5月30日(土) 2009 J2リーグ戦 第18節
熊本 1 - 2 鳥栖 (13:03/水前寺/3,732人)
得点者:11' 島田裕介(鳥栖)、49' ハーフナーマイク(鳥栖)、64' 木島良輔(熊本)


こんなに一週間が長く、次の試合が待ち遠しく感じたのは、ミッドウィークの試合間隔に慣れてしまったからではなく、前節の結果にかなりへこんでいたせいかも知れません。ふがいない敗戦を清算して迎えたい第2クールの初戦。水前寺競技場に12位の鳥栖を迎えて九州ダービーの第3戦。鳥栖から駆けつけたサポーターはゴール裏以外にもはみ出し、一方のホームのファンもスタジアムを赤く染めました。日なたは焼け付くような陽射し。久しぶりの水前寺のゲームでした。

鳥栖 (先発フォーメーション)
35ハーフナー 34山瀬
10島田26武岡
14高橋6高地
3磯崎32山田
5飯尾20渡邊
 21室 
得点力不足に悩む鳥栖は、直前に横浜FMからレンタルした山瀬とハーフナーマイクの2トップを敷いてきました。対する熊本は、左SBに矢野をスライドさせ、初めて原田拓を中盤に上げてきました。藤田、原田、石井のトライアングルで「ボールを落ち着かせたかった」北野監督。しかし、試合後の岸野監督のコメントで明らかになったように、その策が“裏目”に出てしまったようです。「熊本は詰まったら石井選手のところを経由してボールを逃がす」とスカウティングしていた敵将は、徹底してそこを奪いどころと指示していました。確かに原田がゴールにより近く位置して、随所にいいパスを供給する場面もありましたが、もう少しボランチのエリアまで下がって石井をカバーするなりして、もうひとつの“落ち着きどころ”として機能すれば…と。石井はやはり今の熊本の“心臓”。全体の連携不足は“急増シフト”の印象が否めませんでした。なんだか中盤の人数不足と、互いの距離の遠さを感じた前半。11分には早くも左サイドをえぐられ、ゴール前にこぼれたボールを島田に押し込まれてしまいます。2列目、3列目からのフォローと飛び出し。全く熊本がやりたい形を見せつけられました。

もともと玉際に強く、厳しくくるのは鳥栖の持ち味でしたが、今日はそれに激しく身体をぶつける意欲と、ハーフナーという“ランドマーク・タワー”のような前線のポイントが加わって、なかなか前を向かせてくれない。こちらが中盤で保持しても、“中盤で潰す”という鳥栖の意図が徹底しているのか、アタッキングサードに運ぶどころか、GKまで戻してしまう場面が続きます。

20分すぎ、敵DF裏をうかがう原田の右サイドへのロングパスあたりから熊本もリズムを得て、チャンスを作ります。CKからの混戦。エリアにカットインした藤田のマイナスパスに誰も感じておらず、合わせられません。しかし、そういう藤田のプレーを他の誰かがやろうとしない。単にゴール前でボールを譲り合うシーンは、相変わらずの課題でした。

カウンターを含めてボールの出どころを潰す鳥栖に対して、熊本の守備は緩慢と言わざるを得ません。まるで何かコンディションに問題があるような“ゆるさ”さえも感じます。後半早々は同点に追いつくための大事な頑張りどころにもかかわらず、島田からエリアに侵入した高地に渡り、そのクロスをハーフナーに難なく押し込まれます。随所にチェックの遅さ、守備の偏りが連続した結果でしかありませんでした。

熊本は小森田に代えて井畑、宇留野に代えてチャ・ジホを投入。1点を返したのは19分、前線での井畑のプレス。ボールが木島の前にこぼれるとドリブルで持ち込み、対峙したGK室の意図したタイミングよりいち早くゴール左角にねじ込みました。

苦しい時間帯に入って、同点への恐怖や追加点への焦りが生まれるものと思いましたが、今日の鳥栖、失点後も「下がりすぎるな」と岸野監督が激しい指示を繰り返し、選手の距離も間延びせずコンパクトを維持していました。そして、見るからに疲れの見えるハーフナーを最後までピッチに残し、中盤の選手だけを次々にフレッシュしていきます。すでにこの試合は、鳥栖の低迷を救うためにレンタルされたこのニューフェースの「90分間戦えるか」という“メンタル面”を試すことに使われていました。

今日のゲームだけで原田の中盤に駄目出しをするつもりは毛頭ありません。監督としても、苦況を打破するためのひとつの“チャレンジ”でしょうから。ただ、その組み合わせと、使いどころと使う相手を今回は間違っていたのかも知れないなと…。もうひとつ、4-3-3で“いいとき”のロアッソは石井、藤田、小森田の縦の関係、距離がうまくいっているとき。そういう意味では、今日の小森田、状況を判断してもう少し下がってボールを貰いにきてもよかったのかなと思うのですが…。原田が前へ前への意識が高かっただけに。

シュート数4本という結果。ゴールへの意識の低さを表しているということですが、実はここ2試合は、ゴールへの意識以前にシュートに至るまでのところに問題が発生しているように思えてなりません。ボールを持てる、回せるという段階から一歩後退しているような。いつの間にか、できていたことができなくなっているような。自分たちが成長する以上に他のチームは成長している。われわれは“チャレンジャー”なんだという初心が忘れられているような。

試合後、バックスタンドへの挨拶を忘れかけたイレブン。いつものKKとは逆のホームサイドに何となくアウェー感覚に陥ったとすれば、それも笑えない笑い話です。しかし敗戦の結果に、「行かなくてもいいかな」という気持ちが浮かんでいるような足の重さも感じられました。もし、そんな気持ちが少しでもあったとしたら、問題は根が深い。それはファンの期待やチームへの思いを浅く見ているということだけでなく、そんな気持ちがプレーに反映していないかと。「行かなくてもいいかな」。そんな気持ちでラインを割るボールを見送っているとしたら…。

