9月10日(日)
【J2第32節】(ピカスタ)
讃岐 0-0(前半0-0)熊本
<警告>
[熊]三鬼海(74分)
観衆:3,208人
主審:野田祐樹


否が応でもモチベーションが高まる試合でした。勝ち点2差で上を行く讃岐との直接対決。更には前日の敗戦で金沢も足踏みしたので、この試合で勝利すれば一気に順位は2つ上がる。

しかし、結果はスコアレスドロー。DAZNの実況も、休刊日明けの熊日も「痛み分け」と言いますが、酷な言い方をすればこの引き分けの意味はふたつある。讃岐にとってはこれで7試合負けなし。一方の熊本にとっては6試合勝ちなしと言われるということ。

熊本はかなり選手を入れ替えて臨みました。ボランチに木村。黒木を左に回して右のWBには田中。シャドーに中山と嶋田。

20170910讃岐

讃岐にとって熊本は1勝2分4敗と、分が悪い。しかし、好調の今だからこそ、この”因縁深い”熊本を倒したかったでしょう。そういう敵将・北野監督の「過剰に意識した部分」(熊本蹴球通信)が出るカード。だからなのか、試合直後のDAZNのインタビューには、「勝ちゲームであり負けゲームであった」と、憮然として応えました。

確かに試合前のDAZNのインタビューで北野監督が「池谷さんは相手の良いところを消してくる」と予測していたように、熊本は讃岐の勢いある攻撃を抑えにいきました。特に”熊本キラー”ともいえる原に仕事をさせなかった。

攻撃も12分頃の安の遠目のFKがワンバウンドで枠をかすめたときは、”今日は行ける”という感じがしたし、26分頃には田中がワンツーで右サイドを駆け上がってのクロス。これをファーから上がった黒木が切り返して撃ったシュートは、実況も「入ったか」と叫んだほどでしたが、アランに阻まれました。

32分頃には右サイド遠目からのFKを園田がゴール前に送ると、アランと入れ替わるように中山がGKの前で触って反らした。ボールはゴールに向かっていましたが、アランが戻って描き出します。いずれにせよゴールまであと一歩というところ。

一方、38分の讃岐は熊本ゴール前の原に向かってロングボールを送ると、下がってクリアしようとした村上がGK畑と交錯。クリアしたボール、無人のゴールをヘディングで狙われますが、園田が戻って撥ね返す。しかし、これで村上が痛んでしまって小谷と交代。素早い指揮官の判断でした。

ハーフタイムに北野監督がどんな檄を飛ばしたのかはわかりませんが、前半あれほどあったスペースが縮まり、セカンド争いも熾烈になってきました。当初は中山、嶋田がボールに触るシーンが増えてきたと感じていましたが、徐々にアタッキングサードで出しどころがなくなる”いつもの”展開に。前半の自分たちの時間帯に点が取れていれば、という反省の言葉もいつもどおりです。

「ゴールエリア内でも動き回り、パスの出し手、受け手以外の3番目の人が出てこないと、こじ開けられない」(熊日・三鬼)と、選手自身も分かっているのですが・・・。

熊日・樋口記者は、「相手のゴール前に入り込む選手は1、2人止まり。攻撃の迫力、スピードいずれも足りない」と評しました。確かに重心がどうも後ろにある感じがするのは、まず池谷監督就任後に着手した守備の構築のところで、帰陣を早くし、ポジションニングの”曖昧さ”をなくすことを徹底したことが、まだ”ここぞ”というところで行くという、攻守切り替えの速さのバランスを欠いているのかも知れない。そして、今置かれた現状で「先に失点をしたくない」という意識が、そうさせたているのもあるでしょう。それは讃岐の方にも感じられ、なんとも堅いゲームになりました。

起用する選手が確かに持ち味は出すものの、それが試合毎には相手もあって、全体としてうまく相手に”はまらない”というジレンマも監督にはあるかも知れません。今日も、安が中盤に落ちてきたときに、そのスペースに八久保なら入っていただろうという場面がありました。

