今年も年の瀬にあたり年末のご挨拶を申し上げます。
などと呑気なことを考えているうちに、西選手の大分への完全移籍が発表され、心中穏やかではない年の暮れになってしまいました。昨年のシーズン途中にも関東の某チームからオファー(もしくは照会)があったと聞いています。Jの新人のなかでは初年度から出場機会を得て活躍した選手のひとりでしたから。今季の契約に関しても、複数年を提示したクラブ側に対して単年度に固執したともいわれる。自身の成長のためにチャンスを伺う姿勢はもともとあったのでしょう。

出場機会を求めたのか、金銭的条件を求めたのか。大分を選んだ理由は色々あるのでしょうが、その決め手になったことは何なのかわれわれにはわかりません。ただ、高木新体制下の今季は流れを変えるスーパーサブ的役割が増え、ベンチスタートを余儀なくされた。またチーム戦術が変化、進化していくなかで彼自身もさらに一皮剥ける必要があったのではないかと。そんなタイミングで示された新たな“縁”なのだと思います。

公式サイトに残された長文のコメントには相当葛藤した様子が浮かび上がります。「地元選手として多くの方に応援してもらい嬉しかったです」と彼自身が言っているように、そのプレースタイルとともに本当に愛された選手でした。それだけに余計に残念さも募りますが、選手移籍はこの世界の常。彼の決断を尊重して、次は“熊本スピリッツ”の選手として活躍を期待したいと、いささか諦めに近い心境で思います。もちろん、熊本と対戦するときは、盛大なブーイングを覚悟しといてもらいたいものですが…。

「薄紙を一枚一枚敷き重ねるような」と書いたのは、一昨年の「年末ご挨拶」でした。そしてそのとき「“永遠に続くものは何もない”」と書き、年明けに高橋泰の福岡移籍が発表されました。昨年は木島を始めとした大量の契約満了者。しかし、新しい選手との出会いもあり、チームは確実な飛躍を果たしました。そして今年も新たな別れ…。

来季はJ参入4年目に入ります。もはや“よちよち歩き”とか“新参者”などと言い訳してはいられない年数になってきました。ただ、われわれはファンとして、どうしても“慣れて”はいけないなと思っていることがあります。それは、ここですでに何度も言いましたが、この時期の選手移籍に関してのファンとしての気持ちの在りよう。契約満了選手に対して「当然だ」とか、オファーを出している選手に対して「いらない」などという、暴言を吐くようなファンにはなりたくないと。選手の人事異動に一喜一憂すること自体は当然ですが、常にわがチームの選手一人一人を愛し、リスペクトする姿勢は忘れないでいたいなと。熊本に来てくれてありがとう。われわれのホームチームの一員なんだという気持ち。それは忘れたくないと。

この厳しい選手市場での交渉戦術。われわれのクラブが提示できる、われわれのクラブの魅力は何なんだろうと改めて思います。さらに、今年は新しい制度下での契約交渉の難しさが顕著になってきているようにも思います。まさに各クラブの強化部門の手腕が試されるこの時期。池谷GMを始めとしたチーム統括本部スタッフの奮闘にこれからも期待しています。われらの戦友、首藤くんも、多分、夜遅くまで頑張っていることでしょう。しばらくはこのシーズンオフの選手異動を見守りたいと思います。

さて、われわれはと言えば、公私ともに、昨年にも増して激動の1年でした。なにはともあれ皆さんからいただく拍手に励まされ、なんとか1シーズン、欠かすことなくエントリーを書き続けることができました。本当にありがとうございました。

年が明ければ、やがてまた春が来て、新しいシーズンが訪れるでしょう。当たり前のように。そこに1ファンとして、ただただホームチームを応援できること。この喜びは何にも代えがたい、かけがえのないものに思えてなりません。

へだてゆく世々の面影かきくらし 雪とふりぬる年の暮れかな
藤原俊成女(新古今和歌集)

