10月7日(土)
【J2第36節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(55分)
<警告>
[松]パウリーニョ(58分)
観衆:11,026人
主審:大坪博和


「松本のやり方は分かっている中で、セットプレーから失点したことが悔しい」(熊日)。敗戦後、池谷監督はそう記者団に答えました。スピードのある石原を走らせ、高さのある高崎で仕留める。”松本のやり方”は分かっていた。しかし、まんまと術中にはまりました。

熊本は、前節故障退場した園田の代わりに植田を起用。北朝鮮代表に召集されて一時離脱している安の代わりにはグスタボ。しかし、ワントップではなく嶋田との2トップ。中盤は上村をアンカーに置いて、三鬼と中山を2列目に。われわれもグスタボはワントップより2トップが生きると考えていただけに、理にかなった布陣。

松本は5位。PO圏内にいるものの、まだ自動昇格圏内も視野に入れる。

20171007松本

序盤は互角。松本の石原、高崎を狙った長いボールを撥ね返し、セカンド争いも球際強く行って戦う熊本。

しかし、松本も徐々に熊本に慣れてくるとアタッキングゾーンを占領し始める。GK畑を中心にした守備陣でしっかり守る。ただ、奪ってからの松本の帰陣も早く、持たされている感もありました。

そんななか、前半のアディッショナルタイム。右サイドからのスローイン。エンドラインぎりぎりのグスタボが右足で反らすと、嶋田が飛び込んでダイレクトシュート。終了間際に意表を突かれた松本でしたが、これはバーの左に外れてしまいます。惜しかった。

ハーフタイムを終えて後半のベンチに戻る池谷監督を捕まえてのDAZNのインタビュー。「怖がらずにボールを動かせ」と指示したという指揮官の答えに、われわれもそうだろうと思います。少し攻撃に躊躇している。ただ、このまま守備をオーガナイズして0-0の時間が長くなれば、焦れた松本が前に出てくる。そうすれば熊本にはカウンターのチャンスが増える。そういう心理戦でもあったのですが。

熊本の攻勢から奪った松本のロングパスに石原が走ると、小谷がスライディングで外に出す。いい対応でしたが、これに続いたCK。熊本の守備はマンツーマン。パウリーニョのキックは、高崎の一番高い打点にピタリと合って叩き付ける。先制点を与えてしまいました。

これで前に行かなければならいのは熊本の方になってしまいました。が、引いてブロックを敷いた松本に、アタッキングゾーンまでは入れるものの、片山や三鬼からのクロスは、十分に相手が対応できるタイミングと角度。相手の嫌なゾーンに入っていける選手もいない。

カウンターを狙ったグスタボへのロングボールには、松本のDFが必ず前に入って収めさせない。疲れからか徐々に攻撃のスピード感も薄れる熊本。

そこでグスタボに代えて巻。中山に代えて八久保を入れる。かなり長い時間、松本を自陣内に押し込んで波状攻撃を仕掛けますが、松本にしっかりと守られて”ヒヤリ”ともさせられない。

最後は上原を下げて4バック。ジュニオールを前線に入れてパワープレイを試みましたが、実らず。松本に1点を守りきられ敗戦となりました。

勝者の指揮官・反町監督は、それでも「時間の使い方が、最後良くなかった」(DAZN)と手厳しい。やはり2-0で折り返しながら、最後の5分で逆転された前々節、山口戦を相当悔やんでいる。逆に熊本にとっては、その松本の試合のクロージングに付け入る隙ありという思いもあったのですが。

「パワーのある松本相手でも、ゲーム自体はどっちに転んでもいいというような試合が出来るようになった」(DAZN)と池谷監督は言う。「(課題は)どうやって点を取るかということに尽きる」(熊日)とも。確かにそう。

