【J2第38節】(うまスタ)
熊本 0-2(前半0-1)磐田
<得点者>
[磐]ジェイ(5分)、太田吉彰(71分)
<警告>
[熊]鈴木翔登(49分)
[磐]太田吉彰(32分)
観衆:12,404人
主審:吉田寿光
副審:中野卓、勝又弘樹


0-2の敗戦。点差は2点ですが、彼我の力の差はそれ以上を感じた試合でしたね。敵将・名波監督が「相手ゴールキーパーが非常に良かったので、彼でなければもう少し点差が開いたゲームだったんじゃないか」(九州J-PARK)と言うように、ダニエルがいなかったらと思うと…。

PO圏内まで勝ち点差4に迫ったわれわれにとって重要な試合だったように、磐田にとっても、背後に迫る3位福岡の足音に、絶対に負けられない状況。だからこそ、スカウティングを徹底し、試合の2日前には熊本に入るなど、万全の準備をしてきました。

スカウティングの点で言えば、例えば熊本のクイックリスタートを警戒しての素早い集合。ダニエルの攻撃的パントキックに対して徹底して前線のジェイがチェッキング。そしてなにより熊本に複数人でプレスをさせないための速いパス回し。それも足元ではなく、スペースへの動き出しが速い。つまり次のプレーの判断が速い。

九州リーグからずっと観てきましたが、まずJ2に上がって何が違うかといえば、テクニックよりもなにより、このプレー判断の速さでした。しかし、今日の磐田に見せつけられたのは更に上をいく速さ。これが“カテゴリー1”のレベルなのでしょう。熊本に守備の数的優位を決して作らせません。

20151025磐田

開始早々、磐田のスローインから左サイド宮崎がクロスを上げるとジェイの高い打点のヘディングが決まり失点。鈴木が競ってはいたものの、それをものともしない強さ。そしてポストプレーでは、その足元のうまさと懐の深さ。これは二人がかりでも奪えない。このカテゴリーでは反則級の選手です。

「(試合の)入り方は、ラインをかなり意識して上げて、良かったんじゃないかと思ってます」(九州J-PARK)と小野監督は言いますが、磐田は熊本のオフサイドトラップをかいくぐる。逆に熊本の2トップにはオフサイドが多い。今日の両副審、どうかしてるのか?と疑ったぐらい。

ただ、熊本も前半30分頃は波状攻撃。齊藤が落として平繁のシュートはバーに嫌われる。“たら・れば”を良しとしないわれわれも、今日だけは言わせて欲しい。このシュートが決まっていれば…。

右SBの養父が再三アーリークロスでファーサイドの岡本を狙いますが合わない。なんとか前半のうちに同点に追いついておきたい熊本だったのですが、ビハインドのまま後半を迎えてしまいます。

後半、熊本は出ていくしかない。磐田は徹底した守りから鋭くカウンターを狙う。磐田の敷いたブロックと、貼りつくようなプレスに、熊本はなかなか前に運べなくなった。

岡本に代えて嶋田をトップ下の位置に持ってきますが、何もさせてもらえない。逆に71分、その嶋田が川辺にボールを奪われるとカウンター。小林、川辺と繋いで、最後は右から太田が上がり、前に出たダニエルの頭を越えるループシュートで追加点としました。

その後も上原、巻と一気に2枚替えを行いましたが奏功せず。2点目の起点になった殊勲の川辺が、「マッチアップした相手が、左利きでドリブラーということはわかっていたので、左に来るかなと思い、ちょっと左に体を寄せることを意識しました」(磐田公式HP)と言ったとおり、磐田は熊本の選手一人一人の特徴と対策をスカウティングしていました。

昨季のリーグ開幕前、「J2の優勝シャーレなどオークションで売り飛ばそう」と豪語し顰蹙を買った名波監督。優勝どころか、自動昇格圏内もままならず、4位でPOを戦った。そしてあの山形戦での劇的ともいえる敗戦。決勝戦にも進めませんでした。

これほど2位と、その下の差を知っている監督はいないでしょうね(笑)。ひょっとしたら名波にとって、3位以下はもはやJ2残留と同じ意味を持つのかも知れない。だからこそこの男が、プライドをかなぐり捨てるように、徹底して格下ともいえる熊本をスカウティングし、その戦力の無力化を図った。2日前に敵地に入り、コンディションに気を配った。ゲーム中は90分間一度もベンチに座ることなくピッチサイドで指揮し続けたのではなかったでしょうか。

