2015.10.12 大宮に完勝。
【J2第36節】(水前寺)
熊本 3-0(前半1-0)大宮
<得点者>
[熊]清武功暉2(22分、47分)、養父雄仁(62分)
<警告>
[熊]上原拓郎(25分)
[大]横山知伸(27分)、泉澤仁(50分)
観衆:4,002人
主審:飯田淳平
副審:和角敏之、鈴木規志


20151010大宮

いやぁ、これは”金星”と言ってはいけませんか?

同じカテゴリーとはいえJ1からの降格組、さらに言えばダントツで首位を突き進む大宮。かつての広島、柏…そんな偉大なチームが思い出されます。その大宮に対して、3得点完封で勝利。逆転サヨナラみたいな劇的な勝利でもなんでもない。完勝。これはただの白星とはちょっと重みが違うような気がするのですが。

しかも、「臆することなく強気で戦おう」(J-PARK)と指揮官が送りだしたように、これまで培ってきた”自分たちのスタイル”を貫いての勝利。あの大宮が、成すすべもなく膝をついた。そんな試合でした。

もちろんヒーローは2得点の清武。そしてまたまた相手の隙を突きCKをヘッドで追加点とした養父なんでしょうが。それをアシストした中山、久々の先発で燃えていたそうですが、彼の守備もかなり効いていました。しかし、なんと言ってもここのところ成長著しい上村。上原とともに相手ボランチを無力化したのが大きかった。いやいや、「チーム全員がハードワークして、つないでくれた結果」(11日付・熊日)と清武が言うように、全員の名前を挙げていちいちそれぞれの活躍を褒めちぎりたいくらいです。

同日開幕したNBL。熊本ヴォルターズは初戦を勝利では飾れませんでしたが、元バスケ部の友人とたまに観にいったりします。そのとき友人に色々と解説してもらうなかで知った「オールコートプレス」と言うバスケットの戦術を聞いて、ああ小野監督のやりたいことはそれなんだ、と思いました。調べてみると、既にサッカーでも応用されている戦術なのですね。マルセイユのこんな記事を読むと、通じるところを感じます。(昨年のものですが)

そのオールコートプレスよろしく、とにかく今日は選手たちがよく走った。2人、3人と中盤で挟み込むと、相手は奪われるか、あるいは下げざるを得ない。もちろん、これだけ数的優位を作るということは、小野監督が「砂をまぶして隠す」と自著で書いたように、「奪いに行けば行くほど、今度は逆サイドのポジションにリスクがありますが、逆サイドの選手までが連動してくれたので、それほど危ない場面を作らせずに済んだ」(九州J-PARK)。

22分、養父が右アウトにかけて縦にスルーパス。そこに齊藤が斜めに入って、右サイド奥からのグラウンダーのクロス。マイナスに入り過ぎて合わないなと思いましたが、中の清武が拾うようにバックすると、丁度DFを交わす形になった。無理な体勢でしたが清武が体をねじって右足一閃。これがゴールの右上隅に決まります。清武は3試合連続ゴール。

まず、王者・大宮から先制点を奪ったことで、われわれは飛び上がって喜んだ!

その後も養父が上村とパス交換から、上村が養父のスペースを埋めると、養父は中に入って前に上がり、左の黒木にパス。黒木のクロス。次々に追い越していくような流動性。

大宮は全く攻撃が作れない。35分頃のカルリーニョスのミドルも苦し紛れ。これが大宮のこの試合のファーストシュート。左サイド突破を防いだ中山を蹴ってしまい注意を受ける泉澤。焦りが見えます。

危なかったのは前半アディッショナルタイム。終了間際に一瞬、エアポケットのような緩んだ時間ができてしまった。ムルジャの至近距離からのシュートをダニエルがクリア。拾われて右からグラウンダーで入れなおされ、そこに家長が入る。その前で上原が間一髪クリアします。

前半のうちに同点にしておきたかった大宮。後半開始早々から、上村にいいように潰されていた金澤を諦め、大屋に交代。大宮の修正力に対して、後半15分はしっかり凌いで、そこからがまた勝負の時間帯になるなどと、われわれなりの予想を立てていたのですが、いきなり”いい意味で”裏切られます。

中山に上村が加わって右サイドを養父に破らせると、養父は右サイドマイナスに中山にパス。今度は中山、中央で構える清武に”気持ちのこもった”ロブを送る。

中央でDFを背にした清武。トラップ一発足元に置くと、再び右足を一閃。ゴールに叩き込みました。この日2点目。「清武オーレ!清武オーレ!」。チャントとともにマフラーが振られる赤一色の水前寺。

54分には、齊藤から大きなサイドチェンジ。それを左の清武がダイレクトで折り返すと、ボックス内には平繁。ダイレクトシュートで狙いますが、これは左のポストに嫌われた。ため息のスタジアム。頭を抱えてもんどりうつ平繁。今日の攻守に渡る平繁の存在感を感じて、スタンドの誰しもが、今日こそ平繁に点を取らせたいと願う。

