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【J2第17節】(水前寺)
熊本 1-0(前半0-0)長崎
<得点者>
[熊]齊藤和樹(60分)
<警告>
[熊]齊藤和樹(71分)
[長]李栄直(86分)
観衆:4,560人
主審:飯田淳平
副審:相樂亨、三原純


いやー。やっと…です。梅雨入りしてしまいましたが。ようやくホームで勝てました。待ちわびた生「カモンロッソ」。

勝因は色々あると思います。ボランチに入った藏川の攻守にわたる活躍。DFラインに安心感をもたらしたシュミット・ダニエル。最近切れっ切れの斎藤。なにより最後まで走り抜いた選手たち。等々・・・。ひとつひとつ触れていきましょう。

20150606長崎

前半は、正直ちょっと長崎のサッカーに見とれていました。水前寺競技場のピッチは、前回の岐阜戦のときより更に状態が悪く見える。それなら、いえ、それでなくても高木サッカーは中盤を省略して長いボールで押し込んでくるものと思っていました。難しい試合になるだろうと・・・。

しかし3-4-3に敷いた長崎の布陣は、中盤が厚く、縦にグラウンダーのパスを急ぎ、後ろから次々に追い越してくる。攻守の切り替えも早く、流動的に動き、なにより球際が強い。指揮官に随分鍛えられているという感じがして、現在4位というリーグ順位もうなずけました。

ただ、平繁、常盤もようやくフィットしてきた感のある熊本も、縦に入れようという意図は十分感じられ、カウンターから斎藤がエリアに入ってGKと1対1。これはキーパーにセーブされるも、直後スローインからのクロスにハンジンの絶好機のボレーは惜しくも枠外…など、30分以降は熊本にも幾度かチャンスがありました。

「裏を意識しよう!」「球際はもっといける!」。そういうハーフタイムの小野監督の指示があったように、熊本は後半開始から一段ギアをシフトチャンジしましたね。ちょうど、前節の京都がそうであったように・・・。

球際で優りはじめ、セカンドも奪い始めた。長崎のピッチを広く使った攻撃にもスライドできている。足が出る。詰め寄る。攻勢はやや熊本に傾いていきました。

それが実を結んだのは60分。右SB養父からのサイドチェンジのボールを、高柳がダイレクトにヘッドで入れる。エリア内ゴールニアサイドにいた齊藤。それを胸トラップで落とすと、付いて来た2人の長崎DFを振り払うかのように反転。右足を振り抜き、ゴールを押し込みます。

うーむ。このシュートはちょっと別次元のうまさ。岐阜戦のときの得点シーンが思い出される落ち着きでした。

先制した熊本。ただ、この先制点を生かせず、すぐに失点・同点にされてきた試合展開のもろさもこれまでの熊本。しかし今日は、その後の試合運びに関して、ピッチ上の選手たち自身も頑張りましたが、ベンチワークも的確で、納得できるものでした。

すぐに嶋田に代えて巻を投入。長崎のDFラインを牽制する。72分、一番足が止まるきつい時間帯に、平繁に代えて運動量のある黒木でかき回す。そして、そして…。追加点が難しくなった終盤残り10分を切ると、逃げ切りの守りのサインで、SBに鈴木を入れる。

養父が足を攣るが、立ち上がる。告げられたアディッショナルタイムは4分。巻が身体を張って前線でキープを図る。常盤も。長崎のクロスにダニエルが飛びついてキープ。長崎・梶川のアーリークロスにイ・ヨンジュがファーからシュートするも藏川がブロック。点差は1点。同点に追いつかれれば勝ち点は1になる。まだか、まだか、まだか!と待ちわびた終了のホイッスルを、そのときようやく主審が吹いてくれました。

以前も触れましたが、ウノゼロ(1-0)での勝利を理想とする高木・長崎に対し、まさにその展開での勝利は格別です。ただ、先制したあとに2列のブロックを敷いて守った高木体制のあの頃とは違い、今は前線から走りまわって組織的に守備をする熊本。どちらかがいいということではありませんが、ずいぶん違うサッカーです。

