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3月30日(日) 2008 J2リーグ戦 第5節
鳥栖 1 - 1 熊本 (13:03/ベアスタ/6,201人)
得点者:24' 金信泳(鳥栖)、60' 高橋泰(熊本)


「因縁」。①物事の持っている定まった運命。②理由。由来。③ゆかり。関係。

ダービーと呼ばれるには、「因縁」が必要だと言われます。新・九州ダービーと銘打った鳥栖と熊本との初めての公式戦。これまでそんなものはさほど見あたらない。けど、新しい歴史を刻む一戦を見届けるために、鳥栖に旅立ちました。

春の嵐を思わせる横殴りの雨。屋根のないゴール裏では、もうすでに両チームサポーターがずぶ濡れのコール合戦でヒートアップ。さすが一番近いアウェーとあって、熊本からも大勢の”ロッソ”ファンが集結。
「よろしくサガン鳥栖!熊本です!これから頑張っていいライバルになります!」と叫んでいるよう。鳥栖スタ特有のスクラッチ感のあるBGMがコンパクトな会場にこだまして、否が応でも興奮してきます。

両チームとも目指すコンセプトは「積極的守備からの攻撃」。ところが、開幕前のTMで熊本に敗れた鳥栖は、大いに修正点が見つかったようで、これが結果的に開幕からの堅守、無失点に繋がったのか。

一方、わが熊本は、市村、有村の両SBをスタメンから外し、右から矢野、河端、上村、福王という、まるでオールCBの4バック。これも、TMでの対戦経験からサイドをケアして、守備的に入っていこうという、これまでの修正と対戦相手への対策がうかがえました。

しかし前半立ち上がりから熊本は全くいいところがない。鳥栖のプレスが早いのは覚悟していたものの、ここまでボールが繋がらないのか・・・。新布陣ゆえの連携の未熟さなのか。奪ったところで、意図のないパスは、単なるクリアのようで相手の懐にしか収まらない。
24分、最終ラインからのロングボール。上村が見送ったところに走り込んだのはキム・シンヨン。河端が対応しましたが、うまく身体を入れられてGK吉田の頭を越えるシュートで鳥栖が先制。
このあたりの時間帯は「う~ん。ここまで力の差があるか・・・」と思わせましたが。

後半に入って車に代わって西森投入。噛み合っていなかったのは関だったので、何故?と思ったのですが、後で車にアクシデントがあったと知りました。先の湘南戦では、少し消極性が見えた西森でしたが、今日は本来の”汗かき”な動き。もちろん、まだまだ無駄がありますが、なんか起点になってきます。それと同時にボランチ喜名にもボールが収まるようになり、次第に熊本がポゼッションを奪っていく。
パスミスを連発し、リズムを失っていく鳥栖。まるで前後半逆になったような展開のなか、後半15分、スローインの折り返し、福王からのクロスにファーサイドで待っていたのは、やっぱりこの男、高橋。鼻骨骨折のフェースガードをものともせず、ヘッドでゴールに押し込みました。

沸き上がる熊本サポーター。敵地で、ほら、こんな隣にも熊本ファンが拳を上げている。

その後は五分五分。お互いがお互いのチャンスを決めきれず、タイムアップ。鳥栖と熊本との初のダービーは引き分けに終わりました。

風もありました。雨の影響もありました。それ以上に力の差は歴然としていたように見えました。
しかし、後半”修正”したのはこちらであり、開幕から無失点の鳥栖のゴールをエース高橋がこじ開けて、追いついての価値あるドロー。勝負としての結果は”引き分け”だったのです。
どうでしょう、今日の布陣といい、ドローはゲームプラン通りではなかったかと。これまでの3試合とはまた違った試合の流れ。選手の経験値もそれぞれ上がったことでしょう。一試合一試合の文脈が実に深いなあと感じるのです。
ゴール裏に揃った白いユニフォームの”ロッソ”イレブンに、惜しむことなく拍手が贈られました。

鳥栖スタ名物「イブスキ」のホットドックの列に並んでいるとき、古くからのネット同胞と一緒になりました。「ようやく鳥栖スタで、”熊本”と叫ぶ日が来ましたね。」と握手。そのほかにも、昔なじみの笑顔の数々・・・。
電車で一時間ちょっとの”隣町”から帰った夕暮れ、自宅で勝ち点1を肴にビールをグーッとやりながら、これが”われわれのダービー”の始まりなのだと思いました。
昨年、一番試合を観たチームが鳥栖なんですが、実をいうとあまりよくわからないのです。
強烈な個性を持った選手がいないのか、いつまでも名前を覚えられない。FWの一角を占めるキム・シンヨン、J2日本人得点王の藤田、FC琉球でも活躍していたSBの高地くらいか・・・。