いずれにせよ今日久しぶりに見た熊本の得点が、組織的なものではなくて、井畑の果敢なチャレンジから生まれたことが象徴的だと思います。当たり前のプレーでは打破できない。気迫のこもったプレーが相手を脅かす。それはボールを回しているときでも通じることであり、つまりは“チャレンジする”“闘う”気概がほしいということ。極論を言えば、負けてもいい。まだ圧倒的な強さなど持っていないのだから。ただ、チャレンジする気持ちだけはファンに示してほしい。

90分間なんとか走り抜き、ヘロヘロになっているものの満足感に満ちたハーフナーマイクの横顔。鳥栖から駆けつけたファンに移籍挨拶よろしく手を振る姿を見ながら、そんなことを思っていました。

5月24日(日) 2009 J2リーグ戦 第17節
岐阜 1 - 0 熊本 (13:04/長良川/2,277人)
得点者:19' 片桐淳至(岐阜)


ホームチームへの“想い”が募れば予知能力さえ身につくようで。実は前夜、岐阜に0-1で負ける夢を見てうなされてしまいました(笑)。ああ、嫌な一週間が始まる。と思って目覚めたら、いや待てよ、今日が日曜日。全く不謹慎な夢を見てしまった自分を恥じて、シャワーで身を清めて、テレビの前に居住まいを正したのでした。

これまでJFL時代を含めて2敗3分という岐阜に対する相性の悪さがどこか意識の奥底にあって、そんな不吉な夢を見てしまったのかも知れません。しかし、今季新加入した熊本の選手たちにはそんな妙な引っかかりがあるわけもなく、ましてや新卒の選手などで大幅に顔ぶれが変わった岐阜にとっては得手不得手より、とにかくホーム戦を連勝するチャンスというモチベーションの高さだけがあったはずです。下位に沈んではいるもののこの岐阜というチーム、勝ちきれていないだけで、今期も攻守に早い、実に小気味のいいカウンターサッカーを貫いていると承知していました。

これまではお互いに退場者が出たり、どこかしら落ち着かない荒れた試合になるという印象が残っています。しかし、今シーズンのこの対戦こそは、新生パスサッカーの熊本の本領を発揮して、圧倒的な強さで第1クールの締めくくりとしたい。そんな気持ちがありました。しかし、結果は90分間を通して互いの現在の低迷を象徴するような「決定力のなさ」が支配した試合内容になりました。

岐阜 (先発フォーメーション)
10片桐 16西川
11高木14嶋田
7菅23橋本
6秋田19冨成
4田中3菊池
 1野田 
最初にチャンスを掴んだのは熊本。5分、ロングパスからDFをかわした木島の決定的なシュートはGK野田に防がれます。逆に直後の岐阜の逆襲。左サイド片桐からファーにクロス。嶋田の折り返しを西川が蹴り込みましたが、なんとか福王、吉田がブロックしました。ナイスクリア。15分にも市村からエリア内の小森田に渡りシュート。これも野田がセーブ。22分には宇留野がドリブルで仕掛けてエリア右に入ってきた藤田へ。得意の角度からのシュートも野田の足が伸びました。JFL時代以来の対戦になる元琉球・野田恭平の守るゴールマウスは堅かった。当たっていた。いや当たらせてしまいました。

結果的に決勝点になったのは19分、熊本のコーナーキックからのトリックプレーを防ぎきった岐阜のカウンター。右サイドを突進してくる秋田。これをエリア内で吉田が倒してPK。きっちり片桐に決められました。かつてはブレイズ熊本にも在籍していたという34歳の苦労人・秋田。それにしても90分を通して驚くべき運動量でした。

同点にして終わりたかった前半でしたが、1点先取した岐阜は無理して攻め込まなくなり、うまく凌ぎ切られた感じがしました。しかしポゼッションは熊本にあり、あとはフィニッシュの問題だけ。後半同点、逆転という展開は十分に望める。ハーフタイム、これで悪夢は晴れる、と思える逆に思ってしまえるような流れでもありました。

しかし、そんな予想とは裏腹に後半押されっぱなしになったのは熊本の方でした。全くいつもの熊本らしさが見られない。ボールを回せない以前に拾えない。DFラインからロングボール頼みの攻撃は、しっかり撥ね返されてしまいます。右サイドバックの市村も攻撃参加するシーンが少なくなる。後半、投入された松岡も、挨拶代わりのミドルシュートはよかったものの、その後は大きな波にのみ込まれるように消えてしまいました。

何故熊本は中盤でパスを回せなくなったのか、何故拾えなくなったのか。前半終了間際に岐阜はボランチの菅を下げて染谷をサイドに投入。菅の位置には高木を置きました。「中盤を戦術的に修正した」と試合後、松永監督が述べていますが、どういうポジショニングで中盤を埋めたのかテレビではよくわかりませんでした。ただただ、現地の蒸し暑さだけが、したたたり落ちる選手たちの汗から伝わってきました。

前節のC大阪戦。0-3と点差的には完敗でしたが、内容は第1クールのベストという評価も多かったのが事実です。しかし今節は、点差こそ1点という惜敗のうちに入りますが、このクールのなかで1、2を争うワーストゲームといえるのではないでしょうか。節目の試合を終えた時点で4勝4分9敗 (得点16 失点24)という結果。それは残念ながら昨季の第1クール終了時(15節)の3勝3分8敗 (得点16 失点27)という成績とそうそう違わないと言わざるを得ません。概観すると、新しいスタイルに衣替えをして発展途上にあること。まだまだこの生みの苦しみは並みたいていではないと思う。そしてさらにもうひとつ、ゴールデンウィークの連戦以降、チーム全体のコンディション・マネジメントに今年も苦しんでいるという感じがしています。

