2017.09.05 町田戦。連敗
9月2日(土)
【J2第31節】(えがおS)
熊本 0-1(前半0-1)町田
<得点者>
[町]戸島章(8分)
<警告>
[熊]三鬼海(76分)
[町]深津康太(28分)、増田繁人(51分)、谷澤達也(70分)、鈴木孝司(89分)、吉田眞紀人(90分+3)
観衆:3,944人


われわれの下手な文章をどんなに綴るよりも、勝利こそ「拍手」数に影響するというのは百も承知ですが、そんななかでも毎回「拍手コメント」を送っていただく“ゆうらん”さん、ありがとうございます。

また負けてしまいました。

今節の0-1は、力の差どおりの点差でした。同点に迫る攻撃も見せたのですが、逆転できるほどの勢いはありませんでした。これで5試合得点もなし。ゴールが遠い。

負け試合のシーンを細かく書いてもしょうがないので、今週も簡潔に振り返ります。

20170902町田

これまでの「入りの悪さ」を払しょくするようなスタートではありましたが、それが持続しない。ボールサイドに人数を掛けてくる町田に対して、大きなサイドチェンジでスペースを突くという意図は、最初から感じられましたが、片山が相手に入れ替わられたあたりから、様子がおかしくなってきました。

「やはり早めにクロスを入れてくるな」と思っていると、右サイドで作って入れたクロスが、この日の強風に煽られてGK畑はパンチングで逃れる。それを左サイドで作りなおして井上が入れ直すと、中央で長身の戸島がほぼフリーの状態でヘディング。ゴールに転がり込みます。DFラインを上げ切れていませんでした。

早々と失点。

しかし、普通なら「まだ十分時間はある」と考えるものですが、今の熊本のメンタルではそう思えなかったのか。「1点がかなりビハインドとしては重い感じになったゲームだった」(熊本蹴球通信)と池谷監督は言う。

ただ、前半も左サイドをえぐった片山からのクロスのクリアを拾った黒木が中央で撃つ。DFに当たったこぼれ球を安が拾ってGKと1対1。これはGK高原のビッグセーブというシーン。あるいは後半も、スローインから巻が繋いで、ニアの安が反転してシュート。こぼれをファーの片山がシュート。このGKブロックの跳ね返りを上里が放ったヘディング。これはゴールマウスに立っていたフィールドプレーヤーに跳ね返されたシーンなど、冒頭書いたように、同点に迫る決定機もいくつかあったのですが…。

指揮官は、「攻撃の3分の1に入っていったときの冷静さや余裕が無い」(同)と悔やみますが、それよりわれわれが問題視したいのは、サイドからアタッキングサードに運んでからの手詰まり感。町田が次々に入れ代わり立ち代わり選手がスペースに動いて崩す、いわば身体が覚えているようなオートマティズムを見せるのに対して、熊本は動かず足元のパスを求めるので楽に奪われてしまう。ここに点差どおりの“差”がありました。

この部分を選手たちのアイデア任せにしていては苦しい。練習で出来ないことが試合で出来るとしたら、それはまったくの幸運でしかないわけで…。

監督交代からまず守備の再構築から取り掛かったので、そこには“ツケ”が回っているのかも知れませんが。

ただ、もはやこの時期。「点が取れないという中で、攻撃にテーマにシフトするのかどうかという課題もあるんですけど、この1週間、もう一度、守備の湧き出てくるようなパワーというものを呼び起していきたい」(同)という指揮官の言葉には賛成です。この試合もセカンドボール争いでことごとく負けていましたので。

そして、順位が近い他チームとの勝ち点差を今日はくどくど書きませんが、「一つ、二つ勝てば抜け出せるということではなくて、残り11試合、最後まで厳しい状況の中でやっていく」(同・池谷監督)という言葉にも賛成します。

