7月24日(土) 2010 J2リーグ戦 第19節
富山 0 - 2 熊本 (18:04/富山/3,427人)
得点者:40' カレンロバート(熊本)、61' 平木良樹(熊本)


練習に参加したのが10日前、正式に移籍が発表されたのが3日前。そのカレンロバートがアウェー富山戦に帯同していると聞いて、「後半20分くらいから出てくるかな」ぐらいの気持ちでいました。ところがフタを開けてみたらいきなりの先発起用。ちょっと驚かされ、さらには挨拶代わりとも言うのか、これまたいきなりのゴール。やはり“なにかを持っている”選手だということを示してくれました。

中断開けから熊本は4-4-2の布陣に変えています。前節の宇留野と松橋の2トップも十分攻撃的に映りましたが、今節テレビ画面に示された両FW、松橋とカレンという文字を見た瞬間、わかってはいることなのですが、それでも「本当にこれが我がチームなのか」と少しばかりの感慨を覚えたのは、われわれオールド熊本ファンだけだったでしょうか。いずれも高校選手権優勝選手でありJ1経験者。その名前は、相手DFを普段よりも“5メートル”は押し下げるのに十分効果がありそうに思えました。

富山 (先発フォーメーション)
20苔口 9黒部
14川崎7朝日
5長山8渡辺
26中田19西野
3堤6濱野
 1中川 

がっぷり四つのような序盤を制し、徐々に熊本のポゼッションに持ち込む。富山の厳しいプレスをかいくぐるようにショートパスで繋ぐ。左サイド高い位置の堤からスルーパス。走りこんだ平木がヒールで背後のスペースに流したボールは、フリーで走り込んだカレンが一蹴。GK中川の正面でしたが、前節西と松橋が見せた連係プレーを彷彿とさせました。

中盤の底で蓋をしたようなしつこい守備に対して、富山は徐々に打つ手が詰まってくる。堤が自陣から大きなサイドチェンジで右サイド奥に筑城を走らせると、そのクロスをファーの松橋が折り返し、中央のカレン。カレンが戻して吉井がミドルシュート。DFにクリアされたものの、熊本のボール回しに翻弄されている富山。「先制点が欲しい」。遠くアウェーに足を運んだサポーターも、テレビの前のわれわれも皆が切望している、そんな時間帯でした。

今日、序盤から再三DF裏へのスルーパスを狙っていたのはボランチの吉井。40分にそのパスが右から飛び出した平木にみごとに通る。利き足ではないものの思い切った平木が右足で撃つと、距離を詰めたGK中川も弾かざるを得ない。中央で動き出していたのはカレン。ややタイミングが早かったものの、その長い足でボールを巻き込むようにねじ込みました。高校時代から「何故そにいる?」と言われた実に彼らしい得点。「俺の得点?」と首を傾げたのは、ゴールに向かったディフェンダーの足もそのシュートの勢いを加勢したからでしょう。いい時間帯での先制点。そのままうまく閉めて前半終了。

控え室に戻るカレンに真っ先に握手を求めに駆け寄ったのは、磐田でも同僚だった藤田でしたが、カレンの表情にはそれほどの笑顔は見えませんでした。それは「俺の得点?」といぶかしがっているのではなく、「こんなもんで満足は出来ない」ということなのか。

迎えた後半。苔口が右サイドからのクロスを落とすと、そこに朝日が走りこんで撃つ。このピンチは南がセーブ。アタッキングサードに入るとスイッチが入ったように一気にスピードアップする富山の攻撃。一瞬も注意は怠れない。そんな緊張感のある後半16分でした。中盤で執拗な守備に身体を張り続けている原田が倒される。左位置で得たFKに平木が立つと、狙ったのはファーの福王。しかしボールはGK中川の手をかすめるとゴールの右上隅に吸い込まれた。平木のJリーグ初得点で2点差に引き離します。

富山も、運動量の多い舩津や石田を入れてなんとか打開を試みます。左サイドからクロスを入れられると中央でクリアしたボールが右にこぼれて川崎に打たれる。これはポストに当たって難を逃れます。熊本は松橋に代えて藤田。相手に流れを渡さないため、さらには駄目押しの追加点で突き放すための投入。しかしこの日の富山。北陸とは思えないような30度を越える気温。後半、更に高まった湿度に、ピッチ上の選手達の疲労は画面越しにも伝わってきて。藤田の力をしてもゲームの流れを引き止めることが精一杯という感じ。膠着ともいえる状況。さらにカンフルとして宇留野を投入。前線で走り回るカレンにも明らかに疲れが見え始める。さすがにここで交代だろうと思ったのですが、最後のカードは堤に代えて西森という選択でした。

