと1万人の観衆に伝わったのではないでしょうか。熊日はそれを観て「戦う姿勢 チームに戻る」と見出しを付け、九州J-PARKで井芹さんは「自信も掴んだスコアレスドロー」と詠いました。なにより大分の開始早々の勢いを凌いで、第4節福岡戦以来続いていた連続失点を、クリーンシートに収めた結果は大きい。

確かに片山のケガの程度は心配ですが、あのプレー。今日のゲームを象徴するようなものでしたね。怖くて行けないようなところに、敢えて行く。勇気を持って行く。他にも同じようなシーンが幾度も見られました。肉を切らせて骨を断つ。そんなギリギリのプレーでなければ、相手を紙一重で上回ることはできない。

これをベースにできるのか。崩れない土台を構築することができてきたのか。連戦のなかではありますが、そこが注視すべきところではないかと。みなさんはどのように感じられているでしょうか。

9月6日(土) 2014 J2リーグ戦 第30節
大分 0 - 1 熊本 (19:03/大銀ド/20,636人)
得点者:80' アンデルソン(熊本)


「総力戦」と銘打たれた年に一度のホーム大分の大イベント。今日のバトルオブ九州、たまたまでしょうが、そのタイミングに重なってしまいました。2万人以上が埋め尽くした大銀スタジアム。”隣町”とあって、熊本からも多くのサポーターがゴール裏を赤で埋めたものの、騒然としたその雰囲気に、ベンチからの指示は全くピッチ上の選手には伝わらないような状況でした。

ここまでの大分との対戦成績は2勝5分。たしかに負けなし。悪い印象はないにしても、相性がいいという印象もない。なにか勝ちきれない、決着がついてない感じとでもいうのか。それは、過去のスコアが物語る。新しいほうから言えば、1-1、2-1、0-0、2-1、2-2、1-1、0-0。どれもロースコアで勝ちゲームも一点差という状況。全く互角だとも言えました。

そして、大分のここ5戦は、天皇杯で鳥栖に黒星を喫した以外は、リーグ戦負けなし。大宮から補強した新加入のハイタワー・FWラドンチッチが、得点源になっている。

20140906大分

ゲーム序盤、やはりラドンチッチにボールを集め、攻め込む大分。前節、札幌戦である意味“高さ”に屈した部分もあった熊本。今日は、さらに高く屈強な大分の前線のターゲットに加え、「威圧感を感じた」(小野監督)というアウェイ2万人の大声援。「プレスに行く前に前線に送られ、セカンドボールを拾われてしまいました。」(小野監督)という大分の戦術もあって、ちょっと浮足立った熊本の立ち上がりでした。

しかし前半20分頃、仲間がPA内でドリブル。一人交わして、この日チーム最初のシュートを打ったあたりから、徐々に落ち着きを見せ始めた熊本。その後何度も大分ゴールを脅かし始めます。ただ、決定機には至らず。尻上がりに熊本優勢という印象で前半が終了。

そしてハーフタイムを挟んで戦局は大きく熊本に傾いていきますが、この間の戦術的な分析で両監督の見立ては完全に符号しています。

小野監督は、「ラドンチッチ選手はJ1、J2を含めて、あの高さは圧倒的」と見ていました。その対策として指揮官は、「高さで対抗するために背の高い選手を並べる」のではなく、「サイドバックを高い位置に上げボールを動かし、相手にボールを入れさせない」という方策を選びました。そして、「純粋に高さで勝負するよりそっち(ボールを動かす方)で対抗できるメンバーを選びました」という。

対する大分・田坂監督。「…センターバックの間にボランチを入れ、サイドバックを上げて押し込まれました。前半からその傾向はあったのですが、後半はもっと積極的に来た。」「相手と同じようにサイドバックを上げてミスマッチを作れば良かったのだが。そこに差が出たのだと思います」と言う。

ここに、この試合の勝敗を分けた戦術の”分水嶺”があったようです。

大分はあくまで、ここまで得点を量産したラドンチッチにボールを集める戦術に固執しました。確かにラドンチッチは、その高さから前線でボールを落とせる。けれど、そのパフォーマンスには、徐々に翳りが。しかし、大分はあくまで固執しました。

