日曜日の大津球技場。あいにくの天気のなか(熊日携帯サイトによれば)およそ1000人ものファンが詰め掛けました。屋根はあってもほとんど意味をなさない強風と横なぐりの雨にさらされながら、それでも皆がじっと身を縮めるようにして試合開始を待っている。初めて熊本で藤田のプレーが見られる練習試合。しかも鳥栖という恰好の相手。藤田のプレーを見たい、藤田の入った新しいロアッソが見たいという一心が勝っていたからでした。

試合の中身は…。うーん、詳細に書けないことがもどかしいですが。しかし、来週の長崎とのTMは非公開にするというチームの方針も慮って、ファンのひとりとしても自重したいと思うのです。しかしながら、ここにきていよいよスタメンの骨格が見えてきたことは確かなようです。そして新しい今年のロアッソは、前線で作るダイヤモンド、そこから生まれるバイタルエリアでの無数のトライアングル、ギアチェンジによる一発での崩しに注目です。そしてこれが相手のSBを釘付けにし、ボランチを押し下げる。そこにまたスペースができる。こちらのボランチはパスカットに専念できる。いやいや書き過ぎました…。まさしく北野新監督が標榜する「見ていて楽しいサッカー」。今日のホームファンからも、度々歓声が上がりました。宇留野、木島という今年点を取るべき選手にきっちり結果が出たのが本日の収穫。それにしても今年の木島。準備万端。すっかり仕上がっている感じがして頼もしい限りです。

熊本が2点を先取。しかし、鳥栖がサブメンバー中心のスタメンから後半、徐々に主力に入れ替えていったのと逆に、熊本がサブと入れ替え始めると見る見る形勢逆転。どこをどう崩していくのか考えているうちにボールを奪われ、カウンターやCKから同点に追いつかれてしまいました。鳥栖ではやはり途中から入った島田(前草津)が明らかに効いてましたね。途中、石井が鳥栖の清水の金槌のようなヘッドをくらって七転八倒のうえ退場して非常に心配しましたが、その後の公式発表では大事にいたらなかったようでひと安心。
同じチームコンセプトを、メンバーを代えても押し通せるのかという課題は残されたままでした。また、スタメン陣が果たして90分間パフォーマンスを維持できるかどうかは、この間のTMでは試されませんでした。51試合の長丁場と選手層を考えれば、これらの課題を克服できるかどうかが今年の熊本を占う大きな鍵になりそうです。

今年、選手名鑑はサカダイを購入しました。J2に関するコンテンツはこちらのほうが多そうだったので…。しかし、解説者、ライター各氏の順位予想では熊本の評価は惨憺たるものでしたね。特に柱谷幸一氏の「大展望」たるや。「たとえば、熊本は昇格する際、ベテランを残してそのままJ2入りしたけど、08シーズンは結果を出せず、今度は貢献者を外してまた新たなチーム編成に取り組んでいる。結局、上積みがないままJ2で2年目を迎えようとしている(後略)」。嗚呼…。

“貢献者”というのが、引退選手のことなのかあるいは移籍した高橋のことなのか真意は測りかねますが、さすが栃木で法外な補強費を要求した前監督だけのことはあるなあと、苦笑せざるを得ませんでした。いずれにしても多くの解説者・ライター諸氏の予想のベースになっているのは、この名鑑編集時点での編集者が用意した各チームの「補強状況」に違いなく、それは名前=経歴であり、また参考にしているのも“データ”に違いありません。もっと言えば、諸氏の何人が実際に咋シーズンのJ2の試合を見たことがあるのか…。昨年の予想にしても、C大阪を1位に推す多数に対して、山形に至っては9位から10位の予想が大半を占めた。わが熊本も大方が14、15位という“予想表”でしかありませんが…。

野球の話はお門違いなのですが、昨年の今頃のエントリーで、伊藤勤氏のこの時期のキャンプの「観かた」を紹介しました。こんな視点の解説者あるいは評論家は確かにまだサッカー界、少なくともJリーグには存在しないなと思うのです。もちろん、J1ならともかく、J2に至るまでキャンプ状況を熱心に観察して回るほどの解説者がいないのは、このリーグに関する“マーケット”自体の小ささを表す事実なのでしょう。それは寂しくもあり、仕方のないことなのかも知れませんが、まがりなりにもこの世界、解説で飯を食べようとするものが、この時期、宮崎や鹿児島に一歩も足を踏み入れず、一体何をしているのでしょうね。

