10月28日(土)
【J2第39節】(えがおS)
熊本 0-2(前半0-2)長崎
<得点者>
[長]田上大地(27分)、香川勇気(31分)
<警告>
[熊]小谷祐喜(64分)、嶋田慎太郎(82分)、黒木晃平(83分)
[長]島田譲(13分)
観衆:7,635人
主審:池内明彦


「流れ的に、前半はとくに長崎の思惑に引きずり込まれた」「相手に付き合ってしまった」(熊本蹴球通信)。池谷監督は試合後そう振り返る。前半のうちに2点を先取され、そのまま逃げ切られた敗戦でした。

またも台風の接近で強風吹きすさぶスタジアム。コイントスで勝った長崎主将・増田は、すかさずエンドチェンジを要求。風上を選びます。「マス(増田)の考えとデータ上の問題でああいう形になりました」()と高木監督はうそぶきますが、先週の試合“偵察”からの指示に違いない。

20171028長崎

池谷監督が「長崎の思惑」というのは、そのエンドチェンジのことと、「普段、そういう練習試合でやっていないことを練習して」きて、「きるだけ相手の深い位置でボールを動かす、または侵入する」(同・高木監督)という狙いだったことでしょうか。しっかり守って鋭いカウンターといういつもの長崎ではないところ。戦前、自分たちがボールを持つ時間もあるだろうと踏んでいた指揮官と選手たちは少なからず面食らってしまったでしょう。

失点はいずれも警戒していたリスタート(スローイン)から。しかもいずれも澤田に左サイドをえぐられて入れられたクロス。1点目はスライディングした植田を交わして上げると、ファーサイド後方からCBの田上が飛び込んできた。2点目は潰されかかったところを粘って奪い返すと、カットするような真っ直ぐの質のクロスを送る。ファーの香川にフリーでヘディングされます。

熊本も前半チャンスがなかったわけではありません。オープンな展開のなか、嶋田がフワリと浮かせたパス。八久保が左からのダイレクトシュートは枠の上。カウンターから嶋田のパスに安が左から裏を取ってのシュートはGK正面。いずれも頭を抱えるばかり。長崎に比べるとどうしてもゴール前に掛ける人数が少な過ぎる。

「もっと自信を持って、ボールを受ける、ボールを動かそう」(公式)。そういうハーフタイムの指揮官の指示は、前節にも聞いていまして。後半風上に立って、まさしく「次の1点が勝負だ!」(同)と鼓舞しましたが、2点のアドバンテージを持った長崎は、守備ブロックを敷き、熊本にボールを持たせてきた。

すると高木監督仕込みの堅い守備ブロックに対して、熊本は横パスでスライドさせるだけで、縦に入れられない。サイドも抉らなければ、仕掛けもない。鋭く縦パスを入れていた三鬼の出場停止が恨めしい。代わって入った木村は、いつもの三鬼のような前目のポジションを取るではなく、最後列からパスを散らすどちらかというと村上のようなプレー。これも指揮官の指示なのか。

唯一、後半の見せ場といえるのは長崎の得たPKを畑が止めた場面。絶対絶命のピンチに、ファンマのシュートコースを読んだ畑。残した片手で弾き返しました。このときばかりはハイタッチで喜ぶスタンドでしたが、それでも流れは熊本に来ない。

片山には田中。小谷に代えてグスタボを入れて4-4-2。最後は巻を入れて4-3-3で前線のターゲットを増やしましたが何も起こりません。しまいには要らぬカードで嶋田と黒木が次節出場停止というおまけまでついてしまって…。

試合後のDAZNのインタビューに、「うまく風を使えたことが勝因」とこれまたうそぶくように応えた高木監督。かみ殺したように言葉を選ぶ姿が、うまくこの試合をこなして次しか見据えていなかったようで悔しさが倍増する。策士は、この勝利で自動昇格圏内2位を奪取した。千人は来場したという長崎ゴール裏が歌う「J1へ行こう!」という替え歌が耳にうるさく響く。

