皆さんご無事でしょうか?

5年前の3月。東北大震災の際のエントリーで、「“未曾有”などという3文字で表現することすらもはや憚られます。11日からこのかた、報道で目にする被災の状況を目の当たりにして、何を綴ればいいのか戸惑っていました。ただただ、われわれは運がよかっただけではないのか、そしてわれわれに出来うることの何と小さいことかと…。」と綴っていました。そこには、今にして思えば、同じ日本といえどまだ少し遠い世界の感覚だったことが漂います。”報道で目にする”という表現がそれを明らかにします。

けれど今、被災地はテレビ画面を通さずとも目の前にあり、われわれがまさしく被災者そのものでした。

われわれのなかのひとりの住まいは益城町にありますが、自宅別棟が全壊、周囲の家々も軒並み壊滅状態。お隣では亡くなった方も。なんとか自宅で踏ん張っていますが、このストレスはなかなかのものです。

16日の”本震”の夜から今日まで休みなしで、余震を気にしながら、家のこともしながら余裕もなく動き、そして働いて・・・。キーボードに向かう余裕も気力もなかったのが現実ですが、ようやく今日、PCに向き合っています。ライフラインに携わる人々の不断の努力のおかげで水や電気が早期に復旧し、quality of lifeが明らかに現状復帰してきたことも大きな要因です。感謝の言葉もありません。

この間、まず直近のアウェー京都戦は中止され、そして先週末のホーム・横浜FC戦も延期が決定されたのは、当然の措置でした。

そして20日、クラブはJリーグの原博実副理事長の現地視察を受け、さらに監督・選手らを交えたミーティングの結果を踏まえて、今後の方針を発表しました。その内容は、続く4月29日の山形戦、5月3日の愛媛戦、7日の札幌戦まで追加3試合の延期であり、リーグ戦復帰は5月15日の第13節・アウェー千葉戦から、とするものでした。

そしてその間、リーグからは一時的に県外に拠点を移すことも提案され、具体的に候補として手を挙げてくれたところもあったようですが、「選手だけの話し合いで、『熊本に残って参戦を続けたい』と決め」(22日付・熊日)、それをクラブも、リーグ(原副理事長)も尊重する形で決定したのだという。

発表の記者会見は感動的なものになりました。熊本の”象徴”とも言える巻は、感極まり涙を流しながら「熊本に勇気を与えたいし、逆に勇気づけられることもある。互いに励ましあって、今まで以上の熊本をみんなの力でつくっていきたい」(熊日)と言いました。そうまとめたものの、おそらく直前の選手だけのミーティングでは、色々な意見が出たのではないでしょうか。家族持ちの選手ならなおさら、生活安全上の不安があって当然の状況ですから。そういった選手たちの色々な意見を、40分もかけて、このようなひとつの方向に導いた想いの辛さも、巻選手にのしかかっての涙だったのではないかと推測するのです。

震災後すかさず、個人的に開設しているフットサル施設を開放して、避難所の子供たちとサッカーで戯れ、子供たちに起こりがちな避難所ストレスの解消に務めました。個人的なネットワークを駆使して、被災地への支援を求めるサイトを直ちに立ち上げた。支援物品を集め、それを仲間たちと仕分けする姿は精力的でした。今まさにこの状況下において、心から愛する熊本を”今まで以上”にしようとする姿は、熊本というチーム(あるいはクラブと言ってもいいかも)の”中心的存在””象徴的存在”のように思います。

もちろん巻だけではない。清武は実家のある大分に帰らず熊本に残り、同じくサッカー教室やボランティア活動に従事してくれている。被害の酷い益城町出身の上村や森川は、地元のボランティアを買って出ている。広島に一時避難した佐藤は、この決定を聞いて、幼い子供を抱えた妻を残して、熊本に飛び立った。

Jリーグの仲間たちもすぐに動き始めてくれています。各クラブ、各ゲームでの支援募金集め。そのなかでも、県出身選手たちの思いは大きい。それから、過去熊本に在籍した選手たちの活動協力も・・・。

そして一番ありがたく、そして温かく励みになるのは、J1、J2、あるいはJ3、いやその他のカテゴリー問わず、戦い、敵対し、あるときは罵倒しあうに違いないのに、”いざ”というときは支えあう。このサッカーという競技を愛し、通じ合う各クラブのサポーターたちから今、「熊本がんばれよ」と応援される。涙がでるほど嬉しい。これもサッカーだなと。