しかし、DAZNのこの日の解説者・飯尾和也氏が言う。「堅い守備は見れていた。しかし、あの一瞬、あのワンプレー。あれを外さなければ、0-0、もしくは1-0、結果は変わっていたかも知れない。あれを放さない、しっかり最後まで頭を入れる。そういう”厳しさ”があれば、また上がっていける」。

闘争心を表に出したプレーで、”鳥栖の魂”とまで言われたディフェンダーの言葉が、とても重く感じられ…。一瞬も放さない”厳しさ”。この1点の差が、あらためて大きなものに感じられたのでした。

4月16日(日)
【J2第8節】(えがおS)
熊本 2-0(前半1-0)松本
<得点者>
[熊]グスタボ(7分)、上里一将(81分)
<警告>
[熊]園田拓也(53分)、齋藤恵太(85分)
[松]石原崇兆(23分)
観衆:13,990人
主審:佐藤隆治

「特別な日だけれども松本を倒さなければ特別な日に何もならない」。

この試合を迎えるにあたって、清川監督はそう選手たちに話したそうです(熊本蹴球通信)。
熊本地震・本震からちょうど1年を迎えたこの日、熊本はホームえがお健康スタジアムで「復興支援マッチ」と銘打ち、5位に位置する松本山雅と戦いました。熊本は4連敗中で20位。

前週のなでしこジャパンのコスタリカ戦からえがおスタがバックスタンドも含めて全面利用可能に。「バックスタンド側のサイドを駆け上がるときに力がでない」と言っていたのは巻。この日、解放されたバックスタンドをサポーターたちが美しい赤で染め上げ、ようやく震災前のスタジアムの景色が戻ってきたのです。

しかし最初に断っておかなければいけません。この大事な試合の時間に、われわれは別の場所での復興イベントに狩り出されていて、スタジアムに行けていません。だから楽しみにしていたOB戦も、数々のイベントも、松本サポが掲げてくれたメッセージ横断幕も、先制点の喜びも、勝利のカモン!ロッソも、感動的な全ての事柄が、ネットらやDAZNでの後追い、追体験でした。なんとも悔しい思いですが、もうひとつの“特別な場所”でこの1年に想いをいたしながら、暇をみてはtwitterで試合の展開をハラハラしながら追いかけていたのでした。

20170416松本

システムを4-4-2に戻して2トップの一角にグスタボを初先発させた清川監督。その選択が早々に奏功しましたね。まだ互いに様子見の様相を呈していた開始7分。DFラインからのロングパスをジャンプして胸トラップした安が、キープしながら誰も寄せてこないとみると、挨拶代わりのようなミドルシュートを試みる。松本DF飯田が遮りますが、こぼれ球をすぐグスタボが拾って縦に侵入。「相手のGKが準備する前にできるだけ早く打つ」(熊日)ことだけ考えたグスタボの強烈シュートがゴールネットに突き刺さります。自身Jリーグ初ゴール。

そのときのスタジアムはどれほどの歓声だったのでしょう。われわれだったら、もう既に涙目になっていたかも知れない。

「難しい試合。われわれの力を100%発揮してゲームプランどおりの試合がしたい」(DAZN)と戦前語っていた反町監督。そのゲームプランはこれで少し修正が必要になっただろうが、しかし、智将率いる松本相手に1得点だけでは、全く心もとない。

バイタルでダイレクトパス。一発でDF裏に松本FW高崎が抜け出しますが、GK佐藤の頭を越える狙いのシュートはバーを越えて、胸を撫で下ろす。

安が痛んで前半のうちに交代を余儀なくされる。代わって入った巻が自陣深くでボールを奪うと前線のグスタボへ。グスタボのドリブルでのエリア侵入に、松本DFが5人も取り囲む。続いてもトラップして前を向いたら素早く右45度から打つ。得点をとって明らかに“乗って”きたグスタボ。松本はこのデータの少ないブラジル人FWに手を焼いているように見えました。

