3月27日(土) 2010 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 0 岐阜 (16:03/熊本/4,714人)
得点者:45'+2 西弘則(熊本)


誰もがこのままスコアレスで終わるかと思っていた前半アデショナルタイム。岐阜のCB秋田のボールの収まりが一瞬悪かった。それを見逃さなかったのは西。左SBに出そうとするパスを出所で奪って自らドリブルでエリアに入っていく。慌てて追いかける秋田をうまく交わすとGKとの1対1を冷静に見極め、ゴールに蹴り込みました。ネットが揺れる。今季初の先制点。そしてこれがこの日の決勝点となりました。

岐阜 (先発フォーメーション)
27押谷 10パク
14嶋田7菅
4田中23橋本
17野垣内19冨成
6秋田3吉本
 1野田 

そこまでは、幾分熊本のほうにチャンスの数が多いものの、ほぼ互角の展開と言えました。JFL時代を通じてあまり相性がいいとは言えないJ昇格同期の岐阜との第4節での対戦。190センチを超える長身のパク・キドン、磐田からレンタル移籍中の押谷の2トップは、ポテンシャルも高く要注意でしたが、新生熊本の守備陣容ががっちり2列のブロックを作って攻撃を阻みました。24分に押谷のスルーパスから嶋田に抜け出されますが、南が勇気を持って飛び出し難を逃れます。

反対に熊本は39分、筑城のクロスに中央で井畑がつぶれてファーの宇留野のヘッド。しかしこれは大きく枠をオーバーします。この日、見るからに精細を欠いていた宇留野。突破力にもいつものキレがありません。「少し筋肉系の痛みが出たので、大事をとって替えた」と試合後、高木監督が明かしていますが、前半終了間際というタイミングで退き、代わって西森が入ります。互いにシュートまでには至らない、中盤での激しいせめぎ合いが続く展開。入ったばかりの西森と西が、互いのサイドをスウィッチする。前半も最後まで走り切る、そんな時間帯。西の前線での高い集中力から生まれた得点。2試合ぶりの先発起用に応えました。

後半は、思った以上に熊本に“風”が吹きました。高木監督のハーフタイムの指示は「カバーリングをしっかり。セカンドを拾って。2点目を狙っていこう」というもの。しっかりもう一度守備から入って追加点を、というコンセプトでした。一方の倉田監督は試合後も「前半は今までで一番いいというくらいの出来だった」と言っているように、失点は“出会いがしら”の不運な交通事故のようなものと捕らえていたのかも知れません。それにしても後半早々に、西川をサイドに配置するためにそれまで中盤の起点になっていたボランチの橋本を引っ込める。たしかにパクと西川の高さは驚異でしたが、これで熊本に中盤の支配権が完全に転がりこみました。ボランチに残された田中の負担が増える。そこに熊本のプレスがうまく機能していきました。岐阜がゲームを支配していた前半という見方からすれば、この交代で早めに追いついておこうという“主導権”を持った発想が出てくるのもやむを得なかったのかも知れませんが、結果的には熊本に幸いしました。

これまでもそうでしたが、熊本が守備重視といってもそれは決して引きこもってのそれではなく、奪われた後の帰りが早いということ。奪われた時のイメージを共有しながら、アタマのなかの体重配分を後ろにもかけているということ。すぐさま2つのブロックが形成されると、相手のパスに対して足が出る。複数で囲むと絡め取るようにボールを奪う。徐々にポゼッションは熊本のものとなりました。

53分、筑城がサイドで奪って左に展開した井畑に。クロスがこぼれたところに右から上がってきた市村がボレーシュート。両SBが今日は積極的に攻撃に参加できる。高い位置で奪ってから攻撃に転じる早さは、まさに”攻めるディフェンス”。特に今日の筑城の働きは出色の出来。自分のゾーンを犯されまいと果敢なスライディングでクリアするかと思いきや、判断よく攻め上がる。奪われれば切り替えよく全力疾走で戻る。「切り替えの早さ」をテーマとした今年の高木イズムを体現する選手でした。

途中投入の西森の運動量も半端ではない。“迷いがない”とでも言っていいのか、判断よくディフェンスに、攻撃に加担している。「レギュラーポジションが欲しい。」「試合に出たい。」そういったチーム内にある“熱い競争心”がプレーに現れていました。後半31分、チャンスを逸した後、最前線左サイドで執拗に相手MF嶋田を追いかけ、結果、カードを貰ってしまった井畑のプレーも、違った意味で競争心、危機感を感じさせてくれるものでした。“ここで結果を出さないと次のチャンスはない”とばかりに。

