7月24日(日) 2011 J2リーグ戦 第22節
F東京 5 - 0 熊本 (18:34/国立/18,195人)
得点者:44' ロベルトセザー(F東京)、48' 羽生直剛(F東京)、67' 谷澤達也(F東京)、73' 徳永悠平(F東京)、87' ルーカス(F東京)


熊本にとっては初見参となる国立競技場で、FC東京との2度目の対戦は、おもいもかけぬワンサイドゲームになってしまいました。堅守を誇ったチームが5失点。それも同じくリーグ1の堅守を誇るチームから突きつけられた現実は厳しいものでした。

前回対戦時は0-1の惜敗。そのときのエントリーを読むと「最後まで自分たちのサッカーで互角に戦った」と書いています。しかし同時にいかんともしがたい「個の技術の差」についても触れていました。前節から首位に立っているFC東京は、あの試合が浮上のきっかけになったという。熊本が浮上のきっかけを与えてしまったツケは、積もり積もってここで支払うことになってしまいました。

FC東京
 9ロベルトセザー 
 22羽生 
27田邉39矢澤
10梶山4高橋
14中村2徳永
6今野3森重
 1塩田 

熊 本
9長沢 27ファビオ
7片山14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王2チョ・ソンジン
 18南 

彼我の力の差が大きいことは指揮官もわかっていたと思います。しかし、真正面からいくしかないということも。開始早々押し込んだ熊本は、原田が高いクロス。それを繋いで落ちたところにエジミウソンのシュートは惜しくもバーを越える。立ち上がりはよし。という感じでした。

しかし、中盤からどんどん上がってくる東京に対して守備組織が後手にまわる。スカパー!解説の元FC東京監督・城福氏が、「熊本はボールの奪いどころがはっきりしない」と指摘したように、ジリジリとバイタルエリアを広げてしまう。東京は昨年の柏のようなチーム。とにかくミスがない。半端なプレスではパスミスをしてくれない。前回対戦時は「熊本得意のプレスがうまく“はまらない”。組織的な守備がかみ合わない」「うまく剥がして攻撃を組み立てる」と書きましたが、剥がされるのではなく、一瞬にしてタテにスピードアップされて置いていかれるという感じ。結果、怖がってプレスに行けなくなる。セカンドが全く取れなくて更に一方的になってしまう。余裕をなくしているので、セカンドが読めていないという悪循環。

試合開始直後にエジミウソンがベンチに対して何か懸命に確かめようとしていました。多分、試合前の想定と大きく違っていることがあったのか。しかし、あの瞬間に修正できるような対応力を求めるのは酷だったでしょう。とにかく前半は、凌ぐしかないという展開でした。

ただ、前半終了間際の退場劇までは、南の好守もあって千葉戦のようないくら撃たれても、入りっこないというようなリズムになっていたのも事実。FC東京の大熊監督も、試合後「攻撃に関しては、0-0で前半を折り返してしまうと、サッカーなのでわからなくなる。ああいったPKがあって、相手が10人にならなければわからない展開だった」と述懐しています。

強くプレスに行けない理由は、もうひとつありました。この試合がJで初めての笛というロバート・マッドレーというイングランドの審判。その判定の基準がわかりにくいという不安、躊躇。試合が進むにつれ接触プレーでは割と積極的に笛を吹くということがわかってきましたが時既に遅し。FC東京に完全に支配されたあとでした。

最初の根占のプレーに対するPKの判定は実に微妙でしたね。思い浮かんだのは、アジア杯準決勝の韓国戦。ロングボールを追うパク・チソンに、今野が同じようにショルダーチャージでPKを与えたシーンでした。あのときの解説者は「ショルダーはショルダーだけど、今野はボールを見てなかったということかな…」。そう言っていた。今日の判定はどうだろうかと。とにかく、一発レッドは全くの論外でした。よりによってこんなゲームで“研修”とは。

ゲームプランはこれで完全に崩壊しましたね。「(FC東京は)11人でやっとという相手だと思います。1人少ない状況では、思うようにゲームコントロールができなかった。やはり、自分たちが思い描いていたゲームにすることが不可能だった」と言う高木監督。しかし2点目を奪われた後、ソンジンに代えて矢野、武富に代えて松橋を入れ、4-4-1から3-4-2に変更したあたりは、少し中盤でボールが持てるようになった。ただ、3バックのリスクはいかんともしがたく、カウンターぎみの東京の攻撃、谷澤のドリブルをCBに入っていたエジミウソンが倒して再びPKを与えてしまいました。

