3月29日(日) 2009 J2リーグ戦 第5節
水戸 1 - 0 熊本 (13:04/笠松/2,037人)
得点者:35' 荒田智之(水戸)


水戸 (先発フォーメーション)
11高崎 9荒田
23遠藤8菊岡
19森村14キム テヨン
2小澤3保崎
32大和田4鈴木
 1本間 
前のエントリーでチョ・ソンジンを誉めすぎましたかねぇ。この試合ではその若さが逆の方向に出たということでしょうか。前節の水戸とV東京戦での荒田と高崎の2トップ、頭で完全に競り勝ち、落としたところにどちらかが必ず飛び込んでくるコンビネーションはとても脅威に映りました。その試合に比べれば、熊本の矢野、ソンジンの両CBは、水戸の二人を非常によく抑えていたと思います。しかし、あの失点の場面ではソンジンが何度も副審を振り返っているように、「自分の責任か?」という思いがその後、彼をナーバスにさせたのかも知れませんね。後半も運動量の落ちない相手FWに対しイライラを募らせていました。本当は相手の高崎のほうがイライラしていたんですが。残念です。こういうときにうまくコーチングしてあげられない「言葉の壁」ということでしょうか、そこはとても心配なのですが…。

もうひとつ水戸の特徴であるサイドの攻撃力も、4-3-3に戻したことでうまく押さえ込んでいたと思います。木島、中山、宇留野と個性的なFWが並んで、その操縦士に藤田が控えていると思えば、相手もそうそう飛び出してこられません。市村の上がりも積極的でした。

見た目、攻められてはいても、好調・水戸の勢いを“止めた”というところはしっかりと評価すべきと思います。しかし、攻撃時のアタッキングサードでの工夫には大いに不満が残ります。「もっとゴールの可能性があるプレーを選択する必要がある。変化のないサッカーになると厳しい。もっと緩急のあるサッカーをやりたい。」(J‘sゴール:試合後のインタビュー)と藤田が言っているのも、そこのところではないでしょうか。アタッキングサードに入ったところでのスピードアップが足りない。サイドのえぐりが足りない。駒数が足りない。速攻とカウンターは違うと思うのですが…。

それは、水戸に対する守備へのバランス意識のためかも知れません。しかし、今節は見るからに個々の選手のパフォーマンスも悪かった。基本的なコンディションに問題がある選手もあったように見えました。お互いのプレスも緩み始め、中盤で間隔が空き始めた後半10分以降も、あと一歩が出ない。ボールも納まらないが、自分の身体も止められない。視野が狭い。あまりにミスが目立つ…。いつもの自分たちとも、相手の水戸に対しても、その運動量の差は歴然でした。
どうにも不完全燃焼感の残る試合。水戸の勢いは止めたのに凌ぎきれず、4連勝を献上してしまいました。厳しい日程のせいにしてしまえばそれまでですが、チーム数が偶数になった今季、その条件はどこも同じ。そのなかで“凌ぎきる”力、そして特にこんな水戸のようなチームに伍する力がなければ、このリーグでの勝ち点は積み重ねられないのでしょう。時に一週間に2試合。すぐに次がやってくるリーグ日程。ファンにとっては嬉しい限りですが、チームとしての総合力(それはスタッフも含めて)が試されてくると思います。次節、札幌戦までは一週間。もう戦いは始まっていますね。

3月25日(水) 2009 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 1 愛媛 (19:03/熊本/3,531人)
得点者:5' アライール(愛媛)、67' 木島良輔(熊本)


今シーズン初の平日ナイトゲーム。しかし、花冷えと言うにはあまりに寒い夜。凍えながらの観戦となりました。ホーム熊本は、前節までの反省からか、それとも連戦を考えてのことか、先発選手とフォーメーションをいじってきました。中盤ダイヤモンドの4-4-2。CBには河端に代えて高卒ルーキーのチョ・ソンジンがデビュー。サイドに西、2トップの一角には井畑。これまで途中出場で気を吐いてきた二人にとっても記念すべきJ初先発の試合です。試合開始前から多くのファンの心をワクワクさせてくれました。