鳥栖 (前節のスタメン)
9 キム・シンヨン 31 谷口
18 野崎24 清水
8 衛藤10 高橋
6 高地13 日高
3 加藤2 柴小屋
 1 赤星 

昨季途中、C大阪から移籍してきたキム・シンヨンは、高さも強さも兼ね備えたタイプ。その怖さを知っているからか、移籍元のC大阪との試合には出場しないという珍しい契約条項が結ばれています。

高地は要注意選手。サイドからの起点になるだけでなく、スルスルと中にも顔を出す。この選手が上がってくるときはやっかいなときです。あとは、前々節でみごとなミドルを決めた19歳FWの谷口。思い切りよくシュートを狙ってきます。

昨年の開幕前のTMで1.5軍で対戦したロッソがチンチンにされたときの印象は、とにかく攻撃に移ったときのスピードが速いこと。ロングボールを放り込むのではなく、中盤やサイドを経由してワンタッチ、ツータッチぐらいで一気にゴール前まで走りこんできました。

有名選手に頼るでなく、若手中心でここまでのチームに仕立て上げたのは、現在GMを務める松本育夫さんの監督時代の改革があったからだと思われます。監督就任していきなりの体脂肪率測定など厳しい教育者的エピソードも事欠かない方ですね。4年前の選手の大量解雇は、まだ記憶に新しいところです。(そのおかげ?で、当時ロッソにも何人かの選手が来てくれたわけですが・・・)
一時は倒産の危機すらあった鳥栖を、ここまで復活させたクラブ運営についても、この人の功績が大きいのではないかと見ています。

現在指揮をとる岸野監督は熱血型。松本監督時代のヘッドコーチでしたから、方向性は継続しているのでしょう。悪戯小僧のように後ろ向きに被る赤いキャップがトレードマークですが、その赤い色は、わがチームカラーなんですけどね・・・。

さて、新・九州ダービーの初戦。これこそ待ちに待った一戦と言っても過言ではありません。クラブも、3チーム連携して、色々な企画で盛り上げてきています。オリジナルのタオルマフラーもいいですね。

思うに、J2初年度のわがチームにとって、どの対戦も”チャレンジ”には違いないのですが、この鳥栖と福岡との九州対決だけは、(チームもファンも)より高いモチベーションで戦っていきたいですね。今年J2で何位という目標はありませんが、鳥栖と福岡に勝ち越すことを目下の目標に設定したい。そうすることによって、自ずから順位という結果も付いてくるように思うのです。

J2の九州トップ・・・・。何かイメージ湧きそうな気がしませんか?
そのときおそらくJ1昇格も見えてくるのではないかと。そんな想いの九州ダービー。

わがチームは、前節で高橋が鼻骨骨折。どうやらフェイスガードも完成し、今日は練習にも参加していたそうですが、パフォーマンス的には問題があるでしょう。
ここはひとつ、山内あたりに活躍してもらいたい。丁度、敵チームでいえば藤田の穴を新進気鋭の谷口が埋めて、選手層の厚さを示したように・・・。

熊本からはJRでも自家用車でもおよそ1時間。一番近いアウェーです。鳥栖は今シーズン、山形に1-0、大阪に1-0、横浜に0-0とまだ無敗。あの羨ましいほどコンパクトな専用スタジアムも大いに盛り上がることでしょう。
さあみんなで大挙して応援にいきましょうや。「わが熊本も仲間入りしたんだよ」と示すためにも・・・。
3月23日(日) 2008 J2リーグ戦 第4節
熊本 0 - 2 湘南 (13:03/熊本/3,046人)
得点者:48' 田村雄三(湘南)、61' 石原直樹(湘南)


リンコンはともかくジャーンまでも故障で欠く布陣。しかも相手は中二日のスケジュール、こちらは移動もなくホーム第2戦。しかも、雨のピッチ・・・。強敵湘南を迎えるにしても、こちらのほうに好条件が揃っていると誰もが思いました。いよいよ「昇格候補」と噂される上位との対戦に、あわよくばホーム2連勝と思わせた一戦でした。が・・・。

ロアッソは、前節同様のスタメン。もちろん「積極的な守備からの攻撃」という今季のコンセプトどおりの入り方でしたが、これまで2戦の反省点からか、無理矢理のプレッシングというより、バランスを保ちつつ要所でボールを奪うという戦い方。セカンドボールも収まり、いい感じで攻撃まで繋いでいきます。