ただ、「逆にそういう部分を楽しんでいけるような」(同)という気分には、われわれファンはなれませんけれど…(笑)。

2017.05.05 連敗。町田戦
5月3日(水)
【J2第11節】(町田)
町田 2-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[町]戸島章(42分)、井上裕大(78分)
[熊]齋藤恵太(62分)
観衆:3,853人
主審:佐藤誠和


負け試合なので短く。

20170503町田

勝ち点12で順位も15位と近いところに位置する町田とのアウェー戦でした。2連敗中の町田は、試合開始から風上を利用して一気に攻めてくる。それに対して「前半を無失点でいきたかった」(熊日)という清川監督は、それが当初からのゲームプランだったのか、状況を見ての感想なのか、なんとも消極的に感じます。

14分には町田GK高原のロングキックを戸島が頭で落として前に出すと、FW中島がPエリアに侵入してシュート。これはポストの右に反れて事なきを得ました。

前節まで、短く繋いでボールを動かすことに専念していたのに、この日の熊本はDFの裏を狙いたいのかロングボールを多用。しかし、逆風で押し返されるばかり。

「セカンドボールが拾えた部分で点が取れた」(DAZN)と、前半を終えた時点で相馬監督がインタビューに答えたように、ボールは完全に町田が支配し、一方的ともいえる攻勢。42分に町田は、右サイド奥に吉濱が運ぶと、囲んだ熊本の二人のDFに対してヒールパスで出す。拾った大谷がすかさず右から低いクロスを送ると、ゴール前で死角から入り直した戸島が頭で反らしてゴール左隅に流し込みました。

この試合で勝敗を分けた”セカンドボール”の争い。ハーフタイムのロッカールームで清川監督も「セカンドボールを緩めないこと」(DAZN)と檄を飛ばします。そして「背後を狙っていこう」と。

それが実ったのが62分。右SB黒木の自陣からのロングボールが、高い町田のDFラインの裏を取った齋藤に収まり、一気にスピードに乗ってドリブル。GKの飛び出しを冷静に見極め、ゴールに押し込み同点とします。

しかし町田も諦めませんでした。78分、左CKからの展開。途中から入っていた井上が、クリアを拾うとゴール前に入れる。ゴール前で深津が足を出しましたが直接ゴールイン。深津が触っていないまでも、完全にプレーに関与していたので、オフサイドかと思われたのですが、ゴールが認めらました。

前節の”急造”感と違って、この日のGK野村は落ち着いて守っていました。2度ほどファインセーブもありましたが、このシーンは一歩も動けず。「目の前に相手選手がいて、その動きにつられてしまった」(熊日)と言う野村。まだまだ試練は続きます。

熊本は林、モルベッキ、田中を途中投入しましたが、生かしきれず。敗戦となって、順位は18位のまま。逆に町田を12位に押し上げました。

勝敗を分けたのはセカンドボール争いと書きましたが、逆風の前半にロングボール一辺倒だった戦術も解せません。齋藤の一発が決まったものの、その速さや、グスタボの身体能力、いわば”飛び道具”に頼るばかりのように見えた。熊日は「気になるのは、試合を通じて攻撃の形をほとんどつくれなかったこと」と書きましたが、全く同意です。

次節、ゴールデンウィークの最終日は、再び中三日でホームに現在最下位の群馬を迎えますが、このままの戦い方ではかなりの苦戦が予想されます。奮起を!

まず最初に。
今月15日の熊日朝刊で、荒木時彌さんの訃報に接しました。元県サッカー協会長。大津を“サッカーの町”として発展させた元町長でもあり、この人がいなければ今の大津高校がこんなに強豪校にはなれなかったとも言えます。そしてなにより、株式会社アスリートクラブ熊本の初代社長として、その人望のもとにロッソ熊本(現ロアッソ熊本)の設立に貢献していただきました。2008年5月のエントリーで「初代社長・荒木前サッカー協会長が立ち上がりの急場をしのぐ形で就任されました。健康面の不安もありながら(大津町長を退かれたのもそのあたりがあったと聞いています)、これも本当に無理を押してつないでいただいた。そしていよいよ九州リーグがスタートというタイミングでグランメッセ理事長を満了した前田社長にバトンタッチされた…」と書いています。謹んでご冥福をお祈り申し上げますとともに、生前のご労苦に対し衷心から感謝申し上げます。