山口は付き合ってくれたものの、讃岐が引き分けたため同勝ち点数でも順位は抜かれ20位に転落。金沢は勝利して21位山口との差を11として残留を決めました。

残り3試合ですが、次節残留を決めることも可能。意地でも勝利を。そう願って一週間を過ごします。

6月11日(日)
【J2第18節】(トラスタ)
長崎 1-0(前半1-0)熊本
<得点者>
[長]木村裕(36分)
<警告>
[長]高杉亮太(67分)
[熊]齋藤恵太(90分+3)
観衆:4,618人
主審:吉田哲朗


ちょっともう愚痴を言うのも辛くなってきました。長崎に敗れて3連敗。順位こそ19位のままですが、20位讃岐、21位群馬との勝ち点差は2まで縮まり、1ゲームでひっくり返される状況になってしまいました。

という書き出しで、長崎戦についてのエントリーをほぼ書き上げたところで、清川監督の交代(熊日によれば「事実上の解任」)発表があり、急ぎ大幅に書き直しています。

予感はあったものの、とにかく残念、と言わざるを得ません。何故なら清川監督は、長く熊本のヘッドコーチを務めただけでなく、昨年の監督就任からはスタートダッシュに成功してクラブ初の首位奪取。けれど襲った、あの思いもかけない大震災のシーズンを、文字通り死にもの狂いで戦い抜いて、結果的にリーグ残留を勝ち取ったいわば“功労者”。今年こそ、とわれわれも思っていたので、こんな別れ方(コメントには「クラブを去ることになりました」とある)になるとは…。

しかしこれもまたプロフェッショナルの世界に身を置く者の、“結果を問われる”という仕事上、仕方がないことかも知れない。そんな立場にあったということですね。

「監督としては優し過ぎた」という意見もよく耳にします。しかし、あの震災後の危機的状況のなかで、ソーメンも喉に通らなかったという清川監督の、真摯な人柄があったからこその求心力だったのではないかと想像します。

そして、清川監督が指揮をとる最後の試合(熊日によれば前日に交代が決まっていたと)になったのが、0-1を美学とする高木監督率いる長崎戦での敗戦というのも、なんとも皮肉な巡りあわせのようにも感じてしまいます。

後任には池谷氏が社長を退任したうえで就任。「また」という表現は失礼ですが、2度目となるリリーフ登板。しかし、前回2013年時と違うのは、当時の肩書が暫定的な監督代行であったのに対し、今回は「監督」であるということです。当時社長との兼務がリーグから問題になったので、今回は監督に専任するということなのでしょうか。それについて新たに社長兼務となった永田会長は、「あの時と、私どもが考えている状況は全く違うという風に考えております。あの時は監督代行という形でやってもらいましたけれども、今回は監督に専任ということになります。ですから期間もいつまでと決めておりません」(熊本蹴球通信)ときっぱりと言う。さらに大事なことは、「今季どうしても、この熊本にロアッソ熊本を残すために、我々は決断しなくてはいけなかった」という言葉。

震災のあとはっきりしたことは、このクラブは、このチームは、熊本にとって絶対必要だということ。だからこそ今シーズンのクラブテーマは「光となれ」。

決して降格させてはならない。ましてや消滅させることなどあってはならない。そんな人一倍の思いをもって、「また」池谷さんが立ち上がったということ。池谷さんが言う。「私に何があるのかということになると、分かりません。でも1つ言えるのは、このクラブに対する情熱です。これは誰にも負けない。この覚悟を持って、今回、やらせていただこうと思います」(熊本蹴球通信)。