アジエルへの対策も万全。右サイド先発でしたが、プレスを嫌って中へ、あるいは前線へ自由にポジションを変える彼を、福王、上村、矢野あたりが、きっちりつかまえていました。そういったプレッシャーの他にも、おそらく連戦の疲れがあったのでしょう、今日のアジエルは、ぴしっとボールを収めてからの球離れが実に早かった。この彼自身の判断(いわば修正)が、実はこの試合を左右することになったのですが・・・。

とにかく、ロアッソとしてはいつもどおり前半、“いい勝負”をしてしまう。この「昇格候補」相手に、スコアレスで前半を終えます。しかも、何度か決定的なチャンスもあり・・・。われわれも前半終了のホイッスルを聞いて、思わず“よし”と呟いたりして。やはり今節も後半勝負となりました。

しかし、またわがチームは、後半の入り方が(いつもどおり)悪かった。

一方、メンバー自体は変わらないものの、湘南はそのシフトを微妙に”ズラして”きました。主に、セカンドボールを拾えないことに対する修正だったのでしょう。そして、熊本のエース高橋に、くさびが入るボールに対して”狙い”始めた、奪い始めた。

これによって、リズムが狂いはじめた熊本は、前に運ぶパスでもミスが目立ち始める。困った高橋は、ボールを貰うために徐々に下がりはじめます。プレスのきつい高橋の代わりに、中山が前線でボールを収められれば展開も違ったのですが、さにあらず。雨のピッチにナイーブになってしまったのは、中山であり小森田ではなかったでしょうか・・・。先の2戦で、「熊本には高橋あり」と知らしめたわけですからマークがきつくなるのは必定。それに対して、逆にその機に乗じて、まわりがうまくカバーする動きができれば、違った展開があったかもしれません。

後半開始早々、嫌な時間のCKだな。と思った瞬間、吉田の中途半端なクリアから田村に押し込まれ先制される。16分には大山のパスから抜け出した石原に決められて2点差とされます。アジエルは、自らがおとりとなって、この日本人FWに今季初ゴールを献上しました。
2点目の行方。この3試合に共通する展開でした。熊本も喜名、山本を入れ、中盤を厚くすることによって、ポゼッションを取り返しましたが、湘南の厚い守備の壁は打ち破れませんでした。

これまでも再三書いていますが、90分の試合時間のなかで、45分は連続した”流れ”のなかにあります。そして後半45分の、次の連続した流れの前に、唯一15分の時間が設けられているのです。つまりそれは最大の”修正”のチャンス。今日の試合は、まさしくこの修正の点において差があらわれた試合でした。
逆説的にいえば、格下(あえてそう言わせてもらうと)のチームは前半うまくいってしまうと、それを”維持すること”だけが目的になって、修正点が明確にならないのではないか。そうすると、格上のチームが修正してきた場合、必ずそれは後手にしかならない。“対応”に終始することになり、確率論として大きなリスクを背負うことになってしまいますね。

後半の連続した45分のなかで、更に修正する力があればいいのですが、選手交代という監督が下す手段でしか、今のところ修正が効かないように見えます。これが、上のカテゴリー、強いチームになればなるほど、選手自らに”修正力”があるのだと思います。

45分の連続した時間のなかでの修正力。まさしくこのリーグでの後半の45分は、前半の45分より密度が勝る。後半こそが見所なのではないかと思います。

と、まぁ、試合ごとには微妙に修正しながらも、同じような戦術のもとに、結果が違った3連戦が続きましたが・・・。いいんです。結果は。
試合毎に、課題が明確になり、それを修正していくのが現在の作業なのですが、そのなかにおいても、試合中の修正もこのリーグでのチーム力を左右するということがわかってきました。JFLでは見えなかった部分ですね。まるで、新社会人が、失敗を繰り返しながら仕事を学んでいくように、何も恐れず、”勉強”していけばいいんです。ロアッソはチームとしてまだまだレベルアップして行く途上ですから。

今日は、冷たい風雨のなかで3000人以上の観客が集まったのがなによりでしたし、獅子奮闘したチャ・ジホに、スタンドから誕生日のプレゼントが。それを受け取って、何度も何度も頭を下げる彼の姿は、とても心温まりました。

来週の新九州ダービー、サガン鳥栖戦も、臆することは何もありません。みんなで鳥栖に乗り込みましょう。アウェイのダービーマッチの雰囲気を存分に楽しみましょう。ようやく手にした、”J”1年生の立場を満喫しましょう。
たくさんの拍手と、こちらも胸が熱くなるような”拍手コメント”をいつもありがとうございます。まだまだ始まったばかりですが、スカパーやBigを含め、すっかり“J2生活”を満喫しています。みなさんはいかがですか?