試合後、「これはまだ夢の途中かも知れない」と目をつぶってみましたが、悔しさで眠れるはずもなく、ただの現実逃避に自嘲してしまいました。しかしこの現実と向かい合っていかなければならないわけで・・・。それは昔、Jリーグ創設期、毎節毎節、都合のいいように応援するチームを変えられた頃と違って、決して浮気などできない、愛するホームチームが今まさにぶつかっている試練だから、われわれファンももう逃げる場所などないと、そう思ったのです。

「必ず応援してくれている皆さんと喜び合える日が来ると信じてます!」。試合後に更新された藤田のブログの言葉を、われわれファンも信じています。


5月20日(水) 2009 J2リーグ戦 第16節
熊本 0 - 3 C大阪 (19:03/熊本/3,297人)
得点者:75' マルチネス(C大阪)、77' 西澤明訓(C大阪)、83' オウンゴ-ル(C大阪)


セレッソ大阪 (先発フォーメーション)
 15小松 
8香川7乾
19石神13平島
10マルチネス25黒木
2羽田5前田
 3チアゴ 
 21キム 
「勝敗を分けたのは『ゴールに向かう目的意識と、決定機での集中力の差』だった」(熊日・21日付)試合後、勝利チームの監督はそう述べました。

そもそも戦前、われわれの周りでは「力の差は歴然だ」「何点取られるのか」と心配する意見が多かったのも事実。湘南と首位戦線を争うセレッソ大阪。日本の若き才能、香川と乾を擁する大阪。その破壊力への恐怖。昨シーズン、明らかな連携不足の状態で対戦、勝利したときとは違うチーム。北野監督はこの試合に対して、「守備的な戦いになると思う」と言いながらも、「第2クールに向けて、今この大阪にどれだけやれるのか試したい」という意気込みがありました。

しかし蓋を開けてみれば、守備的といっても決して引いて守るのではない、いつもの熊本の守備隊形そのものでした。C大阪の1トップ2シャドウに対して「コーチングとカバーリングに長けている(北野監督談)」(J’sゴール)という理由で福王を久しぶりに抜擢。河端とのコンビで、バイタルエリアに入ってくるボールを厳しくチェックしていく。あるいは香川、乾の飛び出しをオフサイドに仕留める。高さでは頭ひとつ差がある小松に対しても、河端がきっちり身体を寄せて自由にさせない。

今日の熊本は全員の集中力が高かった。守りでは相手に粘りつくように奪い取る。奪っては、玉離れ早く回していく。そしてこのゲームで誰もが一致して評価したのは小森田の活躍。ボールを収め、前を向く場面がたびたび。要所ではダイレクトパスでラインを切り裂く。小森田と藤田と石井の縦の関係、お互いの距離とポジションの入れ替わりがうまくハマッテいる。流れるように自然に。

予想通り大阪の前線の3人は、味方からのボールを引き出す動きに長けていました。しかし、それでも何度も熊本守備陣に突破を止められる。最後は身体を投げ出して…。首を傾げるのは乾。いつものようにはうまくいかない。そうなると焦りが生まれるのが普通の“若さ”というものですが、どうもこの2シャドウは違っていたようです。何度でもめげることなくチャレンジし続ける。それも淡々とまるで単調な仕事を繰り返すように。それはクルピ監督が「セレッソとやる相手は必ず前半にガツガツくる。それをしっかり凌げるかどうかだ。」という指示を確信し、真摯に守っているかのようでした。

初めから失点は覚悟のうえでの対戦でした。それがどの時間帯なのか、試合開始からあっという間なのか。どれほど凌げるのか。それほど恐れていた大阪の攻撃陣。しかし気がつけば前半もあっという間に30分。こうなったらファンの心理は現金なもので、先制点が欲しくなる。いや、そんな匂いもする互角の展開。ただ、熊本としてはそのためにはもう一歩リスクを犯した攻撃が必要だなと感じさせる展開でもありました。

そんな欲が災いしたのでしょうか。35分過ぎから大阪の時間帯。左サイドをえぐったマルチネスからマイナスパス。これを蹴りこんだ香川のシュートは激しくポストを叩きました。ふーっ、危ない。
しかし39分には逆に熊本が好機。右サイド奥、宇留野からのクロスに中央に走りこんだのは山本。これは黒木が追いついて阻止されます。それにしても評判どおりのマルチネスはともかく、石神とか黒木とか…。今年の大阪の好調を理解するには十分すぎる補強戦力だと思いました。

スコアレスのまま前半終了。ロッカーに引き上げる選手達に対してスタジアム全体から割れんばかりの拍手が起こりました。あの大阪相手に全く互角に戦っているわがチーム。おそらく来年は対戦しないであろうこのチームとの戦い。攻守の切り替えの早いワクワクするようなパスサッカー。昨年とは一段も二段も内容の濃い戦いをみんなが堪能していました。

両チーム選手交代なく後半開始。開始早々、熊本のビッグチャンスが訪れます。石井からのパスをエリア内で宇留野が落として走り込んできた藤田へ。決定的瞬間。思わずシートから飛び上がる。しかし藤田のシュートはゴール右にそれていきました。残念! 