62分、右CK中山。養父がニアに走りこんでDFより早くヘッドでゴールに押し込む。大きな価値ある3点目。前節と同じように、相手の隙をつく養父の動きはもはや”ステルス”と呼ぶに相応しい。

3点差は普通だったら安全圏ですが、しかし、相手は大宮。そして時間は後半25分を過ぎると、さすがに熊本もきつくなってくる。大宮のポゼッションとなってきました。

熊本は平繁を下げて藏川でバランスを取る。ベンチに下がる平繁に対してスタンドから大きな拍手。点こそ取れなかったが、今日の平繁の前線での献身的な働きは誰もが認めていました。

大宮がバイタルを脅かす。左CKから作るとカルリーニョスの左45度からのシュートはサイドネット。

熊本はカウンター。ハンジンがくさびのパスをカットすると、清武が繋いでそのままハンジンが持ち上がってシュートは、GKに収まりますが、万雷の拍手。

熊本は清武に代えて岡本。大宮はついにカルリーニョスを諦めて播戸を投入します。

大宮が短いパス回しでバイタルを襲う。家長を押さえ込めない。「絶対させるな!」。セットプレーの度、仲間を鼓舞するダニエルの声が枯れているのがわかります。

上村が足を攣ったのはこの日の働きならしょうがない。高柳との交代で中盤を締める。

終了間際、大宮の左CKから。家長から柔らかいボール。右からクロスを折り返してヘディングはバーに嫌われる。アディッショナルタイム4分。右サイドからのクロスにムルジャがシュートも、枠の左。そして主審が腕時計を見て、早く終われ、終われと祈るわれわれ。ダニエルが大きくキックを送ると、終了の笛が吹かれ、その瞬間、水前寺のスタンドの誰しもが叫び、ガッツポーズし、知らない同士でハイタッチし合い、喜びを分かち合いました。

首位・大宮に勝った!

「我々のボランチのところで潰されていたのが非常に大きかった」「ボランチ2人が交代するという、あってはならない状況があったということは、我々のリズムでできなかったということ」。敵将・渋谷監督は、そう反省します。逆にそこから、熊本・小野監督の狙いがはっきりと見えてくる。そのキーマンを演じたのは間違いなく上村でした。

もうひとつ。後半30分頃のキツイ時間帯。それを支えたのは小野監督が言うように「スタンドからサポーターが力を与えてくれて」ということもあったのは間違いありません。止まりそうな選手の足を動かしました。

「やっぱりボールへの厳しさとか、ボールを引き出すとか、フットボールをするというか、そういうものをしっかりやらないと勝ちは絶対にたぐり寄せられないので、もう1度そういう原点のところをやっていきたいと思います」と言うのは、この試合後の大宮・渋谷監督のコメント。J1昇格に向けて足踏みさせられました。「ただ、熊本さんの勝利に値する動きというか、出足の部分は私たちも見習わなきゃいけない」と言う。

今、振り返って思えば、大宮との前回対戦では、前半45分こそ”自分たちのサッカー”で押し込んだが、後半に修正されて苦杯を飲んだ。われわれは、「気後れはありませんでしたが、しかし、さすがに一日の長がむこうにありました。」と刻みました。ところが、そのときのスカパー解説者の山口素弘氏は、「熊本の向かっている方向性は間違っていない」と言い切っています。

このリーグ戦終盤に差し掛かって、決して順調とは言えない足取りながらも、ブレることなく積み上げてきた成長を鮮やかな形で見せてくれた。この完璧なゲームを支えたのは、やはりチーム全員が走りぬいたこと。先のマルセイユの記事にもこうあります。

「この戦術は相当な体力を擁するが、鬼監督ビエルサはそれをあえて選手達に強いて、結果をつかませる。結果を手にした選手達は、自分たちのプレーが間違っていないことに確信を得て、自信とモチベーションを持ってこの戦略に挑むのだ」。

今季のベストゲームのひとつ。いやいや、この対戦相手にして、この戦術、攻守にわたる90分間のパフォーマンス。完勝。われわれはチーム発足以来のベストゲームと言ってみたい気分です。

【J2第6節】(NACK)
大宮 2-0(前半0-0)熊本
<得点者>
[大]ムルジャ(51分)、横山知伸(73分)
<警告>
[大]菊地光将(17分)、金澤慎(23分)
観衆:5,428人
主審:三上正一郎
副審:桜井大介、藤沢達也


「前半にしっかり決めることができれば、逆の結果になっていたと思う」という小野監督のインタビューは、決して負け惜しみではなく、決定機に決め切れなかったことのツケ、そして90分という時間のなかでの展開(流れ)の変化をまざまざと感じさせられた一戦でした。

J1からの降格組・大宮との初対戦。もちろん引退した藤本主税の古巣でもありますが、九州J-PARKの戦前のプレビューでは井芹さんが、「遡ればお互いにNTTのチームを母体に生まれた経緯があり、熊本の前身であるNTT西日本熊本FCに金川幸司というFWの選手が期限付き移籍で在籍したこともある」と、往年のファンにはとても懐かしい名前を挙げていました。

