2017.03.29 大分戦。連敗
3月26日(日)
【J2第5節】(えがおS)
熊本 0-1(前半0-1)大分
<得点者>
[大]伊佐耕平(43分)
<警告>
[熊]上里一将(23分)、村上巧(63分)
観衆:10,056人
主審:西山貴生


晴天のホームえがおスタ。アウェーゲートの長い待機列は阿蘇の山並みを、ミルクロードを迂回しながら越えてきたサポーターたち。2000名を越えるという青いレプリカユニがゴール裏には入りきれないようにメインにも集団を作っている。そして辛いJ3生活を一年で乗り越えて、この隣県対決を迎える喜びに満ち溢れている。スタンドを真っ二つに分けた鮮やかな赤と青。連戦のバトルオブ九州…。

多分、そういう状況ではなかったでしょうか。すいません、実は現場に行けていません。不覚にも収束間近のインフルエンザに観戦、いえ感染してしまって。高熱との戦いに参戦しており、DAZNで観ていました(笑)。

試合は、対戦10試合負けなしという相性のいい大分相手に初黒星となりましたが、スクランブルなDF体制のなかで苦戦は必至だったものの、どちらかというと”ゴールへの遠さ”のほうに、ストレスを感じました。

CBの一角は前節同様SBが本職の光永。そして出場停止の右SB黒木の代わりには、なんとFW齋藤をコンバートしてきました。いいFWはいいクロッサーでもあり、コンバートの例は数多い。千葉にいて磐田にひとり昇格した中村太亮なんか好例のひとつです。スピードとスタミナに優れる齋藤も面白いと思いました。しかし、急造感は否めず、いいところ悪いところ半々でしたね。ただ、緊急避難的であったとはいえ、今後もオプションが出来たことは、チームとしても、本人にとっても少なくない収穫と思います。それは試合勘を積んで成長著しい光永もしかりでしょう。

前線の先発には巻。前節の受傷で口の中を10針以上縫っているという。顔の腫れはひいているとはいえこれはもう”鉄人”としか言いようがない。以前、クラブスタッフのS籐君が、「巻と清武は頑丈で、多少の打撲はものともしない。骨折以外は怪我ではない」などとは言っていましたが・・・。

20170326大分

ゲームは序盤から、ようやく取り戻した厳しい球際、組織的プレスで熊本がペースを掴みます。右サイド奥で奪ってPアーク前で嶋田が左足で撃つもゴールの右に反れていく。DF竹内のハンドをアピールするものの認められない。

その後も大分を前に向かせない守備。セカンドも拾い続けてバイタルまでは迫るのですが、フィニッシュまでには至らない。そうしているうちに、大分も徐々に守勢を撥ね返していきます。

このまま終えるなら両者互角の見応えのある試合だと思っていた前半も終わり間際でした。それまでもフィールドを大きく使いながら熊本を揺さぶっていた大分。主に最後は右サイド(熊本の左サイド)からゴールを突いてきていました。右サイドを抉ってのクロスにニアサイドからのヘディングはポストに当たり難を逃れますが、それを拾った大分、再び右サイドから松本がマイナスで入れると右45度の位置から後藤がダイレクトで撃つ。正面だったにも係わらず、これをGK佐藤が弾いてしまい、伊佐が詰めてゴールに押し込みます。名手・佐藤にしては痛恨のプレー。

「おそらく熊本さんは前から我々に対してアグレッシブにプレッシャーをかけてくると思っていました」と、試合後に言う敵将・片野坂監督。そのなかで「自分たちのサッカーにこだわ」りたいというのが狙いでしたが、熊本のプレスが少しずつ緩くなる機を逃さずDFラインを押し下げて攻め続けると、起点のボールホルダーへのチェックが甘くなる。そんなスカウティングがあったのかもと。佐藤がこぼす前の後藤のシュートのところに誰も行けていません。

ただ、後半一気に追加点を奪いに来た大分に対して、粘り強くそれに対応した熊本。今シーズンは先制されても気落ちせず大崩れしない我慢強さがいい。

52分には敵GKに平繁がプレスを掛けて奪おうとする。こぼれたボールを林が拾って撃ちますがGKがパンチング。拾って右から今度は巻がシュート。撥ね返されたのをまた回して中央から林が再び撃ちますがクリアされる。惜しい。しかし決めきれない。

