2008.12.31 年末ご挨拶
今日から高校選手権。県代表・大津高は、初戦北越戦を3-0の完封勝利でおさめ、次に駒を進めました。インターハイでベスト4に輝き、今大会の強豪に数えられる大津。確かにフィールドを大きく使い、後方からも次々に上がってくる。いいサッカーをします。期待したいところです。

さて、今年も年の瀬にあたり年末のご挨拶を申し上げます。

言うまでもなく今年は、熊本にとって記念すべき年になりました。ホームチームが晴れてJリーグの一員となり、これまでにないたくさんの喜びを与えてくれました。毎週のようにスタジアムに足を運ぶ日々。意気揚々とKKに出陣する。ドキドキしながらアウェーを訪れる。会社では同僚と語りあう。サッカー雑誌にもインターネットサイトにも、Jの一員として熊本の名前を確認できること。スカパーでは、毎試合が生で観られること。

J一年生のわがチームが、ホーム開幕戦でいきなりの初勝利。九州ダービーでは、アウェーで感動的な勝ち星。1万5千人の観衆のなかで初連勝。最後は2万人越え。

その間、われわれの、気の向くままのエントリー対して、実にたくさんの方にご訪問いただき、驚くほどの(ときにはこちらが恐ろしくなるくらいの)拍手をいただき、また温かいコメントに励まされました。心の底から感謝申し上げます。

年も押し迫った今、あらためて感じることは、何もせずに“与えられるものはない”ということ。自分たちで手にするしかないのだと・・・。今はまだ手が届かないけれど、手を伸ばして求め続けるしかない。もうひとつ、“永遠に続くものは何もない”ということ。それを肝に銘じたうえで、常に積み上げる努力を続けなければいけないということ。その上での運と縁。

それは、強風のなかで薄紙を一枚一枚敷き重ねるような作業なのかも知れません。行きつ戻りつ、まるで気が遠くなるような仕事。そして一ファンとしてそれをじっと見守り、変わらずに支えていこうと。

新たな年におそらくはチームが直面するであろう困難の数々に思いを致しながら・・・。
また来年もよろしくお願いします。
長文と格闘してホッとしている間に、太選手のガンバ移籍やら、韓国籍3選手の退団やらあって…。この時期、報道や公式発表に目が離せません。気になる高橋選手の去就も、福岡、湘南と複数のオファーがあっているようで。その一方で新卒以外の獲得選手はなかなか発表されず。これこそ昨年までと違って、まさしくJクラブの一員としてのストーブリーグの有様なのだと実感する次第。クラブの強化部門の正念場でしょう。

表題のシリーズ第3弾は、チームを少し俯瞰して観て、クラブ全体のこと。そしてわれわれファンも含めた、チームの周辺についても感じたことに触れてみたいと思います。

今シーズン、クラブにとって真っ先に訪れたJの関門は試合運営だったと思います。JFL時代から有料試合の運営をこなしてきたとはいえ、“J基準”での試合運営のハードルの高さはスタッフを当惑させていたでしょう。その意味では、開幕前に行った東京V、札幌とのPSMは重要なテストケースだったようです。

草津とのホーム開幕戦。ホーム側と、アウェー側に分けた入場口。カテゴリー別にロープで仕切られたスタンド。そこに配置されたチケット確認のためのスタッフ。コンコースの賑やかな売店の数々。フィールドを囲むたくさんのスポンサー看板。大型ビジョンに映し出される動画、選手紹介。何もかもJ仕様でした。駈けずりまわり、あるいはハンドマイクを持って叫んでいるスタッフ…。この日を待ちわびたファンの笑顔が、影で支えたスタッフのそれまでの多くの労苦を吹き飛ばしたのではないでしょうか。

「日本一のグルメスタジアム」構想も、「アウェーに優しいスタジアム」というコンセプトも良かったですね。特に「アウェーに優しい」に関しては、リーグに殺伐とした事件が続いたなかで、出色の存在感を示し、J2の先輩サポーターに認められるまでになりました。

営業努力も並々ならぬものがあったと思います。高橋酒造に代わる胸スポンサーには香梅さんが英断を下してくれました。背中に新しく入った藤田さんは、そのスポンサー料以外でも有形無形の支援をしてくださっているとも聞いています。まだ正式な決算が出ていないので推測ですが、今期の予算はリーグ配分金も含めて5億弱だったかと。まだまだリーグのなかでは下から数えた方が早い脆弱な財政ではありますが、小口で幅広くスポンサーを集めるというコンセプトは間違っていないし、そしてそのうえでの身の丈経営の努力も…。チームの戦術面からクラブの経営まで一貫した方針で、なんとか、おそらくギリギリで乗り切った今シーズンではなかったかと想像されます。

そして、それもこれも以前に書いた「県民運動」という最初の枠組みがあったればこそではないか…。その意味でも今期、額の大小は別にして熊本県、熊本市、益城町、県市長会、県町村会など公的な出資を取り付けたということは、非常に大きい意義、価値があります。

ただ、クラブスタッフの慢性的なマンパワー不足は否めない事実のようです。昼夜を惜しまぬ努力があるとはいえ、そこは生身の人間の身体。心配されます。外野の人間は勝手に色んな課題を叫んだりしますが、営業ひとつとっても、実際に積み重ねていくのは現場のスタッフ。恐らく激務のなか、十分に睡眠もとっていないのではないかと心配したりしますが、そんな疲れきった彼等がそれでも動いていけるエネルギーは、やはり「県民運動」という大義、幅広い支持、そんな地域の盛り上がりではないかと。そしてまさにそういった労力を補っていたいただいたボランティアの人たちにも、全く頭が下がる思いです。この無償の貢献があったからこそ、われわれはホームゲームを楽しめたのだと心すべきです。

そして、そんなクラブスタッフ、スポンサーなど多くの人の汗が結集した初の1万人越え。チームはそれに応えるかのように初連勝。更に最終節では遂に2万人の記録まで達成しました。確かに多くは招待券による動員ではありましたが、満員のスタンドを経験した人たちは、たとえ負け試合だったあの最終節でさえ、「面白かった。得点シーンでスタジアム全体が揺れて、鳥肌がたった。」という感想を漏らしていました。きっとこの1年目の動員実績が、ファンの裾野を広げたことに違いありません。