全く縁のない熊本という土地にやってきたときからのこの人の情熱。熊本はまた、この人の熱量にゆだねる。

その思いを共有して、われわれもあの原点に返って。より以上の後押しをしていくしかないでしょう。まだ何もなかったあの日に立ち返って。

選手たちに自信を取り戻させ、100%以上の能力を発揮させるためには、今こそファン、サポーターも、池谷新監督と同様の覚悟が必要だという気がします。

20170611長崎

【J2第27節】(うまスタ)
熊本 1-2(前半0-0)長崎
<得点者>
[熊]植田龍仁朗(90分+3)
[長]岸田翔平(62分)、永井龍(90分)
<警告>
[熊]園田拓也(56分)
[長]永井龍(90分+4)
観衆:6,572人
主審:山本雄大


ホームでやってはいけない試合でしたね。結果はともかく、内容、パフォーマンスという全ての意味において残念でした。

うまスタに復帰して3度目のホーム戦。日が沈んだ19時キックオフの試合といえども、日中35度以上を越えた気温を下げきれないスタジアムに風もなく、67%という湿度の数値以上に蒸し暑さを感じさせていました。

熊本の先発には前節出場停止だった清武と上原が戻り、平繁との2トップの一角には前節Jリーグデビューを果たしたばかりの若杉。そして右SHには八久保という若い攻撃陣には、大いに期待しました。

対する長崎は、第2クールに入って4勝1敗。FW永井が13ゴールでリーグ得点トップタイを走る。この戦いの前まで、勝ち点33で10位に位置している。

「前回対戦した長崎とは違うチームと思わなければならない」(スカパー)という清川監督のスカウティングのコメントも、もはや聞き飽きた感のある当然の言葉で、リーグ戦のなかでどのチームも成長し、戦術を深化してさせているのは当たり前。(もちろんわが熊本もそうあらねばならないわけで。)

20160807長崎

前節、大いに嘆いた球際の攻防。この試合、序盤を見るだけでは、厳しさが戻っているように感じたのですが。しかしセカンドボール奪取に優れる長崎に次第に支配される。7分、長崎は中盤から右へ大きくサイドチェンジ。奥から岸田がワンタッチでニアにいた養父に渡すと、養父のグラウンダーシュートは枠の左をかすめる。ファーに詰めていた選手が合わせれば1点のシーン。

続いても長崎。クリアを拾ってDFの高杉がエリア侵入。左からのシュートは右に反れて事なきを得ます。

一方の熊本は、攻撃に転じてもサイドで蓋をされ、中盤で挟み込まれ奪われる。戻りの早い長崎の敷くブロックの前に、後ろでボールを”回させられる”ばかりで、前線に有効なボールが入らない。引き出す動きも、裏を取ろうという動きも少ない。とうとう前半はシュートゼロに終わってしまいました。ワクワクさせたシーンも皆無で、控え室に帰る選手たちにブーイングの声も飛んだのではないでしょうか。

翌日の熊日の報道によれば、清川監督のプランは「前半しのいで後半勝負」だったのだという。ちょっとわれわれは首をかしげました。前節、前々節と、球際の厳しさを嘆いた指揮官。相手を上回るその勢いを持って、試合開始から猛攻するのがわがチームの信条ではなかったか。せめて「前半しのいで」というのは、ボールの保持率ではどうしても劣る、清水や千葉相手のときのプランではなかったか。ちょっと長崎をリスペクトしすぎではないのか。と。

そんなゲームプランが、前半の”攻勢への消極性”に、もしも繋がっているのであれば、それは、”熊本らしさ”ではなく…。

一番の違いは中盤でしたね。もちろん互いにシステムは違うものの。長崎の3バックは、その前のアンカーの田中に変に負担をかけることなく。その前の梶川と養父の運動量で、熊本の攻撃の芽を潰す。高木監督時代や、小野監督時代にアグレッシブさを培われた養父の”泥臭い”までのプレー。そして今、高木監督の信頼を集めているのがよくわかる梶川の”気の利いた”プレーとその運動量。

