9月27日(日) 2009 J2リーグ戦 第42節
仙台 1 - 0 熊本 (16:04/ユアスタ/14,374人)
得点者:44' 渡辺広大(仙台)


J2のなかでも観客動員では屈指の仙台・ユアスタ。今日も1万4千人を越え、明らかに多勢に無勢の熊本。しかし、耳を澄ませばしっかりと熊本のチャントが聞こえてくる。二子新地のアズーリでお会いした面々が、スカパーの画面からも確認できました。

戦前多くの下馬評は、これまで勝ちなしのデータから仙台に対しての苦手意識を語っていましたが、何故かわれわれは仙台と相性が悪いという印象はまったく持っていませんでした。肝胆寒からしめた天皇杯での初対戦。あるいは同点引き分け、内容の伴った試合が多かった昨シーズンのイメージがそうさせるのか。それに、アウェーとはいえ大観衆・大舞台のほうが実力を発揮する。わがチームにそんな印象すら持っています。

熊本はGKの小林を稲田に代えてきただけで、あとは前節同様の布陣。画面に示されたフォーメーションでは、藤田が2トップの一角を占めるものの、試合が始まれば予想どおりの自由自在な動き。これはまるで9人のフィールドプレーヤーのまわりに一人のフリーマンを置いているようで。いや、もはや藤田は、FW、MFなどのゾーン分担型フォーメーション図には押し込められない。とにかく「攻撃的選手」の一人だ、という“存在”なのかも知れません。

仙台 (先発フォーメーション)
13中島 14平瀬
10リャン・ヨンギ11関口
7千葉17冨田
27パク・チュソン25菅井
3渡辺8エリゼウ
 18林 

対する仙台は得点源・ソアレスを欠く。平瀬の相方に指名されたのは中島でした。渡辺とエリゼウのCBに、菅井、パクの両SBを置いた強固なディフェンスラインは、リーグ1の失点数の少なさを誇る。ボランチも今日は特に守備に専念しているようにも見える。前線4人で攻撃を作るはっきりした役割分担。それにときおり両SBが加担するといった格好でした。

わが軍の石井とともに、J2のこの過酷な日程で全試合出場中の渡辺。鼻骨骨折をフェイスガードで覆い先発出場のタフガイ。エリゼウとともにトラップミスを見逃さず、攻撃の起点を潰し続けます。藤田の自在なポジショニングに関しても、前回対戦時のゼロトップで経験済みだった仙台。今回のスカウティングでは、藤田以外の「2列目からの飛び出し」に関してしっかりとケアすることに努めていました。

開始早々の熊本の攻勢をしのいだ仙台は、次第に押し込んでくる。13分、リャンのFKに中島が合わせるものの、なんとかクリア。20分には再びリャンのFKから平瀬のヘッド。バーに妨げられ、オフサイドではあったものの肝を冷やします。前回対戦と同様、ジワリジワリと詰め寄ってくるような圧迫感。熊本も40分、藤田が右へ流して石井を使う。PA内で再びもらうとヒールパス。そこに宇留野が入ってきてシュート。惜しくもエリゼウに掃きだされましたが、わがチームの本領を発揮した瞬間でした。

互いに我慢を重ねながら、攻守の切り替えの早い、質の高いゲーム。このまま前半スコアレスでとの願いを奪ったのは、やはり仙台の“飛び道具”リャンのひと蹴りでした。終了間際に得た左CK。ファーには平瀬、中央には中島を配し、中島でGK稲田を潰したところに入ってきたのはフェイスガードの渡辺。頭のてっぺんを思いっきり前に突き出して、ゴール右角に打ち込みました。

毎回、こちらの“急所”を突いてくるようなリャンのキック。さらに今日は、この男に“凄み”さえ感じました。後半も全く落ちることのない運動量。果てはアーリークロスに自らが体ごと飛び込む。GKとの交錯も恐れず。この(いわば下位との)一戦の重要性と今日の戦術を十分理解している。一気に追加点をと目論む仙台は、後半開始早々から飛ばしてきました。熊本の両サイドを崩し、次々にクロスを上げてくる。60分、左からのクロスを稲田がはじくと、ボールはリャンの足元に。決定的な場面でしたが、シュートは枠を反れてくれました。

熊本は打開すべく宇留野、藤田、松岡を下げて、山内、吉井、原田を入れる、かつてなかった同時3枚替えの采配。4-3-3にシフト変更して敵の混乱を誘う。原田も果敢にサイドを上がる。これで仙台のバイタルエリアを押し下げることには奏功しましたが、いかんせんDFラインを切り裂く最後のスルーパスが誰からも出てこない。そのときすでにそれを出せる選手がピッチから去っていました。

開始早々に太ももを痛めた様子のパク・チュソンのサイドをただ一辺倒に攻めたてましたが、壁のように跳ね返されるばかり。逆に時折見せる前線への攻撃参加時に、その裏のスペースを突こうというチーム戦術も見失っていました。

アタッキング・サードでどう崩すかというのが、今期の当初からの課題であり、熊本はシーズンを通してこの課題に取り組んできたはずでした。もちろん今日のそれは第1クール段階のそれとは違っていて、それなりの実戦を踏んで鍛えてきたはずのものでしたが。熊本の“進歩”に立ちはだかったのは、「昇格を狙うチームの本気の守り」という強靭な壁でした。そういう意味では、今日は今期の“到達点”を探るいい機会だったのかも知れません。