熊日には、6試合無得点を踏まえ、見出しで「ゴールへの執念どこに」と煽り、「池谷監督は『最低限の結果』と厳しい表情で振り返った」と書いてありました。

確かに”最低限”の結果でしかなかった。しかしゼロではなく1であったことは、熊本蹴球通信で井芹さんが書くように、降格圏の山口との差を1試合以上に広げ、まだ次節で金沢と讃岐を抜くことができる位置にしているということ。この状況では勝ち点1を積み重ねるサッカーがベースになりはしないかと。

今節も群馬が千葉に完封勝利を納めたように、戦う前からの勝ち点計算など無意味なこのリーグ。この勝ち点1を強くかみ締め、次節福岡に向かっていくのみです。


2月26日(日)
【J2第1節】(えがおS)
熊本 2-1(前半1-0)讃岐
<得点者>
[熊]安柄俊2(22分、57分)
[讃]永田亮太(70分)
観衆:7,027人
主審:柿沼亨


いやあ勝ちました!ホーム開幕戦。追いすがる讃岐を退けて、逃げ切り。かなりホッとしています。

いつものように、いやいつも以上に、期待と不安が交錯する開幕戦でした。ニューイヤーカップで書いたように、まだまだ怪我人が多いようで、新戦力はもちろん熊本の新チームの姿がなかなかつかみ切れなかった。早々と決まっていた開幕戦の相手・讃岐は、西、仲間、木島、岡村という旧知のメンバーに、今季は市村まで加入し、更に北九州から原一樹という嫌な名前も加わって…。もっと言えば、「熊本は特別なチーム。自分の監督生活の原点」(DAZN)と、北野監督自身が公言するとおり、熊本相手には過剰に”意識”してかかってくる。特別なゲームになってしまう。やっかいな相手と言えました。

熊本の先発は安と平繁の2トップ。右サイドは岡本、左は嶋田。ボランチは上里と村上。CBは小谷と園田。右SB黒木、左SB片山。GKは佐藤。

対する讃岐も4-4-2。

20170226讃岐

序盤から見られた玉際の激しさは、今季の両チームのコンセプトをはっきりと表しました。特に讃岐のCBエブソンと熊本の安のところはバチバチ。初めてそのプレーぶりを見る安でしたが、滞空時間の長い空中戦、DFを背負ったポストプレー、献身的なディフェンス。随所にフィジカルの強さと、巧さを魅せます。

押し合いへし合いの序盤でしたが、熊本が左からの大きなサイドチェンジから右奥のスペースに黒木を走らせると、切り替えした黒木がコーナーを得る。その右CK。「相手GKが出られない場所を意識した」(熊日)という上里が蹴ったボールに、それまでぴったりとマークされていたエブソンの背後から身体を投げ出すように頭に当てた安。ボールをたたきつけてゴールにします。

待っていた先制弾。今シーズンの初ゴールは、新加入選手のCKから、新加入選手による得点。7千人が埋めたスタジアムが沸かないはずがありません。

その後も上里が、後ろ、右、左と動いてボールを散らす。しかし、攻勢を強めた讃岐にゴールを脅かされ、ヒヤリとするシーンも続きましたが、1点を守り後半に折り返します。

讃岐もハーフタイムで修正してきたのでしょうね。間に入ってくる仲間の動きが、非常にやっかい。そして時間は57分近くになって、讃岐が我那覇と馬場に代えて、いよいよ原と高木を入れて巻き返しを図ろうかという、まさにそんな時間帯でした。

左サイドで嶋田がうまいボール扱い。敵を交わして前を向く。平繁に一度預けるともらい直して今度は左足でスルーパス。瞬間崩れていた讃岐のDFラインをかいくぐって飛び出した安。GKの動きを冷静に見ながら、流し込むように追加点を決めます。