はた目からはどこにも不具合はないように見えました。相手の乾と香川の互いのリズムもいまひとつ合っていない様にも見えましたし。得点とか勝敗とか関係なく、このまま90分間、目の前のエキサイティングなサッカーを楽しみたい。そう思っていました。

しかし見えない燃料タンクは、空っぽになりかけていたのでしょう。大阪の圧力は選手のスタミナを確実に奪っていただろうことも想像できました。あれだけプレスをかわされて追いかけ続けるのは容易なことではありません。いつになく早い時間帯で熊本ベンチが先に動きます。小森田を引っ込めて西を投入。宇留野をワントップに置き換えます。好調の小森田からの展開をもっと見てみたいと誰もが思いましたが、西森と西を、ちょうど香川と乾のように見立てて使ってみたいのかなとも思いました。さらに続いて藤田、最後には宇留野もピッチから去ります。
それはまるで、急に排気量の小さい車に乗り替えたようなパフォーマンスの低下でした。あるいはシフトダウンをしていくような…。誰の出来が悪いということではなく、チーム全体の排気量の低下。

30分にマルチネスのみごとな個人技で失点すると、そこからチームの歯車は完全に狂ってしまいます。あっという間の西澤の追加点。これも完全に集中を欠いたような崩されかた。最後は香川をうまく仕留めた福王でしたが、バックパスをオウンゴール。一瞬の3失点…。

好調に見えたなかで、こちらが先に動かざるを得なかったのかどうか。もう少し引っ張ることはできなかったのか。そのベンチワークにはわれわれの中でも意見が分かれるところでした。中二日のスケジュール。今日も藤田は、敵のキーマン・マルチネス相手に厳しい攻防を繰り広げ、その存在感を示してくれました。しかしだからこそ監督は、このゲームでの藤田よりも、“これからのシーズン”で藤田を失うことを恐れたのかも知れない。この試合での活躍と引き換えの見えない金属疲労を憂慮したのかも知れない。今季目指すパスサッカーへの大転換、まだその手ごたえを試しているような第1クール。そしていよいよ結果を見せたい第2クールを前にして、その存在はあまりにも大きすぎる。
勝負の現場で指揮官がそんな長期的な発想をするのかどうか、しょせん結果論であり、まったく勝手な想像でしかありませんが、今の熊本の決して厚いとは言えない選手層のなかで藤田の役割(もちろん小森田も宇留野もそういったケアが必要なベテランです)はそれほどに決定的であるということでしょうし、このシーズンを戦っていく陣容をはっきりと見定めているからではないでしょうか。

ないものねだりを許してもらえるなら、お互いベストの日程、ベストのメンバーで、この大阪ともう一度戦いたい。でもそんなタラ、レバの「条件」など、どこの国にもない、だからこそサッカーなのだということぐらい百も承知ですが、それほど面白くて、可能性を感じた(結果だけを見れば完敗でしたけど…)そんな一戦でした。

オウンゴール直後に足早にスタジアムを去るファンもいた反面、最後まで試合を見届け、大きな拍手を送るファンも少なからず見られました。試合翌日、われわれの職場でも、様々な評価がありましたが、チームのスペクタクルな戦いぶりに大きな拍手を送る、結果は憂いながらも内容はきちんと評価するという者も少なからずいたことは(ちょっと意外でもあり)とても嬉しく思いました。

冒頭のクルピ監督のコメント。「ゴールに向かう目的意識」という言葉は、「ボールを持って、回してはいるものの…」という今季始まってからのわがチームの課題を端的に指摘してくれているのでしょう。ポゼッションが勝利に結びつくのかどうか…。それを考えるのは、もう一試合観てから。次節、第1クールの最終戦・岐阜戦に声を枯らしてからでもけして遅くはないような気がします。

5月17日(日) 2009 J2リーグ戦 第15節
栃木 1 - 1 熊本 (13:03/栃木グ/2,349人)
得点者:63' 河原和寿(栃木)、89' 原田拓(熊本)


何でもないところで、不用意なプレーで自らを苦しい状況に追い込んでしまうのが今季の熊本の悪いパターンになっています。今日の木島の退場がまさにそれでした。全体のゲームプランを壊してしまう軽率な行為。しかしピッチに残った10人がよく頑張った。諦めずによく追いついた。同点弾を決めた原田がインタビューで「キジさんにいつも助けられていたから、キジさんのためにもと思った」と語ったのには心動かされましたが、このコメントに一番反応したのは恐らく木島本人だったのではないでしょうか。

松田新監督を迎え、多くのJ経験者を加えた新生・栃木。しかしながら、なかなか結果が伴わず下位に低迷。ただ前節からの初連勝をホームで目論む。一方、連敗中のわが熊本は、3連敗だけは何としても免れたい。そしてそれ以上に、JFL時代からの因縁めいた戦績、また昨年のあの天皇杯の忌まわしい敗戦の雪辱を図りたい。そんな思いの詰まった試合でした。

栃木 (先発フォーメーション)
36若林 14稲葉
7佐藤20河原
5落合15鴨志田
4井上2岡田
23米山3大久保
 29小針 
立ち上がりの栃木の時間帯をうまく凌ぐと、10分過ぎ頃からは、熊本のワンタッチのパス回しが機能し始めます。大きなサイドチェンジを多用したパス回しから最後は右PAに走りこんだ小森田へ。しかし、わずかに届かず。16分には小森田からのパスに宇留野。GK小針より一瞬先に奪うと、角度のないところから強引にシュート。これはゴールライン上で相手DFがギリギリのクリア。栃木は、プレスこそ前線から厳しくくるものの、最終ラインが低く、バイタルエリアに隙があるように見えます。そのなかでひと際印象的だったのが熊本スピリッツの落合。日頃は中盤を落ち着かせる守備的な選手ですが、今日は実にアグレッシブ。まさかこんなにまとめて大津高の後輩たちと対戦するとは思ってもいなかったでしょう。「オチさん(落合)は相変わらず激しいプレーをしていたので、さすがだなと思った」(J’sゴール)と原田も川崎時代は同じポジションでしのぎを削ったこの先輩の活躍を称えました。

互いの意地がぶつかり合うような展開。栃木は鋭くカウンター。先制点はどちらに転ぶのか、このまま前半はスコアレスなのか。1点の重みが大きく圧し掛かりそうなドキドキする心理戦。そういえばいつも栃木との試合はこんな気持ちだったような気がします。しかしその心地良い緊張の糸を一瞬にして切ってしまったのが、木島の退場でした。いつもなら休息と修正のために使われるであろうハーフタイムの時間が、プランの“再構築”に費やされることになりました。後半45分の両チームの戦略。実況のアナウンサーは「熊本はアウェーで勝ち点1をとれればいいと考えるのか…」とコメントしましたが、それは数的不利の状況下でのしごく当然の読みだったのでしょう。しかし、これまでの北野監督の采配ぶりからわれわれは確信していました。おそらく勝つことしか頭にないだろう。熊本は勝ち点3をとろうと思っているはずだと。