いえ別にわが熊本の予想順位が低かったから言っているのではありません。われわれも、今期に関してそうそう楽観視はできないものと思っているのは確かです。ただ、挙げられるその理由や分析の方法論が、われわれ“当事者”からすればあまりにも的外れで、憂鬱な気分にさせられるということなのです。

そういう意味ではJ‘sゴールの「開幕直前!36クラブ別戦力分析レポート」で、“うちの”井芹記者が書いている表現が一番的を得ているように思えます。

「ベテラン選手の引退や発足時からのメンバーがチームを去ったが、JFL時代からのエースだった高橋泰が抜けた以外は主力の流出はほとんどなかったオフシーズン。1年を通してリーグを戦った経験が選手たちにとって少なからず自信となっているように、“財産を残す”というスタンスで戦った昨シーズンの土台は、ほぼ残ったと見ていいだろう。」

そう。咋期の“財産”を知らない他者からは、12位という順位と得点ランキング2位の高橋の移籍という大雑把な事実しか残らないのです。目に見えない(見ていればわかるはずなんですが)、データとしては残らない“財産”に思いは至らない…。それはある意味、自らが注視する(応援する)チームを持たない“解説者”ですから当たり前のことなのでしょうか。あるいは、プロ野球なら12球団、Jだとその3倍の36球団。やはりそのすべてを掌握し尽くすような本当のプロの解説者が現れていないと言うべきでしょうか。

さてさて、長崎戦が非公開になったことで、われわれファンとしては、あとはただひたすら開幕を待つ身となってしまいました。ポジティブ?orネガティブ? しかし、どちらかと言えばなるべく不安材料を見つけてきて、それで逆に安心しようとしている自分がいたりします。開幕を待つこの季節の気持ちは、微妙に複雑です。でも、まあ結局はホームチームの試合を早く観たい。それ以外には何もないんですけどね。

ここ二週間ほどの春を思わせるような暖かさから、一転して真冬に逆もどり。寒風吹きすさぶ鹿児島・鴨池競技場。磐田とのトレーニングマッチに行ってきました。藤田のプレーが観たい。どうしても見たい。久しぶりそんな気持ちに動かされ旅立ちました。

高速で2時間強。やや早めについた鴨池。試合前にチーム広報の岩水さんと少し世間話をする時間がありました。この二泊三日の鹿児島行程には女史も帯同とのこと。最近地元テレビ局に限らず取材依頼が多く、今後はアウェー同行も命じられたとか。このあたりも藤田効果ということでしょうね。「磐田なんか3人も広報が来てるんですよ」と、最後は愚痴っぽくなりましたが、でもその忙しさが嬉しそうでもありました。

キックオフの1時半近くになると鴨池のメインスタンドも賑わいを見せてきます。半分が磐田ファンで、あと半分が熊本組の様子。そうそう、先日、協会の技術委員長に就任した原博実氏の姿もありました。

試合は30分×4本の変則マッチ。藤田は1、2本目に登場。4-3-3あるいは4―2-3-1の攻撃的なMF。生で観た人が皆一様に口にするように、その肢体は華奢といっていいほど。しかしボールに触れると印象が一変します。それは軟らかい、というより“しなやか”という感じ。そして全く年齢を感じさせない運動量。あの特徴ある甲高い声で攻守に渡って指示を出す姿は、まさしく現場指揮官そのもの。ひとりだけ視野が違っている。
昨期J1の下位に甘んじたとはいえ、あの磐田相手に伍して戦っているのは、間違いなく我がホームチーム。その真ん中にあの藤田が“存在”していました。

1本目のなかでゴール斜め45度、約30メートルのフリーキックのチャンス。藤田の右足から放たれたボールは低い弾道を描き、ゴール前に飛び込む小森田の頭を経由してネットに突き刺さります。惜しくもオフサイドの判定で得点は認められませんでしたが、実に「いいものを見せて貰いました」という感じ。これだけでもはるばる鹿児島まで来た甲斐があったというものです。

ロアッソの得点シーンは2本目の1分。今年右CKを任せられそうな宇留野の、これまたいい感じのキックがファーサイドの矢野か山下の頭に当たってゴールしたかに見えたのですが、公式記録はオウンゴール。昨年、なんとも匂いの薄かったセットプレーでしたが、今年は得点源になりそうな、そんな印象。攻守ともに切り替えの早い試合展開のなかで、互角以上の戦いのロアッソ。このまま2本目を終えたかったのですが、終了間際ゴール左で与えたFKを駒野に直接決められ同点とされてしまいました。