ここまで首位の愛媛はチーム初の4連勝を飾りたい。その気持ちが堅さや焦りを生んだのか、あるいはこれまでの入り方の悪さを反省した熊本の勢いが勝ったのか、守りから入ってきた感じです。しかし今期の愛媛、確実に強くなっているのが実感されました。それはチームとしてのオートマティズム。そして、フィールドを大きく使った素早い展開力。ここまでそれぞれ3得点という田中、内村という2トップの速さや巧さという個人技に頼っているのではない。チーム全体の連動性、約束事がよく練習され、出来上がっている印象を受けました。対する熊本は、好調の2トップ対策に勇気をもって高いDFラインを敷いてきました。

愛媛 (先発フォーメーション)
11田中 8内村
22横谷17大山
19越智16赤井
14三上28高杉
3金守5アライール
 21山本 
しかし、前半5分にセットプレーから痛恨の失点。ゴール前、人数は足りているのに勿体無いミス。ここ3試合続く開始早々の失点に、思わず悪夢が蘇りそうになるのを振り払ってくれたのは、西の鋭いドリブルであり、井畑の果敢なファイトでした。それに宇留野と木島が絡む。ポゼッションは熊本にありました。戦前は、石井のワンボランチに負担が掛かるかと思っていましたが、プレスを嫌ってか少し下がりぎみの藤田がうまくカバー。中盤の自由度も高く、随所で持ち味の“反撃起点潰し役”を務めました。

失点の要因にはなったものの、徐々に潜在能力を示したのはチョ・ソンジン。ロングボールに対するポジショニングとハイボールへの好対応。後半開始早々には、ハーフウェイラインから前線にピンポイントのフィード。それを井畑がダイレクトのヘッド。わずかに枠を反れましたが、互いに “グッジョブ”と 親指を立ててサインを交わしたシーンでした。

まだ表情には幼さの残る18歳。言葉も通じない異国の地。チームには通訳もいない。欧州などのクラブでは選手のメンタルケアを重要視し、専門のカウンセラーを置くことすら珍しくない昨今、どれほどの心細さ、過酷な状況かとも思います。しかし、物怖じしない性格なのか、この落ち着きは何なのか。持ってきたものは母国で培ったサッカーのスキルだけ。身一つで人生を切り開こうとしているこの若者に、思わず気持ちが入ってしまったのはわれわれだけではないでしょう。井畑とともに、熊本が今シーズン初めて制空権を握った感じがしました。まだ日本語はジホに教えてもらっている最中なのでしょうが、言葉の壁を乗り越えてコンビネーションが高まれば、そのプレーに対するスタンドからの「ソンジン!オ・レ!」のコールに手を振って応える日も近いと思います。

5分には、西のドリブルから井畑がエリア内で強引にシュート。これは愛媛GKに弾かれます。ルーキー3人の随所の働きで押し込んでいく。井畑にもゴールという結果が欲しいところですが、その存在感(相手DFに対する危険感)は十分示してくれました。

井畑が中山と交代した直後、左サイドからのクロスに、ゴール前ファーサイドに飛び込んだ西を横谷が倒してPK。スタンドの多くの“擬似監督”たちから「藤田に蹴らせろ!」という声。両手を合わせ神にも願うファンの前で、チームJ昇格後50点目のメモリアルゴールを決めたのは10番を背負った木島でした。瞬間、スタンドは総立ち。雄たけびを上げ、ガッツポーズを繰り返し、赤いマフラーを振り回しました。

その後は攻守が頻繁に入れ替わる激しい時間帯。フィールドのコンダクター(指揮者)藤田は、“リズム”を気にしている。掴みかけているリズムを失うプレー、相手に“流れ”を与えるプレーに憤怒している。何だかんだ言いながら、今日も90分間フルに走り続けている。すごい精神力。最後は、足が止まりそうになるのを必死でこらえ、なんとか決勝点をもぎ取ろうという気迫が両チームともに見られました。

概して言えば、お互いが決定機を作りながらそれを決めきれない(どちらかというと愛媛にそれが多かった)、そんな試合。熊本は度々、自陣サイド深い位置から難なくクロスを上げさせる場面が多すぎました。それは、縦に速い愛媛のカウンター攻撃に対し、対応が遅れ気味になっていた結果でもありましたが。