また暮れぬすぐれば夢のここちして 哀れはかなくつもる年かな
藤原定家(拾遺愚草)

旧サイトから数えてサカくま10年目の年の瀬、われわれが愛してやまない西選手の移籍に追い討ちをかけるような雪混じりの冷たい雨…。ちょっと感傷的な気分になってしまいましたが、気を取り直して、年末のご挨拶を申し上げます。どうか皆さん、どうかよいお年をお迎え下さい。

2010.12.30 大津初戦敗退
12月30日高校サッカー選手権1回戦(国立競技場)
大津 1-2 駒大高
得点者:前半7'高平(駒大高)、前半17'若杉(大津)、後半27'須貝(駒大高)

監督 平岡和徳
GK 村越大暢 (3)186センチ(大津北中)
DF 遠山慧太 (3)174センチ(小川中)
 〃 成松広大 (2)173センチ(ブレイズ熊本)
 〃◎藤本貴士 (3)180センチ(UKI-C)
 〃 植田直通 (1)185センチ(住吉中)
MF 中村次郎 (3)176センチ(大津北中)
 〃 佐藤寛貴 (2)174センチ(大分トリニータ)
 〃 車屋紳太郎(3)179センチ(長嶺中)
FW 米良知記 (3)181センチ(フォルテ熊本)
MF 若杉拓哉 (2)180センチ(山鹿中)
 〃 宮本清史朗(3)165センチ(ランザ熊本)
DF 本田瑞貴 (3)167センチ(ブレイズ熊本)
 〃 宮崎祐介 (3)176センチ(ランザ熊本)
MF 豊川雄太 (1)171センチ(MARRY GOLD)
 〃 笹嶋龍馬 (2)165センチ(坂瀬川中)
GK 松永安彦 (2)176センチ(合志中)
MF 吉川誠人 (3)167センチ(八代八中)
DF 守田優生 (3)171センチ(ESPADA)
FW 高本哲平 (2)180センチ(ブレイズ熊本)
MF 野田卓宏 (1)170センチ( 〃 )
GK 下田健司 (3)174センチ(UKI-C)
DF 佐々木祐介(2)185センチ(ブレイズ熊本)
 〃 山下純平 (1)177センチ( 〃 )
MF 村上順哉 (1)171センチ( 〃 )
FW 冨永幸伸 (1)182センチ(菊陽中)
※背番号順。左からポジション、名前、学年、身長、前所属チーム。◎は主将

このオフシーズンのJリーグ。特にJ1の契約満了者が例年になく多いせいか、移籍市場が落ち着かず、わがクラブの発表も契約更新を含めて遅れがちのような気がします。そんななか、早々とオファーを出していた元日本代表FW・柳沢については断念し、横浜FCからGK岩丸の獲得、柏から武富の期限付き移籍、そして昨日今日、南を始めてとして多くの契約更新が発表されました。南については、誰もが認める今年の躍進の立役者だっただけに、また、一方で今オフも他チームからのオファーの話があったやに聞いていただけに、まずはホッと胸を撫で下ろした次第です。

さて、年の瀬も押し迫ったこの時期。例年、表題のように「わがクラブが今季積み上げたもの」を振り返るというのが恒例行事ではありますが。これもすでに熊日を始め各媒体で繰り返し企画されており、また、その内容にも多くの人が異論のないところだろうと思われ、改めてテーマにすべきか迷ったところです。しかし、結果的には同じようなことを書くことになりますが、後々われわれ自身が見返すときの2010年シーズンの備忘録になればとも思い、書き留めておこうと思います。