また、この1年は、古参を自負するわれわれファンにも、非常に多くのことを教えてくれたシーズンでした。ゴール裏もとても力強く、そして辛抱強く、応援をリードしてくれました。アウェーに駆けつけた関東を中心にしたサポーターもしかり…。どの試合でも“ロアッソ”レッドの集団が頼もしく、美しく映りました。そして、天皇杯1回戦でのあの事件の際は、わがサポーターの節度ある振る舞いが誇らしくさえありました。これは常にわれわれにも突きつけられている課題であり、一歩間違えば、同じことが起こりうることを教えてくれていると思いました。

ところで、このブログを長く読んでいただいている人は、われわれが「サポーター」という呼称より「ファン」という単語を多用することに気づかれているかも知れません。それは実は、われわれの好きなライター後藤勝氏の「トーキョー ワッショイ!! ~FC東京'99'-04 REPLAY~」という本の考え方に共感しているからです。サポーターというカタカナ言葉の語感に対する抵抗もあって、彼は、スタジアムを訪れる客層を次のように分類しています。
①コールリーダー=ゴール裏でコールを指揮する数人。
②コアサポーター、サポーター=応援の中心地帯にいる人々。特定のグループを指すわけではない。
③ファン=応援の中心地帯以外で応援する人々。立ったり、コールをしなくとも、特定のチームを応援する意思のある人々。または①~③の総称。
④ギャラリー=どちらのチームにも与せず、客観的にゲームを楽しむ観客。または練習の見学者。
そして、さらにこう続けています「いま熱心にJクラブを応援しているファンがその容姿と生き方そのままに歳をとり、色とりどりのマフラーを首に巻き、毎年、新監督の戦術を批判し、選手の売り買いに文句をつける。そのようなJリーグの未来像が実現したとき、スタジアムを埋め尽くしたさまざまな熱狂的愛好者をくくるのには“ファン”という言葉がふさわしいのではないかと、ぼくは思っている」と。

そんなに古くない昔、われわれもゴール裏で、飛び跳ねていました。太鼓や旗竿を抱え、遠くアウェーの地に赴いたこともあります。少し歳をとり、その場所には若い人たちが陣取り、今はスタジアムの思い思いの場所で観戦しています。ただ、熱い想いはあの頃のままに…。そうやって、年々ゴール裏からメインやバックのそこかしこに拡大再生産されていくファンの数が、きっとクラブの歴史を表すのだろうと思います。

熊本のJ元年。財産は残ったのか…。きっとその答えは拙速に出すものではなく、後藤氏のいう“熱狂的愛好者たるファン”でKKのスタンド全体が真っ赤に埋まるときに、「あのとき、そういえば…」と思い出されるものなのかも知れません。

前エントリーを書いてみて、まだまだ書き足りない“財産”があるような気がします。まず、選手に関しては数人しか触れていないし、リーグ戦の時間軸を縦軸とするなら、選手をフォーメーション図的に俯瞰してみるとそれが横軸になるのではないかと思いました。

北米プロバスケットボールリーグ(NBA)におけるMIP(Most Improved Player Award)というのは、前年度の成績と今年度の成績を比較して最も成長した選手に贈られる個人賞のことだそうです。よく観るブログ「サッカーコラムJ3 Plus+」で、これに習って今期のJ2のMIPを選んでいました。
この視点でわがチーム選手をみたらどうなるか。いわば「財産は残ったのか~選手編」といったところです。

まずはなんと言っても高橋。J2得点ランキング2位の大活躍。JFL時代に「高橋のチーム」という表現を使ったことがありますが、もはやJ2でも認められることになりました。これまでのシーズンでは、固め撃ちや好不調の波が激しかったのですが、今期は安定してチームの勝利に貢献しました。ほとんどの時間帯で厳しいマンマークにあい、削られることも多かったのですが、一瞬のボールタッチでDFをかわす巧さ、空中戦での粘り強さ、ポジショニングの良さはもはやこのカテゴリーを越えていました。それでも彼に言わせれば「決めるべきところを決めきれない試合があった」という、向上心もみごとです。また、この長丁場、怪我に強く、全試合出場というのも評価は高い。来期、年俸を相当積まなければいけない選手でしょう。

中山は、エース高橋のコンビとして数多く出場機会を得ましたが、FWとしての得点数はややもの足りなかった印象が残ります。持ち前の“泥臭さ”もなかなか結果に結びつかず。しかし、4-1-4-1のサイドに位置した際、前線でのしつこい守備は光りましたし、彼の動きによって、高橋が活きた面もありました。恵まれた体躯だけに、体幹をきっちり鍛えなおしたらもっと出来ると思います。来期は完全移籍と報道されていますので更に活躍を期待します。

木島は今期練習生から土壇場で入団。マリノス、大分、ベルディと渡り歩き、更に怪我でどん底を見た男が起死回生ともいえる輝きを放ちました。体を無理やりねじ込んでも自ら局面を打開していくプレースタイルと “戦う”ハートは、ファンを大いに魅了しました。「入ったら2度チャンスを作る男」。特に大阪戦の同点弾、鳥栖戦の逆転弾は劇的。個性も強いが、監督としても使いみちが面白いFWなのではないでしょうか。古傷を抱え故障ぎみなのだけが心配。期待に違わぬ働きでした。

山内は大阪戦での途中出場、歓喜の逆転弾が忘れられないのですが、その後は出場機会を得られませんでした。例えば木島を師匠にしてみたりすれば、スピード、運動量と使い勝手のある貴重な選手になるのは間違いないはず。まだまだ発展途上の選手。がんばれ。

こうして書いてみると、FWって「巧さ」「高さ」「速さ」「強さ」そして「強引さ」のいずれかでも人より秀でた能力が必要なポジションであり、それぞれのポイントが平均点では許されないものなんだなあと思う次第です。また、現代サッカーの常識として、前線から求められる守備の基準が厳しくなり、生半可の“アリバイプレー”では許されなくなっています。それも今期、かなり各選手に浸透していたように感じます。