先発起用にも驚かされたカレンでしたが、公式戦から遠ざかっていた彼を90分間通して使い続けたことにもさらに驚かされました(それはこのとき堤が足を攣ったための苦渋の選択だったのだと試合後の監督コメントで知りましたが…)。ちょうど去年の後半戦、移籍してきたばかりのハーフナーマイクを、汗にまみれ、疲れきって、それこそ泥のようになるまで、まるで試すように90分間使い続けた当時の鳥栖・岸野監督の厳しさを思い起こさせました。それは本人に“自信”を取り戻させようという愛情と期待の現れであったことを。そしてそれに応えるように走り続けたあのハーフナーマイクの姿と重なりました。

熊本はどう試合をクローズするのかが今節の最大の課題でした。前節と違い2点差をつけてはいるものの、2-0というスコアがサッカーでは一番難しい点差だということを皆が知っていました。しかし南が細かくも狡猾なプレーで時間を使っているのに、せっかくファールでマイボールになったFKをロングで蹴り込んで相手GKのボールにしてしまう。そんな幼さがまだ熊本にはありました。自陣で苦手なロングスローが続く嫌な展開にも悪夢がよぎりました。ロスタイムにはクロスに飛び出した南が濱野と交錯してボールに触れず。舩津にヘッドで撃たれますが、今度はクロスバーが防いでくれました。

熊本にとっては長いロスタイム。テレビからは集音マイクが拾う「ロアッソくまもと!」と叫び続けるサポーターの声が聞こえる。「ロッソと共にわれらは生きる」と歌いはじめる。それはこの試合を「このまま終わらせろ」「早く終了のホイッスルを」というわれわれ全員の“願い”にも聴こえました。

4-4-2のシステムで最も重要なのは、2トップ以上に、2ボランチの攻守のバランスと絶対的な運動量だということを痛いほど感じさせる試合でした。そういう意味では今日の陰の立役者は原田と吉井であり、この、何となくも相性のいい二人が今の熊本を支えていることに異論はないでしょう。中断期があってわかりにくくなっていましたが、この節が実際は前半を終える節目の試合。これで全チームと対戦したことになります。

前半戦最後の試合。重要な節目の日の勝利。それを熊本は即戦力の補強という“変化”だけで手に入れたのではなく、チームとしての着実な“成長”で成し遂げたのだと実感します。カレンと回りとの連係はさすがにまだまだといった点もあり、今はその優れた“感覚”だけでプレーしているような段階。今後、それが深まっていけば、もっともっと“魅せて”くれることでしょう。得点よりなにより90分間通して走れたことが、今日は自身の一番の収穫だったかも知れません。そしてスタメン獲得以来、試合を重ねるごとに活躍の度合いを増している平木。その視野の広さと左足の正確性。さらには市村が戦線離脱しているこの危機的タイミングでよくぞいてくれた(来てくれた)というべき堤。まだプレーに甘さは残るものの卓越した技術、フィジカル。

前半戦を締めくくる試合に、苦しみながらも完封で勝利を飾ることができ、ホッとしているところに、「熊本にとって“J1昇格”のためには重要な試合に勝利した」とスカパーの解説者にサラリと言ってのけられ。不意を衝かれたようにドキリとしてしまいました。

前半戦を終えた段階で好位置の順位。カレンロバートの獲得などもあって、巷間「熊本は本気で昇格を狙っている」と囁かれているのは知っています。しかし、われわれのようにどちらかというとのんびりと見守ってきたファンは、この急激な(変化ではなく)成長を受け止めきれないでいるのも事実のようです。しかし今、昇格ラインまでの勝ち点差2に迫り後半戦を迎える。J1への扉はまだまだ厚く重いものですが、その扉がほんの少しだけ隙間を見せ、その向こう側がわずかに垣間見えているような感覚。まだまだクラブの体力といい環境といい「期が熟していない」などと思い、そう言われてもきた訳ですが、しかし、われわれがそんなことを弁解がましく言っているばかりではいけないのかも知れない。そう思い始めている自分達がいます。隙間から覗き見するだけでは扉は開かれないのだと。鍵はいつでも自分達が持っているのだとも。

