7月26日(日) 2009 J2リーグ戦 第30節
熊本 2 - 3 福岡 (18:03/熊本/5,865人)
得点者:54' 岡本英也(福岡)、68' 大久保哲哉(福岡)、69' 高橋泰(福岡)、70' 宇留野純(熊本)、89' 市村篤司(熊本)


久しぶりに更新意欲が失せてしまうような試合内容でしたね。概して言えば、1点取られてからのバタバタ感。自滅以外の何ものでもなく。極端な言い方ですが、攻撃能力でも守備能力の問題でもなく、“危機管理能力“の未熟さが露呈したような、そんな印象。ただ反面、あの状況から、最後までゴールにこだわる姿勢を見せたことは特筆モノだったと言えるでしょう。

九州地方北部に次々に流れ込む梅雨末期の雨雲に、交通機関は麻痺し、土砂災害まで起こっている嵐のような週末。それでも多くのファンが福岡からも到着し、九州ダービー第2戦は予定通り行われました。このKKウィングのゴール裏で、「博多の男なら・・・」と歌う福岡サポーターを迎えるのは実は初めてのことです。福岡に移籍した高橋は、ここまで20試合ゴールなしという状況。このところは後半の交代要員として使われていましたが、この日は4試合ぶりのスタメンでした。

福岡 (先発フォーメーション)
 19大久保 
 18高橋 
26岡本8鈴木
7久藤10城後
2宮本3山形
4田中27丹羽
 22吉田 

前半は熊本の攻勢に映りました。ボールを動かし、人も動き、再三、福岡ゴールを脅かします。これに対して守備から入った感のある福岡の作るブロックは、なかなか固くて割れない。ジリジリするような展開だが、悪くはない。さあ、試合運びを間違えないように。我慢だ。などと自分に言い聞かせていました。この日、高橋に対峙したのは市村と河端。互いの良さも弱点も知っている同士のマッチアップでしたが、高橋の肘が入り河端が倒れる場面も。このイエローで累積4枚になった高橋。次節出場停止になってしまいます。

ハーフタイムの敵将・篠田監督の指示。「ボールをもっと正確にシンプルに動かしていこう」「バックパスに対してラインを押し上げよう」。この二つを確実に実践してきた福岡が、徐々に、そして着実に攻勢を手に入れました。そして54分、右サイド高橋からのクロスにファーの岡本がダイレクトで撃ったシュートは全くの当たり損ね、ゴール前で大きくバウンド、前に体重がかかっていた木下の頭をフワーッと越えてゴール枠内に収まります。熊本としてはまるで“事故”のような失点。不運と言えば不運。しかし、冒頭に書いたように、この1点から熊本は妙にバタバタしてしまいました。

失点の直後、木島に代えて中山を投入。確かに先制される少し前から中山は呼ばれて準備していたのですが、その時点でもちょっと早すぎないか、何か不具合でもあるのか、と、どこか理解しがたい“違和感”のようなものを感じていました。そこで失点。ここは我慢の時間帯、落ち着きを取り戻し、まず2点目を取られないよう組み立てなおすべきとき。これはもう何度も何度も高い代償を払って勉強してきたはずなのに。悔やまれる時間帯。

これも北野監督はもちろん、チーム全体に福岡に対する意識過剰感が感じられたことのひとつかも知れません。もちろんこの日詰め掛けたファンも含めて、スタジアム全体にいろんな意味で気持ちのどこかに“何とも言えない雑念”が漂っていたような。これもこの試合の“厄介”な要素。それはダービーと一言では片付けられない何か・・・。それがゲームへの集中を欠き、平常心をなくす原因になったのかも知れません。

福岡の攻撃意図はとにかく、大久保をターゲットに早めに放り込む、ということだったと思います。監督の言う「シンプルに」という意味では確かにシンプル。そのうえに貪欲なまでの高橋の運動量。どうしても結果を欲していました。

68分に右の鈴木のクロスが大久保の頭をかすめてゴールイン。69分には、吉井が高い位置で囲まれ、奪われたボールが高橋の足元へ。これをきっちり決められます。KKウィングで初めて見る、高橋の“青い”ゴール裏へのガッツポーズ。あっという間の追加点で3点のビハインド。熊本は明らかにポジションも、メンタルもバランスを欠いていました。いつかも書いたように、チームという個体のニューロン(神経細胞)が寸断されたような、実にぎこちない状態。

さすがにここで熊本にもようやく火が着きました。それまでも右サイドの市村の上がり頼み。パスを配給していましたが、囲まれた市村は苦し紛れにクロスを上げるしかなかった。しかし、この瞬間は市村が、エリア内への勝負を挑みます。これに慌てた岡本が倒してファール。与えられたPKは、現在の“赤い”11番・宇留野が実にクールに、しかしきっちりとゴールマウスに蹴り込みました。

ところがこの反撃ののろしもその後、湿り始めます。再び消極的な攻めに終始し始める。後方でボールを回して前に運べない。前線で動き出そうとしているが、視野に入らない。それほど余裕がない。残り時間20分足らず。今、圧倒的な攻勢を掛けなくてどうするのか。度重なるバックパスの連続に失望し、遂にスタンドのファンからもブーイングが起こり始めます。なんとか意地を見せたのはアディッショナル・タイム。敵DFのクリアボールを藤田、西と繋いで、右サイドからスピードに乗って来た市村にパス。市村がダイレクトに振り抜くと、ボールはGKの手をかすめゴール左ネットに突き刺さりました。