まだまだ余震の続く熊本。アウェー戦からとはいえ、5月15日の再始動にもなんの確証もない。支援物補給基地になっている「うまスタ」が、その時期に作業が終息し、ホームスタジアムとして使えるかどうかは、極めて怪しいとも思っています。しかし、どこかに目標を持たなくてはいけない。誰かが言いました。「最善を想像して、最悪に備えろ」と。

そういう意味で、ひとつの指針が出されたのだと思っています。われわれは、その再開(再会)のときに、スタジアムで久しぶりに逢う仲間たちに、「元気だったか?無事でよかったね」と言えるように、一人ひとりそれぞれの復旧に励んでいきましょうか。巻選手が言う”今まで以上の熊本”を互いの目標にしながら・・・。

そしてそして、くれぐれも余震にご注意ください。油断は禁物です。

2016.01.17 新体制
長い正月休みをいただきました。もはや明けましておめでとうございますが似合わない時期ですね。どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

さてクラブでは新体制が発表され、今季のチームが17日からスタートしました。

新体制のキーワードは「3S(スリーエス)」。噂にあったとおり財前ユース監督をトップチームのヘッドコーチに。もう1人、アビスパから2010年シーズンまでは選手として対したこともある久藤清一氏を新たにコーチングスタッフに。久藤氏と清川新監督とはS級ライセンス講習の同期。

要は、協会が認定する最高位の資格S級を持った指導者3人でチーム作りをしていくという意味の「3S」。「今までは監督が全権を持ち、周りがついていく形だった。今季は3人の意見を戦わせながら、J1プレーオフを勝ち取る」(14日付・熊日)と言うのは池谷社長。

ヘッドコーチに(Jチームを率いたこともある)S級保持者を据えるのは、近場でも昨年からの長崎の高木監督・安達HC体制、今季からの北九州、柱谷・美濃部体制のように、昨今ブームのようで。一見贅沢にも思えるのですが、リスクマネジメントの意味もあるのかも知れない。「クラブ側は、トップチームの監督経験がない清川氏のサポートを強化した形だ」と熊日は報じます。

一方、財前さんの異動人事で空席になったユース監督の後釜には、千葉のU18を指導していた菅澤大我氏を招聘。この人、われわれは詳しくなかったのですが、ヴェルディをかわきりに名古屋、京都、そして千葉と、長いこと育成畑を歩いてきたその筋では有名な人だと。”プロビンチャーレ”なわがクラブにとって、育成は最重要課題。手腕が大いに期待されます。

開幕戦は来月2月28日。ホームうまスタでJ1降格組の難敵、松本山雅を迎え撃つ。さっそくシュミット・ダニエルとの対戦とは皮肉な巡り合わせですが、スカウティングに定評のある知将・反町監督に、まだデータの乏しい開幕戦で戦えるのは、ある意味ラッキーかも知れません。そういう意味でも、今月31日からスタートするニューイヤーカップは、色々な選手、戦術を試すテストの場ととらえ、われわれファンも一喜一憂せず見守りたいものです。

今年もぼちぼちと更新してまいります。どうぞよろしくお願いします。


清川ヘッドコーチの内部昇格が決定的だとKKTが報道したのは12月の14日。熊日の1面に同じような内容が載ったのは17日でしたが、しかし、なかなか公式サイトでは発表されない。一体全体どうなっているのか?と思っていましたが、ようやく28日になって発表されました。

清川浩行・新監督。48歳。北海道出身。選手としては日立製作所でFWとしてプレーし、引退後は柏の下部組織を指導。2010年に熊本のヘッドコーチに就任して、高木、吉田、小野監督の下、6季努めてきた。今年S級コーチ資格を取得し、今回内部昇格という形で熊本の来季の監督に就任しました。

前任の小野監督が”J1昇格プレーオフ進出を逃した責任を取る”として退任を表明。クラブ側の続投要請を蹴っての退任表明は、前々回のエントリーで書いたとおり、クラブの”現状認識の甘さ”を如実に表してしまうのですが。