うまい。二人とも。

2点差にされた讃岐。原、高木で押し込んでくる。ロングボールでDFを下げさせます。それに対して熊本はスピードのある齋藤を投入。前がかりの讃岐のDF裏を狙うわかりやすい采配。早速、黒木からのカウンター。齋藤をスペースに走らせる。ドリブルで持ち込むが、エリア前でブロックされる。しかし、沸きに沸くスタジアム。

讃岐の徹底したロングボール。そしてさすがの原の動き出しに、押し上げが効かず間延びしてきた熊本。70分、左サイドから讃岐の素早いFK。準備が少し遅れた。中で木島が潰れると、後ろから入ってきた永田に対応できずヘディングを決められます。

イケイケになったのは讃岐。その後も攻勢の時間が続きましたが、熊本は平繁に代えて巻。嶋田に代えて光永とカードを切り、終了の笛が吹かれるまで、粘りきりました。

「やってほしいことを選手たちはやってくれたが。だが、その中でやってはいけない失点をした」。試合後、敵将・北野監督はそう述べました。「0−1の時に彼ら(原と高木)を準備させていたんですけど、ああいう”つまらない”カウンターで失点してしまったので、僕の判断でもっと早く投入できたら、今日の試合は逆の展開になっていたのかなと思います」とも。

確かに讃岐はサイドを右左に揺さぶり、熊本ゴールを脅かしました。波状攻撃に晒され、ひやりとする場面も幾度ともあった。しかし、ゴールを割ったのは一度。サッカーが敵のゴールを割った数を競う競技でありつづける以上、勝者は我々でしかないのです。相変わらずの北野氏の”負け惜しみ”の弁を聞けて、大いに溜飲を下げたものでした。

ホーム開幕戦で、ゴール裏で繰り広げられる「カモン!ロッソ」を眺めるのは格別でした。それにしても、新加入のFW安柄俊の”万能性”には驚くばかりでしたし、上里の実力、嶋田の覚醒したようなキレキレぶり、黒木の相変わらずのモビリティも頼もしかった。清川監督の2年目のサッカーの狙いも、少し窺えたように思えました。

もちろんまだまだこれからの課題も不安な要素も見えました。しかし、とりあえずこの開幕の勝利。勝ち点3という結果を得て、そしてそれ以上の大きな価値がある勝利だと思いました。

さぁ、ホームチームのゲームがある生活が、今年も始まりました。

10月23日(日)
【J2第37節】(ピカスタ)
讃岐 0-0(前半0-0)熊本
<警告>
[讃]永田亮太(39分)、山本翔平(46分)
観衆:2,524人
主審:上田益也


試合前日。熊日は見出しで「勝利求められる大一番」と書き、清川監督も「讃岐戦の後は上位との3連戦が控えており、今回は勝ち点3を取らないといけない。『大一番』ということは選手も分かっている」と語っていました。

ただ、われわれは元来、このカテゴリーにおいて、勝ってしかるべき相手などいないし、同時に負けると決まっている相手もいないと思っている。勝機は常におかれた状況において変わってくる、と。しかしながら、そんな中でも、この一戦だけは勝ち点3が欲しい状況であるというのは、誰もが一致するところでした。

しかし、勝ち点35、19位に沈む讃岐にとってもそれは同じでした。その後の5戦の相手を考えても、この熊本との一戦で勝ち点3を奪っておきたい。お互いに降格圏脱出の掛かった必死のゲームでした。

そんな讃岐は、清川監督のスカウティングどおり、DFラインからのロングボールを多用して押し込んできます。そして、セカンドボール争いで見せるハイプレス。

20161023讃岐

わかってはいたものの、熊本もお付き合いしてロングボールの応酬。ただし10分。清武の落とし。讃岐のクリアが小さいところを拾った村上の左45度からのミドルシュート。これはポストに嫌われてしまう。

この試合。本当に惜しいと思ったシーンは、この時と、後半9分の園田のクロスに中央の清武がヘッドで合わせたシーンぐらいでしたか。あとは、トップの清武がボールを持って”溜め”を作ろうとしても讃岐の素早い潰しが入る。仮にキープが出来たとしても、なかなか味方が上がってこない。