そのグスタボも後半足を攣ると71分齊藤に交代。松本はその少し前、セルジーニョに代えて三島。後藤に代えて岡本。

75分頃、この試合終始、厄介だった石原が左サイドを崩してのクロス。三島のヘッドはバーに嫌われ、こぼれを高崎が更にヘディングで襲いますが枠の上。この試合の最大のピンチだったかも知れません。

熊本は疲れの見えた林に代えて光永を入れ、嶋田と左右を入れ替えた。「守備の部分で光永の運動量を期待して、守備から出て行くこともできる選手なので、守備から攻撃というバランスを崩さないようにということで投入し」たという指揮官(熊本蹴球通信)。その期待どおり、光永は何度も左サイド奥で粘ってCKのチャンスを取る。ユーティリティ性もさることながら、このスキルの高さが監督の信頼を掴んでいるように思えます。

そして81分。齋藤が倒されて得たFK。上里の左足から放たれたボールは、ゴール前に飛び込んだ巻、園田の頭をかすめて、前に出られなかったGKの手も届かないゴール左隅に転がり込みます。大きな大きな2点目。ようやく突き放す追加点。

そして気の遠くなるように長い長いアディッショナルタイム5分を凌ぎきると、1万3千人以上のファンが、この特別な日の勝利をもぎ取ったのでした。

「やはり、たくさんのお客さんによる熱がスタジアムに降り注いだという感じですね」。敗戦の将・反町監督はそう言う。「主導してボールを動かせている時に何が出来たのかということに尽きる」と反省する。DAZNによれば試合を通じてのボール支配率は熊本の41%に対して、松本の59%。ただ、確かに松本にボールを持たれている時間は長くも感じましたが、今日は”持たせている”感じもした。それは「プレッシャーをかける場面と引き込む場面のメリハリを付けて、後半も良い形で得点を奪えました」(熊本蹴球通信)という清川監督の言葉にも通じるところでした。

この日の嶋田の表情もまた違っていましたね。鬼気迫るとも言えるような。何度チャンスに絡み、何度ゴールを目指したでしょうか。得点こそなりませんでしたが、「ファンや家族のことを思い、感謝をプレーで表現したかった」(熊日)という言葉は、その言葉以上に益城町出身ならではの重さがありました。

前震から1年、14日付の熊日に、この人の取材が大きく報じられていました。このブログの古くからの読者なら覚えていただいている名前かも知れません。床屋のイサムちゃん、その人でした。

「解体も、建て替えも、仮設商店への入居も、計画は全てキャンセル。やることなすこと裏目に出てしまった」と悔やむ。「将来を考えると酒量が増える」とうめくように言う(熊日)。

サッカー好きのイサムちゃん。ロアッソのことも大好きなイサムちゃん。この試合をどこかで観ていたのだろうか…。

この”特別な日”で掴み取った勝利。それは「4連敗を脱して、流れに乗るにはもってこいの相手」(安)でもあった強豪・松本から奪った勝ち点3。しかも今季初の完封勝利が花を添えました。

それは”特別な力”だったのかも知れません。この日を迎えるに当たっての選手たちの思いと、1万人以上のファンの思いが結集したホームの力だったのかも知れない。けれどそれが特別なアドレナリンの力だけで勝ったわけではないとも思いたい。

震災からちょうど1年。記念の日の試合。この勝利をもちろん深く心に刻みたい。しかし、それと同時に、復興の過程もまだ道半ばならば、ロアッソ熊本の”躍進”もまた道半ば。イサムちゃんだって、われわれだって同じ。道半ばなのではないでしょうか。

今日の勝利にとりあえずホッとして、大いに歓喜して。そして次に進む通過点のひとつにすればいい。さあ前を向きましょう。

11月3日(木)
【J2第39節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(67分)
<警告>
[松]田中隼磨(17分)、宮阪政樹(90分+3)
[熊]片山奨典(90分)
観衆:13,241人
主審:榎本一慶