さて、ここからは当事者ではないわれわれの憶測を交えた考察ですので、その分を差し引いてお付き合いください。

結果として小野さんに断られたけれども小野イズムを評価しているクラブが、後任選びで重要視せざるを得なかったのは「今の(小野)スタイルの継承」というコンセプトでした。もちろんわれわれファンにも異論のないところです。しかし、意外にもその当たり前そうな”条件”は、後任人事において、非常にハードルを高くしてしまいました。

クラブ(池谷社長)は、外部からの招へいを含めて3人程度の候補者があると当初コメントしていましたが、しかし、まがりなりにも国内の最高資格S級を保持している指導者(それもJチーム監督経験者)が、小野さんに限らず”誰か”のスタイルの継承をそうそう受け入れることがあるのだろうかと、われわれは疑問に思っていました。

もちろん小野イズムは、現代サッカーの標準であり、どの監督候補にしても”共通項”である部分は大きいのですが、しかしそれを露骨に”継承”と言われると、それはちょっと自身のサッカーを否定あるいは封じてしまうことにもなりかねないわけで。

そんな”条件”で引き受ける指導者は、外からだと小野さんの薫陶を受けた後輩か、あるいは内部であればヘッドコーチとして仕えた清川さんしかなかったのではないかと思います。

こう書くと、消去法のようで、われわれが清川・新監督就任を非常にネガティブにとらえているように見えますが、それはそれでまた違います。

もちろん、監督の手腕としては”未知数”です。そして、それは”1年生監督”には誰にとっても同様のこと。しかし、清川さんにとって、他の候補者とは違って大きなアドバンテージがある。この2年、小野監督の下、仕えてきた経験はもちろん、都合6年、熊本の地において、このチーム、この選手たちを見てきた経験は大きい。何より、この清川氏、ここまで影の、縁の下の存在として力を尽くしてきたわけで、監督としての大きなチャンスをこのチームで彼に与えることは何の異議もありません。その手腕に大いに期待したいところです。

そのほか、このストーブリーグの選手の往来では、出ていく選手ばかりが先行し、われわれを慌てさせましたが、ここにきてようやく新入団や契約更新情報も流れてきて、来季の陣容も少しづつ見えてきましたね。

いなくなる選手では、今年のチーム得点王FW斉藤がJ1に昇格した磐田に完全移籍。ルーキー田中はFC岐阜にレンタル。最大の助っ人・シュミットダニエルのレンタル満了からの松本へのレンタル移籍。レンタルだった仲間が讃岐へ完全移籍。更には養父が長崎へ完全移籍。そしてDFの主軸だったクォン・ハンジンが、Kリーグ済州ユナイテッドFCに移籍と…。

なかば想像にできたような(致し方ない、覚悟していた)ものもありますが、ちょっと意外な人事もあり・・・。

元々われわれは、個々の選手に”想いを寄せる”スタイルではないのですが、好みのタイプの選手は確かにいて。今回の養父の移籍に関しては、本人の意向は十分に推測できるにせよ、近県のライバルチームへの移籍であり、ちょっとショックは大きいものでした。そして他にも、同じカテゴリーで元チームメイトと合い間見えることになりそう。複雑な心境です。

さてしかしながら、入ってくる選手に目を転じれば、阪南大から加入する八久保はスピードのあるドリブラーだという。J3・福島から移籍の齋藤は、潜在力を秘めた万能型FW。YouTubeで見た今シーズンのシュートシーンはわれわれを唸らせました。また、札幌からCBの薗田、鹿島からGK佐藤を補強し、即戦力としても岡山から高さのあるDF植田、愛媛からMF村上を獲得しました。

そしてなにより嬉しかったのは、清武選手のレンタル延長。鳥栖帰還を前提に予想していただけに、われわれにとっては”最大の補強”と言えました(笑)。

新監督との交渉もあり、なんだか出遅れ感もあったわが熊本の”人事”ですが、これで「継続」がコンセプトの新チームづくりも見えてきますね。来年はどんなシーズンになるのか。今季以上の苦難も覚悟が必要かもしれませんが、とりあえず1月末からはスタートする2年目となるニューイヤーズカップが楽しみです。

さてさて、監督発表が暮れも押し詰まった時期までずれ込んだこともあり、今年はこのエントリーを最後にしたいと思います。今年も1年、このような拙いブログにお付き合いいただきありがとうございました。なにぶんわれわれも寄る年波を感じることも多く、いつまで続くやらといったところですが、来年もできる限りの更新に努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