J2降格から既に6年。毎年のように上位をうかがってはいるもののあと一歩及ばなかった年月。昨年ようやく入れ替え戦に臨んだものの、重い扉の隙間からJ1を覗きながら、立ちはだかる磐田の前に涙をのんだ仙台。これが昇格を狙うチームの、何年も苦汁をなめたチームの、この時期での“本気度”のゲーム運びなのだろうと実感しました。

熊本にとって、想像できないようなプレッシャーのなかで昇格を狙う上位チームに、きっちりと守られたときいったいどう崩すのか、いやどうゲームを運ぶのか、という更に高いハードルを与えられたようなゲーム。仙台はもちろんしっかりスカウティングして、熊本の攻撃を封じる策で臨んできたと推測できるのですが、今日の仙台、守りのバランスを崩すのを異様なまでに恐れているように見えました。まるで最悪の場合「スコアレスドローでも止む無し」というまでの思いかと邪推するほど。下位とはいえ、熊本の攻撃力への警戒は怠りなく、とにかく交通事故でもなんでも、万が一にも勝ち点ゼロだけは避けたいという計算だったのかと。

3年前の天皇杯。同じ場所で同じ点差で終了したとき、仙台ファンからは大きなブーイングが起こりました。そのときのカテゴリーと今とは熊本も違ってはいるものの、今日のユアスタは、奪った「勝ち点3」に対して満場の拍手。鳴り止まない「仙台」コール。仙台はファンともども昇格を確実に見据えているのだと思いました。

今シーズンの対戦は3戦全敗で終了。それもリャンという才能とそのセットプレーに翻弄された一年。しばらくは相対することもないのかも知れませんが、実に多くのことを教えてくれた仙台。失点も少ないが、カードも少ない。われわれが目指すクラブ、チームのイメージにも重なるような。今日のことを糧にわれわれも積み重ねていけば、こんなギリギリの気持ちや状況でのゲームを迎える日が、いつかきっと熊本にも来るのだと思います。

9月23日(水) 2009 J2リーグ戦 第41節
熊本 1 - 1 横浜FC (14:04/熊本/6,803人)
得点者:25' 藤田俊哉(熊本)、89' 西田剛(横浜FC)


92分の緊張感のあと、最後に待っていたのは、なんとも言いいようのない“脱力感”でした。

慎重な入り方をした前半。先発布陣は熊日の予想フォーメーションを裏切り、前節からも大幅にチェンジした陣容でした。左SBに松岡を起用。CBにはソンジンに代わって福王。山本をダブルボランチの一角に。木島と組む2トップには怪我からようやく復帰した宇留野。4バックと中盤4人で作った二列のブロックは、全体的に前節より少し下がり目で、スペースをバランスよく消している。その代わりに、攻撃時に若干の手薄感は否めず。守備6、攻撃4のような意識が感じられます。さすがに前節6失点の反省でしょうか。

8月23日の岡山戦で顔面骨折という大怪我を負った宇留野。今日ようやくフェイスガードも外してピッチに立ちました。空中戦にはまだ痛々しさが残りますが、敵DFを背にしたボール・キープは健在。相手からすれば嫌な選手に違いない。原田の代わりにCKを任されます。

20分頃からほぼ横浜の時間帯に。自陣に押し込まれ始める熊本。しかし集中した守りはそれほど不安を感じません。初スタメンのSB松岡も体を張って守り抜く。彼はなによりガンバユースで鍛えられたトラップの技術が光る。

25分、サイドで奪うと中央の山本から素早いパス。これを木島が受けるとすかさずアウトでスルーパス。中央で抜け出した藤田がDFより一歩早くゴールに流し込みました。いずれも横浜の守りが着いていけない、縦に縦に速く、そして実に“美しい”攻撃でした。ホームのファンの歓喜が、快晴の秋空にこだまするようで。

先取した熊本。直後、勢い余ってか攻守のバランスをやや崩したような前がかりの場面もありましたが、すぐに修正、浮つくこともなく、慎重さは変わりませんでした。もう一度、守備からの展開。あっ、カウンターが来ると目をつぶってしまう場面も、ちゃんと数的な対応がとれています。横浜の中盤にボールが入れば前を向かせない。守りの連動もいい。久し振りにボランチのポジションに配置された山本が、執拗なプレスで追い回す。藤田がフリーになっては、いいところで前線に飛び出してくる。横浜の最終ラインを切り裂くパスワークにも、冴えとアイデアが随所に見られました。

1点先取した虎の子を大事に大事に。そして、隙あらば追加点を。それはまるで前節の失点の大安売りとは全く違っていて、神経戦のような様相。われわれも、何やらぶつぶつと独り言をつぶやきながら、息を止めている時間の長い観戦。

後半、難波を前線に投入して一気に押し込んできた横浜。同じような一点差での難波投入、第二クール・水前寺での戦いがアタマをよぎります。あの時は難波のヘッド一発に沈んだ。しかし、残念ながらこちらから見ても今日の横浜には最後の崩しの工夫がない。熊本の守備ブロックに沿って横方向にボールが動くばかり。単発で淡白な攻撃に助けられます。けれど、この雰囲気にお付き合いしてしまうのが熊本の悪い癖。こちらもバイタルエリアで自由にボールを回すものの、フィニッシュは“惜しかった”というものばかりになりました。

疲れが見えた松岡に代えて河端がCBに入り、左は矢野がスライド。足を攣った宇留野に代わって山内。予想されたベンチワーク。期待した山内ですが、途中投入でなかなかゲームにフィットできないのか。ひとつひとつのプレーは、以前よりも“引き出し”が増え、惜しい場面も演出するのですが・・・。

