10月24日(土) 2009 J2リーグ戦 第47節
熊本 1 - 0 湘南 (13:03/水前寺/2,835人)
得点者:69' 矢野大輔(熊本)


残念だったのは、この歓喜の瞬間を3千人足らずの人たちにしか共有してもらえなかったことでしょうか。終了のホイッスルの瞬間、溜まっていた緊張感から解き放たれて、まるで雄叫びのような声を上げ、喜びを爆発させるホーム・スタジアムのファン。やはり勝利の歓喜に勝るものはありません。

終盤を迎えたリーグ戦。湘南は前節、鳥栖をロスタイムの劇的な一撃で下し、5試合ぶりにJ1昇格ライン3位に滑り込んでいました。残り試合は5。ひとつも落とせない連戦のなかで、反町監督は“流れ”を重視したのか、前節と全く同じ布陣を選択しました。しかし、湘南イレブンの疲れは隠せなかったですね。あるいは精神的にも、前節の“痺れる”試合。極度の緊張感。その集中力が底をつきかけていたのかも知れませんが…。

湘南 (先発フォーメーション)
 34田原 
11阿部22中村
8坂本7寺川
 21永田 
30島村5臼井
19村松3ジャーン
 32野澤 

開始早々、西が右サイドを抜けてシュート。湘南のゴールマウスを脅かす。湘南は寺川のロブに田原が中央を破り、飛び出した木下の頭越しにヘッド。これは右に外れる。累積で欠場の松岡の穴を埋める左SBの網田が果敢に上がり、前が空いた瞬間を見逃さず思い切りよくシュートする。相変わらず判断が早い。湘南・坂本もお返しのようにミドルを放つ。「もっとしっかり田原にぶつかっていけ」といわんばかりの北野監督のDF陣へのジェスチャー。時計を見たらまだ開始から15分。しかし、この15分までに既に互いのサッカーが凝縮されていて。全ての“役者”が次々に登場し、その存在をアピールし、まるで“顔見世興行”を見るような時間帯でした。

熊本はその後もワンタッチのパス回しでサイドから崩してアタッキング・サードを脅かす。練習でひたすら繰り返したというグラウンダーの早いクロスを、右から左から入れることにより、バイタルエリアを混乱させる。前半終了間際には、湘南・寺川のFKがバーをかすめ、あるいはDFラインをかいくぐった中村に決定的なシュートを撃たれますが、ポスト右に反れてくれました。多少の幸運もありましたが前半、互角の印象。しかし湘南側のオフサイドの多さと、熊本が得たCKの数が、後半の展開を占っているようでもありました。

戦前、スタメンの布陣を見て驚かされたのは、木島、宇留野、中山という本来のFWを全てベンチに休ませ、先発の2トップの一角に小森田を使ってきたこと。もう一方の藤田といい本来MFの選手。2トップにしてゼロトップなのか。2列目から西、西森、あるいは吉井が追い越してゴールに迫るというイメージは理解できないこともありませんでしたが、思い出すのは第2クールでの対戦。藤田のゼロトップが奏功し先行した試合展開のなかで、後半打った交替カードで“自滅”した感のあった試合。それは監督だけの“欲”だったようにも映り、今回の“奇策”にも不安を感じました。

しかし、それは結果的には全くの杞憂でした。前半をスコアレスで凌いだところで、試合は監督のプランにがっちりはまりましたね。セットプレーから1点をもぎ取って、そこから繰り出す交替要員のFW達は、前線でのタメを作るいわば“守備的攻撃要員”とも呼べるカードとして機能しました。

後半開始から湘南は中村に代えて菊池を投入。反町監督の狙いは「左SB(網田)の経験不足を突く」というものでした。しかし奏功しない。網田にも危なかっしさは残るものの、しっかり守備陣としてフィットしている。基本技術がしっかりしている。体が強い。今日の湘南、確かに攻めてはいるものの、どこか消極的。ある意味手堅いとも言えるのかも知れませんが、リスクを極力犯さない“負けない”ための戦いに映りました。これが昇格戦線を戦うチームというものなのか。JFL時代の熊本を思い起こさせます。

もちろん湘南には「リスクを犯さなくても点は取れる」という自信があったのかも知れません。寺川のスローインから波状攻撃。こぼれたところを右から阿部に撃たれますが、シュートコースは枠の外でした。ほっとため息をつくスタジアム。湘南の攻勢をどこまで凌げるか。

さあ、プラン通りに運んだゲームも後半15分。ここで熊本ベンチは、満を持したように木島を呼ぶ。ビブスを脱いで準備する木島。控え選手全員が駆け寄り、まるで“魂”を注入するように肩を叩く、手を握る、声をかける。「頼むぞ!」と。