どうか皆さん、よいお年を。

先日の最終戦のエントリーに対して、すぐに以下のようなコメントをいただきました。

「小野監督の退任は本当に残念です。試合後”全ての責任は私にある”と決して選手の所為にしない発言は、決して常套句ではなく、それだけの気構え・姿勢で一戦一戦の準備をされていた指揮官の思いを感じました。”くだんの事件”は容認される行為ではありませんが、それだけの思いが、一部スタッフの練習準備の不備に”度を超えた行為”につながってしまったのでしょう。AC熊本のクラブとしてのガバナンスの未熟さも露呈しましたね。小野監督にとっては当然と思われるスタッフの管理など、J1に上がるクラブとして未だ体をなしていないことを突きつけた形となりました。2年間若手を育てながら、J1でも通用するような戦略を基に築かれた小野監督のサッカーを誰が継承できるのか、AC熊本に更に難題が投げかけられていると思います。小野監督には深く感謝したいです。」(spirits of roassoさん)

突然のニュースでわれわれが言い尽くせなかったところを簡潔に表現していただきました。勝手に文章を持ち出して申し訳ありませんが、ファン目線としてはこれ以上の意を尽くしたものはないと思いましたので。

そして、コメントにもありましたが、“くだんの事件”です。

ネット上では熊日、さらには担当の山本記者への非難が渦巻いているような状況もあったのですが、そこに井芹さんの文章があがり、最も現場に近い第三者の立場で、経緯も含めてほとんど言い尽くされているようにも思われます。

で、今さらの感もありますが、この件についてはわれわれも少々、思うところがあり、ひと言付け加えさせていただきたく書いてみました。

ネガティブなアクシデント、トラブルが起きたときに、その組織の力量なり、真価が問われる。これは何にしてもあてはまることですね。

Jリーグの公式戦で、審判よりも、選手よりも、何より先にピッチに入るのはフェアプレーフラッグです。サッカーというスポーツの姿勢や価値観を端的に表現している光景だなと思っています。その運営会社であるACは夢を売る企業、いや”夢だけ”を売っている組織であるわけで、その立ち居振る舞いは一般企業や行政あたりよりも、さらに注目を集め、“フェア”であることが当然のように求められています。

今回のこの問題についてわれわれは、ACの成熟度の問題であり、チーム広報機能の熟練度の問題ではないかと思っています。あの組織の中に、「これは一刻も早くリリースしないといけないよ」というスタッフが一人も居なかったのか。その一声があがらなかったのか。広報窓口は、記者や報道機関との間合いのなかで、その状況を感じ取れなかったのか。

身内感覚によって事の重さの認識が歪んでしまうことはよくあることです。しかし、報道機関からの問合せを受ける前に、先にリリースしなければ「隠ぺい」と見られてしまう。これはこの情報環境のなかで動いているビジネスパーソンにとって、きわめて当たり前の実態でありルールになっていると思います。逆に言えば、単純ですが、とにかく先に出すこと。報道機関に一斉ファックスするなり、ホームページに上げるなり、記者会見するなり。色々あるけれど、先手さえ打てば8割方メッセージは正しく伝わる。後手に回れば、それを挽回するのには膨大なエネルギーを要する。一度でもこういった経験をすれば(こういった経験をしたことがあるものですから)身に染みてわかることですが、なかなかそういったケースに直面することは多くはありませんけれど。

今回の件は、ファン感情とそのタイミングなどが絡んで議論が複雑になっているように見えますが。小野監督については、普段のわれわれの言説をご覧の方々はお分かりのように、冒頭のコメント同様に、心酔するほどの小野派です。ある意味で国の宝だと。代表チームに取られるのであれば仕方ないなと思っていたくらいです。

言うまでもなく小野監督は智将です。しかしその前に生身の勝負師です。諦めているわけではありませんが、実際のプロスポーツの現場においては、こういったことは一定の確率で起こり得ることではないかと思っています。(もちろん、このカテゴリーのこの立場では許されるものでないことは当然ですが)。何しろピッチの上では日常的に起こっているわけですから。ただ、ピッチ上では、誰の目にも明らかだし、即座にカードが提示され、そのことでお互いに状況を理解し、謝罪し、受け入れることができるわけです。そこにルールや審判という第三者の役割があると思います。

