8月25日(月) 2008 J2リーグ戦 第32節
熊本 2 - 2 C大阪 (19:03/熊本/4,364人)
得点者:14' 木島良輔(熊本)、52' 乾貴士(C大阪)、54' 香川真司(C大阪)、64' 高橋泰(熊本)


先週、長年行きつけの床屋のイサムちゃんが「今度のC大阪戦行かれますか?チケットありますよ」と言います。彼によれば県内の理美容組合のお店、スタッフに招待券が贈られたとのこと。こちらはもちろん「年間チケット」の身なので丁重にお断りしましたが、月曜が休みの業界、日ごろは観戦に行けないのでとの計らいなのでしょうが、面白い試みだと思いました。他にも業界によって平日が休日のところがありますしね。
それが奏功したのかは知りませんが、変則開催の今節、夏休みとはいえ平日の夜に4000人以上の来場者は、正直すごいなと感動しました。

さて、第3クールに入っての第2戦目の相手は、これまで1勝1敗のC大阪戦。初戦はアウェーで惜敗。第2戦はホームで歓喜の逆転勝利でしたね。ここにきて大阪はやっと怪我から主力が復帰してきてメンバーも大幅に変わっているとか、前節の試合は観ていないのですが、戦前、池谷監督も「前からプレッシャーをかけに来ているし、過去2戦とは違った勢いがある」とスカウティングしていました。
誰に言わせてもC大阪にとっては「昇格のためにはひとつも落とせない第3クール」なのでしょうが、こちら側熊本の選手たちにとっても、来期を見据え「チーム内の生き残りを賭けた第3クール」と言えるのではないでしょうか。池谷監督兼GM。背負う責任も重く、これからの試合、選手が見せるパフォーマンスの判断にも厳しさが増してくるでしょう。選手も必死です。

C大阪 (先発フォーメーション)
33カイオ 15小松
26香川31乾
19ジェルマーノ7アレー
34平島13柳沢
14江添5前田
 1相澤 
開始早々、大阪に決定機を作られます。左サイド香川からのセンタリングがポストに当たってPA内のカイオに。カイオのシュートはDFに当たってなんとかクリア。その後も、大阪が怒涛の攻め。やはり前2戦とは勢いが違っていました。
ところが熊本も前回対戦とは大きく“戦術”を変えています。中盤の底に喜名を配した今日の4-1-4-1のシステムは、そんな大阪の攻撃に臆することなくサイドを起点にしながら前へ前へと進んでいきます。

14分、右サイド奥で中山が粘って香川と対峙しましたが奪われる。しかし、香川の自陣PA内でのパスを奪ったのは右に流れていた木島。これを切り返して左足でゴール左隅にねじ込みました。先制は対前回対戦で2得点の、またしてもこの男。
戦前の熊日の予想フォーメーションには、今回もこの男の名前はありませんでした。足に古傷を抱える木島。恐らく直前の練習まで別メニューなのでしょう。本来、選手のなかからベストの状態の人間を選ぶのが先発のセオリーだと思いますが、監督の“賭け”に今回も結果で応えた木島。何かを“持っている”。そんな感じがします。
北京帰りの香川。一瞬のプレーに軽さ、甘さが出た痛恨のミス。

しかし、そこは大阪、ちょっと驚いた感はあったものの焦りの気配はありませんでした。なにしろジェルマーノ、アレーの両ボランチががっちり中盤を支配し、香川、乾の若きタレント(才能)がサイドを突破して、幾度も好機を演出します。本当に幾度も。ところが幸いなことに最後のフィニッシュを決めきれない。まるで前節の福岡のように…。試合後レヴィークルピ監督をして「今日足りなかったのは技術的な部分、つまりフィニッシュの精度」と言わしめました。ただ一方で、MF山本は「やらせている感じでいけた」とも表現していますから、ある程度シュートコースをコントロールして撃たせていたといえるのかも知れません。結果には必ず原因があるわけですから。

