先週末、またイサムちゃんの店に散髪に行ってきました。旧サカくま以来、何度かこのブログにも登場している“サッカー好きの大将”営む美容室。最近では8月のセレッソ戦、理美容組合から配布された招待券を勧めてくれたイサムちゃん。長い付き合いです。

椅子に座るなり、「いやあ、名前も出とらんのに何で判るとですかねえ」と店主。「え、何の話?」と尋ねると、説明してくれました。先週末の熊日の「ハイ!こちら編集局」にロアッソの選手の髪型のことで電話したら、早速、掲載されて、しかも“××町・美容師”ということだけで、友人・知人から「あんただろ?」と言われてびっくりしていると。

そう言えばありましたね。趣旨は、以前、同コーナーに掲載された「選手たちの髪型が派手で違和感がある」という意見に対する反論、というより自分はこんな見方をするという感想でした。曰く、「プロとして見せることも大切な仕事。今は個性的でプロらしくなった。それほど奇抜な髪型はいない。」といったこと。ここで髪型論議をするつもりは毛頭ありません。ただし、××町・美容師ということで、確かに私もチラッと彼のことを思い浮かべていたのも事実です。しかし、まさか本当に本人だったとは…。

美容師としての感覚からか、サッカー好きが成せるわざか、すぐに反論を電話する彼も彼で微笑ましいのですが、まあ、そういう賛否両論で新聞紙上までが賑わうというのも、なかなかいいもんだなあと。サッカー好きが縁を結ぶのかどうか知りませんが、この店にも以前、選手がひとり、ふたり、来てくれたこともあるのだそうです。
それにしてもえらく身近なところにまでこのホームチームが広がってきたんだなと。ちょっと嬉しく思いました。

そういえばここ最近、この拙ブログへのアクセス数の増加にも驚かされています。(たくさんの拍手とコメントにお礼申し上げます。)それはもちろんチーム自身の好調・成長にただただ比例しているのだと承知していますが、丁度今季の始め、J参入を境にマスコミへの露出環境が大きく変わったのと同じように、ここに来てまた徐々に徐々に、まるで乾いた地面に水が染み広がっていくように、このチームの認知度が、県内はもちろん県外にも広がっているような感触があります。

日々の労働に疲れても、フィッシュ&チップスとホームチームの勝敗を肴に、ギネスビールを傾けて一喜一憂するアイリッシュ・ファンのように、行きつけの近所の床屋で、あるいは白岳の置いてある居酒屋で、われわれもわがホームチームを話題にすることができるようになりました。
ホームチームがある喜び。小市民的ではあっても、かけがえないこの喜びが、また来週もこの足をスタジアムに運ばせるのだと思います。

9月28日(日) 2008 J2リーグ戦 第38節
草津 0 - 0 熊本 (13:04/正田スタ/4,423人)


鳥栖、横浜と初の2連勝を飾り、いよいよ3連勝を目指す熊本が、アウェー正田醤油スタジアムで8位草津と戦いました。

ここ2連戦、ダイヤモンド型に配した中盤の運動量によって勝機を得たのは間違いないところなのですが、われわれはもうひとつ、リーグ序盤戦と違って、ここのところの戦い、守備に至るバランス意識が非常に良くなっているのもその成果ではないかと思っていました。「まず守備から入る」というのは、よく言われる言葉なのですが、要はどこがブロッキングゾーンで、どこがアタッキングゾーンなのかという、チーム全体の意思統一が成されているかというということ。

連勝の後を受け意気上がるこの一戦でしたが、相手・草津はミッドウィークの前節が休養、そしてこのゲームから“下位チームとの4連戦”ととらえ、昇格への可能性に向けて(というより昇格戦線に食らいつくため)“負けられない”と意気込む。この一戦のゲームプランは、誰がみても序盤から猛攻を仕掛けてくるであろう草津の勢いをどう熊本が凌ぎきり、自分たちのサッカーに持っていけるのか、にありました。

草津 (先発フォーメーション)
9高田 19後藤
19島田14熊林
17秋葉30松下
3尾本5崔
4田中15喜多
 1本田 
予想どおり開始早々から速く、前がかりな草津。この時間帯でFW後藤に先制点を叩き込まれ、後手に回ったのが前回対戦でした。しかし、今の熊本、同じ轍は踏まない。この最初の時間帯、うまくその課題を凌いでいるように見えました。

ところがちょっとその時間帯も長すぎましたね。中盤の底の喜名が、少し前目すぎるのではないか、DFラインの前のスペースを自由にさせすぎなのではないかと危惧しました。草津の両サイド、島田、熊林がある程度自由に動きまわるのは、まあしばらくは仕方ないとしても、ボランチの松下、秋葉のところで数的優位を作れない、その壁を破れないのが気になりました。

そして19分。この試合の残り70分間をある意味で決定づけてしまうプレーが起こります。猛攻に耐えていた熊本の最終ラインでしたが、一瞬の隙をついた草津FW高田を、福王が後ろから倒してレッドカード。厳しい判定でした。しかし、これもこの主審の“特徴”なのだろうと理解するほかありません。そしてこの後も、おそらくもっと不安定な笛があるのではないかと予想もできました。

当然ですが、この早い時間帯に一人少なくなったことで、この日のゲームプランは、修正を余儀なくされました。山本を下げて車を左SBに投入。また高橋をワントップ気味に。この日初めて先発出場を果たした小林陽介にとって、せっかくの舞台が意外な展開になってしまいます。

しかし試合後、池谷監督も選手たちの多くも言っているように、この状況が熊本の戦術をシンプルにし、チームを一丸にさせたのも間違いありません。これで、残り70分間どう戦うのか、迷うことなく守備の意識とブロックラインがハッキリし、少ないチャンスをカウンターに徹することになったのです。山本の交代は足の状態もあったのでしょうが、この時点でFW2枚は削らずそのままで、相手に対する脅威は残したまま(位置関係をやや変えることで)、“中盤”としての総運動量を期待し、引いて守りがちになる布陣を避け、“勝ち”に行く意識を失わなかったのではないかと。そしてさらに言えば、チームとして(小林陽介も後半投入の熊谷も)、本来のポジションより一列後ろでのプレーを日頃から練習していた、そのユーティリティがここで生きたのではと。
要するに、いわゆる緊急事態の“ドン引き”ではなく、守備意識の徹底にスムーズに移行できた。