「3トップだったので2トップになった時に、サイドバックがどうやってくるのかを最初は見ようというふうに言いました。そこで栃木さんのサイドバックが出てこなかった。最初は出てきませんでしたが途中から出てきたので、ちょっと混乱しました。」(J’sゴール)後半18分に河原にゴールを破られるまでの時間帯を、北野監督はそう言って悔やみました。やはり10人では厳しいか…。いつもなら十分なはずの残り時間30分も、妙に短く感じられました。

とにかく早く追いつきたい熊本は、勇気を持ってDFラインを高く保ち、両SBを上げ、ほぼ2バックで守り続けます。一人少ない代償として中盤の負担は増し、押さえきれなくなってきてはいましたが、そこは山本に代えて宮崎を投入。そして、徹底して市村を走らせます。将棋の香車のように、敵陣へ縦に、あくまで縦に鋭く切込む。本当に彼の運動量は無尽蔵。まるでサイドに市村だけの渡り廊下があるように、スルスルと渡っていく。追いつけない厳しいパスにも、まったくめげるそぶりも見せず、何度も何度も繰り返し走り続ける。

41分、藤田のスルーパスに市村が飛び出しGKと1対1。この決定的な場面も小針がクリア。悔しがる市村。さすがに疲労は隠せない。栃木は佐藤に代えて栗原を入れて逃げ切りを図る。時間は遂にアディショナル・タイム。右サイドから石井がクロスを入れる。宮崎がエリア内でつぶれ、ボールはファーサイドに抜けるか、と思った先には何と原田が飛び込んでいました。ここは左SBの仕事場だといわんばかりに。自身も待ち望んでいた移籍後初ゴール。沸きあがるサポーター席。チームメイトも促し、ゴール裏に駆け寄る原田。前線の欠員を両サイドバックが埋め、まさに全員でもぎとった同点弾でした。

ロスタイムあともわずか。しかし勝ち点3を諦めない熊本。DFの不用意なバックパスのミスを見逃さなかった西森。GKより早く追いつくも、一瞬のためらいでシュートチャンスを逸します。そのまま終了のホイッスル。まるで負けたかのように肩を落とす栃木イレブン。栃木は数的優位でボールを保持できる状況をうまく活かせなかった。そして「勝って当然だ」という自身に向けられた見えないプレッシャーと戦った。まさに昨シーズン、今日と同じような小雨の水前寺で熊本が岐阜に喰らった同点劇を思い起こさせるような結末になりました。

「執念が実った」と称えるのは解説の水沼氏とアナウンサー。しかし藤田は試合後「諦めないということは特別なことではない」(J’sゴール)と言い放ちました。そのコメント全体に、勝ちたかったという強い気持ちがにじみ出ていました。そして同時に「大切な選手。やんちゃ坊主のままじゃいけない」(18日付・熊日)と、熊本の10番を背負う男に反省と自覚を促す言葉を忘れませんでした。

終了間際、ロスタイムの同点弾という劇的な幕切れではありましたが、気づいてみればそれは辛うじて3連敗を止めたという結果。なんとなく吹っ切れないモヤモヤしたものも残ります。しかし、この引き分けをなんとか浮上のきっかけとしたい。次は中二日で上位を走る大阪との戦い。木島が外れる前線の構成はどうなるのかが一番の関心です。出場停止は決して喜ぶべきことではありませんが、新しい選手にとっては大きなチャンスでもあります。第一クールも残り2試合。このあたりでシーズンを見通した、思い切った選手起用など・・・と。北野監督とっても新たなチャレンジ。期待したいと思います。

5月10日(日) 2009 J2リーグ戦 第14節
熊本 0 - 1 甲府 (13:04/熊本/19,321人)
得点者:44' マラニョン(甲府)


2万近い観客が詰め掛けた今日のKK。真夏なみに気温も上がり、スタジアムグルメで賑わうコンコースはごった返していました。カキ氷の店には子供たちの長い行列が。それにしても今日はやけに親子連れが目立ちます。レプリカユニを浴衣に見立てると、まるで夏祭りかあるいは縁日の参道の景色のような。これもまた面白い楽しみ方と言えるのではないでしょうか。今季初の大動員に、こちらの気持ちも高揚し、年甲斐もなく(いつものように)屋根のない日なたで観戦していたら熱射病っぽくなって寝込んでしまい、更新が遅れました。5月というのに、30度を越える炎天下のピッチ。15日間で5試合という連戦の最後の試合にして、更に過酷な環境になりました。

甲府 (先発フォーメーション)
 14森田 
11マラニョン16松橋
10藤田9大西
 2秋本 
7石原32杉山
4山本19池端
 1萩 
しかし甲府は強かった。多くの評論が、熊本が目指すパスサッカーの“本家”甲府への挑戦と書き立てましたが、蓋を開けてみると甲府のパスサッカーは更に進化していました。熊本学園大付属高が初めて生んだJリーガー森田をトップに置き、松橋、マラニョンをサイドに配する3トップ。速さに優れるこの両ウイングに、早め早めにボールを入れてくる。それに影響されて、熊本もいつもの短いパス回しを忘れたかのように、前線への配球を急ぎすぎてしまっている感がありました。その両ウイングを警戒するあまり、原田、市村の熊本の両SBが最後列に押し下げられているようにも見えましたが、市村を含めわがDF陣は最大の要注意人物“マラニョン”の良さを消し、仕事をさせていませんでしたね。たった一度、あの失点の瞬間を除けば…。