中盤というポジションは、シーズン当初は激戦区として予想されていましたが、結果的にはコンスタントに出場した選手は数人に絞られていきましたね。ちなみに開幕戦のスタメンは小森田、福王、西森、車の4枚でした。これはひとつには少ない交代枠のなか、臨機応変に4-1-4-1、4-3-3、4-4-2(それもボックス型だったりダイヤモンド型だったり)と相手やゲームの流れに応じて戦術的に変更されるシステムに対して、選手全体にポリバレント性が要求されたこと。また、チームの基本戦術としてもハードワークをベースにした厳しいプレッシング、高い守備能力、攻守の切り替えと判断のスピードが要求された。この二つの条件が必然的に中盤の選手を絞り込んでいったのだと思います。

そういう意味では、もはやどちらかサイドの攻撃的MFだけという“専門職”では認められない時代になってきているのかなと。厳しい世界です。

前エントリーでも書いたし、多くが認めるように、中盤で今年一番の成長、変貌を遂げたのは山本、吉井、宮崎の3選手かと。今期“ロアッソ”のサッカーを象徴するハードワークをベースにしたアグレッシブなカウンター・サッカーを体現したのがこの3人でした。
山本は、たしか第8節C大阪戦からスタメンを得ると、その後はコンスタントに出場し中盤を支え続けました。小柄ながら中盤を駆けずり回るダイナモ。実は鍛えられた分厚い胸板を隠し持ち、敵の当たりにもめっぽう強い。CKとミドルシュートの精度をもっと高めてくれたら言うことなしなのですが…。

吉井もまた進境著しい若手MF。前期終盤に負った怪我で出遅れましたが、15節仙台戦から途中出場。試合を追うごとに出場時間が増え、今や中心選手。ボランチ、右サイド、トップ下と中盤ならどこでもこなす器用さと、恵まれた体躯、チーム一のスタミナ。山本に劣らない汗かき仕事人は、オシムいうところのいわゆる「水を運ぶ選手」なのではないでしょうか。吉井がいないとどこかに穴があきそうで不安を感じることもあります(実際にそんなゲームもありましたね)。膝にまだ故障を抱えているらしいのがちょっと心配なのですが…。

宮崎は、5月連休の横浜戦でJデビューするも結果が残せませんでした。しかし、27節愛媛戦で怪我の山口に代わり、自身始めて“中盤の底”を任され、このチャンスをみごとに掴み、その後スタメンに定着しました。CKも含めてプレースキックの能力はチーム一、二を争うと思います。プレッシャーのかかった場面での判断力に更に磨きをかけてほしいところです。

この3人の台頭によって、昨期JFLで昇格戦線を支えた喜名と小森田の2人のベテラン選手は、途中交代や途中出場の役回りが増えました。

喜名は、どちらかと言えばおとなし目に見える中盤を闘志むき出しのプレーで鼓舞してくれました。90分間走り切った試合もありましたが、JFL期と比べるとチーム戦術の変化で、中盤のコンダクター的役割は減りました。しかし、混乱したとき、押し込まれたときの落ち着かせ役、流れを変えるアクセント役としては貴重な戦力だったと思います。ただ中盤の底でプレーするときDFラインに吸収されたり、前を向かせてくれない相手にピンチを作る場面もありました。

小森田は、どうしても守備が苦手という印象があります。今期のチーム戦術では出場機会が減ってしまいましたが、途中出場からファーストタッチで得点に絡んだりと、FW木島と同じようにゲームの流れを変える“何か”を持っている選手でした。リスクマネジメントが中心の今期のベンチワークのなかで、唯一攻撃的な変化、局面を一気に変えられる選手といえたのではないでしょうか。

山口は、リーグ序盤、山本とのコンビでボランチを努め、その献身的な運動量で今期のチームコンセプトを構築するという大きな働きをしました。高校時代の華麗で攻撃的なゲームメーカーが、泥臭い中盤の汗かき役に変身し、Jでの足がかりを掴んだと思ったところで、またもや運悪くシーズン途中の怪我に泣きました。

サイドアタッカー陣で今年出色だったのは、やはりチーム初の外国人選手、チャ・ジホでしょう。シーズン終盤ではSB出場が多かったのですが、この男はやはり前目で使いたい。プロらしい魂のこもったアグレッシなプレー。ワクワクするような活気をチームに持ち込んでくれたと思います。キレのあるドリブルからサイドを深くえぐるシーンは、ゾクゾクしました。

ガンバからレンタル中の松岡は、怪我がちですが、貴重な戦力でした。線の細さが払拭され、試合勘さえ備われば、卓越したテクニックの持ち主。完全移籍も噂され、なんとか熊本で“開花”してほしい逸材です。

西森も切れ味鋭いドリブルと、優れたプレースキッカーなのですが、激戦のこのポジション、なかなかスタメンの座は奪えませんでした。しかし全く紙一重の戦い。元々の能力を考えれば、いつかきっとチャンスは訪れると思います。
ソックンは、彼の特徴を発揮するには出場時間が少なすぎました。

今期、DF陣のシーズンを通した成長も見逃すことができません。開幕戦、右SB市村、CB上村、矢野、左SB有村でスタートした最終ラインも、上村の不調、有村の怪我などがあり、シーズン終盤ではCBが河端、矢野、左がチャ・ジホの先発になることが多くなりました。特にマンマークが身上の河端。シーズン当初はポジションミスからのポカもありましたが、終盤ではラインを鼓舞する、頼もしいポスト上村に成長しました。また、当初あちこちで異論を耳にしましたが、矢野や福王がSBにスライドするユーティリティ性をチームとして手に入れました。層が薄いポジションとはいえ、これが大事な場面で大いに奏功したし、来期への財産に結びついたと思います。福王についてはシーズン中、何度も書いたように、特にそのユーティリティ性ゆえのベンチスタートになりましたが、来期はチームの中心になってくることは間違いないでしょう。

