2009.12.31 年末ご挨拶
30日の熊日朝刊。熊日広告社取締役の蔵原信博氏が、1月1日付でアスリートクラブ熊本事業本部長として出向するとの報が載っていました。わずか5行の異動記事でしたが、ACの営業面、経営面にきわめて大きな影響を及ぼす可能性を孕む人事だと感じました。地場の広告代理店最大手・熊日広告社の営業トップのひとり。まさに年の瀬の“小さな”ビッグニュース。活躍を期待したいと思います。

熊本のJリーグ参入2年目の年も暮れていきます。先だっても、「われわれにとっても怒涛の51試合。ミッドウィークの開催増など厳しいスケジュールに息も絶え絶えでした」と書きました。試合が終われば、結果に一喜一憂するのもそこそこに、相も変わらず“この試合をどう観る”か、などと侃々諤々の議論を戦わせ、酔いに任せて書きなぐったようなエントリー“草稿”メールが、何度も、何度も行ったり来たりするうちに、日付が変わっていたりするような日々でした。

私事ですが、この際、年末ですので…。われわれも、時間に追いまくられる典型的な中高年サラリーマン。また、寄る年波からくる衰えは蔽いようもなく、昨シーズンからすると微妙に更新のタイミングが遅れてきたことも事実ですね。持病の悪化や、手術入院などまさに“息も絶え絶え”の状態もありました。また、これまで、選手となるべく近い感覚をと思って、夏場でも日なたで観戦していたんですが、これが思わぬ熱中症になってしまったり…。暑さには強いと自負していましたが、まさに年寄りの冷や水でした。

それでも何とか今シーズンも途切れずにエントリーすることができました。有難うございます。何度も書いていますが、このブログへの多くの拍手とコメントに励まされたこと。読んでいただいている人がいるという事実。そして何より、熊本の名を背負い戦っているわがホームチームの選手達への思い、と言う他はありません。(エントリーさせてもらった、という感覚ですね)。

高橋の移籍にショックを受け、藤田の加入に驚かされた年頭。ゴール前を崩すパスワークに魅了されたかと思えば、止まらない連敗に呆然と立ち尽くしたスタンド。ドラマチックな“プリンス”のゴールに涙が止まらなかった最終のホーム戦。しかし結局、こうやってホームチームとともにこの1年を過ごしてきたのは、ただただ“サッカーが好きだ”という単純でそしてかけがえのない喜びに支えられてのことでした。(日本中の、そしてまた世界中の多くの同胞がそうであるように。)

そしてこの1年間を戦ってくれたホームチームの選手達、スタッフの皆さん、クラブ職員の皆さん、ボランティアの皆さん、運営を手伝う高校生の皆さん、サポーターの皆さん、スポンサーの皆さん、マスコミの皆さん、そしてロアッソ熊本に関わる多くの皆さん、熊本に来てくれたアウェーチームのサポの皆さんにも。感謝の気持ちを込めて「この1年もありがとう。また来年も」と申し上げたいと思います。

来るべき新年はワールドカップイヤー。4年に一度のサッカーの祭典の年でもあります。わが熊本はといえば、北九州を加え19チームになったリーグ戦。いよいよ高木新監督のもとで戦う年です。チームづくりも、補強交渉はまだ道半ばの様相。どんなチームになるのか、どんなメンバーで臨むのか、どんなサッカーを展開するのか。どんな成長を見せてくれるのか。シーズン最終戦からまだひと月も経っていないのに…。われわれも、来シーズンへと逸る心、ワクワクする気持ちを楽しみつつ、しばし、こころ静かに、今宵の除夜の鐘を聞きたいと思います。どうか良いお年を。

12月30日高校サッカー選手権1回戦(国立競技場)
帝京 1-3 ルーテル学院
得点者:前半32'小牧(ルーテル)、後半16'稲垣(帝京)、28'山本(ルーテル)、39'山本(ルーテル)

2年ぶり2度目の出場となったルーテル学院。開会式後の第1試合、国立競技場で東京代表の帝京との戦いになりましたが、一昨年のような堅さは微塵も見えず、前半主導権を握り先制点を奪いました。後半投入された帝京の稲垣に同点弾を許しますが、その後は風下、逆光の悪条件を耐え、エース山本の見事なループシュート2本を追加し、古豪・帝京を突き放しました。