岐阜はパク・キドンを諦め佐藤を投入。ルーキーイヤーの昨年17点を入れたこの男の怖さはさすがに知れ渡っている。けれど熊本の守備は強固でそうそう破られる感じがしない。これまで岐阜に何度もなく切り裂かれたDFラインでしたが、今日は岐阜の単調なアタッキングサードのボール回しもあって、安心して見ていられました。

次第にイライラが募ってくるのは岐阜の方でした。ファールが増える。熊本は80分、井畑に代えて前線に渡辺を入れることによって、最後の岐阜の“圧”を防ぎにかかります。82分、ペナルティエリアで押谷が筑城と交錯して倒れる。ピッチに鳴り響く主審の笛。一瞬で凍りつく熊本サポーター。しかしイエローカードが示されたのはシミュレーションを犯した押谷の方。スタジアムに覆う安堵のため息。

熊本の最後のカード。残り10分で投入された藤田には、今日もまた“クローザー”としての役割が託されました。最後の最後の時間帯。まぎれもなくバタバタした味方の気持ちを落ち着かせるキープレーヤー。多くのファンが知っている、熊本がこれまで何度も苦渋を舐めたこの危険な時間帯。しかし今季は、もはや“勝ち点請負人”とも言えるだろうこの男の投入で、“時間”はわれわれのものとなっていきます。孤高の男のワントップが前線でタメを作る。それは熊本が昨年から敷いている藤田のゼロトップに違いありませんでしたが、今季のこれは、残り10分をマネジメントする“高木流・応用編”に進化していました。一本、二本、軽快にボールをさばいたたけで不思議なリズムが生まれ始めます。

藤田の「残り10分の起用」。われわれも含め多くの藤田ファンにはもったいないように思えますが…。この重要な時間帯、試合に“勝ち点”をもたらすこの時間帯は格段に密度が高い。そしてここで起用すべきキープレーヤーは今、藤田しかいない。藤田がふたりといないプレーヤーなだけに、こういう“やりくり”になってしまうのが現在のロアッソの実情だとも思うのです。

あの感激の開幕戦から3週間ぶりのホームゲーム。そこできっちり勝利という結果をファンに示してくれたロアッソ。親しくさせていただいている関東サポ・某氏の拍手コメントは「勝ちグセをつけたり、負けない戦い方はメンタル的にも大きく成長させてくれる(選手もサポーターも)」というものでした。まったく同感。そして第4節にして負け無し。5位という順位もまんざらではないものの、何より「得失点差+2」という数字の重さは、心に沁みるものがありますね。失点を減らせば「勝てる」。「上位に行ける」。それはあたり前の話しではあるにせよ、実際に得失点差が“プラス”という状況は、J昇格以来、初めてのことですから。

終わってしまえば1-0の辛勝。後半はポゼッションを奪いながらも、幾度とあったチャンスに追加点を決め切れなかった反省は、監督だけでなく選手ひとり一人が感じているようです。まさに辛勝でした。今日は勝てたが、という感じですね。橋本、嶋田、西川、佐藤、そしてパク…。今日、登場したメンバーを見てもそのポテンシャルは相当なものが感じられる今季の岐阜。攻守の切り替えもそうですが、今日の試合の勝利の感慨も次回の対戦へ向けて早々に“切り替え”が必要なのでしょう。

2010.03.22 岡山戦。五分
3月21日(日) 2010 J2リーグ戦 第3節
岡山 0 - 0 熊本 (16:03/カンスタ/6,513人)

勝ち点3を掴むための1点のゴールが、どちらのチームに転がり込んでもおかしくない。最後まで目が離せない試合展開。90分間通して攻守の入れ替わりが激しい試合でした。戦前のJ‘sゴールのプレビューを読んでいて、「岡山の『やりたいこと』とは、まずは『守備面では、奪われた後の切り替え。攻撃面では、数名が絡むゴール前でのボールコントロール』(影山雅永監督)」という表現に、それはまるでうちのやりたいことじゃないか、と思っていました。ある意味、似たようなコンセプトを持ったチーム同士の戦いはまさに「ミラーゲーム」(高木監督・試合後の談話)と言えましたね。

