10月26日(日) 2008 J2リーグ戦 第41節
熊本 1 - 1 岐阜 (13:03/水前寺/3,540人)
得点者:34' 中山悟志(熊本)、89' 菅和範(岐阜)


多分に評価が分かれる試合になりましたが、試合終了後の、まるで勝ったように喜ぶ岐阜サポーターと、唇をかみ締めるロアッソイレブンの姿の対比が、全てを象徴していたように思います。

Jリーグ同期入会の岐阜に対して、第1クールはコンディションが整わず、山口の退場などもあって敗戦。第2クールでは互いが置かれている状況を凌ぎ切るような戦い方を見せてスコアレスの引き分け。しかし、この試合で熊本は昇格後初めて零封を経験し、その後徐々に自分たちのサッカーに自信を得ていった。そんな転換点となったような前回対戦でした。逆に岐阜はその後、調子が上がらず順位を落としていくことに…。これもまた対照的でした。

そして今季3度目の対戦は、勝ち点数で並び、得失点1差だけで順位を分けるという、まるで絵に描いたような設定。まさに、この戦いの結果で雌雄を決することに。対戦の場は秋雨のそぼ降る水前寺。しかも電光掲示板は故障したまま。前回の福岡戦のときは、選手控え室も雨漏りが絶えなかったそうで。幸山市長、いっそのこと専用球技場に改修しましょうよ…。

岐阜 (先発フォーメーション)
20小島 9相川
18薮田14嶋田
33梅田7北村
6奈須19吉村
5川島2深津
 21日野 
岐阜は梅田、北村をボランチに、サイドに嶋田、薮田、2トップは小島、相川と、なかなか経験のあるタレントで揃えてきました。J参入の今季、岐阜の大幅補強の一端を垣間見るような布陣。リーグ中盤での失速は、これらベテラン勢のコンディションが揃わなかったせいもあるようですが、終盤のここ2~3試合、さすがにうまく調整してきているようです。前節は山形に敗戦ながらも、自分たちのサッカーを貫き、最後は一矢報いるところまで押し返し、チーム自体の復調の兆しを感じさせました。そして、その粘り強さ、こちらから見れば“諦めの悪さ”は、この日もまさしく健在でした。

序盤から岐阜のペース。CKなど数々のリスタート。マークが甘く、フリーで撃たれるシーンに肝を冷やします。しかし、そこはゴールマウスを守る吉田が奇跡的なファインセーブの連発。いよいよ熊本の“守護神”の雰囲気が備わってきた感じです。24分に倒された高橋が30メートルの位置からFK。この無回転ブレ玉をなんとかGK日野はクリアしましたが、このプレーから徐々に流れは熊本に傾きました。

34分、河端のリスタートを前線の高橋がヘッドでそらすと、ゴール前に飛び込んだ中山が左太もものあたりで押し込んで先制点。岐阜ディフェンスの一瞬の隙を突いた見事なコンビネーションでした。

さらに、後半早々、事件が起こります。カウンターに飛び出した高橋を岐阜の深津が倒してしまい、2枚目のイエローで退場処分に。このリーグ得点ランキング2位のエース相手に、どうしてもナイーブになっていた挙句の結果でした。

1点のアドバンテージでは心もとないこの日の展開。そこで転がり込んだ数的優位に追加点が期待されました。岐阜は当然、FWの小島を下げてDFを補充。対して熊本は、この日岐阜の両ボランチに蓋をされてなかなかボールに絡められなかったソックンを下げて、木島を投入。システムを4-3-3に。コンディションが完全でなく、先発での起用を諦めざるを得なかったこの日。このタイミングで、このシステムはかなり効果的だと思わせました。

確かに木島が入ってチャンスを演出。ボールを受けた瞬間にDF1枚をかわすプレーは、高橋といい、帝京に根付くFWの基本スキルなのでしょうか。俄然会場が沸き始めます。しかしこの状況にもかかわらず、ロアッソのチャンスは全てカウンターから。依然として、ボールを回しているのは岐阜。全く数的優位を感じさせてくれません。

9月28日の草津戦。福王の退場での数的不利を凌ぎきった試合のエントリーで書いたことを思い出しました。
「ただ、この日の草津を見るにつけ、逆にわれわれが突然あのような状況、あのようにポゼッションを“与えられた”とき、どうするのか。引いた相手をこじ開ける術を持っているのか。そういったことも、このリーグを戦ううえでこれから体得すべきことなのだと思わせました。」