まずはチームとして今年積み上げたものから。“積み上げたもの”、ということでいくとやはり“昨シーズンと比べて”の視点ということでしょうが、長いシーズンを戦い終えた今では、昨シーズンというのが、とても遠いものになっていて…。さて昨年のオフシーズン、われわれを驚かせたのは、高木琢也氏の新監督就任人事。この横浜FCをJ1昇格に導いたこともあるこの若き指揮官が、最初に着手したのは守備の再構築でした。攻撃に偏重し、まるで二人のCBとGK任せともいえた昨年の守備を、高木監督は組織的に連動して守ることでその三人にかかる負担を減らしました。福王、矢野の成長ももちろんありましたが、新加入の筑城が執拗なまでに1対1の強さを示し、市村が怪我で長期離脱の穴はレッズからレンタルの堤とともにサイドを埋めました。シーズン序盤は、どうしても後ろに意識がいきがちでしたが、終盤は積極的な攻撃参加が目立ち始め、リーグ初得点もマークしました。

しかし、その守備の再構築に最も貢献した、軸となったといえるのは、新守護神・南の存在だったでしょう。最後列からの的確な指示は守備ラインに安心感を与え、最後の最後はビッグセーブでゴールマウスを死守する。南が危ないところを防いで勝ちを拾った試合が何度もありました。また、南はピッチ内外でも選手たちの精神的リーダーのようでした。「ここの選手たちは“昇格”という言葉を使わない」と南が嘆いたように、これまでの歩みのなかでごく自然に身についてしまった“下位の潜在意識”“弱小のメンタル”。これを粘り強く一枚、一枚剥がしていってくれたのも南の功績ではなかったでしょうか。「勝つことの喜びを感じた一年」。シーズンを振り返った福王の言葉が如実に物語っているように思います。

もうひとつ高木監督が目指していた「攻守の切り替えの速さ」も、シーズン終盤になってチーム全体が機能するようになりました。一概に高木熊本は引いて守ると言われがちですが、実はそうではないとわれわれは思っています。監督が常々言っているようにサッカーには攻める局面と守る局面、そして当然、攻めから守りに切り替わる局面、守りから攻めに転じる局面がある。その切り替えの局面をいかに速くできるかというのが高木監督の考え方であり、現代サッカーがすべからく目指すところです。まず、攻から守への切り替えの速さは、シーズン当初の段階から目を見張るものがありました。ただ、守から攻への切り替えに関しては、例えば福岡との第2戦での松橋の2点目、あるいはホーム最終・北九州戦でのカレンの2点目などに現れてはいますが、まだ攻撃に転じる際のパスミスや関与する人数の厚みに関して不満が残ります。特に両ボランチに関しては今季得点ゼロが表しているように、守備に比重を置くあまり、攻撃への関与が少なかった気がします。

いずれにしても勝敗を分けたのは、ハードワークが出来るかどうかという基本的なことではなかったでしょうか。それに関してはまだまだチームとして試合ごとに波がありましたね。そしてシーズン中のレポートでも書いたとおり、追いつかれて残念ながら引き分けとした試合が多かったし、先制されても必ず逆転する“凄み”のような強さにはまだ至らなかった。そういう意味でまだまだ“強者のメンタリティー”は身についていないし、高木監督が当初標榜した「残り15分に走り勝つ力」という目標は、さらに来季に持ち越されたと言ってもいいかも知れません。オフが明けたらさらに厳しい“走る”トレーニングが待っていることでしょう。

ただJ昇格後、クラブとして初めて明確に示した「10位以内」という順位目標に対して、最終的には7位という地位を確保しました。それも一度も10位を下回ることなく。連敗が一度だけという、安定した(崩れなかった)戦いぶりだったということでしょう。これはシーズン前の準備、シーズン中のマネジメント、そして、相当に厚くなった選手層がもたらしたものでしょう。一時は3位という高い位置からリーグを眺め、終盤に至るまで昇格圏内を覗いていた。この事実、この経験は、わがクラブ、われわれファンにとってもかけがえのないものになりました。J1昇格が“夢物語”ではなく、十分に可能性のあるもの、手が届くものとして現実的に考えられる。言葉として言える。多くのファンもそんな意識の変化を感じた節目のような年でした。