その後、熊本は安、グスタボ、岡本と順次前線に投入して攻勢を強め、敵将に「追加点が入らなかったことで、少し苦しくなって熊本さんに最後まで勢いをもたらしてしまった」と言わしめた戦いをしたものの、「なかなかゴールには遠くて。向こうの体を張った守備でしのがれてしまった」(清川監督)。逆転はおろか同点弾のゴールも遠かった。

冒頭書いたように追加点を与えなかった守備より今日は攻撃のところに課題が見えた気がします。ラストパスのところ、クロスの精度、攻撃陣同士の呼吸。決め事というべきかアイデアというべきか…。

バトルオブ九州というより前に、ここでの連敗は避けたかった。順位を15位まで下げてしまいました。次節は黒木が使えるようになり、植田もベンチに戻ってきていますが・・・。

ただ、ベッドに横たわりながら聴いたRKKラジオ「VIVAロアッソRADIO」の最終回。人気コーナーヤスコの部屋で、岡本と黒木が今季の新加入選手12人をひとり一人紹介していく。野村、ヤン、イム、上里、グスタボ、モルベッキ、菅沼(昨季途中加入)、光永、安、林、三鬼、米原・・・。それぞれの特異な能力の紹介を交えながら。それを聴いていたらワクワクしてきました。実際の選手が感じている新加入選手の可能性。あとは監督がどう上塗りし、コーディネイトしていくか。

満身創痍なチームの印象が先立って、リーグ戦はまだまだ始まったばかりだということを忘れていました。次節はJ1降格組の名古屋戦。燃えてきたように感じるのは、これはまだ熱があるせいでしょうか(笑)。

【J2第31節】(大銀ド)
大分 0-1(前半0-0)熊本
<得点者>
[熊]田中達也(90分+1)
<警告>
[大]伊佐耕平(56分)
[熊]園田拓也(22分)、クォン・ハンジン(59分)、齊藤和樹(72分)
観衆:6,890人
主審:荒木友輔
副審:中井恒、勝又弘樹


20150913大分

ヤバイ試合でしたね。

終わってみればシュート数は大分の14に対して熊本はわずかに3。90分間を通して一方的に攻められたようにも感じた。ヤバイ!と感じた大分の決定機が少なくとも3、4度ありました。それをスーパーセーブで防ぎ続けたのがGKのダニエル。シュートに対する反応は半端なくヤバイ。そして後半アディショナルタイムで田中の劇的な決勝点。このアシストの嶋田のパスもヤバイほど凄かった。

現在リーグ最下位に甘んじる大分との九州ダービー。天皇杯の中断を明けてリーグ再開戦。この試合に賭けるホーム大分の意気込みは相当のものがあるはず。そんな予感そのままの序盤でした。

スカウティングどおりにロングボールで押し込んでくる大分。分かってはいたものの、熊本はなかなかDFラインを高く保てない。押し上げようと試みるロングフィードは、大分のCBダニエルにことごとく跳ね返され、セカンドボールもうまく収められない。

拮抗した展開も、前半30分過ぎからは完全に大分のペースに。左サイドから為田。養父をドリブルで抜き去って放った強烈なシュートは、間一髪GKダニエルが片手ではじいて外に出す。その為田、さらに続けて左から突破。伊坂のヒールパスを貰いなおして三平に送る。しかし三平のシュートはアウトに掛かって枠の右に反れてくれる。すぐそのあとも左サイドで為田が溜めたあとのクロス。ファーサイドに走り込んだのはSBの西。至近距離からのダイレクトシュートは、GKダニエルが、大きな体躯で立ちはだかってブロック。神がかっている。まさに守護神。

前半、熊本のシュートは巻が放ったミドル1本のみ。そして後半もこの一方的な流れは続きます。

伊佐のスパイクが額に入って、園田が止血のためにピッチの外にいる間、大分の波状攻撃にさらされた熊本はクリアにつぐクリアで精一杯。大分の右からのクロスをエリア内でバウンドさせてしまい、マイナスに折り返されたところに走り込んだのは兵働。しかし、このグランダーの決定的なシュートもスーパーセーブで防いだGKダニエルでした。