追加点が奪えないまま残り15分。木島に代えて西森が入る。藤田を前線に上げて起点づくりに期待するベンチ。実に苦しい時間帯。見るからに足が止まりはじめ、選手間の距離が微妙に開き始める。

横浜が切ってきた最後のカードは根占。嫌な選手を使ってくる。自陣に釘付けにされ始める熊本。藤田もバランスをとろうと少し下がる。状況に応じて自在にポジションを代える藤田。まさしくチームのバランサーだと感じました。熊本としては、ここで最後に踏ん張りなおせる“力”が欲しい。それは体力でもあり、精神力でもあり、ベンチワークなのかも知れませんが、カードは全て使い切ってしまいました。

完全にこの1点を守りきることに決定した試合展開。攻め込んでもまったく突っ込んでいかない。そしてロスタイムを表示する第4審判のボードには3の数字。えっ?ちょっと長いんじゃ。しかしなんとか守りきるぞ。ゆっくり、慌てずに。ボールをキープして。もう少し。あぁ、バックパス。小林。あぁ・・・。

誰かのせいにするのはすごく簡単で、われわれもこの最後のCK、それにつながる(プロフェッショナルとは言い難い)プレーには相当がっかりしたのが事実です(一点の重さとそれに連なるプレーのあまりの軽さ・・・)。しかし、このCKを跳ね返せば試合は確実に勝利で終わっていたのも事実。あれがもし仮にPKであったとしても、ホイッスルがなる前に諦めたほうが負けなのですから。全員で守るのがCK。そういう意味ではチーム全体で招いた失点なのだと言わざるを得ません。

1点の重み。守り切れなかった虎の子の1点。最後にわれわれの勝ち点2を奪った横浜・同点の1点。なにより遠かった追加点の1点。サッカーの場合、他のどんな競技より得点すること自体が困難だから、その得点シーンに最大限歓喜する。サッカーの1点は重く貴い。だからサッカーは面白い。そう思います。取られたら取り返せばいい。そんな単純な組み立てのスポーツではない。なぜなら攻も守も連続した90分のなかに入り乱れて存在し、互いに相手の意図を潰すことがプレーの大部分を占めるのだから。だからサッカーは難しい。だから世界中のみんなが魅了されるスポーツなのだと思うのです。

6点という大量点を惜しげもなく奮発してしまった前節。対照的に貴重な1点を守りきれなかった今節。勝ち切らないといけなかった試合。歯を食いしばるしかない結末。まるで昨年の第3クール、吉井の決勝弾で勝ちきったときとは真逆の心境に、しばらくホーム・スタジアムで立ちすくんでしまったシルバーウィークの最終日。この思いを晴らす戦いはすぐにやってくる。来月またここで、舞台を天皇杯に代え再び横浜と戦います。

2009.09.21 惨敗。徳島戦
9月20日(日) 2009 J2リーグ戦 第40節
徳島 6 - 0 熊本 (18:34/鳴門大塚/3,931人)
得点者:1' 登尾顕徳(徳島)、10' 柿谷曜一朗(徳島)、48' 六車拓也(徳島)、52' 羽地登志晃(徳島)、77' 徳重隆明(徳島)、84' 石田祐樹(徳島)


初の3連勝を狙うどころか、記録的な大敗を喫してしまいました。徳島相手に0-6。第1クール、第2クールとも0-3の完封負けでしたから、通算ではなんと0-12の完膚なきまでの一方的な敗戦です。

徳島 (先発フォーメーション)
 18羽地 
13柿谷7徳重
29六車6倉貫
 15青山 
16挽知17麦田
20ペ・スンジン5登尾
 21上野 

徳島の美濃部監督は、4-3-3へのシステム変更を、当日の朝に決断したそうです。その六車、青山、倉貫の3ボランチに、思うように中盤を支配されました。羽地、柿谷、徳重の3トップは、実に流動的にポジションチェンジを繰り返し、どこからともなくDF裏に飛び出してくる。ここ2試合、相手FWをきっちり押さえ込んでいた矢野とソンジンの両CBも、捕まえ切れませんでした。熊本は前節と同じシステム。同じ布陣。しかし、前節より幾分か高く上がった両SBが、徳重、柿谷の前に大きなスペースを与え続けました。

開始早々にGK小林のミスからCKを与えると、これを登尾に押し込まれる。まだ「何もしていない」うちに1点ビハインドの状況。続いては、左サイドから麦田のクロスに、ファーの柿谷が体勢を崩しながらのボレーシュート。当たり損ない気味のボールは小林の手に当たるものの、ふわっとゴールにすい込まれ追加点。なんと開始わずか10分のうちに2点差となってしまいました。

その後も高い、故に“薄い”DFラインで戦う熊本。奪われてはそのまま決定的なピンチを招くという、連敗中に何度も見せられたようなシーンが続きました。藤田がボランチの位置まで下がってみるものの、徳島の早く激しいプレスの前に“繋がり”は寸断される。

2点差ではあったものの、後半45分もあれば、どこかで好機が現れるもの。なにしろ草津相手に6点も取ったのだから…。そんな思いがあったのはわれわれだけではなかったはずです。しかし、結果は全く逆に。われわれが都合6点もの大量失点を喫することになってしまいました。これから行こう、という矢先にまたしても小林のキャッチミスからの失点で出鼻をくじかれると、ますます前掛かりになったところにインターセプトなどから一発で裏を取られ、失点を重ね続けました。