ただし、このままでは終わらないだろうという後半の予兆は確かにありました。

後半開始前、熊本の選手が出てくるはるか以前にピッチに戻り円陣を組んでいた大阪の選手たち。「命を賭けて戦え」。ハーフタイムでクルピ監督はそう選手たちに檄を飛ばしたそうです。
加速するパス回しに、熊本が翻弄されます。後半開始から10分あまりで逆転。いずれも香川、乾が絡んだパス交換からでした。華麗なワンツーで、熊本の最終ラインを切り裂きます。これぞC大阪の本領というべきサッカー…。

熊本としては、一歩も足が出ないという感じ。全員がボールウォッチャーになってしまうような。おそらく、こんな縦のパスの速さ、縦の走り込みで目の前を切り裂くチームはこれまでのカテゴリーを通じて対戦したことはなかったでしょう。個々のプレーのスピードもそうですが、リスタート、トラップ、そして判断。すべてが速い。ゲームメークのテンポ自体が恐ろしく速い。

思うに、前半から熊本の最終ラインは市村が前目に位置し、チャ・ジホは残り目でした。おそらくは大阪左サイドの香川封じの狙いがあったのかも知れません。ボランチ陣もやや左サイドのケアが優先するような位置取り。いくら運動量を誇るチャにとっても、そのカバーエリアは縦にも横にも広すぎた感があります。

混乱する守備。その後も訪れるピンチ、いや自らのミスで招くリスクに、スタンドのフラストレーションの度合いは高まります。それを鎮めたのはやはりエース高橋でした。
左サイドで得たFK。山本のキックは大阪GK相澤の手をかすめ、ファーサイドの高橋の頭にどんぴしゃり。GKの手にも及ぶような高い打点。得点ランキング一位広島の佐藤に並ぶ会心の一撃でした。

C大阪の勢いに冷水を浴びせるような同点弾。淡々とセンターエリアに戻る高橋を見つめる敵選手の目。その誰しもが、「何なんだ。この男は…」と呟いているようで。われわれにとっては心地よい一瞬。

そこからはベンチワークが忙しくなります。大阪はカイオに代えて古橋。熊本は、限界に達した木島を諦め宮崎を左サイドに入れて4-4-2に。乾と香川を封じ込める戦術。バタついていたゲーム運びがやや落ち着きを取り戻します。34分には中山を町田に代えて4-2-3-1に。トップの高橋をひとり敵陣に残して中盤を厚くしたわけですが、チャンスと見れば右から長い距離を町田に走らせることもイメージされていたのでしょう。残念ながら、最後までそのチャンスは訪れませんでしたが…。

3試合連続でのドロー。いずれもJ1経験チームに対して。この結果を良しとするのかどうかは今や評価が分かれるところです。

対C大阪に関して総括すれば、第1戦は体制を整え始めた時期に実力不足で惜敗し、第2戦は動きの悪い敵を叩く事ができてのこの第3戦。メンバーも入れ替わり、モチベーションも高く、トップコンディションに近い相手にようやく引き分けたというところでしょうか。

前節、湘南にしてやられた同点劇を福岡が再現したと書きましたが、今度はそのドラマを熊本が演じました。しかし反面、福岡のサポーターもC大阪も、自チームのふがいなさに「熊本だからドローで済んだが…」と思っているのも事実です。
上位チームにいい試合をしているという満足感と、一方で「勝ちきれない」という悔しさで、今は複雑な心境です。つい3ヶ月前なら、引き分けは勝ちに等しいと、文句なく喜んでいたところですが。まあ、それはそれで、第3クールに至ってチームの成長とともに、われわれにもごく自然な“欲”が出てきたと言うことでしょう。
それはまるで、ようやく古巣との対戦を迎えることができた福王が、おそらくこの試合で自身の“因縁”を断ち切れたであろうことにも似て。
ロアッソ熊本が、単なる1年生のチャレンジャーから脱皮していく最中にある。その今に立ち会っているということの証なのかも知れません。