左からの藤田のシュートなのか、折り返しなのか、何とも言いようのない絶妙なクロス。GK野澤は判断よくパンチで逃れる。そこから続く熊本のCK。1本目、右から原田。ファーにいた矢野にボールがいったん納まるも、対峙したジャーンを突破できずクリアされる。2本目、左からは西森。ニアに走りこんだ矢野、競り合うジャーンの足が僅かに早くクリア。そして3本目も左から西森。ややファーの位置からほぼ中央へ走りこんだ矢野、マーカーのジャーンは木島のブロックする動きに一瞬出遅れ、フリーの矢野は中央からドカンと突き刺す。GK野沢の手を掠めゴールネットを揺らす。「入ったー!うおーッ!」スタジアムは総立ち。ガッツポーズ。タオルマフラーを振る。飛び上がる。3本のCKがすべて矢野とジャーンのマッチアップという印象的な攻防。鉄壁のジャーンが見せた一瞬のスキでした。

時間にして69分。前節とほぼ同じ時間帯の得点劇。前節、ここからの水戸は「連敗を止めたい」という気持ちが焦りに変わり、単調な攻撃に終始しました。今日の湘南は「負けられない」という気持ちが、「負けてはいけない」というプレッシャーに変化していったのではないでしょうか。湘南は切り札的存在のアジエルを入れる。前節の鳥栖戦でも、奏功している交替カード。熊本は今日も中盤で攻撃を作り、相手の起点を潰していた原田が足を攣った様子。しかし宇留野との交替で退いたのは、同時に足を攣った網田。左SBには西が下がります。

残り10分。湘南のゴリゴリと押し込むような攻撃が続く。前回対戦で終盤2点差を追いつかれたシーンが浮かんでくる。アジエルがスルーしたところに右から臼井がゴールに迫る。敢然と飛び出す木下。入れ替わって矢野と福王、市村がカバーに走る。木下を交わした臼井のシュート。絶体絶命のシーン。シュートには福王、ゴールマウスには矢野、こぼれ球には市村。対応する福王を外してやや上を狙った臼井のシュートは、クロスバーに当たって跳ね返る。場内が大きくどよめく、安堵に天を仰ぐ。

直後、左サイド、坂本からのクロスになだれ込む臼井。体を張って守る西森。倒れ込んで動けない。最後のカード・中山と交替。これでもう原田は最後まで引っ張るしかない。木島が相手を倒して与えたFK。もうどの距離からのFKも怖い。田原のヘッドは木下がキャッチ。残り5分。湘南は永田に代えて田村。しかし焦りからか全体にミスが目立つ。ジャーンは上がったままのパワープレー。ゴール前への猛攻。体を張って阻止する熊本。後押しするようにスタジアム全体で響き出す手拍子。徐々に早くなるそのリズム。まるで「時間よ。早く進め」とばかりに。木島がFKで狙う。藤田が時間を使う。中山が前線で守備に走る。もう熊本は6人ぐらいDFラインに並んでいる。その中で福王が「下がるな!」と叫んでいる。ホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムDJが思わず大音量で発した「やったーー!」というアナウンスは、ホームの全てのファンの気持ちを代弁していました。

選手のみならずファンの全員が、最後のプレーまで安心できないことを知っている。それはここまで何回も高い代償を払って学んできたことでした。そしてここにきて2戦とも虎の子の1点を守りきれたことには、ただ単純に最終ラインで跳ね返すだけではなく、前線で自信を持ってパスを回せるという今シーズンやり抜いたことの成果でもあるでしょう。最終ラインのブロックで跳ね返したセカンドを、拾ってキープできるもうひとつ前のブロックがある。今日の湘南、引いて守って凌げる相手では決してありませんでした。

前回対戦のときだったでしょうか。勝利監督のインタビューで「湘南には足を攣る選手はいない」と反町氏に言わしめた。今回も最後、熊本は満身創痍といった状況でした。しかし今戦前、「今日は勝負強さが試される」とも言っていた反町監督。皮肉にもそれを発揮したのは熊本の方でした。ベンチも、久しぶりに出場した選手も含めた全員の総力で。

決めるところで決めなければ逆にやられる。サッカーではよくあること。それを今回はまるでプランどおりであったかのように、勝利へと結びつけた熊本の試合運びと交替策。“型”にはまった。その展開は、まるで歌舞伎の形式美とまでは言いませんが、水戸黄門や虎さんのドラマぐらいの“型”のはまりかたでしたね。

第1クール完敗時のエントリーで「この先なんとかひと泡吹かせたい」と書いていました。第2クールでは、収穫も多いと書きながら、今読み返すと実は悔しさが滲み出ています。一矢報いた。それも昨年と同じような状況、昇格戦線を戦うチームを相手に。一戦一戦が痺れるような最終タームなのでしょう。湘南のゴール裏にも、これまでになく多くのサポーターが詰めかけて、チームの昇格を信じ後押しをしていました。どの顔も期するところを感じさせる厳しい表情。まだそんな状況にわが身を置くことなど想像もできないJ2年目の終盤戦。しかし今日の水前寺での逃げ切り勝利は、間違いなく今期一番の痺れる試合に違いありませんでした。

10月21日(水) 2009 J2リーグ戦 第46節
水戸 0 - 1 熊本 (19:04/笠松/1,408人)
得点者:67' 宮崎大志郎(熊本)