岡山は、西野を中央に置き、その横に松本山雅から帰ってきた新中、かつてYKK・APに在籍していた元神戸の岸田という3トップといえる布陣。水戸から移籍したキムテヨンが中盤を締めて、昨年から様変わりした印象。対する熊本も先発で山内を起用し、井畑の周りで松橋や宇留野とともに走り回らせようといった構えでした。

岡山 (先発フォーメーション)
 19西野 
9岸田27新中
 33小寺 
8キム・テヨン39福本
25田所2澤口
4近藤6野本
 21真子 

雨は上がったものの、前夜から春の嵐のように吹きすさぶ強風。その風上を利用するように開始から猛烈に押し込んできたのは岡山。ホームでの初勝利に賭ける意気込みに威圧されそうになりますが、熊本は10分、右サイド奥を崩して市村が短く低いクロス。ニアの井畑が頭から飛び込みますが、これはキーパーの正面。対する岡山は14分、澤口がもらうと迷わずミドルシュート。ドライブのかかったボールは、GK南も触れられませんでしたが、バーに当たって事なきを得ました。

とにかく今季の岡山は、シュートパスを繋いで素早く攻め上がるスタイルに変貌している。かといって守備が手薄なわけではなく、奪われると全員の戻りが早い。もちろん攻撃も。まるで、ボールの行き来を合図に“よーいドン”とダッシュするような切り替えの早さ。熊本は今日もGKから一発、ロングボールでサイドのスペースを利用する意図。井畑もボールを収めるのがどんどんうまくなってきた。

守りに関してはきっちりと人数を掛けて守る岡山に対して、攻勢にまわりボールポゼッションしたときの熊本の連携が今ひとつ。サイドからの攻撃に徹していますが、原田、吉井の攻撃参加があまりないせいなのか。両ボランチの守備の意識が強すぎるのか。一方、守りのバランスではDFラインが上げきれないのか、ボランチとの間に大きなスペース。まるで懐に岡山の3トップを抱えているように自由にさせていましたが、サイドに追い込んだり、プレスバックして奪うことで守っていました。開幕戦から続いている感じがするこのバランス。こうも同じ絵柄を目にすると、あるいはこれも意図的な戦術なのかも知れないなどと思ってしまうのはわれわれだけでしょうか。試合後、藤田が自身のブログで、「まだまだ遠慮しているように感じる」と原田に“要求”していますが、遠慮は監督の戦術に対してのことなのでしょうか。この序盤戦、監督の方針は、守備的であり“リスク回避”ですが。監督の戦術のなかでどう自分を出していくのか。藤田の要求はわれわれが考えるような単純な話ではないのでしょうが…。

前半アディショナル・タイム。中盤から岡山の新中にフワっと入れられる。エリア内に走りこんだ岸田にぴったりと収まりシュート。これは矢野が身体を投げ出してクリアします。この“フワっと”に今年は要注意です。

後半もまずダッシュしてきたのは岡山。対する熊本は主に山内の右サイドから起点を作る。パス交換から山内のシュートぎみのクロス。ボールポゼッションからロングボールで、松橋に裏を狙わせる。執拗に繰り返す熊本。ゲームの“流れ”の綱引きは、徐々に熊本に引き寄せられていきます。市村や筑城も上がって波状攻撃。岡山はエリア内に8人も入ってこれを跳ね返します。

喜山を入れて守勢を跳ね返そうと意図する岡山に対し、熊本も宇留野に代えて西を投入。原田のミドルレンジからの強烈なシュートは、ブレ球となってGKを慌てさせますが、詰める選手がいませんでした。今度は西が右サイドで起点になり、シュートパスで繋いで中央にグラウンダーで入れたボールは、中央の選手がスルーしてファーの松橋に渡りますが、シュートはGK正面に収まりました。惜しい。

主導権は熊本にありましたが、岡山も上がったSBのスペースを狙ってくる。熊本の右サイドをえぐって田所が低くて速いクロス。ニアに飛び込んだ西野のヘッドはサイドネットを揺らす。一瞬、凍りつき、ホッとため息。