さて、今節アウェー町田戦は、0-1の敗戦でした。

10月16日(日)
【J2第36節】(町田)
町田 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[町]松本怜大(48分)
<警告>
[町]畠中槙之輔(90分+1)
[熊]齋藤恵太(42分)、巻誠一郎(74分)
観衆:4,218人
主審:上村篤史


20161016町田

試合開始から、右サイドアウトの齊藤のスピードを生かしCKを得る熊本。5分頃には、アーリークロスをワントップの清武が落として、菅沼がDF右の裏に絶妙のスルーパス。齋藤がGKと1対1になるも、このダイレクトシュートを吹かしてしまいます。しかし、前線の3人の距離感はいい。

対する町田も右CKを得ると、一旦ファーに抜けたボールを中島が入れ直す。ヨンアピンの強烈なダイレクトシュートにヒヤリとするものの枠の上に反れました。セットプレーでの得点数は現在リーグ中2位なのだと、スカパーのアナウンサーが紹介する。

すると直後の16分。小谷と植田の間に蹴られたロングボールに、一気に加速して駆け込んだ仲川のスピードに慌てた小谷が、エリア内で倒してPKの判定。キッカーは場数を踏んだ中島でしたが、これをGK佐藤がぴったりと読み、左に飛んだ。しっかりとキャッチして町田の先制点を阻止します。

これで勢いに乗るのは熊本の方のはずだったのですが、町田の厳しいプレスに押し込まれる時間が続く。バイタルで人数を掛けて細かいパスで崩そうとする町田。仲川の速さに手こずる小谷。そんな前半でした。

「フィニッシュで終わろう」。そんな敵将・相馬監督のハーフタイムでの指示が効いたのでしょうか。後半開始早々の町田のポゼッションのなか、クロスをパンチングで跳ね返す佐藤。何度も拾いなおして入れ続ける町田に、ゴール前、体制を立て直そうとする佐藤でしたが、左45度の角度から町田・松本が、思い切りミドルで振りぬくと、ゴール右隅に決まってしまいます。

その後、熊本は嶋田を入れ、巻を入れ、最後は平繁を投入して、アディッショナルタイム4分が終わるまで惜しいシーンを演出し、最後のCKでは佐藤まで上がって攻撃しますが、結局この1点が、結果的に決勝点となってしまい敗れました。

この敗戦により順位は17位に後退。6位京都との勝ち点差が20に広がり、今シーズンのプレイオフ進出の目がなくなっただけでなく、21位北九州、22位金沢との差も6に縮まってしまいました。

これからは(これからも)1戦1戦、薄氷を踏む思いの戦いが続く。

これももう7年前のエントリーになりますが、日経の名コラム、吉田誠一さんの「フットボールの熱源」から引用した文章を思い出しました。

JリーグのGM講座で講師を務めたリバプール大学のローガン・テイラー博士が「プロサッカークラブは観客に何を売っていると思いますか」と受講生に尋ねる。博士の答えは逆説的。「プロサッカークラブは苦痛を売っているんですよ」と。吉田さんはこう続けます。「支持するチームが先制されれば、サポーターは心を痛める。負ければ、なおのこと。リードしていても、『追いつかれるのではないだろうか』とひやひやする。勝ったとしても、『次は鹿島戦かよ』と心配になり、『こんなことで1部に残留できるのだろうか』と思い悩む。いつになっても心は休まらず、苦しみは続く。」それでも「それがわかっていても、またスタジアムを訪れる。」

しかし、受講者はある思いに至ります。「苦痛を感じてくれるのは、そこに愛があるから」だと。

2009年のあの頃も、相当の”苦痛”を感じていたからのエントリーでしょう。あれからも色々なことがあり、2013年も降格圏を彷徨い、財務状況からクラブ消滅の危機にも遭遇した。