さて今日第3節は、わがホームチームはお休み。次節、日曜日はKKに湘南を迎えます。
旧名ベルマーレ平塚。ご存知のように94年からJリーグに在籍する古豪。天皇杯優勝の経験もあり、数多くの日本代表を輩出する実力でしたが、J2降格以降チーム力も低迷。ゼネコン不況によるフジタの撤退などもあり、迷走していた感もありましたが、近年は地域密着型の総合スポーツクラブとして立て直し、徐々に体力をつけてきています。

ちなみに胸スポンサーのロゴ「SANNO」は産業能率大学のことで、この地元の大学とタイアップしてスポーツマネジメントの共同講座を設けるという新しい試みは、Jリーグでも最初の取り組みであり注目されています。

昨季は最終6位で終わりましたが、昇格を目指す上位チームが足元をすくわれないようにとても用心しているチームが、ここと鳥栖、そして山形でした。
今季はさらに戦力を充実させ、「昇格候補」の呼び声高いチーム。
が・・・。開幕戦は仙台相手にジャーンの1点で辛勝。続く第2節は、好守斉藤が2PKも与え、横浜FCに敗戦。今日の第3節では悪天候のなか広島に完封負けを喫しました。
ちょっと、結果に恵まれていませんが、しかし、明らかにJ2でも上位の実力を持つチームといよいよの対戦です。

とにかくここはブラジル人3人組です。
DFのジャーンは高さに絶対の自信を持ち足元にも落ち着きがある。セットプレーでペナルティエリアに入って来られると危険な選手。右サイドのアジエルは上背はないものの、独特のリズムと切れ味鋭いドリブルで起点にもフィニッシャーにもなり得る。前線には福岡からFWリンコンが加わりました。
この3人だけでも怖い存在なのに、CBはもうひとり元日本代表の斉藤が守っているし、36歳の加藤望も第2節で途中交代からFKを決めているし、レッズからレンタルの大山もいやらしいキックを蹴ってくるし・・・。
ただし、この第3節ではリンコンが故障とかで、アジエルが2トップの一角を占めていました。

第3節湘南先発
 GK25金
 DF5臼井・3ジャーン・2斉藤・4三田
 MF13鈴木・6田村・8坂本・14永里
 FW10アジエル・11石原


基本的に堅守のチームといわれていますが、攻守の切り替え、アジエルを経由して前に持っていくスピードは、驚くほど速いです。「切り裂く」という表現が似合うほど。
うちはここを有村の狡猾さ、チャと福王の運動量で抑えられるかどうかがキーポイントかと・・・。調子に乗せたら止まることを知らないブラジル魂ですが、うまくいかなくなると自滅するのもその特徴です。“強さ”はある意味“弱点”でもあり・・・。
あとは無用にエリア前でFKを与えないこと。ジャーンをきっちりマークすることか。
ロアッソのGK小林、MF吉井の古巣ですが、どうやら二人は間に合いそうもないみたいですね。

これまでの2戦、先輩チーム相手に一歩も引かず、コンパクトな陣形から高い位置でのアグレッシブな守備を基本戦術にしてきたロアッソ。それでも初戦の愛媛戦でのあまりに無茶な追い回しを修正し、草津戦ではクレバーな読み、判断をベースにした守備へとシステムをまた一歩、進化させたように見えました。
さて湘南戦。これまでの2チームに比べ、戦力的には明らかに上のチームです。中盤の人数を増やし(3ボランチ?)、もう一段、守備的なシステムでスタートする考え方もありますが、おそらく池谷監督は戦い方を変えてこないでしょう。まずはこの戦い方がどのあたり(選手、チームでもあり、時間でもあり)まで通用するのか。長期的な視点で見て、この第1クールではそのあたりを見極めたいと考えているのではないでしょうか。

われわれの思いも同じです。PSM札幌戦からスタートしたこのメンバーと戦術が、ゲームを重ねるたびに修正が加えられ、熟成していくプロセスの途上ではなかろうかと。場当たり的に守備的にしたからといって、うまくいくはずもないでしょう。少しづつでもいいから、J2でのロアッソのサッカーが“スタイル”として見えてくるようになればいいなと(楽観的、理想的ではありますが)思っています。

しかし、そこは強豪ひしめく“J”です。これからの戦い、われわれファンにも、“それ相応”の覚悟が必要になってくるでしょうね。

では、今週日曜KKで・・・。
3月15日(土) 2008 J2リーグ戦 第2節
熊本 2 - 1 草津 (15:03/熊本/5,960人)
得点者:63' 喜多靖(草津)、78' 高橋泰(熊本)、79' 高橋泰(熊本)


