5月28日(土) 2011 J2リーグ戦 第14節
横浜FC 1 - 2 熊本 (16:03/ニッパ球/1,853人)
得点者:5' 吉井孝輔(熊本)、21' ファビーニョ(横浜FC)、41' エジミウソン(熊本)


駄目押しの追加点で突き放すことはできなかったものの、1点差をがっちりと守った熊本。今季初めてのアウェーでの勝利は、上位陣がそれぞれ勝ち点3を積みあげたこの大事な「節」で、それにしっかり喰らいついていくという確かな「結果」を伴う、大きな価値のある勝利でした。

台風2号の影響で時折、強い雨の降り続くニッパツ三ツ沢球技場。19位に沈む横浜はしかし、このホーム戦で連敗から脱したい。そんな強いモチベーションで待ち構えているだろう相手。難しい試合になりそうな気がしていました。

横浜FC
10カイオ 25藤田
6高地17寺田
5八角8ファビーニョ
16宮崎2柳沢
26中野27朴
 31関 

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
22吉井23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
16矢野4廣井
 18南 

先制点は5分。中盤でショートパスを繋いでバイタルから仲間が強引にシュートを打つと、横浜のボランチ・ファビーニョにブロックされる。ところがこのこぼれ球を右から入ってきた吉井が拾い、狙いすましてミドルを放つ。抑えた弾道は糸を引くような美しい直線を描き、横浜のゴールネットに突き刺さりました。

「このゲームに向けた彼のトレーニングの中の1シーンが、あのゴールとしてでた」という高木監督。練習のときから精度のいいミドルシュートを連発していたらしい。今季初先発となった吉井。この日は、2点目のアシストもあり、監督の期待に十分に応えました。

しかし横浜もホームでこのまま下を向くわけにはいかない。開始早々の失点から気持ちを切り替えて押し込んでくる様は、まるで前節の“うち”のようでもありました。怪我から復帰した八角と、ファビーニョで中盤を締めると、左SBの宮崎を積極的に上がらせる。熊本陣内でしつこく拾い、ショートパスでリズムを作ると、迎えた21分のCKのチャンス。熊本のクリアを再び拾った高地、一瞬、熊本のマークが外れた隙に意表を突いてグラウンダーでゴール前に入れる。このクリアのこぼれ球をファビーニョに押し込まれてしまい、同点とされます。

気をよくした横浜が、このまま追加点を奪いに攻勢を掛け続けます。熊本は後ろで回しているうちに詰め寄られてピンチを招く場面も。打開のカードは武富でした。ちょうど草津戦のときのように、今日の仲間は強靭な横浜DF陣にブロックされて前を向けない、動きながらのトラップはボールが収まらず、横浜の攻撃の起点にされていました。しかし、指揮官のこの前半のうちの交替カードが、見事に奏功します。

右サイドのアタッキングゾーンで、果敢に仕掛けた武富が倒される。このFKから繋いだ吉井のシュートは弱くて横浜がカウンター気味に反攻。ところが、ハーフウェイラインで熊本がインターセプトすると、まだ敵陣に残っていた廣井がすばやく右の根占に送る。抉った根占からのマイナスパスを長沢が強烈なシュート。これはGKが跳ね返したものの、こぼれ球に右から吉井が詰める。つり出されたGKを冷静に見極めて、吉井は中央のエジミウソンへのパスを選択。エジミウソンは無人のゴールに落ち着いて流し込むばかりでした。いい時間帯での勝ち越し弾。久しぶりにきれいに崩しきったゴールを見たような気がします。

その後は、後半も点が動かない試合で、結果的にはこれが決勝点。しかし、この後半こそ熊本の真骨頂。今季の強さを地味に示すものだったかも知れません。57分、後方で矢野が奪い、原田、武富と前線までつなぎ、フィニッシュまで持ち込んだシーン。この日のスカパー!の解説者・加藤久氏が、「横浜の中盤が空いてきた」「熊本の攻守の切り替えに対して、横浜のアタックの数が足りてない」。つまり熊本についていけてない、(この場面はファビーニョ)と指摘したシーンがありました。奪われたカイオが奪い返すアクションを諦め、ガックリと頭を垂れたシーン。われわれも「オッ!」と思ったくらい、その後の横浜の詰めがなかった。

その後も加藤氏は、しみじみとした口調で、熊本を評価してくれていましたね。熊本は90分間、切れることなくハードワークできている。集中できていると。前線の選手が守備をし、10人でしっかり守って、それが安定してできている。守備のときに動けてないと、使ってもらえないのでは…。チームとしての戦い方を選手がよく理解している。だから選手が誰であってもチームとしてのパフォーマンスが落ちない。「シーズンを通して崩れないのではないか」とまでのリップサービスぶりでした。