岐阜は引いてきたわけではありません。ビハインドを取り返しに果敢に攻める道を選びましたから、あの試合とはちょっと状況が違いますが、ロアッソにとって初めての経験だったことには違いありません。

試合開始から両者主導権の奪い合い。ときどきそれを手に入れたかに見えて、またすぐに奪われてしまう。雨でスリッピーなピッチが、得意の中盤のハイプレッシャーを一歩遅くしたのか。それとも北村、梅田のテクニックが上回ったのか。嶋田、薮田の両サイドも最後まで足を止めず、縦へ縦へと鋭くボールを入れてきます。

残り15分のところで吉井に代えて福王を投入。チャジホを一列前にします。これが守りのサインなのか、追加点を奪えという指示なのか徹底しなかった。試合後、「みんなの中でブレがあった」(27日付熊日)と高橋が吐露しています。中盤での吉井の存在感が高まっていることを、あらためて認識した結果にもなりました。

ロスタイムの表示が準備されている瞬間、後半途中から入った菅が前線で奪うと、中に切れ込んでミドル。痛恨の同点弾。痛恨の時間帯でした。奪われたのはミスからでしたが、それまで縦に縦に運ばれていたのを嫌って埋めていたスペース。そのイメージに対して、最後は中からミドルを撃たれました。しかし、このシュートの思い切りのよさ、この大卒ルーキーを誉めてしかるべきでしょう。

JFL時代から勝てていない同期との因縁は、とうとう来シーズンに持ち越されてしまいました。これもまたリーグ終盤に示されたチームの新たな修正課題として刻み込まなければならないでしょう。来期、このライバルを踏み越えていくほどの力がなければ、順位上昇も望めないということは確かなようですね。

戦前のインタビューで「最初はいろいろ言われていたわけじゃない? “どうして岐阜は上(の順位)にいるのに熊本はここなの?”とかね。それがこの時期に来て勝敗数も同じで並んでるわけだから。どっちがいいんですかってことだよね。それが今は嬉しいんだよ」(J‘sゴール)と言っていた池谷監督。オフレコのコメントのつもりだったのかも知れませんが、いずれにせよチーム作りの方法論、その違いを“証明”したいという監督の気持ちもよくわかります。しかし、われわれはまさに監督の先を見据えたそのビジョンを信じて“評価”しているわけで、今期についてそんな性急に結果を求めていうわけではありません。今日のベンチワーク、もし仮に、そういった意味でこれまでと違う要素が入っていたとすれば残念と言わざるを得ないでしょう。

勝ちきれなかったが、負けでもない。ゲーム全体を見渡せば正当な結果のようにも見える。この複雑な今の心境を払拭してくれるのは、次節での“快勝”に他なりません。それはもちろん大量得点差での勝利という意味ではなく、これまでどおり、チームコンセプトを90分間やり通したうえで、最後のホイッスルで相手に膝を着かせるような“快心の勝利”。チームは天皇杯の中断により一週スケジュールが空きますが、これを幸いとして、次節・愛媛戦に照準を合わせ、十分な準備をしてほしいと思います。

10月18日(土) 2008 J2リーグ戦 第40節
湘南 0 - 1 熊本 (19:03/平塚/7,235人)
得点者:84' 高橋泰(熊本)


終了間際にエース高橋が値千金のヘッド。J1昇格を狙う湘南のイレブンにがっくり膝をつかせる貴重な1点でした。

相性ということでもないでしょうが、この湘南を始め、山形や水戸に共通する攻守の切り替えの早さ、縦への速さをやや苦手としていた熊本。しかし、今節はそれを上回る運動量とスピードでゲームの主導権を相手に渡しませんでした。岡田主審の毅然としたレフェリングも随所にあって、また(余計なファウル、カードなどで)試合を変に止めることもないため、選手も“やるべきこと”に集中できた。きっと両チームのファンならずとも、観ていてワクワクするゲームだったのではないでしょうか。あらためてゲームは選手だけで作るものではないんだなと思わせられました。

湘南 (先発フォーメーション)
11石原 20原
24加藤35菊池
15北島26永田
32鎌田5臼井
2斉藤3ジャーン
 25金 
確かに湘南はベストメンバーではなく、両ボランチのプレスの甘さや上がりの遅さなどに助けられた面もあります。しかし、わが軍にしても状況は同じこと。ただ高橋がアフターゲームショー(スカパー)の野々村氏のインタビューに、「選手が代わってもやるサッカーは変わらない」と答えたように、控え選手との大きな差がないこと、チームとしての戦術がはっきりしていることにその違いが出たということでしょう。試合を決めたのはこのエースの1点に他なりませんが、勝因はチーム全体の力であることを、なにより彼自身が証言していました。