C大阪からのレンタル。柿谷の、敵をあざ笑うかのようなドリブルと、絶妙に溜めたスルーパス。J通算200試合出場を自ら祝うように徳重も決める。6点の大量点を、それぞれ別の6人が決めるというのも、珍しいことではないでしょうか。

スカウティングが甘かったのか、あるいは直前のシステム変更に戸惑ったのか、今日の熊本はなす術もなく敗れた感じがします。しかし、相手3トップにあれほど翻弄されていながら、途中の修正も効かず、(テレビ画面を見る限りにおいては)両SBをいつも以上にあれほど上がらせていたのもどうも腑に落ちません。

サッカーって、選手一人ひとりのコンディション、一人ひとりのメンタル。一人ひとりのモチベーション、相手の戦術、こちらの戦術、選手交代のタイミング、気温、風、芝の長さ、パスの長さ、角度、スピード、トラップの技量、シュートの体勢、果てはアイコンタクトでの意思疎通などなど、まだまだ無数に近いたくさんの“変数”があって成り立っているスポーツなのだと思います。まるでそれらの変数を多変量解析に掛けて、そのなかでのベストの解を見つける。果てしない作業なのではないかと。

集中力を欠いたプレーだ、連携がなっていない、奪われても追わない、出足で負けている、玉際で負けている、なぜ立て直せない…。確かに今日の熊本はそのとおりだったのですが。確かにこの時期のこのカード。傍で見るよりは選手のモチベーションは難しいのかもしれませんが、誰も好き好んでそんなプレーをするわけがないわけで。まさになす術がなかったわけです。勝負事にはこういった大敗ということが間々起こります。力の差とか客観的な条件以上に、一方的な経過、結果となってしまう。変数がことごとく相手に有利なベクトルを描き、ある意味で心理学的な研究対象になるようなことかもしれません。

6-0で完封する試合もあれば、まったく逆の負け方をしてしまうことがある。ダイナミックと言ってしまえばそれまでですが、その変数のうちのいくつか制御可能なものをコントロールしてくことが、藤田がコメントで言っている「力が安定していない」ことを安定させることに繋がるのではないでしょうか。

草津に勝利したときも、6-0の勝利は1-0の6倍も嬉しかったか、価値があったかというと、そんなことはありません。確かにショックで、ガックリと膝にくるような結果ですが、ことさらに深刻にならないようにしたいなと。スカパーの画面に映るゴール裏には、びっくりするくらいの赤いサポーターの数。関東からも駆けつけてくれて…。皆が今日願ったことは、「切り替えて次!」にということ。モチベーションという変数だけでも大きくできるように、われわれはスタジアムに足を運び声援を送ります。

9月12日(土) 2009 J2リーグ戦 第39節
熊本 2 - 1 鳥栖 (16:04/熊本/8,671人)
得点者:29' 西弘則(熊本)、62' 高橋義希(鳥栖)、84' 山内祐一(熊本)


ふーっ…。痺れました。久しぶりに“痺れる”という表現がピッタリする試合内容でした。この試合、どうしても勝ちたかった。何故だかわかりませんが、どうしても勝利という「結果」が欲しくてたまりませんでした。それは前節、悪夢の5連敗を断ち切って草津に大勝したあと、選手の誰もが「次こそが大事」と同じように口を揃えたこともあるかも知れません。悪循環を断ち切ってひとつ“ステップアップ”したチームを確かめたい。そうでないとあれだけ追い詰められた意味がないじゃないか…。そんなことを思っていたのかもしれません。もうちょっと感情的に言えば、鳥栖との前回対戦(第2クール初戦)での敗戦が、あまりにもふがいなかったという思いや、前節・福岡戦での勝利後の岸野監督のあまりな“はしゃぎ”ぶりが見るに耐えなかった。あんなものをホームで見せられたらたまらない。そんな気持ちもあったのかも知れません…。

戦いの前の嵐。KKウィングは、久しぶりの豪雨に包まれました。天気予報では夕方まで雨。しかし、動員のかかったダービーマッチに詰め掛けた多くのファンの願いが通じたのか、試合が始まると同時に晴れ間が差してきました。鳥栖からも多くのサガン・ブルーのサポーターがメイン、バックのアウェー側を占拠。第三クールのこの時点でJ1昇格を狙える位置につけているチーム。当然のサポートでした。試合前からヒートアップする応援合戦。まだまだダービーと呼ぶのはおこがましいのかも知れませんが、隣町同士だから実現するこの雰囲気。これだけ応援でも競いあうと、今日はじめて訪れた人たちはもちろん、J‘sゴールの投票で来訪してくれた藤本泉嬢、表敬訪問のチェアマンにもきっとわれわれのこの興奮が伝わったはずです。

鳥栖は前節の福岡戦、後半からトジン、ホベルトを投入して一気に流れを変え、1点のビハインドをひっくり返しました。今節はその二人が最初からスタメンに入っている。前半から飛ばして先制点を奪う構え。熊本は前節しっかりと守り切った矢野とソンジンを守備の中央に置き、左サイドには原田が復帰。さすがの連続出場で疲労が蓄積しているだろう石井の側には吉井が位置して2ボランチに。2トップは前節と同様、山内、藤田ですが、これも藤田が自在に動いて、山内、西森、西という若い個性を引き出していこうという考えだったのでしょう。