磐田を契約満了になり、日本中からその去就が注目されていたゴン中山。早々とオファーを出していたわが熊本は、最後の最後まで選択肢に残っていたようでしたが、最終的に彼が選んだのは札幌でした。残念といえば残念。しかし、彼も本気で悩んだうえで、決め手となったのは、42歳の中山が必要とした医療体制など、健康管理面の環境の差だったようで。熊本の「いろんなものが変わると思っていた」(24日付・熊日)。池谷GMの落胆も大きいようです。

さて、先だっては高木新監督の就任記者会見が行われ、また柏の元日本代表GKだった南雄太の加入も電撃的に発表されました。このストーブリーグ、開始早々からのゴンへのオファーも含め“ビッグネーム”登場の連続に、(まだまだ途中のようですが…)移籍市場で大いに話題を提供している観もあるわが熊本です。おりしも、お隣の大分はクラブの存続自体が危ぶまれるほど大変な状況に陥っています。ファンのなかには、こういった相次ぐ“ビッグネーム”のニュースに対して、歓迎の気持ちと同時に、「あと3年でJ1昇格を目指す」ために「財政的には無理をしているのではないか?」という懸念が広がっているのも感じられます。

身の丈経営を標榜するわがクラブ。確かに公表されている財務状況をみると、J2のなかでも下から数えていいくらいのレベル。08年のリーグ開示資料を見ればすぐにわかることですが、“普通”の民間企業であれば、金融機関が取引を躊躇するような財務状況であることは間違いありません。単年度でギリギリですが黒字を保っていることは、その身の丈経営が強く感じられるところですが、数字を見る限り、大分の今の状況が、決して対岸の火事でないことはファンとしても常に意識しておくべきでしょう。

そんな厳しい台所事情ですが、どうしても気になるのは「入場料収入」。これがJ参入以降、なかなか目標どおりには伸びていないというのが実情ではないでしょうか。いつぞやのエントリーで「シーズンチケットを買いましょう」と呼びかけたとおり、しっかりとした基盤のチームは、この収入だけで選手補強費が賄えるともいえる。それが“理想のクラブ”の姿でもあります。

今シーズンを見ても、入場者数は目標の平均6000人に到達したそうですが、それもいくつかの「動員試合」があっての結果。平日のナイトゲームのスタンドを見れば、常に平均3000人位のコアなファンが足を運んでいるという実感。ホームゲームはそれに支えられているというのが現状ではないかと思っています。“青の時代”を経て、ロッソとしてJを目指し、地域リーグとしては破格の予算、破格の観客動員を誇った。JFL時代にはさらにその枠を拡大し、いよいよ夢かなったJ参入でもあったのですが。実際は、そのファン層が思った以上には伸びてきていないのではないかと思うのです。(もちろん広がりとは別に、コアなファンはどんどん深く“ハマッテ”いるという現象がありますが…。)

この未曾有の不況下。どの業界・業態を見廻しても右肩上がりの成長戦略は描けなくなって、とりあえず“身を小さくする”緊縮財政を余儀なくされています。それはスポンサー収入に多くを依存するJリーグ・クラブも同じであり、どのチームもマイナス予算で来季に臨んでいるように見られます。このストーブリーグで想像以上に大量に契約満了者が出ていることも、それを裏付けているようで。

翻ってわがクラブ。ありがたいことにスポンサーは来季もある程度、固まっていると聞きます(不穏な話も一時ありましたが…)。そのなかでどんなチーム作りを行っていくか。景気低迷のなかで、逆に拡大していくという難しい課題に挑戦しなければならない。それにはまず、3000人のコアから次の“層”にブレイクスルーする必要がある。もっと裾野を広げる必要がある。ロアッソのことは知っている。新聞やテレビで試合結果は知っているが、スタジアムに足を運んだことはない。そんな人たちがまわりにもたくさんいる。熊本の都市圏、地域の潜在的なポテンシャルから言えば、まだまだその層を獲得できていない。クラブの外の立場から見ているわれわれでも、そういう現実を感じています。