さて、次節は山本、市村が累積で欠場ですか?否、また新しい伏兵の登場が楽しみです。
8月16日(土) 2008 J2リーグ戦 第31節
福岡 2 - 2 熊本 (19:03/レベスタ/9,076人)
得点者:8' 布部陽功(福岡)、83' 高橋泰(熊本)、85' 高橋泰(熊本)、86' 田中佑昌(福岡)


「勝点1を拾って負けなくて良かったという見方もできるし、逆に考えれば2を失ったという見方もできる」(J’sゴール)。試合後の高橋のコメントが全てを言い尽くしていました。
両チームにとって2点目の“重さ”が身にしみた試合と言えるのかも知れません。

九州地方を襲った豪雨で交通機関が麻痺したなかでレベスタにたどり着いた大勢の熊本サポーター。第3クールのスタートは、いきなり九州ダービー福岡との最終戦となりました。
これまで互いがアウェーで勝利し1勝1敗。この試合が決着戦とも言えました。

福岡 (先発フォーメーション)
20ハーフナーマイク 9黒部
8タレイ7久藤
18鈴木惇6布部
17中島3山形
2宮本13柳楽
 1神山 
水前寺での前回対戦時は、苦しんでいる福岡に対し自らのミスから勝ち点を献上したような試合だった熊本ですが、あれから福岡は監督交代もあり布陣も変わってきている様子。篠田新監督に引き継がれたあと4試合負けなしと上昇気流にあるようです。
例えば前節横浜の都並監督など、戦前のコメントから察するにわれわれ熊本をスカウティングしていないのが見え見えだったんですが、この新進の監督は、前節が休みだったこともあってか熊本を充分に研究していたようです。

4-1-4-1の熊本の布陣は前節と全く同じメンバー。今節も序盤の入り方は悪くなかったですね。セカンドボールが拾えて、波状攻撃を仕掛けました。
しかし、対策を練っていたはずのマイクと黒部の高さにナイーブになるうちに、徐々に押し込まれることに。左サイドから回されタレイが溜めて、中央に上がってきた布部にミドルで撃たれました。ちょうど前節、横浜・山田に決められたような嫌な角度。

5月の対戦では、先制した福岡がその後慢心したかのように足が止ったのですが、今回は全く違いました。二週間のお盆休みの効果なのか、ここ二試合の対戦相手、徳島、横浜より明らかにコンディションがいい。目を見張るような早くて強いプレス。そして奪ったあとのサイドへの展開。それもうちの両サイドのかなり薄いところを使っていく。ロングボールの対処では宮崎が最終ラインに吸収され、山本と吉井との間の距離が空く、中山と木島が前を向けない。パスが読まれる、狙われる、奪われる。ミスがミスを呼ぶ。完全な悪循環…。
「中盤でうちがやりたかったことをやられた」(池谷監督)という展開になりました。
ところがその福岡。撃てども撃てども2点目が“遠い”。このことが試合終盤のあのドラマを生み出したわけです。あれだけのチャンス、どれか一本が決められていればゲームは完全に福岡のものになっていた。もちろんラッキーだけで凌げたわけではありませんが・・・

後半、宮崎に代えて喜名を投入。この喜名の落ち着いた守備と、「ロングボールを入れていこう」というハーフタイムの指示で、ようやく熊本も前を向き始め、DFラインも上げられるようになってきました。

28分には右CKからファーサイドの高橋がゴール。しかし、これは中央で潰れた中山のファールで取り消しに。
38分には柳楽が高橋を力ずくで倒しイエロー。敵陣中央のいい位置からFK。もちろんキッカーは高橋。福岡の選手もサポーターも先の対戦で、彼の無回転ロングシュートが脳裏を横切ったはず。当然、熊本側も全員…。
高橋のキックは福岡の壁の左側をよぎると、GKの目の前で“落ちて”ワンバンドでゴール左隅に突き刺さりました。期待を裏切らないエースの“仕事”。ゴール裏の歓喜はいかばかりか。残念ながらわれわれはまたしてもスカパー観戦。「九州ダービー男!高橋!」とアナウンサーが興奮して叫んでいます。