堤、片山、カレン(それにファビオも)など、シーズン途中から加入した選手が、それぞれスタメンに名を連ね、力を発揮し、選手層を厚くしたのも今季の特筆すべき点ではなかったでしょうか。獲得までの経緯はそれぞれに違うものの、プレースタイルに特徴を持った彼らが、起用のオプションを増やし、戦術の幅を広げ、またチームの息切れを防いだことは間違いありません。これまでは他チームが途中補強を行うのをただ見ているしかなかった熊本。そしてこれは資金的な問題で実行できたと言うより、新しく招いた飯田氏、清川ヘッドを始めとした新スタッフの、池谷GMや高木監督を補佐する働きが寄与していたのではないかと。表立っては見えませんが、昨年までとは大きく違う展開ではないだろうかと見ています。現場、フロント全体が組織として機能し始めたような印象を受けたところですね。

さらにクラブとしては、県が県民運動公園の優先的使用と交流施設(クラブハウス)建設のプランを示してくれたことも大きな前進でした。それは今季のこの好成績によるところばかりでなく、日ごろから地道に続けているサッカー教室や施設慰問などの地域貢献も評価されてのことだと思われます。そういう意味では選手たちだけでなく、スタッフを含めたクラブ全員の労苦に拍手を送りたいと思うのです。

シーズン半ば、リーグ当局は昇格圏を伺うJ2の数チームに対して財政調査と指導を行ったと聞きます。J1昇格のためには、成績面だけでなくクラブ財政に関しても一定の条件があります。そして、福岡とともにわが熊本も可能性としてその対象に選ばれた。その後直ちに、クラブは債務超過解消のための増資を呼びかけました。6000万円という額はまだ目標には至っていないものの、そうして一歩一歩、環境を整え、基礎体力を蓄えるという作業も進んでいる。こんな厳しい経済環境下、増資に応じていただいた企業の篤志にも大いに感謝の拍手を送りたいものです。

チームとしてもクラブとしても、そんな多くの前進があったこの1年でした。以前、「薄紙を一枚一枚重ねるような」と表現した頃からすれば、今年積み上げたものはまた格別の厚みを感じます。ただ同時に、もし「南を始めとした主力選手が移籍してしまったら…」「成長してきた若い選手が引き抜かれたら…」という不安が胸をよぎるのも確かでした。どちらかと言えば足し算ばかりだったこれまでと違って、これからは引き算もあるかも知れない。それはわれわれにとっても全く新しい感覚でした。「毎年毎年、波がさらっていく海辺に作り続ける砂の城だ」と、J2の中位からなかなか抜け出せないどこかのサポーターが嘆いてみせたシニカルな例え話に似て。それもリーグの上位を臨めばこその意識変化なのでしょうが、そんな悪循環、負のスパイラルは構造的でもあり、逃れようのない一面も持っています。まだまだと足踏みをしているとわれわれもハマってしまいかねない。夢の扉に手が掛ったら、一気に突き破る。そんな勢いやチームを取り囲む全体の意識の“切り替えの速さ”も必要なのかもしれませんね。


恒例と言うほどのものでもありませんが、昨年もシーズン終了後のこの時期、みなさんからいただいた拍手の数をもとにサカくまなりのベストゲームを選定し、シーズンを振り返ってみました。さて今季はどうでしょうか。

昨年も書きましたとおり「この拍手。われわれの駄文の出来、不出来とは関係なく、また、最近では勝敗さえもあまり差が無くなってきたような。まさしく“試合内容”に比例する、“選手たちへの拍手”なんだな。というのが実感です。」「そして、せっかくいただいたもの(拍手)です、今回は(今日現在での)各エントリーへの拍手数でもって、今シーズンのベストゲームを選んでみようと思い立ちました。シーズンを通して積み上げられた“数字”。こうやって結果をお返しして、オフシーズンの楽しみにすることも許していただけるのではと思います」という趣旨であります。以下ベスト3の試合です。