草津にとっては、相手が一人少なくなる前まで、あれほど優位に進めていたのですから、もう“勝ったも同然”と思ったことでしょう。しかし“決まらない”“決められない”時間が続くことで、次第に“焦り”に変わっていく様子。それがさらに草津にとって“プレッシャー”に変化していく。ホームの大歓声のなか、一人少ない相手を打ち破れないまま時間だけが過ぎていく…。

後半途中、熊本は小林陽介に代えて木島を投入し、今度は高橋を2列目、木島をワントップにしてカウンター戦術をより明確にします。ここでもFW2枚は温存。その意図がさらに明確に皆に伝わる選手交代。ひとり少ないことも忘れそうな戦術的な采配。大いに期待されましたが、今日はもうひとつ木島にボールが納まりませんでした。それでも中盤の運動量が落ちなかったこともあり、前線の孤立感もなく、コンパクトな陣形を最後まで維持できたのはこの用兵も大きかったのではないかと。

対して草津は、FW後藤から都倉の一枚代え。この敵将・植木監督の采配はわれわれにとって幸いでしたね。もっと前線に人を増やしてこられると、さすがにこれ以上は耐えられなかったかも知れない、そんな微妙なバランスの時間帯でした。
これも熊本が2列目とはいえFWタイプの選手を残し、常に隙を狙っていることによる躊躇もあったのかと。「寺田をもっと早く入れていたらよかったかも」という同監督の反省の弁と、「2列目が飛び出したり、追い越しが出てきたりすれば、やっかいだと思った」という池谷監督のコメント(いずれもJ‘sゴールから)が実に呼応しています。

ただ、さすがにこの川崎からレンタルされた高さのある都倉。熊本のDFは捕まえ切れませんが、最後の精度に助けられます。何度も潰すチャンスに、向こうのイライラだけが募っていくのが伝わってきます。

ロスタイムの草津。“幻のゴール”は、何度見てもまぎれもなくオフサイド。熊本も疲れた喜名に代えて入った熊谷の安定した、クレバーな守備もあり、また、最後の最後までチャンスも作り、勝ってもおかしくない“内容”でした。

全ては前半19分の主審の判定が、戦前のゲームプランを崩し、その後の両者の戦い方を決めました。熊本は数的不利を凌ぎきるという経験をして、“何があっても不思議でない”Jの戦いのなかで、また経験値を上げたといえるでしょう。これまでの熊本ならば、どこかで力尽きてしまったようなゲーム展開に、チーム全体の集中力が途切れることなく“戦い抜いた”。まさに財産に残る試合といえるのではないでしょうか。また、当初のゲームプランが崩れたあとの今日の戦いを見ていると、もしかして10人で戦うシミュレーションも準備されていたのではないかと。監督に聞いてみたいところです。

ただ、この日の草津を見るにつけ、逆にわれわれが突然あのような状況、あのようにポゼッションを“与えられた”とき、どうするのか。引いた相手をこじ開ける術を持っているのか。そういったことも、このリーグを戦ううえでこれから体得すべきことなのだと思わせました。

J2リーグ戦も終盤に入ったここ3試合。昇格争いに残りたい相手チームにとって、熊本から勝ち点3を得ることは当然の“計算”であり、それを3戦ことごとく覆していることは、Jリーグ1年目とはいえわれわれ自身の成長であり、存在感を示しているのだと思います。この日の引き分けを含めて“リーグ終盤3戦負け無し”という記録は誇っていいものだと思います。とにかく色々な経験値、財産を与えてくれたこの一戦。多くの人が、「勝ちに等しい引き分け」と評していることに異論はありません。

次節はホームKKに徳島を迎えます。前回対戦では勝ち、また現在は順位、勝点でも上回っており、われわれファンも勝点3を密かに計算しはじめています。しかし、今節、四国ダービーでは愛媛に5-0の大勝。この試合も“J”1年目のチャレンジャー精神を忘れたとたんに、足をすくわれ、勝機も失うのだと心得るべきでしょう。
ただただ、ホームスタジアムで声援あるのみです。

アウェー2万人の前での逆転勝ちに歓喜したベアスタ。そして中二日しかなかった今節KKではクラブ新記録となる1万5千人の動員と初連勝に、前節を上回る喜びと幸福感をかみ締めるように一週間を送っています。ついでといっては何ですが、前エントリーでは書ききれなかったことを雑感的に書いておきたいと思います。

強豪・横浜FC相手に押せ押せで前半を終えたハーフタイム。メインスタンドで懐かしい方に声を掛けられました。ひとりはNTT九州時代のチームスタッフの方。もうひとりは県協会・九州連盟の方。二人とも、ぎっしり詰まったスタンドを見渡して、「今日は負けられんねえ」と。そのときはもちろん、今日のこの大勢詰め掛けてくれた初観戦のファンの前で、絶対勝利を見せなければいけない。そういう意味だと理解して同意したのですが・・・。

終了のホイッスルを聞き、がっくりと肩を落とす横浜から駆けつけた三十人ほどの相手サポーターを眺めながら、あの時のシーンが突然、蘇ってきました。そう、以前も書いたことがある、当時JFLのアルエット熊本が敵地・三ツ沢で横浜FCに成すすべもなく敗れた2001年の天皇杯2回戦。0-5という大敗。シーズン終了直後の満身創痍のチーム状態。加えてゲーム中に骨折者まで。そして何より、熊本から駆けつけた十数人のアウェイゴール裏の面々。関東在住者や友情応援で来てくれた大宮サポを加えても、圧倒的な数の横浜サポのスカイブルーの塊。威圧されるような野太く、しかも港町の匂いを感じさせる洗練されたコール。格の違いを見せ付けられた・・・。

それが今、名前は変われども熊本の名を冠したチームが、同じ相手とこうして同じカテゴリーで戦い、とうとう黒星を与えることができた。それも、あの時とは全く逆のシチュエーションで。横浜の“サポーター”を圧倒するホーム熊本の“ファン”の数的優位をもって。