われわれが「青の時代」と呼んでいる、熊本のトップチームがNTT西日本熊本だった頃。同じNTTチームを母体にして、NTT東日本をバックに大宮があるのだったら、西日本は熊本を押し上げてくれるのではないかと夢見ていた頃もありました(事実、あの頃の胸スポンサーはNTT DoCoMo九州でした)。

しかし、同じNTT系列で二つもJクラブはいらないという方針のもと、企業チームの強豪NTT西日本熊本はクラブチーム・アルエット熊本に姿を代え、紆余曲折を経て、なんとか熊本にJクラブを生むことができたのですが…。いささか古い話しですが、2001年12月、三ツ沢での天皇杯横浜FC戦。完全アウェイのなかで10人あまりのわれわれのゴール裏に、NTT繋がりということで大宮サポーターの援軍が駆けつけてくれ、共に戦ったことは今でも忘れられません。

…まぁ、色々なことがありました。そんなことも思い出させる大宮とのアウェイでの初対戦でした。

20150405大宮

熊本には、ようやくキャプテン・園田の傷が癒えて先発に帰ってきました。

指揮官が言うように、前半は完全に熊本が主導権を握っていたと言っていいでしょう。それは、相手を必要以上にリスペクトするのではなく…。受け身(リアクション)ではなく、自分たちでアクションを起こす積極的な戦い。逆に言えば、解説の山口氏から「前半は寝ていた」とまで表現された大宮。実に緩いアプローチ。ほぼ自由にプレーさせてくれていました。

14分に、ハーフウェイライン付近で相手ボールを奪うと、齊藤が持ち上がって左から追走して追い抜いた平繁にパス。平繁がPA内で切り替えして右足シュート。決まったと思ったものの、これをGK加藤が鋭い反応でセーブ。20分にも、中盤でのワンタッチパス交換から齊藤がタメて平繁の上がりを待ってパス。平繁のシュートは今度はGKの脇を抜けましたが、後ろに構えたDFの残り足に当たってクリアされる。不運…。

「熊本は点を取っておきたい時間帯。ニューイヤーズカップでも、決定機を逃し続けて敗れました」と、スカパーの実況にも指摘される。

44分には、右からの齊藤のクロスに平繁がファーに走る。これは目前で敵DFがクリアしたものの、それをPA内で拾った中山がすかさずシュート。しかし、これもGK加藤にブロックされてしまいます。完全に当たってきた加藤。

解説の山口素弘・元横浜FC監督も指摘するように、大宮はアンカーの高柳をフリーにしてくれていました。もう一点は上村が大宮ボランチの金澤とのマッチアップで優位に立てていたこと。

しかしハーフタイムを挟んでの修正、後半開始から金澤に代えて横山に代えてきたことが状況を一変させます。

横山がしっかり守備を築くことで、前に顔を出すことができるようになったカルリーニョス。開始早々からの大宮の波状攻撃。なんだかバタバタした感じのなかで、51分の大宮、左前線に送ったボール。ムルジャが園田と競って勝つと、PA左から強烈に打ち込む。GK原の伸ばした手をかすめてゴールに突き刺さります。

大宮もこれでやっと落ち着いた様子。完全に主導権を奪い、格上の”威厳”を示します。熊本は前半が嘘であったかのように防戦一方。

金澤との優位に立っていた上村も、「ハーフタイムに替わるというのを聞いて、ちょっと狙うポイントをどこにするかというのをチーム全体でまた考え直すという感じだったので、その中でもうちょっと早くそこのポイントを掴めれば良かったですけど、そこが入りはあまり掴めず、結局最後まであまり掴めずに終わったという印象はあります」と言う(Jリーグブログ | J SPORTS)。

残念だったのは、ここから養父、常盤、巻と投入したにも関わらず状況が打開しなかったことそれより、73分、左CKから横山にヘッドで決められた追加点。ゾーンの隙を破られる。原が前に出たのに触れていない。前節に続く、いや前々節から続く同じような失点。過密日程の3連戦のなかで全く同じようなシーン。研究されているのか。このセットプレーからの失点の意味はとても重いと思われます。

それでも…。なんとかポジティブな点を見つけようと思うなら。決めきれなかったにしても、前半の決定機のシーン。選手同士の距離感が近く、綺麗なワンタッチパスで完全に崩し切っているということ。連携が徐々に高まってきているということ。単純化して言えば、連携と言うのは、ワンタッチパスが狙える距離感をいかに組み立てられるかということ。

先制点の責任を一身に背負い、主将・園田にとっては辛い復帰戦になりましたが、やはりDFラインの安定感は高まった。

一時期はNTT系の先輩格と慕っていた大宮との初対戦。気後れはありませんでしたが、しかし、さすがに一日の長がむこうにありました。「熊本の向かっている方向性は間違っていない」。そう断言してくれた山口素弘の言葉が、今節の救いになりました。熊本の歴史は、まだまだこれから。下は向きませんよ。