今日の殊勲は攻守に貢献した藏川。そのボランチ起用の理由を尋ねられた指揮官は、「実は自分の中ではぐっと伸びて来た選手の1人だ」としたうえで、こう答えました。「彼の持っているゲームを読む力、状況に応じたプレーの選択、チームの他の選手の良さを引き出す力を発揮してくれてるんじゃないか」と。

チーム最年長の彼が、「ぐっと伸びて来た」と評価される事実もある意味驚きなのですが、藏川の持ち味は、現場でのその適応力にあるのではないかと思っています。今日の試合も、序盤はフィットしていないように思えました。ミスも見受けられた。しかし、時間が経つにつれ徐々に修正し適応していく。犯したミスから、次にどうすればいいのかを考える判断力と対応力がある。年齢を感じさせない運動量もすごいのですが、実は経験からくるその適応力こそが、藏川の”本当の力”であり、常々「選手自身がピッチ上で状況を変化させられる」ことを望んでいる小野監督からすれば、信頼し、期待を込めて起用したい選手なのでしょう。

しばらく試合から遠ざかり不安を隠せなかったDF・園田も、今日の試合での最後は随分戻ってきたように思えました。それは相方のクォン・ハンジンの高さによる読みの”強さ”、押し込まれても奪ってからの反転の技術の安心感がもたらしたものではないかと思うのです。クォン・ハンジン。そのパフォーマンス。本当に良いDFを得たのは間違いない。

そしてそして、再び育英型期限付き移籍で仙台からやってきたGKシュミット・ダニエル。昨年は相次ぐGK陣の故障で1ヵ月間の超短期移籍。しかし、今回はだいぶ事情が違います。「チームに入りやすい環境を作ってくれた他の4人のGKに感謝したい」とのコメントはそのあたりの意味を十分に意識しています。

出場機会には恵まれていなかったものの、相変わらずの安定したプレーぶりやゴール前に立ちはだかるその存在感は、この一年間の成長を感じさせます。その高さを警戒する長崎は、CKもショートコーナーからの変化を狙うしかない。クロスの球筋も全く勝負してきません。短い振り足から繰り出すパントキックの距離は驚くほど遠く伸びて、その弾道は低くゴールに向かい、一瞬で好機を演出する。

久々の勝利でちょっと感情が高ぶっているわれわれですが、冷静に振り返れば、熊本の今日のプレーぶりがこれまでと大きく変わっているわけではなく。決して悪くないが結果がついてこない…。セットプレーでやられる…。そんな悪循環を断ち切った今日のGK起用だったと言ってもいいかもしれません。

今日はそれほどゴールを脅かされることもなかったのですが、一瞬ひやりとしたのは長崎・高杉の左から攻撃参加しての意表を突くシュート。ダニエルが完全に見切ったかに見えたボールはあわやでバーを叩く。しかし、「ちょっと低かったけど、外に出ると思っていた。狙いどおりのプレー」(熊日)と意に介さない。

熊本はこの試合に勝利して、ようやく4試合ぶりに降格圏内を脱して19位になりました。しかし、21位(水戸)とは勝ち点差2でしかない状況。安心とはほど遠い状況にあります。

まだまだ。ひとつひとつを勝っていかなければなりません。

10月26日(日) 2014 J2リーグ戦 第38節
長崎 0 - 1 熊本 (14:03/長崎市/4,262人)
得点者:10' 園田拓也(熊本)


「まるでホーム」と篠原は言いました。長崎市総合運動公園かきどまり陸上競技場のアウェイゴール裏は、遠路駆け付けた熊本サポーターで真っ赤に埋め尽くされて。響き渡る力強いコールは場内を威圧し、「苦しくなったときに熊本から駆け付けた多くのサポーターが背中を押してくれた」(小野監督)というコメントにもリアリティアがこもっていました。テレビ画面を覗くわれわれでさえグッとくるものがあったくらい。選手たちも大いにその意気に感じたのではないでしょうか。