スカウティングの名将、わが小野監督が更に上を行かれましたかね。われわれが磐田を無力化する姿を想像していたのに…。

いやいや。ちょっと悲観的に過ぎる感想になってしまいました。ではこのゲーム、何も得るものがなかったのか?というと、決してそうではなかったなと。

昨年の10月19日、ホーム磐田戦のエントリーにわれわれはこう書いています。
「…われわれにとっては藤田俊哉の磐田であり、名波浩の磐田であって。チームそのものが仰ぎ見るレジェンドです。そんな磐田を初めてホームに迎える。1-3で敗れた今季の前半戦の残像も鮮明で、無意識のうちに居住まいを正してキックオフの笛を待ちました…」

また次のような小野監督のコメントも引用しています。
「あの相手に全く臆することなく勇敢にラインを上げて最後までプレッシャーをかけて、裏を取りに行って、つなぐところはつないで、最後の最後まで勇敢に戦ってくれたと思っています。選手達は力を出し切ってくれて、今季の試合の中でも最高の試合の1つじゃないかと思います。」

溢れ出るような磐田への“特別感”ですね。そして較べれば今日のゲーム、少なくともわれわれのこのゲームへの磐田に対する意識は全くある意味”普通”なものでした(多分、チームも)。普通に戦い、当然のように勝ちに行って、そして負けてしまった。そんな感じ。

奇しくも一年後の今日。舞台も同じ9回目のサッカーフェスタ。1万人のホーム観衆が見たものは、力の差以上に、昇格への凄まじい執念のようなものだったのかも知れません。まだまだ、わがチームも発展途上。しかし、ちょっと引いてみると、そんなけして小さくない成長も感じられる。

6位までの勝ち点差は7。二馬身以上開いてしまいましたが、まだまだ諦めるのは早い。次のC大阪戦も真正面から堂々と勝ちに行くわがチームの雄姿を期待しています。

【J2第21節】(ヤマハ)
磐田 1-1(前半1-0)熊本
<得点者>
[磐]松浦拓弥(33分)
[熊]齊藤和樹(83分)
<警告>
[熊]高柳一誠(45分)
観衆:8,114人
主審:榎本一慶
副審:竹田和雄、木川田博信


「前半と後半に二つの顔を出してしまう二面性が出てしまった」と言ったのは、磐田の名波監督でした(5日付・熊日)。確かに前半と後半では、攻勢が完全に入れ替わってしまった。それはまるで野球の表と裏のように…と言うのも言い過ぎではないようなコントラストでした。

”自分たちの悪癖”と言いたげな敵将ですが、果たしてそればかりでしょうか。明らかに後半、熊本は巻を入れて流れを変えた。巻を後半から入れてひっくり返す、こんな展開をいつか見たという既視感(デジャヴ)のような思いがあって、過去のエントリーを遡ってみたんですが、今季ではないようで。(昨季だったのでしょうか、記憶力に優れた人、拍手コメントででも教えてください)

リーグ2位、昇格圏内を確保する磐田とのアウェー戦。小野監督は、またもやスタメンを変更し、CBの一角に鈴木を起用。ボランチは園田をそのまま、相方には上村。高柳を一列上げてトップ下に持ってきました。

20150704磐田

ところが前半は防戦一方。元イングランド代表の長身FWジェイが前線で納め、モビリティのあるアダイウトンにサイドを破られることを恐れて、DFラインが徐々に押し下げられる。自陣に押し込まれる熊本。両ボランチも含めて、今日トップ下の高柳までもが守備に奔走させられ、クリア一辺倒の展開の先には、ワントップの齊藤しかいない。収まらない。攻撃の形すら作れない。

「強気に攻めに出てというところにメンタル面を持ってくるというところに45分費やしてしまった」と言うように、とにかく、DFラインを押し上げろ!コンパクトにしろ!とピッチサイドから指示を出す小野監督。けれども33分、熊本DFラインでかけ引きしていた松浦に、上田からのパスが渡るとすかさずシュート。前に出たダニエルが一旦はブロックしますが、こぼれたところを拾い、すばやく押し込んで先制点とします。

先制点を許すと、一気に敗戦の色が濃くなるのが熊本。たとえば昨季のヤマハスタジアムでの初めての磐田戦では、開始7分に先制されると、ずるずると前半だけで3失点。当時指揮官は「「ミスは誰にでもある。ただ、できることを1つのミスで捨ててはいけない」と、ハーフタイムで鼓舞しましたが。

