11月3日(木)
【J2第39節】(松本)
松本 1-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[松]高崎寛之(67分)
<警告>
[松]田中隼磨(17分)、宮阪政樹(90分+3)
[熊]片山奨典(90分)
観衆:13,241人
主審:榎本一慶


「首位喰いはうまかーですね。二位ぐい、三位喰いしましょう。まだまだ腹一杯にはなりません」。いつも拍手コメントを送っていただく”ゆうらん”さんの、前節のエントリーに対してのコメントは、われわれはもちろん、熊本に係わる全ての人の気持ちだったでしょうね。首位・札幌の次に対戦する今節の相手は2位・松本。前節の快勝の勢いを持って、アウェーとはいえど連勝を飾り、一刻も早く降格可能性域から完全に脱したい。

しかし、3位清水との勝ち点3差の松本も、自動昇格圏内2位以内の確保という高いモチベーションで、1万3千人以上のアルウィンのサポーターを後ろ盾にして、熊本に立ちはだかりました。

20161103松本

序盤から勢いを持って攻め立てる松本。植田のクリアの小さいところを松本DF後藤の抑えの効いたダイレクトボレーシュートは、GK佐藤がキャッチできずに左に撥ね返す。それを拾って田中が素早くクロスを入れるがなんとかクリアします。その松本の右CK。中央での後藤のヘディングは、片山が掻き出す。危ない。

熊本は、松本の素早くそして強い球際の寄せ、インターセプトを嫌って、ロングボールで交わして攻める。見るからに痛みの激しいアルウィンのピッチを考慮したのもあるかも知れません。

スローイン。片山から貰いなおした清武がカットインしてアタッキングサード。柔らかなクロスを入れますが、これはクリアされる。いつもならこの距離から強引にでもシュートを打っていくはずの清武。前半終了間際にも似たようなシーンがありましたが、撃たない清武。敵GKがその能力をよく知っているシュミット・ダニエルとあって、完全に崩しきらないと、アバウトなシュートではゴールは割れない。そういう思い(プレッシャー)もあったのではないでしょうか。

一方的に攻められている熊本。主導権は松本にある。しかし、スカパーの解説者は、熊本の守備組織を評価してか、「どちらかというとゲームは熊本のペースで進んでいる」と言う。確かに無用に飛び込まない今日の熊本は、松本にボールを”持たせている”ようにも見える。

ただ、31分でした。松本・那須川の左からのクロス。PA内で石原への対応で上から覆いかぶさった植田がファール。PKが告げられます。キッカーは高崎。

でも何ででしょう。長年サッカーを観ていると、”予知能力”が身につくのでしょうか。何故だかこのシーン、PKは決まらないような気がなんとなくしていました。案の定、高崎のキックに左に飛んだ佐藤がばっちりセーブします。

清川監督が試合後、「PKを防ぎ流れが来ると思った」とコメントするように、こういった後は勢いが逆転するものです。しかし、PA内での松本の猛攻に対して熊本が人数をかけて防御しているなか村上が痛む。結局はピッチに戻ってきましたが、一旦担架で運ばれ、ベンチもざわつく間に、掴みかけた”流れ”を相手にまた渡してしまった。そんな感じがしました。試合は”生もの”。常々そう思っているわれわれにとって、この数分間の空白はなんとも悔やまれます。

しかし、スコアレスドローで前半を終えたのは、結果として熊本にとってはゲームプランどおりだったと言えるでしょう。シュート数は松本12に対して、熊本の1。

「多くのチャンスはないかもしれないが、ピンチを防いだのだから、チャンスは絶対来る。最後まで常に全体でサッカーをしよう」。それがハーフタイムでの清川監督の檄でした。松本のワントップ高崎は、植田と薗田が代わる代わるマークして、完全に抑えていました。

しかし。たった一瞬でした…。

67分、左サイドで攻防していた松本。石原が大きく右サイドに振った。ここで大きく広げられた熊本。植田もニアサイドに走った松本の選手に釣り出される。ここで迷わず右サイドで貰った工藤は素早くクロスを選ぶ。距離の空いたゴール前の黒木と薗田の間へ。そこに高崎が飛び込むことを信じて。

高崎がヘディングで反らすように流し込む。さすがの佐藤も触れませんでした。

この時点で、同サイドに固執せずに、逆サイドに振ってピッチを大きく使うことを選択できた松本の判断の勝利でした。負けられない熊本が、巻、平繁、岡本を次々に投入して、ここから前掛かりに仕掛けましたが、先制した試合の勝率の高い松本。自陣ゴールに寄せ付けず、1点を守り抜き、同点に追いすがろうとする熊本を退けました。