熊本は前節、磐田戦とまったく同じスタメン。Jスタメンデビューだった嶋田を再度起用してみせます。彼の自信にもなったのではないでしょうか。

20141026長崎

相手の戦術分析に長けた両監督。まずは「熊本の映像を6試合ほど見て、かなり準備しなければいけないと思った」と高木監督がそう言えば、「長崎はわれわれが苦手とするサッカーを徹底してきた」と小野監督が言う。

「長崎が中央の起点からサイドにロングボールを入れて、そこでセカンドボール勝負」(小野監督)と見立てたように、イ・ヨンジェ、佐藤、小松という前線3人の高さをターゲットに押し込む長崎。高さの魅力と魔力と。高木監督は特に高さに対する志向が以前から強いのは承知のうえですが、戸惑い気味の熊本。

ゲームはこれまた、ここ数試合の典型的なパターンが繰り広げられます。激しくせめぎあい、削り合うようなぶつかり合い。攻守の切り替えは激しいが結局、前半のシュート数は長崎2、熊本1。違ったのは前半10分、CKから早々と先制したこと。

キッカーの嶋田から澤田へ、リターンを嶋田に落とし、これを中山にさばく。中山はフワリと中で待ち構える齊藤に。齊藤はヒールでゴール左のスペースへ出す。走り込んだ澤田が中に折り返すと、最後は飛びこんだ園田が頭でどんぴしゃのフィニッシュ。セットプレーとはいえ、すべてをダイレクトでつないだ流れるような展開。美しい! これはある種の“催眠術”とも呼べようか。ダイレクトが3本もつながると、相手はもう完全にボールウォッチャー。後手に陥れました。

凌げば後半の展開に持ち込める。先制できれば、今日のような結果がついてくる。

例えば小野監督の今日の采配での一番の見どころ。前半13分に片山が、クロスを上げさせない必死の守備から近距離でボールを受け脳震盪で倒れると、すかさず篠原を入れますが、左にキム・ビョンヨンをまわすと、右SBは園田ではなくそのまま篠原に任せます。

「最終ラインの4枚がセンターバックタイプになってしまった」と嘆く高木監督。「キム選手もほぼアタッキングサードにアタックしない」「篠原選手も1回か2回」。そして二人は、長崎のロングボールを跳ね返す。SBの特に片山サイドの裏を狙っていただろう高木監督の狙いを、このアクシデントのなかで“消して”しまいます。これも先制点があったればこそなのですが…。

ハーフタイムの小野監督の指示は「ボールの出所を押さえよう」「セカンドボールを拾おう」「強気で強気で最後まで行こう」「熱いハートで泥臭く最後まで戦おう」。要するに、相手にサッカーをさせるな。強気で戦いきるぞ。ということか。ほとばしるような気合い。

しかし、嶋田慎太郎は「相手のセンターバックからロングボールが出てくるので、そこから蹴らせないようにとハーフタイムにも言われて、後半はそこを意識して前からプレッシャーをかけました」と。メンタルを鼓舞する一方で、ボールの出所を押さえるうえでの明確な指示も加えられ、更なる修正が図られます。

さあ勝負の後半45分間。後半の戦いについて高木監督は「熊本が点を取ったということがあると思います。ひょっとしたら無理せずに耐えるということがあったかもしれません。」と、その印象を語っています。

押し込まれた時間帯での落ち着き。高いラインの維持、押し返し。早い段階で1点をとったことの重みが感じられます。

そして耐えることへの自信。今日も最後まで切れなかった集中。安定してきたGK・畑のハイボールの処理。3試合連続の完封。そしてなにより、展開のうえでとはいえ、1-0での勝利を“美学”としていた高木監督のお株を奪うような勝利。

リーグの最終盤、あと4試合というところで俄然、熊本のサッカーのイメージが鮮明な像を結びつつあります。今日も繰り出す交代カードに“意図”を感じましたが、今のベンチに座るメンバーは、誰が出ようと頼もしい。