それはある人にとっては”ロッソ”発足からわずか4年目にして達成する動員数であり、ある人達にとっては、あれから7年にして、ということなのかも知れない。この勝利は、5月の大敗のリベンジであると同時に、いや、どちらかと言えばあの7年前のリベンジを意識した方もかなりおられたのではないかと。多くの人がこのチームにかかわってきたということが、また思い起こされました。


さて、1万5千人。この数字は今回の動員プロジェクトにおける一過性のものであるということに異論はありません。しかし、前節のベアスタの2万人動員(理屈抜きに快挙!です)と今回の熊本という同じ動員プロジェクトの間には、微妙な違いがあることもわれわれは感じとっていました。(くれぐれも誤解なきよう。先輩・鳥栖の取り組みを揶揄するわけでは決してありません。)

鳥栖のプロジェクトはある小学生が描いた「鳥栖スタジアムを満員にしたい」という夢からスタートしたと聞いています。それに大人たちが賛同して、行政を巻き込み、そしてスポンサーが賛同した。あの日のスタンドの多くのスペースはブリヂストン・シートで埋められました。ハーフタイムで話した中年夫婦は福岡から来たと言っていました。鳥栖のチームカラーが青だということもあまり良く知らなかったようで。妻がちょうど赤い服を着てきたので熊本側に座った。今日、鳥栖は負けそうだね。と。
ベアスタを一杯に埋めた鳥栖ファンでしたが、スタンドの片隅を割り当てられたわれわれにも、あまりアウェーの威圧感は感じられませんでした。もちろんサッカーの試合です、戦況がスタジアムの雰囲気を大きく左右することはいうまでもなく、後半から来る人もいれば、前半だけで帰る人もいて。

一方、横浜戦の当日の朝、知り合いの中年女性から電話をもらいました。今日、チケットを貰ったので初めてKKウィングに観に行くのだけれど、「どんな恰好をして行けばいいの?」「赤い服を着てないといけないの?」「何時ぐらいに着けばいいの?」と微笑ましいような質問の数々。

いえ、それぞれのファンのファッションの話をしているのではありません。

両プロジェクトとも、多くの招待券によって達成した数字であることは間違いないと思います。その招待券分が、クラブの収支のうえでどう精算される仕組みになっているのか、その詳しいところもわれわれにはわかりません。しかし、ここでの違いは、鳥栖がブリヂストンという大スポンサー、筑後川下流域の一大企業グループの賛同と組織的動員を中心に進んだものであっただろうということ。一方の熊本は、熊日を始めとした「サッカーフェスタ実行委員会」の幅広い呼びかけに、潜在的な“熊本”ファン層が呼応する形での動員だったろうということです。

あくまで想像の域を出ませんが、鳥栖の多くの席はスポンサーの社員やその関係者が中心だったのではないかと。一方、熊本は小中学生のクラブからの応募や、金婚夫婦への招待という形を中心に、動員がなされた。スタンドもうっすら赤く染まり、ゴール裏の応援コールに呼吸を合わせた拍手など(一般的なサッカースタジアムの盛り上がりとはちょっと違うリズムで)一体感が感じられた。“動員”“招待券”と言いながらも、結局は「来たい人」「応援したい人」が来た。一度は行ってみたいと思ってはいるが、試合日程が良くわからない、チケットがどこで売ってあるのかわからない、いまひとつ二の足を踏んでいた人たち。そういう人たちを“迎えに行った”ということではなかったかと。

Jリーグの多くのチームがそうであるように、スポンサードされた試合、あるいはそれによって大動員がなされること自体を否定しているわけではもちろんありません。今回の鳥栖の成功と、その陰にあったであろう多くの方のご努力には敬意を表したい。逆に言えば、熊本にはそういった地域を代表するような大企業がないということでもあります。だからただ単に今回はこういった手法の違いになったのだと。

このサッカーフェスタ、今年で二回目です。第一回の昨年はJFL終盤の時期、とにかくJ昇格へ向けてチームを後押ししよう、また昇格後を見据えて、新たなファン層(潜在層)を掘り起こそうと実施されました。熊日が裏方の中心となって「サッカーフェスタ実行委員会」なる枠組みをつくり、広報宣伝はもちろん、チーム、県協会、協賛企業、サポーターなどとも話し合いが行われながら、身の丈の動員策を尽くしてきました。募金によるビッグユニ制作などもここからのものですね。この枠組み、チーム以外の第三者が動員の音頭をとるということ、ひとり一人が関われるということで(県民運動の基本となる考え方ですが)、非常に面白い(実は大変なんでしょうが)手法と思います。

“くまもとサッカーフェスタ”。

もちろんわかりやすい“熊本型”のホームゲーム動員プロジェクトです。しかしわれわれはそれを超える広がりや可能性をこのネーミングに感じています。“サッカーのお祭り”ということですね。勝った負けただけではない。サッカー自体を楽しむ、サッカーのある人生を楽しむ。そんなサッカー文化みたいなものがこの熊本にできればいいなと思っています。Jリーグ百年構想と同じように、このフェスタが百回目までも続くようにと。

先の中年女性は試合後、興奮しながら、「よかった。また絶対行く」と言っていました。

チームはJ参画初年度となる2008年の目標のひとつに“日本で一番暖かいスタジアム作り”を掲げていますが、これも熊本オリジナルな運営として少しづつ定着してきているのを感じています。また、来春には日本協会が中学生のエリート選手育成のため、宇城市につくったJFAアカデミーも開校します。

熊本独自のサッカー文化、スポーツ文化。

えらくビッグワードですが、一ファンとしてこのサッカーフェスタがそのあたりへ広がっていくことを願って、今日は、今回ご努力いただいた関係者の方々と、観戦された全ての人に拍手を贈りたいと思います。
9月23日(火) 2008 J2リーグ戦 第37節
熊本 1 - 0 横浜FC (16:03/熊本/15,588人)
得点者:89' 吉井孝輔(熊本)


こんな劇的な幕切れを前にしては、われわれの拙い筆力では表現が及ばないのを予めお断りしておきます。それほどのドラマを観てしまいました。「だからサッカーは面白い!」。それがホームチームなら、なおさらのことです。チームとしての初連勝。吉井の初ゴール。吉田の初完封。小林陽介の初出場。そしてなにより15000人という、チーム初めての入場者数…。