「首位喰いはうまかーですね。二位ぐい、三位喰いしましょう。まだまだ腹一杯にはなりません」。いつも拍手コメントを送っていただく”ゆうらん”さんの、前節のエントリーに対してのコメントは、われわれはもちろん、熊本に係わる全ての人の気持ちだったでしょうね。首位・札幌の次に対戦する今節の相手は2位・松本。前節の快勝の勢いを持って、アウェーとはいえど連勝を飾り、一刻も早く降格可能性域から完全に脱したい。

しかし、3位清水との勝ち点3差の松本も、自動昇格圏内2位以内の確保という高いモチベーションで、1万3千人以上のアルウィンのサポーターを後ろ盾にして、熊本に立ちはだかりました。

20161103松本

序盤から勢いを持って攻め立てる松本。植田のクリアの小さいところを松本DF後藤の抑えの効いたダイレクトボレーシュートは、GK佐藤がキャッチできずに左に撥ね返す。それを拾って田中が素早くクロスを入れるがなんとかクリアします。その松本の右CK。中央での後藤のヘディングは、片山が掻き出す。危ない。

熊本は、松本の素早くそして強い球際の寄せ、インターセプトを嫌って、ロングボールで交わして攻める。見るからに痛みの激しいアルウィンのピッチを考慮したのもあるかも知れません。

スローイン。片山から貰いなおした清武がカットインしてアタッキングサード。柔らかなクロスを入れますが、これはクリアされる。いつもならこの距離から強引にでもシュートを打っていくはずの清武。前半終了間際にも似たようなシーンがありましたが、撃たない清武。敵GKがその能力をよく知っているシュミット・ダニエルとあって、完全に崩しきらないと、アバウトなシュートではゴールは割れない。そういう思い(プレッシャー)もあったのではないでしょうか。

一方的に攻められている熊本。主導権は松本にある。しかし、スカパーの解説者は、熊本の守備組織を評価してか、「どちらかというとゲームは熊本のペースで進んでいる」と言う。確かに無用に飛び込まない今日の熊本は、松本にボールを”持たせている”ようにも見える。

ただ、31分でした。松本・那須川の左からのクロス。PA内で石原への対応で上から覆いかぶさった植田がファール。PKが告げられます。キッカーは高崎。

でも何ででしょう。長年サッカーを観ていると、”予知能力”が身につくのでしょうか。何故だかこのシーン、PKは決まらないような気がなんとなくしていました。案の定、高崎のキックに左に飛んだ佐藤がばっちりセーブします。

清川監督が試合後、「PKを防ぎ流れが来ると思った」とコメントするように、こういった後は勢いが逆転するものです。しかし、PA内での松本の猛攻に対して熊本が人数をかけて防御しているなか村上が痛む。結局はピッチに戻ってきましたが、一旦担架で運ばれ、ベンチもざわつく間に、掴みかけた”流れ”を相手にまた渡してしまった。そんな感じがしました。試合は”生もの”。常々そう思っているわれわれにとって、この数分間の空白はなんとも悔やまれます。

しかし、スコアレスドローで前半を終えたのは、結果として熊本にとってはゲームプランどおりだったと言えるでしょう。シュート数は松本12に対して、熊本の1。

「多くのチャンスはないかもしれないが、ピンチを防いだのだから、チャンスは絶対来る。最後まで常に全体でサッカーをしよう」。それがハーフタイムでの清川監督の檄でした。松本のワントップ高崎は、植田と薗田が代わる代わるマークして、完全に抑えていました。

しかし。たった一瞬でした…。

67分、左サイドで攻防していた松本。石原が大きく右サイドに振った。ここで大きく広げられた熊本。植田もニアサイドに走った松本の選手に釣り出される。ここで迷わず右サイドで貰った工藤は素早くクロスを選ぶ。距離の空いたゴール前の黒木と薗田の間へ。そこに高崎が飛び込むことを信じて。