「自分達のサッカーをする時間帯を延ばす」。今節はそんな目標に対してどうこうというゲームではありませんでしたね。福岡(あるいは高橋)という相手に対しての意識過剰が悪影響したのか、あるいは昨日からの嵐のような天候の影響か、妙にうわついた、持続しない集中力のゲームを見てしまったような気がします。そのなかで看過できないのは、再び“ハードワーク”が見失われたこと。終了間際に見せた2得点は、それまで熊本が見せた攻撃の質量に対する正当な報酬かと。もちろんこれはこれですごい。ここまであきらめずにゴールにこだわるようにできたということは。そして市村はすごい。“追い越し”こそすべて。しかし、「時すでに遅し」という言葉があるように、そこまでの途中途中の時間帯で、何故ハードワークが出来なかったのでしょう。全体のコンディションの問題があるのでしょうか…。

まだまだ強豪との連戦が続きます。ここらでちょっと守備のこと、攻撃のこと、メンタルのこと、色々なことを“整理”しないと。そんな心配をしてしまうような戦いぶりでした。

そしてもうひとつ整理しなければならないこと。反省を込めてわれわれはまだ“若いな”と。かつて熊本は高橋のチームだった。われわれは何度もそう書いています。初めてホームKKのピッチに立つ“青い”高橋を見る違和感。もうすっかり吹っ切れていると思っていたのに。今日の先発のなかで5人は今シーズンからの新加入。そんな意識はあるはずもないのに。高橋がボールを持てばそれだけで場内が騒然、こんなところでブーイングしても仕方ないのに、と思ってもやはり気持ちがそこに行ってしまう。ディフェンスの対応も高橋の怖さ以上に、クリアボールひとつにもやけにチカラが入っているような。思い入れが深い分、それを乗り越えるのは並大抵ではない。気持ちは熱くても頭はクールに。そうなりたいというのが今の実感です。

7月22日(水) 2009 J2リーグ戦 第29節
C大阪 4 - 1 熊本 (19:04/長居/5,971人)
得点者:10' 木島良輔(熊本)、38' 乾貴士(C大阪)、75' カイオ(C大阪)、88' 乾貴士(C大阪)、89' マルチネス(C大阪)


試合後、敵将・レヴィークルピ監督は、「本当に厳しいゲームになった。熊本がパスをしっかりつないで、クオリティの高い攻撃をしてくることは分かっていたが、その能力の高さを、しっかり表現していたと思う。」と熊本を評しました。いつものように勝者ゆえのリップサービスが多少はあるとはいえ、戦前からのマルチネスらのコメントも含め、しっかり熊本の攻撃力を警戒してきていたのは間違いないようです。中継のデータによると大阪・長居競技場の湿度は73%。コーナーフラッグも垂れて見るからに風もなく、今日も相当な消耗戦が予想されました。

西宮出身、C大阪ユース育ちの福王。トップチームに在籍していた2年間も出場機会は与えられず、この“地元”長居でのJ公式戦は初めて。この日のプレーに期するものがあったのは当然でしょう。今日は、同じような思いで先日の厚別のピッチに立った河端とCBのコンビを組みました。試合前に藤田からポーンと肩を叩かれる。それは「気合を入れていけ」という意味なのか、あるいは「気楽に行け」ということなのか。福王の苦笑いからは想像がつかないことでしたが…。

C大阪 (先発フォーメーション)
 9カイオ 
8香川7乾
19石神17酒本
10マルチネス25黒木
14江添5前田
 3チアゴ 
 21キム 

開始早々、飛ばしてくるのは大阪。オフサイドを恐れず乾やカイオが思い切り良く飛び出してくる。香川がオフサイドをかいくぐりシュート。これは戻った福王が足一本でクリア。意地が勝りました。10分、ボールを落ち着かせ、後ろから作り始める熊本。前節の2点目を思い出させるような福王からの長いフィード。中盤でワンタッチ、ワンタッチ。宇留野から藤田。藤田が出したスルーパスに木島がDFライン裏に飛び出し、中央を突いてGKと1対1。「なかなか倒れなかった」(木島:試合後のコメント)相手GKを逃げるように交わしながらエンドラインぎりぎりで流し込むようなシュート。ボールは慌てて帰ってきたDFもろともゴールに吸い込まれます。熊本が先制。なんとも見事な“カウンター的パスサッカー”からの攻撃。

その後も藤田からのスルーパスが冴え渡る。今度は市村を使う。市村が右サイド奥まで運ぶが、これはなんとかGKが拾う。大阪・乾の振りの早いミドルシュートには一瞬、肝を冷やす。前節富山戦のバイタルエリアでのチェックの甘さを思い出させる。酒本からのアーリークロス。カイオがヘッドでゴールネットに突き刺すもオフサイド。熊本も連続してCKのチャンス。しかし高さの劣る熊本はゴールを割れない。逆に大阪のカウンター攻撃にさらされる。攻守交替がめまぐるしく変わる展開。ビルドアップに時間は掛けられない。帰りが遅いと負ける。見ているこちらも一瞬も目が離せないゲーム。

最後のところで精度を欠いている大阪。何とない手詰まり状態。なんとかこのまま1点リードで前半を終わりたい。そう思った矢先の38分、乾のヒールパスにカイオ。カイオからもらった香川のところで少し溜めると、スピードに乗った乾に再びスルーパス。乾が中央を破ってシュート。同点としました。まるでさっきの熊本の先制点を鏡で映して逆にしたような美しい展開。これにはテレビの前で唸るほかありませんでした。