GKは開幕からルーキー吉田を果敢に使ってきましたね。ちょっと驚いたと同時に、この若い才能に対する監督の大きな期待が感じられました。まだあどけなさが残る顔つきが、リーグ終盤ではすっかり逞しく変容しました。転機になったのは、鳥栖との第3クールでの勝利だったでしょう。それまで自責的な失点で試合を失い、かなり辛い精神状態だったのではないでしょうか。ベアスタで見た吉田の試合後の涙が胸を打ちました。今年、相当の経験値を得たひとりと思います。年代別代表では現在4番手のようですが、類まれなるキックの精度を持った逸材。まだまだこれからチャンスがあると思います。
通産100試合出場を達成した小林。大事な場面で好セーブを連発して、数々の勝利に貢献しました。吉田ほどまでは求めませんが、もう少し足技が安定してくれたらと思うのは贅沢でしょうか。
太は27節にチャンスを貰い、完封勝利を演出してくれました。この試合がまた終盤の好調の序章でもあったのですが、自身は怪我に泣き残念でした。

以上。「前年度の成績と今年度の成績を比較」して、と前置きしましたが、今期からの新顔選手については、今シーズンを通した評価をしてみました。また、今シーズンの戦績に貢献してくれたことは間違いないのですが、退団した選手、契約満了の選手については、このエントリーの趣旨からあえて触れませんでした。

それにしても、選手というのは、個々の能力、そのときのコンディションもさることながら、チームの戦術、システム、あるいは組み合わせの妙、ゲームの流れのなかでの起用法という多岐に渡る選択眼にさらされている厳しい“仕事”だなと思います。

監督の要求も、目指すサッカーにおいて、日に日にレベルが高くなるのではないかと…。ポジションを確保するには、攻撃的守備をベースとするチーム戦術への理解度、対人的な守備能力、献身的な意識と運動量などが備わって、その上でさらにベンチ入り5人というルールも含めて、独自の特徴が求められる。選手と同様に、チームも監督も生き残るために必死に戦っています。

だからこそ、そんな努力と競争の果てに“熊本”の名を背負ってくれているホームチームの選手たちの一人ひとりに特別な敬意を抱かざるを得ません。特にこの季節、選手の入れ替わりに“慣れて”しまい、「あの選手はいらない」とか「もう役にたたない」などとまるでモノでも扱うような風潮に、悲しい気持ちになります。Jリーグ2年目になっても、いや何年経とうが、この思いを変わらず持ち続けたいと思います。

磐田が入れ替え戦で勝利してJ1に踏みとどまりましたね。それにしても松浦、この2試合でのラッキーボーイでしたが、まだ19歳にしてこの活躍。もちろんC大阪の香川にしても同年代だし、このシーズン、他のチームではユース上がりや高校新卒で活躍する選手が目立ちました。うちの吉田もその一人ではありますが、来期加入するウイリアムや大迫も、即戦力の可能性大なのではないか。期待が膨らみます。Jリーグの全日程が終了した今、クラブワールドカップや天皇杯もそこそこに、何より大迫君の鹿児島城西が出場する高校選手権の行方が気になるところです。

そんな合間ですが、やはり今シーズンのロアッソの検証。われわれも、われわれなりにやっておきたいと思いました。前回のエントリーで書いたように、「補強は最小限に止め、ほとんど現有戦力で戦うという道を選んだ」ロアッソ。そして、監督いわく「出来ることと出来ないことを見極め」「財産を残すための1年」ととらえたシーズン。果たして財産は残ったのか。それは何なのか。まずはリーグ戦の時間軸で考えてみたいと思います。やや縦に長くなってしまいますが、まずは今期の戦積を列記してみます。

第1節  ●愛媛2-1熊本
第2節  〇熊本2-1草津
第4節  ●熊本0-2湘南
第5節  △鳥栖1-1熊本
第6節  ●熊本1-2山形
第7節  △水戸2-2熊本
第8節  ●大阪1-0熊本
第9節  ●熊本1-2広島
第10節 〇熊本2-1甲府
第11節 ●横浜5-0熊本
第12節 〇福岡2-4熊本
第13節 ●熊本0-2岐阜
第14節 ●徳島0-2熊本
第15節 △熊本2-2仙台
第16節 ●山形3-1熊本
第17節 ●草津2-0熊本
第18節 ●熊本1-2福岡
第19節 △岐阜0-0熊本
第21節●熊本0-1鳥栖
第22節△仙台0-0熊本
第23節〇熊本3-2大阪
第24節△広島2-2熊本
第25節●熊本1-3水戸
第26節●甲府3-1熊本
第27節〇熊本1-0愛媛
第28節●湘南4-1熊本
第29節〇熊本3-0徳島
第30節△熊本1-1横浜
第31節△福岡2-2熊本
第32節△熊本2-2大阪
第33節●甲府5-1熊本
第34節●熊本0-2水戸
第35節●熊本0-4仙台
第36節〇鳥栖1-2熊本
第37節〇熊本1-0横浜
第38節△草津0-0熊本
第39節△熊本2-2徳島
第40節〇湘南0-1熊本
第41節△熊本1-1岐阜
第42節〇愛媛0-1熊本
第43節△山形1-1熊本
第44節●熊本1-2広島

こうやって見てみると、長いようで短い、短いようで長かったシーズンでしたね。まず愛媛との開幕戦。この頃はまだ4-4-2でした。スタメンに名を連ねるのはDFでは上村や有村、MFには小森田。GKに吉田、左SHに車、FWに中山と、今シーズンの新たなメンバーも加わるものの、やはり昨シーズンからの戦力がベースでした。

シーズン当初から掲げたコンセプトは「積極的な守備からの攻撃」。それをそのまま素直に体現しようと、前線からアグレッシプにボールに向かいますが、いかんせん90分間という時間の“量”に及ばず、前半、後半というトータルのゲーム・マネジメントの“難”も露呈してなかなか結果に繋がりませんでしたね。第4節の湘南、第6節の山形戦はともかく、引き分けに追いつかれた第7節の水戸戦でも、このリーグの“速さ”と走り抜く“強さ”“しぶとさ”を見せつけられました。

さらに5月の連休の前後の連戦では、甲府に競り勝ち、横浜に大敗を喫し、福岡に逆転勝利を納めるなど、このリーグの日程の厳しさのなかで、相手とのコンディション調整の差が結果に如実に現れるということを実感しました。サッカーはやはり生身の選手の戦いだなと、改めて実感しました。