“愛媛は強かった”。3連勝の実績も素直に頷けるサッカーでした。そんな相手に対して、なんとか引き分けに持ち込めたというのも正直な感想。試合前は新しい選手、フォーメーションにワクワクする一方で、開幕前から試してきた基本戦術を捨てて、早くも“ブレ”や“迷走”が始まるのか、との懸念もよぎりました。まだまだチームがうまくかみ合っているとは言えないリーグ序盤戦での選手の入れ替え、それもルーキー。北野監督にとっても勇気の要る“チャレンジ”ではなかったのでしょうか。しかしそれは、スカウティングをもとにした相手の良さを消すためのシステムであり、数々のオプションから現時点で最良のコンディションを人選し決めたシステムだということが、最終的には理解できた試合でした。ベンチから繰り出される中山、宮崎、山本というカードも、流れを引き込むのに有効でした。そして、どんな“形”であれ一貫してやろうとしていること、が見えてきている。

卒業生招待企画のこの日、時を同じくして高校、大学を卒業したばかりの3人のルーキーズ。少なくとも“次を見てみたい”と期待させるパフォーマンスを見せ、実戦に耐えられることを示しました。新入社員たちがデビューを始めるこの時期、どこよりも早く確実な“戦力”に加えたいのはいずれのJチームも同じです。帰り際すれ違った山下、大迫、そして吉川ウイリアムも、今日の試合内容や同期のプレーぶりに口角泡を飛ばしていました。言葉の端々に「早く試合に出たい」という強い気持ちが滲んでいて、熾烈なチーム内競争が窺えます。ルーキーたちの闘争心に火をつけた今日の試合。勝ち点1という結果以上の収穫があったような。そんな思いを巡らせながら、満開の夜桜の下を家路に着きました。

3月21日(土) 2009 J2リーグ戦 第3節
徳島 3 - 0 熊本 (13:04/鳴門大塚/3,181人)
得点者:4' 麦田和志(徳島)、70' 倉貫一毅(徳島)、85' 徳重隆明(徳島)


敵将・美濃部監督は、昨季「自分が監督就任するときには既にチームの選手補強は終わっていた」と嘆いていました。ころころと監督の首を挿げ替えてきた徳島にとって、3年連続の最下位に終わったとはいえ、美濃部監督の2年目に託し、今期は大胆な選手補強を敢行してきました。顔ぶれを見ると“京都色”が色濃いのも当然と思えます。

徳島 (先発フォーメーション)
10ファビオ 18羽地
7徳重25大島
6米田8倉貫
23築城17麦田
2三木20ペ・スンジン
 21上野 
J‘sゴールの記者は、プレビューでも「先手を取る積極性」をキーワードとしていました。第1クールの常ではありますが、どのチームも果敢に開始早々から飛ばしてくる。試合は、その勢いに早々と失点してしまった熊本が、それでも今年目指すポゼッションサッカーで徐々に押し戻そうとする。前線での身体を張った駆け引きは力技のようであり、その裏側では“心理戦”でもありましたね。押し戻し、拮抗してもやはり押し返されるような。木島や宇留野にいいボールが入っても、その度に、経験豊富な三木と、身体能力の高いぺ・スンジンにがっちり守られました。

それにしても徳島の2トップにいいようにタメを作られました。羽地には空中戦を制され、ファビオのチェイスに乱される。その間にサイドとボランチがしっかりと上がってくる。典型的な4-4-2のサッカーなのですが、しかしその根底にはホームのサポーターの力を後ろ盾にしたアグレッシブさがありました。

熊本の今期の戦い方は、どうしても最終ラインにリスクが生じます。SBが高く上がってCBの間にボランチ一人が下がる。明確なラインはなくギャップが生まれているので、押し下げられたり、サイドを破られるとそこに大きなバイタルエリアを提供することになってしまう。そこは中盤を中心にした全員の守備意識を高めるしかないのですが…。「CFへのプレッシャーが弱かったかもしれない。タメを作られるとその後展開されるので、大きく跳ね返す守備が必要だった」(J‘sゴール:試合後のインタビュー)と石井も振り返りました。