その後は完全に東京のモード。バイタルエリアの狭いところを鋭くパスで通しているように見えますが、実は熊本の守備が厳しく行けていないせいでもある。そこを見計らって徳永がミドルシュートで4点目。手を休めない東京は、復帰したルーカスを投入。梶山からのクロスを右足でピタリと止めると、すかさずアウトに蹴りこみ5点目としました。

結局は”止める、蹴る”がすべて。大熊監督が最後のルーカスのゴールを褒めて若い選手にも見習ってほしいと言っていたのもその点だし、高木監督が”質の部分に差がある”と言っていた点も、結局そこに集約されそうです。

われわれから見ても、これまで広島にも、C大阪にも、柏にも感じたことのない差を感じたのは事実。まあ、必ずどこかで突き当たることだし、場所も国立。J1の雰囲気をはっきりと感じたということでしょう。いや雰囲気どころか、広島も、C大阪も、柏も昇格後、J1上位を占めたように、このFC東京は間違いなく今のJ1でも上位のパフォーマンスだと思います。

ミスがあって負けたわけではない。メンバーがそろっていなかったわけでもない、コンディションに問題もない。ひとつひとつのプレーで負けたわけで、とてもわかりやすい。容易ではないが、質の高いワンプレーを積み上げていくしかない。そう思います。

最近、あまりにも引き分けが多い戦いで、何となく感じていた閉塞感、不完全燃焼。これがすっきりとしたようにも感じます。前回対戦のとき書いた「シーズンを通して“積み上げ”、“成長”していく」ということからすれば、あの対戦から1ヵ月半の間に、更に東京に大きく水をあけられていたのだと。もちろん、この結果を消化して、前に向くには時間がかかるでしょう。しかし、このゲームは、熊本が次のステージに行くための(ステップアップとも違う)、大きな技術・戦術のレベルアップを迫るもの。指揮官の「クオリティーの部分、質の部分ではもっともっと突っ込んだトレーニングをしていかなければいけない」というコメントに決意が滲んでいると思います。

今回ばかりは、長いシーズンこんなこともあるとか、サッカーはこんなもんだとか、切り替え切り替え! などということで通り過ごしてはいけないとも思いました。横浜FCや甲府、湘南や徳島などなど、過去大敗を喫した相手にも、必ずその差を少しずつ縮めていったように。いつか必ずFC東京に…。その思いはわれわれにも必要だと思います。



6月12日(日) 2011 J2リーグ戦 第16節
熊本 0 - 1 F東京 (19:04/熊本/5,204人)
得点者:20' ロベルトセザー(F東京)


大雨警報発令中の熊本。試合は中止ではなかろうか思っていました。まさかあれだけの長時間、降り続いた大雨、さすがのKKのピッチも冠水状態では?とも想像していましたが…。しかし何のことはない。前半こそ、激しい雨の時間帯に、一瞬ボールが水しぶきをたてていたぐらい。芝が剥げるどころか、逆に鏡のようなピッチコンディション。これはもう、すごいとしか言いようがありませんでした。このKKウィングというスタジアムの基本設計の確かさと、日頃の整備に脱帽、感謝ですね。しかも、避難勧告も出る豪雨の中、スタンドも閑散かと思われましたが、駐車場は満杯。5000人を超えるファンが詰めかけ、これにも正直驚かされた。(われわれと同じような)サッカー馬鹿の多さに呆れてしまいそうです。

そして、こんな大雨とは予想しなかっただろう東京サポ。楽しんでいましたね、サッカーを。ゴール裏ゲートからの登場には、昔、東京キッドブラザースがやっていた「ハーメルンの笛吹き男」の場面が思わず浮かび(古い!)、懐のあるユーモアやウィットを感じさせました。思えば、07年の天皇杯準々決勝「広島・FC東京戦」がここKKウィングで行われたときも、東京サポは同じように登場してきた。時節柄、みんながサンタクロースの格好でした。あのときは、Jリーグチームのサポーターってただただすごいなと素直に感動していた。しかし今、ホームに迎える公式戦の対戦相手なのです。