その長崎の前に、完全に後手に回る熊本。常々思うのですが、小野サッカーから通じる今の清川サッカーも、ボランチの”出来”が勝敗を左右する大きな要因です。(それは3バックのときが一番顕著だと思うのですが)

62分、長崎のスローインからPエリアで落としたボールを拾って撃たれる。GK佐藤がクリアするものの、右から岸田が詰めていてシュート。先制点を奪います。

熊本も、八久保から代えて岡本を投入してからは、惜しい場面を演出しはじめる。しかし、後半アディショナルタイムが告げられるころの90分、長崎・永井がオフサイドをかいくぐり左からエリアイン。45度のシュートがゴール右すみに突き刺さり2点差となりました。

静まり返るスタンド。家路を急ぐ人たちも増える。

そんなアディショナルタイムの残り1分ころでした。岡本の強烈ミドルシュートを敵GKが弾く。詰めた清武。こぼれ球に反応して倒れながらも”足で”押し込んだのは、なんとDFの植田。「このままでは終われない」(熊日)と、このシーン、Pエリアまで上がっていました。

熊本としては”意地の1点”というしかありませんでしたが、とにかく火がつくのが遅すぎました。いつもなら得点の際に飛び上がってタオルマフラーを回すわれわれも、このときは座ったままでした。

「最後に1点を取られたが、ゲームの内容には非常に満足している」(熊日)。策士、長崎の高木監督は、そう試合後コメントしました。熊本のSBの上がりに蓋をして、エース清武は徹底的に潰し、帰陣早くブロックを敷いて隙を与えず、中盤の運動量で上回って奪い、カウンターで仕留める。フィニッシュの精度で、幾度もチャンスを潰したのは予定外でしょうが、戦術ははまり、結果的に先制点、追加点となりました。

熊本はその戦術にハメられましたね。高木サッカーに先制点を与えれば、追加点ならずとも、逃げ切りを図られるのはわかっているはずなのに。なのにどうして、「前半しのいで後半勝負」なのかが、どうしても解せないのです。3年間、ヘッドコーチを務め、高木サッカーの真髄を心得ているはずの清川監督なのに。

ただ、選手たちのパフォーマンスの”見劣り”は、指揮官の戦術うんぬんとは別の要因だったかもしれません。この日の気候に関しては、両者ともの環境条件なので言い訳はできないはずですが。コンディション調整の不良なのでしょうか。あるいは、フレッシュなメンバーの組み合わせによる連携不足が問題でしょうか。

これからまた続く連戦に不安だけが残る試合内容でした。

【J2第5節】(長崎県立)
長崎 0-2(前半0-2)熊本
<得点者>
[熊]清武功暉(9分)、平繁龍一(41分)
<警告>
[長]小野寺達也(40分)
[熊]上原拓郎(85分)
観衆:5,029人
主審:小屋幸栄
副審:亀川哲弘、藤沢達也


「首位奪還」「単独首位」。なんとも聞き慣れない。ちょっとこそばゆい。そんな時期じゃないだろうが、と一応は無関心を装うものの、しかし思わず口元がほころんでしまう。ネット上の順位表を画像保存する人多数(笑)。まだ5節目とはいえ、まさか(というと怒られますが)こんな位置に座る日が来ようとは。単独だけに、眺めの良さは格別です。

まだまだ課題はあるものの、結果は完勝と言っていいでしょう。スカパーのアナウンサーは、過去の対戦成績を取り上げて熊本との相性の悪さを心配していましたが、われわれにとっては、その能力をよく知る高木監督が率いる長崎は、不気味なことこのうえない。そしてわれわれ以上にそれを知っているのは清川監督。「(高木監督は)勝負に熱い人。しっかり分析して綿密に練習して試合に臨むところを見てきた。だからこそ、監督として初めて対戦する試合でなんとか勝てれば、逆に恩返しになるのかなと思います」(熊本蹴球通信)。そう戦前言っていました。