さらに2分後、今度は市村からのロングボールの処理を、前掛かりになった福岡のDFが誤り、高橋の足元へ。GKもDFもかわして落ち着いて追加点。広島の佐藤に次いでリーグ2位となる15得点目。一気に形勢逆転。
残り10分もない時間帯での勝ち越し点。誰もが勝利を手にしたと思いました。

しかしドラマはこれで終わりませんでした。「勝たせてあげられなかった」と池谷監督が反省するとおり、ベンチワークのミス。キックオフのリスタート時に“バタバタと”町田を交代で入れてしまい、左サイドの守備が整わず。田中へのチェックが遅れるところをミドルシュート。わずか1分後に同点に追いつかれてしまいました。選手も含めて、ベンチすらまだまだ未熟な「逃げ切り策」を露呈しました。
思えば交代で入って早々の田中に撃たれた位置、角度といい、全く一緒のところでした。

新九州ダービー。福岡との戦いは1勝1敗1分に終わり、“決着”は持ち越されました。試合後、倒れ込む熊本の選手たちたちからは「勝ちきれなかった」ことへの悔しさがにじみ出ていました。手からこぼれ落ちた勝ち点2。
福岡もまた、前節湘南に逆転から同点に持ち込まれた2-2の悔しい戦いを、今度は同じように自らが演じてみせました。最後に諦めない姿勢で手にした勝ち点1。
ただ、これまでだったら修正のないままに残念な結果に終わっていた感のする試合の流れ。それが今回のように90分も終盤になって怒濤のように試合が動く。見方によっては互いのミスだけが目立つ、ある意味凡戦と言われてもしょうがないのかも知れませんが、ずっとチームを見続けているわれわれにとっては、実に面白く、そして遙かに進歩した感じがするのが正直な感想です。

まだまだ先輩・福岡からライバルと呼ばれる立場にはありませんが、エース高橋が気を吐き、九州ダービーのこのカード、いい“因縁”が作れたのではないでしょうか。順位に関係なく“燃える”のがダービー。今節の終盤のようにお互いがボールを持つたびに大歓声がスタジアムに巻き起こる。そんな特別なゲームの雰囲気ができてくればと思います。

そして願わくば、スカパーのアナが言うように、これからの第3クール、熊本が“台風の目”になりますように。「あなどれない相手」。鳥栖や山形がそうだったように、そう思われるところから強くなっていくような気がします。

池谷監督のGM兼任の人事が発表されました。

意味合いとしては岡社長のコメント「池谷監督にはこれまでもGM的な仕事をしてもらってきたが、正式に位置づけることで動きやすくした」(熊日朝刊)の通り「きちんと位置づけた」ということだろうと思います。

感想としては、ごく自然な人事ということでしょうか。他に誰かを連れてくることのリスク(能力面、合う合わない等…)や、今さらですが財政面の制約など、他の選択肢は現段階では現実的とは思えません。

そしてもうひとつ。これが、最終型ということではないだろうということです。以前、監督解任論が喧しい時期のエントリーで、われわれは「サッカーを知るもの」「監督を評価できるGMの役割」が不在の状態で監督交代を軽々に論じるべきではないこと。またAC熊本はいまだ「組織的に発展途上」にある、と書きました。

この状況は基本的に変わっていません。というより、まだまだ組織機能的には未分化の状態が続くということです。チームとして成熟し監督とGMが役割を分けて分担できるのはまだまだ先ということです。

しかし、このことは逆に発展途上の今のチームに大きな安定感をもたらしていることも見逃せないところです。最初のシーズンとは言え、なかなか結果が伴わない状態でも、われわれの救いは“チーム”が一貫していること。良い意味で変わらないこと。“安定”というのも人事の要諦ですね。