鳥栖 (先発フォーメーション)
35ハーフナー 11トジン
10島田6高地
28ホベルト14高橋
13日高2柳沢
5飯尾4内間
 21室 

今日の勝因を問うなら、誰もが熊本の「守備がよかった」と答えるでしょう。北野監督は試合後のインタビューで「攻めているときも守備を考えろ」(J‘sゴール)と指示したと言っていますが、そんな単純なことだけではなかったはずです。もちろん、戦術を記者に詳細に明かす監督など滅多にいませんけれどね。基本的な鳥栖の狙いはハーフナー・マイクの高さに当てて、こぼれたところをトジンや両サイド、あるいはボランチが拾っていくこと。これに対しては、主に矢野がマイクと競って自由にさせませんでした。バイタルエリアには、ゴールを狙う猛獣のごとく鳥栖の前線4人が常に侵入していましたが、熊本は中盤4人とDF4人との2ブロックでしっかり挟みこんで、仮に最終ラインにボールが入っても、矢野もしくはマイクが落としたところを拾うのは熊本。危険なエリアでは決して鳥栖にボールを譲りませんでした。

要注意人物・ホベルトを嫌ってか、奪ってからは意識的に長いボールを前線に供給。これによって鳥栖の最終ラインと中盤が間延びします。ホベルトが孤立ぎみのところに、吉井、石井やサイドの西、西森のチェックが容赦なく入る。前回対戦で果敢なプレスにあい、自滅していった熊本でしたが、今日はそのお株を奪うハードワークを演じました。更に前節から続いていたのは「インターセプト」の意識。鳥栖の攻撃の繋がりを断つと、一気に反転攻勢に出ます。

前半29分、ソンジンからの低い弾道のロングパスに西森がトラップ一発、右サイドを破ると、素早く中に入れる。信じて走り込んで来た西がDF2人と競いながら撃ったシュートはみごとにゴールに流れ込みました。先制。奮い立つスタンド。振り回される旗、そしてマフラー。決めた西と山内、アシストの西森ががっちりと抱き合う。3人の小柄なスピード・スター。いずれも熊本の生え抜きの選手たちでした。

ボールの狙いどころを一列下がったあたりに置き、激しくチェックする熊本。圧倒的な高さのある相手FWに対して最終ラインは下げられない。異常にコンパクトな陣形で赤いユニフォームが白のユニフォームを激しく囲いボールを狙い続けていました。ボールを奪えば前を向いたプレーヤーはまず前線へのパスを選択していましたね。全く高さの武器はない熊本の前線ですが、これを執拗に繰り返していました。たとえ後方からでも、前線はそれぞれに動き出し、受け方を工夫していました。ロングボールではなく“パス”としての確率を狙うような。それは出し手も同じく。先制の場面も、GK小林からのボールを受け振り向いたソンジン、瞬間、迷うことなく西森を狙っていました。相手DFラインはきちんと揃っていましたが、西森の受ける動きが勝った。以前「水戸との差」というエントリーで書いた「ゴールからの逆算」というプレーが感じられた瞬間でした。

鳥栖はDF内間を早々に諦めベテラン山田を投入。これで前節の後半流れを変えた布陣そのままになりました。展開は前節と同じ1点ビハインドであったものの、後半開始からも思うように運べない。攻守にバランスを保つ熊本相手に、どうにも出しどころ、崩しどころがなく、状況を打開できない鳥栖。前節、後半の局面を打開したトジン、ホベルトは既に45分間、ピッチ上で消耗していました。

それでも執拗に攻め続ける鳥栖は55分、菊岡を入れることによって、いよいよ“圧”をかけてきました。いきなり右サイドを破りエリア内のマイクへ。このシュートは枠を反れる。スタジアム中に安堵のため息。しかし連続してサイドから起点を作られ始める。62分、右サイドでソンジンがトジンに入れ替わられ、最終ラインを破られる。放たれたシュートは運良くポストに当たりましたが、跳ね返りのボールは中央に走り込んでいた高橋の足下に。これを押し込まれ同点とされました。

完全に鳥栖の時間帯に。このまま鳥栖を勢いづかせてしまうのか。これまで何度も目の当たりにした流れ。どうしようもない不安がよぎりました。しかし、直後、ベンチはその習い性になった“負けそうになる”消極的な気持ちを打ち消すように交代カードを切ってきます。西森に代わって木島。疲れの見える原田には福王。追加点を狙って前がかりになった鳥栖。薄くなっているCBのところで、木島が何度も体ごとぶつけ合うシーンに、観客からここぞとばかりに声援が飛びます。追加点を! 頼むぞ!

接触プレーでの故障で中断。集中力を欠きがちな時間帯です。それにしても今日の主審は、ことのほかファールを取らない。試合を中断させず実質のプレー時間を長くしようというリーグ方針を体現しようとしているのか。よくも悪くも、これもチェアマン御前試合の影響だったのかも知れません。

84分、藤田に代わって入っていた山本からのロング“パス”を受けた木島。これもトラップ一発で左サイド奥のスペースへ抜け出します。追走しぴったりと寄せるDF山田。エンドライン際、互いにユニフォームをつかみ合いながら、体ごと押し合う、息を呑むような男と男のせめぎ合い。一瞬、山田の動きのスキをつくように奪い抜けるとCB飯尾の股間を抜いて中央に詰めてきた山内に早いパス。これを山内がきっちり押し込んで決勝点。もう、スタンドは総立ち。怒号のように鳴り響く歓声。そして沈黙する鳥栖側。ピッチ上の鳥栖イレブンの落胆もはっきり伝わってくる決定的な1点でした。