J参入時に掲げた「5年でJ1」という目標。時間的には「残り3年で」ということになります。それが現実的な目標なのかということは、色々な意見があり、われわれもいつかそのことについては自分達の思いを書きたいと思っています。ただ、今言えることは、一般の企業もそうですか、組織には確固とした中長期的のビジョンがなければいけないということ。「10位以内を目指す」という短期的(年度)目標もしかり。組織が“目標”を持たなかったらおしまいだということ。迷走したあげく失速するということ。そうでなければ人もお金もそこに集まらないし、集まった人のモチベーションも上がらない、ということだと思うのです。もちろんそれは、反面教師とすべき大分の路線とは全く異なるものです。あくまでも“実態”の身の丈を伸ばしながら、目標に向かっていこうとすることに違いありません。おそらくクラブはそれをよくわかっていると思います。池谷GMが常々言う「KKウィングが真っ赤なサポーターでいっぱいになったときが、J1に昇格できるとき」という言葉に通じるのだと思います。

同時にプロサッカーはスポーツビジネスです、そしてそれは、ファンに夢を売る“興業”という側面をもっています。緊縮財政を敷いて、身の丈にあったクラブ運営をしていくということは当然ではありますが、それだけでは“ブレイクスルー”という課題は超えられないのも事実です。やはりそこには、ファンがワクワクするような、“華”のある役者、才能が必要だということも確かです。

以前、池谷GMと話す機会があったきのこと。サッカー界は意外に狭く、情報は密に流通するとも言っていました。ガンバの西野監督との繋がりは知られていますが、名古屋の久米GMとも柏時代の知己の間柄。そのほかにもネットワークが各チームに散らばっているようです。先手必勝の勝負よろしく、冒頭に書いたようにこの冬はいつにも増してスタートダッシュが早いようです。それもこれも、各チームが大量に契約満了者を出しているこの状況が、逆にチャンスなのだと感じているのかも知れません。そういった市場環境のなかで、ビッグネームといえどもわが熊本が示せる(示している)金額は、想像以上に低いのも事実のようです。

ただ、だからといって中山へのオファーが、単なる“客寄せパンダ”を意味していたと言っているのでは決してありません。JFL2年目、J昇格を掛けた最後の年といってもいいあのシーズンに賭けざるを得なかったベテラン達への“依存”。それを今、次の目標のために苦渋の判断とともに、大きく若返りを図るという舵を切った。第2の黎明期とも言えるチームの構造改革を行っている、そのとき。ゴンの存在は、高木新監督の言葉を借りれば「いろんな経験、しかもすごく重要な経験をしてきている選手」「そういう選手が一緒にピッチにいてくれると、いろいろな意味で選手を助けてくれるし、クラブを助けてくれる存在になる」。まさしく「トータル的に考えると、やはり必要な選手」だったのだと思うのです。それは今季、まさかの藤田俊哉の獲得とその“有形無形”の活躍で実感したとおりでもあります。

池谷GMの落胆ぶりからも伺えるように、中山の獲得は、若いクラブにとって必要な経験値、あるいは取り組み姿勢など、会社で言えば“社風”といったものを形作っていくために、とても大事な要素。クラブの成長を急ぎたい熊本にとってはどうしても欲しかったものだったのでしょう。それは、今シーズン、チームが直面し、GM自身が痛感しただろう“ピッチの上だけではない”部分も埋める必要不可欠の戦力だったのではと想像します。

件の池谷GMとの話しのなかで、将来的なチームの選手構成について、仮に選手数が30人だとしたら、ユースからの育成枠が10、熊本県出身者が10、熊本“愛”が10というビジョンを語っていました。熊本“愛”という表現が何を意味するかよくわからなくて、かといって具体的に尋ねる時間はそのときなかったのですが、今思えば、昨年の藤田俊哉の獲得や、今回、柏の南に退団発表10分後にオファーしたこと、中山に真っ先にオファーを出したこと、それに通じることなのかも知れないなと。「熊本には何もない」「お金は十分に出せない」「でも熊本は君を必要としている」「熊本にサッカー文化を根付かせることに君の力を発揮してほしい」。想像するに、そういうアプローチ、口説き文句しかないのではないかと。熊本はいい条件など何も示せない。あるのは誠意だけ。熱意だけ。GMが熊本に招かれる際に口説かれたことに似ているような。そして、それに応えて、今度はGM自身が選手を口説く「熊本愛」枠とでも言うものでしょうか。

オファーを出しただけで、これだけの反響を巻き起こした中山。今日の熊日朝刊を見て感じるのは、彼が指摘したクラブの総合的な環境面。医療体制どころか練習環境もままならない状況は何ら変わっていません。獲得への思いは叶いませんでしたが、あらためて現状を浮き彫りにしてくれたということですね。おそらくは、クラブ関係者はもとより、ファンや一般市民にもある程度の影響力を持って急ぐべき課題を明らかにしてくれたのではないでしょうか。