熊本は、「相手の高さもあり」(公式サイト・清川監督)2トップの一角に今季初めて巻を入れてきた。そしてボランチには逆に高さはないものの、「相手の切り替えの早い攻撃に対して、彼の運動量がすごく求めた部分」(同)という理由で、上村が復活。

20160326長崎

18時キックオフの初のナイトゲームは、気温12.8度とやや寒かったでしょう。「全体的に圧をかけてくるだろうと。それを恐がってしまうと思うつぼで相手のペースになるので、それを脅かすような入りができれば」(熊本蹴球通信)と言っていた清川監督の期待に応えて、熊本の入りは悪くない。先制機は早い時間に訪れました。

9分、黒木が左サイドでボールを落とすと、拾った岡本がうまく長崎のディフェンスを交わしながら中にドリブルで絞ってきた。右の上村に預けると長崎のスライドも追いつかない。さらに右サイドを猛ダッシュしてきた藏川へ。藏川にはDFのスライディングが入りますが、それを飛び越えてゴールラインぎりぎりのところで低いクロスを上げた。スペースをうかがっていた清武が、ニアでそれに合わせてゴールにねじ込みます。

この場面、岡本の粘り強いドリブルも良かったし、藏川の頑張りも、合わせた清武もうまかったのですが、スカパーのマッチデーハイライトで下村東美氏が指摘していたように、ゴール前でクリアしてそして左サイドまでダッシュしている黒木のモビリティが凄いと言わざるを得ない。攻撃に転じるときの、全員のイメージの共有とカウンターへの意識が生んだ、チーム全員の得点。何度繰り返して見ても見どころ満載の美しいゴールでした。

先制してからも熊本の攻勢が続く。長崎は浮き足立ったのかパスミスを連発。熊本が高い位置でインターセプトして速攻に持ち込む。長崎のFW永井に時折エリア内に侵入されますが、GK佐藤の飛び出しで難を逃れる。危なかったのは29分、一旦園田がプレスからチェックしたものの、相手に拾われ、空いたスペースを永井に使われ折り返されると小野寺の強烈ミドルシュート。ここはGK佐藤が間一髪、クリアします。

追加点は前半終了間際でした。長崎の安易な横パスを清武がカットすると、巻、再び清武、最後は左の平繁に預けた。対峙したDFに、エリア内縦に勝負を賭けた平繁。思わず平繁を倒してしまう長崎DF。主審は迷わずPマークを指差します。

もちろん蹴るのは平繁。GKにも反応されましたが、それより速く、ボールはゴールネットを揺らします。平繁の今季初ゴールで前半のうちに2点差としました。

「あせらず落ち着いて戦おう」(公式サイト)と、後半選手たちを送り出した敵将・高木監督は、得意の2枚替え。FWロドリゴとDF村上を入れて来ます。1点でも入ると形勢逆転。”2-0は危ないスコア”というのはサッカーファンなら誰でも知るところ。

猛攻を仕掛ける長崎。熊本の選手間のスペースを使い、球際も激しく、ボールを運び、バイタルを襲う。更にMF中村を入れると、中盤もシステムを変えた。早めの3枚目のカードを切って、点を取りにきた。

それに対応して中山を入れる熊本。そして、ピッチサイドの清川監督は、DFラインを下げさせまいと必死に叫ぶ。

74分には齋藤を入れる。この展開で齋藤のスピードは面白い。83分、齋藤が裏に飛び出すがGKがセーブ。続く84分にも齋藤のカウンターからシュートはGKがクリア。惜しい。しかし速い!前がかりにいきたい長崎の重心をジリジリと下げさせます。

長崎はゴールが遠い。時間だけが過ぎていく。もう切るべきカードは残されていない。終了間際、熊本は先日加入が発表されたばかりのキム・テヨンを投入。バイタルを締めると同時に、その高さで高木監督お得意のパワープレーに備える策か。

