FC2ブログ
【J2第1節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半1-0)松本
<得点者>
[熊]清武功暉(16分)
<警告>
[熊]植田龍仁朗(49分)、清武功暉(90分+2)
[松]オビナ(24分)、當間建文(76分)
観衆:8,253人
主審:佐藤隆治
副審:八木あかね、平間亮


勝ちました!ホーム開幕戦。開幕戦勝利は2年ぶり。それにしてもホッとしたというかなんと言うか…。

待ち焦がれたリーグ開幕。三寒四温の季節のこの日は、思いがけず春の陽気を思わせる気候になりました。ピッチ上は21度。湿度は35%。風もほとんどありませんから、選手たちにとっては暑いくらいだったかも知れません。

熊本の先発は「うん。なるほど」といった布陣。新加入ではGK佐藤、CB植田が入った。前線は、ニューイヤーカップでも好調に調整できているなと感じさせた平繁と清武が組みます。

20160228松本

対する松本はいわずもがなJ1を経験してきた難敵。これまでの対戦成績も分が悪い。分が悪いというより、苦手を通り越して、勝てそうにないような気分まで漂う感じ。しかも、どのメディアもその点にフォーカスしたように、昨季の熊本を救ったともいえる救世主・GKシュミット・ダニエルが、今度は初戦から敵となってゴールマウスを守るという因縁。

ダニエルからどうやってゴールを奪うか。戦前のイメージは全く思い浮かばない。せいぜい考えられるのは、澤村公康GKコーチがシュミットのウィークポイントだと言う、速いクロスからのニアワンタッチゴールからの得点か。(熊本蹴球通信

しかしこの”因縁”のゲーム、一番の見せ場は、意外に早く訪れます。いつものとおり、いや昨年以上に序盤からチームプレスで厳しくいく熊本は、ボランチの上村がDFの頭越しにパスを送る。それをPA左できっちり収めた清武が、「ハンドを狙っていたわけではないんですけど、きわどいところにボールを入れようと思って」(九州J-PARK)上げようとしたクロスを、松本のCB飯田が腕で止める。すかさず主審がペナルティマークを指差します。PK!

守備範囲の広さ、”流れ”のなかの反応はピカイチのダニエル。しかし熊本にいたときもPKストップの実績はない。キッカーはもちろん清武。大きく深呼吸すると、「ダンは去年、僕のPKも見ていますし、僕もギリギリまで判断して」、ダニエルが山を張って横っ飛びした逆をしっかり突いて、ゴール左に流し込みました。先制!飛び上がるスタジアム。

清武は真っ先にベンチの清川監督のもとに駆け寄り抱擁します。ダニエルの守るゴールマウスを破って得点を挙げたのは、同じく昨季の立役者、今季も助っ人としてやってきてくれた清武その人。背中には(レンタル選手にはあまり与えられることのない)10番が。

その後も中盤でのボール奪取からの反転、パスを受けてすかさず前を向く清武や平繁。松本の攻撃は単調で、熊本は危なげない試合運び。ただ20分過ぎ、相手に与えたFK。初めてのセットプレー。今年もゾーンで守る熊本にとっての”課題”であるだけに、不安がよぎります。山形から移籍した名手・宮阪から放たれたボールは、FWオビナが中央からフリーで叩き付けた。しかし運よくゴール左に反れてくれます。助かった。

1点のアドバンテージで後半を迎える。敵将・反町監督がどう修正してくるのか。講じた策は「パスのアップテンポ」「長い距離を走って裏を取る動き」、そして工藤をシャドーに持ってくる。

後半は完全に松本に支配されましたね。最初の15分を凌げば押し返せるとも思っていたのですが、それもなかなか叶わない。度重なる松本のCKに、集中を切らすなと祈るばかり。逆にカウンターから追加点を狙えるかとも思ったのですが、なかなか持ち上がることすら難しい。70分には熊本陣内で奪われバイタルを脅かされシュート。ブロックするも再びシュート。藏川や植田が身体を投げ出してブロック。最後の松本のシュートは枠の上。危ない。