クラブはカレンに複数年のオファーを出したものの、逆に今期終了までと期限を切られたのだといわれています。J1からのオファーにいつでも対応できるように。J1に戻るために。そのために今、J2で出場機会を得ることをまず優先させたのでしょう。だからこそ、並大抵の活躍ではその結果が得られないこともよく分かっている。だからこそ、そう簡単に満面の笑みは作れないのだろうと。J2水戸で結果を出して、自分を押し出すように磐田に移籍してきた荒田の活躍を知っているからこそ…。

名古屋からの期限付き移籍の平木も、浦和からの堤もまた相当の結果を出さなければ帰れないことを知っている。その覚悟でいる。だからこそこの新戦力たちのパフォーマンスは、絶対にJ1に戻るんだという高いモチベーションに支えられているに違いありません。われわれにとっては初めての感覚。もしかしたら彼らが持っているかもしれないそういう“個人昇格”意識をプロのあり方として認めるのか、それとも寂しい、残念だととらえるのか。

一方で、カレンが多くの条件面で上回っていたはずの横浜FCを蹴って、この熊本を選んだというのも事実。これもまたいろいろな理由があるのでしょうが、そこには今わがチームが昇格戦線をうかがう位置にいるということも要素としてはあったのではないでしょうか。この位置にいるからこそ選手獲得市場でも熊本の“買い手としての価値”が変わってきたのではないかと。ならば、これがJ1昇格するならどうなのか。もしかしたら一気に売り手と買い手の立場が逆転してしまうのかも知れない。山形を見ているとその好例ではないかとも。あるいは過去でいえば甲府とか。好循環と呼んでいいようなサイクル。

ちょっと下世話な書き方になってしまいました。しかし、扉の隙間からちょっとだけ見えるJ1の世界って、それだけの魅力と価値があるのだろうと。日本のトップリーグであることには違いないし、だからこそ選手達もそこに登ろうと思うし、だからこそわれわれもチャンスがあるとき、チャレンジすべきときは躊躇せず“行く”べきなのだろう。ここぞというときのサイドバックのように…。勇気を持って。もちろんそのためには今すぐにでも始めなければならないことが山ほどありますし、われわれファンの手には負えそうもない問題・課題も沢山あるわけですが…。

節目の試合を終えたこの時期にして得失点差での5位。勝利を喜ぶだけに止まらず、こんなことを諸々考えさせてくれるとは思ってもいませんでした。来週はもう待ったなしで後半戦に突入。長い中断期もあって、どのチームも前回対戦のままのイメージで戦っては足元を掬われかねないと思います。どのチームも選手が入れ替わり、戦術も磨かれ、別のチームに変化していると思ったほうがいい。いや、そうでなければ戦っていけないリーグ。もちろん熊本もそうだし、昨シーズンとは言うまでもなく、開幕当初と比べてもその変貌ぶりには密かに驚いているところです…。

そして迎える後半戦。願わくば、本当に、望外の希みかも知れませんが、昇格戦線を懸けた痺れるような試合を経験したい。ここで勝てれば…、という試合にわれわれも立会い、向き合い、声を枯らして戦いたい。これまでの2年間は昇格阻止の戦いがゲームの大きさと言う意味では一番の喜びでしたが、今年はもしかして逆の立場に、受けてたつ立場になりたい。その時にはきっと、本当にJ1への重い扉が開き始め、(真夏の夜のつかの間の夢ではなく…)光り輝く緑のピッチがくっきりとその姿を現してくると思うのです。

さあ、次節、来週の対戦相手は草津。再開後は福岡に勝利、鳥栖に引き分けと、これまた前半戦とは別のチーム。そして中断期間を含めて約1ヶ月半ぶりにホームに帰ってくるわがチーム。ひさびさのKK。前節のエントリーでも書いたように、われわれにも強く感じられるチームの質的な変貌ぶり…。どんな変化と成長を遂げたのか。その姿を早く見たい。この目で確かめたい。そう強く思います。

7月18日(日) 2010 J2リーグ戦 第18節
北九州 2 - 2 熊本 (18:03/本城/5,072人)
得点者:22' 西弘則(熊本)、32' 池元友樹(北九州)、66' 松橋章太(熊本)、90'+4 佐野裕哉(北九州)