後半途中、徳島は明らかに足が止まりかけ、熊本に流れも傾きかけたのですが、前掛かりになったところのミスで徳重に駄目押し点を決められ、万事休しました。

先制点の取り合い。その後の押し合い。徳島の激しいプレス、アグレッシブさにも驚かされました。驚かされたのはわれわれファンだけでなく、選手もそうだったような。相手には十分に研究され、逆にこちらのスカウティングの内容、精度に疑問が残るようなお互いの戦いぶりだったのではないかと。さらに言えば、点差以上に90分間持続させるべき精神面でも敗れたという印象があります。しかし、下を向いている暇はない。いよいよ今週は平日開催という厳しい日程になってきます。課題修正もままならないゲーム間隔かも知れませんが、ここはひとつメンタル・コンディションに十分注意を払って、100%の能力をホームで出し切ってほしいと思います。

2009.03.17 再会
「その『熊本出身の横浜FCサポ』は私です。」

前々回の横浜FC戦のエントリーに対していただいたコメントと、そのハンドルネームを見た瞬間、正確なお名前と同時に、8年前のことがようやく鮮明に蘇ってきました。あの時は名刺までいただいていたにもかかわらず・・・。

Tさん。長く横浜FCの運営ボランティア(ゲームスチュワード:GSと言うらしいです)としても頑張っているとのこと。先週も三ツ沢で裏方をされていたようです。そしてなにより、教えていただいた自身のブログを拝見すると、横浜FCの“次に”、ロアッソにも並々ならぬ愛情を注いでいた様子が伝わってきます。

あのとき、スタジアムまで送っていただいたお礼もそこそこに、お互い敵味方として分かれたままになりました。心細いゴール裏でしたが、TKUのFアナが来て、掲示板で知り合った“ハマのL”さんが来て、大宮のサポも何人か駆けつけてくれました。大敗も今ではいい思い出ですが、あのとき、向こう側のゴール裏のスタンドはそびえ立つ青い壁のように高く、大きく感じました。それはカテゴリーの違いという心理的な“壁”だったのでしょうか。またまた年寄りの昔話です。

「今でもあのときのことはよく覚えています。熊本のチームとJの舞台で戦うことができるのは感慨深いものがあります。」とTさん。今も何人かの熊本サポと交流があることも知りました。ネット上とはいえ、懐かしい人と再会できたような気分。どうもありがとうございました。

昨年10月、天皇杯栃木戦についてのエントリー“残念なことの数々”に対して、サカくまとしてはこれまで経験したことがなかったような多くの反響をいただきました。そのときにも書きました。「これはわれわれ自身への戒めとして受けとめなければならない」と。

三ツ沢での横浜FC戦、その残念なことが起こってしまいました。後半2分、宇留野の得点直後、熊本ゴール裏の一部観客にグラウンド内への飛び降り行為があったようです。現場にいたにも関わらず、当時は気づかなかったのですが、スカパーの録画を見て確認しました。

まず、運営にあたられた横浜FC側に心からのお詫びを申し上げなければならない。今期初勝利の嬉しさも吹っ飛んでしまいました。残念。悔しい。怒りさえこみあげてきます。

アウェイスタジアムのルールはもちろん、チームが掲げたわれわれホームのルールは、当然、いかなる場合でもわれわれファンの矜持として絶対に守る。アウェイだからこそ、さらに自らに厳しくなければならない。もしあの行為が、逆の立場で、われわれのホームで行なわれたとしたら、われわれは冷静でいられるだろうか。

どんな状況、経緯だったのか。映像ではグラウンドに飛び降りる人物が写っているという事実しかわかりません。しかし仮に、勝って嬉しかろうが、負けて悔しかろうが、あるいは、モノを落としたとしても、バランスを崩して転落したとしても、フィールドに降り立つ行為は決して許されない。一歩間違えれば取り返しのつかないところに及びかねない重大なルール違反です。まず、当事者に猛省を求める。さらに、何度も繰り返しますが、これはロアッソファン、サポーター全体が向き合うべき問題。われわれはきわめて重く受け止め、肩を落としています。