したたかな松本の戦い方に熊本は連勝ならず。勝ち点は43のまま。この日、金沢は愛媛に敗戦。北九州が長崎に引き分け勝ち点1を得て金沢を越え20位になり降格圏脱出。岐阜は22位ながらも群馬に勝利し、これまた勝ち点を37にしました。つまり、20位から22位までの3チームが、同じ勝ち点37で並ぶ事態に。わが熊本は、その3チームとの勝ち点差6で、16位に位置しています。残りは3試合…。

まったく予断の許されない状況。京都、岐阜、大阪。しかし対戦相手を見越した勝ち点計算はもちろん、他チームの対戦相手を考慮した勝ち点予想などしない。それが無駄だとわかっているから。ただただ、目の前の敵に向かっていくだけです。

ただ、今節を終えてひとつ思ったこと。対戦相手の松本山雅。下のカテゴリーでは一度も対戦せぬまま、J2昇格後に一気に抜き去られたうえに、J1に先に昇格されたクラブ。田中隼磨を始めとしてパウリーニョ、高崎、工藤…。各ポジションに、それぞれ能力のある選手を集める獲得力。なにより、J1昇格以前から、この地方都市にして1万人以上を毎試合集める観客動員力。

このままいけば、再びJ1昇格の権利を得る。この”力”は、なんなのか。どこからくるのか。長野県における松本市の位置関係、スポンサー企業の存在…。どこに力があるのでしょうか。

甲府や鳥栖といった先輩格の”プロビンチャ”だけでなく、今や岡山にも後塵を拝しているような気がして。熊本に何故できないのか。目下の残留争いが落ち着いたら、もう一度考えを深める必要がある課題だという気がしています。

さて、一足早くJ1は最終節。福岡、湘南に続き、最後に降格が決定したのは名古屋でした。まさかこの別格と思っていたビッグクラブが…。結果的には15位新潟との得失点差4が命運を分けました。勝ち点1が、1点がという思いと、年間予算にして40億、50億という別次元のチームでも、ひとつボタンを掛け違えると取り返しがつかなくなる怖さ。そんなリーグなんですね。

【J2第1節】(うまスタ)
熊本 1-0(前半1-0)松本
<得点者>
[熊]清武功暉(16分)
<警告>
[熊]植田龍仁朗(49分)、清武功暉(90分+2)
[松]オビナ(24分)、當間建文(76分)
観衆:8,253人
主審:佐藤隆治
副審:八木あかね、平間亮


勝ちました!ホーム開幕戦。開幕戦勝利は2年ぶり。それにしてもホッとしたというかなんと言うか…。

待ち焦がれたリーグ開幕。三寒四温の季節のこの日は、思いがけず春の陽気を思わせる気候になりました。ピッチ上は21度。湿度は35%。風もほとんどありませんから、選手たちにとっては暑いくらいだったかも知れません。

熊本の先発は「うん。なるほど」といった布陣。新加入ではGK佐藤、CB植田が入った。前線は、ニューイヤーカップでも好調に調整できているなと感じさせた平繁と清武が組みます。

20160228松本

対する松本はいわずもがなJ1を経験してきた難敵。これまでの対戦成績も分が悪い。分が悪いというより、苦手を通り越して、勝てそうにないような気分まで漂う感じ。しかも、どのメディアもその点にフォーカスしたように、昨季の熊本を救ったともいえる救世主・GKシュミット・ダニエルが、今度は初戦から敵となってゴールマウスを守るという因縁。

ダニエルからどうやってゴールを奪うか。戦前のイメージは全く思い浮かばない。せいぜい考えられるのは、澤村公康GKコーチがシュミットのウィークポイントだと言う、速いクロスからのニアワンタッチゴールからの得点か。(熊本蹴球通信

しかしこの”因縁”のゲーム、一番の見せ場は、意外に早く訪れます。いつものとおり、いや昨年以上に序盤からチームプレスで厳しくいく熊本は、ボランチの上村がDFの頭越しにパスを送る。それをPA左できっちり収めた清武が、「ハンドを狙っていたわけではないんですけど、きわどいところにボールを入れようと思って」(九州J-PARK)上げようとしたクロスを、松本のCB飯田が腕で止める。すかさず主審がペナルティマークを指差します。PK!