試合後に表彰されたMVPは木島。満を持して投入したベンチワークに応える文句ない活躍でした。それにも増して嬉しいのは、先発で起用されているFW山内が結果を残し続けていること。西もしかり。さらには西森にはすばらしいアシストがついた。反面、藤田ひとりが目立つようなサッカーではなくなってきているような。藤田が黒子に徹して、ようやく今季の熊本のチーム全体としての力が成熟してきているような。GKの小林が守備陣に対して大声で指示をする。失点したあとの場面でも、「行け!」とばかりに矢野の背中を押す。言葉が通じないソンジンに矢野は「身振り手振りで指示」(13日:熊日)する。藤田の大きなゼスチャーはもちろんだけれど、ボールを持った選手に対して、全員のサポートが効いている。皆の声が出ているのが、スタンドにいてもはっきりとわかります。

動員のかかったゲーム。残念ながら入場者数の記録は更新できませんでしたが、痺れるような好ゲームをホームで見せられた今日の観客は、確実にリピーターになったことでしょう。九州ダービー。鳥栖との最終戦。ちょうど昨年、2万人のファンが見つめるベアスタでの戦いで、やはり昇格を伺っていた鳥栖に2-1で勝利して、躓かせたあの試合をどうしても思い起こさせます。そして熊本はあれから怒涛の8試合負けなしを演じたということも…。

リーグ成績では、ようやく2度目の2連勝。実に2ヶ月半ぶりのホーム勝利。KKウィングに至っては4月“ホーム初勝利”とうたった札幌戦以来でした。その間、負けても負けても、皆が通い続けたKKウィング。それはわれわれの唯一のホームチームだからあたり前なのですが。今日またこんな舞台で、記憶に残る“痺れる”名勝負を演じてくれる。また一歩、前に進んだ。そう確信させてくれる価値ある勝利でした。

2009.09.07 大勝。草津戦
9月6日(日) 2009 J2リーグ戦 第38節
草津 0 - 6 熊本 (16:04/松本/2,201人)
得点者:12' 藤田俊哉(熊本)、44' 山内祐一(熊本)、47' 山内祐一(熊本)、58' 石井俊也(熊本)、67' 西弘則(熊本)、74' 山内祐一(熊本)


8月29日。C大阪戦の前日でしたか、大津で行われたトレーニングマッチ。たまたま仕事が休みで見に行ったときのこと。左SBに“見慣れない”プレイヤーが。ひょろりとした長身のその選手は、果敢なインターセプトから、タイミングよく左サイドを駆け上がり、絶妙のクロスを上げていた。まるでそれは右の市村のたたずまいに似ていて…。それが昨年のルーキー・網田だと気づくのにはしばらく時間がかかりましたが、そのプレーを目の前で見て、「網田がもうすぐ使えそうだ!」とその場で相方にメールをしていました。その日は大学生の練習生が数人参加していたり、TMの相手が母校・大津高だったりして、彼にとっても“負けられない”気持ち、いいモチベーションがあるのかな?と、少し割り引いては見たというのが正直なところです。やはり競争環境が大切だ、というのがそのときの結論で、まさか、こんなに早く彼の先発が実現するとは思ってもいませんでした。網田慎。この貴重なレフティーは、昨年の入団以来、一度も表舞台に立つことなく、ただ黙々と左SBとして練習を重ねてきました。そして今日、この松本・アルウィンのピッチで、Jリーグデビューを果たすことになりました。選手入場のシーン。いくらか緊張の面持ちの網田…。

戦前から熊本と草津の似た点が語られていました。前監督がGMに就任し、内部昇格の現監督。互いにポゼッション・サッカーを標榜するものの、最近は勝ち星に恵まれていない…。この一戦に掛ける互いの強い意識が、遠く北アルプスを望む美しいスタジアムでぶつかり合いました。キックオフは16:00。熊本であれば、まだうだるような暑さの時間。しかしこの松本はまさに避暑地のような気候条件。これも試合の行方を左右するんだろうなと。

熊本は、その網田を左SBに置き、CBにチョ・ソンジンと矢野、右は市村。前線は山内と藤田を2トップにし、西森、西、吉井、石井をダイヤモンドに敷いてきました。“正眼の構え”ながら、大幅なというより“大胆な”シフト変更。しかしながら、山内を含め藤田、西、西森のポジションがまったく流動的であることは予想がつくものでした。

草津 (先発フォーメーション)
9高田 27都倉
14熊林10廣山
6櫻田30松下
18小池7佐田
4田中26藤井
 1本田 

互いがポゼッションを志向するだけに、開始早々から奪い合い。前節、岐阜に2-5と大敗を喫している熊本、中3日の日程ですが今日は何か吹っ切れたように歯切れのいい動き。山内が右サイドをドリブルで突っかけシュート。網田も早い判断から思い切りのいいボールを供給。草津もカウンターから広山のクロス。わずかに中央で合わずに事なきを得ます。

試合が動いたのは12分。熊本の右CKに立ったのは網田。CKの瞬間に草津のファール。PKを得ます。これを藤田が冷静に決めて、まずは先制。幸先の良い船出でした。しかし、熊本にはその後に畳み掛ける“凄み”がない。逆に草津にポゼッションを奪われる時間帯が続きます。櫻田の右サイドからワンツーはなんとかクリア。あるいは、ハイタワー都倉へのパスはオフサイド。肝を冷やしたのは30分、左から小池のクロスがポストに当たり、GK小林が体に当てて跳ね返す。さらにこれを高田に拾われシュートされるも、矢野がヘッドでクリア。危ない、危ない。その後も草津は都倉をターゲットに、攻撃を組み立てますが、いかんせん最後の精度を欠く。久しぶりに帰ってきた守護神・小林の気迫も勝っていました。