高橋をワントップ気味に、その両サイドで木島、中山がアグレッシブにかき回す“トリプルFW”は、湘南のサイドの上がりを封じることに奏功しました。初見参のソックン、そして山本、吉井とのトライアングルも、しつこいほどのプレス、すばやいパス回しで、中盤に蓋をする役目を多いに果たしました。

噂されたソックンのキラーパスは残念ながら観られませんでしたが、途中交代するまで合格点の働き。また、そのソックンのJデビューに花を添えるように、左SBのジホがいつも以上に積極的でしたね。反面、ジホがサイドを破られる場面も何度かありましたが、そこは吉井が戻り、矢野や河端もがっちりカバーが出来ていました。

ここにきて二つの引き分けを挟み5試合連続負け知らず。順位はともかく、今“ロアッソのサッカー”の存在感をリーグに大いに示していることを誇らしく思います。それは、今季初めからやり抜くべきことを、迷わずやり通してきたからこそ。そのことによる蓄積と成果だと確信しています。ケガや出場停止、疲労蓄積などリーグ終盤で戦力の整わないなか、ソックンのデビューでまたひとつ新たな“引き出し”もできました。

残り試合も少なくなった今、くだんの野々村氏がいみじくも「今季の終わり方」について高橋に尋ねました。昇り調子で終われるのか、あるいは青息吐息で尻すぼみのまま終わるのか。来期へとつないでいく今季の財産価値が大きく違ってくるということでしょう。J一年生の第三学期で大切なのはそのことなのだと思わせました。
しかし、それは決して先の相手に星計算することではなく、いつものとおり目の前の一戦一戦に向かっていくことによる結果なのだと。来週の岐阜戦も、決して驕ることなく、ただただチームの後押しのため、マフラーを掲げ、声援を送ろうと思います。

来年1月に開催されるアジアカップの予選Aグループ第1戦、日本代表vsイエメン代表の熊本開催が発表されました。熊本で初めての日本代表Aマッチです。しかも親善試合ではなくアジアカップという公式戦。熊本のサッカーの歴史のなかで、またひとつ大きな節目になるようなビッグニュースです。

われわれはと言えば代表戦にはとんと疎くて、恥ずかしいことにまだ観戦したことがありません。かすかに記憶にあるのは1979年の、ゼロックススーパー・サッカー(神戸御崎)。当時のJSL(日本リーグ)選抜とニューヨークコスモスの試合。釜本、ベッケンバウアーの世界までさかのぼってしまいますが。

さて、1月という開催時期などもあって、日本代表がどんなメンバーになるのか。また最近の代表人気の低落もあって“寒い”試合になりそうなどという見方もされているようですが。しかし、われわれはこの試合に、そういったゲームがどうのこうのという以前の大きな意義を感じています。

A代表戦が熊本に来る、熊本で見られると考えてしまえば、どんなメンバーなのか、相手はどうか、などと言うことになってしまいますが、この試合の意味はそんなことではないでしょう。熊本の長いサッカーの歴史のなかで、これまで各年代の代表戦は何度も開催されましたが、やはりA代表戦。意義と重みは格別のものがあります。

見方によっては、こういった地方開催は日本協会の“代表”マーケティング上のテストなものかもしれません。しかし、同時にこの試合、大げさでも何でもなく、何かアクシデントがあれば“国際問題”にもなりかねない“国の試合”なのです。県協会もファンの側も、大きな課題を背負うことになります。

それらを踏まえた上で決定した熊本開催。
それはつまり、熊本にA代表戦を開催する“資格”がある、運営する“力”があると認められたということではないかと。

以前、年末の天皇杯の準々決勝あたりのゲームの際に、スタッフとして何度かお手伝いをしていました。このときばかりは県協会の方々、これは自分たちの毎年のお祭りだと。実に生き生きとスタジアムを動き回って、運営することの誇りというか、嬉しさというのか。

そして各年代の代表戦やなでしこで更に培った国際試合の経験。そういったこれまで熊本のサッカーを支えてきた方々が地道に積み上げてきた実績と努力が認められたことの証左だと思います。