前半20分、吉井が倒れたときの手のつきかたが悪く、ひじを負傷するというアクシデントが起こります。これで熊本のゲームプランは大きなリスクを抱え込むことに。交代としてあまりに早く宮崎を投入することになってしまいました。いえ、宮崎が悪かったということではありません。今のロアッソ、守備をベースに前線にも絡める吉井は、恐らく最後まで引っ張りたい選手だったはず、と思うのです。

37分、甲府は熊本のDFの裏に縦一本。松橋の強烈なシュートはGK稲田が弾く。そこに飛び込んだ森田のシュートは原田が身体で跳ね返します。前半も終了間際になった時間帯、少しずつ押し返し、形をつくりかけていた熊本に絶好のチャンスが。中央でのインターセプトから石井が小森田に預け右サイドに走り込む。小森田がターンして再び石井に。PA内に走り込んだ石井が右足で撃つ。しかし、ここは甲府GK萩がナイスセーブ。

この流れのなかで明らかに熊本は敵陣に前掛かりになっていました。自陣にはDFが二人。甲府はボールを奪うと、素早く前線のマラニョンに。その前には、広大なスペースが。ドリブルで突っかける。対応した矢野でしたが、追走してくる森田へのパスという選択も頭によぎり、マラニョンへのチェックを躊躇させました。エリア侵入前に撃つマラニョン。そのシュートは、稲田の手をかすめ、わずかな隙間を縫って、ゴールに突き刺さりました。少なくともスコアレスで終わりたかった前半の終了間際。痛恨の失点。それは、“止まった”マラニョンには完璧に対応していた熊本守備陣が、唯一犯した、“動き出す”マラニョンにボールもスペースも与えた失策(エラー)でした。

後半、熊本は修正を図ります。北野監督の指示は「もっとゆっくりビルドアップしよう。」というものでした。小森田から、藤田から、感じのいいパスが出始めます。しかし、甲府は松橋に代えてキム・シンヨン。“高さ”を増していく。さらに森田にはブルーノ。J1昇格を伺うチームにとっては、1点の優勢だけでは許されない。厳しい時間帯に、相手が嫌がる絶妙なカードを次々と切ってきました。

熊本は33分、小森田に替え満を持して宇留野を投入。福岡戦で負傷してから実に7試合ぶりの宇留野の勇姿。彼の復帰をファンはどれほど待ち望んでいたでしょう。やっぱりこの男にはHondaの頃から“赤”が一番似合っているのです。藤田も分かっている。いきなり右サイドにロングパス。そこに宇留野が必ず飛び込んでくることを。PA前で木島と絡む。仕掛ける。CKを取る。熊本に俄かに“点の匂い”が蘇ってきました。ショートコーナーから藤田のヘッドはバーをかすめる。攻撃のテンポが上がっている。得意のゴール前の回しから最後は石井のミドルシュート。惜しい。

攻守が激しく入れ替わる最後の時間帯。両者の猛攻。カウンターのリスクを覚悟で攻める熊本。ブルーノの決定機を稲田が神がかりのクリア。熊本もカウンターから山本がエリア内。切り返すがシュートではなくパスを選択。走り込んだ宮崎のシュートはバーを越える。遂に、後半45分間、両者ゴールを割ることはできず、終了のホイッスルが鳴り響きました。

わずか1点が勝敗を分ける結果になりました。高さや強さの差は決してチーム力の差ではありませんが、熊本と甲府の“力”の差は、点差以上のものがあったと言わざるを得ません。甲府は、パスサッカーをベースにしながらも、守備を強化し、さらに前線の“タレント達”の特徴を活かす戦術に磨きをかけていました。まだまだ届かない、点差以上の差が、立ちはだかっていたようにも感じました。

熊本にとっては、宇留野の復帰が何よりの吉報でした。いわゆる古巣との対戦。試合後の甲府メンバーとの握手でも、「頑張れよ」「頑張ってるな」と、互いにワンアクション多い。色々なことがあっての新天地・熊本。敗戦を詫びるように、ゴール裏に両手を合わせる宇留野。メインスタンドにも挨拶を終え、ロッカーに引き上げるチームメイトと別れて逆方向に歩き出します。そして、アウェイ側ベンチ横あたりから、それこそ向こうからは見えるかどうかわからないくらい遠くから、甲府サポに向けて一瞬、手を振りました。「オレは元気でやっているぞ」とだけ伝えたい。そんな感じがしました。出場時間はわずか15分。でも、どうしてもこの試合に出たかった。そんな気持ちが伝わりました。

メインスタンドには、青い甲府ユニを着た女性が二人。立ち上がると、なんと赤い熊本のタオルマフラーをしばし掲げました。これもまた宇留野本人に見えるかどうかというよりも、「宇留野、頑張れ」「宇留野をよろしく」というようなそんな気持ちだけを伝えるような。愛された選手。サポの思いや選手とのその距離感の清々しさを感じて、実に印象に残った光景。そして、この選手が熊本に来てくれて本当によかった。そう思った瞬間でもありました。

5月5日(火) 2009 J2リーグ戦 第13節
富山 1 - 0 熊本 (13:04/富山/5,113人)
得点者:82' 野嶋良(富山)