それに対して熊本は、小野監督がハーフタイムに、「ロングボールを競る選手とセカンドボールを拾う選手の修正をし、ハイボールに対して怖がらないように」指示した。

「サッカーは90分で様々な場面の中でプレーの選択が必要ですが、今日は90分間同じペースでやってしまった」とも反省する坂田監督。指揮官の意識と、ピッチ上の選手と、イメージが少し違っていたのかなと思わせるコメントですね。

スカパー解説も今日の養父のパフォーマンスを絶賛していましたが、われわれから見ても、中盤の底からトップ下まで、自在に動き回り、ワイドなボールの配球は今日の熊本の戦術を体現していました。ここまで自由を与えられることはあまりないのだけれど、と思っていましたが…。「ウチはある程度セットして守るのでボランチが空く。」と大分・高木和道選手が言うように、後半は熊本が大分陣内を脅かす時間が増えていきました。

前節、札幌の高さに完敗した熊本のDF陣。都倉に対していいところなくやられてしまった橋本。今日のラドンチッチをどう封じていくのか、相当な覚悟で臨んだに違いありません。先の小野監督の指示通り、ある時は厳しくからだを当て、競り負けてもセカンドを予測した連携でほとんど仕事をさせませんでした。

後半に入ると、熊本のプレッシャーはさらに激しさを増していく。大分の選手のプレーに少し嫌がっているような素振りが感じられる。

しかし、ほぼ主導権を握り続けるが、幾度も訪れる決定機を決めきれず。大分のゴールをこじ開けることができない。さすがに誰もが嫌な雰囲気を感じはじめた80分。今日の基本戦術の集大成のような展開。大迫に代わって入ったばかりの黒木が、高柳からもらったパスを中に入れる。齊藤のヘッドがミートせず。DFからの跳ね返りを、養父が拾ってミドルで撃った。これには大分・GK武田も弾くほかなく、それを見逃さなかったアンデルソンが、瞬間押し込む。熊本が先制。アンデルソンはチーム加入後二試合目、初先発で貴重な決勝ゴールを奪います。

1点リードで残り10分。さて、多分、本当の勝負所はここから。熊本のファンなら誰もがそう思ったでしょう。これまでこんな展開でどれだけ勝ち点を逃してきたことか…。大分は完全に足の止まったラドンチッチを引っ張り、さらには高松を投入してさらにパワープレーを前面に押し出してきます。

ただし、今日に限っては流れのなかではチームの意思は整理されているようで、そこに危うさは感じませんでした。「これまでリードすると下がって起点を作らせたのですが、最後までプレッシャーをかけ、ボールをつないだ選手に感謝したいです」(小野監督)。「リードしてからも守りに入らず、それまでの流れのまま行けたことも良かったし、最後の方は皆が体を張っていた。キツい中でもすぐ切り替えて戻ってきてくれたので、自分としてはやられる気はしなかった」(畑実)。

しかし、それでもセットプレーのピンチは避けられず、最後のワンプレーが相手のCKなった場面は、小心者と笑われるかもしれませんが、“ああ、やっぱりやられたな…”と目をつぶってしまいました。

さて、アンデルソン。初得点より何より。こんなことで驚いてはいけないのですが。32歳のブラジル人FW。20チーム以上を渡り歩いた百戦錬磨のベテラン。Jリーグでは36点目となる得点を、この日、熊本の歴史に刻みました。「今日の試合では起点になり、後半はクリアボールをおさめ、踏ん張ってくれました」(小野監督)と、チーム戦術に忠実に、それも時間を追うごとに、終盤になってさらに、前線からの守備に献身しました。

本人も「ここまで、チームのスタイルに自分を合わせるのに時間がかかった」「チーム全体がハードワークできたし…」「これからもトレーニングからハードワークを続けるのが大事なことだと思う」と。

結局、その高さということもあって、90分フル出場してしまいました。まだまだ、連携という点では噛み合わない場面のほうが目立ちましたが、間違いなく前線に1枚、強力なカードが加わりましたね。

今日のゲーム。チームの基本戦術で押していくのか、それともまずは相手の高さ対応なのかという選択のなかで、基本戦術をこれまでにないくらい徹底し、それによって相手の高さという強味までも消し去ろうというゲームプランで臨んだ熊本。

実際の超大型FWの迫力は想像以上でしたが、足が止まるのも早かった。「ラドンチッチは守りがおろそか」(橋本)との見切りもあり、高さ以外の武器で無力化することに成功しました。