この試合を前に、これまで連勝のチャンスをこの横浜FCに2度とも阻まれていることに気づかされました。それも初回対戦は、忘れもしない5月連休中の過酷な連戦のなかで、昇格後初めての大敗を喫しています。

われわれ熊本は、前節のアウェー鳥栖戦での勝利でようやくトンネルを抜け出し、そして通算7度目の連勝チャンスを、このある意味、苦手意識のある強豪・横浜と迎えることになりました。

「第2回くまもとサッカーフェスタ」と題して、1万人の動員が目されたこの大事な試合。KKまで向かう車中で初めて体験する“渋滞”に、イライラではなく、「これってロアッソの試合の渋滞だよね??」と嬉しい期待をしてしまいました。
ゲートをくぐると、目の前には信じられない光景が。いつもなら透けて見えるバックスタンドに印字された“KUMAMOTO”の文字が、多くのお客さんで埋まって、今日は全く認識できません。初めて見る光景。もちろんメインスタンドもぎっしり。そして、ホーム・ゴール裏も、中心こそ応援をリードするアルデラスが密集していますが、それなりに赤いサポーターで埋められています。

対する横浜FCのファンは、ゴール裏とメインにまばら状態。ここまで埋めなければ、敵サポーターをゴール裏に追い詰めることができないのも、KKの真実なのかも知れません。
そして、前節のアウェー鳥栖戦での勝利の余韻も覚めやらぬゴール裏のサポーターが、今日は一層結束感が増していたように感じます。

戦前、池谷監督は「大観衆のなかで楽しみながら、連勝のチャンスを掴め」と選手を鼓舞していました。対する都並監督は、連戦のなか、若い選手にチャンスを与えることを選んだようです。それは前節、鳥栖の岸野監督の心構え(コメント)にも通じるところですが、少々熊本を“舐めている”ところがあったのではないかと…。

横浜FC (先発フォーメーション)
20池元 19難波
13滝澤25須藤
24根占18小野
6大田22吉田
5エリゼウ3八田
 21岩丸 
試合は開始早々から熊本がペースを作ります。6分、高橋のシュートがポスト直撃。12分、吉井の大きなフィードから左サイド高橋がセンタリング。宮崎が落として山本がシュート。28分、吉井から市村。切り替えしてのセンタリングに高橋のヘッド。42分には左からのサイドチェンジに、市村がボレーでクロス。これを吉井が果敢なバイシクル・シュート。一方的に横浜のゴールを脅かします。

熊本の攻撃には厚みがあり、一方横浜は奪いどころがはっきりせず、自陣の低いところでボールを奪取しても、ゴールまで遠いために、難なく熊本の守備の網にかかってしまいます。累積でアンデルソンを欠く前線は、“因縁深い”難波と池元でしたが、いずれも孤立して、難波ならではの強引なプレーも、ファールやイエローを招く結果となりました。

スコアレスのまま前半を終了。そして問題の後半。横浜がどう修正してくるのか。試合はまさにここから始まる。と姿勢を正すように座りなおしました。

ここで熊本は先手を打ちます。後半開始から中山に代えて小林陽介を投入。これまで期待されながら、なかなか出番のなかった若きFWに、スタンドの拍手が湧き上がります。
この日のベンチは、GK小林の他は、MF河野、小森田、FW木島、そしてこの小林陽介という布陣。DFラインはスタメンにセンターもサイドも兼用できる選手が揃っているため、いざとなったら河野をSBで、というイメージなのか。そして、陽介をここで入れて、途中木島も入れてくるであろう。ベンチは、この大事なホームゲームを自ら早めに仕掛けて“勝ち”に行こうとしている意図がハッキリと読み取れました。

チームメイトもわかっていて、次々に陽介にボールを配給します。アグレッシブな陽介の動き。初めて七城で間近で見たときのように、その動きはゴムボールが弾むようにしなやかそのもの。59分、高橋のシュートに詰めますが、これはDFがクリア。さらにあと一歩というチャンスにも絡みましたが、やはり後半の入り方として、この陽介の運動量、前線からのチェック&チェイスが流れを作った意味は大きいのではないかと思います。

横浜も満を持して三浦淳を投入。それから前線には北京五輪韓国代表のチョ・ヨンチョル、高さのある御給と次々に“嫌な”選手を投入して、状況を打開しようと図ります。この試合もいよいよ正念場。

しかし今日の熊本は、この時間帯も凌ぎきる。運動量が全く落ちませんでした。確かにまだまだサイドからクロスを易々と上げさせることは否めない。しかし、ひとつはダイヤモンド型の中盤の流動性とバランスが機能して、アンカーの喜名も常に前を向いてプレーできた。また、河端と福王のセンターバックの連携がよくなって、最後のところで安心して任せられた。そしてスカパーの解説の池之上さんも「彼の真価が問われる日」と表現したこの試合で、まるで何か吹っ切れたような吉田の“思い切り”のいい“落ち着き”のあるプレーぶり。

後半、横浜が熊本の、あるいは吉田の弱点と見て取ったのか、右左から執拗に上げてきたクロスに対して、判断よく処理するばかりか、逆に、素早い正確なロング・フィードで敵を脅かした。それはまるで「ここで舐められてたまるか」というプロとしての意地のようなものを感じさせられました。鳥栖戦での涙のあとに一皮向けたのでしょうか、何かたくましさまでを感じてしまいます。GKに必要なのは、こういう経験なのでしょう。

強豪・横浜相手にゴールは割れないものの主導権を握り、何度も好機を演出した展開。残り時間も少なくなって、このままドローで終わるかと思わせた時間帯。ちょうど贔屓の料理屋に初めて友達を連れていったときのように、「どうかな?まあまあイケてるでしょ?」と、今日初めて観戦する熊本ファンにも遠慮ぎみには問えるかな。という感じがしていた終了間際。いえ、丁度ロスタイム3分の表示が第4の審判からなされたときでした。

最後のカードで入った木島。この“入ったら2度チャンスを作る”男が、まさに2度目のチャンスで右サイドに出たボールに追いついてクロスをあげる。これを、これまた途中交代の小森田がダイビングヘッドでファーサイドから折り返し、これを中央に詰めてきた吉井が体ごと押し込んだ。