それにしてもこの高温多湿なコンディションのなかで、両者が「人もボールも動く」実に質の高いゲームを見せてくれている。そして熊本は今日も一歩も引かない。ある意味で戦力を超えたレベル、クオリティのゲームを演じ、全力を出し切っている。首位・大阪相手に失点を恐れるような素振りも見えない。当然、後半の展開は、自ら失速していった前回対戦に思いが巡り、残り45分のマネジメント力が注目されました。

ハーフタイムで、後半により一層の「ハードワーク」を求めたレヴィークルピ。一方、北野監督は「選手の距離を縮めること」で陣形が間延びしないように指示しました。カイオが右から中央の香川に。香川がバイタルエリアから右足を振りぬく。これはバーの上。熊本は中央で得たFKを原田が直接狙う。これもゴール右角に反れる。惜しい・・・。西が自慢のドリブルで仕掛ける。ペナルティアーク付近まで持ち込んで放ったシュートはDFがクリア。大阪は大きなサイドチェンジを使い始める。熊本の体力が徐々に徐々に奪われていく・・・。

決定的になってきたのは濱田を入れて大阪が中盤を厚くしてからのことでした。熊本は大阪キラーと言われた木島を下げて、山内を入れる。前半から飛ばしていたので仕方なかったのかも知れません。均衡を保っていた秤(はかり)は、この瞬間にバランスを崩し、大きく傾き始めます。熊本の戻りが見るからに遅れ始める。最後に残ったパワーを、なんとか絞り出そうと試みるが、気力しかないような。組織で戦っていた熊本が徐々に個の力に頼るようになっていく。75分、バイタルエリアで回されるパスに足が出ない。遠めから撃たれた濱田の強いシュート。何とか木下がはじきますが、そのこぼれ玉を見逃さずカイオが詰めて押し込みます。木下にまかせてしまった両CB。次に予測すべき一歩が出ませんでした。

熊本は西に代えて井畑。藤田に代えて大迫を投入するも、盛り返すことはできない。逆にカイオに代わって入った小松にかき回される。終了間際になっても攻撃の手を休めない大阪。88分、再びバイタルエリアで回されると左から入った乾にパス。乾はトラップからシュートまでの間合いの早さでゴールに突き刺します。ダメ押しのダメ押しはアディショナルタイム。ゴール前FKからトリッキーなマルチネスのシュート。もはや誰一人として止めることはできませんでした。

終わってみれば再び3点の大差がついた対戦。大阪に25本ものシュートを浴びました。今回もまた地力の差を示された結果に・・・。ただ、前回は自ら切った早目のカードで、「急に排気量の小さい車に乗り替えたようなパフォーマンスの低下。あるいはシフトダウンをしていくような。」と表現しましたが、今回は我慢に我慢を重ねて、“いい時間帯”を引っ張ることに努めた。失点の時間帯はこれまた前回と同じような残り15分。しかし同じように見えても、それまでのベンチワークやピッチ上でのパフォーマンスには一定の進歩が感じられ、“自分たちのサッカー”をする“時間質量”ははるかに増えている。残念ながら、繰り出される交代要員を含めた“チームの総合力”で、現在の実力差を示されたのだと。いうなれば今回は、レッドゾーンぎりぎりまで踏み込んで爆走したが、残り3周ぐらいでその限界に達してしまった。チーム“ロアッソ”。そんな感じではないでしょうか。

そしてこの試合は、その現在の総合的実力を知るうえで格好の舞台であったとも言えるのでしょう。恐らくは今のこのJ2というカテゴリーで、最も速く美しいパスサッカーを展開する大阪、そのタレント達。これを向こうに回して同じレベルのサッカーで対峙しようとした今日の戦い。このチームでこれを越えなければ次の飛躍はない。言い訳しない、無いものねだりなどしない「潔さ」を感じたのはわれわれだけでしょうか。前回が45分までだったとしたら、今回は75分まで。次回対戦時はそれを90分にしたい。ただそれだけです。

試合後、その獅子奮迅の戦いぶりに古巣のサポーターからも温かいコールを受けた福王。「C大阪は今年J1に上がるだろうから、長居ではこの一度だけの試合となるだろう」とコメントしました。この試合の悔しさは、もちろん次の対戦で晴らしてほしい。しかし本当のところは、それほど遠くない将来、J1の舞台・長居でこのC大阪と対戦する日がかならずやって来る。それが福王の思いではなかったかと…。そしてわれわれはと言えば、そのときもまた、福王に熊本の“闘将”であってほしい。それは決して無いものねだりでなはい、一緒に描ける夢だと思うのです。

7月19日(日) 2009 J2リーグ戦 第28節
熊本 2 - 3 富山 (19:03/熊本/5,937人)
得点者:8' 西弘則(熊本)、35' 永冨裕也(富山)、58' 石田英之(富山)、66' 宇留野純(熊本)、69' 西野誠(富山)


う~ん。やっちまった。という感じの試合でしたね。富山に逆転劇を演じられ敗戦。決して崩されたわけでもなく、なんとなく肝心な時間帯で喫してしまった失点。こんな試合もあるさ、とうそぶいてみますが、勝てば順位逆転だったゲーム。逆にこの敗戦で岐阜にも抜かれ13位に転落してしまいモヤモヤ感が募ります。