高崎がヘディングで反らすように流し込む。さすがの佐藤も触れませんでした。

この時点で、同サイドに固執せずに、逆サイドに振ってピッチを大きく使うことを選択できた松本の判断の勝利でした。負けられない熊本が、巻、平繁、岡本を次々に投入して、ここから前掛かりに仕掛けましたが、先制した試合の勝率の高い松本。自陣ゴールに寄せ付けず、1点を守り抜き、同点に追いすがろうとする熊本を退けました。

したたかな松本の戦い方に熊本は連勝ならず。勝ち点は43のまま。この日、金沢は愛媛に敗戦。北九州が長崎に引き分け勝ち点1を得て金沢を越え20位になり降格圏脱出。岐阜は22位ながらも群馬に勝利し、これまた勝ち点を37にしました。つまり、20位から22位までの3チームが、同じ勝ち点37で並ぶ事態に。わが熊本は、その3チームとの勝ち点差6で、16位に位置しています。残りは3試合…。

まったく予断の許されない状況。京都、岐阜、大阪。しかし対戦相手を見越した勝ち点計算はもちろん、他チームの対戦相手を考慮した勝ち点予想などしない。それが無駄だとわかっているから。ただただ、目の前の敵に向かっていくだけです。

ただ、今節を終えてひとつ思ったこと。対戦相手の松本山雅。下のカテゴリーでは一度も対戦せぬまま、J2昇格後に一気に抜き去られたうえに、J1に先に昇格されたクラブ。田中隼磨を始めとしてパウリーニョ、高崎、工藤…。各ポジションに、それぞれ能力のある選手を集める獲得力。なにより、J1昇格以前から、この地方都市にして1万人以上を毎試合集める観客動員力。

このままいけば、再びJ1昇格の権利を得る。この”力”は、なんなのか。どこからくるのか。長野県における松本市の位置関係、スポンサー企業の存在…。どこに力があるのでしょうか。

甲府や鳥栖といった先輩格の”プロビンチャ”だけでなく、今や岡山にも後塵を拝しているような気がして。熊本に何故できないのか。目下の残留争いが落ち着いたら、もう一度考えを深める必要がある課題だという気がしています。

さて、一足早くJ1は最終節。福岡、湘南に続き、最後に降格が決定したのは名古屋でした。まさかこの別格と思っていたビッグクラブが…。結果的には15位新潟との得失点差4が命運を分けました。勝ち点1が、1点がという思いと、年間予算にして40億、50億という別次元のチームでも、ひとつボタンを掛け違えると取り返しがつかなくなる怖さ。そんなリーグなんですね。

【J2第1節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半1-0)松本
<得点者>
[熊]清武功暉(16分)
<警告>
[熊]植田龍仁朗(49分)、清武功暉(90分+2)
[松]オビナ(24分)、當間建文(76分)
観衆:8,253人
主審:佐藤隆治
副審:八木あかね、平間亮


勝ちました!ホーム開幕戦。開幕戦勝利は2年ぶり。それにしてもホッとしたというかなんと言うか…。

待ち焦がれたリーグ開幕。三寒四温の季節のこの日は、思いがけず春の陽気を思わせる気候になりました。ピッチ上は21度。湿度は35%。風もほとんどありませんから、選手たちにとっては暑いくらいだったかも知れません。

熊本の先発は「うん。なるほど」といった布陣。新加入ではGK佐藤、CB植田が入った。前線は、ニューイヤーカップでも好調に調整できているなと感じさせた平繁と清武が組みます。

20160228松本

対する松本はいわずもがなJ1を経験してきた難敵。これまでの対戦成績も分が悪い。分が悪いというより、苦手を通り越して、勝てそうにないような気分まで漂う感じ。しかも、どのメディアもその点にフォーカスしたように、昨季の熊本を救ったともいえる救世主・GKシュミット・ダニエルが、今度は初戦から敵となってゴールマウスを守るという因縁。