いやぁ、今日は細かいことをとやかく言う気持ちが起こりません。ドラマのような逆転勝利。ホーム開幕戦で、ロアッソは草津相手に初勝利を飾りました。

ホームの初陣に向かうチームと熊本のサッカーファンの全ての気持ちを集めたように、KKウィングの白い大屋根の向こうには早春の爽やかな青空が広がりました。熊本が歴史として刻むべき日、2008年3月15日(土)が遂に訪れました。

Jリーグ創設より遅れること15年。新潟や大分と肩を並べたこともあるブレイズ熊本の挫折、アルエット熊本のJFL昇格と降格。そしてロッソ熊本の九州リーグからの挑戦4年目にして手に入れたJの切符。

そう、手が届かないと思われた、果てしなく遠くにあったその”権利”を手中にし、紛れもなく「Jリーグが熊本にやってきた日」。そして同時にJ初勝利を飾る日をわれわれはこの目で”目撃”する幸運にめぐりあうことができました。

1400人以上が出資したビッグユニフォームがゆっくりとスタジアムを移動していく。草津からやってきた数十人のアウェーサポの地声のチャントが、こちらのアドレナリンを否が応でも高めてくれる。開幕に集った5960人のファンの目前で、キックオフのためにフィールドに散った”ロッソ”イレブンは、NHK山本アナ風に言えば、まさしく「『彼ら』ではなく、われわれそのもの」でありました。バックスタンドにはロアッソ初の外国人選手のために、小さな大極旗もひるがえっていました。

草津はアウェーといえどJFL昇格チーム相手に連敗は許されない。一方、熊本もなんとか初白星がほしい。しかし、”ロッソ”イレブンに堅さは全く感じられませんでした。緊張していたのは、返ってわれわれの方だったのかも知れない。前節と全く同じスタメン。少しだけ小森田が控えめのポジションか。

島田に注意、島田に注意。しかし、その島田は左サイドに逃げているのか、なかなか起点になれない。わがロアッソは今日も出足が早く、良い読みからパスカットしてショートカウンターでチャンスを作っていく。DFラインからも有効なサイドチェンジで、攻撃が出来ている。ときおり入るロングパスに対しても、矢野と上村が空中戦を制して跳ね返す。

お互いが主導権を奪い合おうと意図した前半戦。高橋、中山のツートップはほぼ前線を制圧し、決定的なチャンスが何度も訪れましたが、草津GK北があたっていて、サイドバーまで味方にして、あぁ、今日も決定機を決めきれないという、前節の嫌なイメージを抱いて終わった前半でした。

以前書いたように、90分という時間のなかで試合運びを何度も修正し、流れを変えることができるのが、このカテゴリーのチームたち。特にハーフタイムというのは、その絶好のチャンス。草津も後半開始早々の5分、相当に押し込んできました。
一方、熊本はまた入り方が悪かった。なんとか流れを押し返したように見えたものの、再三の島田からのリスタート、変化のあるCKのボールに、人数は揃っていたものの集中力を欠いたのか、後半18分、抜けたボールに合わせられ先制点を奪われてしまう。DFリーダーの上村が怒り、高橋のいらつきが伝わってくるようでした。

しかし、ここからが前節とは違った。それは、先制した草津の方にアウェーという少し「慢心」にも似た感覚が芽生えたのかも知れない。あるいは熊本に、ホームサポーターが力を与え、「下を向かせなかった」のかも知れない。何より監督が気持ちを前面に押し出した。

失点した7分後の後半25分、市村、西森に代えて喜名、山内の二枚を同時に投入し、3-4-3に変更した大胆なベンチワークが、「この試合は何としても取りにいこう」という意志をイレブンに伝えました。

これが功を奏して、中盤が落ち着きを取り戻した熊本は、そのわずか8分後、福王からのフィードに高橋がワントラップから華麗な同点ゴールを決めると、その1分後には、右に回った車からのクロスに高橋が無理な体勢から頭で合わせてゴール右角へ。一気に逆転としました。

この瞬間、スタンドは総立ち。私の前の席に座っていた老夫婦も、ゴール裏で声援を送っていたチアーの子供たちも、そして私も。飛び上がり、熱狂乱舞、欣喜雀躍、手の舞、足の踏むところを知らず・・・でしたね。

いや、もうこんな陳腐な文章では表現しきれません。高橋!高橋!われわれはこの素晴らしいエースストライカーがいることを誇りに思う。Jリーグに連れてきてくれてありがとう。初勝利をありがとう。

ロスタイムを含めて最後の10分間。草津の意地をかけた怒涛の攻勢。6000人の観衆からの絶えることのない拍手と大歓声がスタジアムに溢れ、選手を鼓舞し勇気づける。GK吉田の体を張った1対1の渾身のセーブ。何としても勝ちたいというこのスタジアムと一体となった気持ちが乗り移ったボールキープ。最後は絶対にボールを離すものかというこの若武者の鬼気迫るプレーが勝利のホイッスルを促しました。