いっこうに熊本にペースが来る気配がない。大分のDFダニエルに自由を奪われている斎藤が珍しくイラついているように見える。熊本は巻に代えて清武、中山に代えて田中を投入。ただし田中をトップに、清武をサイドに。

「田中達也はサイドで使うことが多いんですけれど、トップで使ってサイドに流れるような形、相手がラインを上げてくるタイミングでその裏を衝くということを徹底しようと」(九州J-PARK)とそのポジショニングの意図を語る小野監督。この指揮官のちょっとした閃きが、今日の勝機を呼び込んだ伏線だったと言えるかも知れません。

この二人の投入もあり、終了間際になって少し熊本のペースかなと思われ始めましたが、時間も時間。拮抗状態のまま、今日は引き分けが御の字かとも思ったアディショナルタイムでした。右CKの流れから作りなおして嶋田が右サイドから入れる。左足のアウトに掛けた低いボールに大分のDFもGKも一瞬躊躇したところに飛び出したのは田中。左足で押し込み、土壇場で熊本が得点します。

まさかのような失点に、天を仰ぎ、うなだれる大分の選手たち。残ったわずかな時間、高松のシュートも枠を外れると、大分にとっては勝ち点1さえも奪えない、痛恨の、そして残酷な敗戦となりました。ホームでは決して目にしたくない結末。

「相手は細かくラインを上げ下げすると言われていたので、絶対オフサイドにならないようにと思っていました」と言う殊勲の田中。天皇杯に続き、リーグ戦初ゴールを飾りました。

それにしてもです。圧巻だったのはそれをアシストした嶋田のクロス。いやこれはラストパスとも言うべきか。何と言えばいいのか。通常あの右サイドから入れる左足のクロスならインフロントでゴールマウスに向かって弧を描くボールを送るはず。しかしそれならばDFもGKも対処はし易い。けれど、嶋田が選んだカットを掛けるようにアウトサイドで蹴った低いストレート系の軌道は、前述したように意外性がありすぎて、瞬間、DFもGKもその意図が量りかねたのか、反応できず触れなかった。

「あのパスは自分の得意なキックで、少しアウト気味に入れました。中に3枚くらいいたので、誰か触るだろうというイメージで」(井芹記者@takash_i のtwitterから)という嶋田のコメント。あの瞬間、瞬時にそれを判断した嶋田。そしてそのイメージ通りのボールを出した。今週のベストゴールならぬベストアシストに選ばれそうな。ちょっと”変態”的な雰囲気さえ漂います。そしてそれに呼応したのはFWに入った田中。「ボールが来ると信じてゴール前に飛び込んだ」(熊日)、「慎太郎がいいボールをくれた」(九州J-PARK)と言う。若きホットラインの完成でした。

劇的な決勝弾を目の前で目撃したゴール裏の赤いサポーターたちも嬉しかったでしょうね。羨ましい。あの苦しい90分間の劣勢に、叫び飛び跳ね続け後押ししたご褒美が、この歓喜の瞬間だったのではないでしょうか。

劣勢のアウェー戦。最後は「引き分けでも良し」としようとしていたわれわれですが、この試合を勝ち試合にした意味は相当大きい。なんとかして勝つ。”勝ち切る”という強さが備わった。そういった”経験値”が増えてくれば、何よりチームの実力に”加算”されることは間違いありませんから。

【J2第12節】(うまスタ)
熊本 0-0(前半0-0)大分
<警告>
[熊]齊藤和樹(41分)
[大]西弘則(79分)
観衆:12,770人
主審:吉田哲朗
副審:桜井大介、藤沢達也


こんな順位での隣県対戦になるとは思ってもいませんでした。大分は勝ち点8で20位、そしてわれわれは7で21位と、互いに降格圏を覗く位置。しかし、スタジアムには(動員もあって)1万人以上の観客。大分からもおよそ1,500人のサポーターが阿蘇を越えてやってきて、ゴール裏を青く染めていました。