来季も変わらぬ支援を決めていただいた多くのスポンサーの皆さま。常に理解と協力を示してくれる行政各位とマスコミ各社の方々。まさしく県民運動に支えられたわがクラブのこの有りようは、やはり他のクラブとの大きな違いを実感せざるを得ません。あとはもっともっと県民自体に広がりを進めること。それが不況下のなかでの唯一の拡大戦略なのかと。それはクラブ・フロントだけでなく、今、われわれファンにも課せられていることなのかも知れないと思いました。

おそらくJリーグ史上でも最初で最後になるだろう怒涛の51試合という09年シーズンが終了しました。今年1月、その加入が発表されたときのエントリーで、「年齢からいえば、51試合はもちろん、おそらく90分フル出場も厳しいというのが客観情勢なのかも知れません」などと書いてしまった藤田俊哉も、1試合を除いて全ての試合に出場。常に存在感を示し、熊本のサッカーを変える働きをしてくれました。まったく自らの不明の程には恥じ入るばかりです。

さて表題のとおり、ここで今季のベストゲームを考えてみたいのですが、みなさんにとってはどの試合だったでしょうか。今シーズンも毎試合の観戦記をエントリーさせていただきました。しかし、われわれにとっても“怒涛の51試合”。ミッドウィークの開催増など厳しいスケジュールに息も絶え絶えでしたが、それに対して、われわれもたじろぐほどのたくさんの拍手をいただきました。本当にありがとうございます。

しかし、いつも思うのですが、この拍手。われわれの駄文の出来、不出来とは関係なく、また、最近では勝敗さえもあまり差が無くなってきたような。まさしく“試合内容”に比例する、“選手たちへの拍手”なんだな。というのが実感です。そして、せっかくいただいたものです、今回は(今日現在での)各エントリーへの拍手数でもって、今シーズンのベストゲームを選んでみようと思い立ちました。シーズンを通して積み上げられた“数字”。こうやって結果をお返しして、オフシーズンの楽しみにすることも許していただけるのではと思います。以下ベスト3の試合です。

1位(129拍手)
7月11日(土) 2009 J2リーグ戦 第27節
札幌 0 - 1 熊本 (14:03/札幌厚別/6,376人)
得点者:70' 吉井孝輔(熊本)
言うまでもなく、左SBに入っていた原田拓が、前半39分にして、この日2枚目のイエローで退場になった試合です。その後の50分間、一人少なくなった熊本が一方的に攻め込まれながらも、古巣との対決に奮い立つ河端と、福王の必死の守りで跳ね返し続け、逆に一瞬の好機を見逃さず吉井が虎の子の1点を奪った試合。「(ひとり少なくなって)カウンターに専念すると言いながら、得点を決めた攻撃は、押し上げ、追い越し、5本のパスをタメながら繋げた、見事なパスサッカーでした」(エントリーから)。あのハラハラ、ドキドキ感。そして終わったときの感動は、確かに今でも思い出しますね。

2位(113拍手)
4月29日(水) 2009 J2リーグ戦 第11節
東京V 2 - 4 熊本 (16:03/味スタ/4,540人)
得点者:29' 大黒将志(東京V)、31' 柴崎晃誠(東京V)、38' 藤田俊哉(熊本)、50' 木島良輔(熊本)、53' 中山悟志(熊本)、65' 福王忠世(熊本)
名門ヴェルディとの初顔合わせで、大逆転を演じた試合ですね。開始から果敢に攻め込んだ熊本でしたが、大黒のすごみのあるゴール、柴崎の追加点で、わずか3分の間に2点のビハインド。しかし、下を向きそうになる選手たちを鼓舞したのは、前半終了間際の藤田俊哉のゴール。これが反撃の狼煙となって、後半3点を追加する逆転劇。連戦に出場する藤田を見て、冒頭のような“先入観”を反省していたところでした。「彼は今、プレーヤーとしてチームの勝利に貢献することはもちろん、あらゆる場面を通じて自らの経験を伝え、また自らの取り組む姿勢を範として示し、若いプレーヤーの成長を促し、チームの成長に力を尽くしている。何よりチームに自信をもたらした。J2のどのチームと対戦しても、少なくともわれわれファンのレベルでは全く気後れすることがなくなったなあというのが率直な実感ではないでしょうか。」エントリーでは、そう記しています。“名門”をねじ伏せた試合。指揮していたのは来季、わが熊本の監督になる高木琢也氏でした。