前回対戦では主力を休ませ攻め手を欠いた熊本。今節は一週間の試合間隔もあって、現在のベストの布陣を敷いてきました。出場停止の原田のポジションには矢野。ここのところ自分達のサッカーではない“内容”で、なんとか勝ちきって“結果”を残してきている感の熊本。富山相手の今日の出来は特に注目されるものでした。降りそうで降らない。まだ梅雨明け宣言を躊躇している暗い熊本の空は、しかしピッチ練習のときに夕立のようにKKの芝を一瞬にして濡らしました。試合開始時には上がったものの、さらに高まった湿度と、急に吹いてきた風が、この試合の行方にもうひとつの要素を加えたのは確かでした。

富山 (先発フォーメーション)
11永富 13長谷川
14川崎7朝日
5長山25野嶋
27舩津19西野
3堤6濱野
 1中川 

先制点は熊本。8分、石井が自陣から前線の西にスルーパス。西のスピードがDFに勝る。瞬間、左足から放たれたシュートにGKは一歩も動けず、ボールはゴールに吸い込まれます。早い時間帯、幸先の良い展開に沸くスタジアム。しかし、このあと熊本に畳み掛けるような“厭らしさ”や、相手の肝を冷やすような“凄み”が見られなかった。押し込めば次々に奪うであろうCKも皆無だったし、逆に富山の反転攻勢を受けに回ったのが今日の敗戦の遠因でした。熊本も今日は前線からアグレッシブに奪いに行きましたが、富山のプレスも健在で、更にバイタルエリアに入ろうとするボールに必ず足が出て、熊本の組み立てをうまく阻害しました。

35分、嫌な時間帯で富山の右CK。今日ここまでパンチングやキックで“いつもらしさ”を欠いていた木下、いかにも中途半端な判断。ファーサイドにいた永冨がソンジンとの競い合いも物ともせず、ゴールに押し込みました。
振り出しに戻った試合。後半は的確なベンチワークが試される試合とも言えました。長い故障から復帰したばかりの長谷川を下げて石田を投入。この交代が奏功。ハーフライン手前からのカウンター気味のドリブルでエリア手前まで持っていかれました。最終的にはエリア前で1対3、飛び込むべきかどうか、止めるべきかどうか、逡巡する熊本DFより一瞬早く強引なシュートを放った石田。富山が勝ち越します

後で録画を観たら、ベンチに下がった長谷川は明らかに泣いていました。再び故障していた箇所を傷めたのかも知れません。確かに前回対戦時も精細を欠いていた。長く古豪YKK・APのエースに君臨したFW。ようやくたどり着いた、遅すぎたともいえるJの舞台でまだノーゴール。J昇格前の熊本に何度も辛酸を舐めさせたあの長谷川が頭を抱えるようにして泣いている…。

一方、追いつかれた熊本はすかさず中山に代えて宇留野を投入。21分、この宇留野をターゲットに押し上げたDFラインから福王が長いグラウンダーのパス。相手DFを背負って納め、反転して猛然と突っかけ、並走するDFを振り切って左足でシュート。アウトに掛かったボールはGKの手をすり抜け右サイドネットに突き刺さりました。目の覚めるような“技術”。日頃クールなこの男が喜びを爆発させる。イエローカードと引き換えに、ピッチボードを飛び越え、ユニフォームを脱いでサポーターに示したのは背中のゼッケン。それは「俺が熊本のエースだ!」と言っているようで。

宇留野と長谷川。これまではカテゴリーの違った両FW。ともに30歳を迎える二人のサッカー選手の人生が交差した瞬間。互いが背負っているものの重さに思いをめぐらし、胸が熱くなります。

しかしさらにゲームは動きます。直後の24分、左サイドでボールを受けた西野、吉井を切り返しで交わすと、エリア外からこれまた強引にシュート。押さえの利いたボールは木下の手をわずかに弾くとネットに突き刺さりました。
富山の得点はセットプレーとミドルシュート。熊本にとっては全く崩された感じはしませんでした。ただ、崩されたわけではないといっても、バイタルエリアに入ったら果敢にシュート狙ってくる冨山の思い切りの良さ、あるいはその富山の戦術的な狙いに対して、エリア外の敵への対応にどこか“緩さ”を感じさせる熊本の守備には大きな課題を残しました。あの距離では必ず枠内にシュートが来る。それがこのカテゴリーでした。池谷GMが昨年よく「オーガナイズ」という言葉を使っていました。オーガナイズ=組織化。守備の面では、前線、中盤を含めてもう一段突き詰める必要があるようです。

一方、攻撃面では長短のパスを織り交ぜ、攻撃に転じてからのスピードもアップしている。今日の2つの得点はいずれも後方からの早く、正確なパスから生まれました。ポゼッションばかりに固執していた前半戦と比べれば、プレーの幅、選択ともに確実に進歩したなぁと思わせます。あとは今日の富山のように攻守の切り替えの早い相手にどう対応するか、両サイドの“渡り廊下”を封じられたときに、バイタルでどう工夫するのか。まだまだ、“面白いサッカー”の奥義は深いようです。

それにしても、多くのファンが詰め掛けてくれた夏休み最初のホームKKでの、残念で悔しい逆転負け。このモヤモヤした試合結果も、木下を含めた全ての選手への“経験値の貯金”と考えたい。受け止めるべき内容の“深い”敗戦。下を向いている暇などなく再び中二日でC大阪戦。続く日曜日は宿敵・福岡戦。難しい対戦相手が続きますが、「自分達のサッカーの時間帯を増やす。そして勝ち切る。」今季はブレずに常にこれを追い求め続けてほしい。先のサッカーダイジェストのJ2ライター座談会で「熊本は面白い」と絶賛されたように、第3者からもそう見られているのは確かなのですから。