今節も藤田の出番は残り15分になってからでした。西とのワンツー。エリア前でのコンビネーション。狭い局面をアイデアで仕掛けますが、いかんせんゴールが遠い。後半のアディショナル・タイムは3分。バイタルエリアから西。ドリブルの“エンジン”がかかりますが、まだ本来の“切れ”には達していない感じ。最後はエリア内まで突っかけてフィニッシュ。しかしミートせず、シュートはGKの手中にありました。

昨季、リーグ失点数1、2を争った両チームの今季初戦は、スコアレスドローで「痛みわけ」(岡山・景山監督)に終わりました。結果から言っても、ゲームの中身を観ても、両チームが目指している“守りの再構築”。まずは、はっきりとした形が見えてきているのではないでしょうか。思えば昨年の第2クール、3-2での壮絶な撃ち合いを制した熊本でしたが、試合は終始、バタバタした印象を拭えませんでした。今季の岡山、あの時のチームとは全く違ってきているし、熊本もまた同様。自ら描いているゲームプランを忠実に実行していくということも含めて…。

ゲームプランと言えば、今節もまた西と藤田は後半投入になりました。相手をじっくりと見据えた高木監督のプランは、勝ち点という“結果”が伴っている以上は、変更する必要はないものなのかも知れません。ただ、アウェーのアナウンサーや解説者までに周知のこととなった熊本・高木監督が標榜する「残り15分の攻勢」ですが、これは、決して選手交代というカードを使うことで攻勢を奪うという意味ではなく、相手も疲れている時間帯に、相手よりさらに走り抜くことで“勝ち切る”ということだと、われわれももう一度確認しておきたいと思うのです。最初から入っている選手が、最後の15分でもう一度、一層の力を出して走り抜くこと。そういう意味では本当の熊本の「残り15分の攻勢」は、まだまだ途上なのかも知れません。

さてここまで3節を終わって見渡せば、今季のJ2はこれまでの2年間とはまた違った“景色”が。広島、大阪といった圧倒的な存在は見えないなかで、横浜、徳島が3連勝。前評判の高かった千葉が苦戦を強いられています。このドローは「負けに等しい」のか「勝ちに等しい」のか。まだまだ毎節の結果で順位が激しく入れ替わる序盤戦とはいえ、試合数の少ない今シーズン、一戦一戦の重さは言うまでもありません。それは、単に数の上でのことだけでなく、われわれにとって、チームの戦術とシーズンの流れを追っていくうえで、一試合が終わった途端、その次の試合の持つ意味、意義がスーッと浮かび上がってくるような。そういう質的な意味での凝縮感は格段に高いものがあります。そして次節、ホームに迎えるのは岐阜。運動量、ゲームの速さは昨シーズンからさらに進化しているような印象です。選手起用も含めて、この岡山戦からどう繋がっていくのか。また、来週の岐阜戦から逆にこの岡山戦の見え方がクリアになるのかも知れません。なんにしても楽しみです。

3月14日(日) 2010 J2リーグ戦 第2節
東京V 1 - 2 熊本 (13:03/味スタ/5,755人)
得点者:52' 平本一樹(東京V)、59' 松橋章太(熊本)、75' 井畑翔太郎(熊本)

経営母体も変わり、主軸も含めて大量の選手が流出。建て直しの年とも言える東京Vは川勝監督が復帰。このチームを昨年途中まで率いていた高木監督は戦前「個人の情報はあるが、チームの情報はわからない。」と言っていたそうです。

東京V (先発フォーメーション)
 13井上 
 7河野 
16飯尾24高木
10菊岡8柴崎
25平本2福田
14富澤17土屋
 26柴崎 

熊本はなんだか重たい出足に見えました。序盤は開幕戦と同じように、自陣深い位置からつなぐリスクを避け、長いボールを放り込みますが、なかなかボールを落ち着けられず、またセカンドボールを拾えない。前節試合がなかった東京は今日が開幕。満を持してという感じで思い切りよく攻め込んでくる。熊本が自陣に釘付けになる時間帯が続きました。ただ、今日もチームとして守備の意識が高い熊本。相手のアタッキングサードは厳しく対応し、自由にシュートは撃たせない。井畑は今日も前線で身体を張る動き。解説の遠藤氏の「オフトから高木に植え付けられたものが、高木から井畑に受け継がれている」みたいなコメントになるほどと思いつつ前半スコアレスで終了。