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

FC東京
 9ロベルトセザー 
 22羽生 
39谷澤27田邉
10梶山4高橋
14中村2徳永
6今野3森重
 20権田 

今や日本代表の不動のCBとも言える今野、そして各年代代表でもあった森重が守るFC東京の最終ラインはとても高い位置にある。自然、熊本は押し込まれます。20分、左サイドで与えたFKからの流れ。ゴール前に上げられたクロスに対してはヘッドで競り勝ったものの、こぼれたボールが詰めていたセザーの元へ。これをダイレクトに打たれて先制を許してしまいました。

しかし、その後は熊本も反転攻勢。徳永のクリアボールを拾った長沢がフリーで打つ。あるいは大きなサイドチェンジから市村がエリア内に持ち込む。原田のクロスから長沢が繋いで右から根占など、東京ゴールを襲います。先制されても千葉戦のときのように、追いつくのは時間の問題。そんな雰囲気さえ感じられたのですが…。激しく降り続く雨は、選手に“重く”のしかかっていたようです。この悪環境下では、やはり個の技術の差が浮き彫りにされたのではないでしょうか。まさしくスカパー!!解説者の池之上さんが言うように(パスを受ける側の)「右足なのか左足なのか。どのタイミングなのか、そこのところ」といった紙一重の差が。

後半に関していえば、熊本得意のプレスがうまく“はまらない”。組織的な守備がかみ合わない。と言った印象。そこをうまく剥がして攻撃を組み立てるFC東京のうまさ。あるいは熊本の最終ラインにボールを回させて、奪いどころを狙っているような。目指しているサッカーのお手本を見せられているような気もしました。それでも熊本は、よく我慢してチャンスをうかがったと思うし、決定機も作っていた。しかし、その絶対数が少なかった。こちらがミスをしてチャンスを潰していた場面も多かったし、アイデアが足りない部分も見えました。この後半には反省材料がてんこ盛りでしょう。

それにしてもまたセットプレーからの失点だということが残念です。今季の6失点のうち、草津戦の1点以外はすべてセットプレーから(その草津戦もスローインのリスタートからだったんですが…)。何かが緩んでしまうのか? あるいは数的優位を作って守り、シュートを打たせない確率論のサッカーで、セットプレーではそうはいかないからなのか? きっちり守っているのでセットプレーを与える機会が増えるからなのか? 逆に、今シーズン、セットプレーからの得点が、未だに無い。これも何なのか? 課題は尽きません。

U-22代表の正GK権田の力量にも感心させられました。最後アディッショナルタイムの好機も潰され。その反応と安定感。権田と南。Jリーグ全体を通しても屈指のGK同士の“締まった”ゲームだったと言えるのかも知れません。

「今日のゲームの攻撃に関しては、とにかく自分たちのサッカーをやってみろと、そういう意味でのトライをして、よくやってくれたと思います。」敗れはしたものの、高木監督の言葉には一定の評価とどこかしら満足感も感じられました。

「特別なことは僕自身もやってないですし、選手も決定力を高めるとか、百発百中のストライカーになれというのは難しいことなので、今やっていることを継続してやっていくことが重要なことだと思います。このチームはそうやって少しずつ良くなっていくとか、悪い部分は修正していくことが必要なので、それで安定性が出るようにやっていきたいなと思います」とも。

先制した試合はいい結果に繋がっている。先制されても2点目は取られていない。2点目をとられなければ、サッカーはどう転ぶか最後までわからない。それは今日の試合もできているわけで。「切れて」「混乱して」大敗を喫してしまう、そんな試合になるどころか、最後まで自分たちのサッカーで互角に戦った。同じJ1級のスター軍団だった柏と昨年対戦したときと比べ、内容が全く違っているのは確かです。

長いシーズン、どんなチームにも好不調の波が訪れる。この指揮官は、むしろ好不調に左右されない安定性から土台を作っているのかもしれません。それはいわばシーズンを通して“積み上げ”、“成長”していくということなのでしょう。その成長を測るうえで、今のFC東京は格好の判断材料だったと思います。もちろん勝ちたかった。たった1点差を覆せなかった。ではその1点の差以上に力の差があったのか、なかったのか。それは観る人によってもまた違ってくるでしょう。ついつい“決定力不足”などという言葉を使って総括したり、比べたりしがちですが…。

「ひとつの場所へたどりつく道はひとつではない」(ドラマ「クリミナル・マインド」シーズン1#16)―などどいう格言を無理やりですが引っ張り出してみました。熊本は熊本なりの道をたどって行けばいい。このチームの成長のあり様をシーズンを通してしっかりと見届けたい。そう思います。