課題? 確かにありました。でもチームは先週の課題をしっかり修正して今日の勝利をもぎ取ったのです。今日は結果よければ全て良し。もう今週は何も言うことはありません。
さぁ、ホーム開幕戦に向けて、“上げて”いきましょう。
初めて熊本に迎える対戦相手・草津は、4年前、徳島とともにJ2に上がったチーム。当時、選手が草津の温泉旅館で布団の上げ下げなどアルバイトしながらJを目指すと、数多くのマスコミがスポットを当てましたね。Jの監督経験がある植木監督を招聘し、多くの元Jリーガーを集めて、県リーグから再びJのステージを目指す、という今ではそう珍しくもない昇格ビジョンは、当時の地方チームとしては画期的なものでした。(熊本の短期昇格目標にも、この草津の前例がイメージにあったと思います。)
2003年には、日本サッカー協会が、関東2部リーグから地域決勝大会に出場させる「飛び級制度」を適用。地域リーグの他チームファンを悔しがらせました。が、この大会で見事に優勝。翌年のJFLでは、3位ながらもJ2への参入が認められました。ただこの年の天皇杯では、満身創痍のGK小島を守護神にベスト8まで進出し、実力を垣間見せました。

マスコミの注目を浴びることによって、スポンサーも集まりました。当時絶頂期だったユニクロがユニフォームのサプライヤーになるなど話題も多かった。余談ですが、Jリーグのマネジメントを博報堂に独占されている電通が、この草津の“仕掛け”の黒子だったとか。更に余談ですが、Jリーグバブルのあと、日本代表ブームを仕掛けたのも電通だそうです。

ただ、J昇格年は5勝止まりで最下位。その後も下位に甘んじ、また経営的にも決して安定しているといは言えない様子。他人事ではないですが・・・。

開幕戦では広島をホームに迎えたものの、0-2の完封負けを喫しました。フォーメーションは、島田をトップ下においた4-3-1-2だったとか。FWは高田、氏原の純国産。高さがありますが、うちのDF陣が競り合いに負けることはないでしょう。曲者の鳥居塚が前節の退場処分で、出場停止なのも好機です。あと嫌なのは熊林ぐらいか。
とにかく、大宮から念願かなって再獲得した島田がキーマン。ここにボールを収めさせないように、忠世あるいは喜名の徹底したマーク、出所でのチェックが必。逆にここで奪ってサイドに散らし、相手のサイドを封じれば、うちの勝機が見えてきます。

なんとなくプレースタイルも、うちに似た感じなのかと。
おそらく池谷監督は、スタメンをそういじらず、前節と同じように開始からアグレッシブにやると思います。前節取りそこねた“先制点”。それがこの試合の結果を最も左右するような気がします。

さぁ、では皆さん。明日スタジアムで! )))
3月8日(土) 2008 J2リーグ戦 第1節
愛媛 2 - 1 熊本 (14:04/ニンスタ/5,122人)
得点者:54' 田中俊也(愛媛)、63' 青野大介(愛媛)、80' 高橋泰(熊本)

月並みな表現ですが、待ちに待ったJリーグ開幕戦。しかし残念ながら我々はスカパー観戦となりました。仕事をしながらも12時頃からなにかソワソワ、ドキドキ・・・。この緊張感は、確実にJFLとは違っていました。「負けたら終わり」という神経戦から解き放たれたものの、「どこまでやれるのか」という不安と期待。いや、いいんです。今期はあくまでチャレンジャーなのですから・・・。

熊本の歴史に残るJ初戦のスタメンは下のとおり。車を左サイドハーフ、小森田を前目に置くボックス型の中盤は、数々のTMで試した結果得られた、現在ベストのフォーメーション。そして、積極的な守備から攻撃に移るのが今期ロアッソの目指すサッカー。
先発
18 中山11 高橋
 33 小森田 
24 車25 西森
 6 福王 
23 有村15 市村
19 上村16 矢野
 1 吉田 
その狙いどおり、開始早々からロアッソが主導権を握りました。左の車、右の西森が非常にアグレッシブに動きまわる。高橋が奪い、小森田がワンタッチで裏に出したボールを中山がシュートするも、わずかにゴール右に逸れる。しかし、今年のサッカーの片鱗がここに見える。これまでバランス重視のポゼッション・サッカーから脱却して、どんどん前線に人が入っていく。愛媛の守備陣がバタバタしてきます。