守備範囲の広さ、”流れ”のなかの反応はピカイチのダニエル。しかし熊本にいたときもPKストップの実績はない。キッカーはもちろん清武。大きく深呼吸すると、「ダンは去年、僕のPKも見ていますし、僕もギリギリまで判断して」、ダニエルが山を張って横っ飛びした逆をしっかり突いて、ゴール左に流し込みました。先制!飛び上がるスタジアム。

清武は真っ先にベンチの清川監督のもとに駆け寄り抱擁します。ダニエルの守るゴールマウスを破って得点を挙げたのは、同じく昨季の立役者、今季も助っ人としてやってきてくれた清武その人。背中には(レンタル選手にはあまり与えられることのない)10番が。

その後も中盤でのボール奪取からの反転、パスを受けてすかさず前を向く清武や平繁。松本の攻撃は単調で、熊本は危なげない試合運び。ただ20分過ぎ、相手に与えたFK。初めてのセットプレー。今年もゾーンで守る熊本にとっての”課題”であるだけに、不安がよぎります。山形から移籍した名手・宮阪から放たれたボールは、FWオビナが中央からフリーで叩き付けた。しかし運よくゴール左に反れてくれます。助かった。

1点のアドバンテージで後半を迎える。敵将・反町監督がどう修正してくるのか。講じた策は「パスのアップテンポ」「長い距離を走って裏を取る動き」、そして工藤をシャドーに持ってくる。

後半は完全に松本に支配されましたね。最初の15分を凌げば押し返せるとも思っていたのですが、それもなかなか叶わない。度重なる松本のCKに、集中を切らすなと祈るばかり。逆にカウンターから追加点を狙えるかとも思ったのですが、なかなか持ち上がることすら難しい。70分には熊本陣内で奪われバイタルを脅かされシュート。ブロックするも再びシュート。藏川や植田が身体を投げ出してブロック。最後の松本のシュートは枠の上。危ない。

熊本は嶋田に代えて巻を投入。前線で弱くなった”守備”をテコ入れ。しかしなかなか松本の圧力を押し返すまでにはいかない。追加点が望めないまま時間は過ぎていく。試合後、清川監督が吐露するように、「どのタイミングかというのは自分も悩んでいて、もっと早ければ、跳ね返してこっちに流れを持ってこれるのかという、本当にギリギリのところでした」という時間帯、84分にFW平繁を下げると、DF鈴木をDFラインとボランチの間を埋める、松本に脅かされていたバイタルエリアの真ん中に、丁度アンカーのように投入した。まさしく「逃げ切り」のサインでした。

アディショナルタイムは5分。松本は更に攻勢を強める。前線を薄くした熊本は、もはやクリア一辺倒。身体を張ってゴールマウスを死守する。味方はいなくてもとにかく前へ蹴り返す。とにかくゴールより遠いところへ。時間を消費させるためだけに蹴り返す。ただそれだけを繰り返す。

それはまさしく勝利への執念に違いありませんでした。なりふり構わないプレー。実に泥臭い。勝ちたい!清川新監督とともに勝利を。

終了間際のラストプレー。松本のCKにGKダニエルも上がってきた。松本も最後まで食い下がる。J1経験組として、このまま負けるわけにいかない。しかし、このセットプレーもクリア!そして終了の笛が鳴る。

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「開幕戦は内容より結果が大事だと思うので、勝ちきる事を意識していました」。今季キャプテンマークを巻く岡本は、試合後そうコメントしました。「苦しい時間もありましたけど、皆しっかり我慢できた」と。確かにこれまでの熊本だったら、あの相手の圧力に必ず屈していた。同点、あるいはその先に逆転という展開もありえた。戦前、われわれもなんとか引き分けられれば、上々の開幕と思っていたくらいです。その松本に結果を出して見せた。

しかしそれを撥ね返した、凌ぎきった。この”粘り”は、「勝ちたい」という思いと同時に、新監督・清川監督に「勝たせたい」という思いが優った結果ではないのかと。

試合後、「非常に疲れています(笑)。選手以上に疲れているんじゃないかなと」とコメントした清川監督。こんなに正直に心情を吐露した監督は今までいない。試合開始前のスカパーの映像でも、監督の表情は緊張そのもの。