熊本は嶋田に代えて巻を投入。前線で弱くなった”守備”をテコ入れ。しかしなかなか松本の圧力を押し返すまでにはいかない。追加点が望めないまま時間は過ぎていく。試合後、清川監督が吐露するように、「どのタイミングかというのは自分も悩んでいて、もっと早ければ、跳ね返してこっちに流れを持ってこれるのかという、本当にギリギリのところでした」という時間帯、84分にFW平繁を下げると、DF鈴木をDFラインとボランチの間を埋める、松本に脅かされていたバイタルエリアの真ん中に、丁度アンカーのように投入した。まさしく「逃げ切り」のサインでした。

アディショナルタイムは5分。松本は更に攻勢を強める。前線を薄くした熊本は、もはやクリア一辺倒。身体を張ってゴールマウスを死守する。味方はいなくてもとにかく前へ蹴り返す。とにかくゴールより遠いところへ。時間を消費させるためだけに蹴り返す。ただそれだけを繰り返す。

それはまさしく勝利への執念に違いありませんでした。なりふり構わないプレー。実に泥臭い。勝ちたい!清川新監督とともに勝利を。

終了間際のラストプレー。松本のCKにGKダニエルも上がってきた。松本も最後まで食い下がる。J1経験組として、このまま負けるわけにいかない。しかし、このセットプレーもクリア!そして終了の笛が鳴る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「開幕戦は内容より結果が大事だと思うので、勝ちきる事を意識していました」。今季キャプテンマークを巻く岡本は、試合後そうコメントしました。「苦しい時間もありましたけど、皆しっかり我慢できた」と。確かにこれまでの熊本だったら、あの相手の圧力に必ず屈していた。同点、あるいはその先に逆転という展開もありえた。戦前、われわれもなんとか引き分けられれば、上々の開幕と思っていたくらいです。その松本に結果を出して見せた。

しかしそれを撥ね返した、凌ぎきった。この”粘り”は、「勝ちたい」という思いと同時に、新監督・清川監督に「勝たせたい」という思いが優った結果ではないのかと。

試合後、「非常に疲れています(笑)。選手以上に疲れているんじゃないかなと」とコメントした清川監督。こんなに正直に心情を吐露した監督は今までいない。試合開始前のスカパーの映像でも、監督の表情は緊張そのもの。

チーム戦術の継続を最重点に、監督経験のない清川氏を選んだ。そしてそれを支える集団指導体制もあまり例がない。そんな新任監督に、早くも勝利という結果をもたらしたイレブン。「キヨさんに、早く勝利をプレゼントしたい」という選手の気持ちが表れての今日の泥臭いまでの勝利。選手と監督のその”近さ”に、今季の熊本の新しい”可能性”を感じざるを得ない勝利劇。

決して快心とはいえませんが、長かったオフシーズンからのいろんなモヤモヤを晴らしてくれるたような。チームが一丸となってひとつの答を出して、さあ新しいシーズンが始まる。実に清々しい、開幕戦らしいゲームになったなと思います。

7月30日(水) 2014 J2リーグ戦 第24節
松本 2 - 1 熊本 (19:04/松本/11,265人)
得点者:41' 養父雄仁(熊本)、44' 喜山康平(松本)、45'+1 サビア(松本)


土曜日の激闘から中三日。ミッドウィークのアウェイゲーム。相手は自動昇格圏の2位に浮上した松本。正直なところ、この試合はコンディション的にかなり難しいのではないか。厳しい結果も覚悟しながら、それでも熊本のゲームがどこまでやれるのか。しかし勝利は欲しい。そんな、ちょっといつもとは違う微妙な気持ちのままゲームに入りました。

出場停止の片山の代わりに左には藏川。CBには前節足を痛めた橋本を休ませ18日に獲得が発表されたばかりのキム・ビョンヨンをいきなりの先発で起用。相方は篠原とし、園田を右SBに出す形のDFライン。

20140730松本

前半、思ったよりも熊本のペースで戦った終わり際の41分、養父のゴールで先制します。波状攻撃のなか左から作りなおす。シュートコースのなくなった齊藤がマイナスパス。それを思い切りよく養父が打つと、相手に当たってゴール左隅に決まりました。

ただ、スカパーのアナウンサーによると、先制してからの勝率は、松本が92.9%なのに対し、熊本のそれは42.5%だという。そんな嫌な数字を聞かされると、立て続けに失点。前半残り5分の間に、逆転されてしまいます。