20150506大分

立ち上がりは互いのチームの状況とスタメン起用の考え方がハッキリ出た展開になりました。不調のなかでも、前節徳島との戦いに追いついてドローにした大分は、「中2日の連戦のなかでメンバーを大幅に替えて、前回(徳島戦)の内容と同じことをフレッシュな選手に求めた」(大分・田坂監督)。それに対して、前節を追いつかれてドローにされた熊本は、そんななかでも得られた手ごたえを大事に、逆に先発を中山から常盤に代えるにとどめた。そんな個々の選手起用やチーム全体のコンディションの違いがはっきと表れた序盤だったように思えます。

大分の猛烈な押し上げ、波状攻撃に対して、熊本はアバウトなクリアに終始する。それに主審の笛の多さも加わって、集中力を持続するのも難しい時間帯。こんなときに耐え切れずに先制点を許してきたのが今季の熊本ですが、今日はここをしぶとく凌ぎきり、自分たちの展開に持ち込んだところが大きな進歩でした。もちろんそこには、前半途中から高柳のワンボランチから上村を加えた4-2-3-1にシフトチェンジした指揮官の好判断も奏功したのですが。

36分にはこの日連続して鋭いロングスローを放っていた鈴木から、常盤が素早く縦に繋いで齊藤がボックスを脅かす。いい連携だ。続いても齊藤からのパスを巻が折り返して常盤のシュートは惜しくもオフサイド。前半終了間際にも上原のFKを園田がファーで折り返し、鈴木がマイナスで入れると齊藤、そして高柳のミドル。そのあとも、カウンターから齊藤のスペースを狙ったサイドチェンジのボール。惜しくも常盤には通りませんでしたが、「ここが合えば」という攻めでした。

その勢いを加速するべく後半開始から熊本は左SB上原に代えて片山を入れます。しかし、ここでアクシデントが起きました。開始早々のプレー。熊本ゴール前でエヴァンドロがトラップしてシュート。これを止めようとディフェンスに入った片山の足がエヴァンドロのそれと交錯。もんどり打って倒れる片山。痛いのか悔しいのかピッチを叩く。すぐにチームメイトがベンチにバツを示します。

すぐに養父が右SBに入り、鈴木が左にまわります。練習試合では試されたこともあったとのことですが、公式戦では初めてみる養父のSB。まさに総力戦の雰囲気。

その後はそれほど見せ場があったわけではありません。互いの順位が物語るように、攻め上がりのなかでのミスもあれば、フィニッシュの精度の課題もあった。ただ、この試合で絶対勝ち点3をもぎ取るんだという大分のエネルギーは相当なものがあったし、連戦の中日、それを跳ね返すのに精一杯の熊本だったのかも知れません。

アディッショナルタイムには、カウンターから大分・西のシュートが左に反れ、対して熊本は黒木から田中、左から撃つも枠の上に外れる。最後までどちらに勝ち点3が転がり込んでもおかしくなかったのも確かです。

スコアレスドローという結果とはいえ、潜んでいた両チームそれぞれの”苦しい状況”、そのなかでの ”熱いプレー”は、きっと1万人の観衆に伝わったのではないでしょうか。熊日はそれを観て「戦う姿勢 チームに戻る」と見出しを付け、九州J-PARKで井芹さんは「自信も掴んだスコアレスドロー」と詠いました。なにより大分の開始早々の勢いを凌いで、第4節福岡戦以来続いていた連続失点を、クリーンシートに収めた結果は大きい。

確かに片山のケガの程度は心配ですが、あのプレー。今日のゲームを象徴するようなものでしたね。怖くて行けないようなところに、敢えて行く。勇気を持って行く。他にも同じようなシーンが幾度も見られました。肉を切らせて骨を断つ。そんなギリギリのプレーでなければ、相手を紙一重で上回ることはできない。

これをベースにできるのか。崩れない土台を構築することができてきたのか。連戦のなかではありますが、そこが注視すべきところではないかと。みなさんはどのように感じられているでしょうか。

9月6日(土) 2014 J2リーグ戦 第30節
大分 0 - 1 熊本 (19:03/大銀ド/20,636人)
得点者:80' アンデルソン(熊本)


「総力戦」と銘打たれた年に一度のホーム大分の大イベント。今日のバトルオブ九州、たまたまでしょうが、そのタイミングに重なってしまいました。2万人以上が埋め尽くした大銀スタジアム。”隣町”とあって、熊本からも多くのサポーターがゴール裏を赤で埋めたものの、騒然としたその雰囲気に、ベンチからの指示は全くピッチ上の選手には伝わらないような状況でした。