残りは山形、愛媛、岡山、福岡。過去には、もう早く終わって欲しいと(内心)思うようなシーズンもありましたが、今はこのメンバーで、この体制で、どこまでのものを見せてくれるのか…、名残惜しい、そんな気持ちがいつにも増して強く感じられます。

前週の藤本主税の現役引退表明に続いて、今週はロッソ戦士・吉井孝輔も引退を発表しました。今季は日程的にホーム最終戦が思いのほか早く、慌ただしく過ごしてきたシーズンとともに、心の整理が追いついていない。それもまた実感です。

4月26日(土) 2014 J2リーグ戦 第9節
熊本 1 - 1 長崎 (17:04/うまスタ/7,355人)
得点者:35' 澤田崇(熊本)、90'+1 古部健太(長崎)


多分、あと2分も凌げば…というアディショナルタイムでの失点。スタジアム全体に悲鳴のような、ため息のような、何とも言えないガックリ感が。“この一戦”とかなり気を張っていたわれわれは、もうヒザが折れ、腰が立たないような状態。

それでも、試合後のインタビューで小野監督のコメントはポジティブでした。「勝点3は取れなかったんですが、シーズンの中では大きな財産になったんじゃないかなと思います」と。

われわれもなんとか気を取り直し、そして思いました。確かに、実に凄いゲームだったなと。当たり前のように走り続ける両チーム。見た目の運動量もスピードも、そして精度も落ちていない。ベストゲーム候補に挙げるべきものかもしれない。

20140426長崎

勝った試合の後は、メンバーをいじらない。それがこの世界のセオリーのように言われていますが。長崎とのこの試合、小野監督は、GKにわずか一か月の期限付きで熊本にきたばかりのシュミット・ダニエルをいきなり起用。そして篠原、原田、ファビオと、前節からスタメン4人を入れ替えてきた。高木監督が「…驚きは全くないんですが、僕の中では『なぜ?』というクエスチョンがあって…」と語った、このゲームのひとつのポイントでした。

これについて小野監督は、「ここから2週間で5試合、そこをチーム全体で戦わなければならないということ」を理由のひとつに挙げます。しかし、GWの連戦に対するターンオーバーというのはわかるにしても、それは、連戦を戦いながら、選手のコンディションを見極めていってからでもいいんじゃないか? めったにお目にかかれない4連勝を狙う試合、長崎とのこの一戦でなくても? と、戦前われわれに思わせました。

しかし、これもまたスカウティングを得意とする高木監督を意識した部分が少なからずあったのではないかと。「今は誰が出ても、変わらずにロアッソのサッカーを貫いてやってくれる」「メンバーを変えてやっていっても行けるかなという手応えを私が感じた」ということは確かに結果としてもあるのですが、それ以前に、高木監督の裏を、裏の裏を狙ったのではないかと邪推してしまいます。

ただ、われわれはかなり強く意識していた“長崎とのこの一戦”という特別な心理。そして、もしチーム、選手たちにもこの特別な意識があるとすれば、それは試合の変数として意外に大きな要素になってしまう。しかし、少なくとも我が小野監督には、微塵もそんな意識はないということだけはわかる。

肝心のゲームはといえば、前節・山形戦でも感じたように、試合開始から序盤、時に応じて、明らかに意識的に“多めに”相手DF裏に打ち込んでいきます。長崎の術中にはまるリスクを減らすために、また、長崎にリズムを作らせないように。敢えて、空中戦を大目に演出していく。

そんな戦術的な要請からのファビオの起用だった、みたいなことも理由としてはあるのでしょう。けれど、どうもそんなことより、何かもっと違う思考が働いているのではないか。そんな気がしてなりません。時間軸の取り方が違うような。

とにかくこのゲームで4連勝を狙っていく。GWを見通して選手起用を考える。当然、それもないはずではなかったでしょう。しかし、これらが一手先、二手先とすれば、「メンバーを変えてやっていっても行けるかなという手応えを私が感じた」というコメントには、さらに十手先、二十手先を見据えるために必要なことだと言っているように思われるのです。それが、アディッショナルタイムで同点に追いつかれて、悔しくはないはずなのに、冒頭のコメントになったのかと。