チーム戦術の継続を最重点に、監督経験のない清川氏を選んだ。そしてそれを支える集団指導体制もあまり例がない。そんな新任監督に、早くも勝利という結果をもたらしたイレブン。「キヨさんに、早く勝利をプレゼントしたい」という選手の気持ちが表れての今日の泥臭いまでの勝利。選手と監督のその”近さ”に、今季の熊本の新しい”可能性”を感じざるを得ない勝利劇。

決して快心とはいえませんが、長かったオフシーズンからのいろんなモヤモヤを晴らしてくれるたような。チームが一丸となってひとつの答を出して、さあ新しいシーズンが始まる。実に清々しい、開幕戦らしいゲームになったなと思います。

7月30日(水) 2014 J2リーグ戦 第24節
松本 2 - 1 熊本 (19:04/松本/11,265人)
得点者:41' 養父雄仁(熊本)、44' 喜山康平(松本)、45'+1 サビア(松本)


土曜日の激闘から中三日。ミッドウィークのアウェイゲーム。相手は自動昇格圏の2位に浮上した松本。正直なところ、この試合はコンディション的にかなり難しいのではないか。厳しい結果も覚悟しながら、それでも熊本のゲームがどこまでやれるのか。しかし勝利は欲しい。そんな、ちょっといつもとは違う微妙な気持ちのままゲームに入りました。

出場停止の片山の代わりに左には藏川。CBには前節足を痛めた橋本を休ませ18日に獲得が発表されたばかりのキム・ビョンヨンをいきなりの先発で起用。相方は篠原とし、園田を右SBに出す形のDFライン。

20140730松本

前半、思ったよりも熊本のペースで戦った終わり際の41分、養父のゴールで先制します。波状攻撃のなか左から作りなおす。シュートコースのなくなった齊藤がマイナスパス。それを思い切りよく養父が打つと、相手に当たってゴール左隅に決まりました。

ただ、スカパーのアナウンサーによると、先制してからの勝率は、松本が92.9%なのに対し、熊本のそれは42.5%だという。そんな嫌な数字を聞かされると、立て続けに失点。前半残り5分の間に、逆転されてしまいます。

同点弾は、喜山が放った振り向きざまのシュート。逆転弾は、サビアのヘッド。いずれも岩上の得意とするロングスローインから。

「警戒していたセットプレーでやられてしまったことは悔しいし、僕たちの課題。そろそろ進歩しないといけない」「良い時間帯でのゴールだったので、守りきらないといけなかった」と自身の先制点を守りきれなかった養父が悔やむ。

養父が課題としたのはセットプレーでやられてしまったことなのか、それとも守りきらないといけないという思いなのか。しかし、今の熊本にはどう見ても「守りきる」という部分にひとつ大きな課題があるのは間違いないと思うし、それが典型的な形で出てしまったゲームだったのではないかと。

「セットプレー、特にロングスローは相手の最大の武器ということで警戒していて、それなりにしっかりと跳ね返してくれていました。やはり下がって押し込まれる中で、結局ロングスローから2失点ということで残念に思っています。」と、小野監督は分析を交えた。

先制からわずか5分の間に、セットプレーからの連続失点であっと言う間に逆転されてしまいました。前半41分という時間帯で、このゲームを守りきろうという意識はあるはずはないのですが…、無意識の意識なのか。恐らくは、前半はこのまま守りきろうというイメージはあったかもしれません。しかし、先制を境にまったく別のゲームになってしまいました。

「このスタジアムの雰囲気の中で後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが、かなり重圧をかけられているような錯覚というか重圧感が選手にはあったかもしれません。」(小野監督)

一度、相手にわたってしまった流れ、主導権は、アウェイのアルウィンでは、取り戻すどころか、さらに増幅されてしまいました。

50センチの間合いの攻防で勝負するチームなのに、競ることすらできなくなってしまう。体力的な厳しさも顔を出し始める。アフターのファウルが増え始め、セットプレーからの失点リスクが高まっていく。

巻を投入するも、全体に押し込まれた陣形は、前線の枚数不足で、巻が集中してマークされ、なかなか打開できない。なのに熊本は中盤を省略してロングボールに固執する。前節、巻が効いていただけに、そのイメージが繋がってのことだったのでしょうが、敵将・反町監督のスカウティングにはまるのには十分でした。結果、松本21、熊本4というシュート数。後半、熊本はシュートゼロに終わっています。