“戦術がはまった”とかいう表現では語り尽くせない、熊本にとっては、まさに今日の「総力戦」のタイトル通り、知恵も体力もすべて出し尽くしてもぎ取った勝利のようで…。リーグ戦も終盤に差し掛かります。順位はこの勝利でふたつ上げ16位となりました。こうやって毎試合が今シーズンのベストゲームに思えるような、そんな流れになっていけば、嬉しいですね。

3月22日(土) 2014 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 1 大分 (15:03/うまスタ/9,492人)
得点者:54' 澤田崇(熊本)、86' 後藤優介(大分)


20140322大分

開始早々からオープンな展開でした。大分の周知のドリブラー西が突っかければ、こちらはルーキーの澤田が長い距離を持ち上がって、ファーストシュートを放つ。DFラインを高くしてコンパクトな陣形でボールを運ぼうと意図している大分に対して、橋本のタックルと養父のパスカットがはまり、素早く大分の裏のスペースを狙う。大分にゴール前で回される時間帯もありましたが、サイドで完全に詰まってしまって危ないシーンはなく。お互い綱引き状態で前半を終えました。

先制点は熊本。後半54分。中盤での攻守の激しい入れ替わり。奪った熊本がワンタッチで前に運ぶ。澤田から左に走った齊藤へ。齊藤が大事にマイナスでパスを出すと、仲間がダイレクトでシュート。ゴール前でDFを背にしていた澤田に当たって、ゴールに吸い込まれました。

この試合で最も印象的だったのは、前半36分。ピッチの中央付近で引っ掛けられて倒された養父。倒されて仰向けの姿勢のまま、足元にあったボールを、素早く右サイドを駆け上がっていく味方にリスタート。さすがに審判はこのプレーを認めなかったけれど。なんか隔世の感が…。思い出すのは「2009.08.11 再び完敗。徳島戦」。審判の判定に抗議しようとしている隙に失点してしまったあの試合。あのときとはチームも変わったし、サッカーも変わった。そう痛感したシーンでした。

変な言い方かもしれないけれど、選手は、切ないくらいに、ゲームに忠実に、相手に対しファイトしました。J1からの降格チームである大分を圧倒し、ゲームを支配したと言えるのではないでしょうか。

それも、戦術的にとか、相手の良さを消した、とか言うことではなく、物理的に。球際において、ボディコンタクトにおいて、集中において、切り替において。戦う意思において。

試合終了後、青く埋め尽くされた大分のゴール裏からは、激しいブーイング。大分からすれば、ギリギリの時間帯で追いついて、アウェーで勝ち点1は“悪くない”でいいじゃないか、と思ってしまいがちですが。降格チームにとって熊本はあくまで格下。“こんなところでモタモタしてる暇はないぞ”という思いなのでしょうか。

ピッチ上では、一目瞭然。「われわれのサッカーをさせてもらえなかった」(大分・田坂監督)ということなのではないか。

最近、思うのですが…。「サッカーのファンというのはつらいことのほうが多くて…」という記事は、ここでは何度も書いていますが、ここ数試合、職場の仲間とも、どうも結果だけではないよね、みたいなことを話したりしています。もちろん結果は何より重要なんですが。とても微妙な感覚で説明しにくいんですが。「昨年と比べることもないけれど、今季のロアッソの試合は楽しめる」。そんな拍手コメントを頂戴したりもしています。

最後の最後に、「勝ち」が「スルリ」(熊日)と逃げていってしまったわけですが、それでも、そこからのわずか残り時間、追いついた側の勢いをガッチリと受け止め、すぐさまそこから巻を投入し、黒木のあわやのシュートで流れをもう一度引き戻した。

監督ひとりが、選手ひとりが、それぞれに戦うという意思を持つのは当たり前なんだけど、それがチーム全体で常に高いレベルを保っていられることだったり、失点してモチベーションがガクッときても、それを一瞬で取り戻せたり。“選手が下を向かない”ことが伝わってくる。だから結果とは別に、決して負けてない状態で試合が終わる、そんな感覚。一週間をみじめな思いで過ごすことがなくなった感じです。

小野監督は、これまでの3試合からスタメンを変えてきました。FWに澤田、2列目に五領。「正直、誰を出してもいけるなというくらい、1人1人、トレーニングを見ていても非常に元気よく、いいパフォーマンスを発揮してくれてます」。そう監督は言う。