1位(117拍手)
4月24日(土) 2010 J2リーグ戦 第8節
熊本 1 - 3 柏 (13:03/水前寺/5,156人)
得点者:26' 近藤直也(柏)、30' オウンゴ-ル(柏)、61' フランサ(柏)、70' 松橋章太(熊本)
第1位がいきなり負けゲームということになりました。柏と初めて対戦したこのゲームがなんと第1位。熊本の新たな守護神・南の古巣というだけでなく、なにかと縁の深い柏との初対戦は、単なるリーグ戦のなかの一試合では片付けられない、どこかメモリアルな雰囲気を漂わせていました。松橋が一矢報いたものの柏との力の差は明らかで。しかし、そんな強豪に臆することなく戦った選手たち。そして、われわれのチームは、クラブは、もう“よちよち歩き”ではないんだと。負けはしたけれど、“なにかと縁の深い柏”に対して熊本なりにきちんと挨拶ができて、どこか満たされたような、そんな気持ちにさせられた試合でした。

2位(105拍手)
3月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第1節
熊本 1 - 1 千葉 (15:05/熊本/9,101人)
得点者:60' 倉田秋(千葉)、90'+4 市村篤司(熊本)
第2位は開幕戦、千葉とのゲーム。忘れもしない市村の終了間際の同点ゴール。開幕戦でいきなりのJ1降格チームとの初対戦。といってもその直前に練習試合でボコボコにやられていただけに、どれほどのゲームができるのか大いに不安がありました。しかし蓋を開けてみれば先発起用の井畑がポスト役を果たす。松橋が裏を突く。守ってはコンパクトな陣形でゾーンディフェンスを見せる。高木監督に鍛えられた新生熊本が千葉を苦しめます。途中投入の倉田が奏功して千葉が先制すると、江尻監督は勝利を確信したのでしょう、今ビデオを見返しても満面の笑みをベンチで浮かべています。しかしその一瞬の心のスキを突いて、その表情を一変させたのは、ロスタイムも終わりに近い市村のゴール。そして「残り15分に点を取れるチーム」という今季掲げたスローガン。開幕戦で早速、見せてくれました。試合後、傷心の江尻監督のまるで敗者のような“負け惜しみ”のコメントはわれわれの間でもちょっと語り草になったほどです。

3位(84拍手)
10月3日(日) 2010 J2リーグ戦 第29節
熊本 2 - 1 福岡 (16:03/熊本/16,098人)
得点者:27' 松橋章太(熊本)、51' 松橋章太(熊本)、82' 高橋泰(福岡)
第3位は福岡との後半戦のこの試合でした。第1クールでの思わぬ大敗。その悔しい思い、そのリベンジに賭けたみんなの気持ちがこの拍手数に表れたと思いました。球際に厳しく、セカンドも必死で拾って、奪っては全員速攻という、これもまた今季のチームが掲げたテーマがしっかりと達成された内容のある勝利でした。途中投入の高橋にPKを献上したものの、現在の熊本のエースがきっちりと2点とって勝った。実に気持ちのいいゲームでしたね。

ちなみに4位(82拍手)は
4月18日(日) 2010 J2リーグ戦 第7節
横浜FC 1 - 2 熊本 (16:03/ニッパ球/3,553人)
得点者:56' 西弘則(熊本)、64' 西田剛(横浜FC)、68' オウンゴ-ル(熊本)

5位(80拍手)は
7月24日(土) 2010 J2リーグ戦 第19節
富山 0 - 2 熊本 (18:04/富山/3,427人)
得点者:40' カレンロバート(熊本)、61' 平木良樹(熊本)
ということでした。

もちろんこの他にも記憶に残るゲームはたくさんあります。みなさんはいかがでしたでしょうか?