そのときKKウイングに、熊本のホームゲームとしては初めて体験するものすごい歓声が。
15000人が一様に発する“歓喜の雄たけび”。もはやゴール裏でなくても、声が枯れている。うっすらと涙さえ浮かべている…。

終了のホイッスルの瞬間、抱き合う選手たち。いつまでも、その喜びを分かち合っている。
拍手は、いつまでも鳴り止まない…。

多くの先輩チームが数年かかったというJリーグでの“連勝”。実はまさか、わがチームがこんなに早く達成できるとは思っていなかったというのが正直なところです。

試合後の池谷監督のコメント。
「ひとつは、先週も含めて、いい緊張感というか、何かが吹っ切れたような感じで、原点に返って楽しもうということを言ってきました。この舞台に立つためにみんながやってきて、実際にJリーグの舞台に立って、ここまでは現実にぶつかる苦しさが大きかったと思うんですが、ピッチに立てる喜びと言うか、いい意味でゲームを楽しむ気持ちを持とうということを言ってきて、そういうメンタル的なことが作用しているかなと思います。あとゲームは、チーム、選手、スタッフ全てがひとつになって、連敗した中で危機感を持って、この2戦は臨んだ。それがいい方向に行っていると思います。チームも勝つことによってまた1つになり始めていると思うし、より強く結束してきたことが、いい結果を呼んでいると思います」

わがホームチームには、スタープレーヤーは誰一人としていない。それはエース高橋が、今日もつなぎ役や、つぶれ役に徹したことからも明らかで…。チームとして戦い、チームとして成熟しているのだと感じた一戦。

“走り勝った”と表現した前節、鳥栖戦から中二日の連戦。相手も同じ条件とは言え、疲労がないはずはありませんが、きっとホームの15000人が選手たちを後押ししたんだと。あの大声援のスタジアム、一瞬たりとも足を止めるなんてできるわけがない。きっとそう思わせたのだと思うと、またうれしくなりました。

2008年9月21日 ベストアメニティスタジアム

沖縄かりゆし 2-1 大津高
     前半 1-0
     後半 1-1


得点者:斉藤(沖縄)、谷口(大津高)、斉藤(沖縄)

9月20日(土) 2008 J2リーグ戦 第36節
鳥栖 1 - 2 熊本 (15:04/ベアスタ/21,029人)
得点者:30' 廣瀬浩二(鳥栖)、43' 中山悟志(熊本)、68' 木島良輔(熊本)


鳥栖から帰り、焼酎を片手に勝利の余韻に浸っています。ロアッソ久々の会心の勝利は、一方で鳥栖を絶望の淵に落とし込む結果になりました。

スポンサー・ブリヂストンの協力もあって、この試合の動員目標は2万人。そのあおりでわれわれ熊本サポーターは、ゴール裏の半分とメインの右隅というスペースしか与えられず…。いやいや、これでいいんです。これこそ完全アウェーの洗礼。サッカーの試合らしい。

シーズン前から敵将・岸野監督は「今年は鳥栖史上最高のチーム」と称し、昇格を標榜していました。そしてこの終盤の一戦にあたり「勝ち点1は負けに等しい」とまで言い表した。それはいい意味で選手たちを“追い込み”このゲームに向けての“戦意”を高揚させようという意図だったのでしょうが、しかし、結果、その言葉は選手たちに重くのしかかることにもなったのではないでしょうか。2万人動員達成はすばらしいプロジェクトであることに間違いないし、史上最高の観客の前での昇格争いをかけたゲームとなり、盛り上がることは確かなんですが。しかし、見ていて、その“2万人”が前面に出すぎて、キックオフまでの多種多様な“演出”は、選手たちの集中力をちょっと邪魔したのではないかと。よそ者のたわごとかも知れませんが、少し気になりました。

熊本は前節までの4-1-4-1から、中盤をダイヤモンド型にした4-4-2に変更しました。「高橋との距離、中盤の距離、そのあたりの問題で、バランスを少し変えた」(池谷監督:J‘sゴール)ということらしい。
一方の鳥栖は、キム・シンヨンが体調不良らしく、廣瀬と藤田の2トップ。サイドバックの長谷川、ボランチの鐡戸は共に“熊本スピリッツ”の選手。

スタジアムは9月も下旬だというのに非常に蒸し暑く、ピッチに差し込む西日もまだまだ厳しいものがありました。

鳥栖 (先発フォーメーション)
25藤田 7廣瀬
10高橋24清水
14船谷15鐡戸
13日高26長谷川
5飯尾20内間
 21室 
前半、全く互角の展開のなかで、ペナルティエリア内でうまく入れ替わられ、マークをはずされて廣瀬に先制点を奪われます。チャンスにはサイド、ボランチと次から次に選手が上がってくるし、シュートのあとにはこぼれ玉にきちんと詰める選手がいるし、全く鳥栖らしい“走る”サッカーを見せられました。

しかし今節の熊本、この失点のあとが“良かった”。
前節を大敗で終えて、池谷監督はこう述べていました。「点をとりかえすことに意識が向いて、守備が手薄になったところをカウンターでやられた。勝つときも分けるときも、いい試合をするときは2点目を失っていないことが多い。我慢強く守って、少ないチャンスを確実にものにしていくしかない。」(くまにち携帯サイト:がんばれロアッソ熊本)。まだ早い時間帯でもあり、慌てずにもう一度守備から入りなおす。この意識が全員に共有されていました。
相手の攻撃をしのぎつつ、徐々にペースを取り戻すと、43分という絶妙の時間帯に中山のゴールで同点。河端のフィードを高橋が落としたところに飛び込んだ中山。これも今節のフォーメーションから中山が“いい場所”に居た成果でした。

後半の入り方も悪くありませんでした。同点に追いついた方が、追加点を奪いにいくという勢いがありました。この日のコンディションを考慮して、前半ひょっとしたらボールを持たされているのかも知れない、という懸念も頭をよぎったのですが、徐々に足が止まり始めたのは明らかに鳥栖の方でした。熊本のアグレッシブなプレスに押されているのか、パスが繋がらない。
たまらず岸野監督が交代のカードを切ってきます。右サイドの清水に代えてレオナルドを投入。これに呼応するように池谷監督は、同点弾の中山を降ろして木島。この交代がまた功を奏します。
すばやいリスタートを木島が宮崎に送る。宮崎のクロスにPA内の敵DFのトラップが大きくなったところに走り込んできた木島。敵選手と交錯しながらも押し込む。みごとな逆転ゴール。そのとき、2万人のホームサポーターが陣取る鳥栖スタジアムの“ほんの一角”を占領した千人にも満たない“赤い”集団たちだけが狂喜乱舞。立ち上がり、マフラーを振り回し、拳を振り上げ、抱き合い、ハイタッチし…。