中二日の4戦目。熊本はとうとう藤田を休ませてきました。更に木島、中山も帯同せず、小森田、西森、西の3トップ。トップ下には宮崎を入れて、純県産の攻撃布陣を敷きました。
対する富山は岐阜に3-0、栃木に4-0と2連勝中、4試合負けなし。失点の少なさはここまでリーグ2位で、順位も熊本の上に着ける8位。何よりわれわれもまだ到達したことがない、勝率5割に達しています。このオフシーズン、目立った補強をしなかった富山に対する評論家たちの前評判は、揃って低いものでした。しかし、JFL時代堅守を誇ったアローズと、みごとなオートマティズムの攻撃で恐れられたYKK・APとの融合(ユナイテッド)チーム。長谷川や朝日、濱野に上園。あの頃、「旧サカくま」で試合データの記録を作っているとき、何度書き記した名前だったことか…。その連中を経験豊富な楚輪監督が、どのような組織に仕上げているのか。また唯一の“補強”ともいえる副島ヘッドコーチの存在も贅沢。戦前にわかに、遠い富山のアウェーの地にチームを送り出したあの当時の心細さが蘇ってきました。Jの1年先輩とはいっても、この一試合一試合の勝負の世界ではあまり意味がない。おそらくは予算規模も、環境も富山のほうが上回っているのは容易に推測できる。好調の上位チームとの対戦として、厳しい戦いを想像せざるを得ませんでした。

富山 (先発フォーメーション)
17木本 13長谷川
14川崎7朝日
8渡辺5長山
27舩津19西野
3堤6濱野
 1中川 
試合は、しっかり自陣でブロックを作って守りカウンターを狙う富山と、ポゼッションを保ってそれを崩そうと意図する熊本という図式になりました。右SBの市村はもちろん、今日は左の原田も積極的に仕掛けるシーンが見られます。西森もそれを引き出すためなのか、中に中に入っていく。あるいは逆に西森が、下がって守備をするシーンが多く見られ、なかなか自陣から出ることが出来ずにいる。持ち味のドリブル突破はなかなか見られませんでした。25分には、PA前のボール回しから左の原田にパスが通る。原田が切り返して放ったシュートは、惜しくもポストに嫌われます。残念。利き足とは逆足のシュートでした。富山は、熊本の上がったサイドバックのスペースに長谷川や木本、朝日などを走らせ、そこに素早く縦のパスを入れていくことに専念。しかし、熊本がうまくオフサイドに仕留めているという前半でした。

後半、富山は明らかに高めでチェックをするように戦術変更しました。熊本はなかなか前に運べなくなりました。山本が押し下げられて、宮崎との距離が間延びする。石井と重なってしまう場面もありました。いや、他の選手も然り。ポジショニングの判断が悪いのか、誰かが重なって“消えて”しまっている。11人が10人、あるいはそれ以下に成ってしまうシーンが目立ちました。数的優位どころではなく、不利な状況を自らが作ってしまっている。

試合後の色々な評論では、若手の選手のシュートへの消極性を憂う論調が多かったのですが、われわれはそれ以前に、選手の“判断力”の差がまだまだ大きいと思いました。ポジション取りの判断、受けてから展開する瞬間的判断、流れを呼び寄せる状況判断、等など。25分、最後列の市村がPA右に果敢に侵入しクロスを入れるが他には誰も入っていない。今日の“出来”を表す象徴的なシーンでした。うちの80歳になる年寄りも「シュートすっときに人数のおらんねえ」と嘆くことしきり。小森田から井畑に代わった前後の時間帯から、熊本はなかなか組み立てられなくなりました。個々のイメージがバラバラというのか。ここにも流れを変えるための判断力の差が歯車を狂わせているように感じました。

1点が遠い。俄然、前からの守備で勢いを増してくる富山。中盤で拾えない熊本。このまま同点でも止むなしかと思われた37分、途中投入のカン・ヒョンスが右サイドを破るとグラウンダー気味にクロスを入れる。逆を取られたソンジンのクリアを、入ったばかりの野嶋が拾うと、しっかりとゴール右サイドネットに突き刺しました。なんとか同点に追いすがりたい熊本は、アディッショナル・タイムに入っても駆け上がる市村からクロス。交代で入った山口がファーサイドで胸トラップ。シュートを放ちますが、ボールは無情にも枠の左に流れていきました。

これで富山に、われわれも経験のない3連勝という栄誉を献上。朝日や長谷川という古顔には仕事をさせなかったものの、若い伏兵達の活躍の前に屈しました。ボールは確かに保持していたものの崩せなかった連携の未熟さ。それは今日のシュート数7本という数字に全て言い表されているように感じます。
いわゆる“主力”を休ませた今日のゲーム。この敗戦。過酷なスケジュールのなかでは必ず訪れるだろう監督のこの判断。おそらくは好調の富山に対して、“実験的な”、あるいは“守備的な”シフトで臨んだのではないかと。新たなヒーローの誕生か、あるいはスコアレスドローも想定した戦いではなかったかと。しかし、惜しまれるのは、それが相手に透けて見えていたこと。そしてそれを覆すようなファイトが見られなかったこと。「熊本スリートップ」。ある意味でこんな“贅沢な”シフトはファン待望のものだったのに。結果がすべてではありますが、今日の戦いが仮に、スコアレスドローだったとしても、われわれはいつものように「悪くない」とは決して言えない気持ちです。しかし、今日のゲームはチームにとってある意味、かなりな課題を突きつけられたことだけは確かだなと思います。

“出来なかったこと”の多さにガックリと肩を落として下を向く“ロッソ”イレブンに、遠く富山まで駆けつけたサポーター達の精一杯の激励のコールが、テレビのスピーカーからいつまでも聞こえている。それが熊本から“念”を送ったわれわれにとっても唯一の救いでした。

5月2日(土) 2009 J2リーグ戦 第12節
熊本 1 - 1 岡山 (13:03/熊本/4,776人)
得点者:28' 小林優希(岡山)、68' 木島良輔(熊本)