51試合。長いリーグ戦のなかでは、調子の浮き沈みは必ずあるもので。例えば開幕ダッシュに出遅れた感のあった鳥栖や札幌が、その後の建て直しで、今は昇格戦線に喰らいついているし、草津のようにとても波の激しいところもある。怪我や出場停止のなかでの選手のやり繰り、連戦のなかでのコンディション管理等、いろいろなファクターがあってのことなのでしょうが、毎回のように書いている「モチベーション」なども大きな影響を与えるものだと思うのです。

水戸が7連敗と苦しんでいる。一時は前述の2チームとともに、昇格戦線に入り込もうとしていた水戸が・・・。ひとつの戦術パターンのお手本として注目していたあの水戸が。ちょっと信じられないその状況にあります。何か選手のモチベーションに関わる重要な出来事があったのではないか? などという邪推までしてしまいます。

現状を打破するためか、この試合、システムや選手をいじってきた水戸。星野や堀をスタメンに起用し、ファイターの菊岡をトップ下に置いてきました。そして蓋を開けてみれば、何のことはない。「勝ちたい」と思う気持ちは、調子の上がらないわが熊本を上回るようなものを感じさせました。

熊本はミッドウィークの連戦を配慮してか、藤田をベンチスタート。攻撃のタクトを振るのは、前節もこのポジションに入ったダブルボランチの一角の原田拓。出場停止の右SB・市村の代わりには宮崎。木島と宇留野の2トップという布陣。

水戸 (先発フォーメーション)
13吉原9荒田
 8菊岡 
6堀23遠藤
 19森村 
2小澤30中村
32大和田21星野
 1本間 

序盤からというより、試合を通して全くの互角。11分、吉井の長めのロブに飛び出した宇留野が右サイドを破り、ダイレクトでシュートを放ちますが、ファーポストに嫌われる。直後には、カウンター気味に水戸FW・吉原が左サイドから早くて低いクロスを放り込み、誰かに合わせられれば一巻の終わりというシーン。18分には吉井が高い位置で奪い、そのまあ強いシュートを放ちますが、これも僅かに枠を捕らえきれない。24分にはCKに上がった矢野のヘッド。ドンピシャでボールをつかまえますが、惜しくも左に反れる。すぐ後には、水戸の荒田が熊本の最終ラインを破る。DFと競い合いながらも、その体躯を活かしたシュートは決定的!これは木下がファインセーブして事なきを得ます。スコアレスで前半を終えますが、互いに「勝ちたい」「連敗から抜け出したい」という気持ちが激しくぶつかった五分五分の勝負に見えました。

後半開始時もベンチに座る藤田。なにやら北野監督としきりに話し合っている様子が、テレビ画面に映ります。ピッチの外から状況を見守っている。初めてスタメンを得たという水戸の堀健人。JFL時代も苦しめられた彼のスピードは健在で、持っては思い切りよく走られ、クロスを上げられる。なんとか木下が先にさわるものの、高い“モチベーション”に手を焼きます。

あわや失点かと思わせたのは50分、水戸のFKを木下がパンチング。これを吉原がダイレクトで叩くとゴールネットを揺らす。しかし、大和田のキーパーチャージで得点は認められず、胸をなでおろします。カウンター合戦の様相。水戸は吉原に代えて高崎を入れてくる。高さも速さも兼ね備えた嫌な相手。対する熊本は宇留野を下げて中山を投入します。

値千金の決勝点になったのは67分、中山に入ったクサビのボールを原田が預かると、左に流れて木島にヒールでマイナスパス。相手の詰めの甘さを感じ取った木島が、それを豪快にミドルで放つ。堅守に貢献している水戸のGK本間も、これにはたまらずパンチで逃れますが、そこには最終ラインから上がってきていた宮崎。バイシクル体勢だった中山が宮崎に譲ると、右足で確実に押し込みました。一瞬の攻めの好機を逃さない、リスクをものともしない全員攻撃。アタッキングサードで仕掛ける絶妙のパターンを見せてくれました。

ところがこの後、試合は急展開。得点を決めた宮崎が2分後、2枚目のイエローで退場。一気に形勢は水戸に傾きます。エリア内でのバックパスを見逃さず飛び込む荒田の気迫溢れるプレー。しかし、予想もしなかったであろうこの展開に、今日のベンチ要員が(おそらく結果的に)奏功することになりました。ひとり少なくなった熊本は、西森を下げて、河端をCBに入れて福王を右SB、木島のワントップに。“人に強い”河端に、あの厚別・札幌戦の再現が期待されました。そして何より効果的だったのは、最後のカード。残り10分近くになって原田に代えて藤田を投入。もちろん藤田に下がってのディフェンスを求めるのではなく、前目でタメを作らせ、守りの負担を軽減させる。あわよくば追加点を狙うという戦術でした。

藤田と木島で作る“時間”。木島が「ここまで体力が残っていたのか」と驚かせるほど、前線で動き回る。その運動量。その存在感。まったく人数差を感じさせない、おそらくはこの2人で3人分を構成したような形ではなかったかと。チーム全体が意思統一された熊本のプレーで、逆に焦り始めた水戸にファールが増える。