3位(85拍手)
9月12日(土) 2009 J2リーグ戦 第39節
熊本 2 - 1 鳥栖 (16:04/熊本/8,671人)
得点者:29' 西弘則(熊本)、62' 高橋義希(鳥栖)、84' 山内祐一(熊本)
3位以降は僅差でしかないのですが、この試合が入りました。第3クールでの鳥栖との九州ダービー。夏場の4連敗にひとつ白星のあと、再びの5連敗。岐阜にわがホームで2-5と、いいところなく敗れ去ったあのときはどん底の状態。バラバラ感が伝わってくるチームを目の当たりにして、KKのスタンドでしばし呆然と立ち尽くしたのを思い出します。そしてその後、アウェー草津戦で0-6と大爆勝し、悪夢を断ち切ったあとがこの試合。実に「大事な」試合でした。(この翌週の試合で徳島に6-0と大敗を喫するものの)よくよく考察すると、守備と攻撃のバランスがようやく保たれ始めたのは、この鳥栖との“痺れる”辛勝戦が起点なのかも知れません。西の得点で先制するものの、後半同点に追いつかれる。しかし最後に山内のゴールで突き放すというドラマチックな展開。山内へのアシスト。木島のDF又抜きパスも見事でしたね。「藤田ひとりが目立つようなサッカーではなくなってきているような。藤田が黒子に徹して、ようやく今季の熊本のチーム全体としての力が成熟してきているような。」と書いているように、第3クールにしてやっとチームとしての成熟度が感じられた。そしてなにより実に2ヶ月半ぶりのホーム勝利。「その間、負けても負けても、皆が通い続けた」その長かったホームでの連敗の苦しい思いが、この勝利により一層の喜びを与えたことは間違いないでしょう。

いや、こうやって書いていると、その時の感動が鮮明に蘇ってきますね。どれもが確かにいい試合でした。

ところで敗戦にも関わらず、拍手数の多かった試合もあります。いわば敗戦のなかでのベストゲームともいえるのでしょうか。それは第1節1-2の草津戦。そして第14節0-1の甲府戦。(いずれも69拍手)。前者は、J2年目を迎えたホーム開幕戦であり。後者は熊本の一員となった宇留野が、古巣・甲府との戦いに臨んだ試合でした。

51試合。大勝もあれば大敗もあり、辛勝もあれば惜敗もある。逆転勝利もあればその逆も…。どれもこれも今思い起こせば、“心に残る”試合だったと言えるかも知れません。心に残る09年シーズンでした。

さて、いただいた拍手数とは別に、われわれ自身で「ベストゲーム」を選ぶとすれば…。これもまた敗戦には違いないのですが、最終節の甲府戦を挙げたいと思います。

12月5日(土) 2009 J2リーグ戦 第51節
甲府 2 - 1 熊本 (12:33/小瀬/13,104人)
得点者:2' 金信泳(甲府)、23' 金信泳(甲府)、28' 小森田友明(熊本)
“インフルエンザ禍”の満身創痍のチーム状態ではありましたが、「がっぷり四つで、最後まで甲府を脅かし」「昨年の最終戦、KKでの広島との戦い。スコアは偶然にも同じ1-2ですが、昨年感じたような、まだまだ埋めようがない落差といった感じではなく、また、それは、先日、水前寺で湘南に勝利したときとも違うさらに“僅差”の感覚を持った」。昇格のかかった試合、強豪相手に“胸を合わせた”戦いぶり、確かな“互角感”。まさしく「今季の到達点を探る」試合にして、今季のその本領を十分に発揮した試合。来季に繋がる試合だったといえるのではないかと思っています。

いかがでしょうか。みなさん自身のベストゲームは51節のなかでどの試合でしたか?
しかし、こうして振り返ってみて改めて感じるのですが、みんなが思う“いい試合”って、大勝とか完勝といった結果だけではなく、不恰好でも、たとえ負け試合でも、選手たちの“心”や“思い”や、そう、“闘う気持ち”が込められた試合なのではなかろうかと。なんだかそれってうちらしいし。みんなこのチームが大好きなんだなと。とても嬉しくなってしまいました。