久々のスタメンの五領。与えられたチャンスをものにしようという必死のプレーが伝わってくる。こんなに足が速かったか?と思うくらい右サイドを完全に支配。行けるところまでいく。そんな攻守にわたる運動量。大分との“バトル”にスイッチを入れたのは、間違いなくこの男でした。勝っていれば、間違いなくMOMに推したいところでしたが。

澤田。期待のドリブラー。試合の展開もあったが、ほぼ90分間、前線で走りきれることを証明した。サッカーライターの小宮良之さんは自身のtwitter(https://twitter.com/estadi14/status/447314821331959808)にこう書いてくれています。「ナイフの切れ味で、敵守備陣の肌を切り、確実にダメージは与えた。あとは骨を断てるか」と。

とは言っても、現状17位。まだまだ順位をうんぬんする時期ではないにしても、厳しい戦いが続きます。次節はフクアリでの千葉戦。われわれにとって最悪なイメージしか残っていないこのシチュエーション。多分、この戦いがチームの今を見せてくれる、序盤戦の一番のゲームだと思います。

9月17日(月) 2012 J2リーグ戦 第34節 
熊本 2 - 1 大分 (16:05/熊本/9,645人) 
得点者:36' 吉井孝輔(熊本)、49' 西弘則(大分)、53' 齊藤和樹(熊本)


まず最初に、前回のエントリーで「コンディションが悪いのでは」と疑問符を投げかけた藏川選手に全力で謝りたいと思います。この試合のパフォーマンスは出色でした。運動量多く、大分の攻撃の芽を次々に潰す。後半インターセプトから斎藤に一度預けて、再び右サイドを駆け上がったシーンは、大いに会場を沸かせました。残念ながらその前に、絶好機を外した場面もありましたが(笑)。

今日のような試合こそ、まさに藏川のゲーム。脚が攣って終盤、交代した筑城にしても。流血の痕も痛々しい吉井も。「球際の強さを求められて」と自分たちの役割をしっかり認識していた”戦士”たちでした。

「球際」と「攻守の切り替え」が、このゲームの課題でした。前節、水戸に完敗した点。「とにかくサッカーの原点にもう一回帰る」「セカンドボール、球際、切り替えはサッカーの素の部分なので、そこでは絶対に負けてはいけない」。水戸戦で敗れた翌日にこう檄をとばしたという高木監督。

過密日程もあるものの、球際で「闘う」というコンセプトで5人の選手を入れ替えた。「ダービーなので、なかなか綺麗なことは難しい」だろうという予測のもと、斎藤と高橋という初めての2トップの組合せをチョイスした。「こういうサッカーになるだろうという予測のもとでチョイスした」という指揮官の期待どおり、前から守り、前で納める。決してうまいとは言えないかも知れない。しかし泥臭くしぶとく。相手の嫌がるプレーが、大分を苦しめました。

大分20120917

大型の台風16号の接近で開催自体も危ぶまれましたが、何とか持ちこたえてくれました。今日のこのゲーム。熊本サッカーフェスタとして、熊日がバックアップして盛り上げを図る形で、回を数えてもう6回目。怪しい天候ながらも動員もかかり、1万人近く入ったスタジアム。しかも相手は隣県・大分とあってサポーターの数も多く、青い色がバックスタンド、メインスタンドまで侵入している。ゴール裏の応援合戦も、キックオフの前からヒートアップして。火の国の“赤”がこれで燃えないわけにはいかない。

強風のなかでのキックオフ。「おやっ?」と思ったのは、熊本が風下のエンドを選んだということでした。前半風上を選ぶのが勝負の定石。それでなくてもエンドチャンジが常の熊本なのに、なぜ風下を選んだのだろうかと。

これについてはキャプテン藤本のブログに詳しい。「キタジや雄太、監督からの意見も聞きながら、最後は俺自身で決めようと思っていた」「とにかく前半は我慢して、劣勢になろうが失点0で後半を迎えると。後半は選手の入れ替えもやりながら、風上に立って優勢に進めたいという狙いに絞った」のだと言う。この“決断”が、かえってチームの戦術を固めさせたのもあったでしょう。藤本はそれを「"割り切る"こと」という言葉で表現する。

「ある程度押し込まれるのは覚悟していて、我慢しながらやっていこうという意思の統一はできていた」と言うのは筑城。「向こうの読みも含めてというか、風の影響を考えてポジションを取って先に飛んだり、どう身体を当てるか、考えながら入りました」とは矢野。そう言うように、ボールが極端に伸びる、押し戻される。ただ、風下が不利かというとそうでもない。むしろ、風下から風に当てるように蹴るロングボールは、絶好の競り合える位置に落ちる。逆に、大分の長めのパスはほとんどが流されてしまいます。