その後もなんとも“勝ちきれない”という試合が続きました。このころはベンチの試合運びにもまだ迷いがあったのか、追い込まれて点を取りにいかなければならないケースで3-5-2に変えてかえってバランスを崩してしまい、(結果論ですが)試合を失ってしまうようなゲームも見られました。

シーズン開幕に間に合わなかった故障選手たちが戻り始め、木島や吉井が途中投入された第15節あたりから、徐々にチーム力が底上げ(あるいは基礎固め)されてきたのではなかったでしょうか。山口、山本という汗かき役が90分間走り切れるようになり、そこに吉井、宮崎といった選手が加わりました。

そして最初の転機は第19節の岐阜戦ではなかったでしょうか。この日ロアッソは、上村も有村もいないDFラインで、初めての零封を成し遂げました。勝利こそ逃したものの、最悪のコンディションのなかでアウェーの90分間を凌いだこの経験は、若いディフェンダーたちに自信を与えたに違いありません。市村と矢野という両SBのバランスも良くなってきました。

さらにもうひとつの転機は第27節愛媛戦。前節甲府にいいようにやられた指揮官は、「相手にされて嫌だったことを試す」と、リーグ戦では封印していた4-1-4-1のフォーメーションに着手します。ここに今シーズンのロアッソの中盤を象徴する山本、吉井、宮崎のトライアングルが形づくられました。この3人の位置は縦に横に非常に流動的であるばかりでなく、そのスタミナを持って、ボックス型ではなかなか成しえなかった後方からの追い越しについても可能にしていきました。さらに最終形では前線に3トップともいえる高橋、木島、中山の布陣。序盤から得点ランキングを走る高橋への厳しいマークに対し、この2人が加わることで、相手の両SBをけん制し、こちらの両SBを高い位置に陣取らせることを可能にしました。ここでも木島、中山の両人の泥臭いまでの守備を誉めることを忘れてはいけません。

また守備陣もファーストブロックやグループでの守備、カバーがあることの安心感から高い位置をキープでき、全体をコンパクトにすることに奏功しました。もちろんそれだけでなく、仮に失点しても焦って前がかりになるのではなく、落ち着いて守備から入り直すという“試合運び”がチーム全体に浸透してきたことも、“負けない”ロアッソへの転換になったのだと思います。

それはちょうど第2クールを終え、第3クールに向かうころ。リーグも終盤を迎え、J1昇格を目指し不退転の決意で臨む上位チームとのガチンコの対戦が続きました。33から35節では、その勢いに完全にのまれてしまった感じがします。まだまだ技術もメンタルも弱いところを露呈しました。ようやく立ち直ったのはアウェー逆転での第36節鳥栖戦。つづくホームでの横浜戦で初連勝を達成。これが自信となって、44節広島戦までの不敗が続くことになりました。

われわれが今期このブログで一番使った言葉は「ハードワーク」ではなかったでしょうか。「積極的な守備からの攻撃」を完遂するためには、まずは90分間持続する「ハードワーク」が個々に求められ、ハードスケジュールのなかでも、徐々に発揮されるようになりました。おそらくは各々の選手レベルで見れば、その体力、走力などのパフォーマンスはシーズンを通じて格段に進化したのではないかと思います。

また、その経験からくる“試合運び”も、少しずつですがこのカテゴリーに順応してきたように感じます。そして今シーズンの熊本のサッカーを象徴するシステムとしての4-1-4-1。現メンバーでの、現在のリーグでの位置関係のなかで最高のパフォーマンスを発揮するシステムだったといえるでしょう。JFL時代の個々のスキルに頼っていた戦いから、「人もボールも動く」「後ろから追い越してくる」「3人目の動きがある」チームサッカーに脱皮してきたと思います。すべては「守備」「切り替え」に始まる“スタンダード”なサッカーの匂いが漂ってきましたね。

一方で課題としては、波が激しかったチーム全体のコンディション。最後の詰めの甘さで失った勝ち点。例えば岐阜との第3戦のように、相手に引かれたとき、自分たちがポゼッションできる場合にどう崩すのかという戦術。あるいは、ロングボールからの得点が目立ち、カウンターにしてもどう中盤で繋いでいくのかといったところ。また、プレースキックからの攻撃の精度。などなど・・・。

いや、いずれにしても素人分析にしか過ぎません。司令官(兼GM)は百も承知であろうし、更にこの1年の成果をベースにした来期の成長に答えを出すべく、今ストーブリーグの厳しい交渉の渦中にいるのだろうと想像します。

できること、できないことをはっきりと見分け、戦い方も含めて、チーム作りにおいて無理をしなかった。そしてその戦略がシーズンを通して微動だにしなかった。選手も、ファンも、マスコミもそれを信頼し、共有できたシーズンだった。“財産は残ったか?”と振り返ってみたとき、実はこの経験こそが次のシーズンに繋がる最も大きな財産ではなかったのかなと、われわれなりの思いであります。


J1・J2入れ替え戦第1戦。6年ぶりの復帰を狙うホーム仙台のスタジアムの雰囲気はすごかったですね。われわれは白岳片手に、この壮絶な戦いを単なる一サッカーファンとしてブラウン管経由で傍観することができますが、当事者(両チーム・サポ)にとってはいかばかりかと思います。この入れ替え戦自体は来年からなくなりますが、わがチームもいつかは同じようなギリギリのシチュエーション、身もすくみ息もできないような試合を迎える日が来るのでしょうか。

先週末はJ1、J2どちらも最終節。
J1は鹿島が連覇。一矢報いろうと奮闘する札幌相手に苦しむものの、さすが鹿島、きっちりと完封勝利をおさめましたね。鹿島というチームは見事に世代交代を果たしたなと思います。ユースを含め、高卒、大卒をしっかり育て、鹿島のサッカーにフィットさせているという印象。そこはクラブのコンセプトがはっきりしているという感じがします。

相反するのは浦和でしょうか。ユース出身はレンタルで外に出すばかりだし、若手の台頭が極めて少ない。大津高卒の坂本も契約満了で岡山に移籍のようです。それにしてもシーズン終了の最後の社長挨拶に対する、満員のスタンドからのブーイングは凄まじいものがありましたね。