そしてついにロスタイムも経過し、終了間際の水戸のFK。何度も嫌な思いをした時間帯。やはりDFとGKの間が狙われる。飛び出した木下が触れない。ヘッドで繋がれ荒田が突き刺す。絶体絶命のこのピンチに、ゴールマウスに立ちはだかったのは福王。懸命に足を伸ばし跳ね返した!「またか!」と一瞬、テレビの前で目を瞑ってしまいます。「入っていた!」。水戸の猛アピールに、首を横に振る主審と副審。間一髪で助かった。まだまだ続く水戸のセットプレー。FKにGK本間も上がる。連敗から脱したい一心。最後のCKに頭で合わせた本間。しかしそのボールはゆっくりと弧を描いてクロスバーの上を越えていきました。

そうです。水戸に初めて勝利を収めました。J昇格以来、本当に初めて。持っていた苦手意識をなんとか払拭できた。長いトンネルに入っているとは言っても、やはり相変わらず水戸は水戸でした。スピードを活かし、縦に早い攻撃。J2で一番パスの数が少ないとにかく早い攻撃。GKと高いCBを中心とした堅い守り。そんな水戸を、目の前にあるひとつのモデルと言っていた藤田。同級生の木山監督の苦悩を、今日はどう感じとったのでしょう。

その藤田をベンチで温存していた今日の熊本。幸運と言っていいのでしょうか。当然、戦前のプランでは攻撃的オプションだったのでしょうが、今日発揮された彼の役割は、 “逃げ切り”だったことは明白です。画面ではあまりよくわからなかったのですが、実況アナによれば、ピッチに入った途端、一人ひとり余すことなくチームメイト全員に指示を送ったという藤田。それは戦術的なことだったのか、あるいは精神的な言葉だったのか。ピッチサイドでいくら監督が叫んでもできないことが、この男には出来る。まさしく“現場”監督。このことがなかったら、福王のスーパープレーはまだしも、逃げ切ることは叶わなかったのではないか。持ちこたえることはできなかったのではないでしょうか。これも“たら”“れば”のうちとは知りながら、どうしてもそう思えてしまう試合。第1クールの東京V戦のときのように、藤田の存在を強く印象づけた。そんな試合でした。

「次節のホームでは、内容も伴うゲームをして勝利したい」。確かに今日は、彼にとっても熊本にとっても“会心”のゲームではなかったものの、ブログに綴られた彼の気持ちは、すでに今週末の湘南戦に向かっています。残り少なくなったホームゲーム。精一杯、後押しをしたいと思います。

10月18日(日) 2009 J2リーグ戦 第45節
熊本 0 - 1 福岡 (13:03/熊本/12,730人)
得点者:35' 久藤清一(福岡)


何もかもが残念でしたね。他ならぬ指揮官が、試合後のインタビューで「凡戦」の一言で総括してしまいました。サッカーフェスタと銘打った今期最後の九州ダービー。1万人以上が動員されたスタジアム。新しくお目見えしたビッグフラッグの披露。試合前の興奮、期待がいつもより高かっただけに、結果よりもこの「内容のなさ」にいっそうがっかりしました。選手たちのモチベーションは高かったはずなのに、それが空回りしたのか。ミスの多さ。ファールの多さ。カードの多さ。少しずつ積み上げようとしている積み木が、何度も何度も崩れてしまうようなイライラを感じてしまいました。

福岡 (先発フォーメーション)
 9黒部 
 18高橋 
7久藤8鈴木
31阿部20宮原
17中島13柳楽
5長野27丹羽
 23六反 

立ち上がりは熊本が押し込みました。左サイドを崩してチャンスを作り出すものの、シュートには至らず。今度は木島が右サイドに流れてドリブルで突っかける。守っては久しぶりの先発・高橋に福王が張り付き、松岡がそれをカバー。ほとんど自由を与えません。一瞬、黒部のロングシュートがゴールマウスをかすめて肝を冷やしますが・・・。熊本は奪ってから素早く前線に送るロングパス。これが福岡DFの弱点と知ってのことと、最初は安心して見ていたのですが。

市村のサイドでの攻防。不運とも言えるようなイエローや、中島と交錯したあたりで、熊本の選手にも少しずつ苛立ちが広がっていき、チームの集中力が崩れかけます。それでも依然として流れは熊本のほうにあったように見えました。しかしポゼッションは保持しているものの、崩しはロングボールに偏りがち。ワンタッチパスが影を潜め、相手を置き去りにするような縦の攻撃は皆無で、パスは平行線を辿るばかり。福岡は守備のバランスを維持できました。

結局、決勝点になった失点の場面は、六反のゴールキックから中盤で繋いだところ。フィフティ・フィフティのボールに松岡が飛び出しますが、久藤が先に頭で落としてがら空きになった左サイドのスペースに走りこんだ高橋に渡る。カバーに入った福王でしたが、次に走りこんだ久藤までは対応できず、フリーでゴールに撃ち込まれました。流れのなかとは言え、ポカンと空いたような“何でもない”時間帯での失点。それはまるで今期何度も見せられたセットプレーからの失点シーンのようでもありました。

その後の前半は全く福岡の勢い。中盤に下がる藤田のフリーなポジショニングも織り込み済みのように慌てることなく。山本と吉井の両ボランチも後手後手に回ってしまいます。奪っても、ボールの出しどころを探しているうちに相手に詰められ、相変わらずロングパス頼みの展開。あるいはサイドを運べるところで、中にこだわるシーンも。