しかし、今日はここで辛抱できた。相手に追加点を与えなかった。このことは非常に大きい。そして、後半の反撃が始まります。

ハーフタイム。小野監督は「厳しい言葉で」士気を高めたのだと言います。それは「強気で押し上げて、強気でプレッシャーをかけて、強気に攻めに出」ろ、というところなのでしょう。「強気で」。その言葉は、昨シーズンでの戦いで、アウェー1戦目は全くメンタル面で負けてしまい、しかしホーム2戦目では、「臆することなく勇敢にラインを上げて戦ってくれた」(小野監督)結果、スコアレスながらも引き分けた。そんな強豪・磐田に対する、小野監督の”チーム戦術”に、通じるものがあると思いました。

そんな指揮官自身、「言葉だけでは不足だと思って」、「そういう攻撃的な姿勢」のシンボルとして後半から投入したのが巻でした。

「僕が入った時には、皆ある程度、セカンドボールに対する反応が早くなる」(ロアッソ公式サイト)と巻自身が言うとおり、熊本は見違えるように攻撃に上がって行けるようになる。敵陣に侵入する人数、アタッキングサードを脅かす人数も増えてきます。

58分には、左サイドの巻からグラウンダーのクロスに、中央で中山が惜しくも合わず。71分にも、黒木からのアーリークロスに、巻が惜しくも届かず。ファーには常盤も飛び込んでいました。攻撃に掛ける人数が増えている。

残り時間は10分を切る。しかし依然、攻勢は熊本にありました。左CKを得た熊本。黒木はショートコーナーを選択。低い弾道でニアに送ると、齊藤がDFと競りながら頭を振った。ボールはゴールの左ポストをかすめると、それまで完璧な守備を披露していた磐田GK・カミンスキーの手をかいくぐりゴールマウスを割りました。同点。

磐田は俄然、反撃に転じる。粘り強さを持った磐田。しかし、それ以上に粘る熊本の守備。そして熊本には逆転、追加点のチャンスが訪れる。巻が繋いで黒木の左からのクロス。抑えのきいた園田のダイレクトボレーはカミンスキーに収まる。フ~っ。

あの流れであれば、逆転弾を決めて、磐田を仕留めるべき展開でした。同点引き分けではもったいないような。名波監督が「拾った引き分け」だと言うように…。

これぞという存在感を示した巻は、「前半戦を象徴するようなゲームだったのかな」と、今日の試合を振り返りました。「自分たちの良いところを出すのに時間がかかったのかな」と。

しかし、巻自身の活躍だけでなく、90分のゲームのなかで、あれほどの劣勢を戦術的に挽回できることを証明したのは大きな自信につながる成果と言っていいでしょう。

さて、この試合でシーズンの前半戦が終了。熊本は勝ち点1を得て20位。降格圏順位からひとつは上というものの、しかし、19位の徳島も21位の岐阜とも、同勝ち点19で並んでいるという、なんとも不安な状況は続きます。

10月19日(日) 2014 J2リーグ戦 第37節
熊本 0 - 0 磐田 (16:03/うまスタ/12,661人)


二週続いた週末の台風接近。しかしホームゲームの今週末は抜けるような快晴の青空。秋の風物になったくまもとサッカーフェスタも第8回。試合前のスタジアムはまさに“フェスタ”。会場のどこかしこでミニイベントが開かれ賑やかな雰囲気。訪れたみんながそれぞれ思い思いに楽しんでいる。サッカーはピッチ上だけではないんだなと。今季最高の1万2千人を超える観客が集まりました。

さて、そんな雰囲気とは別に、磐田のゴール裏には先週17日に自動車事故で亡くなった、元日本代表にして磐田の名MF奥大介の死を悼むメッセージが掲げられていました。チーム・ベンチには背番号8のユニフォームが。

かつて共にピッチに立った名波監督はもちろん、チーム、サポーターの悲しみが伝わってきます。それだけではなく「…かつて日本代表として共に戦った奥大介君の悲報が入ってきました。」「少なくとも両チームがしっかりと力を出し合い、出し切る試合にもっていかなければいけない。」試合後、熊本の小野剛監督も、今日のこのゲームに込めた思いがあったことを語ってくれました。

しかし、そんな経緯がなくても、われわれにとっては藤田俊哉の磐田であり、名波浩の磐田であって。チームそのものが仰ぎ見るレジェンドです。そんな磐田を初めてホームに迎える。1-3で敗れた今季の前半戦の残像も鮮明で、無意識のうちに居住まいを正してキックオフの笛を待ちました。正直なところ、これだけの大観衆の前で、どんなゲームになるんだろう…。期待と心配と…。