しかし、もうひとつ気づかされるのは、完全に自分たちのゲームではなくなってしまった後半、それでも追加点は許さなかったということ。

振り返ってみれば、ほとんどポゼッションできない時間帯が続き、熊本の本来の戦いとはまったく違う展開になってしまいましたが、それでも、熊本の選手たちの気力自体は決して萎えたりしなかった。

スカパー解説者が、ゲーム最終盤にいたっても、カウンターを阻止すべく、激走する黒木や、孤立しながらも体ごとぶつけて空中戦を闘う巻を称賛したように。

ゲーム全体としてはやられているけれど、局面、局面の個々の戦いでは決して負けていない。結果、最後の10センチ、体をはっての守りは試合終了まで持続できた。やられている熊本から見れば、厳しい戦況ばかりが目につきましたが、逆に松本から見ればどうだったのでしょうか。あの後半の展開で、追加点を奪えず、それどころか、決定機(本当の意味での)すら作れていなかったことに。

ピッチ上の熊本の選手たちには、多分、あの大量失点の3試合を思い起こしていたんではないでしょうか。特に、最終ラインの篠原の思いは、ひときわだったのではないかと。

「後半はもう少し落ち着いて攻める場面はあったと思いますが…」と、わが指揮官は言う。

結局、ゲームを立て直すことはできなかったけれど、ゲームが壊れることにはならなかった。少なくとも、何も得るところのないゲームではなかった。負けゲームで言うのもなんですが、こんなゲームでも、チームの成長を感じる。ひとつには今日確信した新しい戦力、キム・ビョンヨン。確かな技術とともに闘志も伝わるプレーぶり。今後に大いに期待が持てました。

「本当に強いチームなら3点目をとらないといけない。しっぺ返しをもらってもおかしくなかった」と振り返る反町監督の言葉は、半分くらい本音が混じっているのかもしれません。

ただ、そんななかでも。いつかのエントリーで「GK陣もまさしく”育成”の最中」とは書きましたが。まるで湘南戦の菊池のシュートを思い起こさせるような、同じニアサイドへのグラウンダーの早いシュートで割られた今日の同点弾。これもまた熊本をスカウティングするなかのひとつになってはいないかと思うのは考えすぎでしょうか。

「シュートまでのイメージは出来ていたが、止められたかなと思った。打てば入るもんだなと(苦笑)」と言う喜山。この敗戦の悔しさに追い打ちをかけるようなコメントでした。

2014.03.12 松本戦。惜敗
3月9日(日) 2014 J2リーグ戦 第2節
熊本 0 - 1 松本 (16:04/うまスタ/5,521人)
得点者:70' サビア(松本)


「100パーセント良いゲームをしてもそれがすべて勝利につながるとは限らない。ゲーム全体を通して集中を切らさず、ゴールに向かう姿勢を見せてくれた」。
「全ての決定機で決められるわけではない。一つでも多く機会を増やして、その精度を高めていく」。
そう試合後のインタビューでコメントした小野監督。

1プレー1プレー、1ゲーム1ゲームに集中しながら、1プレー、1ゲームの結果だけではない、サッカー自体のクオリティを上げることに向かっていくことを重要視している。そんな監督としての基本姿勢を、こんなゲームの試合後コメントでスッと出してくる。

ホームでの初めての敗戦。コメントも難しいでしょうが、目指すところに向かう、いいパフォーマンスであればしっかりと選手の頑張りを称える。決して“負け惜しみ”には聞こえない内容でした。

相手は松本。そして反町監督。まったくいいイメージがない。下手すると大量失点を食らってしまうような、そんな心配なゲーム前でした。

20140309松本

前節・福岡戦と同じく、いや、やや主導権を握られていたものの、決定的なピンチはほとんどなく、カウンターを受けたシーンでもゴール前のDFの枚数は常に安定していた。

ただ攻撃は、松本のDFラインの裏を狙うものの、福岡のときほどうまくいかず、3バックの脇のスペースも活かせない。特に開幕戦で見せたボール奪取も、松本に奪いどころを消されてしまってうまくいかない。随所で数的優位を作られる。そこには、反町サッカーが3年目かけて育て上げた“運動量”が根底にあり、そのうえに浸透した“戦術”がありました。

失点は、巻から岡本への交代が準備されている時間帯でした。クリアボールが相手にあたって、左サイドを上がっていた鐡戸の足元に転がってしまう。難なくフリーでクロスを入れると、ニアに飛び込んだサビアが頭で反らす。確かに「一瞬の隙」「ポジショニングのミス」(矢野)と言えました。