ベンチからGKを外してまでも攻撃的に行きたいと思っていた北野監督。後半、宇留野に代えて西森を投入しますが、なかなか打開できません。ようやく流れを掴んだのは、山本に代えて原田をボランチに入れてから。本来、ボランチを本職としていた原田でしたが、熊本では左SBで使われ続けてきた。その持ち味は、従来の左SBのような上下の運動量を求めるものではなく、左奥からの正確で大きなサイドチェンジや、グラウンダーのスルーパス、あるいはタメだと以前のエントリーで書いたことがります。戦前も、松岡が疲れたら原田、と当然のように同僚と予想していただけに、この采配には俄然注目しました。面白くなりそうだ、と。

福岡の中盤陣にも疲れが見えていた時間帯。原田がタメる、捌く、柔らかく繰り出すパスは、福岡を徐々に押し下げました。決定的な場面は、木島のクロスから作り直して、バイタルの狭いところを原田と藤田がワンツー。短いパスで崩した藤田のフィニッシュは、しかし残念ながら六反の胸のなかに収まりました。

熊本、最後のカードは藤田を下げて中山。それでも福岡の守備バランスは崩れない。熊本は攻撃の反転が遅く、サイドへのロングパスに追いついてクロスを上げるものの、中に誰も入って来ていないシーンが目立ちました。落胆するホーム・スタジアム。終了間際、あるいはロスタイム4分ぎりぎりまで攻め続け、ラストプレーと思えたFKにはGK木下まで前線に上げ、ファンも全員が手拍子で後押ししたものの実らず。福岡のゴールマウスを最後まで割ることはできませんでした。

冒頭に概観したように、1万人のファンに見せるにはお寒い内容に終始した感があります。試合を通した熊本のシュート数はわずか3本。与えたFKはなんと27本にも及びます。相対する福岡に決して猛烈な強さを感じたわけではなく、むしろバランス重視で消極的ともいえる今日の相手だっただけに一層悔やまれます。前回対戦時のエントリーでは、福岡に対する「意識過剰」=雑念がなかったか。と書きました。どのチームよりも福岡に「勝ちたい!」そう思うのは当然であり、われわれもそう思います。しかし、控えGKなしという“背水の陣”を作ってまで、いつもと違う状態にする必要があったのかと思うと、結果論かも知れませんが首も傾げたくなります。

自分たちのサッカーをやらせてもらえなかったのならまだしも、自分たちのサッカーを自分たちが壊してしまったようなゲーム。“雑念”に囚われて集中を欠いたまま終わってしまったような。なにより今年は福岡に、「嫌な相手だ」という印象すら与えられなかったのではないか。初めて、あるいは久しぶりにロアッソの試合を見にきた大勢の熊本ファンに、一番いいときの“今年のサッカー”が見せられなかったことがとても残念です。試合後、そういう思いが沸々と湧いてきて・・・、これを“凡戦”と括ってしまうのはあまりにも他人事すぎないかと。しかし、今シーズンもあとわずか、早くこの気持ちを整理して、ミッドウィークの水戸戦に向かわなければなりません。

10月11日(日) 第89回天皇杯2回戦
熊本 2 - 2(PK 2 - 4)横浜FC (19:00/熊本/3,109人)
得点者:49' 吉井孝輔(熊本)、72' 八田康介(横浜FC)、115' 西森正明(熊本)、119' 難波宏明(横浜FC)


結果が全てとはいうものの、こうも相手にとってドラマチックなラストシーンを演じてもらうと(しかも同じ相手に2度も)、さすがに帰り道が辛いですね。延長戦にPK戦。トーナメントというレギュレーションの違いを堪能するような、90分間プラス30分もの死闘を見せられて、最後に勝利という喜びを選手達とわかち合えなかった…。勝負事の常とはわかっているものの、この悲劇的な敗戦を受け入れる辛さ。今年は本当にサッカーの神様から相当の“耐性”が試されているような気がします。

結果から言えば前半、後半を通じて五分五分の展開とも言えるのでしょうが、サッカーの“質”という意味では、明らかにわが熊本に分があったと思います。中盤での厳しい奪い合いからアタッキングサードへの展開力。ここ最近のバランスのよい守備から、両サイドバックがタイミングよく攻撃に参加する。木島が左に流れて、松岡が追い越す。右の市村もサイドをえぐるだけでなく、バイタルで中に入ってくる。練習中の怪我で、遂に連続出場記録を途絶えた石井の穴は、山本と吉井が遜色なく埋めていました。(試合前、これからのリーグ戦をどう闘っていくんだろうと、まずわれわれはそこに関心がいっていたのも事実でした…)ただ、何度も崩しているものの、ラストパスが合わなかったり、フィニッシュが優しすぎたり…。一方の横浜も、カウンターから鋭く突く場面が何回かありましたが、枠を捕らえられません。緊張を解く大きな深いため息をついたハーフタイムでした。