また、これもおぼろげながらの方向性ですが、松本育夫氏の鳥栖、植木繁晴氏の草津といった地方球団の発展モデルのパターンを踏襲する動きと見てもいいのかと。もちろん、かなり個性の強い指導者をベースにしたこの2チームとは違った熊本モデル。これからどう変化していくのか興味深いところです。

最初に“ごく自然な人事”と書きました。われわれは、今回の人事の一番のポイントは、その内容より“なぜ今?”というところではないかと思っています。シーズン途中、第二クールを終えたばかりのこのタイミング。池谷監督は「J1昇格という次の目標に向けた体制をつくっていきたい」とコメントしています。まさに“次”。つまり第三クールにかけて、“来シーズン”に向けた取り組みが同時に動き出したということだろうと思います。

監督とGMの権限、チームとフロントを兼ねるような大きな権限。“集中しすぎる”ということも一方で懸念されます。当然ですが、そこに立つ人間の資質や覚悟が問われるところです。ある意味で“われわれの夢”をより一層池谷氏に託すわけです。しっかりと見守っていかねばと思います。


8月10日(日) 2008 J2リーグ戦 第30節
熊本 1 - 1 横浜FC (18:03/熊本/5,274人)
得点者:3' 高橋泰(熊本)、70' 山田卓也(横浜FC)


前回対戦が大敗だったせいもありますが、今節熊本は明らかに“守備”をテーマに臨んでいたように思えます。早い時間に先制点を奪えたことで、今回のそのテーマを鮮明にしながら確認していくような試合運びができました。同点弾は残念でしたが、そのなかでも引いて守りを固めるではなく、奪いどころで奪い攻撃を組みたてる。90分間、逃げずに戦うという感じの実に面白い(そして結果的にはちょっと惜しい)サッカーを見せてくれました。

横浜の前線は、前回対戦でハットトリックを奪われたアンデルソン。それにここ3試合で5ゴールを決めている池元。この池元、九州リーグ時代に北九州の選手として対戦したこともありますが、その後、柏を経て横浜FC。“ひとり昇格”の代表格ですが、日本人ばなれした思い切りのいいダイレクトボレーなど、アンデルソン以上に警戒すべき選手でした。

横浜FC (先発フォーメーション)
20池元 9アンデルソン
17三浦淳32山田
23八角24根占
6太田8中田
7吉本5エルゼウ
 1小山 
さて、試合開始前の写真撮影が終わって選手がピッチに散った直後、場内からどよめきが。見れば、チャ・ジホがひとり、ユ二フォームの胸のエンブレムをこぶしで叩きながら、ゴール裏からバックスタンド前へとトラックを走っている。聞き取ることはできませんでしたが、きっと「あの屈辱を忘れるな」と叫びながらスタンドを鼓舞して回っているようで。この熱い想いにチームも、ファンも応えないわけにはいきません。カズ効果もあったのかも知れませんが、この日は久々5000人の入場者。このチャのパフォーマンス。否が応でも“赤い魂”をヒートアップさせました。この男には教えられることが多い。

開始早々、右サイド奥で中山が粘って繋いだボールを山本がセンタリング。ファーに構えた高橋は何と全くのフリー。狙いすましたヘッドは、GK小山の手をすり抜けゴールに転がります。わずか3分での先制。まだ横浜が目を覚ましていない時間帯でした。