そんなゲームの前に、早くもスタメンのアナウンスで場内がどよめきます。今日の小野監督の仕掛けは18歳、嶋田慎太郎のJ2デビュー、初先発でした。このゲームにこの選手起用。どんなプレーを見せてくれるのか。さらにワクワク感も盛り上がってきます。

20141019磐田

「あの相手に全く臆することなく勇敢にラインを上げて最後までプレッシャーをかけて、裏を取りに行って、つなぐところはつないで、最後の最後まで勇敢に戦ってくれたと思っています。選手達は力を出し切ってくれて、今季の試合の中でも最高の試合の1つじゃないかと思います。」(小野監督)

その試合自体は、一言でまとめてしまえば、この監督コメントで終わってしまうくらいシンプルで、本質的な内容に満ちていて、われわれファンとしてはちょっと心を揺さぶられるようなスコアレスドローだったと感じています。

「立ち上がり、だいぶ我々の背後を突いてくるロングボールが多くて、そのラフなボールに対応しきれなかったのと、熊本のアタッカー陣の動き出しが非常に早かったので、ちょっと重心が後ろになってしまって…」(名波監督)

もうすっかり見慣れたような熊本序盤の攻勢。しかし、今日のその厳しさは磐田のリズムを混乱させるに十分な迫力、激しさがありました。

前回対戦では、あれほど剥がされ、いなされた熊本のプレス。今日はがっちりと磐田を捕まえて離さない。前田にボールを出させない。

そしてハーフタイム。
小野剛監督「全員で強気の戦いができている。」
名波浩監督「怖がらずに縦へのパスを出していこう。」
両監督のコメントにこのゲームの底にあるキーワードが、対照的に出てきていて実に興味深い。

ほかにも「強気」「勇敢」という言葉が試合後の監督コメントに何度も出てきます。前半戦の敗戦後、小野監督はこう言いました。
「できることなら、我々の経験の浅い選手たちにどれだけ恐怖心を払拭させ、自信を持ってピッチに送り出せるかというところが一つ勝負でした。相手の日本代表選手が並ぶ中、ちょっと最初バタバタした時間帯があり、そこでミスが出てしまったと」。
3月のその悔しい敗戦から半年あまり。チームが成長し、それぞれの指揮官がまったく逆のコメントを発している。

後半、磐田もロングボールを使い始め、押し上げてオープンな展開を狙いますが、熊本も落ち着いた十分な対応を見せます。後半12分、嶋田慎太郎→岡本賢明の交代以降は、どこと言ってカードを切る必要がないくらいのバランス、運動量。しかしこのタフなゲーム、さすがに次第に守ってカウンターという形に押し込まれる熊本。そのなかで再三、澤田が高く上げた磐田のDFラインをひとり切り裂き場内を沸かせる。

後半31分、その澤田が足を攣って×が出ると、間髪を入れず巻を投入。片山もまた足を痙攣させ、引きずりながらのプレーが続く。

終了の笛と同時に、倒れ込み膝を折る熊本の選手たち。

相手の強みを消したというより、真っ向から勝負を挑んで、相手のサッカー自体を圧倒した。磐田にサッカーをさせなかった。90分間。最初から最後まで。決定機すら与えなかった。

4試合無得点。ではあるが、京都、磐田と2試合無失点。勝利という結果にはつながっていないが、「こういう試合を続けていけば後ろは無失点でいけると思うので、そこから攻撃につなげていかなきゃいけない」と、以前より前への勇敢な飛び出しが目立ったGK畑が言う。この2試合のスコアレスドローには、ずっしりとした重みを感じる。もう名前負けなどしない。する必要もない。顔を上げて、胸を張っていい試合ぶりではなかったでしょうか。

3月16日(日) 2014 J2リーグ戦 第3節
磐田 3 - 1 熊本 (16:03/ヤマハ/7,998人)
得点者:7' 前田遼一(磐田)、19' 前田遼一(磐田)、36' 松井大輔(磐田)、74' 齊藤和樹(熊本)


20140316磐田

13年前。2001年4月のヤマハスタジアム。ホームチームがまだ青の時代。初めてのJFLリーグ戦で初めてのアウェイゲームに臨む。対戦相手は静岡産業大学。サックスブルーのユニフォームはジュビロそのままで。運営にも磐田サポが多く関わっていたような。結果は引き分けでしたが、たった3人のゴール裏に、磐田サポの方々から次々と「がんばれよ」と、とても温かい声をかけていただいたのを思いだします。思えばあれがわれわれのスタート地点だった。