熾烈だったのは降格争いでした。前半を終えた段階では、間違いなく千葉で決定と思われましたが…。あのホームのサポーターの大声援が奇跡を起こさせたのだと思わざるをえません。同点、逆転のとき映し出されるゴール裏は、みんな泣いていました。試合後の選手たち、キャプテンマークをはめた巻もしかり…。オシムが作った強い頃のチームもまた、ユース出身の無名選手たちの台頭に支えられていました。活躍の場を求めて移籍が相次いだことで、苦境にたちましたが、これを境にまた良くなっていくのではないか。根拠もなくそう思ってしまいます。

ベルディが札幌とともに1年でJ2に降格決定。親会社・日テレの過去最悪の決算もあり、来期からの戦力も心配されます。

翻ってわが軍は、「若手の台頭によりベテランからポジションを奪った」この1年といわれています。リーグ序盤こそ昨年から続くスタメン、フォーメーションで臨みましたが、徐々にそのポジションを、JFL時代はベンチを出入りしていた山本や宮崎、吉井、故障していた河端が占めていきました。

思えばまだ短い“ロッソ”の歴史のなかで、Jを目指すために集められた選手たちの多くは、Jチームを早々と解雇された若い選手たち。池谷監督は、まだ伸び代のあるこれら有能な選手たちの「Jに戻りたい」という強いモチベーションを集めることで、まずチーム作りに着手しました。

しかし、JFL2年目ではさすがに百戦錬磨のベテラン勢を要所要所に加えることで、「昇格へのプレッシャー」に打ち勝ちJ2の座を手にした。それぞれに、それぞれの役割があった3年間。それは全て、J昇格のためのチーム作りでありサッカーの内容であったと思います。

そして今年は、もちろん予算的なこともありますが、昇格組の常として選手獲得市場の時期からは当然出遅れた。あるいはトライアウトでも同じJのなかで末席に並ばざるを得なかった。それ故、補強は最小限に止め、ほとんど現有戦力で戦うという道を選んだ。そのかわり目指すべきサッカーのスタイルを追及し、そのためには選手をふるいにかける。それは選手を見極め、J2で通用するサッカースタイルを作るという “挑戦”でもあったのだと思います。

なにより成果に繋がったのはサテライト・リーグ参戦だったと思います。バスでの遠距離移動も辞さない強行スケジュール。チームとしても初めての経験でしたが、いつでもこのサテライトで選手たちが切磋琢磨していることが、J2元年の熊本の選手層の厚さに繋がりましたし、まさに若手の台頭に繋がったのだと思います。厳しい予算のなかで、多くの選手を抱えていたとはいえ、ほとんどの選手たちがリーグ公式戦で“試された”のも、このサテライトでの実戦と競争があったからこそと思います。

最終戦の広島戦の後、J‘sゴールのレポートで、井芹記者がベテラン選手の引退、昇格6戦士の契約満了に対して、「ここまでの4年間から、次なるタームに入ることを意味する。」と表現していました。時を同じくして、来期からはユース組織も発足。おそらくは引退4選手のいずれかが、その指導に当たるのではないでしょうか。まさしく今、熊本はJの舞台で突き進むべく、新しいバージョンに進化していっている途上。歩みを止めることなく進んでほしいと切に願います。


12月1日に行われたJリーグの臨時理事会で、栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山、3チームのJ2リーグ参入が承認されました。1年前にわれわれが経験したあの歓喜が思い起こされます。まずは各クラブの関係者、サポーターの皆さん、おめでとう!

栃木SCは、栃木教員団を母体に長年JFLで戦ってきた古参チーム。わが熊本の“青の時代”、初めてのJFLシーズン。ホーム開幕戦で対戦し、その強さを見せ付けられたのが、最初の栃木の印象。その後、一昨年は“ロッソ”のJ2昇格を足止めされ、昨年は彼らの昇格をつまずかせた。節目となる重要な試合で、必ずこの名前と対峙した因縁深いチームのように思います。最近では先日の天皇杯で対戦。苦杯を舐めさせられました。

昨年から柱谷監督を招聘し、選手の完全プロ化を断行。終盤、やや失速した感がありますが、スタートダッシュで積み上げた勝ち点で、Hondaに次ぐ2位の成績を収めました。しかし、リーグ戦終了を待たずに柱谷監督の契約が今期限りと発表。主力選手の解雇も予想されるなど、風雲急を告げています。どうらやJ昇格のために経営的(人件費?)に無理をしてきたことをJリーグ側に指摘され、「身の丈経営」に転換するためのようです。

カターレ富山は、YKK・APとアローズ北陸(北陸電力)といういずれも古豪の企業チームが、「富山県にJを」という県民の思いのために合従連衡したチーム。それらをメインスポンサーにしたいわば“企業クラブ系”参入チーム。このスタイル、最近では徳島以来ではないでしょうか。合併前の両チームとも、毎年JFLの上位に君臨する強いチーム(いわゆる門番)でした。それがどう融合したのか、どんなサッカーをしてくるのか、今から対戦が楽しみです。ただ、いまだ元企業の出向社員選手もいるらしく、契約変更も含めてそれをどうJ仕様にしていくのか。当然ですが大きな課題のようです。

ファジアーノ岡山。2005年の地域リーグ決勝大会でグルージャ盛岡とともに一次ラウンドを戦いましたね。チームの印象は、先の横河武蔵野戦で触れたとおりですが、東大卒、ゴールドマンサックス証券の元執行役員という異色の経歴の現社長が、ぐいぐいとここまで引っ張ってきたように見えます。「もっと大きなスポンサーの獲得で財政基盤の強化を」とリーグからは指摘されていたそうですが、その経営戦術には今後も注目したいところです。

これで来期のJ2は合計18チームとなり、3回戦総当りだとすると51試合。ますます厳しいスケジュールが予想されます。そして、われわれ熊本としてはJ2年生として、初めて追われる立場に立つといえるのでしょう。それはチーム成績のうえでも、クラブ経営のうえでも。