ここからどう戦うのか。

われわれが今シーズン、このチームを見るうえで、最も注視したいのはそこでした。開幕戦の失点は、追いつかれようとする失点でしたが、この試合では先に点を取られたという大きな違いもありました。

澤田、高橋と繰り出した交代カード。パワープレーぎみになった戦術のなかで、タレントが活かされない部分はあったものの、「あわや」というシュートシーンはあった。同点の匂いはプンプンしていた。

試合後の矢野が、「失点につながるようなカウンターを受けることは少ないし、点を取られた後に崩れることはなくなった」と言うように、有効なカウンターのチャンスは熊本が凌いでいたわけで。互いが、攻撃への反転、守りへの素早い帰陣をチームコンセプトにするなかで、逆に、その一瞬の攻め、守りの精度の差が、これまた勝敗を決してしまった。そう思います。

「下を向く選手はいなかった」と書いたのは翌日の熊日。負け惜しみや強がりではなく、もちろん敗戦にいいも悪いもないけれど。“いい感じで負けた”。この試合を見た誰もが、“五分五分”だったと感じただろうし、多分やっている選手が一番、そう感じていることでしょう。

わずか2試合目。しかしこの2試合で、10年目のシーズンで初めて感じる、なんとなくだけど“確かな”感覚。激しいけれどクールな戦いぶり。

試合後、熊本の印象を問われた反町監督。「なんせ小野監督は私のS級の先生でありますから」と冗談まじりに前置きしながらも、「昨年に比べると判断とかチームの勢いとか、チームコンセプトとかが伝わるような、非常にいいチームに仕上がっている」と言わしめた。“リップサービス”とは無縁なこの人に。「どっちに転んでもおかしくないようなゲームだったと思います」というのは、まさしく実感ではなかったでしょうか。

この試合で感じたのは、チームとしての“メンタルの進歩”。そう言えるのではないでしょうか。



7月7日(日) 2013 J2リーグ戦 第23節
熊本 0 - 3 松本 (19:04/うまスタ/4,139人)
得点者:43' ホドリゴカベッサ(松本)、52' 玉林睦実(松本)、80' 塩沢勝吾(松本)


前節の引き分けに関してわれわれは、連敗という「悪い流れを払しょくできたという意味では、重要な勝ち点1だった」と書きました。神戸戦で守備組織を一度整理し、ピッチコンディションの悪い愛媛戦をなんとかドローに収めて、後半戦さあこれから反転攻勢だという思いだったのですが。なんともまぁ、「まさか…」と呟きたくなるような不甲斐ない試合を見せられてしまいました。

朝から時折の激しい雨と、強い日差しが交互に繰り返す不思議な天候。試合開始の頃には、梅雨というよりすっかり夏空。気温は 28.3度と、スタンドには心地よい風が吹いていたものの、ピッチ上の湿度は 82%という蒸し風呂状態だったようです。

ホームとは言え、熊本は勝利から遠ざかっている。前節、水しぶきの試合から中3日の連戦。「大味な試合の後だったので、余韻が残りそうだった」とは、戦前の矢野のコメント。このカテゴリーにしてもなかなか切り替えが難しいというのも意外でしたが、フィジカル、メンタルともに相当に厳しい状況でのゲームというのが客観情勢だったのでしょう。

20130707松本戦

後ろでつなぐ熊本。後ろで徹底してつなぐ。ここで取られないことは分かるが、つなぐことで一杯いっぱいなのもわかる。

「後ろでの回しがうまくいかなくて、どんどん下がっちゃったというのが、攻撃がうまくいかなかった原因。ボランチも下がるし」(J’s Goal)と言うのは吉田監督。しかし当の原田は「暑かったので、相手の前線の選手を走らせようと最終ラインで球を回した」と言う。高橋は「僕らセンターバックがボランチやサイドの選手をもっと上げられるように(ならないと)」と。確かに堀米の位置も低かった。このあたり、監督も含め、チームの意思はどこにあったのでしょう。

「パスコースを制限されてうまく散らせなかった」(吉田監督)のは確かでした。松本の前線の3人が、高い位置からしつこくプレスを掛けてパスコースを限定する。「ボランチの横のところにどういう対応するかというのは、映像を見せながら少し話をした」というのは敵将・反町監督。中盤も含めて熊本対策を練っていました。今シーズンの自らのホーム開幕戦で1-2の敗戦を喫したことへの意趣返し。目に物見せてやるという強烈な意志は半端ではありませんでした。