県協会はもちろんですが、熊本のサッカーファン全体がこの日この試合のホスト役として、代表サポ、代表を送り出している各チームのサポ、対戦チームなどを迎えるということになります。
また、その地のホームチームのサポーターが尊重され、代表戦のゴール裏を“仕切る”という慣例もある?やに聞きます。青いシャツの下に、赤や黄色やトリコロールのユニを忍ばせている人達。その先頭にわがチームのサポーターの勇姿がある。これもまた大いに楽しみです。

Jのチームができて一年目の地にA代表戦を迎える。いい盛り上がりになるよう、挙げて協力したいと思います。
われわれもまた年甲斐もなく代表レプリカユニを購入することにします。そしてその下には、寒さを理由に、ありったけの熊本の“歴史”を着込んでいくことにします。

昨日は平日代休をとって、昼はVファーレン長崎との練習試合見学、夜は代表戦と、サッカー三昧の一日だったのですが、代表戦の後半では不覚にもうたた寝してしまいました。(笑)
というわけで長崎戦をレポートします。

10/15(水)大津町運動公園多目的
ロアッソ熊本 4-1 V・ファーレン長崎
前半:北川(3分)、西森(12分)、関(26分)、失点(33分)
後半:山内(41分)


久しぶりに訪れた大津運動公園多目的運動場。かつての「青の時代」、大雨の中、大楠の下で携帯片手に試合速報したことや、夢を繋いだ九州リーグ最終戦のことなどが走馬灯のように思い出されました。今期、九州リーグは既に終了。最終節までもつれた上位争いの末、2位の座を得た長崎。11月の地域リーグ決勝に向けての調整試合という意味合いでしょう。これからまだ本番までの1ヵ月以上の間、うちや福岡、北九州などともTMを行っていくのでしょうか。

わずか3年という歳月のなかで、熊本が胸を貸す立場になったのも感慨深いものがありますが、長崎も今期は大幅な戦力強化を図ったとの噂。楽しみなこのカードを見るのは、実に07年3月の七城以来です。長崎のファンの方もチラホラ。今年こその地域決勝にかける意気込みが感じられます。

対する熊本はサブ中心のメンバー。先週の天皇杯・栃木戦に途中出場した福王が、鈴木とCBを組み、右は河野、左は網田のディフェンスライン。驚いたのは松岡のボランチ。もうひとりは誰だったかな、関か西森だったと思うのですが、これはいい意味でなかなか面白かったですよ。

得点シーンは、開始早々、北川がDFと交錯しながらも撃ったのが、ファーサイドのポストに当たって吸い込まれまれたもの。FWらしいシュートでした。2点目は、混戦のなかから西森が押し込んだ。関の得点はゴール前の絶好の位置からのFKを、浮かして曲げたのではなく、壁の間を通したものでした。失点はPK。PA内での決定機を露骨に倒してしまったのではなく、駆け回る相手の足を引っ掛けてしまったという感じでした。
後半の山内は、右からの誰かのシュート性のクロスをファーサイドで押し込んだのではなかったかな。手元にメモがなかったので、どれもこれも正確ではないかも知れません。

全体の感じとしてレギュラー組との差は、少しの判断の遅れかなと。ショートカウンターがカウンターに成りえないのはレギュラー組も同じですが、相手に引かれてしまってからの崩しに難があったような。ただ、素早いワンタッチパスでサイドや中盤を崩していく様は、サブ組にもロアッソの色が浸透しているようで、長崎も手こずり、前線が孤立。ここはカテゴリーの違いを見せてくれまいした。

自身のブログにも書いていたとおり、後半、松岡は左SBに入ったような。最後は西森も同ポジションをやっていたように見えました。これはジホのようなイメージの左サイドバックを試しているのかなと。良かったのはこの西森。ものすごく戦術理解が進んでいるのではないのでしょうか。全体を通してみごとな動きぶり、そして何かしら漂う”落ち着き”まで感じられました。あとは北川。ポストプレーや前線でのディフェンスが効いていました。

新加入選手を初めて見るのも楽しみだったのですが、背番号が本当なら、FWのサンテ、ボランチのミンソが出ていたと思います。サンテは高さもありましたが、ちょっと線が細いかなぁ。もっと強引に行ってほしい。ミンソはまずまずのプレーでしょうか。しかしどちらも、まだまだ言葉の壁があるような気がしました。