ここまでの大分との対戦成績は2勝5分。たしかに負けなし。悪い印象はないにしても、相性がいいという印象もない。なにか勝ちきれない、決着がついてない感じとでもいうのか。それは、過去のスコアが物語る。新しいほうから言えば、1-1、2-1、0-0、2-1、2-2、1-1、0-0。どれもロースコアで勝ちゲームも一点差という状況。全く互角だとも言えました。

そして、大分のここ5戦は、天皇杯で鳥栖に黒星を喫した以外は、リーグ戦負けなし。大宮から補強した新加入のハイタワー・FWラドンチッチが、得点源になっている。

20140906大分

ゲーム序盤、やはりラドンチッチにボールを集め、攻め込む大分。前節、札幌戦である意味“高さ”に屈した部分もあった熊本。今日は、さらに高く屈強な大分の前線のターゲットに加え、「威圧感を感じた」(小野監督)というアウェイ2万人の大声援。「プレスに行く前に前線に送られ、セカンドボールを拾われてしまいました。」(小野監督)という大分の戦術もあって、ちょっと浮足立った熊本の立ち上がりでした。

しかし前半20分頃、仲間がPA内でドリブル。一人交わして、この日チーム最初のシュートを打ったあたりから、徐々に落ち着きを見せ始めた熊本。その後何度も大分ゴールを脅かし始めます。ただ、決定機には至らず。尻上がりに熊本優勢という印象で前半が終了。

そしてハーフタイムを挟んで戦局は大きく熊本に傾いていきますが、この間の戦術的な分析で両監督の見立ては完全に符号しています。

小野監督は、「ラドンチッチ選手はJ1、J2を含めて、あの高さは圧倒的」と見ていました。その対策として指揮官は、「高さで対抗するために背の高い選手を並べる」のではなく、「サイドバックを高い位置に上げボールを動かし、相手にボールを入れさせない」という方策を選びました。そして、「純粋に高さで勝負するよりそっち(ボールを動かす方)で対抗できるメンバーを選びました」という。

対する大分・田坂監督。「…センターバックの間にボランチを入れ、サイドバックを上げて押し込まれました。前半からその傾向はあったのですが、後半はもっと積極的に来た。」「相手と同じようにサイドバックを上げてミスマッチを作れば良かったのだが。そこに差が出たのだと思います」と言う。

ここに、この試合の勝敗を分けた戦術の”分水嶺”があったようです。

大分はあくまで、ここまで得点を量産したラドンチッチにボールを集める戦術に固執しました。確かにラドンチッチは、その高さから前線でボールを落とせる。けれど、そのパフォーマンスには、徐々に翳りが。しかし、大分はあくまで固執しました。

それに対して熊本は、小野監督がハーフタイムに、「ロングボールを競る選手とセカンドボールを拾う選手の修正をし、ハイボールに対して怖がらないように」指示した。

「サッカーは90分で様々な場面の中でプレーの選択が必要ですが、今日は90分間同じペースでやってしまった」とも反省する坂田監督。指揮官の意識と、ピッチ上の選手と、イメージが少し違っていたのかなと思わせるコメントですね。

スカパー解説も今日の養父のパフォーマンスを絶賛していましたが、われわれから見ても、中盤の底からトップ下まで、自在に動き回り、ワイドなボールの配球は今日の熊本の戦術を体現していました。ここまで自由を与えられることはあまりないのだけれど、と思っていましたが…。「ウチはある程度セットして守るのでボランチが空く。」と大分・高木和道選手が言うように、後半は熊本が大分陣内を脅かす時間が増えていきました。

前節、札幌の高さに完敗した熊本のDF陣。都倉に対していいところなくやられてしまった橋本。今日のラドンチッチをどう封じていくのか、相当な覚悟で臨んだに違いありません。先の小野監督の指示通り、ある時は厳しくからだを当て、競り負けてもセカンドを予測した連携でほとんど仕事をさせませんでした。