時間は第4審判が示した「3分」を既に回っていました。自陣のゴールに近いタッチラインからのスローイン。ヘッドで跳ね返したボールが、Pアーク付近にいた北九州の佐野の足元に収まり、撃たれる。そのシュートは味方のレオナルドの身体に当たって跳ね返される。しかし、再びボールは佐野の足元に。「ニアサイドが空いていたので冷静に蹴れた」というシュートは南の手をかすめ、熊本のゴールに突き刺さりました。沸きあがる本城の北九州ファン。センターサークルにボールが運ばれ、試合が再開されても、もうすぐに終了の笛が吹かれるのがわかっていました。勝ち点2がスルリと手のうちからこぼれていった瞬間でした。

実に1ヵ月以上に及ぶW杯による中断を経て、迎えた“リーグ再開”の試合。北九州・本城陸上競技場には、アウェーにもかかわらず1500人近くの赤い群衆が詰めかけました。それは中断期に日本代表の活躍に歓喜したものの、わがホームチームのゲームに飢えていた人々、ようやくの“再会”に歓喜している人々の姿に違いありませんでした。

中断期に敢行した島原キャンプでは、徹底的に身体を虐め、そして前半戦でもの足りなかった部分、主に攻撃の組み立て、得点力の改善について突き詰めたのだといいます。その“磨いて”きたものが見られるのか。ファンの興味はその一点につきました。

市村が痛んでいることもあり、右SBには筑城を配置。左にはこの中断期に浦和から期限付き移籍の堤を先発で起用してきました。そして左SHに平木、右には西。松橋と宇留野の2トップ。メンバーも布陣も、かなり手を加えた、新鮮な熊本の姿でした。

北九州 (先発フォーメーション)
 17中嶋 
 25大島 
9池元15ウエリントン
10佐野5桑原
8日高10重光
4長野13河端
 1水原 

序盤は北九州のウエリントンや大島が、上がった堤の左サイドのスペースを使ってきます。あるいは中盤で池元が奪ってロブ一本。大島が中央を破ってシュート。GK南がこれを防ぎました。北九州もこの再開の第一戦に期するものが高いのは間違いなく、アグレッシブに来る。ちょっと手こずる時間帯が続きます。

しかし熊本は22分、平木のくさびのボールを松橋がスルー。宇留野が受けて松橋。松橋から今度は左の西に繋ぐと、「トラップがうまくいったので」と言うとおり西がゴールを向いて打ち抜く。ため息がでるほどの美しい崩し。ボールは北九州ゴールに突き刺さりました。

ようやく火が付いた熊本。流れを掴みます。北九州のDFラインが下がり始める。松橋が左サイドに飛び出してマイナスパス。それを西がエリアに持ち込みまたマイナスパス。最後は松橋が撃つ。これはGKがクリア。右から持ち込んで吉井から西。西が左にはたくと宇留野がダイレクト。これは惜しくも枠を越える。熊本のアタッキングサードのギアチェンジが見られる時間帯。2列目、3列目から攻撃参加して数的優位を作る。サポーターのチャントのリズムも自然に上がってきます。

しかし32分、北九州の攻撃。重光のアーリークロスに、ちょっと慌てて帰る熊本のDF陣。エリアに入ってきたのは大津高で矢野や山内と同級の中嶋。この中嶋を筑城が倒したという判定。イエローが示されPKを献上します。これを池元が決めて同点。池元の今シーズン初得点でした。

振り出しに戻った試合。しかし高木監督にも選手にも(そしてわれわれにも)動揺は見られませんでした。相手の様子を見ながら、行くところと行かないところの判断。それは「果敢」という言葉とときにして同義語になりがちな「無謀」を戒める判断。見るものからすれば打開策のない時間帯にも見えました。そして全く前半と同じように熊本の時間帯とも言えないような瞬間。北九州の度重なるCKを遮ると、南のクリアを拾った平木が松橋に渡す。松橋が再び平木。平木が今度はサイドを駆け上がる西に。左サイドでもらった西、一瞬、タメをつくると、次の瞬間、勝負のアタック。北九州のDF二人を引きずってゴールラインぎりぎりでクロスを上げる。ファーに飛び込んでいたのは松橋。どんぴしゃのヘッドが突き刺さりました。追加点。「行くところ」の判断。単純にカウンターと片付けてしまうには、その構成感は格別なものがありました。全員のゴールに向う意識が統一された「果敢」な攻撃姿勢の結集でした。