横浜もすぐに押し込んできましたが、熊本はまさしく先制したチームの試合運び。無用なリスクを避けるようにバランスを保ち、しかも90分を考慮した運動量に徹していたように感じました。
アンデルソンは福王がしっかりとマークし、市村やチャは横浜のサイドアタックの芽を何度も潰す。そして今日のポイントは中山と木島。この突破力のある二人がかなり下がり目の両サイドに位置し「サイドは渡さない」そんな感じで、サイドバック、ボランチの一枚と一緒になって両サイドを支配し続けました。逆に彼等の前方には広大なスペースが。相手にとって木島、中山と対峙しながらの、この自らの後ろにあるスペースは大いに脅威だったに違いない。事実、隙あらば突破を図ります。
サイドに行き場をなくし、中を突いてくるしかない横浜のパスは、山本、吉井、宮崎のトライアングルが奪う。そして高橋にくさびを入れる。サイドを走らせる。
決してリトリートしているわけでなく、アタッキングゾーンが明確で、ファーストディフェンダーがきっちり当たっていくと、グループで奪い、すばやく攻撃に転じる。

池元がひとり気を吐きますが、単発的に撃ってくれるので助かります。
一度だけ危険な匂いがしたのは前半29分頃、あれよあれよと持ち込まれると池元が右サイドからアーリークロス。根占のヘッドは右に反れて事なきを得ましたが、一瞬の集中力が途切れた瞬間でした。

後半横浜は、三浦淳をボランチに、左に滝沢を入れて打開を図りますが、奏功しない。
後半17分、キング・カズが満を持して登場すると、熊本のファンからは盛大な拍手とブーイング。5000人のファンも、この試合を堪能しています。
さすがにカズが前線で張って起点になることによって、少し押され始めた熊本。
失点の場面は、ゴール前の混戦でセーブしようとして飛び出した太がファンブル。再度押さえようとしましたが、ボールはPAの外に。これが山田に渡りミドルを決められました。
責められないプレーでしょう。難を言えば太に任せた後、皆がゴール前で棒立ちでした。

しかし熊本もすぐに反撃。木島からのグランダーのクロスに高橋がシュート。GKがはじいたところを中山が押し込みますが、これはオフサイドの判定。総立ちになったスタンドのファンは、ため息とともに座りなおしました。

横浜は早めに交代のカードを切ってきます。これまでの熊本のベンチだったら、後半15分頃から動き始めるはずです。今日、久々にベンチ入りしている俊足の町田を、いつ投入するのかと思っていましたが、なかなかその機は訪れません。ミスから失点したものの、熊本の動きは決して悪くはなく、この“流れ”を切りたくない、このバランスを壊したくないと感じていたのでしょう。やや涼しい気候も手伝ってか、吉井、宮崎、山本は半端でない運動量。また、終始コンパクトに保たれた陣形は崩れず、縦に縦に、あるいはサイドに。相変わらずフィールドを大きく使ってサッカーをしているのはわれわれの方でした。

ようやく町田が入ったのは40分も過ぎた頃。もちろん、この時間帯での1点が勝負を決めるという熊本にとっての積極策でしたが、負けられない横浜が猛烈に押し込んでくる最後の時間帯で、“攻撃こそ一番の防御”とばかり押し返すカードとも言えました。ベンチワークの妙。

結果的にドローで終わりましたが、チームの成長を感じさせるいい内容の試合でした。
早々と先制したものの、その後の時間を“引いて守る”だけで勝ち切れるわけがないことは学習済みでした。90分間の時間の使い方、ハードワークをベースにしながらも、持たせるところと持つところ、緩急のある試合運び、呼吸が合ってきたボール回しと動き出し、止まらない“足”。まさしくこれまでの“経験値”が、監督の言う“質と量”を高めてきていると実感できる第2クール最終戦でした。

残念ながらサッカーの神様はそうそうたやすくこのリーグでの“連勝”を経験させてくれませんでしたが、あの横浜に「嫌な相手」という印象を与えることができたのは間違いないでしょう。それは前回三ツ沢(ニッパツ)球技場の入場者数4000人を上回る、KK5000人の後押しがあったからこそとも思います。
データを見ればこれまでの6勝中5つはホームで奪っています。ホームだけなら5勝7敗2分。もう少しで五分という戦いをしています。
「熊本はホームで強い」、「熊本のホームでは戦いづらい」。そう感じさせる力をもしホームのファンが与えられるのだとしたら、それこそサポーター冥利に尽きるというものです。