その後はまさに死闘。負けられない鳥栖の猛攻を全員ディフェンスで守る。GK吉田は絶対絶命のピンチを死守する。ゴール前、右から左からのクロスを、河端がヘッドで跳ね返す。PA内の選手が足でかき出す。中盤の選手が諦めずにスライディングで奪う。前線の選手がディフェンスする。
鳥栖も諦めずに走りますが、後半に入ってからは、連動した後ろからの追い越しが減ってしまいました。そしてミスが多くなる。何かが変わってしまっていました。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、膝を着き、ピッチに倒れこむ鳥栖のイレブン。中には涙を浮かべる選手も。それは実質的に昇格戦線から脱落してしまったという落胆の大きさなのか…。まだまだ、われわれにはうかがい知ることのできない悔しさなのか。
一方、ゴール裏に挨拶にきたロアッソイレブン。GK吉田の目にも光るものがありました。前節の失点の自責の念。それと同時に、“期待されている”ことへの自覚が、この19歳でゴールマウスを背負う選手にとって、逆に相当のプレッシャーになっていたのは間違いないでしょう。この日の達成感が、自然と涙腺を緩めたに違いない。これもまた経験。

そして何より、この日の、鳥栖にとっては長いシーズンのなかでも相当に重い意味を持つこの試合に、九州ダービーという名のもとにわが熊本がめぐり合わせ、果敢なチャレンジによって勝利を納めた。長い、幾多の苦難を乗り越えようやく掴んだ昇格のチャンスを引き寄せようと意気込む身近な先輩・鳥栖に対して、大敗、連敗というトンネルから脱出したいわがチームのモチベーションが勝り、まさに“走り勝つ”ことができた。
いつか、われわれにもきっと訪れるであろうと願う、そういった昇格の“好機”のことを思い、これもまたわがチームの大変な財産になった試合、そして鳥栖との新たな“因縁”になるであろう試合。そんな試合を目の当たりにし、立ち会えたんだと。ファンとしてちょっと気持ちが昂ぶっています。

2008年9月14日13:00 熊本県民総合運動公園陸上競技場

大津高 2-1 日本文理大(大分)
 前半 0-0
 後半 2-1


得点者:藤本(大津高)、岩崎(大津高)、斉藤(日本文理大)
9月13日(土) 2008 J2リーグ戦 第35節
熊本 0 - 4 仙台 (18:03/熊本/3,106人)
得点者:46' ナジソン(仙台)、58' 平瀬智行(仙台)、61' 平瀬智行(仙台)、76' 斉藤大介(仙台)


J‘sゴールの井芹記者が戦前、「これからはまさに未知の世界」と表現したように、第3クールに入って、昇格のかかった上位チームがどのようなモチベーションでかかってくるのか全く初めての体験が続きます。
前々節から続く不振。しかし対戦成績2戦2引き分けで、わりと“相性がいい”のかも知れない、という認識もあった仙台との3戦目。そんな期待と不安が交錯する戦いでした。

仙台 (先発フォーメーション)
14平瀬 33ナジソン
10梁11関口
7千葉31斉藤
23岡村25菅井
32岡山2木谷
 16林 
スコアレスで終えたハーフタイム。喫煙所で知人と「もうこれでいい。この45分で、この試合は終わりにしよう」とうそぶいたのがいけなかった。残り45分で地獄を見ることになってしまいます。
これまで何度もハーフタイムでの“修正力”と書いてきましたが、今節の事情はちょっと違いました。いみじくも45分で終われと願ったとおり、それは世界中のサッカーが90分という時間で行われ、それをしっかりとマネジメントすることが必要なスポーツだということに集約されました。
これから一敗もしたくない仙台が開始から猛然と攻撃してくるなかで、それを凌いだ熊本は、ある時間帯では主導権を握り、いい戦い方を演じた前半。ショートパス主体のチームには、こちらもショートパスが活きる。やはり相性がいいのかも知れない。そう思わせた。しかし、それで“良し”としてしまったところで“終わって”いたのかも知れません。
後半、仙台がより以上の力で押してくるのは当然なのに、その想像力、対応力が欠如している。そんなフワフワした後半の入り方であり、後半早々の失点でした。何度こんなことを書いたことでしょう。一向に改まらないのは、チームとしての学習能力の無さなのか、それとも何かに“慣れ”が生じたのか…。

ただ、先制点献上、ゲームプランが崩れ、その後の追加点でビハインドになっても、フィールドのイレブンの気持ちが切れているように見えなかったのは、唯一の救い。これまでの成長の証でした。ホームのファンは、まだ残り30分近くの時間での“健闘”をイメージしていました。
しかし、3失点目はさすがに全員に頭を垂れさせた。ここぞというときに頼るべきゲームキャプテン自らのミスだっただけに…。

これまで、敗戦濃厚な試合途中で席を立つ人を見るにつけ、「野球の試合じゃないんだから…」と侮蔑の眼差しを投げていました。90分で終わるとわかっているゲームを、どうして最後まで観られないのか、ホームチームをなぜ最後まで応援できないのか、結果ではないだろうに、と。
しかしこの日、席を立つ人の気持ちが少しわかったような気がします。それは、結果敗戦を確信して席を立っているのではない。ビハインドは承知のうえ。その上で、自分たちのホームチームが相手より“走り負けている”姿を、もうこれ以上見たくないからなのだと…。

気力は持続していたのかも知れませんが、もはや走れない、戻れない。対して仙台は、最後までPAを切り裂く、脅かす。これが90分間のマネジメントの違いなのでしょうか。われわれは走らされていたのか、あるいは持たされていたのでしょうか…。