過日、東京でばったりとクラブの幹部の方とお会いしました。聞けば毎月のように東京で行われるリーグ会議に出張しているとのこと。その方の表現を借りれば、それはさながら全国展開するどこか大手流通チェーンの支店長会議のようだと。入場者数は、来店者数。入場料収入やスポンサー料は、すなわち“売り上げ”。なるほど、各クラブはJリーグというフランチャイズ権を持った各地の出先店だと置き換えなくもありません。その加盟店は、毎月毎月しっかりと本部からチェックされ、経営指導される。

なんだか夢も希望もないような話に聞こえますが…。ただ、プロ・スポーツとは、スポーツをビジネス化することにほかならないわけで。ただし、それは観る人に夢と希望を与えるビジネスだということ。感動を与えるビジネスだということ。ほかにもディズニーランドというビジネスがそうであるように、現実と夢は表裏一体。舞台の裏側では、血のにじむような営業努力が行われているということです。

熊本は最終戦の2万人の動員で今期の目標としていた平均5千人をクリアしてきました。できるものなら掲げた目標は何としてでもクリアする。そんな経営サイドの意地というか、数字に対する厳しさ、忠実さというか。勝ち点43という戦績も結果ですが、平均5千人という数字も立派な結果です。この数字を支えたチーム、関係者の方々に拍手を贈りたいと思います。

折悪しくも米国のサブプライムローンに端を発した世界的金融不安、日に日に悪化する景況感。収入の多くの部分を企業のスポンサードに頼るサッカークラブ経営の常として、まさに厳しい逆風のシーズン・オフになりそうです。舵取りひとつ間違えば暗礁に乗り上げかねない航海。ここ数日、相次いで発表されている各チームの戦力外選手の顔ぶれ、人数。どうもいつもとは少し様子が違うような気がします。もちろん、この時化の海を突き進むわが船も、ご多分に漏れずまだまだ小船でしかありません。今期の決算も気になりますが、来期へ向けてのチーム構築と同時に、もうひとつの戦い、スポンサー営業がはじまります。小なりとは言え、これまで少しづつ拡大してきた予算規模。しかし、今度はおそらく非常に厳しい局面も予想されるのではないでしょうか。

ミュージアム

件の東京出張の折、御茶ノ水の日本サッカーミュージアムを訪ねてみました。Jリーグ・コーナーには全チームのレプリカ・ユニが飾ってありました。
この一角にわれわれのホームチームがあること、熊本の名前があることがなんとも言えず誇らしく。“ロアッソ”レッドがやけに眩しく見えて…。ここにまた新たに3チームが加わってくる。きっと彼らサポーターも同じ気持ちを抱くことでしょう。Jリーグ36チーム、36クラブが夢と感動のためにあらゆる面で“切磋琢磨”する。その構造がJリーグなのだと、歴史の浅い1年生クラブの一ファンに教えてくれたように思いました。

11月30日(日) 2008 J2リーグ戦 第44節
熊本 1 - 2 広島 (13:06/熊本/20,635人)
得点者:38' 佐藤寿人(広島)、57' 木島良輔(熊本)、87' 佐藤寿人(広島)


日本中のあちこちで、それぞれのホームチームにとって非常に重要な意味を持つ試合が行われたこの週末。われわれのホーム・KKウィングでは、熊本にとってまたひとつ“記憶”に残る大事な試合が行われました。

8戦負けなしで迎えるリーグ王者・広島との最終戦。終盤尻上がりに調子を上げた熊本にとって、このシーズンに蓄えた力を最後に試す相手として不足はない。鉄壁のDFストヤノフが欠場とはいえ、綺羅星のごときタレントがスタメンに名を連ね、勝ち点100を目指し、J1での躍進も期す広島のモチベーションは、優勝決定後もまったく落ちていません。
熊本はしかし、この1週間で引退の4選手の発表。前日には「契約満了」の6選手の発表もあり…。いずれも“ロッソ”発足からのメンバーや、JFL昇格、あるいはJリーグ昇格に貢献した選手たち。言い表せない複雑な心境でスタジアムまでのハンドルを握りました。

試合前のキッズ・サッカーにも、サイン会にも元気な笑顔で参加している契約満了の選手たち。コンコースでは、ファンにせがまれて写真に納まる小林陽介選手の笑顔が…。人気ものでした。試合前、大型ビジョンでは、今シーズンの試合のダイジェストが放映。ホーム開幕・草津戦での勝利、九州ダービー福岡戦での戦い、C大阪戦での逆転劇…。走馬灯のように駆け巡る今シーズン。すでに年寄りの涙腺はゆるゆるになっていました。

先発には久しぶりの、そしてこの日キャプテンマークを巻くのも最後になる、熊谷の姿が。控えにも上村、有村、北川。熊本のベンチには試合に出ない全ての選手のユニフォームが飾られて…。今年のメンバー、このチームの全員で臨む最終戦。

熊谷は攻撃的な中盤の位置に入りました。この人が、“ロッソ”九州リーグ時代の途中、佐川急便東京の主将の座を投げ打って熊本に移籍してきたときは、正直驚きました。JFLのベストイレブンに何度も輝いた佐川急便の主力。大学、そして柏と、池谷監督が直々の後輩を口説き落としたことは、想像に難くありませんでした。そして、その後の熊本の中盤を、安定したプレーで落ち着かせただけでなく、大事な場面、得意のミドルで決めてくれました。精悍な容姿とクレバーな物腰。JFLに昇格した年の壮行会で、「Jに上がっても1年ぐらいでしょう…」と言って笑っていた。あの頃、もう決意は胸のなかにあったのでしょうか。

試合開始から少し硬さの見える今日の熊本。チームの誰もが、このゲームの意味がわかっているからこそでしょうか。しかし、この強豪・広島相手に臆病に引いてしまうのではなく、一年間やり抜き通した「前線からのプレス」を貫くことに変わりはありませんでした。いやむしろ、これまでにないような激しさで試合に入っていきます。試していたことが今、確固たる自信に繋がっている。ゴール裏のアルデラスのチャントも、今日は最初から飛ばしているようで…。

そこはしかし、さすがに広島。徐々にもきっちりと押し返してくる。中盤から最終ラインのバランスを保ち、隙を与えない。逆に熊本のミスを見逃さない。高萩と柏木のシャドーが、前線でのチェックを怠らない。この完成された広島サッカーと戦えているという喜び。相手は“巧い”“正確”“速い”。しかし熊本も負けてはいない。奪われそうになるペースを全員で奪い返す。高いレベルのゲームを目の当たりにしていると実感しました。