ときおりの愛媛の攻撃は、最終ラインでうまくカット。昔栃木SCで気を吐いて、大宮に「ひとり昇格」を果たしたFW若林も、「うまくいかない」といった表情。

しかし、この主導権を握った時間帯に決めきれずスコアレスで前半終了。後半愛媛がどう立て直してくるのか、先制されればその後、立て続けに崩されるのではないかと不安がよぎるハーフタイム。

後半は、ボランチのキムテヨンが執拗に小森田をマークし始めました。また、左サイドでのワンタッチの玉回しから江後が走りこむ。これによってワンボランチの福王の負担も増し、小森田のポジションが押し下げられていく。守備陣からはクリアに近いロングボールばかりで、攻撃陣も孤立。54分に失点すると、63分にも追加点を上げられ嫌なムード。失点の場面は。いずれもやや集中を欠いたような“ミス”に近いプレーから。これを許してくれないところはやはりJ2。厳しいなぁ・・・と。

しかししかし。80分、ルーキーで開幕戦先発を果たしたGK吉田の狙いすましたロングキックに、敵DFが合わせられず、裏をとった高橋が落下点でダイレクトに左足を振り抜く。敵GKは触れず、ゴール右角に突き刺さります。
熊本の記念すべきJ初ゴールは、やはりこの男が決めてくれました。

試合後、愛媛の望月監督をして「ゲームプランどおりだった」と言わしめましたが、これは全くの結果論ではなかったかと。前半は確かにロアッソの攻撃をよくしのぎましたが、終了間際のあの中山のヘッドには彼自身、肝を冷やしたのではないか。最後の連続CKのシーンしかり・・・。
愛媛としても、新参の熊本に勝ち点を与えているようでは、シーズンの見通しが立たない。大事な開幕戦において結果がともなったからの発言なのでしょう。

ただ、確かにうちが決めきれなかったのも紛れもない事実。1点差に迫ったものの、次に同点にする力、たたみかけて逆転する力がJ2には必要。90分という時間のなかの密度が濃いのが、上のカテゴリー。試合の流れの変化の早さ、それを引き寄せる力。これに慣れなければいけないです。

何はともあれ、監督の言う「やれるところ」と「やれないところ」がはっきり出た初戦。先日のPSM札幌戦と比較すると、得点、失点のタイミング、そして運。気温の高さも選手のコンディションに微妙に影響していますが・・・。
でもいいじゃないですか。自分たちはこうやろう、ということがはっきりしているというのは。
見ているぶんには色んな意見があろうかと思いますが、結果だけを求めず、正真正銘のJFLバージョンの進化型で臨んでいるロアッソの今シーズン。こちらもじっくり構えて観ていこうという気にさせるゲームでした。

そんななかで、高橋の一矢報いる鮮やかなゴールのすがすがしさ。「スーパーサッカー」でも「新規参入!ロアッソ熊本」の名とともに、そのゴールシーンが紹介されたし。
そしてなにより、アウェーのスタジアムでテレビに映る熊本サポーターのレプリカユニの”赤”が、とても新鮮で、とても美しい色に感じました。(皆さんお疲れさまでした。)

さぁ、来週はホーム開幕戦。いよいよ、Jリーグチームとしてのロアッソのホーム開幕戦です。初戦がアウェーだったので、なんだか2度楽しめる気分です。一生に一度の、初めてのJホーム開幕戦。
ちょっとお祭り気分になるのも仕方ないですよね。

  追記:
  「拍手」の追加コメントで「相互リンクの可否」を尋ねられていますが
  直接ご返事できないので、ここで。
  この「サカくま2.0」は、基本的に”好意的な”リンクであればリンクフリー
  です。ただ、ご覧のように、こちら側はリンク集を作らない方針でおりま
  すので、”相互”はご了承のうえ、ご勘弁ください。
  では、来週スタジアムで・・・。
3月2日(日) 2008Jリーグプレシーズンマッチ
熊本 1 - 2 札幌 (14:00/熊本/2,935人)
得点者:9' 高橋泰(熊本)、30' 砂川誠(札幌)、89' 中山元気(札幌)

開幕前の総仕上げ。ロアッソ熊本対コンサドーレ札幌とのPSMは、1-2という結果でした。しかし、これこそ勝敗の結果にあらず、「惜敗」と呼んでいい”内容”ではなかったでしょうか。
これまでのPSMやTM、観たものについては、詳細にフォーメーション図を描いてきましたが、今回のは省略します。スカパーなどで誰でも確認できる試合は除いて、フォーメーションは図にしないように決めました。観る人も限られている拙いサイトとはいえ、自チームの不利にならないようにという配慮です。対戦したこともなければ、選手の名前も知らない、というのが昇格組のファーストステージにおけるアドバンテージではありますからね・・・。