それにしても東京。柴崎、菊岡、河野とボールの供給者はいずれもタレント揃い。50分に与えたFK。嫌な時間帯だなと思った瞬間。菊岡からフワッと上げられたクロスに平本の頭が届く。GK南も一瞬躊躇したタイミングときわどいエリアへのボール。東京に先制を許してしまいました。どうも今年はこの「フワッと」に弱いな…、セットプレーも相変わらずだな…。などと思っていましたが、時間とともに徐々に東京の足が止まり始めてくれました。

前半1本もなかったCKが取れ初め、59分ショートコーナーで一旦、DFをズラしたところにクロス。かなり遠目から井畑が競り勝ってのヘッド。ポストの跳ね返りを松橋がきっちりと詰めていました。さすがです。追いつかれた東京も反撃。高い位置でインターセプトされて高木が南と1対1。これを新守護神がビッグセーブで防ぎます。

最初に動いたのは熊本。運動量の落ちた宇留野を山内に代えて右サイドを活性化させる。すると同サイドのスローインを井畑がPエリア内で受ける。DF富澤を背負い、ねじ込みながら体を入れ替えゴールに向き、至近距離から強烈な一打。GKの足に当たったボールはゴールマウスに転がり込みました。こんなシュートシーンはこれまでのロアッソにはなかったように思います。全く泥臭くて、なにより積極性のシュート。周りの誰かにボールを預けることだってできたはず。今季からDFの手の使い方が非常に厳しくジャッジされるようになったとはいえ、この井畑の執拗とまでいえる身体の使い方は今年の武器になるに違いない。嬉しいJリーグ初ゴールでした。

そして今日も残り10分もない時間で藤田の投入。2試合続けての“最後の切り札”となりました。けれど今日の役割は、前節と違ってこの試合をうまくクロージングすること。「勝てる試合をきっちりと勝ちきる」。それは昨シーズンの反省点としてこのオフシーズン、藤田が何度も言っていた言葉。最後の(監督がこだわる残り15分ともとれる)時間帯。そこに監督の意思を伝達するだけでなく、自らが表現できる重要なカード(切り札)なのではないでしょうか。試合後も山内に熱っぽく何かアドバイスしている姿が印象的でした。

追いつく力。そして今節は、逆転して「勝ちきる力」を見せてくれた新生ロアッソ。ただそれは、先制点を奪われたあとでも決して動揺せず、最小失点1で抑える(我慢できる)力だったとも言えるのではないでしょうか。某ラジオ番組で高木監督は「色々なアクシデントもあるから、失点1はどんな試合でも覚悟しておかなければならない。だからいわば失点ゼロは“サッカーの美学”なのだ」という意味のことを話していました。

試合後、振り返ってみると“なんだかある意味印象の薄い試合”だったというのがわれわれの実感でした。チームのファンでなければ、前半の途中以降は見続けることに飽きてしまうようなゲーム内容だったのではないかと思います。けれどもそれは綿密なスカウティングの元に、相手の良いところをひとつひとつ丹念に潰していくサッカーだったから。加えてチームの個々人が“自分”を消して、チームの仕事=自分の仕事に徹していたからではないかと思わされました。ファールがあってボールが止まっても、アピールしたり、ゼスチャーしたりしている余裕も暇もない、すぐに切り替えてポジションを取りに走っていく。選手みんなから指示の声が出ている。90分間、焦れない。ゲームだけに集中している。

「サッカーには攻撃の時間と、守りの時間と、切り替えの時間しかない」と言っていた高木監督。確かに守りへの切り替えは見違えるほど出来てきています。ただ、攻撃に転じるときに雑なところがみえるのは“まだ”致し方ないのでしょう。「本来ならば、できればもっともっと動かして、前からボールを奪うことをやっていきたいのですが、そこが今後のチームの課題として挙がってくると思います。」指揮官の言葉にもそのあたりの途上感が垣間見られる。ただ、勝ち点を積み上げるために“やるべきこと”と“今できること”の優先順位をしっかり決めて戦っているという現実主義者なのも間違いないないようです。