後半に入ると、熊本のプレッシャーはさらに激しさを増していく。大分の選手のプレーに少し嫌がっているような素振りが感じられる。

しかし、ほぼ主導権を握り続けるが、幾度も訪れる決定機を決めきれず。大分のゴールをこじ開けることができない。さすがに誰もが嫌な雰囲気を感じはじめた80分。今日の基本戦術の集大成のような展開。大迫に代わって入ったばかりの黒木が、高柳からもらったパスを中に入れる。齊藤のヘッドがミートせず。DFからの跳ね返りを、養父が拾ってミドルで撃った。これには大分・GK武田も弾くほかなく、それを見逃さなかったアンデルソンが、瞬間押し込む。熊本が先制。アンデルソンはチーム加入後二試合目、初先発で貴重な決勝ゴールを奪います。

1点リードで残り10分。さて、多分、本当の勝負所はここから。熊本のファンなら誰もがそう思ったでしょう。これまでこんな展開でどれだけ勝ち点を逃してきたことか…。大分は完全に足の止まったラドンチッチを引っ張り、さらには高松を投入してさらにパワープレーを前面に押し出してきます。

ただし、今日に限っては流れのなかではチームの意思は整理されているようで、そこに危うさは感じませんでした。「これまでリードすると下がって起点を作らせたのですが、最後までプレッシャーをかけ、ボールをつないだ選手に感謝したいです」(小野監督)。「リードしてからも守りに入らず、それまでの流れのまま行けたことも良かったし、最後の方は皆が体を張っていた。キツい中でもすぐ切り替えて戻ってきてくれたので、自分としてはやられる気はしなかった」(畑実)。

しかし、それでもセットプレーのピンチは避けられず、最後のワンプレーが相手のCKなった場面は、小心者と笑われるかもしれませんが、“ああ、やっぱりやられたな…”と目をつぶってしまいました。

さて、アンデルソン。初得点より何より。こんなことで驚いてはいけないのですが。32歳のブラジル人FW。20チーム以上を渡り歩いた百戦錬磨のベテラン。Jリーグでは36点目となる得点を、この日、熊本の歴史に刻みました。「今日の試合では起点になり、後半はクリアボールをおさめ、踏ん張ってくれました」(小野監督)と、チーム戦術に忠実に、それも時間を追うごとに、終盤になってさらに、前線からの守備に献身しました。

本人も「ここまで、チームのスタイルに自分を合わせるのに時間がかかった」「チーム全体がハードワークできたし…」「これからもトレーニングからハードワークを続けるのが大事なことだと思う」と。

結局、その高さということもあって、90分フル出場してしまいました。まだまだ、連携という点では噛み合わない場面のほうが目立ちましたが、間違いなく前線に1枚、強力なカードが加わりましたね。

今日のゲーム。チームの基本戦術で押していくのか、それともまずは相手の高さ対応なのかという選択のなかで、基本戦術をこれまでにないくらい徹底し、それによって相手の高さという強味までも消し去ろうというゲームプランで臨んだ熊本。

実際の超大型FWの迫力は想像以上でしたが、足が止まるのも早かった。「ラドンチッチは守りがおろそか」(橋本)との見切りもあり、高さ以外の武器で無力化することに成功しました。

“戦術がはまった”とかいう表現では語り尽くせない、熊本にとっては、まさに今日の「総力戦」のタイトル通り、知恵も体力もすべて出し尽くしてもぎ取った勝利のようで…。リーグ戦も終盤に差し掛かります。順位はこの勝利でふたつ上げ16位となりました。こうやって毎試合が今シーズンのベストゲームに思えるような、そんな流れになっていけば、嬉しいですね。

3月22日(土) 2014 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 1 大分 (15:03/うまスタ/9,492人)
得点者:54' 澤田崇(熊本)、86' 後藤優介(大分)


20140322大分

開始早々からオープンな展開でした。大分の周知のドリブラー西が突っかければ、こちらはルーキーの澤田が長い距離を持ち上がって、ファーストシュートを放つ。DFラインを高くしてコンパクトな陣形でボールを運ぼうと意図している大分に対して、橋本のタックルと養父のパスカットがはまり、素早く大分の裏のスペースを狙う。大分にゴール前で回される時間帯もありましたが、サイドで完全に詰まってしまって危ないシーンはなく。お互い綱引き状態で前半を終えました。