同点弾は、喜山が放った振り向きざまのシュート。逆転弾は、サビアのヘッド。いずれも岩上の得意とするロングスローインから。

「警戒していたセットプレーでやられてしまったことは悔しいし、僕たちの課題。そろそろ進歩しないといけない」「良い時間帯でのゴールだったので、守りきらないといけなかった」と自身の先制点を守りきれなかった養父が悔やむ。

養父が課題としたのはセットプレーでやられてしまったことなのか、それとも守りきらないといけないという思いなのか。しかし、今の熊本にはどう見ても「守りきる」という部分にひとつ大きな課題があるのは間違いないと思うし、それが典型的な形で出てしまったゲームだったのではないかと。

「セットプレー、特にロングスローは相手の最大の武器ということで警戒していて、それなりにしっかりと跳ね返してくれていました。やはり下がって押し込まれる中で、結局ロングスローから2失点ということで残念に思っています。」と、小野監督は分析を交えた。

先制からわずか5分の間に、セットプレーからの連続失点であっと言う間に逆転されてしまいました。前半41分という時間帯で、このゲームを守りきろうという意識はあるはずはないのですが…、無意識の意識なのか。恐らくは、前半はこのまま守りきろうというイメージはあったかもしれません。しかし、先制を境にまったく別のゲームになってしまいました。

「このスタジアムの雰囲気の中で後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが、かなり重圧をかけられているような錯覚というか重圧感が選手にはあったかもしれません。」(小野監督)

一度、相手にわたってしまった流れ、主導権は、アウェイのアルウィンでは、取り戻すどころか、さらに増幅されてしまいました。

50センチの間合いの攻防で勝負するチームなのに、競ることすらできなくなってしまう。体力的な厳しさも顔を出し始める。アフターのファウルが増え始め、セットプレーからの失点リスクが高まっていく。

巻を投入するも、全体に押し込まれた陣形は、前線の枚数不足で、巻が集中してマークされ、なかなか打開できない。なのに熊本は中盤を省略してロングボールに固執する。前節、巻が効いていただけに、そのイメージが繋がってのことだったのでしょうが、敵将・反町監督のスカウティングにはまるのには十分でした。結果、松本21、熊本4というシュート数。後半、熊本はシュートゼロに終わっています。

しかし、もうひとつ気づかされるのは、完全に自分たちのゲームではなくなってしまった後半、それでも追加点は許さなかったということ。

振り返ってみれば、ほとんどポゼッションできない時間帯が続き、熊本の本来の戦いとはまったく違う展開になってしまいましたが、それでも、熊本の選手たちの気力自体は決して萎えたりしなかった。

スカパー解説者が、ゲーム最終盤にいたっても、カウンターを阻止すべく、激走する黒木や、孤立しながらも体ごとぶつけて空中戦を闘う巻を称賛したように。

ゲーム全体としてはやられているけれど、局面、局面の個々の戦いでは決して負けていない。結果、最後の10センチ、体をはっての守りは試合終了まで持続できた。やられている熊本から見れば、厳しい戦況ばかりが目につきましたが、逆に松本から見ればどうだったのでしょうか。あの後半の展開で、追加点を奪えず、それどころか、決定機(本当の意味での)すら作れていなかったことに。

ピッチ上の熊本の選手たちには、多分、あの大量失点の3試合を思い起こしていたんではないでしょうか。特に、最終ラインの篠原の思いは、ひときわだったのではないかと。

「後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが…」と、わが指揮官は言う。

結局、ゲームを立て直すことはできなかったけれど、ゲームが壊れることにはならなかった。少なくとも、何も得るところのないゲームではなかった。負けゲームで言うのもなんですが、こんなゲームでも、チームの成長を感じる。ひとつには今日確信した新しい戦力、キム・ビョンヨン。確かな技術とともに闘志も伝わるプレーぶり。今後に大いに期待が持てました。

「本当に強いチームなら3点目をとらないといけない。しっぺ返しをもらってもおかしくなかった」と振り返る反町監督の言葉は、半分くらい本音が混じっているのかもしれません。

ただ、そんななかでも。いつかのエントリーで「GK陣もまさしく”育成”の最中」とは書きましたが。まるで湘南戦の菊池のシュートを思い起こさせるような、同じニアサイドへのグラウンダーの早いシュートで割られた今日の同点弾。これもまた熊本をスカウティングするなかのひとつになってはいないかと思うのは考えすぎでしょうか。