果たして熊本側(吉田監督)の、松本に対するスカウティングはどうだったのか。

走れるのはわれわれのほうだ、Jリーグのなかで一番きつい練習をしている…。という、勝利したときほど饒舌ないつもの反町節。しかし、単純にスピードやスタミナで熊本が劣っているというのではないような気がします。ただ“走る”ことで90分間を、長いリーグ戦を通していくのは無理だし、無謀だし。

カウンターへの準備は出来ていた。失点の場面も人数は足りていた。一瞬の隙。ノーマーク。数的に有利でなくても、ちょっとした局面を強引に作ってしまう松本のエネルギー。そしてクロスの精度×シュートの精度。

いわば、動き出し負け。飛び出し負け。反町監督の言う“走る”は、決定的な動きのことと理解すべきなのでしょう。試合最終盤になってもその決定的な動きができること。おそらく常々、相手DFの死角になるように動き出し、飛び出していくことを徹底的に練習しているのだろうと思わせます。2点目の玉林の長い距離の駆け上がりなど、その典型ではないでしょうか。「キツかったけれど相手もキツそうだったので、走れば勝てると思っていた」と言う玉林。なんともけれん味のない言葉です。

われわれが、この局面で、この日のゲームについて何かもっともらしく、解説調で語っても、それはみんな百も承知でわかっているわけで。そんなことより、失点の仕方がいつもあっさりで、それがわれわれファンでさえ、がっくりと膝をつかせてしまう。

「人数は足りていた」なかでの今日の失点は、組織的に崩壊した北九州戦の場合と違って、個の責任も大きい。「今日は個人に与えられた仕事ができなかった」と矢野も悔やむ。

リーグ前半戦の総括をする熊日の連載「ロアッソ雌伏」の2回目(7月4日付)は、スカパーでホームゲームの解説する瀧上知巳・東海大九州監督のインタビューでした。チームの戦力面、監督の指導面など適切な指摘が並んでいましたが、特にリーグワーストの38失点を喫したDF陣には「はっきり言って、ぬるい」と手厳しいものでした。

選手の入れ替えを示唆する吉田監督。「(今後は)新しい選手を使っていくのも手。練習でモチベーションの高い選手や闘う姿勢の強い選手を選んでいきたい」と。しかし思うに、モチベーションや闘志だけではやっていけないのもこのレベルではわかっていることだし。何より、それって普段からやっていて当り前。それほどメンバーが固定していたということなのか。

「自信を失っている」状態なのでしょうか。監督も選手も。そしてわれわれファン、サポーターも。

いろんな批判や、タラレバや、ないものねだりが一斉に噴き出してきます。確かにもっともな意見もあるのですが、これまで、選手も、監督も、クラブもそれぞれにベストを尽くしてきている。無い袖は振れないし、今になって分かることだってあるし。一番怖いのは、ベストを尽くせない状況に”陥って”しまうことではないでしょうか。

今節のゲームで、0-3という同じスコアで千葉に敗れたG大阪。日本代表MF遠藤保仁は前半12分、23分、後半13分の失点に「相手に効率よく点を取られたのだと思う。下を向く必要はない」と言い、同じく日本代表DF今野は「効果的に点を決められたとは思うが、でもしっかり崩されての失点だったし、セットプレーから取られたのも問題。その課題は修正しないといけない」と受け止める。置かれた立場は確かに違いますが、非常に冷静なうえに、課題に向かい合おうとしています。

迷走するのが一番怖い。完全に降格圏に入ってしまうと別の話になります。それは、チームの存続に関わることになるから。

とりあえず、勝ち点を拾うことに集中してはどうだろうか。自信を失っている状況では何をやってもうまくいかない。悪循環というマイナスのパワーが働き始める。このマイナスになかなか抗うことは難しい。戦術をシンプルにして、出来ること、出来ないことを選別してはどうだろうか。そういう意味で、負けはしたものの守備を整理して戦った神戸戦をわれわれは一定の評価をしたかったのです。

「われわれはまだ何も手にしていない。何も得ていない」とは、よく言われるサッカーの言い回しですが、今の状況は、それとはまったく逆の心理です。

「われわれはまだ何も失ったわけではない」じゃないか!相手も同じカテゴリーのチームだろ!勇気を持って、最高のプレー、最高のゲームを見せてくれよ!と。