長崎というチーム。中盤で引っかけられて奪われると、2枚、3枚とダイレクトで連動して、あっという間にゴールまで運ばれてしまう。縦にも横にも素晴らしく速い。しかも目の前で見たように、その2枚、3枚の連動の精度が非常に高い。2試合続けて、終了間際に追いつく持久力。走力。こんなサッカーがやりたかったんだろう高木監督の理想のもとに、メンタル面も含めてかなり完成度の高い印象がします。

ただ、対照的だと思ったのはハーフタイムでのコメント。「同じミスを繰り返さないこと」というのを見ると、いかにも高木氏らしい気がしてなりません。叱咤激励という言葉からすると、高木監督が使う手法は「叱咤」。

一方同じ“ミス”という件に関しても、千葉戦で、「できることを1つのミスで捨ててはいけない 」と言った小野監督は、常に「激励」。選手のプレーを否定することなく、よりよい方向にアドバイスするというのが信条。この日発した言葉も、「全員でハードワークのたすきをつなげよう。」「魂でプレーするぞ!」などという、気持ちが溢れ出るようなものでした。


さて、先週来、アスリートクラブの株主総会後のリリースで、チームの財政状況と7000万円の増資、およびロアッソ熊本存続支援募金の実施が伝えられています。この件に関するサポーターミーティングも行われたようです

まさに“チーム存続の危機”にほかなりません。こうやって普通にリーグ戦を戦って、いいゲームができて、勝ち点も積みあがって…。ついつい忘れてしまいがちでしたが、債務超過という現実から遠ざかっているわけはなく。

先週の熊日によれば、株主総会後の記者会見で、池谷社長は債務超過の原因を問われ「組織として体をなしていない時期があった」「運営体制にも問題があった」と述べ、過去の経営陣の責任を明確に指摘しました。もちろんいまさらそれを言っても仕方ない(リンクは貼りませんが、就任当時のわれわれのエントリーを探してください)し、その経営者ひとりの責任ということでもなく。その経営者を起用したことや、その問題のある運営体制を許していたことにも責任はあるわけで。まあ、これからの活動を考えれば、一度は公式に説明しておく必要があると判断されたのだと思います。

しかしながら、リーグから示されたタイムリミットは8月。増資の引受先のメドを問われて、「まだない」ということは、株主、スポンサー企業にもまだ説明されている様子ではない。われわれには見えないいろんな事情があるのだとは思いますが、クラブライセンス制度が導入され、財政状況のこの課題を期限までに解決するには増資以外の選択肢はなかった。時間がありません。これまでの経緯から、増資の方針を打ち出すには慎重にならざるを得なかっただろうし、相当の企業努力をしてからでなければ言い出せない、ということも想像できるのですが。

出来うれば、この先、まさに十手先、二十手先を見据えた財政基盤の立て直しを構想して欲しいと思います。チームも運営会社も、誰のものでもない、われわれ熊本県民の“宝もの”。くまなく情報公開し、深々と頭を下げ、中途半端ではなく、堂々と支援を要請するべきであると思います。

10月27日(日) 2013 J2リーグ戦 第38節
熊本 1 - 0 長崎 (13:04/うまスタ/7,306人)
得点者:45'+2 仲間隼斗(熊本)


「(狙いが)はまった」と言うのは試合後の池谷監督代行。“してやったり”の表情と熊日は書いていますが、仲間の得点シーン、そして試合終了の笛を聞いてからの喜びようは、尋常ではなかったように見えました。

九州ダービーであり、海峡ダービー?でもあって、それも当然と言えば当然なんですけど。それは池谷代行だけではなく、われわれも含めて(多分、ファン全体の雰囲気としても)、なぜこんなに「負けられないぞ」と思ってしまうのか。