ボールホルダーを追い越す場面がない。PAに入っていく人数もいない。攻撃は清武、平繁、齋藤、嶋田の前4人に任せてしまって、あとはミドルを狙うような。重心は常に後ろにあるような戦い。

その間に、捨て身とも言える讃岐の攻勢に晒される。ただただ、讃岐のフィニッシュの精度に助けられているだけ。危ない危ない。

結局、なんとか零封には収めて、勝ち点1を分け合う。

相手の状況に合わせるように終わり、同じようにスコアレスドローの結果になった33節の山形戦のエントリーで、われわれは最後にこう書きました。
「残り試合数が少なくなって、リーグ残留を意識し、今の戦力の現状、これからの対戦相手を考えての戦略なのでしょうか。このあたり。指揮官のコメントだけでなく、その選手選考とシステム、選手交代と戦術。なにか決意していることもあるのかも知れないとも思わないでもない試合。そう感じました」と。

あの時は回りくどい書き方をしましたが、チームはこの状況下において、あの2013年の降格危機に直面した状況と同じ戦略を決意したのではないかと思ったのです。シーズン中盤の7月、降格圏との勝ち点差がわずか4のなか、吉田監督が途中退任して、池谷監督代行が緊急避難的に指揮を取った2013年。あのときの状況。あのときの合言葉が、「勝ち点1(引き分け)をベースにして勝ち点3(勝利)を狙う試合運び」でした。

降格圏という漆黒の闇を覗くような状況。今はまだ勝ち点差6があるけれど。あの年、最後は差”2”まで縮まったときとはまだ差があるにしても。この状況では、本当に勝ち点1すら積み上げるのが難しくなる。チームで一番大事なこと、それはなにより”リーグ残留”だということ。そのために、「勝ち点1を死守する」、そんなゲームプランが”発動”されたことは間違いないのではないかと…。

順位の近い相手には、相手に勝ち点を与えない。特に勝ち点3を…。それが、この終盤での戦略。それがまさしくこの讃岐戦ではなかったかと思わされます。

熊本はこの引き分けで勝ち点1を得て、トータル勝ち点40に乗りました。スカパーのアナウンサーは、その大台への到達を持って熊本残留への確信のようなコメントをする。確かに降格制度が始まったこの4年。勝ち点40での降格はなかったものの…。

監督や選手や。この試合に関しての色々なコメントがあるにせよ、今まさに熊本はこの”残留”という一点で次の5戦に向かっていくのだと思います。1点でも勝ち点を上積みして。あの2013年のように。

そのためには、あるときは全く”面白みのない”試合運びが試されるかも知れない。いや、もう面白いとか、面白くないとか言っている場合ではないでしょう。

【J2第19節】(ベアスタ)
熊本 2-0(前半2-0)讃岐
<得点者>
[熊]清武功暉(34分)、嶋田慎太郎(42分)
<警告>
[熊]キム・テヨン(31分)、植田龍仁朗(87分)
[讃]藤井航大(50分)
観衆:5,191人


前々節のリーグ復帰後初勝利は、ようやくホッとしたというのが正直な感想でしたが、長崎戦以来9試合ぶりになる今節の無失点試合は、それ以上の嬉しさがありました。「長くはがゆい思いをしていたし、守備陣で頑張っても結果が全てなので、今日は結果が出て(無失点)良かった」(公式)と言うのはGK佐藤。試合しょっぱな、讃岐のカウンターから木島のクロスに中央で仲間に合わせられますが、それをファインクリア。先制点の機会を阻止した守護神のこのプレーが、勝利を大きく手繰り寄せました。

20160619讃岐

10分以降は熊本の時間帯。左サイド片山からマイナスに嶋田に送ると嶋田が撃つ。強烈な枠内シュートは、GK清水がクリア。続いても片山から受けた清武がDFを背負いながらマイナス。平繁のダイレクトシュートは枠の左。すぐあと、中盤で潰されるがアドバンテージ。岡本が左から上がった清武に。エリア内からのシュートはGKはじく。こぼれ球はエブソンがすかさずゴールライン外に出す。そのあとのCKは、ニアの平繁がバックヘッドで流すも枠の外。