先制点は熊本。後半54分。中盤での攻守の激しい入れ替わり。奪った熊本がワンタッチで前に運ぶ。澤田から左に走った齊藤へ。齊藤が大事にマイナスでパスを出すと、仲間がダイレクトでシュート。ゴール前でDFを背にしていた澤田に当たって、ゴールに吸い込まれました。

この試合で最も印象的だったのは、前半36分。ピッチの中央付近で引っ掛けられて倒された養父。倒されて仰向けの姿勢のまま、足元にあったボールを、素早く右サイドを駆け上がっていく味方にリスタート。さすがに審判はこのプレーを認めなかったけれど。なんか隔世の感が…。思い出すのは「2009.08.11 再び完敗。徳島戦」。審判の判定に抗議しようとしている隙に失点してしまったあの試合。あのときとはチームも変わったし、サッカーも変わった。そう痛感したシーンでした。

変な言い方かもしれないけれど、選手は、切ないくらいに、ゲームに忠実に、相手に対しファイトしました。J1からの降格チームである大分を圧倒し、ゲームを支配したと言えるのではないでしょうか。

それも、戦術的にとか、相手の良さを消した、とか言うことではなく、物理的に。球際において、ボディコンタクトにおいて、集中において、切り替において。戦う意思において。

試合終了後、青く埋め尽くされた大分のゴール裏からは、激しいブーイング。大分からすれば、ギリギリの時間帯で追いついて、アウェーで勝ち点1は“悪くない”でいいじゃないか、と思ってしまいがちですが。降格チームにとって熊本はあくまで格下。“こんなところでモタモタしてる暇はないぞ”という思いなのでしょうか。

ピッチ上では、一目瞭然。「われわれのサッカーをさせてもらえなかった」(大分・田坂監督)ということなのではないか。

最近、思うのですが…。「サッカーのファンというのはつらいことのほうが多くて…」という記事は、ここでは何度も書いていますが、ここ数試合、職場の仲間とも、どうも結果だけではないよね、みたいなことを話したりしています。もちろん結果は何より重要なんですが。とても微妙な感覚で説明しにくいんですが。「昨年と比べることもないけれど、今季のロアッソの試合は楽しめる」。そんな拍手コメントを頂戴したりもしています。

最後の最後に、「勝ち」が「スルリ」(熊日)と逃げていってしまったわけですが、それでも、そこからのわずか残り時間、追いついた側の勢いをガッチリと受け止め、すぐさまそこから巻を投入し、黒木のあわやのシュートで流れをもう一度引き戻した。

監督ひとりが、選手ひとりが、それぞれに戦うという意思を持つのは当たり前なんだけど、それがチーム全体で常に高いレベルを保っていられることだったり、失点してモチベーションがガクッときても、それを一瞬で取り戻せたり。“選手が下を向かない”ことが伝わってくる。だから結果とは別に、決して負けてない状態で試合が終わる、そんな感覚。一週間をみじめな思いで過ごすことがなくなった感じです。

小野監督は、これまでの3試合からスタメンを変えてきました。FWに澤田、2列目に五領。「正直、誰を出してもいけるなというくらい、1人1人、トレーニングを見ていても非常に元気よく、いいパフォーマンスを発揮してくれてます」。そう監督は言う。

久々のスタメンの五領。与えられたチャンスをものにしようという必死のプレーが伝わってくる。こんなに足が速かったか?と思うくらい右サイドを完全に支配。行けるところまでいく。そんな攻守にわたる運動量。大分との“バトル”にスイッチを入れたのは、間違いなくこの男でした。勝っていれば、間違いなくMOMに推したいところでしたが。

澤田。期待のドリブラー。試合の展開もあったが、ほぼ90分間、前線で走りきれることを証明した。サッカーライターの小宮良之さんは自身のtwitter(https://twitter.com/estadi14/status/447314821331959808)にこう書いてくれています。「ナイフの切れ味で、敵守備陣の肌を切り、確実にダメージは与えた。あとは骨を断てるか」と。

とは言っても、現状17位。まだまだ順位をうんぬんする時期ではないにしても、厳しい戦いが続きます。次節はフクアリでの千葉戦。われわれにとって最悪なイメージしか残っていないこのシチュエーション。多分、この戦いがチームの今を見せてくれる、序盤戦の一番のゲームだと思います。