さて、知将札幌の三浦俊也監督が、「立ち上がり、相手の勢いがあった時間帯で、こちらの動きも鈍く、先制されました。シュートもクロスも素晴らしかったが、我々の消極性が原因だった部分もあると思います。」(J’sゴール)と評するとおり、ロアッソの出足にたじろぐ札幌を相手に高橋のヘッドで先制。福王からの大きなサイドチェンジに追いついた有村。その左足から上げたセンタリングに飛び込んだものでした。高橋は怪我からの復帰第一戦でしたが、随所に本領を発揮し、いきなり本調子といった印象。後半退いたのは、大事をとってのことと思われます。中山との2トップは初めて観ました。サイドに流れた高橋からのセンタリングに中山が惜しくも合わずというプレーが2度ほどありました。これも徐々に連携が出来てくるのではないでしょうか。

三浦監督が「15分を過ぎてからは多少落ち着いて、いい時間帯になりました。」というとおり、ここから札幌の動きも速くなり、ロアッソが押され始めます。ダヴィと上村のマッチアップ。矢野や福王がカバーするものの、ちょっとダヴィを止められなくなってきていました。30分、左サイド奥から上げられたセンタリング、ファーサイドに飛び込んだ砂川に豪快に決められ同点にされます。

しかし、前半のロアッソ、怪我人も復帰し、ほぼ現在のベストメンバーと思われますが、J1昇格の札幌相手に一歩も引かない展開。チームとしての力の差は明らかにありましたが、個人能力の差はさほど感じさせず、今期テーマとしている「積極的な守備からの(速い)攻撃」の浸透が随所に見られました。例えば奪えると確信した瞬間に、選手たちの重心は前に移動し、奪った時点では全員が前にステップを踏んでいる。サイドチェンジなどパスの質も高く、安全な繋ぎではなく、チャンスを狙ったギリギリのものが目に付きました。そして判断がこれまでより数段速い。

小森田はきついマークに合い、けっこう潰されていましたが、ボランチの福王、サイドの車の運動量も高く、札幌と互角に争っていました。今日は左サイドハーフに入った車。なかなかの動きでしたが、まわりの選手との息は今一歩。これが咬み合ってくると、十分いい武器になると思います。

後半は、お互いが控え選手を次々に投入してきます。展開を変えるというより、テストといった意味合い。試合はほとんど膠着状態となってしまいました。14分、西森のFKに中山がヘッドするも、キーパー正面。喜名、山内、熊谷、山本、河端、小林と、バックアッパーのほとんどを試すことができました。無難な出来でしたが、流れは変わらず・・・。

札幌は後半10分、ルーテル卒で昨期活躍した岡本を投入。場内からはひときわ温かい拍手。熊本のファンもよくわかっています。しかし岡本も、試合の流れは変えられず。1年後輩のロアッソGK吉田を引っ張り出して交錯するプレーこそありましたが・・・。
その吉田は、先発出場でしたが全く危なげなく。前半、ダヴィのシュートがポストの跳ね返り、それに詰めた決定的なシュートを足一本でファインセーブという見せ場も作りました。このルーキー、先輩達から怒鳴られながらも、憎めない、なにかしでかしてくれそうなキャラクター。今年ブレイクするかも知れませんね。

ロスタイムに札幌が追加点を上げ、この最後のPSM、結果的に負けはしましたが、それこそ”結果”ではなかったかと。最後まで諦めない姿がJ1昇格をものにした札幌らしくはありました、が、それ以上に、ロアッソの”仕上がり”と”今期のサッカー”が確認できたPSMでした。「1週間前にしては全体としてかなり順調に来ている」(J’sゴール)と池谷監督が言うとおり、指揮官もまずまずの様子。

はっきり言って、これまでのサッカーとは全然違うものを目指しています。これまでが「負けられない試合運び」だったといえるとすると、今期は全くJ2仕様。チャレンジング・サッカーなのは間違いないでしょうが、このカテゴリーに通用しないのでは?という不安は完全に払拭されました。否、他のチームとも決してひけはとりませんよ。今日のような動きを、モチベーションを90分続けること。1シーズン絶やさないこと。ひとつ願うとすれば、バックアッパーの誰が出ても、同じことができること・・・。

札幌の三浦監督が熊本について聞かれていわく「J経験者も多く、要所に中心プレーヤーがいるので、安定した戦いが期待できるのではないかと思います」というのは決してホームチームに対するリップサービスではないでしょう。

何はともあれ今週土曜日はいよいよ開幕。はやる気持ちを抑えて待つしかない。
池谷監督が言う「財産を残すための1年」。それは逆に言えば、”失うものはなにもない”ということ。われわれの初めてのシーズンがもうそこまで来ています。