「シュートまでのイメージは出来ていたが、止められたかなと思った。打てば入るもんだなと(苦笑)」と言う喜山。この敗戦の悔しさに追い打ちをかけるようなコメントでした。

2014.03.12 松本戦。惜敗
3月9日(日) 2014 J2リーグ戦 第2節
熊本 0 - 1 松本 (16:04/うまスタ/5,521人)
得点者:70' サビア(松本)


「100パーセント良いゲームをしてもそれがすべて勝利につながるとは限らない。ゲーム全体を通して集中を切らさず、ゴールに向かう姿勢を見せてくれた」。
「全ての決定機で決められるわけではない。一つでも多く機会を増やして、その精度を高めていく」。
そう試合後のインタビューでコメントした小野監督。

1プレー1プレー、1ゲーム1ゲームに集中しながら、1プレー、1ゲームの結果だけではない、サッカー自体のクオリティを上げることに向かっていくことを重要視している。そんな監督としての基本姿勢を、こんなゲームの試合後コメントでスッと出してくる。

ホームでの初めての敗戦。コメントも難しいでしょうが、目指すところに向かう、いいパフォーマンスであればしっかりと選手の頑張りを称える。決して“負け惜しみ”には聞こえない内容でした。

相手は松本。そして反町監督。まったくいいイメージがない。下手すると大量失点を食らってしまうような、そんな心配なゲーム前でした。

20140309松本

前節・福岡戦と同じく、いや、やや主導権を握られていたものの、決定的なピンチはほとんどなく、カウンターを受けたシーンでもゴール前のDFの枚数は常に安定していた。

ただ攻撃は、松本のDFラインの裏を狙うものの、福岡のときほどうまくいかず、3バックの脇のスペースも活かせない。特に開幕戦で見せたボール奪取も、松本に奪いどころを消されてしまってうまくいかない。随所で数的優位を作られる。そこには、反町サッカーが3年目かけて育て上げた“運動量”が根底にあり、そのうえに浸透した“戦術”がありました。

失点は、巻から岡本への交代が準備されている時間帯でした。クリアボールが相手にあたって、左サイドを上がっていた鐡戸の足元に転がってしまう。難なくフリーでクロスを入れると、ニアに飛び込んだサビアが頭で反らす。確かに「一瞬の隙」「ポジショニングのミス」(矢野)と言えました。

ここからどう戦うのか。

われわれが今シーズン、このチームを見るうえで、最も注視したいのはそこでした。開幕戦の失点は、追いつかれようとする失点でしたが、この試合では先に点を取られたという大きな違いもありました。

澤田、高橋と繰り出した交代カード。パワープレーぎみになった戦術のなかで、タレントが活かされない部分はあったものの、「あわや」というシュートシーンはあった。同点の匂いはプンプンしていた。

試合後の矢野が、「失点につながるようなカウンターを受けることは少ないし、点を取られた後に崩れることはなくなった」と言うように、有効なカウンターのチャンスは熊本が凌いでいたわけで。互いが、攻撃への反転、守りへの素早い帰陣をチームコンセプトにするなかで、逆に、その一瞬の攻め、守りの精度の差が、これまた勝敗を決してしまった。そう思います。

「下を向く選手はいなかった」と書いたのは翌日の熊日。負け惜しみや強がりではなく、もちろん敗戦にいいも悪いもないけれど。“いい感じで負けた”。この試合を見た誰もが、“五分五分”だったと感じただろうし、多分やっている選手が一番、そう感じていることでしょう。

わずか2試合目。しかしこの2試合で、10年目のシーズンで初めて感じる、なんとなくだけど“確かな”感覚。激しいけれどクールな戦いぶり。

試合後、熊本の印象を問われた反町監督。「なんせ小野監督は私のS級の先生でありますから」と冗談まじりに前置きしながらも、「昨年に比べると判断とかチームの勢いとか、チームコンセプトとかが伝わるような、非常にいいチームに仕上がっている」と言わしめた。“リップサービス”とは無縁なこの人に。「どっちに転んでもおかしくないようなゲームだったと思います」というのは、まさしく実感ではなかったでしょうか。