押せ押せの熊本。「サイドを大きく使って」という清川監督の指示を受けて、さらにワンタッチプレーを交えて讃岐ゴールを脅かす。

ただ、しかしゴールが割れない。この好機を逸していると”流れ”が変わらないかなぁ。などと心配していた時間帯でした。

34分。アタッキングサードで左右幅を使って讃岐を揺さぶっていた熊本。讃岐の馬場にボールを奪われるも、それを猛烈なプレッシングで奪い返したのは清武。高い位置とはいえどもまだゴールまでは35メートルの距離。しかし、「アップのときからいいシュート感触だった」という清武は、その距離から思いっきり右足を振りぬいた。ボールは無回転で飛び出すと、ゴールマウスの直前で落ちるように伸びて、名手清水の指先をかすめ、ゴールネットに突き刺さります。

スタジアムももちろん、テレビで観ていた人も含めて誰もがまず感嘆のため息をもらすようなスーパーゴール。そしてその後に歓喜の雄叫びが待っていました。

その後も讃岐ゴールを脅かし続ける熊本。追加点は42分でした。最終ラインから送られたフィードに右サイドで清武がエブソンに競り勝ってゴールラインぎりぎりからマイナスの折り返し。しかしエリア内ニアの平繁には合わず。拾った讃岐SB韓が、岡本のチェックに慌てたのか左足アウトで逃げるようにクリアするがいかにも小さい。それは詰めて来ていた嶋田へのちょうどいいプレゼントパスになって。これは嶋田も利き足ではない右足で、落ち着いて押し込む。実にいい時間帯で追加点を取りました。

ただ、前半アディッショナルタイムに高い位置で仲間に奪われ、シュートまで持っていかれたように、讃岐にチャンスがなかったわけではない。2-0は一番危ないスコアと言われるように、次の1点がどちらに転ぶかによって、戦況はわからないもの。清川監督はハーフタイム、「後半の入りもすごく大事!」と選手たちを送り出します。

それを受けて後半開始早々も熊本の攻勢が続く。讃岐のCKからのカウンター。清武が持ち上がってからのスルーパスはわずかに平繁がオフサイド。続く清武のFKは、またも無回転のブレ球ながら、GK清水が横っ飛びで防ぐ。今度は右サイドを崩すと、岡本が得意の低く速いクロス。讃岐のDFがあわやオウンゴールかと思われるがクリアする。

「下がり過ぎるな」という指揮官の指示もありましたが、攻撃が最大の防御とばかりに、追加点を狙いにいく熊本の姿勢が見えました。

ただ、60分を過ぎた頃でしょうか。讃岐がギアを上げて、球際を厳しくしてきたのでしょうか。熊本のファールが増えて讃岐のFKが多くなる。同時に徐々にアタッキングサードを脅かされ始めると、指揮官はきっぱりと嶋田に代えて薗田、平繁に代えて巻と2枚替え。3-4-2-1(あるいは5-4-1)のシフトに変更します。このあたりの見切りはいつもどおり。

前節のワントップはアンデルソン。うまく凌げなかったのは、書いたとおり。そして残り時間15分に強いのが讃岐でした。讃岐のカウンター。熊本のDFラインはスクランブルのように下がるのみ。しかし木島のシュートは枠を反れてくれて胸をなでおろす。

熊本は清武に代えて上村を2列目左サイドに入れる。「練習でもしたことがないポジションでびっくりした」(熊日)と言う上村。「(守備で)いつ行けばいいか分からず、迷っていたせいでプレシャーに行くのが遅れてしまった」と反省の弁ですが、今の熊本、このベンチメンバーで、前線からのディフェンスを維持するためには、この選択しかなかったのは頷けます。