長崎は・・・。誰が誰だか全くわかりませんでした。PKを決めたのが福島だったことも、後で知ったぐらいで。ただ、中盤では熊本に押されていましたが、ときにサイドから鋭い攻撃を仕掛けていました。あれが山形や大塚だったのかも知れません。

そういえば、後半に入ってギャラリーサイドに私服の高橋と上村が歩いてきました。長崎の関係者の横に座って仲良く談笑。どうやら向こうの強化部長の中村さんのようです。広島時代に一緒だったのですね。高橋は試合後、山形とも話していました。チームが変わっても、こういう人的なつながりは続いていくんですね。

さて、とりとめもないレポートになってしまいましたが・・・。
正直、今思い出しても身震いしてしまうあの地域決勝大会に再度、挑む長崎。今年こそはあの理不尽とも言える戦いの果てに、大いなる歓喜が待っていることを願ってやみません。
そう素直に思わせたのも、この大津運動公園が、ちょうど3年前に当時のロッソが予選リーグを戦った思い出の場所だったせいかも知れません。


「残念なことの数々」に対して、多くの拍手とコメントをいただきありがとうございました。もちろんPK戦の際の問題の部分に関してのコメントが多くを占めました。

そしてこの多くの拍手は言うまでもなく、わが熊本サポへのものでしょう。あらためてその反響の大きさ、速さに驚いています。この問題への関心がいかに高いかということですね。

さらに現地に遠征された方々からいただいたコメントを見てあらためて、その場の恐怖感が伝わってきました。恐らくは最初はほんのちょっとした勢いや勇み足。それが群集心理を呼び、集団的な威圧行為になっていく様子が生々しく浮かびあがっています。

この問題の大きさ、怖さは、ヨーロッパの現状は言うまでもなく、Jリーグでもしかりです。チームの誇りを地に落とし、チームの歴史に汚点を残す。心あるファンを失い、スポンサーの支持を失い、もしかすればチームを失いかねない。

しかし、何度も繰り返しますが、これは他人事ではありません。
例えば、われわれの何気ないブーイングの言葉が相手を深く傷つけていないか?
J1年生のわれわれも、いま一度、襟を正して(もしかして初めて)考えてみる機会かもしれません。

何がルールかと言ってこれと言う明確なものはありません。決め事で済むような単純なものでもないでしょう。年寄りのくどい説教と思われるかもしれませんが、われわれの基本的な立場をよく表現してくれていて、時々引用している文章ですので、全文掲載してみます。

JFAサッカー行動規範

①最善の努力  どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする。
②フェアプレー  フェアプレーの精神を理解し、あらゆる面でフェアな行動を心がける。
③ルールの遵守  ルールを守り、ルールの精神に従って行動する。
④相手の尊重  対戦チームのプレーヤーや、レフェリーなどにも、友情と尊敬をもって接する。
⑤勝敗の受容  勝利のときに慎みを忘れず、また敗戦も、誇りある態度で受け入れる。
⑥仲間の拡大  サッカーの仲間を増やすことに努める。
⑦環境の改善  サッカーの環境をより良いものとするために努力する。
⑧責任ある行動  社会の一員として、責任ある態度と行動をとる。
⑨健全な経済感覚  あらゆる面で健全な経済感覚のもとに行動する。
⑩社会悪との戦い  薬物の乱用・差別などのスポーツの健全な発展を脅かす社会悪に対し、断固として戦う。
⑪感謝と喜び  常に感謝と喜びの気持ちをもってサッカーに関わる。

以上で、この件に関するエントリーはわれわれも差し控えたいと思います。
気持ちを切り替えて、これからのリーグ残りわずかの試合に心をひとつにしていきましょう。


10月12日(日) 第88回天皇杯3回戦
栃木SC 1 - 1(PK 5 - 3)熊本 (13:00/栃木/3,011人)
得点者:54' 小森田 友明(熊本)、81' 岡田 佑樹(栃木)


金曜日。東京に出張していたのに、土日の仕事のため日帰りで帰熊。せっかくの連休、足を伸ばせば栃木はすぐそこだったのに…。キオスクで買った「エルゴラッソ」の天皇杯特集。栃木・熊本戦の破格の扱いのプレビュー記事を横目に、機上の人となったのです。

日曜日、仕事の最中にPCや携帯を駆使して試合の状況を入手。くまにちコムの携帯版ロアッソサイトの「試合速報」は、前節の徳島戦のまま。この間抜けな画面にはムッとさせられました、こんなアウェーの日に速報しなくてどうする。所詮スカパーを観ながら実況するだけなのか。