今回、毅然と(というよりも、ごく普通に、当たり前のこととして)カードを提示する役割はクラブ側にあったのではないかと。そこに未熟による躊躇やもしかしたら保身があったために、必要以上に問題を大きくし、プレーヤーである小野監督や被害者であるスタッフに(そしてもちろんファンに対しても)、無用のストレスや迷惑をかけてしまったように感じます。結果として、小野監督を守ることができなかったのではないかとも…。初動の段階でもっとこの事件に対する危機管理の意識があったならと。

ガバナンスとかリスク管理とか色々と言い方はありますが、やはり経験が足りなかったのではないか、と同時に、逆にACも10年を経て組織として経年劣化があるのではないかという気もします。決してACが悪いと言っているのではありません。組織であれば誰もが免れられない制度疲労のようなものであり、乗り越えていかなければならないものですから。

さて、いずれにしても小野監督を送ることになってしまいました。冒頭のコメントの通り、とても“残念”です。今シーズンの結果はここ2~3日の熊日に詳しく総括分析されており、監督への高い評価はこれに代わるものはないと思います。そのなかでも「枝葉をどれだけ整えても、幹を太くしないと本当の強さは身につかない。結果が出ない苦しい時期でも地中に根を張って、ぶれずに乗り越えた」という監督自身のコメントがわれわれの気持ちに一番ピッタリだなと感じました。

未練かもしれませんが、またいつか。もっと上のステージでチームを見ていただければ。まだそんなことを言いたい気分です。とても残念でなりませんが、「お疲れ様でした」という言葉を送ります。

手元のスクラップ帳を読み返してみました。

「J2ロアッソ熊本の運営会社アスリートクラブ(AC)熊本は23日、参戦資格『クラブライセンス』の来季の交付に必要な債務超過解消を目指し、7千万円を増資する2014年期の事業計画を発表した。」(4月24日付 熊日朝刊) 

クラブ創設10年目のこのシーズン。ピッチ上の戦いとは別の、もうひとつの“負けられない戦い”はこのニュースではじまりました。

2011年決算期で計上した7千万円の赤字。今でこそ当時のクラブ経営の実態がわれわれにも少しわかってきましたが…。

「無理な売り上げ予想や月次報告を怠るなど管理体制の不備」
「組織として体をなしていない時期があった」
「体力以上の資金を強化費に使った。運営体制にも問題があった」
「以前は商品の棚卸しもなく、2年前に辞めた選手のグッズが残っていたこともあった」

J2参入時に掲げられていた「5年でJ1」のスローガンの前には思考停止とも言える空気だったのか。これにずさんな経営体制の問題が重なり、2010~11年に実施した計1億2千万円の増資で解消した債務超過をわずか1シーズンで無にしてしまいました。

この増資に向かう事業計画発表を受けて熊日運動部の山本記者は「サッカーJ2ロアッソ熊本が、“存続の危機”問題に直面している。」(5月9日 熊日朝刊)と表現し、この状況を分析してくれました。

この問題は、われわれのなかでも第一の関心事であり、小心者としてはどんなに快勝したゲームでも、常にどんよりとした重石になっていたような、そんな重大事でした。今のクラブの収益力ではクラブライセンス制度の適用期限までに残された時間を考えると、増資しかない。それは関係者に共通する暗黙の了解事項だったと思います。

募金活動も含めて、この間の経緯は色々と語られていますので、ここで同じような評価うんぬんをするつもりはありません。

しかし、増資しかないとわかっていても、クラブとしては2010~11年に増資をお願いしている経緯があり、出資企業・団体の反発は容易に予想されることで、なかなかその方針を出すことには躊躇があったのでしょう。

結果、「Jリーグから8月までに債務超過を解消するよう指導され、時間がないため増資を決めた。自分たちがやれることは全てやる。同時に県民の皆さんの力も借りたい」「(増資引き受けのメドは)まだない。」「見通しは全く立っていないが、増資を実現する責任感を持って取り組む」(池谷社長)と総会後の会見で述べたように、ある意味で“素早いカウンター”を仕掛けました。事前の根回しもなく(根回しの段階で起こり得る不協和音やそれに対処するエネルギーを回避するために)、発表一発でスタートをきりました。