8月3日(日) 2008 J2リーグ戦 第29節
熊本 3 - 0 徳島 (18:03/鴨池/2,026人)
得点者:62' 宮崎大志郎(熊本)、81' 高橋泰(熊本)、87' 高橋泰(熊本)


今期唯一県外で行われるホームゲーム。鴨池競技場に差す真夏の西日も十分に暑そうでした。
熊本がJに昇格して、Jのない鹿児島を準ホームタウンに、などというマーケティング的な思惑があるわけでなく、単にこの日、KKも水前寺も取れなかったということなのでしょう。しかし、夏休みの日曜日とはいえ車で片道約200キロの行程は、われわれロートルにとっては遠すぎる“ホーム”でした。
年に数回、ビッグアイの芝の養生の関係で大分がKKまでやってきていましたが、こんな思いを吹き飛ばし、やまなみハイウェーを乗り越えて、あんなに大挙してやってきていたのだと、つくづく思い知らされました。(ちなみに大分は今期9月23日、KKではなく鴨池で試合をするようです。)

そんな鴨池での戦いは、“裏天王山”とも揶揄される15位徳島との対戦。徳島はここまで3連敗中。前回対戦は、熊本が自滅に近いかたちでカウンター2発に沈んだという試合でしたが、その2点に絡んだドゥンビアも今はなく、緊急補強したアンドレジーニョ、ソウザというブラジル人二人を早速前節から先発で使っている。戦前の池谷監督いわく「第1クールとは全く違うチーム」だろうと予想させました。
システムは4-1-4-1。中盤の底にはダ・シルバを置き、そこに京都から獲得した倉貫、昨季栃木にいた米田が支えます。ちょうど1年前、われわれが絶賛した水前寺での栃木戦でボランチをつとめていた米田。あれからまだ1年なのですが、もう遥か昔のような錯覚にとらわれます。

徳島 (先発フォーメーション)
 7ソウザ 
10アンドレジーニョ14石田
35倉貫8米田
 5ダ・シルバ 
30藤田17麦田
6西河33松本
 1島津 
熊本としても正念場の節でした。CBの河端が前節の負傷で6週間の加療。矢野は2回目の累積警告で2試合の出場停止。大敗、惨敗とも言われた前節・湘南戦へのエントリーで、われわれは、敗戦の原因に対して“次のゲーム、どんな形でまた新たな答えが示されるのか”それが“楽しみ”でもある、と書きました。
そして今日のゲーム、まず、スタメンでの答えは、福王であったし、怪我から復帰したばかりのチャ・ジホでした。またベンチには鈴木、喜名、山内、中山。そして、システムは4-1-4-1のまま。メンバーによってシステムを変えるのではなく、ここ数試合やろうとしてきたサッカーを全員でやる。そういった監督の固い意志を感じさせました。

暑さのせいもあったのでしょうか、前半は両者に硬さというより“緩さ”を感じさせました。五分五分というより少しだけ出足に勝る徳島にチャンスがある展開。しかし、アンドレジーニョや石田には単発的な侵入を許しますが、ソウザを含めて最後のところでがっちり守っている。アンドレジーニョやソウザのプレーが連携に欠けていることも幸いでしたが、上村のポジション取りも光りました。

試合後、両監督がコメントした「どちらに転んでもおかしくない展開」。それを熊本が引き寄せたのは、何と言っても諦めず粘り強くハードワークし続けたこと。前半の、やや徳島の流れのなか、うまく繋がらない攻撃にも、取れないセカンドボールにも焦らず、バランスを崩さず、耐えて、走ったこと。そしてもうひとつ、スカパー解説者もちょっと触れていましたが、徳島と違って熊本には“アタッカー”が存在したこと。みずから“仕掛ける”意識の高いプレーヤーとでも言うのでしょうか・・・。そして、攻撃に転じたときの速さと、後ろからの追い越しが出来てきた。