そもそも何で栃木ホームだったのでしょうね。J2勢が登場するこの3回戦。広島と岐阜とうちだけがアウェーで戦うことを強いられました。そんなストレスも加算されたのか、久しぶりにPCの前でドキドキしていました。昨年までのJFL環境が思い起こされます。

試合の方は…。
一人退場になって、同点に追いつかれ、それでも延長を凌いでPK戦までもつれ込んだことを良しとしましょうか。実際、試合を観ていないので何も語れませんが、昨年からは大幅にメンバーを入れ替えて、現在JFL2位の位置を確保する栃木との間に、先にJ2で揉まれているわれわれといえども、まだそれほどの力の差がないということなのだと思います。ただ一点、栃木のボランチ・落合と、うちの小森田とのマッチアップがこの目で見られなかったことが残念でした。高校こそ違いましたが、同じ“熊本スピリッツ”の同級生。両者、熊本が誇るこの年の名MFですね。


「熊本がJリーグに上がるまでは、一番好きな大会が天皇杯でした」と、以前書いたことがあります。各県代表が戦うというリージョナル性。勝ち上がれば上位カテゴリーのチームとも対戦できるという下克上の全国的トーナメント。それはJのない地域、あるいはJを目指すチームにとって、このうえもない楽しみであり、モチベーションが高まるのも当然です。

ところがこの日、主催者でもあるNHKの“生”中継は一切なし。これまでNHKは午後1時から生中継を1試合、録画で3時からもう1試合と、必ず中継していたはずなのに。この日は広島戦が午後7時から録画放送、横浜FC戦に至っては深夜2時という扱い。プロ野球クライマックスシリーズに押し出されたのか、いや天下の巨大放送局は、放送波を他にも何本も持っているのに…。全国津々浦々に自らの判断で中継が可能な支局網を持っているのに…。

いえ、栃木戦の放送だけを望んで言っているわけではないのです。前述のような意味合いの唯一の大会。その歴史のなかで、数々の名勝負やジャイアントキリングを中継してきたはず。テレビの、しかも全国放送とは全く無縁の場所で汗を流している無名のアマチュア選手たちが、果敢にJチームに挑んでいる姿、日本の隅々から集まったそんなサッカーを愛する選手たち、おらが町のチームの姿を映してくれていたはず。それが天皇杯だったと思うのです。

はるか昔、われわれはこの大会の中継で、愛媛という地域に、ユースなど下部組織を持ち、胸にはスポンサーも付いたユニフォームでJを目指している、地域名を冠したクラブがあることを知り、大いに勇気づけられたものです。あるいは、日ごろは目にすることのできないJ2のチームの選手たち、それを応援するその地域のファンの姿を見て、自らの遠い将来を想像していた。それも天皇杯の楽しみでした。現行のシステムで言えば、この3回戦が最もその組み合せの面白さ、ゲームの意外性を楽しめるところではないでしょうか。

4回戦に勝ち進んだJ以外のチームは、国士舘大学と地域リーグの松本山雅、そしてJFLからこの栃木SCという3チームになりました。さて、NHKさんは4回戦、このチームのカードを放送するのでしょうか。そうでなかったら、まるでJチーム同士のただのカップ戦、それもリーグ戦終盤でのチーム事情を考慮したある意味“地味な”トーナメント戦に、自らこの大会の価値を落としてしまうのではないでしょうか。

われわれが言っていることは、マスメディアにとっては“ロングテール”過ぎて今や噴飯ものなのかも知れません。しかし、国から予算をいただくこの放送局が、この歴史あるコンテンツを主催する意味が“そこ”に見出せなくてどうするのでしょうか。元旦の国立での過去のコンテンツばかりを自慢げに繰り返し放送するばかりでいいのでしょうか。この天皇杯は各都道府県代表を決める準決勝あたりからこの3~4回戦あたりにこそ、その存在意義の大部分があるとわれわれは思っています。せめてスカパーのアフターゲームショーくらいのダイジェスト番組でもできないものでしょうか。

夕べは仕事の打ち上げで泥酔してしまって、深夜のダイジェスト番組さえ録画し忘れてしまいました。この腹いせに、来月の東京出張では絶対何かひとつゲームを観てくることを密かに決意しました。