ちなみに拍手数とは関係なくわれわれが今季一番、ベストゲームとして挙げたいのは、ゲーム内容からは言えば10月31日(日)第32節の鳥栖との試合。最も印象に残るという点では9月19日(日) 第26節の甲府戦でしょうか。前者は「完成されたゾーンプレス」と題したように、高木監督が今シーズン掲げた、守備から入るシステムの一定の完成形を見たような気がしましたし、後者はこれまで苦手意識のあった甲府(われわれにとっての強豪、壁となって立ちはだかっていたチーム)に対して2度、3度と追いつく“強さ”“しぶとさ”を見せました。いずれもわれわれのチームが今季積み上げたものを、決してラッキーでなく、間違いない到達点としてこの目で確かめられたという意味でも、選手たちに拍手を送りたい試合でした。

以上、こうやってシーズン、ゲームを思い返してみて、ひとつ意外な思いに囚われています。昨年、あるいはそれ以前のこの時期にこうやってシーズンを振り返っていたときと比べて、微妙に感慨の深さが違うという“感覚”です。何と言えばいいのか、個々のゲームの内容や結果に対するわれわれの“一喜一憂の度合い”が違ってきたというのか。とんでもないミス、やりきれない連敗。そしてそれとコントラストをなすような胸のすくような勝利、意外性の連続。そんなハラハラ、ドキドキのシーズンだったこれまでと比べて、はるかに安定感が増した今シーズンの戦いぶりが、われわれ自身の観戦モードも落ち着かせてしまったのか…。

これからJ2上位、そして昇格争いをするチームへとさらに“進化”を遂げるであろうわがホームチーム。J2というカテゴリーの上位から、J1への昇格を狙うという特殊なポジション。その戦いはさらに、戦術的にはより緻密に、確率を重視した“数字にこだわる”ようなサッカーへと変化せざるを得ないのではないかと。さて、では、われわれはその戦いぶりをどこから、どう見ていくのか。さらなる面白さをどう見出していくのか。この“サカくま”もHPスタイルでのスタートから数えて、10年一区切りのシーズンを終えました。まさにこの時期に感じるファンとしての節目感。このオフシーズン、ちょっとゆっくり考えてみたいテーマだなと思います。

12月4日(土) 2010 J2リーグ戦 第38節
札幌 4 - 0 熊本 (12:34/札幌ド/14,299人)
得点者:31' 三上陽輔(札幌)、64' 砂川誠(札幌)、75' 西嶋弘之(札幌)、86' 三上陽輔(札幌)

「要はまだまだ大人のチームになりきれてなかった」(J‘sゴール)ということだと、高木監督は今日の試合を言い表しました。前半と後半で別のチームになってしまった。3点目のミドルシュートに身体を張る選手がいなかったと。つまりは、アゲンストの状況のときに気持ちの表れる選手がいなかった。ひっくり返そうとチームを引っ張る選手がいなかった。そう言いたいのではないでしょうか。同じように、このことが今シーズンを通してのチームの課題であったし、その象徴的なゲームを最終節で見たということだと思いました。

札 幌
 31三上 
 32高木 
8砂川7藤田
18芳賀23岩沼
3藤山6西嶋
4石川2吉弘
 1佐藤 

熊 本
32カレン 10松橋
33片山23西
8原田30渡辺
19堤24筑城
6福王16矢野
 18南 

試合の入り方もよく、前半は五分五分か幾分熊本の方に部がありました。中盤で奪ったボールをカレンがドリブルで持ち込むと、市船の同級生、札幌のGK佐藤に挨拶代わりのシュート。枠は外れますが、まるで前節の2ゴールで吹っ切れたかのように、積極的にゴールを目指します。西のドリブルから松橋をポストに使い片山がミドルを放つ。今度は右サイドでカレンとワンツーから抜け出した西がドリブルで切り裂きGKと1対1。シュートはGKがパンチングで逃れますが、これを拾った松橋から原田。原田のミドルがDFラインでこぼれてきたところをカレンがすばやく撃つ。しかしGK佐藤がしっかりキープしました。

「あそこでしっかり決めなければ苦しくなる」。試合後カレンがコメントしたのはこの時間帯のことを指していました。その後もセカンドを拾い、繋いでいく熊本でしたが、札幌のプレスに少しずつ遅れ始める。両者アグレッシブに戦い、攻守入れ替わりの激しい展開。まさにそのせめぎあいの最中でした。