今日はオフ。関東に家族を残してきた藤田、南らにとってはしばしの“戦士の休息”が与えられているのかも知れません。しっかり休んで、そして次の岡山戦に備えてもらいたい。
さて、その岡山戦。千葉、東京Vという古豪、強豪との連戦を終えて(開幕二試合を戦ったばかりです)、まだ負けてない…。先ほど書いたように“あの”東京Vに勝ったのに“なんだかある意味印象の薄い試合”と感じてしまうように、われわれも今チームに対して不思議な気持ちを抱いています。そんな流れの中での対岡山。まさか選手にもわれわれファンにも慢心はありませんが、どんな戦い方をするのか、できるのか。藤田はやっぱり“最後のカード”なのか、等々・・・。新チームの姿(戦い方)が見極められるかもしれない。そういった意味で、なかなかに見どころが深い試合ではないかと期待をしているところです。

3月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第1節
熊本 1 - 1 千葉 (15:05/熊本/9,101人)
得点者:60' 倉田秋(千葉)、90'+4 市村篤司(熊本)


最後の最後に待っていた嵐のような歓喜。ゲーム内容に寒さも手伝って、90分間緊張して、硬直したように座っていたせいか、ゴールの瞬間雄叫びを上げて立ち上がった際に、あやうくぎっくり腰になりそうでした(笑)。90分間、蓄積されたエネルギーが爆発するように解き放たれる。飛び跳ね、右手を突き上げているのは自然な行動でした。

3年目のJ開幕戦を迎えるにあたって、少し考えることがありました。相手はJ1から初めて降格してきた千葉。これまでのわれわれであったら、「“あの”千葉と開幕戦を戦えることが嬉しい」などと書いていたはず。しかし、「新体制発表。強い意志」というエントリーで書いたとおり、これからは「懐古趣味的な自己満足を封印し、次に踏み出すべきところに来ている」と。「ひとつひとつのゲームに対しても、掲げられたビジョンと比べてどうなのか?という視点や“厳しい”評価も求められる」。仮に強豪・千葉に大差で敗れるような結果になったとしても、そこにある“差”をしっかりと受け止め、そのギャップを埋めるための次のステップにしていきたいと思っていました。

「『相手が千葉だから』という言葉は好きではない。J2で上位にくるチームとは思っているが、千葉とやれて嬉しいとか、ビッグクラブにすがるとか、そんな気持ちはない。勝つためには、最後まで走ること、切り替えを早くすることが大事」という戦前の高木監督の言葉にも勇気づけられたし、千葉と戦えると言ってもそれはわれわれが昇格してではなく、あくまで“落ちてきた”千葉と戦うということ。そして、それならば、われわれの目指している先へ、足りないものを見極めて進んでいく、そんなJの3年目のスタートには願ってもない相手なのだと思うことにしました。

千葉 (先発フォーメーション)
 18巻 
9深井16谷澤
7佐藤勇人10工藤
 6山口慶 
3アレックス2坂本
23益山33茶野
 1岡本 

降格。そして初めてJ2の舞台に立つ千葉。慢心はなかったと思います。「決勝戦のつもり」「全力をぶつける」。そんな敵将・江尻監督の言葉にも表れているように…。しかし、キャンプ中にTMを行って4-0の“大差で下した”熊本、でもあります。ところが、この日の熊本。あのときとはちょっと様子が違っていたのではないでしょうか。前半、ボールを繋いでこない。前線の井畑、松橋にDFの裏を狙わせるように長いボールを運んでくる。それは千葉のラインを下げさせることと、あのTM時に体感した厳しいプレスから逃れる策だったのでしょう。

今日の井畑、相手DFを背負いながら、身体を張って必死に競る、収める。もちろん、周囲との位置関係がもう少しいいものだったら、もっと裏をとる攻撃の脅威が増したのだろう、という見方もありますが。とにかく、ここを相手に支配され、あるいはセカンドを拾われていたら、千葉が「押し上げられなかった」と悔やんでいる部分の形勢が変わっていたのではなかろうかと。もし押し上げられていたら持ち堪えきれただろうかと。TMでも目の当たりにしたように、あれだけ細かいパスを回してくるチーム。少しでも陣形を間伸びさせることが、“相手のいいところを消す”という戦術の根本にあったのかなと思います。