そして、最後に一番残念だったこと。正直、あまり触れたくない、本当に悲しい思いでいます。
昨日来、ネット上で大いに問題になっている、PK戦の際の“ホーム”栃木サポによるアウェー熊本側ゴール裏席への侵入と良識を欠いた振る舞い、および一部の小学生と思われる子供による、熊本チームおよびサポに対する、極めて残念な差別的罵声。

3面芝生の観客スペース。PK戦のときにゴール裏に駆け寄るシーンって、ある意味牧歌的な地域リーグ時代ではよくある光景だったかも知れません。しかし、ここで起こったことはそんなカテゴリーの話ではなく、来年にはJ参入かと予想されるチームのホームスタジアムでのことなのです。天皇杯ということで県協会運営だったのかも知れませんが、ホームチーム側には猛省を求めたい。

われわれは、2008年1月25日のエントリーで今シーズンのチーム目標発表に対して、こう書きました。

「(前略)もうひとつ注目すべき”ソフト目標”として、”日本で一番暖かいスタジアム作り”と称して、『試合開始前後の対戦クラブの選手、サポーターへの必要以上のブーイング禁止』というメッセージが出されたことです。駆け出しのチームとして、”運営面”ではなかなか準備が整わないはずのなかで、たった一行ですが、明確な宣言を出してくれました。とても頼もしく思います。」
さらにセルティックのホームページから「セルティック・パークおよびアウエーのスタジアムにおける許されない行為について」という観戦マナーを引用し、「これから始まる熊本のJの歴史のなかで、われわれの”ホーム”スタジアムをどういうものに形づくっていくか。これはわれわれファン自身がしっかりと心しておくべきことでしょうね」と結びました。

まず、われわれは、栃木Gスタのその場にいた選手、そして何より熊本“サポーター”を誇りに思いたい。挑発や煽りに乗らず、少人数の恐怖に耐え、チームの名誉を守った。熊本サポだからあれで済んだが…などと揶揄する向きもあるようですが、冗談じゃあない。熊本はチームとしての価値観、チームとしての文化において、冷静に秩序をもって振舞った。

対戦チームのプレーヤーやレフェリーへの友情と尊敬(JFA行動規範より)を忘れてしまえば、スタジアムはいとも簡単に野蛮な闘技場に一変してしまいます。われわれは、われわれ自身への戒めとしても、“ホームチーム“を守るためにそのような行為(ホームにおいてもアウェイにおいても)を決して許さない。信念として…。
このことをもう一度確認して、グリスタのゴール裏で必死に耐えたわが熊本サポに大いなる拍手を送ります。


10月12日(日) 第88回天皇杯3回戦

栃木SC 1 - 1(PK 5 - 3)ロアッソ熊本 (13:00/栃木/3,011人)

得点者:54' 小森田 友明(熊本)、81' 岡田 佑樹(栃木)
10月5日(日) 2008 J2リーグ戦 第39節
熊本 2 - 2 徳島 (13:03/熊本/3,774人)
得点者:15' 高橋泰(熊本)、35' 菅原康太(徳島)、71' 小森田友明(熊本)、81' 菅原康太(徳島)


行事ごとが多いこの季節。われわれも仕事やら何やらでホームスタジアムに行けなかったことを正直に告白します。よってスカパー録画観戦になってしまい、エントリーも遅れました。
この時期、そんな人も多かったのではないでしょうか。前ホーム、動員プロジェクトがあったとはいえ、今節との動員数のあまりな違い。とにかく裾野を広げることしかない。そう言えるでしょう。

最下位に沈む徳島とは1勝1敗の戦歴。しかし、前節愛媛に対して大勝している相手だけに、くれぐれも油断なきようと前々のエントリーで書きました。勢いに乗った徳島が、開始早々から猛烈に攻めてくることが予想されましたが、この日は熊本の入り方の方が数段良かった。徳島得意の両サイドの攻撃を封じ、前に進める熊本。要の中盤は今日もダイヤモンド。しかし、2トップの一角が木島なのが、戦前から“何故”と思わせたのです。ここ数試合、木島は途中交代で入ってこそ、気を吐いていたように思えたので…。

前半15分に熊本先制。山本のロングフォードに左サイド高橋が追いついて、バイタルエリアに持ち込んでシュート。久しぶりのエースの得点。幸先の良さを感じさせました。

その後もポゼッションは熊本にあったのですが、失点はほんの一瞬の油断。左サイドの甘い守備からのクロス。GK吉田のキャッチングミスに、ちょうど徳島FW・菅原のヘッドが合って同点。バレーボールで言うなら、バックトスでクイックを決めるような絶妙の角度。そう言うと、吉田には可愛そう過ぎるかも知れません。
この日、夕方からU-19の日本代表トレーニングに旅立つ予定だった吉田にとって、大いなる宿題が課せられたといっていい失態でした。