そして今季、熊本を廻る”未曾有の出来事”の状況下で迎えるこの”苦痛”。それはまさしくホームクラブへの”愛”との裏返しに違いありませんね。

荒木さんをはじめ、先人たちの努力があって出来上がったJリーグ100年構想のクラブのひとつわが熊本。引き継いでいくわれわれは、この”苦痛”から逃れようとすることは決してできない。ここから残り6試合を懸命に応援する。ただただそれだけです。

【J2第15節】(ノエスタ)
熊本 0-2(前半0-1)町田
<得点者>
[町]鈴木孝司2(29分、76分)
<警告>
[町]重松健太郎(20分)
観衆:2,509人
主審:井上知大
副審:川崎秋仁、村田裕介


「震災を言い訳にはしない」と常々選手たちは言っていました。そのとおり、リーグ戦復帰3戦目となる今日の試合は、選手たちのコンディションはほぼ以前どおりと見受けられたし、失点の部分はGK佐藤が試合後、「厳しさが足りない」(熊日)と言うように、一瞬の甘さがもたらしたもの。しいて言うなら、無得点が続く攻撃の部分で、まだ本来の連携が築き上げられていないという点でしょうか。

神戸ノエビアスタジアムのゴール裏は、真っ赤に染められていました。それはしかし、いつもこのスタジアムを埋め尽くすクリムゾンレッドではなく、この日一日だけの(正確に言えば2013年11月の神戸との対戦以来の)プーマレッドでした。

リーグ戦復帰からのホーム第2戦開催に、スタジアムの提供を申し出てくれたのはこの神戸。1995年に阪神・淡路大震災で大きな打撃を受け、そして長い年月を経て復興を果たした地。あの頃のヴィッセル神戸は、まさに今の熊本に投影できるでしょう。色々な苦難があったことを聞いています。

熊本が今日この”ホーム”に迎えるのはJ3から今季J2復帰なった町田。ここ2試合は連敗してはいるものの、現在3位に付ける難敵。対する熊本には、インフルエンザから清武が戻り、右サイドハーフには中山、ボランチの一角にはキム・テヨン。右SBには黒木が入りました。

20160528町田

入りはいい。黒木のダイレクトの低いクロス。クリアを清武拾ってボレーシュートは枠の左にそれたものの、実に積極的。キム・テヨンが常にサイドチェンジを意識してボールを散らす。対する町田はブロックを敷いてカウンターのチャンスを伺う。そんな互角以上の戦いが出来ていたんですが…。

29分、右サイドを”なんとなく、アレ?という感じで持ち運ばれると、サイドチェンジ気味のクロス。ファーサイドの鈴木崇文に渡ると、そこからPA内にいた鈴木孝司に柔らかく入れた。鈴木孝司がそれを点で捉えてバックヘッドでゴール左隅に流し込む。町田が先制点。

このシーン。鈴木崇文をフリーにし、鈴木孝司への植田の”当たり”も緩慢と言えましたが、その前にするすると左サイドの侵入を許した。井芹さんが熊本蹴球通信に書くところによると、ラインを割ったとアピールしてセルフジャッジで足が止まり、リアクションが遅れたのだという。いただけない緩みと言うのは厳しい指摘でしょうか。

1点ビハインドの後半。途中から中山に代えて嶋田。徐々に熊本の好機が訪れます。64分、嶋田から左の清武にパス。オフサイドを掻い潜った清武が角度を作ってシュートはわずかに枠の右に反れる。

69分には左の片山からのクロス。途中から入った巻にDF2人が競る。落ちてきたボールをテヨンがシュート。DFのブロックに当たり、ゴール近くに高く上がった。フリーの嶋田がヘディング。しかしボールはわずかにバーの上。73分にも大きなサイドチェンジから右サイドの黒木。DFに一度奪われそうになるが再び拾ってエンドラインぎりぎりからのクロス。中央清武のヘディングはしかしGK正面。