後半開始早々、猛烈に押し込んできた横浜。対する熊本はまったく慌てたり怯んだりする様子はない。そこには確実にJ2年目の経験値がありました。そして49分、中盤でのせめぎ合いから、木島がボールを預かると、十分に溜めている間に左から追い越して行った西にスルーパス。西がエリア内深く持ち込むとDFに詰め寄られながらもゴールに迫る。木島も入ってくる。吉井も。満を持した西のパスは、木島、吉井の足を経由してゴールに突き刺さりました。均衡を破る熊本の先制点。

しかし横浜も黙ってはいませんでした。次々に選手交代の手を打ってくる。それに動じることなく、熊本はこの時間帯をしっかりと耐えている。ただ一瞬、緊張の糸を切らしたのは、ベンチから交代要員の中山が準備されているときでした。木島がプレスバックでファールすると、ハーフウェイライン付近から横浜のFK。大きく弧を描いたロングキックは、最終ラインを下げさせる。GKも飛び出さざるを得ない絶妙なボールに、先に横浜の八田の頭が触れると、ゴールに吸い込まれました。「やはり横浜。簡単には勝たせてくれない」そのときの落胆は、まだまだその程度のものでした。

木島に代わって入った中山が前線で走り回る。まるでこれまでの故障の“借り”を返そうとばかりに。再三、チャンスにも決定力を欠く熊本。しかしそれでも美しいワンタッチパスで横浜のDFを置き去りにする熊本の攻撃に、期せずして場内からも自然に手拍子がおき始めます。互いに高い位置で奪い合って、カウンター合戦の様相。まるで両者互角なボクサー同士の、最終ラウンドの激しい撃ち合いのようでした。遂にロスタイムの3分も使い切って試合は延長戦に突入。10月のKKウィングは、風も強く、しんしんと冷え込んで、じっとしていると震える“寒さ”でした。

このコンディション、まだまだ足の止まらない熊本でしたが、Vゴール方式ではない延長前後半30分。時間の活用法も重要な戦術。すでに交代のカードを使いきってしまっていた横浜はさすがに疲れが見えていました。これに対して、あと二枚を“残した”熊本は、ここぞとばかりに西森を投入。そして最後の最後に山内を入れてかき回す。ベンチワークとしては完全に思い描いたように試合を運びます。延長後半も残り5分になった絶妙の時間帯で、左45度からいい位置でのファールを得た熊本。このFKに立った西森のキックはグラウンダー。横浜ディフェンスの意表を突くと、押し込むようになだれ込んだ熊本の選手たちにも触れることなくゴール右角に吸い込まれました。総立ちのスタンド。勝ちを確信した瞬間。あとは時間を使うボールキープのプレー。

しかし、その確信が慢心だと知らされたのは、ロスタイム1分に合わせて自分のGショックをストップウォッチ・モードに切り替えたときでした。吉井のトラップに副審からハンドのアピール。猛烈に抗議する北野監督を尻目に、すかさず横浜がFK。全く後半の得点と同じような軌道を描いたFKは、今度は難波の頭を捕らえ、稲田の伸ばした手をあざ笑うかのように越えゴールとなりました。

誰も帰ろうとしない。いや帰るわけにはいかない試合になりました。PK戦への突入。熊本のゴール裏にどんどん人が集まってきます。念じるように、祈るように見守るしかないPK戦。しかし、トーナメント制において勝敗の決着を決める意味しかないこの残酷な“ゲーム”は、サッカーにおいてほんの一部の意味しかなく、往々にして“追いついた”側に勝利が転がりこむものでした。熊本はまたしてもホームで横浜の選手が歓喜する姿を見ることになりました。

「天皇杯が面白くなくなった。」そんな気持ちについては、過去のエントリーでも書いたことがあります。ホームチームを猛烈に応援し始めて、日本代表から興味が薄れていく気持ちにも似て。それはチームがJリーグ入りを果たしてから、確かになってきたように思います。

カテゴリーの違うチームが一発トーナメントを争う下克上の大会。それは下のカテゴリーのチームにとっては大きなモチベーションでしょう。われわれが当時そうであったように。しかし、J2というこの世界一過酷なリーグを戦っている今、この大会に向かう意味が以前より薄れてきてしまったのは確かです。例えば湘南、C大阪が下のカテゴリーのチームや学生相手に敗れ、甲府が苦戦したように、決して昇格を争うリーグを優先したと邪推はしませんが、明らかに「モチベーションの持って行き所」には苦労をしたはずです。ベストメンバー規定があるとはいえ、リーグ戦とは多少異なる選手を使ってみるのも、今後の戦いを見据えての休養ではなく選手補強と前向きに捕らえられますが、それでもそう簡単にはいかない。それが、それほどチーム力を左右する「モチベーション」だと思うのです。

過去の大会では、消滅が決まっていた横浜フリューゲルスが、最後の勇姿とばかりに猛烈な強さで優勝を飾ったことがある。昨年は、ほぼ昇格を手中にしていた広島が、J1リーグ戦の腕試しとばかりに準々決勝まで駒を進めた。そんなモチベーションがありました。今はACLへの挑戦権が高いモチベーションになっているチームもある。