しかし長崎は攻め疲れたか、その後、アディッショナルタイム3分も危ないシーンはほとんどなく、主審の笛が、熊本の勝利を告げました。

セレッソが金沢に引き分けたため、そして熊本が2点差で勝ったため、得失点差で熊本が単独首位。

しかし、「首位とはいえ、本当に1戦1戦戦っていかなければいけないチームだと思っている」と言うのは清川監督(公式サイト)。清武も「単独首位ということは聞きましたけれども、僕たちは挑戦し続けるだけなので、おごらずに頑張りたい」(同)と言う。

それは決して謙虚なコメントというだけではなく、結果オーライで良しとはできないような”課題”を、この試合でも実感しているからなのでしょう。実際、2点差としたあと、攻撃が淡白になったことは否めない。常にあるのは、相手の時間帯になったときの圧力の返し方。後半も陣形をコンパクトに保てるか、プレスを維持できるかという、ずっと抱えている課題。今日のこのゲームも完封ではありましたが、それはGK佐藤のかなり神がかりな活躍によるところが大きかったのは認めざるを得ません。

だからこそ次の試合までに、練習のなかで修正していく。それは小野監督に学んだこと。そして、相手をしっかり分析して、そのための対策を練習に盛り込んでいくことは高木監督に学んだ。

次節はホームで降格組の清水との対戦。どんな内容になるのか。ドキドキするような、それでいてこっそり期待もしたりする。序盤戦の大きな楽しみになりそうなゲームです。

【J2第35節】(長崎県立)
長崎 1-2(前半1-0)熊本
<得点者>
[長]イ・ヨンジェ(23分)
[熊]養父雄仁(65分)、清武功暉(83分)
<警告>
[熊]鈴木翔登(42分)、齊藤和樹(90分)
観衆:5,554人
主審:塚田健太
副審:竹田明弘、佐藤貴之


「いろんな選手が復調してきたが、ピッチに出せるのは11人。うれしい悩みが出てきた」。試合前日3日付の熊日による小野監督の言葉どおり、前線には平繁、ボランチの一角には上原。そしてベンチには巻、清武、岡本と頼もしいメンバーが控える。終わってみればその厚くなった選手層を活かした熊本が、今季初の逆転劇を演じてみせました。

スタートの布陣は3-4-3。長崎の3バックに前線の3人をマッチアップするシステムを選んだ指揮官。しかし結果的にはこれはあまり機能しなかった。何となく借り物のようなぎこちなさ。長崎の強い球際に押されるように、バイタルを脅かされます。

20151004長崎

開始早々、上村がPA前で拾って嶋田にパス。嶋田がエリア内に侵入するもDFに対応されてチャンスなく下げる。それを養父が遠目から打つが枠を越える。一方の長崎はスローインからPA内で落としたところをイ・ヨンジェがトラップ一発、反転からのシュートはDFがブロック。この互いのファーストシュートを放ったプレーヤーが、この後の得点者になる。その予兆でした。

「どちらにしろ1点差のゲームになる」(スカパー)。敵将・高木監督は戦前そう予想していたそうです。ここのところの対戦結果も相変わらず1-0の勝利が多い長崎(笑)。一方、養父は最近の試合を「先制点が取れていない。流れの中で取れていない」と振り返る。過去の戦績からも一点差と読むゲーム。なおのこと先制点が欲しい。

帰陣の早い長崎のブロックに手を焼く熊本。なかなか縦に入れられず、なんとなく後ろで回させられている感。徐々に焦りも感じられる。左の鈴木が前に預けて攻め上がろうとした時、そのパスが奪われる。長崎は右サイド奥からそれを前線にロングフィード。ハンジンがそれをヘッドでダニエルにバックパスするのではなく、足元に置こうとした。ちょっと欲が出ましたね。