この試合で感じたのは、チームとしての“メンタルの進歩”。そう言えるのではないでしょうか。



7月7日(日) 2013 J2リーグ戦 第23節
熊本 0 - 3 松本 (19:04/うまスタ/4,139人)
得点者:43' ホドリゴカベッサ(松本)、52' 玉林睦実(松本)、80' 塩沢勝吾(松本)


前節の引き分けに関してわれわれは、連敗という「悪い流れを払しょくできたという意味では、重要な勝ち点1だった」と書きました。神戸戦で守備組織を一度整理し、ピッチコンディションの悪い愛媛戦をなんとかドローに収めて、後半戦さあこれから反転攻勢だという思いだったのですが。なんともまぁ、「まさか…」と呟きたくなるような不甲斐ない試合を見せられてしまいました。

朝から時折の激しい雨と、強い日差しが交互に繰り返す不思議な天候。試合開始の頃には、梅雨というよりすっかり夏空。気温は 28.3度と、スタンドには心地よい風が吹いていたものの、ピッチ上の湿度は 82%という蒸し風呂状態だったようです。

ホームとは言え、熊本は勝利から遠ざかっている。前節、水しぶきの試合から中3日の連戦。「大味な試合の後だったので、余韻が残りそうだった」とは、戦前の矢野のコメント。このカテゴリーにしてもなかなか切り替えが難しいというのも意外でしたが、フィジカル、メンタルともに相当に厳しい状況でのゲームというのが客観情勢だったのでしょう。

20130707松本戦

後ろでつなぐ熊本。後ろで徹底してつなぐ。ここで取られないことは分かるが、つなぐことで一杯いっぱいなのもわかる。

「後ろでの回しがうまくいかなくて、どんどん下がっちゃったというのが、攻撃がうまくいかなかった原因。ボランチも下がるし」(J’s Goal)と言うのは吉田監督。しかし当の原田は「暑かったので、相手の前線の選手を走らせようと最終ラインで球を回した」と言う。高橋は「僕らセンターバックがボランチやサイドの選手をもっと上げられるように(ならないと)」と。確かに堀米の位置も低かった。このあたり、監督も含め、チームの意思はどこにあったのでしょう。

「パスコースを制限されてうまく散らせなかった」(吉田監督)のは確かでした。松本の前線の3人が、高い位置からしつこくプレスを掛けてパスコースを限定する。「ボランチの横のところにどういう対応するかというのは、映像を見せながら少し話をした」というのは敵将・反町監督。中盤も含めて熊本対策を練っていました。今シーズンの自らのホーム開幕戦で1-2の敗戦を喫したことへの意趣返し。目に物見せてやるという強烈な意志は半端ではありませんでした。

果たして熊本側(吉田監督)の、松本に対するスカウティングはどうだったのか。

走れるのはわれわれのほうだ、Jリーグのなかで一番きつい練習をしている…。という、勝利したときほど饒舌ないつもの反町節。しかし、単純にスピードやスタミナで熊本が劣っているというのではないような気がします。ただ“走る”ことで90分間を、長いリーグ戦を通していくのは無理だし、無謀だし。

カウンターへの準備は出来ていた。失点の場面も人数は足りていた。一瞬の隙。ノーマーク。数的に有利でなくても、ちょっとした局面を強引に作ってしまう松本のエネルギー。そしてクロスの精度×シュートの精度。

いわば、動き出し負け。飛び出し負け。反町監督の言う“走る”は、決定的な動きのことと理解すべきなのでしょう。試合最終盤になってもその決定的な動きができること。おそらく常々、相手DFの死角になるように動き出し、飛び出していくことを徹底的に練習しているのだろうと思わせます。2点目の玉林の長い距離の駆け上がりなど、その典型ではないでしょうか。「キツかったけれど相手もキツそうだったので、走れば勝てると思っていた」と言う玉林。なんともけれん味のない言葉です。

われわれが、この局面で、この日のゲームについて何かもっともらしく、解説調で語っても、それはみんな百も承知でわかっているわけで。そんなことより、失点の仕方がいつもあっさりで、それがわれわれファンでさえ、がっくりと膝をつかせてしまう。