「下がり過ぎるな!」と叫ぶベンチ。巻は前線で競ると潰されてファールを貰う。役割を分かっている。アディショナルタイムは3分。敵陣でなるだけボールを進め、前線で巻と上村がプレスしてパスミスを誘う。讃岐の仲間からのアーリークロスに藤井のヘッドはドンピシャでしたが、枠の左に反れ、その瞬間熊本の完封勝利の笛が吹かれました。

清武のスーパーゴールがあるまでは、前節と同じような展開だと感じていました。追加点を得てからも、後半押し込まれることを心配していましたね。

セオリーならば、後半守りに入り、讃岐に前に出てこさせて奪ってカウンターで更に追加点を狙うということなのですが、指揮官は真っ当に攻めて追加点を狙うことを選びました。

まあ、それは成りませんでしたが、逃げ切りにはうまく成功しました。守備陣は最後まで慌てる様子がなく、自信を持ったプレーぶりだったのはもちろんですが、やはりGK佐藤の、ファインセーブ3本! それとそのポジショニングの巧みさが光りました。いよいよ頼もしい守護神だということが実証されたゲームでした。

さぁ、熊本は勝ち点を積み上げて20。順位は暫定ながら15位になりました。

それにしてもこの鳥栖のホーム、ベアスタでの不敗神話が続いています。というよりも、復帰後の初勝利も、そして2勝目であり完封勝利もこの鳥栖スタジアム。「このスタジアムでは負けない」。そんな験のいいスタジアムを貸していただいたということ。

更に言えば(前日は鳥栖戦だったにも係わらず)スタジアム運営をしていただき、スポンサー・サイゲームスとクラブには破格の招待企画をして頂いた。熊本の応援もしていていただき、勝利後の儀式「カモン!ロッソ」の真っ赤なゴール裏には、気付けばところどころにサガンブルーのユニの姿もありました。それもありがたく。

そして、最後に鳥栖のサポーターから掲げられた横断幕の言葉はいきなりで、もう泣くまいと誓っていたこの年寄りの涙腺をまた崩壊させます。

「友よ、次は約束の地で逢おう」。

それはお互いだけに通じる、シンプルなメッセージでした。そう、次にこのスタジアムに来るときは、カテゴリーがJ1でなければいけない。それが約束なのです。

サガン鳥栖の皆さんありがとうございます。あのあなた方をJ1へ送った試合だけでなく、この震災を経験して、”友”のありがたみが痛いほどわかったのが、特に鳥栖の皆さんでした。このご恩は熊本のファンたちが次の世代に語り継いでいくでしょう。

そして、熊本は夢にまで見た“ホーム”に7月から帰ります。厳しい日程が待っていますが、だれもそんなことを言い訳にはしないでしょう。

【J2第37節】(ピカスタ)
讃岐 0-2(前半0-1)熊本
<得点者>
[熊]岡本賢明(11分)、清武功暉(90分+1)
<警告>
[熊]岡本賢明(16分)、清武功暉(89分)
観衆:2,380人
主審:野田祐樹
副審:大西保、西村幹也


幸先のよい岡本の得点。そして4試合連続となる清武のダメ押し点(PK)により3連勝。順位も9位に上がりました。それにしても、こういう勝ち方、勝ち点を拾うようなゲーム運びができるようになった。シーズン前半であれば、こんなゲームで足をすくわれていたかもと思われた向きも少なくなかったのではないでしょうか。

この試合、心配されたのは中3日という過密日程による選手たちの疲労でした。ミッドウィークに行われた天皇杯・広島戦。古巣との対戦となる小野監督は、ターンオーバーなど頭の片隅にもなく、この試合もその時点でのベストのメンバーを送り出した。残念ながら力及びませんでしたが、いつものようにハードワークした選手たちの疲労は相当のものがあったと思います。