3月14日(土) 2009 J2リーグ戦 第2節
横浜FC 1 - 2 熊本 (14:03/ニッパ球/5,431人)
得点者:12' 三浦知良(横浜FC)、33' 木島良輔(熊本)、47' 宇留野純(熊本)


第2節。ニッパツ三ツ沢球技場に熊本の勇姿を観に行ってきました。実に8年ぶりの三ツ沢。何度かこの欄でも書いたことがあるとおり、”青の時代”の天皇杯以来です。あのとき、横浜駅前で不案内なわれわれがモタモタしているのを見かねて声をかけてくれた熊本出身の横浜FCサポ。親切にも球場まで案内してもらったことを思い出します。もしかしたら今日も向こうのゴール裏で応援されているのか。今はお互い同じカテゴリーなのも感慨深いものがあります。

午前中の風雨がおさまり、スタンドも徐々に埋まり始めます。メインよりバックよりゴール裏から埋まっていく。彼らにとっては今日がホーム開幕戦。野太い声で始まるチャント。圧倒的な声量。スタンドと一体となった手拍子。これぞ関東アウェー。こんな心細い状況のなかで、いつもわが関東サポは戦っているというのが肌で実感されます。更に気の小さいわれわれの脳裏に浮かぶのは、あの昨年の大敗。そんな気持ちを関東サポと遠征組の精一杯の声が振り払おうとしてくれます。

横浜の先発にはカズ。一方、熊本は前節と違って中盤に山本を使ってきました。

横浜FC (先発フォーメーション)
11三浦カズ 19難波
13片山15加藤
5八角25須藤
6吉田14田中
2早川4戸川
 16岩丸 
開始早々から飛ばしてくる横浜。前節、湘南相手に落としているだけに勝ち気満々。難波がポストプレーで身体を張り、カズが神出鬼没に動き回る。そんなプレッシャーに気後れしたのか、またしてもキーパーと最終ラインで回しているパスを奪われるミス。エリア内で相手に後ろから絡んだ河端のプレーがファール、PKの判定。これを記念すべきカズの今季初・最年長ゴールとして献上してしまいました。

あまりにも早い時間帯での失点。自滅して作りだしたようなビハインドの状況に、前節の悪夢が蘇ります。藤田の頭上を飛び交う相変わらずのロングボールの応酬。しかし、前節と違ったのはプレスの意識の高さでした。それも、昨年を思い起こさせるような二人、三人のグループによるプレス。果敢な前線からのプレス。33分、チャジホが執拗に追い込みをかけ。相手DFが苦し紛れのバックパス。これを予測したような動きで奪った木島が、自ら持ち込み、左足アウトでシュート回転をかけたボールはゴール右隅ギリギリに吸い込まれる同点弾。青一色のスタンドを一瞬沈黙させ、赤いチームメイトを奮起させる、値千金のゴールでした。前半の終了間際には、今期のロアッソの攻撃を象徴するようなバイタルエリアでの崩し。流れは全く熊本に。選手が自信を取り戻したようにも見えました。

15分のハーフタイムは休息ではなく修正のためにあります。その時間を挟み、劣勢のチームは挽回の手を打ってくる。横浜がまず後半開始から再びとばしてくるのは目に見えていました。熊本はそれをがっちりと受け止める。つかんだ流れを決して放さない、という強い意志が伝わってきます。

開始2分、ハーフウェーライン付近から木島がフィード。ボールは小森田のスペースに走りこんだ宇留野へ。競り合いのなかでワンバウンドのボールの処理を誤る相手DF。宇留野がうまくボールを奪ってシュート。またしても彼のテクニックが光るゴールでした。早々と逆転。取るべき選手が点を取る。いずれも相手のミスがらみのように見えますが、これもそれまでの畳み掛けるような波状攻撃、前からの激しいプレスで、徐々に相手の気持ちのなかに臆する部分が現れてきたからでしょう。なんとか押し返したい横浜でしたが、自らのミスがことごとくその勢いを止めてしまいました。ひとり難波が縦への突破を見せますが、シュートは枠を外れてくれました。