1、2本目を見ると、今年は、(現段階では)このあたりがスタメンを張りそうな顔ぶれ。しかし、残念なことに3本目になると、ガクッとパフォーマンスが落ちてしまいました。敵陣でボールが回せない。最終ラインを越えられない。角度のあるパスや、大きなサイドチェンジが出てこない。磐田の決定力のなさに助けられていたうちはよかったのですが、さすがにJ1、次第に出足の早いプレスに惑わされ、失点を重ねてしまいました。

今日の試合を観終わって誰もが感じたことと思いますが、チームのコンセプトは昨年をベースにしながら、はっきりとより高く、幅広いものになっている。それは昨年の延長線上ではなく、はっきりと、大きく舵をきったように感じます。選手に対する要求もそうであることは間違いないでしょう。選手個々の戦術理解もスキルもまだまだバラつきが大きく、今はまさにその試行期間。これで間に合うのだろうかという不安と、昨シーズンからさらに成長していくチームへの期待とが交錯する時期ということでしょうか。昨年のレギュラークラスといえども再びスタートラインに立たされて切磋琢磨しているといった状況ですね。特に、藤田、石井との中盤のトライアングルの一角を担うのは果たして誰なのか。まさに熾烈なポジション争いから目が離せない。開幕まで残すところ三週間。実に贅沢な楽しみではありますが、注目していきたいと思います。

全北現代とのTMを観に行ってきました。新加入の石井が右SB、宇留野が右ウィングに位置し、もはや驚くこともなくなった小森田のワントップ。相手はKリーグ全北現代。2006年のACLチャンピオン。体躯の強さと縦への速さが際立つチームでした。

今年はポゼッションと流動性を求めているロアッソですが、正直なところ“まだまだ”という状態でした。コンビネーションのミスが目立ちます。1失点に抑え、幾度かバイタルエリアを脅かした場面があったことだけでも“良し”としましょう。今の段階では修正課題が見えてくればそれでいいのですから。

それと、後半から入った“熊本スピリッツ”の練習生。あの左足は高校の頃から魅力だったし、チームにとっても彼の経験値は大きなプラスになると思うのですが。なんとしても入ってほしいなぁ…。

さて、いよいよ開幕まで1ヵ月を切りました。この間、クラブからはシーズンチケットの発売、試合日程なども発表され、われわれのなかでもワクワク感が高まっています。それと同時に、また昨年と同じような“緊張感”や”不安感“も首をもたげてきています。
Jリーグ2年生になる熊本。来るべき長いシーズンに待ち受けているのは何か。どんな経験値を与えてくれるのか、2年目は果たして何が財産として残るのか…。そのための長く厳しいチャレンジがまた始まります。安易なマスコミの順位予想どおりにはいかないだろうし、逆にわれわれファンの思いどおりにもいかない厳しさが待ち受けているのでしょう。

今回、シーズンチケットには新しい試みが見られるようですね。30セット限定の「火の国シート」。カバー付きシートに軽食・飲料付きというVIP待遇。“お布施”代わりに思い切って買ってみようかとも思ったのですが、まあ、懐具合を勘案して、今年は幸運な30名の方々にその権利を譲ることにいたしました。

J昇格時の1年前のエントリーで、われわれは「シーズンチケットホルダーになることがチームを支えること」と呼びかけました。入場料収入が高まることが、スポンサー収入を高めることより何より基盤強化の優先順位だという意味を込めて…。その思いは今年も変わりません。池谷総監督・GMが現在の入場料収入が総収入に占める割合17%を30%にしたいと表明した、などという話もあるようです。

先月リーグから発表された「2008Jリーグスタジアム観戦者調査」報告書によると、チケット入手方法において「シーズンチケットを購入」して来場した人は、わが熊本では27.5%。見た目そこそこ高いような印象を持ちますが、J2のなかでは甲府の68.5%、横浜の67.6%などの上位陣にはまだまだ遠く及ばない数字です。そのシーズンチケットの「購入理由」は、どのチームでも「クラブへの愛着」が1位。熊本でも72.5%なのは言うまでもないことでしょう。

ところで、この調査でもうひとつ注目すべきは「観戦の動機やきっかけ」という項目。「好きなクラブの応援に」「好きな選手の応援に」など色々な動機がありますが、わが熊本は「クラブが地域貢献しているから(53.5%)」という項目で堂々2位にランクしています。1位は甲府。山形が熊本と同率2位。そのあと大分、川崎、鳥栖、新潟、草津などが上位に続き、東京Vや横浜FC、福岡などが下位に沈んでいる。