均衡が崩れたのは前半38分。右サイドを破られ、上がったクロスに佐藤寿人のドンピシャのヘッド。スコアレスに持ち込みたかった前半。痛い失点でした。

後半早々、チャに代えて上村を投入。矢野をSBにスライドしCBに入りました。熊本が初めて迎えた元日本代表選手。昇格を逃したJFL2年目に、彼は“現場指揮官”として乞われて熊本にやってきました。幾度も受けた手術。満身創痍。しかし、百戦錬磨の経験からくる、どんな逆境も跳ね除けるその姿勢で、若い選手たちをフィールドで鼓舞し続けた。むき出しの闘志はピッチを支配し、その存在はどれだけ心強かったことか。

後半12分、その上村からのロングフィード。相手陣地に残っていた木島にボールが収まる。DFをひとり交わす。ふたり交わす。エリア内に侵入。左の角度のないところからニアサイドに迷いなく突き刺す。同点!!そのとき、すでに2万人に膨れあがっていたKKのスタンドは騒然。木島!木島!この男のゴールに今期何度励まされたことか。

広島は高萩に代えて桑田。楽山に代えて橋内。一方、熊本は熊谷を下げて北川を入れ4-4-2にシフト。ピッチに向かって深々と一礼する熊谷。惜しみない拍手。代わって最後の20分のプレーに飛び出して行く北川。その容貌から熊本のルーニーとあだ名した北川。佐川大阪、水戸、アローズ北陸と渡り歩き、JFL得点ランキング4位の実績を買われて熊本にやってきてくれました。しかし、「強い」「巧い」という特徴において、どうしても高橋の影に隠れてしまった。その北川、前線でしつこく相手ボールを追いまわし、足の止まりかけたチームにエネルギーを注入。自らの仕事を完遂しました。

30分には満を持してSBに有村を投入。木島との交代の際、サイドラインでがっしりと抱擁。「やることはやったから」と、大分時代からの僚友のラストゲームにはなむけの言葉を添えました(J‘sゴール)。

上村はボランチに上がり、前線は高橋、中山、北川という攻撃的布陣のまま。有村がサイドをかけ上がる。下がっては身体ごと投げ出す懸命のディフェンスを見せる。怪我に泣いた今期。身体はボロボロのはずなのに、気持ちが勝っている。それはこの日出場を果たしたほかの3選手も同じ。コンディションをいえば他のメンバーに分があるのか知れないが、この日はこの4人の“特別”なモチベーションに賭けた。その波動が、間違いなくチーム全体にも伝播している。この日、通産100試合出場のGK小林がファイン・セーブで、危険な場面を防ぐ。当たりまくる小林。上村を兄とも慕うこの男にとっても、この日は特別な何かが宿っていたようでした。中山が、高橋が、相手ゴール前で果敢にボールを追う。DFやGKを慌てさせる。今、あの広島を攻め立て、焦らせているのは、われわれのチームなのだ。

しかし、試合を決めたのは、やはり現日本代表FW佐藤寿人の一撃でした。後ろから入るボールに合わせる技術の高さ。そして、入っては消える位置取りの巧みさ。なぜあそこでフリーになってしまうのか…。広島の選手個々の技術、そしてチームとしての連携の高さ。追い詰めた感がしたのもつかの間。やはりまだまだ相手は上手だった。最後のゲームで大きな宿題をもらったようにも思います。

そのまま終了のホイッスル。熊本の初めてのJリーグ挑戦のシーズンが終わりました。10勝19敗13分勝ち点43。最終節を待たずしてリーグ12位を確保しました。J昇格に際し大幅な(無理な)補強などせず、ほぼJFLの陣容で臨んだ1年。最下位という予想が多くを占めた前評判を覆す、1年生としては堂々と胸をはれる結果と言えるでしょう。

今シーズンの分析・評価はまた別の機会にゆずることとして、まずは選手、監督、コーチ、チームスタッフに感謝の気持ちを伝えなければならないでしょう。われわれをJリーグに連れてきてくれて、本当にありがとう。ホームチームの勝敗に一喜一憂して過ごした1年。いつも“ロアッソ”が側にありました。

そして今日のラストゲーム。敵将ペトロヴィッチの試合後コメント「熊本のこの素晴らしいスタジアムで、これだけのお客さんが集まってくれたことは、本当に素晴らしい。スタジアムのムードも、本当によかった」(J‘sゴール)。かなりのリップサービスもあるでしょうが、実はわれわれも同じような気持ちでこのゲームを楽しんでいました。シーズン最後の試合にシーズン最多の観客が来てくれたこと。4人の引退選手が、決して“引退試合”でなく、激しい闘志で、それぞれの思いを込めたプレーを見せてくれたこと。多分、そのことが王者・広島に対して一歩も引かないぞという、チーム全体の気持ちが通い合う瞬間が感じられたこと。そしてスタジアム全体に、冬の午後の少しオレンジがかった光の中で、実に幸せな時間が流れていたこと。みんながサッカーを楽しんでいたこと。

すっかり日が傾いたスタジアム。セレモニーに臨む4名の引退選手たち。自らの選手生活の最後の地に熊本を選んでくれて、本当にありがとう。広島サポーターからの「上村」コールに感極まる闘将。熊本サポーターのコールを待って、場をわきまえてくれた広島サポーターの皆さんありがとう。有村には大分からも大勢が駆けつけてくれていた。何度も振り向き、手を振っていた。本当に愛された選手たち。

そして、去って行く6人の選手たち…。鈴木、斉藤、町田、河野、関、小林。われわれは、あなたたちが、熊本の戦士だったことを決して忘れない。現役を続けていくなら、きっとどこかでまためぐり合えるでしょう。そう、この前、武蔵野で目にした遠藤のように。だから高橋風に「またね。」と別れるのが適当なのでしょう。次は敵として相まみえる日を夢見て。そのときはみんなで思いっきりの拍手と最大の敬意を込めたブーイングで迎えることにしましょう。