昔、とあるサッカー関係者に聞いた話を思い出しました。
「テクニックだけを比べればJFLはもちろん、今や地域リーグの選手でも変わらないものを持っている。ただ、上のリーグと違うのは、それを90分間持続できるか。あるいは相当のプレッシャーや速さのなかで出し切れるか。疲れてきたときに集中力が持続できるか、ということなのです。」

細かいことを言えばキリがありません。SBは間合いが甘くて相変わらずクロスを易々とあげさせるし、CBのマークも着ききれていない。前がかりになったボランチは戻りきれない。
攻撃陣は、よくぞあの堅守の仙台相手にチャンスを作ったともいえます。けれど、日本のサッカーがフィニッシュを人に譲り、ラストパスを選択しがちと言われるように、今のロアッソは、フィニッシュどころか、“ラストパス自体を人に譲っている”ように見える。ゴール前での手数という名の消極性…。

しかし、最も憂うべくは何度も繰り返される同じ失敗。それは、個人のプレー判断でもあり、今節の後半の入り方、その後のゲームプランの修正といったチーム戦術の問題でもあり…。J1年目として、結果は何も問わないと覚悟しているのに、何かが欠如してしまったのではないか。
J1経験チームとの引き分け3連戦を終えたエントリーで、「単なる1年生のチャレンジャーから脱皮していく最中にある」と書いたのは早計でした。われわれにも自然と現状満足と慢心が芽生えていたのかも知れません。

GK吉田の判断も技術もまだまだだし、目を覆いたくなる場面も多い。だけど、われわれはこのルーキーの“可能性”を応援しているのだと思う。それはチーム全体に対する気持ちも同じ。やはりチャレンジ精神だけは、常に失ってはいけないのです。

「悔しいと思ったら、また強くなれる」。中村俊輔はそう言いました。
出口のないトンネルなどありません。そして、この同じトンネルをきっと仙台も水戸も甲府も、(それぞれの速度に違いはあっても)通過してきたはずなのですから。

9月7日(日) 2008 J2リーグ戦 第34節
熊本 0 - 2 水戸 (18:03/熊本/3,950人)
得点者:52' 平松大志(水戸)、83' 荒田智之(水戸)


いいところを挙げるとすれば、前半をスコアレスで凌ぎ切ったこと。後半途中の4-4-2にしてからボールを持てるようになったこと。福王の攻め上がりから1対1の好機を作ったこと・・・。ぐらいでしょうか。その何倍以上も首を傾げたくなるようなイージーミスがあり、自らリズムを崩しているように見えました。

水戸 (先発フォーメーション)
9荒田 19西野
6堀18赤星
16パクチュホ7村松
30中村26ビジュ
21星野3平松
 1本間 
前節熊本は甲府に、水戸は広島に、共に大敗し、この一戦に賭ける両者の気持ちは同じものだったはずです。「悪い流れを断ち切りたい」。その一心。
山本、宮崎を累積で欠く熊本は、4-1-4-1のアンカーに小森田、前に喜名、吉井を配置しました。戦前、リトリートしすぎた前節を反省し、前目でアタックしていこうという戦術が見て取れましたが、実際フタを開けてみるとこれが全く機能しない。
怪我から復帰した西野が荒田と2トップを組み、右には赤星、左には堀を置く水戸の布陣に、最終ライン前やサイドのスペースを完全に制圧されてしまいます。
しかも、パク・チュホ、村松という両ボランチの出足も早く、セカンドボールも相手の懐に収まるばかり。本来、4-1-4-1といっても中盤は流動的なトライアングルになるのが“はまった”ときのうちの理想的な形だと思うのですが、この日は実にキレイにみんな並んでしまい、小森田一人に負担がかかりすぎていました。まるで中盤に“フタ”が被さっているようなもどかしさ。前目でアタックしたいという意図はわかりますが、運動量の差で後手にまわり、結局相手に前目で勝負されたという感じです。

ちょっと今節、スカウティング不足といわれても仕方がないような・・・。

「集中力」を繋ぐチームの神経細胞が、“途切れ途切れ”のような雰囲気を感じさせるなか、水戸もまた同じようなミスを重ねてくれたことで嫌な時間帯のピンチをなんとか脱し、重苦しいほど不安になるような、落ち着かない前半がようやく終了しました。
唯一許された“修正”の時間。ハーフタイムに池谷監督は「気持ちを出せ!」と檄を飛ばしたようです。しかしそれも、同じく前半の戦いを不満に思う敵将・木山監督と水戸イレブンの修正力には及びませんでした。

大勢が変わらないまま後半7分、セットプレーから失点。ようやく熊本ベンチは、矢野と斉藤を投入し、チャを一列前に。これで少しは押し返したのですが、同点弾には至らず。続く町田の投入にもチャンスはなく、逆に38分には荒田の追加点を許してしまいました。

この日、改めて明らかになったのは、チャのSB起用は厳しいこと。木島と両方使いたいからでしょうが、フィジカルもテクニックもある赤星に易々とサイドを支配されていました。逆にチャの持ち味である“突破力”は、もっと前目で活かしたい。
台所事情はありますが中盤、小森田と喜名の併用も苦しい。翌朝の熊日朝刊の選手コメント。反省の弁もあれば、ちょっと首を傾げたくなる選手もいて…。

ひょっとしたら“彼”が理想としているサッカーと、今熊本がやろうとしているサッカーは少し違ってきているのかも知れない…。

JFLで格下相手にポゼッションを維持するのならともかく、今、非常に強いプレスのもとで、攻守の切り替えが早いこのリーグ(J1ならなおのこと)で、活かされるプレースタイルなのか。熊本の戦術変化(といってもそれは上を目指すための進歩ですが…)の前に、自らが活かされる道があるのか。

鳥栖の松本育夫氏が2年目、選手を大幅に入れ替え、あえて若手の無名選手を揃えたのも、そういうことだったのかも知れないな、と今思います。
それはある意味、個人のテクニックやフィジカルといった“能力”の問題ではありません。しかし、ここで求められるプレースタイルと言うもの、それは個々のチームの戦術、戦略以前に“J標準”とでも表現すべきような恐ろしく“速い”サッカーの枠組みにフィットできるかどうかという意味での“基本技能”なのかもしれません…。