リードを許した北九州。ベンチワークでなんとか反撃を試みます。レオナルド、関、小森田を入れてくる。しかし、熊本が作る2ライン3ラインのブロックが、それを防ぎます。北九州の攻撃にさほどの怖さは感じられず、想定の範囲内できっちり守っている。熊本も前線に少し“タメ”を作るために藤田、ファビオを相次いで投入。もしもう一点奪えれば駄目押しとなって北九州の息の根を止められるという感じでしたが、北九州の足もさすがに止まらない。残り5分になっての渡辺の投入は、ピッチ上の選手だけでなくファンにとっても“守り抜く”メッセージでした。そしてそのゲームマネジメントどおりの時間が過ぎていった。そんなロスタイムでした。

得点のシーンは、確実にこの中断期の厳しい練習で培ったもの、その成果を存分に見せてくれました。PKの判定は誰が見ても(スカパーの解説者自身も言っていたくらい)厳しすぎると言わざるを得ないものでした。いわば“事故”のような失点。それでもなおわれわれのチームは、その事故をも“織り込み済み”であるかのような微動だにしないメンタリティーを保ち、完璧にゲームをコントロールし、行くべき瞬間に勝負をかけ、さらに美しい追加点で突き放した。しかし。しかし、最後の最後で再び“事故”のような失点で勝ち点2を失いました。

「選手たちは責めることもできませんし、責めたいとも思っていません」。試合後の高木監督のコメントは、そんな気持ちを表しているのだと思うのです。「サッカーでは事故のような失点は1点は必ずおこりえるもの」というのが持論の高木監督。それが今節は2点もの事故に見舞われたのだという実感。これもサッカーの怖さなのだと…。

「つくづく試合に勝つことの難しさを痛感させられました」とブログで吐露している宇留野。南は「“詰めの甘さ”を克服していない現実を突き付けられた」と言うと同時に「あともう1歩。そういうところまでチームが成長してきてる」とも言っています。われわれが肌で感じたチームの“進歩”と“可能性”は、選手自身が一番、実感しているのでしょう。今は(今日のような日は)それが一番重要なことだと思います。結果に一喜一憂するのもファンの楽しみなら、この底堅い進化、チームのコアな部分が確実に強さを増してきている。本当に強いチームになろうとしている。こんな手ごたえを密かに噛み締めることもファンとしての醍醐味でしょう。サッカーの神様のいたずらを恨みながらも、待ちわびたホームチームの試合を満喫したこの週末。さぁ、われわれのリーグが再開しました。

W杯中断期、ここまで代表戦に関して書いて来たので、最後の戦いになってしまったパラグアイ戦についてもやっぱり触れておかなければ示しがつきませんね。

前夜の身内の飲み会で、同僚・先輩から真顔で、「どう予想してるんだ」と尋ねられ、「スコアレスドロー、PK戦で川島に神が舞いおりて、勝つ!」と言い放ちました。スコアレスドローの部分は両チームの置かれたポジションや背負っているものから見て、結構、根拠があったんですが。PK戦は全く当てずっぽうでした。

しかし、実際にゲームが始まって前半を終えたところでは、「これは90分の間に日本が勝つな」というのが実感でした。ポゼッション率はデータ上も相手にありましたが、カウンターが戦術のパラグアイに対して“逆に持たせている”ように思えました。守備は今日もきっちり崩れない。後半1点先に取れば勝利だと…。
けれど。結局、戦前の印象通り、両者リスクを犯さず、手堅く戦った前半の状況は最後まで続き、後半も、延長戦でも決着がつきませんでした。日本にとっては初のベスト8進出を賭けた戦いでしたし、それはパラグアイの方も全く同じ。慎重なうえに我慢を重ねたような120分間の死闘ともいえる時間のなかで、何度か勝利の女神が日本に微笑みかけたように見えたのですが、決着をPK戦にゆだねる段階にまで至ると、「ぷぃ」とどこかに女神が飛んで行ってしまったような気がします。

PK戦の結果は責められない。それはサッカーファンなら誰でも知っていることです。元来PK戦不要論者のオシム氏は、自身の監督時代、PK戦に及ぶとベンチに引っ込んでしまうことで有名でしたが、テレビ観戦のこの試合も、どこかに引っ込んでしまったのでしょうか。ただ試合後、「PK戦は誰かが失敗するまで続くゲーム。失敗者を必ず生み出す残酷なくじ引き。何も恥じることはない」と、不要論者らしく敗者を擁護しました。