7月11日(土) 2009 J2リーグ戦 第27節
札幌 0 - 1 熊本 (14:03/札幌厚別/6,376人)
得点者:70' 吉井孝輔(熊本)


先週のサッカーダイジェストのJ2特集。札幌の石崎監督が今シーズンここまでのワーストゲームとして挙げていたのが、0-4と一方的に敗れた熊本戦でした。そして札幌はその熊本戦から火が着き、現在は9位まで順位を上げている。とはいうものの、前節は愛媛を相手に7試合ぶりの勝利と不安定感は否めず。そんなこんなで、この熊本戦に賭ける意気込みは相当のものがあったはずです。

札幌・厚別競技場。ロアッソが初めて降り立った北の大地は、7月というのに気温17.9度という涼しさ。しかし結果的にはこの気象条件が、熊本の選手達のパフォーマンスに、最後までいい影響を与えたようでした。もちろん河端、市村両選手にとっても。いうまでもなく、ここは二人にとって古巣でもあり、生まれ故郷でもありました。入場前に札幌・砂川と河端が握手。前々から顔が似ていると思っていた両人でした。市村には石井謙伍が。

札幌 (先発フォーメーション)
 19キリノ 
 10クライトン 
8砂川9石井
20上里14ダニエルソン
22西18芳賀
2吉弘15趙
 16荒谷 

さて試合は、開幕戦以来の先発というその石井が右サイドに入り、開始早々から全開で飛ばしてくる。マッチアップする原田の表情を見ても明らかに手を焼いているのがわかります。熊本は、なかなか押し上げられない。選手間の距離が開いている。勢いのある札幌の攻撃のなかで、何度か前線に運ぶシーンも見られますが、ラストパサーに渡る前の段階で詰まってしまう。とてもシュートまで行き着かない。判断が遅れ、ボールを奪われること度々。前節の悪いところを引きずったままのようでした。ただ、札幌もクライトンの“自己主張”が強すぎる。解説の野々村氏が言うように「クライトンを経由すると時間が掛かりすぎる」ために、熊本の守備が助かっている。熊本も前回対戦時のようにクライトンにボールを持たせないというより、むしろ自由にパスを出させないような対応。この試合もまた前節と同じように、前半スコアレスを望むような展開となっていきました。

しかし、この試合のキャストはもうひとり、そしてドラマの伏線は前半のうちにありました。まず34分頃、スローインの遅延行為を取られて原田にイエロー。その5分後にはアフターチャージで2枚目のイエローが出て、原田が退場となってしまいます。この試合が6試合目ということですが、新米審判の練習試合に当たってしまったのか、解説陣の評を待つまでもなく、素人目に見ても判定が安定せず、ムダな笛も多くゲームの流れを寸断。熊本のみならず札幌の選手もストレスの貯まるジャッジだったと言わざるを得ないのですが…。しかし、それもサッカー。何が起こるかわからない。

試合の流れは札幌にある状態で、10人になってしまった熊本。開き直るしかありませんでした。これで逆に、これまで一貫していた「失点は恐れずに、得点を奪いに行く」という持ち前のチーム・コンセプトを、今日のところはひとまず置いておいて、「守り抜く。そしてカウンターで点を奪う」という戦術変更が全員のものとなりました。前半終了間際には、河端がヘッドのバックパスであわやオウンゴールかと思わせましたが、木下がセーブ。木下にも覚悟の表情がありました。

しかし、そんな数的不利の相手が戦術を徹底してきた場合、大いに手を焼くというのはサッカーの場合よくあること。札幌の攻撃も、見る見る緩くなります。ひとり一人の玉離れが遅くなり、ボールだけが回っている状態。熊本は後半開始、山本に代えて西を左サイドバックに配置する。早めの交代。それは諦めずに点を取りに行くぞという意思表示でもあったような。一方、当然のように札幌は3バックにして、前線を厚めにしていきます。さらに札幌は石井に代えて中山元気をトップの位置に。その中山、直後にヘッドで狙いますが枠外。それ以降、札幌はPAの中に仕掛けてこない。エリアの前でボールを回す。クロスを狙うも散発的な攻撃に終始しました。キリノに代わって上原。中山元気と上原という高さが揃っても、河端が負けていない。一列下がることになった熊本の中山も、今はほとんどディフェンスに専念。出て行きたい気持ちを抑えてチーム戦術を徹底している。

66分、藤田に代わって宇留野。宇留野が前線に顔を出すことで、熊本にも前目でタメが出来るようになります。そこにシーソーが熊本側に傾く今日たった1回のチャンスが訪れました。70分、札幌の攻勢を凌いだ木下からのフィードを前線で競り勝った木島、たった一人のキープで援軍を待つ。すかさず追いついた宇留野に預ける。これまた孤軍奮闘、打開をはかるが3人に囲まれては如何ともし難い。それでもキープ。ボールを失わない。さらに後方から押し上げた石井に預ける。石井は右サイドの広大なスペースに猛然と駆け上がる市村へ。市村は中央の陣形を見極めるようにタイミングを測ってクロス。ワンバウンドの低いボール、背後をフリーランニングする宇留野。ゴール前の札幌DFのクリアミスを誘う。ボールは吉井の足元に。吉井は予想していたような見事なトラップでピタリと足元に納め、背中の相手DFのチェックより一瞬早く、落ち着いて振りぬきゴールに突き刺しました。カウンターに専念すると言いながら、得点を決めた攻撃は、押し上げ、追い越し、5本のパスをタメながら繋げた、見事なパスサッカーでした。