後半17分。やや疲れの見える小森田に代えて井畑を投入。千葉の巻のようなプレーを目指しているという井畑が、再び前線でかき回します。この時間帯、熊本が面白いようにボールを自由に回す。相手の疲労を誘い、戦意を鈍らせる。そしてその中心には藤田がいました。横浜はカズを諦めて池元を入れてきます。交代のカズに藤田が駆け寄り軽い抱擁。互いの健闘を称えあう。オールドファンの涙腺を刺激するシーンでした。

残り5分。熊本のカードは西。ユーティリティ溢れるこの才能を、今度は宇留野に代えて右サイドで使ってきました。起点を作っていた片山を抑えたかったのかも知れません。このクールガイの落ち着いたプレーが、最後の時間帯、早く逃げ切ろうとリズムを崩しがちなるチームをガッチリと支える役割を果たしたのが伝わってきました。駄目押しの追加点こそ奪えなかったものの、これまでなら持ちこたえられず同点、逆転を許していた最後の時間帯。バランスを保ち、カウンターの芽を潰し、「勝ち切る」という一点にチームの意思が集約されていた結果だと思います。それもこれも昨年の終盤を彷彿とさせるような組織的プレスで90分間ハードワークし続けた成果だと。“闘う気持ち”。それを思い出させてくれたのは、前節の相手・草津だったのでは。目が覚めた。そんな感じでしょうか。

試合の終了と同時に横浜サポーターの規律のとれたチャントは、一転して自チームへの激しいブーイングに変わりました。赤い戦士たちは疲労のなかにも白い歯をみせて、最後まで声を枯らしてくれたゴール裏に挨拶にいく。それが終わって、戻ってくる藤田が満面の笑みで手を振るメインスタンドの先には、関東に残している家族の姿がありました。

チームとしての課題はまだいくつもあります。しかし、今日はまずこの勝利を喜びたい。「アウェーで最後まで辛抱強く戦えたことは良かった。少しずつ進歩していると思う」(15日付熊日:藤田のコメント)。多勢に無勢な完全アウェーの地。それも嫌な思い出しかなかった三ツ沢で、劇的な逆転でのシーズン初勝利。北野新監督にとっても初勝利。とりあえず一晩ぐっすり眠れるのかも知れません。
帰り道は凱旋よろしく横浜駅西口まで歩いて帰ることにしました。大勢の横浜ファンの人波に紛れて、その愚痴やボヤキを聞きながら三ツ沢の丘を下る。アウェーでの勝利をかみ締めてひとり笑みをこぼしながら。眼下に広がる横浜の街に、雨上がりの明るい陽が差していました。

3月8日(日) 2009 J2リーグ戦 第1節
熊本 1 - 2 草津 (13:06/熊本/7,013人)
得点者:43' 藤井大輔(草津)、74' 熊林親吾(草津)、89' 宇留野純(熊本)


遠足の日の小学生のように、あるいは若い頃夢中になっていたゴルフのラウンド日のように、待ちきれない気持ちでいつもよりずいぶん朝早く目が覚めてしまいました。何とも手持ちぶさたな時間。それではと、健軍商店街が企画した無料シャトルバスのことを思い出し、ピアクレスに行くことに。まだまだ認知が行き渡っていないのか、乗客はまばらでしたが、送り出していただく商店街の人たち、そしてここにも熊日のスタッフ。地道も地道な取り組みですね。そして何と言っても乗り込むのはロアッソラッピングバス。車内では公式応援歌や監督・選手達のインタビューが流れるなか、KKまで約30分の道のり。徐々に気持ちが高まってきます。

入場待ちの行列に並び、入ったKKのコンコースは開幕を待ちわびたファンでごった返していました。売店ブースは、いつもの人気店もあれば新しい顔ぶれもあり。これが今年も熊本自慢のグルメスタジアムを彩る人達です。ヒライのお弁当をほおばる手が震えるのは、風が冷たいせいか、それとも武者震いなのか。ユニフォームスポンサー7社の代表取締役による始球式、必由館高校生による国歌斉唱など、数々の開幕セレモニーが終わり、ゴール裏のチャントがスタートすると、上がってもいない花火の音が心の中で響き渡り、「開幕」を実感しました。