それは多分、それほどに前半戦のアウェーでの戦いが、単なる敗戦という以上に何もできなかったこと。それも大きなショックを受けた北九州戦の大敗とも違っていて。何もさせてもらえず、点差の何倍もの差を感じた様なものだったからかも知れません。

20131027長崎

戦前に池谷代行が予想した通りのミラーゲーム。開始直後の緊張感そのままに、延々と続くお互いの潰し合い。熊本は徹底的にリスクを回避するような、そして狙いである相手3バックのサイドをつく“ロングフィード”をしつこく、しつこく繰り返す。前節、千葉戦の反省も大きいのか。とにかく、自陣でのリスキーなプレーを避け、ゲームの流れを切る選択が目立ちます。

「理想とは程遠く、サッカーをした感じがしない」と矢野は言います。確かに観ている方も、ボールの落ち着きどころがない、ある意味面白みのない展開が続く。しかし、指揮官が「相手が嫌がっていることを続けていこう」とハーフタイムで言ったように、それは、ゲームを通じて全く変わることなく、執拗に続けられました。

そしてその効果は、ハーフタイムより前に、突然、実を結びます。前半もアディッショナルタイム。このままスコアレスかと思われた時間帯。自陣で奪ったボールを吉井が左サイドを駆け上がったファビオにロングフィード。ファビオは追ってきた養父にダイレクトで落とす。養父は、斜めに走り抜けてDFの大外で手を上げた仲間に、右足アウトで通す。あとは仲間が落ち着いて決めるだけ。

それはまるで、自分たちがやられて嫌だったこと。3バックの外から裏を取られる失点。同じシステムの長崎相手に、その弱点を突き、これが値千金の決勝点になりました。

長崎・高木監督は「熊本は最近、サイドから崩されて失点することが多かったが、(今日は)サイドで起点を作れなかった」と言う。「マークする相手選手の良さは出させなかったが、自分の良さもあまり出せなかった」との片山の言葉と表裏一体。

自陣のサイドを閉じて、相手サイドを長いボールで崩す。そのためのファビオと仲間の先発。まさに、相手のスカウティングをスカウティングしたような。池谷代行の“してやったり”も理解できます。

それにしても長崎。指揮官の交代カードもあるものの、その意図をピッチ上で実現するために後半一気にギアをチェンジできる選手たち。チャンスと見るや、一瞬でプレーのテンポ、スピードがグッと上がるところは、この順位にいることを納得させる。本当の強さを感じさせる。それはピンチのときもしかり。リーグ最少失点も頷けます。

後半は、いつ同点にされるかと、胃が痛い思いで見守っていました。しかし、養父に代えて黒木を投入し中盤に蓋をすると、最後は「逃げ切るというメッセージとして」(池谷)高橋を入れた。GK南も、長崎のクロスを安定してセーブして、アディッショナルタイム4分も凌ぎ切り、完封で長崎にリベンジしました。

池谷代行の“現実路線”をあらためて思い知ったような気がしました。

スカウティングをスカウティングして、選手を変え、戦術を変え、展開のなかで的確なカードを切って、追加点ではなく逃げ切りを図った。どうしてもこの試合、勝ち点3が欲しかった。それは、最近は何度も繰り返し書いているような気がしますが、“結果がすべて”だという思いからではないでしょうか。

今節、鳥取が負けたため、勝ち点差13となって、残り4試合での熊本の最下位の可能性は消滅しました。まずは自動降格の可能性を消した。JFLの今の状況をみると、この意味はとても大きい。その状況でG大阪と戦えるということも。

今は結果がすべて。その采配は、単なるチームの指揮官というより、クラブ経営陣のひとりとしての超現実的采配ではなかったかと言うと、ちょっと大げさでしょうか。

ところで、25日の熊日朝刊。AC熊本の今期(2013年2月~14年1月)の経営状況について、約1千万円の黒字見通しと報じています。2010年度以来3期ぶりの黒字。

「AC熊本は昨年度決算で2300万円の赤字を計上し、債務超過額が7100万円と増加。14年度決算で債務超過しているか、または3期連続の赤字を計上すれば、Jリーグのクラブライセンスを失うため、今期は当初予算で2400万円の黒字を計上していた」(熊日)。