虎の子の1点というのは、まさしくこのことを言うのでしょう。札幌は、ルーテル出身の得点源・岡本を入れてきますが、すかざず熊本もソンジンを中盤に配して守備を固めます。木島は既に足を引きずっている。86分の左CKは絶対絶命のピンチ。吉弘のヘッドは、なんとかクロスバーが防いでくれます。熊本の前線にはもう誰もいない。ただただ全員で、パワープレーに転じた札幌の攻撃を必死に跳ね返すのみ。福王の激が飛ぶ。それにしても、今日のDF陣には“跳ね返す”必死さだけでなくクレバーさもありました。やみくもに飛び込まない。しっかり対峙して、タテの侵入、タテのパスを防ぐ。最後のシュートにはコース対して身体ごと投げ出す。何度も何度も。ひたすら、ただひたすらにこれを“続けた”。気力を振り絞って。市村の足も限界に来ている。4分ものアディッショナル・タイム。最後のCKも守り抜く。木下がゴールキックを蹴った瞬間にホイッスル。崩れ落ちる木下。河端…。

福王が何やらつぶやきながら「バッさん」と呼びかけ、思いっ切りその背中を叩き、引き起こしてしっかりと抱きしめる。ユニフォームで涙を拭いているようにも見える河端。後半にもオウンゴールになりそうなボールを、木下の素晴らしい反応が助けてくれた。肝を冷やしたはずです。快心の笑顔でゴール裏に向かうのは市村。

福王、河端、市村。思えばこの3人は、今や数少ない“ロッソ”生え抜きの選手。あの寒い冬の日、KKウィングで行われた初めてのセレクションに参加していた。前のチームの練習着そのままの姿で。そして九州リーグを知っている仲間。あの過酷な地域決勝も共に戦った戦友。JFLの2年間も共にあった…。河端と福王は足にメスを入れ、その後の長いリハビリ生活も乗り越えた。そんな想いがブラウン管越しにも伝わってきて、こちらの胸も熱くなってしまいます。

退場というアクシデントで戦術を根本的に変えざるを得なかった試合でしたが、たった1度の”シュート
チャンス”をモノにし勝利を手にしました。札幌はその10倍以上のチャンスを棒に振った。これもまたサッカー。しかしそれはサッカーの神様の気まぐれな采配でもなく、数的優位な状況である意味“起こりがちなこと”でもあります。今まではその起こりがちなことを“起こせなかった”が、ここに来てそれを起こせる力が熊本にもついてきたと言えるのではないでしょうか。逆に守りに専念することで見えたのは、今日の札幌の遅攻や決定力が、悪いときの熊本を見る“鏡”のようなものだったこと。逆の立場に立ったときもまた、しっかり勝ちきることができるのか。遠い北の大地まで足を伸ばして得た経験は、とても貴重なものになったと思いました。

7月8日(水) 2009 J2リーグ戦 第26節
熊本 0 - 2 東京V (19:03/熊本/3,744人)
得点者:42' 平本一樹(東京V)、70' レアンドロ(東京V)


「第2クールは勝ちにこだわる」という表現とともに、「相手によって戦い方を変える」とも表明していた北野監督。中山が再び故障という情報もありますが、宇留野、山内、藤田、西で前線を構成してきました。恒例の熊日の戦前予想フォーメーションでは、藤田のワントップ。試合後確認したスカパーでのシフトは宇留野がワントップになっていましたが、いずれにせよそんなものにあまり意味はなく、試合中は全く流動的でした。

前回対戦で逆転大勝したイメージは残っているものの、東京Vはここまで3連勝中で調子が上がっている。序盤の低迷を脱しついに5位まで順位を上げてきている。好調の要因は、13ゴールでランキングトップに立つエース大黒の活躍とともに、守備の組織にまとまりがでてきたことにありました。付け入る隙は・・・、こちらが中5日なのに対し、相手は中2日のアウェー移動だということぐらいなのか。

東京V (先発フォーメーション)
25平本 9大黒
10レアンドロ7河野
22服部8柴崎
24那須川23藤田
14富澤17土屋
 1土肥 
前半、なかでも序盤は全く互角に見えました。熊本は文字通り流動的にポジションチェンジを繰り返し、ボールを回していく。まるで東京のプレスを“いなして”いるようで、貫禄すら感じさせました。しかし、これは逆にいえば東京が“凌いで”いた時間帯であったとも言えるわけです。そこには、前回の痛い敗戦から、熊本を“侮らない”意識を相当に高めてきたのでしょう、選手の顔つきを見るだけでそれが伺えます。ポゼッションを志向する似たような戦術のチーム同士が、コンパクトな陣形で火花を散らしている感じ。大黒の前線での働きの質の高さ。藤田と服部、古い僚友の対決。吉井の怪我が癒えて中盤を駆け回る。いいゲームになりそうな予感がしました。

20分過ぎに得たセットプレーに時間を掛ける東京。この試合展開のなかでこのリスタートの重要性を全員が共有している。これが攻勢の合図のように映りました。左からシュート性のクロス。木下がパンチングで逃れる。DFラインの裏を突いた大黒へのパスはオフサイドになりましたが、次第に押し込まれ始める。左CKからレアンドロのキックを木下がクリア。拾ったところを倒しゴール前でFKを与える。再び左CKから今度は45度のサインプレー。クロスに飛び込む大黒。木下がパンチング。再びゴール前からのFK。