「勝たせられなかったのは私の責任。わたしの執着心と執念が足りなかった」と試合後すぐに岡田監督はコメントしました。それは一見、駒野への攻撃や、選手たちへの批判を一身に受け止めようとするようにも見えますが、実は120分間、いえ前後半90分の間に決着をつけられなかった自身の指揮への悔恨の情がそう言わせたのだと思います。その点に関してもオシムは「もっと侍のように勇ましく戦うべきだった」という表現で勝敗の本質を突いていますね。“勇気”が欠けていたようだと。それが采配にも見受けられたと。

泣き崩れる駒野を支えるように歩く松井の目も真っ赤で、胸を締め付けられました。他にも敗戦という現実を前にして涙を流している選手が、この大会においては多かったような。いや、これまでの大会ではいなかったかも知れません。それだけこの敗戦が受け入れがたかったのだろう。悔しかったし、まだこのチームで戦いたかった。そんな気持ちが伝わってきます。

それに対して、「日本代表 感動をありがとう」というマスコミの論調、日本人の風潮に苦言を呈する批評家もいます。確かにこの決勝Tの1回戦の壁をまたしても乗り越えられなかったのは何故なのか、あの90分を振り返り、120分を見直し、そして予選Rも含めての“結果”を分析・整理することは、日本サッカー界にとって非常に重要な作業です。それはまた、本大会以前のアジア予選も含めた長い長い戦いの総括であり、あるいは、5年、10年という経緯でもあって。それはもう“結果”というようなものではなく、大きな流れであったり、様々な局面であったり、ピッチ上のことだけではない組織や体制や…。あの前回大会がうまく総括されなかったように、このまま「残念だった。でもよく頑張った」だけでは日本の進歩はないわけですから。

しかし一方で、この大会の日本代表のサッカーを見て、まず、その堂々とした戦いぶりに目を見張り、決勝T進出を喜び、PK戦にまでもつれた惜敗のシーンを見て、勇気をもらい、「自分も仕事を頑張ろう」「今の生活を頑張ってみよう」と思った人も少なくなかったのではないかと思います。惜しかったけど感動したし、代表というホームチームを、皆が胸を張って応援できた。元気をもらったということも。空港に出迎えたたくさんのファンを見て、「若い人が目を輝かせているのを見るのは大好きなので、それを見たときはジーンときた」と岡田監督に言わしめました。この期に及んでそういった事実を否定したり皮肉ったりすることを、決してわれわれは良しとはしない。

さて、日本代表ファンにとってのW杯は終わりましたが、そのなかからまた少しでも多くのサッカーファンが生まれ、準々決勝以降を観戦する人が増えていくといいなと思います。主将の責務を全うした長谷部はインタビューで、「次は、ほとんどの選手がJリーグでプレーしてるんで、足を運んで盛り上げてもらいたい」とコメントすることを忘れませんでした。前回、中田がそうしたように…。長谷部自身も含め海外でプレーする選手たちが主軸をなすようになった日本代表ですが、そもそも自国にしっかりしたリーグの基盤があり、それが母体になって次々に新しいタレント(才能)が現れないといけない。逆に、極東という地域的なハンデはあっても、海外の優秀なプレーヤーが流入してくるような魅力あるJリーグに成長していかなければならない。

そういう構造からしても、われわれのホームチーム自体がこの日本代表に繋がっている(ある意味支えている)ことを自覚しなければいけないし、このJ2というカテゴリーにもさらに高いレベルの戦いを求め続けなければいけない(私たち自身が)。そして代表戦にも決して負けない感動があることを、まだまだそれを体感したことのない人たちにも知って欲しい。ホームチームを応援する喜びこそ、サッカーを観る楽しみの原点なのだということを、もっともっと叫び続けていかなければいけない。そんなことを思いました。

と、まあ、何やら“サカくま”のサッカーの話しにしては実に偉そうなエントリーになってしましました。でも最後にこれだけは言わせてください。それでもとにかく勝ちたかった。勝って、次はスペインとの戦いで、俊輔のプレーを見たかったなあ。本当に、本当に。この目に、ワンタッチ、ワンタッチを全部焼き付けるようにして。見たかった…。どうしようもなく。悔しいなあ…。