札幌、DFラインから出たロングボールを、左サイドで高木がタメながら砂川の上がりを待つと砂川に預ける。熊本守備陣がニアに入ってきた札幌の選手に引き寄せられると、スピードに乗った砂川がダイレクトにクロスを入れた先にはフリーの三上。弱冠18歳。これをダイレクトで捕らえてボレーシュート。南も横っ飛びで防ごうとしましたが、ゴールに突き刺さり、札幌が先制点を上げました。

その後しばらくは札幌の時間帯。ロングパスに砂川がDFの裏を取ると南と1対1。しかしこれは南が果敢に飛び出してセーブ。熊本は福王のサイドチェンジに筑城を走らせ、松橋に繋ぐと強烈なミドル。これはパンチングで防がれる。札幌も岩沼からDF裏へのパスに高木が反応。Pエリアに入って撃たれますが、シュートはポストの右に反れて事なきを得ました。

1点のビハインドを追う熊本は、後半開始から筑城に代えて市村を投入。SBながら高い位置を取らせます。右サイド奥にドリブルで仕掛けるものの、DF二人に阻まれる。カレンのポストプレーなどから片山が得意のミドルを何本も放ちますが、今日は枠を捕らえきれない。逆に、最終節ホームのサポーターのドーム中に反響するような声援を後ろ盾にした札幌の圧力は衰えるどころか増すばかり。高い位置でのボール奪取を狙っている。

渡辺を諦めて、中盤運動量の多い吉井を投入したその直後でした。DFラインでポスト役を演じようとした砂川を矢野が後ろから倒してファール。Pアークやや左からのFKに立ったのは砂川自身。右足で放たれたボールは、ギリギリ壁を越えるとゴール左に突き刺さる。南も見送るしかない絶妙のFKで追加点を上げます。

そしてここが冒頭述べたような分岐点。せめぎ合いのバランスがセットプレーという“アクシデント”で相手側に傾いたこの試合の潮目。決してチーム力として劣っているわけではないのに、しかし、ここからこの2点を追い、それを覆してやろうという気力と体力が熊本には感じられませんでした。札幌のプレスは衰えを知らず、熊本は自陣から押し上げが効かない。中盤で前を向かせてもらえず、最終ラインからのロングパス頼みの展開。そして前線では納めきれず、選手間の距離は開くという悪循環。守っては組織的なプレスが寸断されたように、札幌の動きの方が早い。さすがに遠いアウェー移動に疲れがあるのかとも見えました。

札幌の波状攻撃を跳ね返し続けたものの、再び拾われ続けると、75分、浅いクリアボールを上がってきたDF西嶋に中央からミドルで撃たれて3点目。86分には、カウンター気味に持ち込まれると左サイドを藤田にえぐられマイナスパスを送られる。中央で待っていたのはまたしても三上。ダイレクトで撃たれるとポストに当たったシュートは、ゴールマウスに転がりこみ4点目となりました。

熊本はその前に西に代えて宇留野を投入しましたが奏功せず。終盤、カウンターからカレン、松橋と渡ってエリアに入りますがシュートは枠の上。あるいは原田のFKをGKがパンチングで逃れたボールが福王にこぼれ、これをループで狙いますがバーの上。市村が右サイドをえぐって上げたクロスに、カレンがジャンピングボレーで合わせますが、これも大きく外れる。とうとう一矢も報いることなく、大敗で敵地に膝をつきました。

振り返ってみれば、熊本はこの札幌ドームのピッチに立つのは初めての経験でした。1万4千人が詰め掛けた最終戦。その発するチャントが、天井に反響し怒涛のように押し寄せるドームならではの独特の雰囲気。少しその雰囲気に臆し、あるいは選手どうしのカバーや指示の声も届き難かったのかも知れません。それよりなにより、今日は8年という在籍期間を終え契約満了になった札幌・砂川に対して、試合前に示されたゴール裏の「8」の字のコレオ。「オレたちの砂川」のチャント。それに応えるような砂川自身の奮闘と、それに鼓舞された周りの選手たちの勝利への渇望が熊本を上回ったような気もします。試合終了間際にも再び示されたゴール裏の「8」のコレオを見て、画面に映し出される砂川の目も少し充血しているように見え、ファンから愛された選手だったことが痛いほどわかりました。