後半、徳島が押し込んできたとみるや、疲れのみえる小森田に変えて中山を入れます。それも4-1-4-1のまま。これが功を奏した。
右サイドで中山がアグレッシブな守備から奪うと、吉井が左サイドの木島につなぎ、ドリブルで突っ込んだ木島が勝負と見せかけてより深く侵入。エンドラインぎりぎりからアウトに掛けて出したセンタリングに中央で待っていたのは宮崎でした。ファーに待ち構えていた高橋を含めるとなんと5人の連動性。

負けられない徳島が更に前掛かりになると、熊本の縦パスが面白いように通るようになりました。今度は左SBのチャが上がると、PA内で倒されてPK。
「私が出たら、あなたは点をとる」とチャが予言したとおり、このPKを12試合ゴールのなかった高橋が落ち着いて決めてくれました。徳島を沈める重要な追加点でした。

最後の見せ場は右サイドから。宮崎が市村とのワンツーでみごとにDFの裏をとると、サイドをえぐってセンタリング。DFに当たり、高橋がマイナスになりながらも強引にシュート。GKがはじくもゴールに吸い込まれました。いいときには、こんな無理なゴールも決まる。ニアでは吉井もつぶれ役を務めていましたし、中山も詰めていました。

同じシステム同士の戦い。倉貫と米田とダ・シルバの3角形には、山本、吉井、宮崎の3角形が対抗し、さらに吉井はアンドレジーニョのケアも怠らなかった。
前節平塚のピッチに立ったときよりも、高校時代の思い出が詰まったこの鴨池に凱旋したことのほうが、彼にとっては意味深いものではなかったのでしょうか。新しく出来たJリーグチームの“主力選手”として・・・。

太もチーム二度目の完封勝利で自らのバースデーを飾ったし、駒沢大同期のDF鈴木もJデビューを果たしました。終了の笛を聞いて、真っ先に太と鈴木が抱き合っているシーンは印象的でしたね。また、宮崎に至っては初ゴールまで。今節、役者が多すぎて、とても書ききれません。

やはり今節は、今やろうとしているサッカーを“やり通そうとする姿勢”に対し、みごとに結果が伴ったというべきなのでしょう。
それはもちろん決して層の厚くないチーム事情のなかで、重要なメンバーが欠けるという事態にも安易に妥協するようなシステム変更をしなかったことに如実に現れているわけで。
しかし、それはまたシステムに選手をガチガチに当てはめるということとは少し違っていて・・・。

とかく日本人はシステム論が好きと言われます。その風潮を諌めて「システムがサッカーをするわけではない」と言ったのはオシムだったでしょうか。
あくまでも“どんなサッカーをするのか”、そのとき相手のいいところを潰して、自分たちのやりたいサッカーを体現するための戦略的で総合的なもの、つまり、システムって言うのは選手個々の役割や位置関係の他に、動き方や連動性についてのそのゲームごとの監督のプランまで含めた“コンセプト”、いわばチームの“戦い方”そのものと言えるのかもしれません。

最後まで4-1-4-1(非常に流動的な4-3-3)にこだわった今節の戦い方。そういう高いところを目指す姿勢というか、池谷監督が1年目の今期、目標として掲げた「できる事、できない事を見極めて、2年後、3年後に残る財産を作るシーズンにしたい」と位置づけたところとの一貫性が垣間見えて、完封大勝利と同時にとてもうれしいのです。
そして、その“やり通そうとしている自分たちのサッカー”で、前回大敗したあの“強い横浜”とまた一週間後に戦えるのがとても楽しみです。

追記
いつも温かい激励のコメントをたくさんいただきありがとうございます。非表示にしているため、ひとつひとつにお礼のご返事ができませんが、きちんと拝読しております。
そのなかで表記の間違いをご指摘いただきましたので、こっそり訂正いたしました。単に英語に弱かっただけです(笑)。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。