ダニエルからどうやってゴールを奪うか。戦前のイメージは全く思い浮かばない。せいぜい考えられるのは、澤村公康GKコーチがシュミットのウィークポイントだと言う、速いクロスからのニアワンタッチゴールからの得点か。(熊本蹴球通信

しかしこの”因縁”のゲーム、一番の見せ場は、意外に早く訪れます。いつものとおり、いや昨年以上に序盤からチームプレスで厳しくいく熊本は、ボランチの上村がDFの頭越しにパスを送る。それをPA左できっちり収めた清武が、「ハンドを狙っていたわけではないんですけど、きわどいところにボールを入れようと思って」(九州J-PARK)上げようとしたクロスを、松本のCB飯田が腕で止める。すかさず主審がペナルティマークを指差します。PK!

守備範囲の広さ、”流れ”のなかの反応はピカイチのダニエル。しかし熊本にいたときもPKストップの実績はない。キッカーはもちろん清武。大きく深呼吸すると、「ダンは去年、僕のPKも見ていますし、僕もギリギリまで判断して」、ダニエルが山を張って横っ飛びした逆をしっかり突いて、ゴール左に流し込みました。先制!飛び上がるスタジアム。

清武は真っ先にベンチの清川監督のもとに駆け寄り抱擁します。ダニエルの守るゴールマウスを破って得点を挙げたのは、同じく昨季の立役者、今季も助っ人としてやってきてくれた清武その人。背中には(レンタル選手にはあまり与えられることのない)10番が。

その後も中盤でのボール奪取からの反転、パスを受けてすかさず前を向く清武や平繁。松本の攻撃は単調で、熊本は危なげない試合運び。ただ20分過ぎ、相手に与えたFK。初めてのセットプレー。今年もゾーンで守る熊本にとっての”課題”であるだけに、不安がよぎります。山形から移籍した名手・宮阪から放たれたボールは、FWオビナが中央からフリーで叩き付けた。しかし運よくゴール左に反れてくれます。助かった。

1点のアドバンテージで後半を迎える。敵将・反町監督がどう修正してくるのか。講じた策は「パスのアップテンポ」「長い距離を走って裏を取る動き」、そして工藤をシャドーに持ってくる。

後半は完全に松本に支配されましたね。最初の15分を凌げば押し返せるとも思っていたのですが、それもなかなか叶わない。度重なる松本のCKに、集中を切らすなと祈るばかり。逆にカウンターから追加点を狙えるかとも思ったのですが、なかなか持ち上がることすら難しい。70分には熊本陣内で奪われバイタルを脅かされシュート。ブロックするも再びシュート。藏川や植田が身体を投げ出してブロック。最後の松本のシュートは枠の上。危ない。

熊本は嶋田に代えて巻を投入。前線で弱くなった”守備”をテコ入れ。しかしなかなか松本の圧力を押し返すまでにはいかない。追加点が望めないまま時間は過ぎていく。試合後、清川監督が吐露するように、「どのタイミングかというのは自分も悩んでいて、もっと早ければ、跳ね返してこっちに流れを持ってこれるのかという、本当にギリギリのところでした」という時間帯、84分にFW平繁を下げると、DF鈴木をDFラインとボランチの間を埋める、松本に脅かされていたバイタルエリアの真ん中に、丁度アンカーのように投入した。まさしく「逃げ切り」のサインでした。

アディショナルタイムは5分。松本は更に攻勢を強める。前線を薄くした熊本は、もはやクリア一辺倒。身体を張ってゴールマウスを死守する。味方はいなくてもとにかく前へ蹴り返す。とにかくゴールより遠いところへ。時間を消費させるためだけに蹴り返す。ただそれだけを繰り返す。

それはまさしく勝利への執念に違いありませんでした。なりふり構わないプレー。実に泥臭い。勝ちたい!清川新監督とともに勝利を。

終了間際のラストプレー。松本のCKにGKダニエルも上がってきた。松本も最後まで食い下がる。J1経験組として、このまま負けるわけにいかない。しかし、このセットプレーもクリア!そして終了の笛が鳴る。