今年のわれわれにあったものはといえば。格下からの果敢な挑戦を受ける難しい戦いではなかったものの、対戦相手は2週間前に戦ったばかりの横浜FCで、あまり新鮮な感じはしないのが正直なところ。今シーズンの対戦成績は熊本の1勝2分で終了。しかし、熊本としては直前の結果が、なんとも悔やまれる同点劇だっただけに、カップ戦という違いはあるにしても、その思いを晴らし、叩いておきたい。それが「天皇杯ですがリーグ戦の延長という気持ちで戦いました。」(北野監督)という言葉に表れているのでしょう。そして次にJ1新潟という、久しぶりに格上チームと対戦する挑戦権を得たい。今の自分達のサッカーがJ1チームにどれだけ通用するのか試したい。そういうところではなかったのかと。「今日はミーティングから試合に入るところも、今シーズン一番良かったというか、僕が熊本に来てからも一番というくらいに盛り上がって、チームがひとつになったというのを感じました。」とまで言わしめるほどモチベーションが高かった。選手達がリーグ戦とは違った意味で“上”を目指して一丸となっていたのだと。


自責の念からか疲れからなのか、試合後、歩くこともままならない福王。あるいはブログで正直な感想を語っている藤田からも、この敗戦という結果を受け入れるのに、選手達の誰もがたじろいでいるのが伝わってきます。今日も、試合の“閉じ方”のまずさ、セットプレーの守備、と相変わらずの課題が克服できていない事実を突きつけられました。しかし同時に、選手達の新たな高いモチベーションを感じとることもできました。2点目のゴールを全員がベンチに駆け寄って喜ぶ姿は、なんと言うか、久しく忘れていたものを思い出したような、そんな感じでもありました。

実を言えばわれわれは、「天皇杯」「横浜FC」ということで、あの2001年、青の時代の惨敗に対するリベンジを密かに想い、そのドラマを願っていたのですが、その思いはまた封印されることになりました。こうして歴史が積み重なっていく。そう思うと、敗戦の苦痛を次の喜びまでの糧として受け入れるこの暮らしも、まんざら捨てたもんじゃないなと。残りわずかになったリーグ戦に心を切り替えて。リーグ戦の“閉じ方”だけは失敗してほしくないから。また次節、精一杯声援を送ります。

2009.10.12 天皇杯09年
10月11日(日) 第89回天皇杯2回戦
熊本 2 - 2(PK 2 - 4)横浜FC (19:00/熊本/3,109人)
得点者:49' 吉井孝輔(熊本)、72' 八田康介(横浜FC)、115' 西森正明(熊本)、119' 難波宏明(横浜FC)

9月20日(日)第89回天皇杯1回戦
ホンダロック 4-0 熊本学園大 (宮崎市の生目の杜運動公園陸上競技場)
得点者 :原田3(ロック)、山下(ロック)
10月4日(日) 2009 J2リーグ戦 第43節
熊本 0 - 0 札幌 (13:03/熊本/4,140人)


いい試合でしたね。得点こそ奪えなかったものの。誰もが認めるように、組織的な守備がうまくはまり、攻撃への切り替えも今期の課題を克服する場面を垣間見せた試合内容でした。そしてなにより札幌相手に3試合とも零封、負けなしという結果を残しました。

直近を3連勝で躍進中の札幌。その間失点ゼロと安定感も増し、昇格戦線への生き残りを賭けて、選手のモチベーションも高いものがあるはず。後押しをすべく、遠く北の大地から駆けつけたおよそ100人という赤黒のサポーター。野太い声がKKウィングを威圧しています。対する熊本は前節と同じ布陣。松岡の左SBも板についてきた感じ。

札幌 (先発フォーメーション)
 19キリノ 
7藤田27古田
20上里11宮澤
 18芳賀 
6西嶋22西
29石川3柴田
 21高原 

13時キックオフの試合。10月というのに気温は29.1度。湿度26%。暑さや日差しには慣れているつもりで、いつものようにゴール裏の高い位置で観戦していましたが、その刺す様な紫外線のあまりの強さに、前半終了と同時に、屋根の下に移動してしまいました。さて札幌は何とキリノをワントップに置いた4-1-4-1の布陣。開始早々、そのキリノにアーリークロスが渡って切り返されたシュートはサイドネット。おもわず胸を撫で下ろしましたが、さすがにその“速さ”と“うまさ”に唸ります。

ところが札幌が怖かったのも前半はこのプレーだけ。徹底したマークでキリノの動きを封じ込めます。ボールに“触らせない”。おそらくはそんな指示だったのでしょうか、ラインの高さもあって危ない場面はほとんどありません。今日のポイントのひとつでしたね。熊本はDF4人に中盤が加勢して、バランスよくゾーンを“押さえる”と、奪っては札幌の前線5人を置き去りにするグラウンダーのパスがよく通る。あるいは市村の積極的な攻撃参加。市村サイドが詰まったら、今度は左の松岡が判断よく上がる。

36分にはCKから中央の藤田が合わせますが、惜しくも枠外。41分には木島がエリア内の藤田に預けて、再びもらったところをシュート。これはGK高原にセーブされます。試合後、「ちょっとボールを動かしすぎた」と北野監督を反省させるものの、札幌のDFに狙いを絞りこませない縦横無尽なパスまわしは大いにファンを沸かせました。前半30分過ぎからの形勢は、札幌に伍すると言うより、完全にペースを握っていました。ただ、今日のこの気象条件。「前半飛ばしすぎたか…」という点だけが気がかりでした。