誰か一人の傑出した才能に依存するサッカーではなく、誰かがタクトを振るサッカーでもなく、全員がチーム戦術の下に組織化され流動化するサッカー。いつしか、厳しいプレスと、全員守備、全員攻撃の流れのなかで、“トップ下”という特別な役割がなくなってしまったことはその象徴例でしょう。
熊本の得点源はまぎれもなく高橋ですが、彼は自身の活かされ方を知っている。だからプレーがとてもシンプル。厳しいプレスのなかで周りを使い、活かす。だからチャンスが訪れる。でも、周りはまだまだ、十分に彼のプレーのリズム、判断のスピードに合ってない。もっと点がとれる。そう思うのです。

いやはや、連続した受け入れがたい残念な結果に、少しネガティブになってしまいました。KKウィングに吹く風も秋の気配を感じ、無我夢中のJ2初年度も終盤戦を迎えます。この時期、来シーズンのために何を成すべきか、何を試すべきか、というこの第3クールで自然とそんな目線になってしまいました。
チームとして、常に“脱皮”が求められ、一戦一戦が“試される”。

水戸はこの勝利でJリーグ100勝目を達成。10年目で100勝ですから、1年で平均10勝ということです。
熊本が目指しているのはもちろん水戸ではなく、より上にあるわけですが、少なくともその刻んだ歴史と積んだ経験だけは追いつけない。勝率より何より、100勝達成にはそんな重みが感じられました。

敗戦に気持ちは落ち込みます。このトンネルは長くはないことを願いますが、今日のゲーム、誰の目にもはっきりと見えたものがあるはずです。現実を受け止め、もっと先を考えながら走ることが大事だなと痛感しました。
2008.09.01 大敗。甲府戦
8月30日(土) 2008 J2リーグ戦 第33節
熊本 1 - 5 甲府 (18:33/山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場/8,556人)
得点者:04' マラニョン(甲府)、37' 大西容平(甲府)、44' サーレス(甲府)、51' サーレス(甲府)、71' 羽地登志晃(甲府)、89' 斉藤紀由(熊本)


大敗。一矢報いるも、ある意味木っ端微塵の内容でしたね。
開幕当初は調子の上がらなかった甲府。特に深刻な決定力不足を補うために、ちょうど前回対戦の第26節、新外国人マラニョンとサーレスを入れて我が熊本に快勝。そこから徐々に上向いてきました。
一方の熊本も、この敗戦を踏まえてシステムを4-1-4-1に変更。指揮官いわく「甲府にされて嫌だったことを相手に試す」というシステム変更。そこからは湘南に1敗するものの引き分けを含めて負けなしという好成績を収めてきました。
その4-1-4-1の本家本元との対戦。どの程度通用するのか、しないのか。いやがうえにも力の入る試合でした。が…。

甲府 (先発フォーメーション)
 15サーレス 
36マラニョン9大西
7石原10藤田
 31林 
33輪湖32杉山
4山本2秋本
 22桜井 
立ち上がり早々、大西のクロスにマラニョンが左サイドから走りこんで先制点。大西のクロスの時点も、マラニョンへの走りこみへのマークもDFの甘さによるものでした。
その後は、熊本も少し好機を演出しましたが、同点には至らず。逆に吉井のゆるいバックパスを奪われ左サイドのマラニョンに出されると、追いかけた宮崎が痛恨のバックチャージで一発退場。しかも、このFKを大西に見事に決められます。これでこの試合の流れが全て決まってしまいました。もちろん一人少なくなったくらいで試合を諦めるわけにはいかないのですが、前半終了間際にCKからサーレスのヘッドで3点目を決められてしまいます。これもPA内で上村が競っていませんでした。

DFのマークの甘さばかりを責められません。この日は中盤のチェックも全く後手後手。「ある程度引いてボールを奪う」というこの日の戦術が、甲府のアタッキングゾーンと合致して、中盤の底の喜名のあたりでいいように数的優位を作られてしまいました。「プレスに行くかどうかが曖昧だった。ロングボールを使って相手のラインを下げさせようとしたが、意思統一が出来ていなかった。」と試合後、喜名がコメントするように混乱してしまいました。
後半も追加点を上げられるわけですが、斉藤が入ったあたりから熊本のアタッキングゾーンも高めに移行して、敵ゴールまでの距離が縮まり、ショートカウンターが出来るようになりましたね。最後に高橋からのスルーパスで斉藤のJ初ゴール。一矢報いる形となりました。

この敗戦。われわれも正直な気持ち、ショックを受けています。これまでも、厳しい敗戦にがっかりすることはありましたが、これほど気持ちの持って行き場のないことは初めてでした。「何もできなかった」「浮き足立ってしまった」というような試合後のコメントを見るにつけても、整理できない結果に、下を向くしかないのかと。

それだけに、まず高橋・斉藤のこの1点。試合の大勢は決してしまった後も、全く攻撃の手を緩めない甲府に対して、自分たちのゲームで押し返して奪った1点。最後の意地とプライドをつなぎとめたような。

しかし、この一方的なゲーム。どこかで見たような…。二点目の決定機をことごとく外してくれた福岡。試合開始早々、先制の決定機を外してくれた大阪。この引き分けの二試合、相手のフィニッシュの精度不足、あるいは幸運に恵まれた結果でもあることを思い出し、受け止める必要があるでしょう。この二試合の幸運の感覚がどこかで“ファーストディフェンス”や“グループでのチェック”を緩慢にしていたのではないでしょうか。トータルで見れば、ラッキーとアンラッキーのバランスは、必ず公平にもたらされるものなのだということも思い知らされます。

前節、大阪戦のエントリーで「上位チームにいい試合をしているという満足感」「勝ちきれないという悔しさ」「われわれにもごく自然な“欲”が出てきた」と書いていますが。…欲をかくにはまだ早い、われわれもまた幸運に恵まれたことを見失っていた、ということですね。

4-1-4-1の本家本元との対戦。どの程度通用するのか、しないのか。と言いましたが、同じシステムを謳っていても、「されて嫌だったこと」という意味では全く別次元のものでした。それを可能にするための技術とベースになるハードワークに大きな差があったということ。それが高橋のいう「止めて、蹴る基本技術が全然違う」という表現になるのでしょう。
なかなか受け入れがたい敗戦ですが、やはり徹底的に分析し、修正するかしかない、そう思います。