もちろん、誰も忘れてはいないけれど、降格をめぐる戦いはピッチ上だけではありません。3期連続の赤字はひとまず回避ということで、ひとつの危機は何とかクリアしたものの、債務超過の解消という重い課題は残ったままです。先週来、福岡の経営危機が取り沙汰されていますが、熊本も予断を許さない状況であることに変わりはありません。

次節はガンバ大阪戦。池谷代行はこの試合をどう位置づけ、どう戦おうと構想するのか。
「はまった」「してやったり」という顔をまた見たい。勝って降格圏21位の可能性も消してしまいたいものです。


4月14日(日) 2013 J2リーグ戦 第8節
長崎 1 - 0 熊本 (13:05/長崎県立/5,916人)
得点者:85' 高杉亮太(長崎)


危惧していたことがまさかの現実になってしまって、がっかり、ガックリしています。結果はもちろんですが、その内容こそ。

序盤こそ互角で渡り合いましたが、その後は終始、主導権を握られてしまったと言っていいでしょう。数的に有利になった時間帯でさえも、その流れは変わらず。現時点のチームの状態、完成度の差がはっきりと出たということでしょうか。

「勝因は走り勝ったこと」と高木監督は試合後のインタビューで答えています。そのとおりではあるのですが、ただ“無謀”に走っていただけではなかったのも事実です。単に熊本が「運動量で負けた」というのではなく、この試合、選手たちがスペースで貰う、スペースを作る動きが全くない。皆が足元に貰いたがっていた。「スペースを作る、使う、埋めるということがテーマだった」という高木監督の言葉は、熊本の目指すところも同様だし、その意味からは同じようなコンセプトのチーム同士の戦いでした。

20130414長崎

ボールを繋ぐサッカーをしたのは長崎の方でした。水永や佐藤へのロングボールを警戒していた熊本は、サイドを抉られて、面食らうようにズルズルとDFラインが下がった。熊本のボールの通り道であるタッチライン際では蓋をされ、片山や藏川が駆け上がるシーンは皆無。攻守が反転したときは、食い付きが一歩遅いため中盤が置いてきぼりにされ、一気にアタッキングサードまで持ち込まれてしまいます。

「こちらが一度ボールを保持してしまうとミスマッチになり、ドリブルで仕掛けられるようになった」とは高木監督の弁。最終ラインで守らなければならない熊本は、自然にロングボールで跳ね返すしかない悪循環。高い位置での長崎のプレスに、南ですら大きく蹴るしかなくなってしまいました。

対する吉田監督の後半の対策は、「中盤を菱形にして、もっとサイドを上手く使う」というもの。しかし開始2分で「プランが崩れた」。

今節の「タラレバ」は、間違いなく仲間の退場でしょう。まったく不要な、意味不明のプレー。後半のゲームに入っていく重要な時間帯で、大いにチームの士気を下げ、混乱を招き、逆に長崎を心理的な優位にしてしまった。彼にとっても高い授業料になりました。

熊本にはついに、一度の決定機も訪れなかったといえます。高木監督は前監督として、よくよく熊本をわかっているような戦いぶり。絶対的な熊本不利でした。

決勝点でスピードに乗ってサイドを破った長崎・古部のプレーは、本来熊本の片山に見せて欲しかったプレーでした。山田のケレン味のないドリブル突破は、仲間が…。

今、長崎は多分、チームとして最高のプレーをし、パフォーマンスを見せていると思う。上位に位置しているのも納得できる。こんなに早く高木サッカーが浸透しているのを見て、幾分の驚きを禁じ得ませんでした。

一方、開幕して既に1カ月半。しかし、わがチームはまだ深刻な不振から脱していない。この日のアウェーゴール裏は、いつぞやの大銀ドームよりもレベスタよりも、本城よりもベアスタよりも、もっと多くの赤で一色に染まりました。そのファンの想い。だからこそこの敗戦の重さがずっしりと堪えます。