キックオフの笛とうねりのような歓声。フィールドには、真新しいプーマ・レッドのユニフォームに身を包んだ宇留野がいて、石井がいて、藤田が走りまわる。新生・北野ロアッソの初陣。昨年一年間の“財産”をベースに、今年は「面白いサッカー」を目指すという。対する草津は、昨年のホーム開幕戦でも顔を合わせたチームですが、今年は司令塔の島田が去り、広山がその穴を埋めるのか。フォーメーションは4-4-2の様子。

草津 (先発フォーメーション)
9高田 27都倉
14熊林10広山
30松下6櫻田
2寺田7佐田
4田中26藤井
 1本田 
互いに開幕試合の堅さはあるものの、「様子を見ていこう」などという考えは一切ないという感じ。ポゼッションの取り合い。ロングボールで守備ラインの押し戻し。前半徐々にホームの声援を背にした熊本がチャンスを作っていく。決定的なシーンも2度、3度。藤田には草津の櫻田がガッチリマークしていましたが、そこはさすがの藤田。厳しいプレッシャーにも苛立つことなく、“豊かな表現力溢れる”ワンタッチプレーで次々に見せ場を作りました。宇留野、木島、小森田へのキラーパス。自らも飛び込んでのヘッド。しかし、好機を逸している間にCKから失点を許し、1点ビハインドのまま前半を終えることになってしまいました。

後半、左SBに西を入れて、もう一度最終ラインからのビルドアップでゲームの建て直しを図りたい熊本。これが今年の北野イズムです。西は期待に応えてサイドをえぐっては、感触のいいクロスを供給しました。まだまだ周囲との息が合っているとは言い難いのですが、受け方、位置取りなど考えられた動きは質の高さを感じさせるものでした。それでも、熊本のゴールは遠い。草津は全員の動き出しが半歩早く、プレスの厳しさが徹底している。それは、大胆ともいえるほどの高い最終ラインが成せる技とも言えました。幾度もオフサイドの網にかかり苛立つ木島。それを押し下げようと放り込むロングボールで、熊本の攻撃もまた単調になっていく。

もう一度、今期のコンセプトを思い出して。最終ラインからボールを回してポゼッションで崩していこう。矢野の痛恨のパスミスはそんな時間帯でした。両SBは高く位置取り、ふたりのCBの間にはボランチの石井が下がっている。そこのパス回しでのミス。昨年も開幕から前半戦あたりまでの試合では何度か目にしたバックラインでのミス。失点に直結する痛恨のミスです。しかし、試合後のインタビューで監督は特にそのプレーを責めることはありませんでした。「ボールを動かして」スペースを作りそこを突いていこう…。今年のコンセプトに戻ろうとしていたところだったからでしょう。昨年のミスとは確かに内容は違うんですが、これからという時間帯での追加点は、やや集中力を欠いたような“見え方”とともに展開としては最悪でした。

7000人のファンは静まり返り、意気消沈。それでもロスタイムに宇留野が押し込んで一矢報い、最後に入ったFWの井畑の泥臭い運動量が大きな可能性を感じさせるなど、スタジアム全体が“救われた”思いでした。

改めて、草津とはよく似たチーム同士なのではないかと思います。志向するサッカーという意味で。例えば甲府がそうであるように・・・。ただ、この試合では完全に制空権を奪われ、アジリティでも玉際の強さでも明らかに向こうに分があったというのが実感です。この点は相当に修正の必要があるでしょう。

しかし、熊本が随所に見せたポゼッションからの“崩し”、それに拘るボール回しの姿は、今年の北野サッカーのコンセプトを感じさせるに十分でした。昨年とは明らかに違う、というより昨年は見たこともないようなスタイルです。昨年も開幕戦、愛媛相手に同じように昨年のチームコンセプトを掲げ、挑戦し、結果、同スコアで敗れました。もちろんこのゲームで結果が出ていれば申し分ないのですが、それも所詮は「たら」「れば」。むしろ、今年のチームのこれからの成長への“期待軸”と、またこの草津とは五分五分に持ち込むことが可能なんだという手ごたえが得られたことこそ、この開幕戦の“結果”なのではと。