後半15分過ぎても好転しない展開に、札幌の石崎監督は宮澤に代えてハファエルを投入することで打開を図ってきます。ハファエルからキリノへのシンプルかつ効果的なホットラインで盛り返すと、やや足が止まり、中盤が間延びした熊本、ボールを奪えなくなり、ラインがズルズルと下がり始めました。ペースは札幌に。それでも数的に厚いディフェンスラインを敷いて必死に跳ね返し、札幌に全くと言っていいほど決定機を与えませんでした。怖いのはセットプレーだけ。誰もがそう思っていたことでしょう。

嫌な流れを断ち切るべく熊本は、縦への早い攻撃を試みます。自陣からのFKは、前がかりな札幌のDF裏を突くロングパス。飛び出す木島。かなり疲れの見え始めた木島でしたが、ここは奮起の勝負どころ。札幌DFに身体を入れられてクリアされかけますが、そこに入ってきたのは藤田。一旦、足元に納めたように見えましたが、慌てたCB柴田のスライディングタックルに倒されてしまいます。「よおしっ! PK!」溜まっていた緊張感を吐き出すかのように沸きあがるスタジアム。

試合後のインタビュー等によると、PKのキッカーは木島とあらかじめ決まっていたようでしたし、蹴ったコースも「スカウティング(の情報)通り」(5日付:熊日)だったそうです。しかし、前節もPKを止めているという高原にも「集めてくれたおかげで、やりやすかった。」というスカウティング・データがありました。右にも左にも微動だにせず木島のシュートをセーブします。裏の裏を読む駆け引きは、高原に軍配が上がりました。

これで再び息を吹き返した札幌。熊本が跳ね返したセカンドボールはことごとく相手に拾われ、波状攻撃を受け続けます。しかし熊本は原田、山内、吉井と次々にカードを切っていくことで、奪われた主導権を手繰り寄せようと必死のベンチワーク。ここが今日の試合で一番重要な時間帯だったと思います。これまで何度も、こんな場面で“切れて”しまっていた集中力。今日は必死に繋ぎとめた。ピッチにいる全員で。徐々に形勢が変わっていくのがはっきりとわかる。バックスタンド中央の一番高い位置からはよく俯瞰できました。スルーパスに判断よく飛び出す稲田。ハファエルに対応する矢野。奪ったボールは前線の山内へ。途中出場の入り方が身についてきたのか、山内。裏へ、裏へと多彩な飛び出しを繰り返します(相手は嫌だろうなあ・・・)。藤田も最後まで走り続ける。まったく落ちない運動量。選手全員が、横浜戦で払った高い代償を糧にして戦っている。最後の最後まで得点を諦めない。諦めたら勝ち点1すら奪われてしまう。

試合終了のホイッスルを聞いて、ピッチ上の熊本の選手みんなには笑顔がありました。それは勝ち点1ではあったものの、得られたものの大きさを物語っているようで…。気落ちした感じの札幌イレブンには、ゴール裏のサポーターの檄が飛ぶ。「まだまだ、これからだ!」と。まさしくリーグ終盤の様相でした。前節、仙台戦。0-1の敗戦のなかで、今期の到達点を探るような内容だったと書きましたが、今日は札幌を相手にその到達点をひとつ確かめられたような試合だったのではないかと。

浮気することなくもう20年もこのモデルを履き続けているというアディダスのコパ・ムンディアルの紐をゆっくりとほどきながら、藤田の顔にも安堵に似た笑みがこぼれ、同僚と握手しました。そして試合後、自身のブログにこう記した。「やはりサッカーは楽しい」と。この日は自身38歳の誕生日。試合前に用意された花束のプレゼンテーターは、愛娘と愛息の二人。第一クール横浜戦、三ツ沢のスタンドで彼が手を振る先にいた可愛らしい二人に間違いありませんでした。藤田の熊本移籍を最後まで躊躇させたのは、多感な時期のこの子どもたちを置いて単身赴任の生活を送ることだった。そう聞いています。関東遠征時、あるいは短い夏休みなどしか会えるチャンスはなかったはず。誕生日、彼にとって最高のプレゼントだったに違いありません。

終盤の苦しい時間帯、誰よりも最後まで走っていた藤田。緩急のパスを使い分け、あるときは人を使い、あるときは状況判断良く自らが飛び込む。日本のサッカー界に燦然と輝く実績と実力を持つこの男が、熊本の一員であることが、あらためて(いつもそうなんですが)不思議な感じがして・・・。今日の試合、札幌を相手にして危うさは全くなかった。十分に勝機があった。一緒にここまで来れた。

「何歳まで続けるかということより、どう続けるか」なのだと言う藤田。ブログでは「まだまだ元気にプレーし続けたいと今日あらためて強く思いました(笑)」と書いてくれました。熊本では絶対コパ・ムンディアルを脱がせない。われわれファンもそう心に誓った一日でした。