まさしく今度は熊本が“凌ぐ”時間帯。なんとかこのままスコアレスで前半を終えたいと誰もが思っていた。しかし42分、東京の圧力に熊本の守備が決壊。左サイドを上がってくる那須川にはたき、入ってきた良質のセンタリングに大黒、レアンドロ、平本の3枚が中央に飛び込む。どれも打点は高い。決めたのは今期初得点という平本の頭でした。

両者がポゼッションの奪い合いという“差し手”争いの末、がっぷり四つになったものの、体重差で土俵際に押しやられているような感じ。あるいはアメフトのランプレーで1ヤード単位で陣地を奪い取られているような。そんな神経戦とも言える地味な戦いのなかで示されるのは、東京の対人の強さとひとつひとつのプレーの精度。少しのミスも許されない。誤魔化しようがない。

そんな感覚は後半も変わりません。レアンドロをイラつかせようとする執拗なディフェンスも、テクニックでその意図をかわされる。ある意味で既定のプランどおりに吉井、西を引っ込め、山本、木島を同時投入しましたが、ゲームプランの崩れは回復できません。70分にはパスミスをインターセプトされ平本がドリブルでエリアに侵入。これを木下がたまらず倒してファール。このPKをレアンドロにきっちり決められ2点差とされました。

東京の絡めとるようなディフェンスの前に、2点差の挽回は厳しいものがありました。同じように両SBを高く上げ、2枚のCB中心で守っているのですが、その要所要所での読みの早さ。対人の強さと(重さとも感じるような)上手さ。奪っては、まるでプログラミングされたようなボール運びのオートマティズム。熊本がWトシヤに一旦あずけて“考える”のとは対照的でした。横浜FCをJ1に上げた実績を持つ高木監督。かつてのアジアの大砲は、今や人間味溢れるマネジメントで、いい監督になっている。選手補強につまずいた感のあった東京を、実にいいチームに仕上げてきているなあと。

今回の対戦。同じようなコンセプトを掲げるチームだけに、われわれとしては熊本が確実に強くなっている部分を見たいということと同時に、昇格を狙うチカラのある上位チームが“好調の波に乗っている時”に、しかも熊本というチームを侮らずに当たってきたときにどんな戦いができるのか、というところも興味をもって見ていました。当然のことながら戦前から厳しい予想がされていましたが、結果は今の時点での“差”が明らかに示されたということでしょう。26節目という後半戦スタートの試合。この直前4試合で得た手ごたえと課題、そしてこの東京戦と、今の熊本のポジションやリーグ全体が俯瞰して見えたような気もします。見方によっては非常に地味な負け試合としか映らないかもしれませんが・・・。しかし、これからの後半戦、そして来期につながるという意味でも、本当の意味で上位(トップ6)を相手にどう戦っていくのか。差はありましたが、埋められないものではない。いや、これをどう埋めていくのか。目の前にある課題のありようも明確になった節目の試合だと思いました。

7月2日(木) 2009 J2リーグ戦 第25節
岡山 2 - 3 熊本 (19:03/岡山/3,473人)
得点者:14' オウンゴ-ル(熊本)、18' 保坂一成(岡山)、24' 石井俊也(熊本)、29' 西弘則(熊本)、80' 澤口雅彦(岡山)


今節の熊本・岡山戦だけが変則的なミッドウィーク開催。われわれはアウェー岡山桃太郎スタジアムまで駆けつけるどころか、一人は遠く札幌まで出張(来週ならよかったのに)。もう一人は東京という慌ただしいビジネスライフでした。そんな中、行ってきたのは川崎・二子新地にあるアズーリというお店。おそらく関東で唯一、ロアッソの試合を放送してくれるサッカー・バー。おそるおそる扉を開けると、いつもスカパーで見かける関東サポの面々がすでにハイネケンのジョッキを傾けていました。真似して私もハイネケン。つまみはやっぱりここは定番のフィッシュ&チップス。10数人ほど入ればいっぱいになりそうな店内には大きなモニターとサブモニター。私と同じような出張族も駆けつけ、店内はいっぱいになりました。

岡山 (先発フォーメーション)
 48青木 
 8保坂 
14小林17妹尾
14喜山36竹田
32田所4澤口
23植田31大島
 1李 
さて、熊本の先発は前節と同様の布陣。対する岡山は西野を控えに、千葉から期限付きで獲得した青木をワントップに置いてきました。岡山は前節、富山を相手に11試合ぶりに勝利をおさめ意気上がる。開始早々からホームサポーターの声援をバックに、アグレッシブに攻勢に出ます。それに対して熊本はなかなかリズムが作れない。藤田が他の選手に動き出しを求める姿が再三見られます。先制点は思わぬ形。市村が前線の山内めがけたロングフィード。これを岡山CB植田がヘッドで反らして痛恨のオウンゴール。攻勢を引き寄せていないうちの実に幸運な1点でした。