今日の熊日朝刊でロアッソ熊本の3代目の監督に、高木琢也氏が就任することが報道されました。いや、“ビッグネーム”ですね。素直に驚いたというのが第一印象です。

われわれ世代からすれば、オフトが率いた時代の日本代表でセンターFWを張り、「アジアの大砲」と称されたプレーヤー。ただ、選手時代の彼を思い起こすと、「大事なところで決めきれない」「ポストプレーで逆に味方の壁になってる」みたいな、やや歯がゆい印象が残っているのも、実は正直なところです。

ところがその後、指導者になった彼については、ちょっとイメージが違ってきます。S級資格をとったばかりの06年に横浜FCのコーチに就任しますが、シーズン第1戦を終えたとたんに監督の足達氏が電撃的に解任。いきなり監督という大役が回ってくるのですが、なんとそこから破竹の15戦無敗。とうとう横浜FCをリーグ優勝に導き、初のJ1昇格を実現させてしまいました。あの年、熊本はJFLに昇格したばかりで。熊本でキャンプを張っていた同チームとのプレシーズンマッチを大津球技場で行っています。(そのときは1-0で白星を上げていますが…)。そんなシーズン前からの不安定さが足達監督の解任の伏線だったのかも、などという想像もありましたが、それでも「高木ってなかなかやるじゃないか」と、まだどこか遠い世界の話のように思っていたような気がします。

ただ、これもご存知のように翌年、横浜FCは1年でJ2に降格。高木氏もシーズン途中で解任されてしまいました。そして今年は、東京Vの新監督としてわが熊本と相見えることに。この“名門チーム”と公式戦で初めて対戦、とんでもない展開で大逆転勝ちをおさめた第1クールの感動は忘れられませんが、第2クールでは完敗を喫しましたね。10月には成績不振を理由にシーズン途中で東京Vを解雇されていますが、あの頃ヴェルディはクラブの身売り話、存続の危機の真っ最中。いろいろなゴタゴタがあった中での解任劇に見えました。

驚いた次に思ったのは、そうか、彼がいたか、ということでした。北野監督契約満了の発表からこのかた、先日の最終戦のエントリーでも書いたように、とにかく次の監督が誰になるのか。われわれの関心はこの一点にありました。もちろんわれわれも一ファンとして、色んな想像、妄想、憶測を…していました。まず、(われわれのリストに)名前が挙がったのが鳥栖を離れた熱血漢・岸野氏。また柏でヘッドコーチを務める井原氏。さらには辞任表明した甲府の安間氏であったり、藤田と同級生の木山氏であったり。あげくには中央大学、柏のラインでS級を持っているというだけで沢田謙太郎氏、横山雄次氏などを勝手にリストアップしたりと…。今回の人選に関して池谷GMの、どんなコネクションが働いたのか、いずれ種明かしはあるのでしょうが、とにかく、あの高木氏とは思いもつかなかった…。

若手の指導者ではあるものの、横浜FCをJ1昇格に導いたという実績はすでに十分輝かしいものと言えるでしょう。優勝に導いたあのシーズン、どんな戦術を敷いていたのかは、当時カテゴリーが違っていたのであまりよく知りません。そういう意味では、新生ロアッソサッカーをどう導くのかも、全くの未知数です。ただあの当時、その破竹の勢いの“ベース”には、選手と対話し、選手の気持ちを掌握する力に長けているという高い評価と報道があったことを思い出します。青年監督ならではの人身掌握術。兄貴肌なのか、あるいは教育者的側面とも言えるのかも知れません。

そして、これもまた北野監督と同様に比較的若いわがクラブの池谷GM(47)と、かたや方やピッチ上の指揮官・藤田(38)との、ちょうど間に位置するような年齢。熊本の重鎮的存在である藤田にとっても、この高木氏の日本代表キャップ数と、まだ短いながらも確かな指導者としての実績は、互いに信頼するに足るものではないかと。いきなり任された横浜というチームにも、目上の存在のカズという選手がいましたが、そのなかでチームをしっかりと掌握したという実績。ある意味似たように経験豊かなベテランと新卒そこそこの若手が混在するわがチームにあっても、そのマネジメント力が発揮されるのではないでしょうか。