この時間帯、1点を守りきっての辛勝か…。内心そんな展開も予想してしまうような内容でした。しかし、前半終了間際、ゴール前中央で収めた山内が振り向き、相手DFに突っかけそのままドリブル。DFを交わしながら強引にシュートしたボールは、草津GK本田の手を掠め、ゴールネットに突き刺さります。いい時間帯での追加点。前半のうちに2点のアドバンテージを手にしました。

初先発の網田の左SB、まずまずの出来。というより、ディフェンスとしての忠実な動きは、この試合のチーム戦術を体現していました。時間の経過とともに徐々に落ち着き、試合にフィットしてきたのがわかりました。そう言えば今日は両SBともそれほど高くポジショニングをとらない。網田は守備重点でバランスをとっているような。加えて前線から連動したプレスが続いていて、草津のパスコースを塞いでいる。

後半、点を取りにいくしかない草津の“前掛かり”をうまく熊本が捕らえます。早々の47分、セットプレー。DFラインからのロングボールのバウンドに山内がうまく体を入れタイミングを合わせてダイレクトにシュート。草津の戦意を喪失させる3点目としました。さらに58分には右サイド西がDFを交わして、エンドラインまで切れ込み、タメにタメてセンタリング。ファーから飛び込んできた石井のシュートは一旦DFにクリアされるものの、それを再び石井がヒットして4点目としました。

草津はもう広山を代えて山崎、松下に代えて後藤涼を入れるしかない。しかし、草津のコンビネーションのちぐはぐさは変わらない。熊本のバイタルエリアを崩すところまでは来るものの、ラストパスが渡らない。フィニッシュが決まらない。

熊本は網田を下げて原田。藤田に代えて木島。67分には、高い位置でインターセプト。木島が中央で受けてDFを引き付け右に走りこんだ西に余裕を持ってパス。西はゴールに流し込むだけ。遂に5点目。ちょっと足が止まってきたかと思われた時間帯、西に代えて山本の投入も効果的で、74分には、ソンジンからのロングボールが山内に納まり二点目と同じように相手DF二人を振り切ってシュート。山内のハットトリックが決まり6点目とします。まるで昨季、忽然と登場した相手・草津の後藤涼を彷彿とさせるような小兵・山内の大活躍で、熊本が苦手意識もあった草津相手にとんでもない爆発力を発揮して大差、完封勝ちとしました。

久々にゴールマウスを守る小林の安定したセービングもありました。しかし、それにも増して、今日の勝因は草津のお株を奪うような、全員での前線から中盤での効果的なプレス、全員守備の姿勢でした。たじろいだ草津はミスを連発するしかなかった。さらに言えば、水戸を思わせるような、シンプルで縦に早い“意図のある”攻撃。加えて、新鋭たちの活躍。

しかし、結果論かもしれませんが、この試合のポイントを振り返ってみれば、早い段階の幸運な先制点、そこからの草津の攻勢の時間帯を凌ぎ切ったこと。そこではなかったかと。2点目をとりに行くという意識も当然あるはずでしたが、むしろバランスを崩さず、全員が守備意識を共有してゲームを“マネジメント”したことにあったのでは、とわれわれは思っています。6点という“大量点”ですが、ある意味で前掛かりの草津に、熊本の攻撃が“はまった”という形であり、逆に、こういったかたちでやられているわれわれにとっては、よくわかるメカニズムに思えました。今シーズンのホーム開幕戦、1-2で敗れたときのエントリーで、その悔しさから(あるいはひとつの目標として)「この草津とは五分五分に持ち込むことが可能なんだという手ごたえが得られた」「次は草津を倒す。翻弄する・・・」と書いていますが、今日の草津はあのとき勝ちたかった草津とはちょっと違うなあというのも実感です。

もうひとつ、今日のゲームを観て浮かんだのは「悪循環」という言葉でした。熊本と草津。両チームが喘いでいたのは何はともあれ「悪循環」ということではなかったのかと。奪えないから繋げない、繋げないから入らない、入らないから守り切れない。そんな「悪循環」をどこかで断ち切る必要があった。それを熊本はとりあえず「新たな力」と「新たなシフト」そして「自分たちへの自信」ということで今日、断ち切ったということではないかと…。少なくとも今日はそんな負の連鎖を止める“兆し”を感じられたということでしょうか。スカパーの解説者が言うようにこれがチームとしての“底上げ”“ステップアップ”につながればいい。そう思います。

鬱屈していたチームの雰囲気をとりあえず一掃してくれた大差完封勝利。画面に映る選手たちの久々の笑顔。遠い松本の地に馳せ参じたゴール裏のファンの中には泣いている人の姿も見受けられ…。「今度はホームで」という山内のヒーロー・インタビューに、最終クール、これからの快進撃を期待したいと思います。ちょうど昨年のように。

2009.09.03 試練。岐阜戦
9月2日(水) 2009 J2リーグ戦 第37節
熊本 2 - 5 岐阜 (19:03/熊本/2,337人)
得点者:2' 西弘則(熊本)、7' 嶋田正吾(岐阜)、29' 冨成慎司(岐阜)、37' 西川優大(岐阜)、65' 佐藤洸一(岐阜)、67' 佐藤洸一(岐阜)、89' 西森正明(熊本)