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「開幕戦は内容より結果が大事だと思うので、勝ちきる事を意識していました」。今季キャプテンマークを巻く岡本は、試合後そうコメントしました。「苦しい時間もありましたけど、皆しっかり我慢できた」と。確かにこれまでの熊本だったら、あの相手の圧力に必ず屈していた。同点、あるいはその先に逆転という展開もありえた。戦前、われわれもなんとか引き分けられれば、上々の開幕と思っていたくらいです。その松本に結果を出して見せた。

しかしそれを撥ね返した、凌ぎきった。この”粘り”は、「勝ちたい」という思いと同時に、新監督・清川監督に「勝たせたい」という思いが優った結果ではないのかと。

試合後、「非常に疲れています(笑)。選手以上に疲れているんじゃないかなと」とコメントした清川監督。こんなに正直に心情を吐露した監督は今までいない。試合開始前のスカパーの映像でも、監督の表情は緊張そのもの。

チーム戦術の継続を最重点に、監督経験のない清川氏を選んだ。そしてそれを支える集団指導体制もあまり例がない。そんな新任監督に、早くも勝利という結果をもたらしたイレブン。「キヨさんに、早く勝利をプレゼントしたい」という選手の気持ちが表れての今日の泥臭いまでの勝利。選手と監督のその”近さ”に、今季の熊本の新しい”可能性”を感じざるを得ない勝利劇。

決して快心とはいえませんが、長かったオフシーズンからのいろんなモヤモヤを晴らしてくれるたような。チームが一丸となってひとつの答を出して、さあ新しいシーズンが始まる。実に清々しい、開幕戦らしいゲームになったなと思います。

7月30日(水) 2014 J2リーグ戦 第24節
松本 2 - 1 熊本 (19:04/松本/11,265人)
得点者:41' 養父雄仁(熊本)、44' 喜山康平(松本)、45'+1 サビア(松本)


土曜日の激闘から中三日。ミッドウィークのアウェイゲーム。相手は自動昇格圏の2位に浮上した松本。正直なところ、この試合はコンディション的にかなり難しいのではないか。厳しい結果も覚悟しながら、それでも熊本のゲームがどこまでやれるのか。しかし勝利は欲しい。そんな、ちょっといつもとは違う微妙な気持ちのままゲームに入りました。

出場停止の片山の代わりに左には藏川。CBには前節足を痛めた橋本を休ませ18日に獲得が発表されたばかりのキム・ビョンヨンをいきなりの先発で起用。相方は篠原とし、園田を右SBに出す形のDFライン。

20140730松本

前半、思ったよりも熊本のペースで戦った終わり際の41分、養父のゴールで先制します。波状攻撃のなか左から作りなおす。シュートコースのなくなった齊藤がマイナスパス。それを思い切りよく養父が打つと、相手に当たってゴール左隅に決まりました。

ただ、スカパーのアナウンサーによると、先制してからの勝率は、松本が92.9%なのに対し、熊本のそれは42.5%だという。そんな嫌な数字を聞かされると、立て続けに失点。前半残り5分の間に、逆転されてしまいます。

同点弾は、喜山が放った振り向きざまのシュート。逆転弾は、サビアのヘッド。いずれも岩上の得意とするロングスローインから。

「警戒していたセットプレーでやられてしまったことは悔しいし、僕たちの課題。そろそろ進歩しないといけない」「良い時間帯でのゴールだったので、守りきらないといけなかった」と自身の先制点を守りきれなかった養父が悔やむ。

養父が課題としたのはセットプレーでやられてしまったことなのか、それとも守りきらないといけないという思いなのか。しかし、今の熊本にはどう見ても「守りきる」という部分にひとつ大きな課題があるのは間違いないと思うし、それが典型的な形で出てしまったゲームだったのではないかと。