その後は一気に既存、新規の株主へのアタックに走り「県などから、増資に応じるという回答をもらい、民間企業や個人からも申し込みがあった。入金の手続きはまだ済んでいないが、増資の目標としていた7千万円のめどは立った」(8月2日付熊日朝刊 池谷社長)という(今でこそ言える)速攻ぶりでした。

熊本の株主資本は「県民クラブ」の看板通り、筆頭株主といわれるような大株主はおらず、個人も含めた多数の小口株主で構成されています。主要企業さえ口説き落とせれば方向性が出るというようなものでもなく。出資側も説明責任を負っているわけで単純にはいかない。7月末の期限までにひたすら回り続けるスピード勝負だったことは想像できます。

「AC熊本によると、増資に応じたのは既存の株主39団体・個人の3400万円と、新規の35団体・個人の2700万円。県と熊本市からも各300万円の増資が見込まれるなど最終額は7300万円になる見通しという。」(9月30日付熊日朝刊)

前回の増資からとにかく時間を置くタイミング設定。そしてこれはクラブの「運」ということもあるでしょうが、少しづつ回復しつつあった景況感と消費税増税のマイナスがせめぎ合うギリギリのスケジュール。ピッチ外ではありますが、色んな意味で戦術を尽くした戦いだったのではないかと思います。

クラブの危機を回避した現経営陣の営業センスに拍手と感謝を送りたいと思います。

一方でクラブから協力のお願いが発表された「ロアッソ熊本存続支援募金」活動。その“存続”という文字はセンセーショナルでした。そのネーミングの意図をライター井芹さんが運営する「Kumamoto Football Journal」で池谷社長から引き出しています。(井芹さん、有料なのに勝手に引用してすいません)

「『あまりにもネガティブだ』という意見もありましたよ。」
しかし
「クラブのあり方を変えて体力をつけていくことが大事だと思うんです。そのためにもいい機会だということで、そこは一回、全てを皆さんにお伝えしようと。それは僕の中ではネガティブではなかったんですが、やっぱりJクラブとしての存続がかかっていたので、あえてその表現にした」。(Kumamoto Football Journal

まずサポーターたちがこれに呼応しました。ペットボトルで募金箱を作ると県内隅々まで設置のお願いにまわった。なんとその数457カ所。そして3カ月で集まった金額は249万5214円。また、お小遣いを投げ打ってスタジアムの樽募金をしてくれた子供たち、そのお父さん、お母さん。県外から募金してくれた人たち。企業ぐるみで募金してくれた人たち…。そのほかにも、本当に多くの皆さんに支えられ、現在目標の3000万円に手が届きそうな勢いです。

いや額よりもなによりも、この募金活動は、県内隅々までの人に改めてロアッソの存在を考えさせ、そして絆を作ることにもつながったのではないかと思うのです。消してはいけないチームとして。県民クラブとして、そして“わたしの”クラブとして…。

絶対に負けられない戦いに勝った。

停止条件付きだった鳥取も条件をクリアし、最終的にはJ1、J2、J3の全44クラブにライセンスが付与されることになりました。それぞれのクラブが必死にそれぞれの生き残り策を模索してたどり着いた結果です。厳しくもあり、また、リーグとしては当然の要求でもある制度ですが、同時にわれわれのクラブ、われわれのチームというものを深く、深く考えさせられる機会になりました。

先の山本記者の記事は「市民や行政、企業など県民の意思も問われているのだと思う。どんな結論になるか分からないが、クラブ設立から10年の歩みを県民がどう評価するか、注視していきたい。」と結ばれていました。

10年目のシーズン。クラブはとりあえず大きなハードルをクリアし再スタートをきった節目の年になりました。「5カ年計画~ロアッソ熊本の挑戦~」のビジョンもでき、J1にふさわしいクラブ体力(予算規模拡大)や昇格プレーオフ圏内定着など、今後5年間の目標が明文化されました。

これから5年、10年の次なるクラブの歩み。その時はわれわれも年老い、見届けられるかどうかもわかりませんが。きっとファン、サポーターのまた次の若い世代がクラブと一緒に、道を拓いていくんでしょうね。