今節、0-5で鳥栖に大敗した水戸の柱谷監督が面白いコメントをしています(J's GOAL)。試合の完敗を認めたあと、「自分は鳥栖のようなチームを作りたい」と。松本育夫さんがつくった、ハードワークのできるチームを…と。振り返って、岸野・横浜とのこの試合。横浜は90分間のハードワークができていたかどうか…。元鳥栖の監督、鳥栖の選手が闘っても、鳥栖のようなチームにならない。そこが難しい。

戦術的な対応も際立った試合ではなかったでしょうか。吉井の起用も“大当たり”でしたが、仲間から武富への思い切った早めの交代が前半のうちの追加点につながった。ハーフタイムまで待たずに、試合の流れを企図して変えた。一方の横浜も後半、野崎、難波、最後は三浦カズと繰り出していきますが、その度に高地や八角、宮崎といった、それまでこちらが厄介だと思っていた選手を引っ込めてくれる結果になった。そしてそのシステム変更の度に、カイオがどんどんゴールから遠いポジションに下がっていってくれました。

そうそう。根占が片山に代わって退くときに、この日のゲームのキャプテンマークも引き継ぐシーンがありましたね。いずれも横浜FCが古巣の選手。三ツ沢で古巣を敵として戦う選手をゲームキャプテンとして指名した高木監督の、心憎いばかりの人心掌握術といえるのか…。そういえば前節は、ポジションチェンジしてSBに入った原田をキャプテンに指名していた。その原田が作ったゲームが前節だったと言っても過言ではないでしょう。

アディショナルタイムは5分。わずか1点差を守り抜く熊本にとってはとても長く、画面越しに見守るしかないわれわれにとっては、苦痛の時間に思えました。そこにはピッチ内に乗り出さんばかりに大声で指示を送る高木監督が映し出されていました。勝ちきりたいという気持ちが前面に出て。

先週号のサッカーダイジェストでは、根占、廣井、岩丸の3人が高木監督について語っていました。選手への声の掛け方が、そのタイミングも含めて絶妙なのだと。昔読んだ雑誌でも同じようなことが書かれていて、一度このブログでも紹介しましたね。そしてそれは高木監督が、横浜FCというチームをJ1に昇格させたときの記事でもありました。根占からキャプテンマークが片山に渡されるシーン。あるいは三ツ沢のピッチサイドで声を張り上げる高木監督の姿を見ながら、そんなことがふと頭をよぎりました。

雨のなか、最後の最後まで声を張り上げ後押しを続けた関東サポを中心としたゴール裏。今日もスカパーを通じた声はクリアに通っていました。われわれのチームは、最後までハラハラ、ドキドキ、気をもたせるチームではありますが。実にこの日、横浜FCに与えたシュートの数は3。後半に至っては1本という公式結果です。シュートを打たせない確率論のサッカー。全員が黒子に徹し走りきるサッカー。ハードワークしなければいけないと口やかましく言わなければならない段階は、いつの間にか終えてしまっているのかなと。もしかしてハードワークのDNAが根付きつつあるのかなと。そう思えた一戦でした。


5月21日(土) 2011 J2リーグ戦 第13節
熊本 1 - 1 千葉 (13:04/水前寺/4,349人)
得点者:3' 竹内彬(千葉)、24' 長沢駿(熊本)


最近、というか高木監督が就任してから特に、試合後の監督コメントを読んで、この戦術家がその試合に臨んだスカウティングやゲームプランを、素人分析ながらもあれこれと推測することが、われわれの楽しみのひとつになってきていますが…。今節は特に「ほぼパーフェクトなゲームができた」とまで言わしめた。とびっきりのビッグワードです。これはもう当然、その言葉の真意を測らざるを得ませんよね。

もちろん勝ち点差4で迎えた首位チームとの直接対決は、序盤戦での大一番といえました。その重要性のなかで、相当のモチベーションで準備したのだろうし、結果引き分けで終わったものの、あの千葉の本来のスピード、オートマティズムをほぼ完璧に封じた。高木監督としてはよほど会心の戦術的ゲームだったのでしょう。