しかしそんな熊本の好機の連続のあと。76分、これも途中投入の町田の戸島が、大きな体躯を生かして黒木を制し左サイドを突破するとクロスを上げる。スライディングした黒木に当たって高く上がったボール。園田が躊躇するとバウンドしたところに町田の井上が頭で繋ぐ。それをエリア内にいた鈴木孝司、ダイレクトで反転してシュート。GK佐藤も一歩も動けない。ゴールに突き刺さります。

重い2点目。地面を蹴って悔しがる清武の姿。

熊本はアンデルソンを入れる。85分、そのアンデルソンが右サイド奥で粘って奪うと、すかさず低いセンタリング。ニアにいた巻のヘディングはしかし枠の右。

アディッショナルタイム4分も使い切り、熊本は一矢報いることもできず、敗戦の笛を聞きました。リーグ戦復帰後3連敗。

「今日、俺たちは全力で戦いにきた。それが盟友熊本への最大のリスペクト」。試合前の町田のゴール裏に掲げられた横断幕には、そう書いてありました。その言葉どおり、2連敗で見えた課題を修正するように、町田は全力で向かってきた。それはリーグ3位(この試合結果により2位に浮上)に値する力でした。前節の水戸もまた西ケ谷監督は「熊本に対して失礼」と選手を鼓舞して戦ってきた。

もちろん勝負ごとに同情や容赦はいらない。熊本も今出せる全ての力を出し切って戦っていますが、対戦相手もまた、このある意味難しくやりにくい熊本戦に全力を出し切って向かっている。だからこそ勝利への壁はいっそう厚いものになる。

ただ、前節でも言いましたが、熊本はもう十分に“戦える”だけの状態に戻っていると感じています。変な表現ですが、普通に試合をして、普通の負け方をした。勝敗を分けたのは、単に彼我の力の差であったかと。

「被災地に勝利を持って帰りたい」という気持ちを持つ選手たちは敗戦を前にして悔しい。その悔しがる姿を見るにつけ、われわれも胸が締め付けられるような気持ちになります。

「復興のシンボル」のような重責を背負わせてはいけない。そう何度も書いてきました。チームはある意味、“復旧”を果たしました。やっと普通に戻ったのです。そうであるならば、今節の課題の修正を練習に落とし込み、さらにコンディションを上げ、戦術を練り、次の試合に臨む。その”通常”の繰り返しの先に必ず勝利をつかみとることができる。

さらに言えば、熊本のチーム力では、他のチーム並みにコンディションが回復して、ゲームができる状態に戻っただけではなかなか勝つのは難しいんだと。そこからさらに、相手を圧倒する球際と、圧倒する切り替えと、圧倒する運動量があって初めて勝機が見いだせるんだと。アグレッシブさとハードワークが信条。それがチームコンセプト。そのなかで勝ち点を拾ってきた。だからこそまだまだ。厳しいけれど、そうなのだと思いました。


最後に、今節の会場を提供し、運営を支援していただいたヴィッセル神戸と多くのサポーターの皆さんに心からの感謝を伝えたいと思います。また、そのほか確認できただけでもガンバ、セレッソ、京都、鳥栖、名古屋、広島、徳島、磐田、清水、横浜FC、柏、奈良クラブ、鹿児島などなど多くのJリーグサポーターが応援に駆けつけてくれたそうです。本当にありがとう。

10月14日(日) 2012 J2リーグ戦 第38節
熊本 2 - 1 町田 (18:04/熊本/7,127人)
得点者:12' 武富孝介(熊本)、55' 平本一樹(町田)、70' 矢野大輔(熊本)


試合前日の土曜日。いつものようにいさむちゃんの床屋へ。今日の話題、まずは朝方の代表戦、フランスへの歴史的初勝利の話しかと思えば…。「ファビオはとうとう出てこんですねえ」「高木監督は来年もしなはるですかねえ」…。いやいや、熊本のサッカーな日常の景色も、大きく変わったなと。それもこれもホームチームの連勝の影響なのかと。