“アゲンスト”と思われる環境に自ら身を置いた熊本は「球際」に厳しくいくことに“割り切った”。ボールに触るためには、まず相手を弾き飛ばしてから。ケガも、ファールも、カードも恐れない。でもラフプレーとも違う。すべての局面でスライディングタックル。ちょっとでも腰の引けた緩いプレーがあると、それは目立つ目立つ。

そして武富が「失点しないことを第一に考えて、取ってから切り替えを早くしていければと思っていました」と言うように、もうひとつのこの試合の大事な課題は「切り替え」。「相手が3バックだということで、我々がボールを保持すると必然的に大分が5枚で守る形を取っているので、そうなる前に早く攻めるというのが、我々の今日の攻撃の中では優先でした」と指揮官は強調する。

その意識は、我慢のはずの前半中に実ります。自陣深くから養父が前方に送ると、斎藤がうまく溜める。全力疾走で追い越して行ったのは吉井。その指さすところに絶妙のパスを斎藤が送るとDFの裏を取った吉井が胸のワントラップでシュート。手を広げるGKの脇を抜けてボールはゴールに突き刺さりました。

総立ちの赤いサポーター。絶叫して歓喜を表す。タオルマフラーをぐるぐる回す。大分のサポーターを沈黙させる。

しかし、これで大分も目を覚ましました。そこにはさすがにリーグ3位の強さと怖さがある。三平こそ自由にさせなかったものの、森島は高くて強い。そこに当てられる石神からの鋭いクロス。前線に人数を掛けて攻めあがる。

そして後半早々。中盤のせめぎ合いから藏川が上がってポッカリと空いたスペースを石神に使われました。石神が素早くグラウンダーで入れる。そこに走り込んだのは西でした。右足アウトで綺麗に流し込んで同点にする。熊本にいた頃よりも数段身体が強くなっていた。相変わらず変則ドリブルは健在。そのうえにうまさが加わっていました。

センターサークルにボールを運ぶ熊本イレブンを見ながら気がかりだったのは、そのメンタルでした。やはり大分は強いと、これで気落ちしてしまうのかどうか。

しかし4分後、熊本は意地を見せてくれます。スローインから藤本が養父に落とす。柔らかい、しかしタイミングの早いクロスを養父が入れると、ファーサイドの齋藤が付いていた三平より高い打点で頭を振った。ボールはゴール左角に吸い込まれる。この大人しい男が、得点の喜びに吼えました。

その後の時間は果てしなく長かった。猛攻を見せる大分に、やはりこのカードはドローゲームが常なのかと正直覚悟しました。熊本にも幾度も好機が訪れましたがそれも決めきれず。しかしなんとか1点差を守りきることができました。

久しぶりにサッカーを見せてもらった。そんな気持ちになったゲームでした。順位や勝ち点差も関係なく、この一戦に向かう両者の意地のようなものを。赤と青で分けられ、声高々に後押しする。「プレミアリーグを見ているかのような感覚」と高木監督がコメントしたのは、そういったスタジアム全体の雰囲気も含めてのことではなかったのかとも思えます。そうでなくとも少なくとも、熊本が同点弾のあと気落ちせずすぐに追加点を奪えたこと、そのあとの長い時間、大分の追いすがりを許さなかった、凌いで凌いで凌ぎきったことは、ゴール裏の声の力だったことは疑う余地もない。

声量や人数を数字に置き換えたのなら、アウェーに駆けつけた大分に、もしかしたら負けていたかも知れない。しかし、この試合の勝利は、「そんな大分の数には負けない」という、間違いなく熊本のサポーターの意地のような力が選手たちを後押しして勝ち取った結果だったのではないかとも思うのです。

北九州戦のエントリーで、「ただただ、ファンにとってはどうしても負けたくない相手がある」と書きました。それはバトルオブ九州という”煽られた”対戦でもなく。「そんな思いは、ちょっと選手たちとも少しギャップがあるのかも」とも。けれど今日は、たくさん押しかけた青いサポーターが逆に火をつけ、選手とファンを一体にさせてくれたような気がします。

意地を見せた今節の勝利。この会心の結果がまた1ページ、赤と青の歴史に刻み込まれます。