これもまた、3年後のJ1昇格を見据えたわがクラブのひとつの明確な“布石”(報道によれば当初は二年契約とのことですが)であることは間違いないでしょう。もうひとつ付け加えるとすれば、J2の戦い方を熟知していることもちろんですが、昇格したJ1シーズンでは壮絶に負け続けたという実戦経験の持ち主。J2とJ1の確かな違いを、肌で知っているということも大きなものではないでしょうか。

高木氏の監督就任ということで、われわれが考えうるポジティブなところを色々と想像してみました。しかし、まだまだ始まったばかりと思っていた今期のストーブリーグ。その比較的早い段階で、わが熊本が次の指導者を決定できたことは、来期のチームづくりのうえで大きなアドバンテージであることだけは間違いないでしょう。熊日の連載でも指摘されていたように、強化のための予算が潤沢なわけでは決してありませんが、それでもチーム編成がこれから、という段階で、新監督の意向と人脈が可能な限り生かされることもあるだろうし、それは将来に渡っても期待できることなのではないでしょうか。このスケジュールで次の段階に進めたこと。この仕事の価値は小さくないと思います。

とにかく監督が決まってホッとした。そして大いに期待したい。今日最終的に思ったのはそういうことでした。高木氏にすれば“2度目”のJ1昇格へ向けてのチャレンジ。大仕事。それは、われわれ熊本の“夢”と繋がるはずです。新生・熊本の着実な一歩。この人事が、後々そうだと言えるように。われわれも身を引き締めて応援していきたいと思います。
12月5日(土) 2009 J2リーグ戦 第51節
甲府 2 - 1 熊本 (12:33/小瀬/13,104人)
得点者:2' 金信泳(甲府)、23' 金信泳(甲府)、28' 小森田友明(熊本)


まさしくプチ・パンデミック(爆発的感染)。その名のとおり、ホーム最終戦の感傷も癒ぬこの一週間、熊本はインフルエンザ感染に見舞われました。最初に公式に発表されたのは市村。続いて松岡、宮崎、原田、河端の発症。他にも体調不良の選手がいることも噂され、これで果たして最終戦が戦えるのだろうか、11人のメンバーが揃うのだろうかとまで心配させました。

それでもなんとか試合の2日前には、かなりの人数が練習に合流。ほとんどの選手の発症は11月30日から12月1日。通常、タミフル(あるいはリレンザ)を投与した日から2日後に熱は下がるものの、その後も数日間は安静が必要(というよりフラフラの状態が普通ですが…)とされます。そういう意味では、甲府・小瀬のピッチに立っていた市村と原田。恐るべき回復力。まさしくギリギリの復帰だといえるでしょう。

前節のエントリーの最後に、「このチームとしての最後の戦い、このシーズンの到達点をしっかりと見届けたい」と書いたものの、こんな状況で最終節を迎えることになるとは思ってもみませんでした。DFラインは前節、前半半ばで痛んでリタイアしたチョ・ソンジンと福王をセンターに、右に市村、左に網田。ベンチには控えのDFは一人もいない。しかも小瀬のスタンドは、この最終節で勝利して、逆転でのJ1昇格を信じる甲府のファンの声を限りのチャントがテレビから伝わってくる。更に追い討ちをかけるような、12月の冷たい雨。

甲府 (先発フォーメーション)
 18キム・シンヨン 
11マラニョン9大西
7石原10藤田
 31林 
3御厨20吉田
4山本5ダニエル
 34阿部 

古巣に対して序盤からアグレッシブな宇留野の動き。右サイドを崩していきます。(試合途中では、今期限りとなった甲府の安間監督に、ピッチサイドで肩を叩かれる場面も。)しかし、試合は思わぬ展開に。甲府の1点目も2点目も、マラニョンの切り替えしのキレに振り切られたことや、人数は居るのにボールウォッチャーになってキム・シンヨンを放してしまったことなど、DFの若さが露呈してしまいました。どうしても、球際に厳しく来る甲府に押され、各人の判断がやや遅れがち。そこかしこにチームのコンディションの悪さが見えるようで。そんななか、早い時間帯での2点のビハインド。本当に久しぶりのシチュエーションです。しかし、以前であれば“キレて”しまって立て直せなかったような試合の流れ。今日は辛抱強く自分達に引き寄せていきました。