先週日曜日にアウェー山形戦、そのまま熊本には戻らず移動して、水曜日に仙台を相手に延長120分の天皇杯3回戦を戦った熊本。対する町田も同じくFC今治相手に天皇杯を戦っていますが、こちらは今治戦の先発から5人を入れ替えてきました。

熊本は、山形戦、仙台戦とまったく同じ先発メンバー。大分戦以来、入れ替わっているのはケガのメンバー(吉井、筑城、高橋、北嶋)だけという固定された陣容。ある意味、迷いがないというべきか。

町田20121014

それにしても攻撃的な町田のサッカー。手こずりました。高木監督が「(町田は)厳しい状況があって、『何とか勝点3を取ろう』というゲーム、そういうサッカーをやってくる」と予想していたとおり、最下位に沈み降格の危機にある町田は、まるで”手負いの獅子”のように果敢に立ち向かってきました。

もうひとつ指揮官が気にしていたのは、「勝たなくてはいけない相手だったと思うので、その分どうしても難しくなる」という点。大分、福岡、湘南、山形というJ1経験チームに4連勝し、そのうえ天皇杯ではJ1優勝戦線の渦中の仙台を撃破してホームに帰ってきた。リーグ最下位チームには”勝って当然”というファン心理が当たり前のように働く。そこでのプレッシャー。そんな2つの理由を挙げて、「今日のゲームは、ここ最近ではいちばん厳しいゲームになるかなという予想はしていました」と指揮官は分析していたようです。

しかし、ゲームを見ていて、もうひとつ難しいゲームになった理由が明らかになる。当然ながらコンディションの問題でした。恐らくはあえてターンオーバーをしなかった熊本。南も「今日は疲れもあって運動量が落ちているなというのは後ろから見てても感じました」と言うように、後半、熊本は明らかに球際に突っ込んでいく激しさ、エネルギーが落ちていた。セカンドに集中する力で町田のほうが上回っていました。

それでも、連勝の手ごたえが疲れた体にしっかり残っていたのでしょう。「チーム状態がいいから、無理な所でもつなごうとするところが前半はあって、ハーフラインを越えてからコンビネーションで作る方がいいなというのは感じました。シンプルにやる所との使い分けは大事だなと思いました」と矢野が言うように、そこはバランスを欠いたところ。非常に嫌な取られ方をする場面が多かった。

しかし、それでもセットプレー2発で勝ち切ってしまいました。

前半12分のFK。原田、養父、藤本3人が相談するなか、蹴ったのは藤本。無回転シュートはGKの手元で変化して、パンチングで逃れる。そのボールがバーに当たり跳ね上がると、真っ先に飛び込んで来ていたのは武富でした。頭で突き刺すと、そのまま身体ごとゴールネットに突っ込んでいくほどの勢いでした。

「(藤本)主税さんのフリーキックは大体ブレ玉なので、枠に飛べばキャッチはできないから、入るかこぼれるかなので、常に狙っているこぼれに飛び込んだというだけです」と、普通に言うのもわかる。相手ディフェンスより1歩先にこぼれを狙ってスタートを切っていました。

前半のうちに投入された町田のベテラン平本が、「僕たちのように経験の少ないチームは先に点を与えると痛いし、この状況で先に失点するとガクンと来るから、まずは失点しない、守備からっていうことも必要」と悔やみますが、どちらかと言えばそれは結果論。実際の戦況は、高木監督が「幸野、ドラガン、平本、そこまでがかなり流動的に動くので、正直言ってうまく捕まえることができなかった」「なぜ捕まえきれなかったと言うと、彼らのパスのタイミングやテンポが良かった。だからこそ、最終的にはボックス近くまでラインが下がってしまう」というような厳しい試合展開でした。