「人数は足りていた」なかでの今日の失点は、組織的に崩壊した北九州戦の場合と違って、個の責任も大きい。「今日は個人に与えられた仕事ができなかった」と矢野も悔やむ。

リーグ前半戦の総括をする熊日の連載「ロアッソ雌伏」の2回目(7月4日付)は、スカパーでホームゲームの解説する瀧上知巳・東海大九州監督のインタビューでした。チームの戦力面、監督の指導面など適切な指摘が並んでいましたが、特にリーグワーストの38失点を喫したDF陣には「はっきり言って、ぬるい」と手厳しいものでした。

選手の入れ替えを示唆する吉田監督。「(今後は)新しい選手を使っていくのも手。練習でモチベーションの高い選手や闘う姿勢の強い選手を選んでいきたい」と。しかし思うに、モチベーションや闘志だけではやっていけないのもこのレベルではわかっていることだし。何より、それって普段からやっていて当り前。それほどメンバーが固定していたということなのか。

「自信を失っている」状態なのでしょうか。監督も選手も。そしてわれわれファン、サポーターも。

いろんな批判や、タラレバや、ないものねだりが一斉に噴き出してきます。確かにもっともな意見もあるのですが、これまで、選手も、監督も、クラブもそれぞれにベストを尽くしてきている。無い袖は振れないし、今になって分かることだってあるし。一番怖いのは、ベストを尽くせない状況に”陥って”しまうことではないでしょうか。

今節のゲームで、0-3という同じスコアで千葉に敗れたG大阪。日本代表MF遠藤保仁は前半12分、23分、後半13分の失点に「相手に効率よく点を取られたのだと思う。下を向く必要はない」と言い、同じく日本代表DF今野は「効果的に点を決められたとは思うが、でもしっかり崩されての失点だったし、セットプレーから取られたのも問題。その課題は修正しないといけない」と受け止める。置かれた立場は確かに違いますが、非常に冷静なうえに、課題に向かい合おうとしています。

迷走するのが一番怖い。完全に降格圏に入ってしまうと別の話になります。それは、チームの存続に関わることになるから。

とりあえず、勝ち点を拾うことに集中してはどうだろうか。自信を失っている状況では何をやってもうまくいかない。悪循環というマイナスのパワーが働き始める。このマイナスになかなか抗うことは難しい。戦術をシンプルにして、出来ること、出来ないことを選別してはどうだろうか。そういう意味で、負けはしたものの守備を整理して戦った神戸戦をわれわれは一定の評価をしたかったのです。

「われわれはまだ何も手にしていない。何も得ていない」とは、よく言われるサッカーの言い回しですが、今の状況は、それとはまったく逆の心理です。

「われわれはまだ何も失ったわけではない」じゃないか!相手も同じカテゴリーのチームだろ!勇気を持って、最高のプレー、最高のゲームを見せてくれよ!と。

3月17日(日) 2013 J2リーグ戦 第3節
松本 1 - 2 熊本 (13:04/松本/12,959人)
得点者:28' 齊藤和樹(熊本)、79' 齊藤和樹(熊本)、90'+3 玉林睦実(松本)


前節のエントリーの最後に、素直なわれわれの見方を書きました。選手個々のコンディションやバランスをもう一度見直してみたらどうだろうと。それは“ブレる”ことや戦術を変更することではないだろうと。行間に隠していた深意は、明らかに原田やファビオを途中投入してからの方がバランスが良かったし、北嶋も途中からのほうが真価を発揮するのではということだったのですが。そのことも衆目の一致するところでもあったと思います。

そんな素人ブログの声など届くはずもないのですが、今節、吉田監督は、先発メンバーを4人も代えてきた。特に縦の3人。矢野の怪我からの復帰。そして原田、ファビオの先発起用。どれも、それぞれの相方(あるいは前後、左右のプレーヤー)との連携、バランスが大きく改善されたように見えた。整理されてきたように思えた。吉田監督にとっても、当然の修正範囲だったのでしょう。

20120317松本

松本にとっては今季のホーム開幕戦。あの美しいアルウィンという専用球場が、緑色のレプリカユニで埋め尽くされ、バックスタンドも熊本側のゴール裏さえもその緑色が飛び跳ねチャントを歌う様は、J1クラスの試合様相と形容しても過言ではないでしょう。2連敗中の熊本。この雰囲気に呑まれなければいいが…。