今日を皮切りにこれから続く新加盟チームとの初顔合わせ。最初の対戦は、ファジアーノ岡山になりました。とは言っても、富山はあのJFLで何度も苦杯を舐めさせられたYKK・APとアローズ北陸が母体のチームだし、栃木とは互いに因縁深い間柄。唯一、JFLではすれ違いに終わっている岡山の印象だけが薄い感じがします。しかし、以前も書いたことがありますが、岡山とは過去に公式戦で一度、対戦経験がある。あれは05年11月、大津球技場で行われた地域リーグ決勝大会の予選ラウンド。JFL昇格を賭けたこの決戦の初戦。硬さの隠せない熊本に対して厳しくプレスを掛けてくる岡山。4-3の大味な内容ながらも、福嶋、米山の両FWの活躍でなんとか辛勝。この勝利で流れにのり、何とか決勝ラウンドに進むことができました。

あの年、JFL昇格のチャンスを熊本に阻まれた岡山。しかしその夢は潰えることなく受け継がれ、昨年JFLを1年で通過すると遂に今年Jの舞台に上がってきました。それは岡山のサッカーファンからすれば、神戸に移転しヴィッセルと名前を変えた川崎製鉄水島サッカー部のJFL(あるいはJSL)時代にまで遡る悲願だったのかも知れません。

再び相見える日も近いかも知れない。そういう思いで昨年足を運んだ横河武蔵野対岡山戦。そのときの印象を「喜山のチーム」と書き記しています。また、中盤で汗をかいていた関こそいないものの、サイドの妹尾、そして水戸から移籍した西野は要注意でした。

熊本は、累積の出場停止から矢野が戻り、キャプテン河端が入ったCBのほかは、前節と同じ中盤ダイヤモンドの4-4-2。今日も変わらず藤田の姿があります。対する岡山は、ボックス型の底に喜山を置いた4-4-2の布陣。

岡山 (先発フォーメーション)
19西野 20武田
17妹尾14小林
28小野11喜山
32田所4澤口
23植田13金
 21真子 
序盤、少し受けに回った感じの熊本。初対戦の相手に様子を見ているのか、それとも連戦の影響か、何となく出足が鈍い。岡山は前節、念願のリーグ参入初勝利を飾り、吹っ切れたように飛ばしてくる。噂どおりの高い最終ライン。コンパクトな陣形から激しいプレスを仕掛けてきます。熊本も同じく一歩も引かない高いライン。非常に狭いエリアでの互いの奪い合い。ただ、しっかり回しているのは熊本。今日はアタッキングサードでもブレーキが掛かることはなく、3人目、4人目の動きもありPAを崩していくのですが、残念ながらラストパスの精度、あるいはフィニッシャーとの“呼応”に欠ける部分がありました。

そんな時間帯が続く前半28分、藤田の対応に専念させられていた喜山が一瞬フリーでボールを捌く。FWの武田にボールが納まりドリブルを仕掛けようとするところを河端が思わずファウルで倒してしまいます。嫌な位置からのFK。そこから小林に直接ゴールを割られます。またしてもセットプレーからの失点。優勢のなかで先制点を与えるという、今季何度も繰り返している失態でした。

この日のKKウィングは文句なしの五月晴れ。湿度は高くないものの、ピッチの気温は相当に高そうで、前節の日陰の味の素スタジアムとは全く違うコンディション。しかも、中二日の連戦の3試合目。後半は、“疲労”というもうひとつの要素がお互いにどう影響するのか…。後半10分過ぎからでしょうか、熊本のポゼッションに対して、徐々に岡山の足が止まり始めたのがスタンドから見てもわかりました。間延びしてきた陣形。偏ってきたバランス。熊本が攻勢を示し、次々にゴールを脅かす。同点弾は23分、エリア前でワンタッチのボール回しから山本がラストパス。右サイドから木島がラインをかいくぐると振り向きざまに右足でゴールに突き刺しました。残り時間もまだ充分ある。誰もが前節に続く逆転劇を信じました。

しかし、岡山も黙ってはいない。2人同時の入れ替え。それは結果的に喜山を前線に上げるという“戦術的交代”。守備ブロックを作り直し、もう一度ショートカウンターから追加点を奪いにいくという“原点”に徹底しようと意図する。42分のシュートはディフェンダーに当たるとバーにも阻まれなんとかクリア。幸運。稲田の守備。

熊本も中山に代わってFWに入った西森がかき回します。ドリブルを仕掛け、フィニッシュに持っていく。この高さのない2トップを擁して、ショートパスを繋ぎまくり、全員参加の波状攻撃でバイタルエリアを崩していく。これは実に面白い、今季の熊本のスタイルの典型のような。しかし最後の最後まで、岡山の長身CBの守りは堅かった。いや、やはり最後のところでスピード=ダイレクトな繋がりが足りなかった。攻撃のイメージが今一歩、共有されていなかった。

振り子のように、あるいはシーソーのように攻勢が互いに移動するような後半でした。交代のカードという監督采配もさることながら、一歩でも走り遅れ始めることが、相手に勢いを与えることに他なりませんでした。お互いその根底にあるのは、目には見えない疲労でした。どちらも初の連勝を狙った初対戦は、結局、勝ち点1ずつを分け合う“意地”の結果に。それは連戦のなかでの“痛み分け”ともいうべき結果ではなかったでしょうか。
岡山はやはり喜山のチームだったし、サイドの妹尾は嫌なプレーヤーだった。それにも増して、補強したCB、水戸時代にも点を決められたことのある西野の存在感。手塚監督のシンプルで“見切りのいい”戦術は浸透していて、まるで昨年の自分たちと擬似対戦しているような、変な“重さ”や“苦しさ”を感じました。

次回対戦は敵地・桃太郎スタジアム。忘れもしないあの地域リーグ決勝の地。最後は歓喜に涙したものの、二度と思い出したくもない壮絶な戦いの場だったあのスタジアムで、再び戦わなければならないことは、選手はともかく古いファンにとっては、ちょっと“おっくう”な気分なのではないでしょうか。印象が薄いと感じていた岡山ですが、Jでの最初の対戦を経てその姿ははっきりと焼き付けられました。負けられない。今度は圧倒的な力でねじ伏せたい。そんな気持ちがしっかりと芽生えてきました。