そこにヨンジェが猛然とアタック。後ろから押したようにも見えたのですが、主審は笛を吹かない。倒れたハンジンからボールを奪うと、前に出てきたダニエルより一瞬早くゴールに流し込みました。

熊本が今季「先制点を奪われた試合に勝利したことがない」ということを、データを使ってしつこくあげつらうスカパーのアナウンサー。もちろんホーム側の解説者も熊本の悪いところばかりを指摘します。まあ、そんなものかもしれませんが…。

なんとか前半のうちに同点にできないものかと思っていましたが、多分、長崎はこのまま前半を終わらせればいい。あわよくば90分間そのままでも。ただ、その前半の終わり頃、「長崎は複数得点が課題」。そう言ったアナウンサーのコメントどおりになったのも皮肉でしたね。

後半、長崎が先に動きます。前線の木村に代えて佐藤。「1点のリードで勝てるとは思っていなかったので、2点目を狙いました」(九州J-PARK)と高木監督は言うものの、しかし選手は「でも正直チーム全体で点を取りに行けてはなかった」(梶川)と言う。

後半も10分が過ぎると、ここでも時間帯別の得点失点データを持ち出して、ここからの熊本の失点数の多さを指摘するアナウンサーがなんともしつこい。

しかし逆に今日の熊本はここからでした。鈴木を下げていつもの4バックに戻すと前線には巻。これで雰囲気がガラリと変わりましたね。選手が生き生きと躍動し始めます。同じ前線のターゲットでも、佐藤より何枚も上手。張っているだけで存在感が違う。

その巻が倒されて得た65分のPA左からのFKのチャンス。養父と目が合ったという上原が素早くリスタート。キーパーが出そうで出れない絶妙のクロス。中央で巻が潰れてくれて、ファーサイドから入った養父が落ち着いて合わせた。同点弾とします。

さすがに目が覚めた長崎と、その後は緊迫した攻防戦。熊本は岡本、清武と攻撃的カードをテンポよく投入し、残り時間も10分を切ったところ。いい時間帯でもありました。右サイドからのスローイン。園田から縦に齋藤、そして岡本、巻、再び岡本と全てワンタッチで繋ぐ。岡本が侵入すると見せかけてDFを引きつけると、左から上がった黒木へ出す。黒木がダイレクトで打つかと思いましたが、DFの股を抜いてグラウンダーでクロスを入れると、中には清武が背後からドンピシャで入り押し込みます。全編、岡本がデザインした攻撃だったとも言えるでしょう。流れの中どころか、完璧なまでに崩し切っての得点でした。

長崎は最後、DF高橋を上げて“大砲”得意のパワープレー。それを凌いで熊本が記念すべきアウエー50勝目を挙げました。

試合後、「ゲームのプランとしては、長崎のゲームを見ていたなかで、どういう立ち上がりをして、最後はパワープレーも含めてどう変化を加えてくるのか、それに対してある程度こちらも耐えうる、ゲームの流れに応じて、攻撃に出るにしてもしっかりと守りきるにしても、いくつかの変化を持つカードはありました」と言う小野監督。

「巻を途中からというのも1つですし、そういう意味ではスタートからやってもらう選手、それから途中で流れを変えてもらう、あるいはゲームを閉めてもらう、そういったところは考えて、清武もそのうちの1人です」と言う。

戦前の“うれしい悩み”を、対長崎のゲームプランに落とし込んだ指揮官。そしてそれに応えるように、キッチリとそれぞれの役割をこなした選手たち。それと「最後の最後までサポーターがゴールの後ろから応援してくれて」(小野監督)と言うように、敵地に駆けつけた450人の赤いサポーターたち。九州ダービー、アウェーの地で一体となった熊本が“逆転する力”を発揮しました。

われわれはスカパーの実況内容にちょっと辟易、イライラしていただけに、画面に映る「カモン!ロッソ」が、いつにも増して嬉しかったことを付け加えておきます(笑)。