指揮官の頭の中には、これまでも幾度かあったリーグ戦での過密日程3連戦となんら変わらないチームマネジメントのイメージがあったのでしょう。現在、FC今治を率いる岡田元日本代表監督の協力もあったのかも知れません。広島から直接愛媛県今治市に入り「ショートキャンプを行なえたことが一つ大きかった」(公式HP・小野監督コメント)。そして「疲労を含めて、何人かの選手をローテション」して、この大事な讃岐戦に臨みました。今はベンチメンバーを含めて誰が試合に出ても一貫した力が発揮できる。誰が出ても同じ戦いができるほど選手の層が厚くなってきている。

20151018讃岐

「セカンドボールの争いの部分で手薄にならないように中を厚く」(小野監督)したという意図の4ー3ー3の布陣。序盤から熊本が讃岐のゴールを脅かす。先制点は11分の右CKからでした。いつもようにクイックにリスタートした養父に対して、「ショートコーナーに間に合わなかったので、セカンドボールを拾おうと思って」(公式HP)というファーサイドの岡本の足元にちょうど転がり込んだ。右足を一閃したシュートは、クリアしようとしたエブソンの頭をかすめると、そのままゴールに突き刺さりました。堅守で知られた讃岐のゴールを早い時間でこじ開けたのは実に大きい。

その後も熊本のポゼッションが続く。時折の讃岐のカウンターは、DFのところでしっかり潰す。あるいは木島、我那覇の両FWをオフサイドに仕留めます。

讃岐はサイドからの長いボールを多用し始める。それに対して後半、熊本は平繁に代えて清武、岡本に代えて中山とカードを切っていき、それに応じてシステムも変化させます。

「後半は引くような形になってしまった」(公式HP)と言うCBの鈴木。やはり後半30分頃のきつい時間帯は、チーム全体の運動量が落ちてきた。最後の巻とハンジンの交代は、ハッキリとした逃げ切りの意思表示。このまま逃げ切れるかとハラハラして観ていたのですが、終了間際になんとなんと…。

熊本の左CK。上原からシュートコーナーで清武が持つと、エンドラインぎりぎりでDFと勝負。これを交わしてエリアに突進すると、讃岐のDFもたまらない。清武をひっかけてPK。これを清武自身がきっちりとゴールに沈めました。

プレースキックが蹴れて、ロングスローが投げれて、パスやドリブルだけでなくシュート力もあり。大宮戦のスカパー実況で、解説の松岡康暢氏が付けた「サイボーグ」というあだ名も大いに頷けるところです。日本代表の兄・弘嗣も逸材ですが、弟には体の強さ、そして相手をのんでかかるような気持ちの強さがあるように思います。

さて、その大宮戦のわれわれのエントリーに対して、spirits of roassoさんから拍手コメントでいただいた言葉。「リーグ戦6試合後に振り返ったとき、この試合でさえ発展途上と思えることを期待したい」というコメントは、首位大宮に完勝して諸手を上げて大喜びし、はしゃいでいたわれわれを大いに諌めてくれました。

6位までの勝ち点差は4に迫った。残り5試合。次は磐田、セレッソ、水戸、徳島、岡山といずれも難敵との戦いが続きます。金沢戦のとき「最後は鼻差の勝負」と表現したように、どの戦いも負けられない。

しかしspirits of roassoさんが言うとおり、わがチームは“発展途上”のチャレンジャー。難敵相手にどんな戦いを挑んでいくのか、それが今ものすごく楽しみです。

熊本が過去最高順位7位で終わった高木監督初年度2010年には、まだこのJ1昇格プレーオフ制度がありませんでしたから、こういう気持ちでリーグ終盤を迎えるのは初めてですね。

事が成るときというのは、得てしてあれよあれよと言う間に運ぶときともいいます。一事は最下位に沈んだ熊本。しかも最終盤は上位、強豪との対戦が続く。そんななかで、あわよくば鼻差で…。

現時点で13勝13敗11分、得失点差0。最後の5試合を前にして数字の上ではもう一度スタートラインに戻ったともいえる。内容的には2015年シーズンの成長も見届けられそうな状況ですが、もしかしたら、本当にもしかしたら、その先にプレーオフ出場が叶えばいうことなしです。