以前にも書きましたが、この日の前日、国立で鹿島・磐田戦を観戦した後だっただけに、われわれにとって磐田は、まさに雲の上のチームでした。そして再びの今日のヤマハスタジアム。先方が降格してきたとはいえ、同じカテゴリーでこうやって戦える日がくるなんて、まだ実感がわかない感じです。

そして、われわれがそうだったように、選手たちも、完全に雰囲気にのまれたのか、ボールは足につかず、何をやっているのかわからない間に前半3失点。前節のエントリーの最後に“メンタルの進歩”と書いたけれど、この試合を見てからにすればよかったかもしれないと思いました(笑)。しかし、小野監督が試合後、「選手たちにもっと自信を持たせて送り出せなかったのは私の責任」と言うのは、監督自身、まさかそんな微妙なメンタルがあるとは想像できなかったのかもしれません。

監督就任以来、その心理マネジメントの深みを捕まえようと、小野さんの発する言葉に注目しているわれわれですが、この日もわれわれをうならせた“小野語録”。今日一番はなんと言ってもハーフタイムに発せられたこの言葉でした。

「ミスは誰にでもある。ただ、できることを1つのミスで捨ててはいけない」

小野監督は自著「サッカースカウティングレポート」のなかで、ハーフタイムは「試合の流れを変えられる転機」だと書いています。ただし「いきなり選手を集めて話をするのではなく、最初に選手同士で気持ちを発散させてからポイントを伝える」のだと。コーチ陣と戦略をたてている間、別のコーチには選手たちが何を言っているのかモニターさせておく。その報告を聞いて、どのような言葉をかけるのか、何と言って自信をつけさせるのか頭を整理するのだと言う。わずか十分そこらの間で…。

「選手たちのメンタルの問題と戦術的な問題、その両方が同時にクリアになって初めて、劇的に流れが変わる」のだと説きます。

そして、この試合でも「選手が戻ってきた時に前半の最後の方は少し手応えを掴んでいたので、自分が言葉をかけるよりは選手の方が『絶対に行くぞ』という気持ちを持っていた」(J's Goal)と観察してる。そのうえでかけたのが前述の「1つのミスで捨ててはいけない」というシンプルな、しかし全てのネガティブなメンタルを一掃するような一言でした。具体的な戦術面では、「どういった形でボールを運んでいったらいいのかというところ」を伝えたのだと言います。

巻を使った空中戦は日本代表DFの伊野波にがっちり跳ね返されてしまう。これをあきらめて、岡本を入れて地上戦に変更した後半。ピンチを凌ぎながら、耐える時間帯が続くものの、けして受け身ではなく、自分たちからアクションを起こそうという意図が形をみせはじめる。次第にカウンターのチャンスが訪れる。五領の投入あたりで、明らかに形勢が五分くらいにまで変化します。

園田のアーリークロスをゴール前の齊藤がうまく自分のボールにして磐田ゴールにねじ込むと、終了間際の猛攻は、さらに追加点もという情勢で終了の笛が鳴りました。

もちろん3-0でリードした磐田が、チームとしていくぶん緩んだこともあろうし、足が止まってしまうくらい、前半、飛ばしていたことも事実です。開幕戦をホームで落としている磐田の立場なら、この試合は絶対に負けられないと、開始早々から相当の意気込みで突っ込んできたわけで。

正直なところ、昨年、前半のあの展開であれば、後半は目を覆うような結果が予想されると思いました。それはわれわれだけではなかったでしょう。

まだ始まったばかりのリーグ戦。集中を切らさず、愚直に凌いでいけば、必ず自分たちの時間帯が来ることは信じられるようになったのではないでしょうか。

今日の90分の戦いには負けたけれど、次に対戦ではきっと、とわれわれも思えるように、敵将シャムスカが「熊本に自信を与えてしまった」と悔やむ。

それにしても五領。思わず「決めてくれよ…」と呻いてしまいますが、しかし小野監督は、「向こうが1回で決めるなら、こちらは2度、3度と好機をつくらないといけない」と、さらに前がかりのコメント。

「強敵と早い時期に対戦できたのはよかった」と巻。通用したところ、通用しなかったところ。選手自身が肌で感じて確認できた。そして今日もまた下を向く必要のない戦いだったと思う。

そういう意味では、この試合(実戦)で得たメンタルこそ、大きな“進歩”だと言えるのではないでしょうか。