更には、画面からも伝わってくる現地の強風。これに対して熊本は前半風下を選択する。その理由は藤本主税のブログに詳しいのですが、まるで昨年9月のホーム大分戦を思い起こさせました。前半を我慢することで戦術をシンプルにする。「割り切る」ということ。これが今節も奏功した。ロングボールの着地点を見誤る松本は、セカンドの競り合いでも後手を踏む。徐々にボールが回せるようになった熊本が主導権を握ります。熊本は風を味方につけたとも言えました。

何と言っても出色の出来だったのは「守備」でした。前節は「(数回ですが)」と前置きせざるを得なかった中盤高い位置での守り(インターセプト)がうまくはまっていて。ボールへの寄せも早く、警戒していた松本のカウンター攻撃を“芽”の段階で潰したことが大きかった。

先制の場面は、藤本、ファビオ、藤本、片山の流れから。これまで、詰まったようなぎこちない動きだった片山の、お約束のような見事なトップスピードに乗った追い越しも、そういった“守りへの安心感”の表れではなかったでしょうか。

前節、試合後のインタビューで「クロスの質であったり、ゴール前への入り方、そういうところをもっともっと良くしていかなくてはいけない」と課題を語っていた吉田監督。先制点の片山からの低い弾道のクロス。ゴール前では仲間が齊藤と入れ替わってニアに入る。齊藤はフリーでヘディング弾。後半の追加点も、大迫が右サイドからグラウンダーで入れた早いボールに、ファビオがスルーしてDF2人を連れだしたところに齊藤の右足。いずれの得点も、指揮官の課題に対してひとつの答えを出した形です。

しかし藤本はそれでも満足していない。「もっとビッグチャンスになり得るシーンでも、GKに取られたり、中に人がいなかったりという事が多過ぎた。俺も何回GKに取られたか…」と。(自身のブログより)

その藤本。今節は彼の良さが出た試合でもありました。フリーマンよろしく、相手のマークをはがす縦横無尽なポジショニングから、敵の嫌がるようなスルーパス、あるいは先制点につながったような“溜め”を作るプレー、そして相手のパスカット。松本も捕まえきれない。これも原田と黒木という両ボランチとのバランスがあってのことでしょうが、相当良かっただけに、後半、大迫に代って下げられるとそのバランスを失わないのか多少心配しました。これも中二日の連戦を考慮した采配なのか。それほど重要なプレーヤーなのだということも確信しました。

2点リードでの終盤アディッショナルタイム。完封間近のアウェイ戦。しかし、せっかくのゲーム運びもその閉め方、終わらせ方がいかにも中途半端でしたね。時間の使い方。キープも繋ぎも。あれはその前のプレーで、相手にボールを渡してしまったこと自体が問題。ドタバタした気持はわかるが、松本も足が止まり、攻め手を欠いていた状態。決して押しこまれていたわけではなく…。“放り込めば何かが起きる”的な流れに乗っかってしまいました。開幕鳥取戦のこともある。ここは一度立ち止まって深く反省すべきでしょう。

試合前。この一週間のわれわれの心理状態はと言えば、まったく定まることがなく、落ち着き場所を失っていました。

開幕ホーム連敗で憔悴しきったファン心理とでもいうのでしょうか。松本に対する何とはない苦手意識。そしてもし負けたら、次はガンバだし…。という悲観の連鎖。さらに、反町監督に対する「この監督に“だけ”は負けたくない、負けたらいやだなあ」という好き嫌い問題。試合前日のJ’s Goalの松本側記者が書いた「プレビュー」のはしゃぎっぷりへの苛立ち。それやこれやがごちゃ混ぜになって、ますますどんよりとした気分の深みにはまっていました。

しかし、今節目の前で(テレビ画面越しですが)見たものは、その一週間でまたひとつ課題を修正させたチームの姿でした。そしてその結果として、今季初の勝ち点3を敵地でもぎ取ったイレブン。意気揚々とゴール裏に挨拶に行く選手たちの笑顔。
そして。1万人以上の緑のなかで、90分間必死に声を枯らしてくれた赤いサポーターだけに許されたご褒美。選手たちと踊り、跳ねる「今季初のカモン!ロッソ」でした。