当然、このままでは終わらないだろうとハーフタイムに予感したように、後半になっても中盤での激しい奪い合いから攻守の切り替えの早い試合展開が続く。10分、ワンタッチのスルーパスで平本にDFラインを割られると、右足で流し込まれ遂に同点にされます。

スカパー解説で「熊本の不用意なパスミスが多い」と池ノ上さんが言っているころ、イエローを貰った藤本の顔がゆがみ、高木監督も歯を食いしばっている様子が画面に映る。後半15分、北井に破られ1対1を南が防ぐものの北井がもんどりうつ。あわやPK。万事休したかと思われましたが、これはシミュレーションの判定。

そんな”町田の流れ”の中で、熊本が奪ったCK。右から養父の弧を描いたボールが、ゾーンで守る町田選手を越えて、飛び込んだ矢野の頭にぴたりと合った。これが決勝点になりました。

その後の見せ場は南が持って行きましたね。何本の決定機を阻止したでしょう。圧巻だったのは33分、右サイドから入ってきた町田。ディミッチからエリア内の北井の足元。北井がすばやく脚を振る。その至近距離のシュートを左手一本。ボールは南の手中にぴたりと収まった。得点シーンに値するほどのスタジアムの歓声。場内のビジョンでリプレイされるほどの”美技”にスタンドの誰しもが酔いしれました。

アディショナルタイムは4分。終盤の切り札になった仲間と大迫が、なんとか前線に起点を作ろうとしている。齋藤はまだ一騎ドリブルで持ち上がるスタミナを見せました。苦しんで苦しんで、なんとか町田の勢いをかわした。残留を目指す町田がなんとしても欲しかった、勝ち点いう”獲物”を奪い、前回対戦のアウェーの屈辱を晴らしました。

「悪い時間も何とか耐えていれば、前の選手が取ってくれたり、どこかで挽回できるチャンスがあるってことを分かっているというのは大きいかもしれないですね」とDFの廣井が言う。チーム全体にそんな自信が芽生えているということか。

こんな厳しいゲームでも勝つ、いや、勝ってしまえるというのは、これまでなかなか経験したことのなかった感覚ではないでしょうか。ここが今日のゲームの一番のポイントに違いないでしょう。厳しい試合を凌いでモノにできる”強さ”。流れは悪いなかで、セットプレーで決める効率。相手に与えるそのダメージの大きさ。

ずっと追い続けている人は皆、わがホームチームがこれまでにこんな試合をどれだけ落としてきたかということを、よく知っているでしょう。追いつかれ、逆転され、膝を折った…。「ある意味そういう“勝たなきゃいけない”試合の中で、そういうプレッシャーに打ち勝ってきっちり勝ちきれた事は今までのロアッソにはなかった」と、南もブログで表現するように・・・。

「苦しい時間帯や、少し混乱しかけても、そこに対してベテランの選手がうまくサポートしたりということもありますし、常にリカバリーが上手くできているのかなと。実際にミーティングでも話をしたんですけど、今日のゲームでは『リカバリーを多く、上手くやった方が勝てるよ』という話をしました」と指揮官は言う。“リカバリー”。このあたりのコメントは、これまであまりお目にかかったことのない表現でした。

われわれは、最後の最後にこの試合の勝敗を分けたのは、チームに芽生えつつある”強者のメンタリティー”ではなかっただろうかと思いました。それは、新加入会見で北嶋が言った「勝ちに慣れる」という言葉にも似て。どんな試合展開でも、どう勝ち切るかを知ること。それができること。それが「勝ちに慣れる」という意味なのかと。

天皇杯を入れればアウェーでの3連勝を後押しした関東サポーター。その渡された勝利のバトンを、ホームでもまた繋ぐことができました。示されたのはクラブの記録を更新するリーグ5連勝。公式試合6連勝という結果。そして、次節は横浜FCという、これまた願ってもない強敵と対戦する。

今季の”出来”を占う相手としては申し分ない。場所は聖地・水前寺。燃えない理由はありません。