岐阜 (先発フォーメーション)
18佐藤16西川
 7菅 
11高木14嶋田
 23橋本 
6秋田19冨成
4田中3菊池
 1野田 

開始早々にスコアボードに灯った1点。右サイドをえぐった市村のクロスに前線の3人が飛び込んで、ファーサイドの西が綺麗にヘッドで捉える。こんな幸先のいい先制点は、実に何試合ぶりだったでしょう。藤田をダイヤモンドの一角に敷いた4-4-2の布陣。熊本にとってはやはりこれが“正眼の構え”のようで。これまでのモヤモヤを一発で吹き飛ばし、「今日は行ける!」そう思わせる一撃でした。が、しかし、あにはからんや5分後には同点。前半のうちに逆転。さらには追加点…。前掛かりの熊本の背中を突くとき、岐阜の攻撃は思い切りよく縦に猛進してきました。

後半、前節に続いて2枚代え。市村、原田の両SBを引っ込めて、矢野を右SB、木島を前線に置いて、西を左SB。藤田を下がり目に置いたボックス型の4-4-2に見えましたが、試合後J‘sゴールのインタビュアーは4-3-3と言いました。前半、果敢に攻め上がりチャンスを演出していた市村を何故下げるのかと思いましたが、疲労が理由のようでした。

しかし意外なことにこのシステムはかなり奏功したように見えました。一方的に熊本が押し込む時間帯が続きます。左SBの西の前にもスペースが出来て、得意のドリブルが冴える。矢野も右から起点を作る。ワンタッチのボール回しに岐阜が翻弄され始める。岐阜を自陣に釘付けにする。ただ、いかんせん残念だったのは、どうしても最終ラインを破れない。岐阜が作ったブロックに何度もぶつかっては弾かれる。逆にそこから、くさびで入れるボールを狙われては、反撃される。

20分ほど続いた熊本の猛攻を凌いだところで、突然の岐阜のカウンター。左サイドに出来た大きなスペースに走りこまれ早いクロス。飛び込んできた佐藤に豪快に決められました。呆然とするスタジアム。通路を隔てて座っていた見知らぬ老人が、「今のは、入ったのですか・・・?」と尋ねる。私がうなずくと、「そうですか…」といって後は聞こえない声で何かつぶやいている。

すぐ後も、エリア内に進入されて再び佐藤に渡り押し込まれる。スコアボードには、一方的に岐阜の得点だけが積み重なっていく。この惨状を目の前にして、さすがに居心地が悪くなった私。しかし、今日も訪れた2300人のファンは(少なくともわれわれのまわりでは)、一人として席を立とうとはしないのです。ある人は口を真一文字に食いしばり、ある人は腕組みし、ある人は呆然と口を開けていても…。目の前の若い女性ふたりは、マイボールになる度に、一生懸命拍手している。ゴール裏からは、絶え間なく応援のチャントが響いている。

岐阜も最後は集中力が切れたのか、決定機をことごとく外してくれる。最後の最後、もうロスタイムだったでしょうか。西森が足元に入ったボールを、DFを背にしながらも思い切りよく振りぬくと、GKの手をかすめ、ゴール右角に突き刺さりました。西森のJ初ゴールは、熊本の意地の一撃。見上げるスコアボード。熊本側に「2」が点灯されるのに、実に90分近くの時間を要しました。ホームゲームとしてこれほどの挫折を感じたことがない試合にもようやくホイッスルが吹かれました。


見ての通り、典型的なカウンター・サッカーに屈した、と言うことでしょう。さらに穿った見方をすれば、松永監督はその策をより効果的にするために、熊本にある程度攻め込ませ、自陣に深くに引きずりこんでいたのでは、とさえ考えられます(考えすぎでしょうが・・・)。対する熊本は、バイタルエリアで最後の崩しまで行けず、逆に狙いを定められてボールを奪われると、前がかりの体勢のままいとも簡単に2枚、3枚とかわされ、攻守の切り替えが“甘い”シフトは、ファースト・ディフェンダーもセカンドもないような状態で、いきなり最終ラインのCBがすべてリスクを背負い込んでしまう状況。成すすべもなくシュートを見送るという脱力感の漂うシーンが目の前で繰り返されました。

前回、大阪戦後のエントリーで、池谷GMの「今後は守備の意識を徹底していく」という方針を取り上げました。しかし、現実は、今シーズン、ここまでの戦いで染み付いた意識はそうそう簡単に入れ替わるものではなかったようです。チーム全体はやはり相当に前がかりでしたね。もちろん“引いて守る”といった単純な守備ではないので、それはそれでこの切り替え自体が戦術的な変更ということでもあるでしょう。しばらく時間がかかるのかもしれません。守備意識を高めるということは、より早い切り替えと、運動量を求めるということでしょう。夏場の消耗戦を戦った後のこの時期、なかなか思うようにはいかないということも想像できますが・・・。

終了後、スタンドに頭を下げる選手たちには、けれどもいつものように拍手が送られました。しかし、それは決して賞賛であろうはずはなく、むしろうつむき、うつろな視線を落とす選手たちを、なんとか鼓舞しようとする精一杯の拍手のように感じられ。スタンドから発せられる大声も、野次と言うより叱咤激励のものに聞こえました。いつまでも続くロアッソ・コール。この光景を目にして、われわれも何だか名状しがたい切なさがこみ上げてきて、それをこらえながら帰るのがやっとというところでした。家で見直したスカパーの録画。最後のところで、GK木下の目には決して汗とは言えないものが・・・。これほどの経験も初めてだったのでは。それは自分のプレーに向けられた悔し涙なのか。あるいは自分ひとりの力では如何ともし難かったゲームへの失望感なのか。もちろんそれは彼ひとり背負い込むべきものでもなく。今、われわれは初めての大きな試練に直面し、たじろいでいます。