「セットプレー、特にロングスローは相手の最大の武器ということで警戒していて、それなりにしっかりと跳ね返してくれていました。やはり下がって押し込まれる中で、結局ロングスローから2失点ということで残念に思っています。」と、小野監督は分析を交えた。

先制からわずか5分の間に、セットプレーからの連続失点であっと言う間に逆転されてしまいました。前半41分という時間帯で、このゲームを守りきろうという意識はあるはずはないのですが…、無意識の意識なのか。恐らくは、前半はこのまま守りきろうというイメージはあったかもしれません。しかし、先制を境にまったく別のゲームになってしまいました。

「このスタジアムの雰囲気の中で後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが、かなり重圧をかけられているような錯覚というか重圧感が選手にはあったかもしれません。」(小野監督)

一度、相手にわたってしまった流れ、主導権は、アウェイのアルウィンでは、取り戻すどころか、さらに増幅されてしまいました。

50センチの間合いの攻防で勝負するチームなのに、競ることすらできなくなってしまう。体力的な厳しさも顔を出し始める。アフターのファウルが増え始め、セットプレーからの失点リスクが高まっていく。

巻を投入するも、全体に押し込まれた陣形は、前線の枚数不足で、巻が集中してマークされ、なかなか打開できない。なのに熊本は中盤を省略してロングボールに固執する。前節、巻が効いていただけに、そのイメージが繋がってのことだったのでしょうが、敵将・反町監督のスカウティングにはまるのには十分でした。結果、松本21、熊本4というシュート数。後半、熊本はシュートゼロに終わっています。

しかし、もうひとつ気づかされるのは、完全に自分たちのゲームではなくなってしまった後半、それでも追加点は許さなかったということ。

振り返ってみれば、ほとんどポゼッションできない時間帯が続き、熊本の本来の戦いとはまったく違う展開になってしまいましたが、それでも、熊本の選手たちの気力自体は決して萎えたりしなかった。

スカパー解説者が、ゲーム最終盤にいたっても、カウンターを阻止すべく、激走する黒木や、孤立しながらも体ごとぶつけて空中戦を闘う巻を称賛したように。

ゲーム全体としてはやられているけれど、局面、局面の個々の戦いでは決して負けていない。結果、最後の10センチ、体をはっての守りは試合終了まで持続できた。やられている熊本から見れば、厳しい戦況ばかりが目につきましたが、逆に松本から見ればどうだったのでしょうか。あの後半の展開で、追加点を奪えず、それどころか、決定機(本当の意味での)すら作れていなかったことに。

ピッチ上の熊本の選手たちには、多分、あの大量失点の3試合を思い起こしていたんではないでしょうか。特に、最終ラインの篠原の思いは、ひときわだったのではないかと。

「後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが…」と、わが指揮官は言う。

結局、ゲームを立て直すことはできなかったけれど、ゲームが壊れることにはならなかった。少なくとも、何も得るところのないゲームではなかった。負けゲームで言うのもなんですが、こんなゲームでも、チームの成長を感じる。ひとつには今日確信した新しい戦力、キム・ビョンヨン。確かな技術とともに闘志も伝わるプレーぶり。今後に大いに期待が持てました。

「本当に強いチームなら3点目をとらないといけない。しっぺ返しをもらってもおかしくなかった」と振り返る反町監督の言葉は、半分くらい本音が混じっているのかもしれません。

ただ、そんななかでも。いつかのエントリーで「GK陣もまさしく”育成”の最中」とは書きましたが。まるで湘南戦の菊池のシュートを思い起こさせるような、同じニアサイドへのグラウンダーの早いシュートで割られた今日の同点弾。これもまた熊本をスカウティングするなかのひとつになってはいないかと思うのは考えすぎでしょうか。

「シュートまでのイメージは出来ていたが、止められたかなと思った。打てば入るもんだなと(苦笑)」と言う喜山。この敗戦の悔しさに追い打ちをかけるようなコメントでした。