徐々に甲府の攻撃がロングボールの放り込みで単調になります。対照的に熊本はしつこいくらいパスで繋いで、前線に運んでリズムを作っていく。ひとつの目指すべきモデルとしてあったパスサッカーの甲府を相手に、自分達のパスサッカーを貫こうとする選手たち。彼らもやはり今シーズンの“到達点”を探っているように思えました。

28分、原田の強烈なロングシュートをGKが弾いたところに、詰めていた小森田が押し込む。「今日が僕の開幕戦です」と言った栃木戦からまさかの4連続ゴール。そのときのエントリーで「FWにはFWのDNAがある」といったことを書きましたが、今日の小森田、もらったパスをワンタッチで反らしDFを交わしたり、2列目でパスを出したあとエリアに侵入したり…。“タメる”ことへのこだわりから一歩抜け出し、随所にFWっぽい、いい働きを見せました。もちろん、周りが彼の使い方にうまくなったということもあるのでしょうが、終盤での4連続ゴールは、その“ご褒美”ではないかと思いました。

それにしても特筆すべきは原田の働き。得点シーンの前にも、「あわや」と思わせる直接FKがあったり、その時の「フィーリングが良かった」とはいうものの、とても数日前まで高熱でうなされていた選手とは思えない左足の冴えぐあい。ボールのスピード、変化、球筋など、これまでにないキレを感じました。「後半は咳が止まらず正直苦しかった」(熊日)と言いますが、最後は左SBまで努めた90分の運動量。吉井とのダブルボランチは安定感を増し。来期、熊本の中心でチームを引っ張る選手であることは間違いないと思わせました。

一気に同点も、と思わせましたが、そこはさすがの甲府。そのままの点差で押し切られてしまいました。しかし終始、切り替えの早い攻守の応酬に、最終節らしく両者いいゲームを演じてくれました。

ミスも多かったが交代で退くまで積極性を失わなかった網田。前節痛んだにもかかわらず出場を志願したというソンジン。おそらくまだ万全ではないだろう市村。インフルエンザではないものの、激しい咳き込みで背筋を痛めたという藤田。チーム全体が満身創痍。しかし、普通なら立っているのもキツイはずなのに、苦しい表情どころか、皆どこか笑顔で、スッキリしたような顔つき。契約満了が決まっている選手たちも、今日のこの最後のゲームを楽しんでいるようで。このチームでやる最後のゲームを…。

さて、勝利はしたものの、昇格を逸した甲府。長いシーズンのなかで、4強と呼ばれ、最初から最後まで昇格ラインを伺う位置にいました。命運を分けたのは、わずかに勝ち点差1という現実。51試合というかつてない試合数の積み重ねのあげく、わずか勝ち点差1の間にラインが引かれ、また来期、共にJ2を戦うことになりました。

そしてわれわれ熊本。今シーズンは甲府に対して一勝もできませんでした。しかし、この最終節、昇格を争うチームの“痺れる”ような状況のゲームの相手を演じられたことは、熊本の大きな財産になったことに違いありません。しかも、こんなアクシデントにも動じることなく、がっぷり四つで、最後まで甲府を脅かしました。昨年の最終戦、KKでの広島との戦い。スコアは偶然にも同じ1-2ですが、昨年感じたような、まだまだ埋めようがない落差といった感じではなく、また、それは、先日、水前寺で湘南に勝利したときとも違うさらに“僅差”の感覚を持ったのはわれわれだけしょうか。

仙台、C大阪、湘南を見送り、来期は柏、千葉、大分が落ちてくることになりました。JFLからは新しく名前を変えた北九州が参戦してくることに。われわれはといえば、今期果たせなかった目標を、もう一度掲げなおして戦うことになるのでしょう。果たしてどんなチームに構成されるのか。“場外”の戦いは既に始まっていると書きましたが、まずは指揮をとる次期監督が誰になるのかが、最大の関心事です。ただ間違いなく言えることは、誰が指揮をとり、どんな新しい選手が来ても、今年までに築いた熊本の財産がチャラになるわけではなく、更にその上に積み増していく作業になるのだろうということ。それをまた見続けていきたい、見守っていきたいと思います。その意味でも、この最終戦。敗戦ではあったけれど、今シーズンの“到達点”を見せてくれた価値ある一戦として、しっかりと記憶に留めておくべき戦いだったなと思いました。そして、去っていく選手たちも含めて、そんな気持ちにさせてくれた全ての選手達に拍手を送りたいと思います。