もちろん岡山も黙ってはいない。すぐにカウンターから青木、小林に渡りクロス。中央に入ってきた保坂に綺麗に決めれらます。やはりリズムは岡山にありました。しかしこの試合でもセットプレーの冴えは続いていまいした。24分、左CKの原田のボールにファーサイド、走りこんだ石井が左足できっちり押し込む。この頃、なんだかセットプレーに得点の匂い、凄味さえ感じるような。続く29分は流れから。市村、藤田から右サイド深くに山内が走りグラウンダーのクロス。ゴール前には3枚詰めていた熊本、二アサイドに入り込んだ西が角度を変えて追加点とします。熊本の攻勢の時間帯ともいえないうちに3点目。裏を返せばコストパフォーマンスの高い省エネによる猛攻。まるで今期初対戦時の湘南かと見間違うような試合展開でした。

ハーフタイム。2点リードに沸きあがるアズーリの店内。今日初めて逢った見ず知らずの間柄ですが、得点に歓声を上げ、いいプレーに拍手しているうちに打ち解けてくる。遠く離れて同じホームチームを応援している連帯感。
一方、札幌の方は気温20度、ひんやりした気候。全国から集まった同業の会議が終了し、懇親会の席に移っていました。宴もたけなわになるといつの間にか周りには仙台、愛媛、徳島、岡山、富山、北海道といった連中が集まり、互いのホームチームの話に花が咲く。さしずめJ2場外戦。徳島県人が、昨年鹿児島・鴨池での熊本戦に行ったときの話を披露する。前夜、天文館のお店で大宣伝したら、ホントに店の女の子たちが応援に来てくれたのはよかったんだが、散々な負け試合で面目まるつぶれだった、などと恨み節がしつこい。

さて試合は後半、GK木下の見せ場の連続でした。岡山は武田を入れて2トップに。より前掛かりに転じてきました。右サイドの展開から妹尾が木下と1対1。これをナイスセーブ。続いても右サイドから妹尾に渡り、シュートされるも木下がクリア。アズーリに悲鳴がこだまする。熊本もロングフィードやカウンターで攻勢に転じようと図りますが、前線でうまく収まらない。受けに回る時間が続きます。再び同僚たちに動き出しを“求める”藤田。宇留野に代えて山本で中盤固めを図る熊本。岡山の右CKから澤口のどんぴしゃのヘッドは木下が足一本でクリア。しかし、35分、CKからの澤口のヘッドは防ぎきれず。遂に1点差に詰め寄られました。

岐阜戦を再現したような追撃される恐怖感。とにかく熊本としては前線に起点がほしい。西に代えて木島。中山に代えて小森田。木島がエリア内に持ち込み1対1を作りますが、岡山DFの必死の戻りでクリアされました。ロスタイムは3分。CKはキープではなく蹴ってくる熊本。時間を使って逃げ切るのか、4点目を取りに行くのか、なんとなく意思統一が図れていない。時計はもう3分以上過ぎている。アズーリでは全員が、早く終われと叫んでいる。札幌では何度も何度もケータイ速報をリロードしている。

終了ホイッスル直後、藤田に笑顔はなく、何度も首を横に振っていました。明らかに内容が不満だったのでしょう。しかし、インタビューではすぐに切り替え、「やっとサッカー(の内容)と結果がともなうようになった。連勝が珍しいことではないようにしたい。」と笑顔を見せました。「第2クールは勝ちにこだわる」と言っていた北野監督。今季初の連勝を手にしました。ただ試合は1点差の辛勝という形になり、内容に不満が残るのも確かです。まだまだ今後に不安もよぎります。しかし、勝利という意味はとてつもなく大きい。「結果が伴う」という意味で。

対する岡山は負けた気がしなかったのでは? そう思っていたら、全く同じ言葉を手塚監督がコメントしていました。それほど押し込んでいたし、あと2、3点はとれていた…。もう少し、あと10分。時間さえあれば同点に持ち込めた…と悔しく思っているのかも知れません。たった一年で先輩面するわけではありませんが、振り返ればわれわれにもそんな経験は何度もあったような気がする。だからこそ確かにそう感じるのです。しかし、逃げきったのは、勝利を得たのはこちら側。そこにはほんの少しの幸運も作用したかも知れませんが、結局は互いの力の正当な“報酬”、“結果”なのだと言えるのではないでしょうか。このゲームを迎えるまでのチーム状態、故障選手などメンバー状況も含めた「現在の総合力」の反映なのだと。

まるで1年前の自分たちと擬似対戦しているかのような錯覚を覚えた第一クールでの岡山との対戦。そして今度も、ちょっと違った意味で、それに似たような感覚にとらわれる。決して侮れない相手であることも。そして同時に、少しだけかも知れませんが、熊本が確実にステップアップしたことも感じさせた。内容が悪くても勝つ。結果を得るという事実。また、逆に、勝って、結果を得ても、課題や反省が当然のこととして語られるようになる。いやむしろ課題や反省を見つけてステップアップにつなげようとしているような。(だってここ4試合は3勝1分けなんですから!)選手もチームもファンも、そして翌日の熊日も。少しだけ、ほんの少しだけですが空気が変わり始めたような、そんな気がしています。

前回対戦時のエントリーの最後に、「次のアウェー桃太郎スタジアムはいやがおうでもあの地域決勝が思い出されて、億劫な気持ちだ」と書きましたが、そんな気分を今夜はアズーリの仲間たちが吹き飛ばしてくれました。ああ、こんなお店が熊本にもほしいな。関東サポがちょっとだけうらやましくて。そして、いつも少人数でアウェーを戦ってくれている彼らに頭が下がって。ホントは試合後もっとお話をしたかったのですが…。後ろ髪をひかれる思いで、いつまでもいつまでも勝利の歓喜の余韻が残るお店からお先に失礼したのでした。