次は草津を倒す。翻弄する。ねじ伏せる。そのときこそハッキリと10位以内が見えてくるということでしょう。

試合後スタジアムを一周する選手たちに送られる多くの拍手を眺めながら、皆が同じ気持ちなのだと感じました。今年もブレることなく応援していこう―そう思っていることも・・・。いよいよ始まったロアッソ二年目のチャレンジ。新任北野監督もきっと眠れない日々が続くこともあるでしょう。そんな時はこのファンのみんなのことを思い浮かべて、信念を貫き通して欲しいと思います。

2009.03.04 開幕前夜
前エントリーから随分日が経ってしまいましたが、多くの拍手、コメントありがとうございました。ちょっと意外な反響でもあり、驚いています。来るべきシーズンへの期待と不安が交錯するこの時期。解説者やメディアからのちょっとした評価の言葉に揺れるファン心理。職場でも居酒屋でも侃々諤々の議論が戦わされているのでしょう。まあ、でもこれはわれわれにとって何にも換えがたい楽しみということでもありますよね。今回いただいた拍手にも、ファンの皆さんの「楽しんでいこうや」というセンスというか、懐の深さみたいなものが伝わってきてとても嬉しい気持ちになりました。

さて、長かったようで短くもあった約三ヶ月のオフシーズンがもうすぐ終わります。今日の熊日朝刊では4ページにわたるロアッソ特集。待ち遠しかった開幕までとうとう一週間を切りました。昇格に貢献したベテランが去り、高橋が敵チームに移籍し呆然としたのもつい昨日のようです。いくつかの重要な補強が行なわれ、チームはさらに進化したコンセプトのもと、新たなスタートを切ったこのオフシーズン。怪我だけはしてくれるなよというドキドキのTMの時期も終わり、ホッと胸をなでおろし、新しいシステムの連携もなんとか間に合ったようだとひとり早合点し、いよいよ熊本の二年目のシーズンがこの日曜日から始まります。

シーズンチケットを買った人も、買わなかった人も。昔からのレプリカユニを用意している人も、今年から応援しようと思っている人も。新しいチャントを練習しているゴール裏の人も、メインで静かに観戦しようという人も。彼女を誘っていこうと思っている人も、子供にせがまれている人も。戦術眼を自慢したい人も、ミーハーに応援したい人も。藤田のプレーを楽しみにしている近所の床屋のイサムちゃんも、宇留野目当ての会社の同僚の女性たちも。練習場に連日通い詰め厳しくも暖かい論評を繰り広げるシニアファンの方々も。遠くアウェイの地でチームを守ってくれる関東サポの面々も。初めての運営業務、スーツ姿で慌しく動き回った熊谷元主将も、この大不況のなかでも変わらずチームを支えていただくスポンサーの皆さんも。縁の下の力持ち、マネージャーやトレーナー、チーム広報の岩水さん、今シーズンのチーム作りを陰で支えた強化担当の首藤くんも。熊日の陣立記者、久保田記者、後藤記者、J‘sゴールの井芹記者、そしてスカパー実況のRKK・山崎アナも。コンコースを彩る売店ブースの皆さんも。シャトルバスのハンドルを握る産交のドライバーの方々も。九州警備の現場の方々も。ボランティアの皆さんも。切符もぎりや会場スタッフで活躍してくれる高校生たちも。いつも最高の芝を準備してくれるKKの施設管理の方々も・・・。

誰もが準備を尽くし、誰もが待ちに待った09年シーズン。怒濤の51試合。日本サッカー史上まれにみる過酷なリーグ戦がついに始まります。何に惑わされることもなく。ただただホームチームの勝利を願って。毎週、毎節に一喜一憂して。忙しい仕事のなかにあっても、同僚と次節の予想で盛り上がり。試合が終わればとにかく酒を酌み交わし。布団に入りチームのゴールシーンを夢みながら眠りにつく。ホームチームのことを思う毎日。また新しい年(シーズン)が始まります。

8日開幕戦。またこの晴れ舞台に臨める喜び。奮い立つ気持ちを胸に、キックオフの笛を待ちましょう。