この点は旧来型のサッカークラブにはない“価値観”が現れているように感じます。地域貢献がクラブへのシンパシーになる時代。これこそ実はJリーグが理念としていた“地域密着”という姿なのでしょうが、その最重要項目でJ昇格初年度(調査時点)のわが熊本が2位を示していることが、何とも言えず嬉しくて仕様がないのです。

熊本を覆っていた閉塞感に対し、元気の源となるべく「県民運動」を母体として作られたクラブ“ロアッソ”。その地域密着の理念が巡り巡って、「ホームチームがある喜び」のもとにそのチケットを買ってスタジアムに足を運ぶわれわれにとっても、どこかでわれわれなりの“地域貢献”として繋がっている…。それはちょっと大げさな妄想と言われてしまうのかも知れませんが。

年に一度の地域貢献。ここはきちんとシーズンチケット“S”を入手。今年もホームスタジアムに足を運びたいと決意を新たにしています。

NW北九州とのTMを見に行ってきました。もう開幕を待ちきれないぞ。そんなファンが多数詰めかけ、大津球技場のメインスタンドはギッシリ。何の根拠もありませんが、今シーズンへ向けて、ファン層の一段の広がり、熱さのようなものを感じるのはわれわれだけでしょうか。

そしてピッチでは、われわれが前エントリーで全くの「妄想」のつもりで書いた小森田のワントップ=熊本版ゼロトップが実際に出現していました。もちろんまだまだチームとしての練習は始まったばかり。仕上がりや合流が遅れている本来のFW陣のせいもあって、TMでも実験的なフォーメーションなのは間違いないのでしょうが、今年のロアッソの戦術を垣間見ることができます。

小森田のワントップ=ゼロトップ。多分、(小森田の持ち味を生かしたいと思っている)われわれの周りの多くも同じことを考え、期待していたようです。ただ公式サイトの「中盤に下がることも多かったですね」という小森田へのインタビュー。それはちょっとゼロトップに対する質問としては的確ではないような…。小森田自身も苦笑していたようですが。

最近暇つぶしに手にした本で、西部謙司・浅野賀一著「戦術に関してはこの本が最高峰」というのがあります。(題名が大仰でいかにもうさん臭そうだったのですが、“物語”としても読める面白い本でした。)それによると、「ゼロトップ」の誕生はASローマの、セリエAを代表するトップ下といえるトッティの、FWへの“コンバート”が始まりだそうです。
本来MFのトッティをトップに置いた4-2-3-1。そしてこのシステムの圧巻は2列目の3人の機動力。もちろんローマにしても深刻なFWの駒不足から生み出された苦肉の策だったのかも知れません。しかしそれは、決して「得点能力の高いMF」をFWにコンバートするということではなかったわけで、前線のトッティが自由に動き回って空けたスペースに2列目が次々と侵入していく。彼が前線でタメを作ることで後方選手の押し上げを助ける。トッティを中心にスペースメイキングとフリーランニング、パス交換を繰り返し、相手を“崩して”いくということですね。そういう意味では、昨日の試合、前半で見せた熊本の速くて流動的な攻撃。激しいポジションチェンジ。山内、西森、山口の突破。あるいはバイタルエリアでの小森田のワンタッチのラストパスこそ、熊本版ゼロトップが見せた“可能性”なのだと思いました。

「ゼロトップ」に必要なのは、全員守備と全員攻撃。選手個々の運動量。そして縦に速いオートマティズム。カウンターもポゼッションも出来るバランス。まさに、今年北野新監督のもと熊本が目指しているのは、そんなサッカーではないかと。それゆえの現時点での実験的システム。逆に言えば「ボールも人も動くサッカー」という現代サッカーの究極的目標を、“熊本なりに”実現するための布陣に挑戦しているのではないのかと…。

「誰がとこかというポジションは関係なく、どう戦うかということ。システムがどうのこうのではなく、フォーメーションも全く関係ない」。公式サイトでの北野監督の動画コメントは、ちょうど5年前、来熊直後の池谷前監督に尋ねたときの答えと重なって聞こえたのは当然でしょう。単に小森田の得点能力に期待して試しているわけではない。むしろたくさんの選手が点に絡むことを期待している。それが熊本版ゼロトップではないでしょうか。昨シーズンは“攻撃的な守備から”をテーマに掲げ、熊本なりの戦い方を見出していきました。そして今シーズン。今はまだ実験段階かもしれませんが、シーズンを通してこれにこだわり、熟成させていく…。まったく勝手な想像ですが、どうでしょう。