前半終了まぎわ、喜名が自ら痛んで小林陽介投入。これはまさしくチームにとってのアクシデントだったと言っていいでしょう。この日もダイヤモンドの底で、攻守の要となっていた喜名。相手との接触でもなんでもなく、自ら何かで痛めた様子。満身創痍の体調を露見させました。

中盤の控えは小森田ひとり。河野は今やサイドバック要員。そこですかさずベンチは、小林陽介を投入します。
全くの結果論だと言えましょうが、ベンチ5人のJ2のレギュレーションで、このとき木島を先発で使っていたのが、逆に幸いだったように感じます。練習のときから2列目をやっている陽介。その献身的な守備姿勢。しかし、敵陣・徳島にはあくまでFWの選手投入という“攻撃的シフト”にしか見えなかったのではないでしょうか。丁度、前節草津戦でのDF福王退場の際に、先発のFW陽介を残した采配のように…。
リーグも終盤にきて、この小林陽介というプレーヤーの存在価値が、大きく示されたように感じました。

後半に入って、五分五分とも言えましたが、“拙攻”という表現もできました。両者が攻撃に転じて犯すミス。
そんななか今度は吉井が痛め、小森田が登場。これが逆に熊本に転機を及ぼします。
71分、波状攻撃のなかから、PA内の高橋に渡ったボール。受ける直前、後ろを一瞬振り向いた高橋は、背後に入ってくるだろう小森田(いや恐らく“誰か”)の“気配”だけを感じ取り、バックに絶妙のテクニックで反らします。これを“感じた”小森田が、ワンタッチでシュート。GK動けず…。

素晴らしい“技術”でした。イメージどおり。そして落ち着いている。やはり、この二人は、“J”の場数を踏んでいるという頼もしさ。

しかし、チームとしての問題はこの後でしたね。前半をおさらいするような同じ30分過ぎの失点。それはまるで、いつもの悪い癖。ファースト・ディフェンダーがはっきりしないうちにだらだらと皆が後ろに下がって、安易にクロスを上げさせる。最後のゴール前で跳ね返すか、敵がミスするかを願っているような、妙に“集中力”の切れた一瞬の時間。
数的にも足りているのに、競り負ける。GKに託してしまう。


ゲームプランどおりに行った面もあれば、アクシデントが襲い、うまくいかなかった面もあるこの日の試合だったと思います。先制しながらも追いつかれたこの試合、4試合負けなしの展開に、その全てを総括して池谷監督は「でも確実に強くなっていると実感している」(J‘sゴール)と表しました。しかし、個々の選手たち、試合後のコメントは皆が一様に自らへの反省、次への課題を表している。監督と選手の間には、僅かながらのギャップがありました。
それは、小森田の「生活がかかっているから必死だった。」(6日付・熊日)という言葉に見るまでもなく、このリーグ終盤にきて、選手ひとり一人が、死に物狂いで生き残りを賭けて戦っている証左なのだと。

そしてひとつ言えることは、このリーグ終盤に至ってのこの状況、まるで昔流行った“金属疲労”という言葉のように、チーム全体を見えない傷が蝕んでいるのではないかということ。
それは「疲労が蓄積している選手がかなりいることが心配。」(同・熊日)という監督の言葉を待つまでもなく、今日の喜名、吉井のように。

この、世界でも類をみない厳しい日程のJ2リーグの序盤、その“1年目の挑戦”に際し、控えを含めたチーム全体のレベルアップ、層の厚みを願い、指摘したわれわれでした。そしてリーグ戦残すところ5試合となった今、見えない“蓄積疲労”という敵と戦っている現在言えることは、やはりチーム全体の力。総力戦なのだということ。
誰かが傷ついたから、最後は力尽きました。ごめんなさい。などとは言えない。それがプロリーグ。
つまり、わがチームがJ2という過酷なリーグで、最終節、最後の最後まで(しかもJレベルという内容で)戦っていけるチームなのかということが問われている。チームの“総力“が問われている。そんな過酷な1年目。そしてその終盤に今まさに差し掛かっているのだということなのでしょう。