冬の到来を感じさせる悪天候の中、北の大地まで応援に駆けつけた熊本のゴール裏のサポーターたちは、敵地で肩を落とす選手たちに拍手を送ってくれました。それはテレビ画面越しに声援を送った多くの熊本に居るサポーターたちの気持ちも代弁した、本当の最終節に贈られた、選手たちへのこの1年の慰労と感謝の拍手でした。

シュート数は札幌の9を上回る16。しかし、いかんせん完全に崩しきったシュートではなく、ゴールを割ることはできませんでした。もちろん、この試合は、その総括とは別に、今季全体の総括がいずれ色々なメディアでなされ、また当然われわれも考察したいと思いますが、現時点では、当日の自身のブログで南が「最終戦」と題して書いていることに言い尽くされているように思います。

「今年の悪い試合を象徴するような展開だった」としながら、来季への課題については今季の数字が物語っていると。それは①得点の少なさ。それは一概にFWだけの責任ではなくボランチを含めた2列目の得点が少ないと。②セットプレーからの得点が少ないこと。③もっと攻撃の時間を増やし守備の時間を減らすこと。そしてこの試合がそうであったように、④逆転勝ちが極端に少ないこと。「それにはリードされても慌てず折れない強いメンタリティーと自分たちへの自信がもっともっと必要」だと書く南。それは冒頭の「まだまだ大人のチームになりきれていない」という高木監督の言葉とも相通じるものがあるように思います。確かにリードした側が、いつ逆転されるかとビクビクするようなチームってありますよね。

またまた記録を遡れば、J昇格後の過去3シリーズ。終盤負けなしの好調を続けながらも、最終節は1年目が広島、去年が甲府、そして今年はこの札幌と必ず黒星を喫している事実が浮かび上がります。これもまた、慢心に陥らず次季に課題を持って繋げることだと思えばそれも良しなのですが。昇格から3年。今年もまた“積み上げたもの”と、まだ“足りないもの”を知ったという意味で…。

それは特に今季、最終的に落ち着いた7位という順位。これは目標の10位以内を確実に勝ち取ったものであり、前年の14位から確実に“積み上げたもの”の大きさ示すものです。また連敗は第28節・29節の一回だけ。いかに積み上げた土台がしっかり固まってきたか…。しかし、一方では同時に柏、甲府、福岡というJ1昇格組との間にある、歴然とした力の差をハッキリと認識したシーズンでもありました。まさしく“足りないもの”を…。

最終節で苦杯を舐めつつ今シーズンを振り返る、そんな複雑な心境を一番言い表している言葉は、今季2年目の熊本のシーズンをおくった宇留野のブログにありました。「過信したままで終わらなくてよかった」「じゃなきゃ来年J1を意識して戦う上で痛い目にあうから」と言いつつ、しかし「このクラブ、選手はこの一年で見違える程成長した」「そして『ロアッソ熊本』には無限大の可能性を秘めている」と記した宇留野。

“有終の美”は来年までお預け。いや、ある意味では今季のわれわれの戦いは前節ホーム最終戦で終わっていて、札幌戦はすでに来期への第一歩だったのかも知れません。ここで見えた課題はなかなかやっかいで、しかしここを乗り越えないと次には進めない。オフシーズン、チームがさらに進化していくためのモチベーションにしたいものです。それこそ来季の目標=“昇格”を現実のものとして語れる骨格ということでしょう。来季が待ち遠しい。すでに思いはそこに飛んでいる。完敗ではありましたが、逆にそんな気持ちをかきたてられた最終節でした。