なんとなく調子の狂った千葉は、21分頃アレックスのFKから前線が触れば1点というチャンスはあったものの、その後は西森のクロスに宇留野からフリーで撃たれたり、松橋の前線でのチェックからドリブルで切れ込みポストに嫌われる惜しいシュートがあったりと、数度熊本に脅かされます。熊本は一見、引いているように見えるが、攻撃時の最終ラインはハーフウェイライン近くまで高く上げる。前線から無闇に追いかけたりはしないが、機能しているのは組織的な守備。陣形をコンパクトにして、相手のボールホルダーに対して二人、三人と寄せる。パスコースに足を出していく。あるいはプレスバックで奪う。ピンチではシンプルにサイドに蹴り出し、敵のリズムを切っていく。巻の高さは脅威でしたが、矢野と福王がうまく体をあてて自由にさせない。空中戦に対するGK南の安定した対応も忘れてはならないポイントでした。

スコアレスに終わった前半。全く互角の神経戦を、スタンドのファンが固唾を呑んで見守っているという様相でした。

状況を打開すべく、最初にカードを切ってきたのは江尻監督でした。後半早々、右サイドの谷澤に代えて倉田秋。この交代が功を奏して、千葉の前線が活性化する。左SBのアレックスもどんどん攻撃に参加し始める。掻き回され始めた熊本。60分、右からふわっと入れられたクロスはDFの頭を越えて詰めていたアレックスの足元に。至近距離からのこのシュート。一旦は南も触ったのですが、こぼれ球を倉田に押し込まれてしまいます。

同時期、熊本の運動量も目に見えて落ち始めていました。攻撃に人数をかけ、圧を強める千葉に対して、自陣での防戦が続くようになる。その打開策として熊本は西森に代えて西、宇留野に代えて山内と両SHを交代投入。それまで先頭でターゲットになりよくボールを収めていた井畑に加え、西、山内を飛び込ませることによって押し戻そうという考え。しかし、千葉の勢いは収まらない。タレントの揃った中盤は堅い。残り10分もないこところで、熊本は井畑を諦め藤田を投入。松橋と前後の関係を作ります。

後半44分、千葉はMF工藤に代えてDFミリガン。「残りの時間で追加点は取れるだろう」という思いが、「このまま1点リードを守って逃げ切ろう」という思いに変わったのでしょうか。ピッチから出ていく工藤の表情にはホッとしたような、安堵を感じさせる笑み。彼らがこの開幕戦で背負っていた重圧の大きさを垣間見たような。アディショナル・タイムは4分。更に村井を入れて時間かせぎ。それはもう全く勝利への定石どおりの采配でした。

ところが藤田に託されたこの短い時間は、千葉にとっては相当やっかいなものになりました。早く終わらせたい“時間”に、藤田のワンタッチの正確なつなぎで、守りをズラされ、走らされる。西が水を得た魚のようにドリブルで切り裂く。立ちはだかる相手DFの間にまるで彼だけが見える“道”があるかのように、ボールを持って抜けていく。四角いピッチを、見事に斜めに横切って。もう残された時間は1分もないというその瞬間。藤田、山内が引き寄せた相手DFの空隙に右から猛烈なスピードで侵入してきた市村。そこに西からのラストパス。マークについていたのは直前に交代したMF村井でしたが、位置取りが逆。市村が絶妙なトラップから一気にゴールに流し込みました。

すんでのところで勝ち点2を失った江尻監督。試合後、「熊本は最初から同点狙いの策だったのだろう」と悔しがりましたが、高木監督は間違いなく勝ち点3を取りに行くプランでした。キャンプ中のTMでしっかりスカウティングを行ったうえで、こちらの手の内は完全には見せていない。強烈なプレスに対抗する策を講じ、DFラインを上げさせないように井畑を鍛えた。(なんだかまるで日本代表時の高木の役割を見るようでもあり。)そして怪我があったにせよ藤田と西は、あのTMには出ていなかった。千葉にとっては初めて見る「選手」でした。

いやはや、それにしても開幕戦から素晴らしい、われわれ好みの神経戦を見せつけられて、夕べは酒量も増えました。しかし、千葉はやはりJ1仕様のチームだったし、なによりアウェーに駆けつけた600人にも及ぶという黄一色のゴール裏。その地声の大きさにも肝をつぶしました。こんな具合に柏や大分も同様に大挙してやってくると思うと、(それがJ1では当たり前だったのだろうけれど)今から落ち着かなくなってしまいます。今季のリーグ戦、36試合と昨年から比べればいささか少なくは感じるものの、逆に一戦一戦がその分だけ楽しみで、重みがあり、見逃せない。そんなシーズンになりそうですね。