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
16矢野4廣井
 18南 

千 葉
 8オーロイ 
 11米倉 
9深井14太田
20伊藤7佐藤
2坂本13山口
5ミリガン3竹内
 1岡本 

立ち上がりの失点は、まだなにも熊本の攻撃の形がつくれていない時間でした。FC東京戦で見せたミリガンのロングスローには十分警戒していたはずなのですが。一度は跳ね返すも、二度目のスローイン。204センチのオーロイにはぴったり身体を寄せていたものの、ファーに入り込んだ竹内への対応に甘さがあって。ダイレクトボレーがゴールに突き刺さります。これがロングスローの脅威。もはやハンドボールやバスケットボールのような感覚。異種競技のような空中戦でした。

しかし、千葉の脅威は、このサイドスローからの失点と、後半佐藤が放ったループがバーに嫌われて事なきを得た場面ぐらいではなかったでしょうか。千葉にフィニッシュまで持ち込まれるシーンは数少なく、それほど戦術が“はまった”ということなのでしょう。逆に「立ち上がりに早く失点した」ことが、「後の時間のほうが重要ということで、そういう意味ではメンタル的にもそんなにダメージなく続けられた」と言う指揮官。千葉のこの先制点が、得意の(しかも監督いわく“規格外の”)セットプレーからだったこともあるのでしょう。きっぱりと切り替えると、“流れ”のなかでの守りに関して、集中力を切らすことはありませんでした。スタンドのわれわれですら、はっきりと感じられた熊本の勢い。徐々に主導権を握り、攻撃の形を増やしていく。

前日の熊日の予想フォーメーションに驚いていたとおり、原田が左SBに入りました。大きなサイドチェンジで、右サイドから市村の攻撃性を生かす意味があったのは、誰の目にも明らかですが、福王を失ってからこのかた、最後列からの長いボールを入れる選手がいなくなっていたこともあるのでは。ソンジンが努めていた左SBのころから、根占が中に絞ることによって上がる市村の位置はもはや一列前といってもいいくらいで、変則的な3バックともとれました。原田には上下動の動きを求めるのではなく、あくまで左奥からの攻撃の起点、配球の役割を求めているような。熊本に加入直後もこのポジションを努めていた時期がありましたが、あの頃は“そこしか使うところがない(でも使いたい)”といういわば“消去法的”なポジションではなかったかと。今回は“そこで(あえて)使いたい”という戦術的な掛け算がありました。

一方で片山には、これまで以上に積極的に仕掛けていくことを指示してあったと思います。左の奥から斜め、また斜めにサイドを大きく使った攻撃。特に右SBが一方的に攻撃に参加する右サイド偏重の攻撃パターンは、完全に左右非対称型といえましたが、片山の動きもあって、千葉の守備陣を揺さぶり続けるのに十分でした。

その市村が起点になっての同点弾。一度跳ね返された攻撃を作りなおして、市村が早めにクロスを入れる。エリアに押し込まれたミリガンのクリアが小さい。長沢の足元にこぼれたところを一閃。ゴールの左角に蹴り込みました。トラップからシュートまで一連の動作の速さ。長沢の“巧さ”が光りました。

オーロイには、矢野と廣井が身体を寄せて、ほとんど仕事をさせませんでしたね。確かにその高さは異次元の脅威でした。さらに問題は、その高さで反らされたボールに2列目、3列目が飛び込んで来る攻撃にある。それを指揮官も要注意としていました。しかし、高さで反らすボールには、なかなか確実性が伴わないのも事実。(どちらかと言うとわれわれは、前半にオーロイが見せた胸トラップが、まるでラグビーのモールを作るような形になって、2列目の選手が飛び出してきたシーンを脅威に感じましたが。)かえって、千葉の攻撃をオーロイの頭狙いの単調なものに絞り込む(もちろん、そこにはCB二人のどちらかが身体をきっちり寄せる)という戦術だったのだとしたら、そこはさすがなのかなと。北欧の巨人は、この日の30度を越す暑さのなかで、後半から“溶けて”いくように存在感が薄れていきました。

スカパー解説の池ノ上氏も言っていましたが、今日の千葉は4-2-3-1というフォーメーションを、頑なとも見える律儀さで崩そうとしない。右の人間は右、左は左のまま。後ろからサイドを追い越す動きもあまり見られません。バランスを崩さないともいえますが、ある意味昨年まであった流動性やオートマチックな速攻の脅威は感じられませんでしたね。

その律儀なバランスに対してがっぷり四つでは力負けしかねない。そこを揺さぶるために、その圧力をかわすような非対称型のサイドを大きく使った攻撃。守っては連動した前線からの守備で、ワントップのオーロイ頼みのロングボールに絞らせる。そのあたり、敵の攻撃をオーロイの頭だけに絞らせたところあたりが、高木監督に「ほぼパーフェクト」と言わしめた自身のスカウティングと選手たちのパフォーマンスだったのではないでしょうか。

一方のドワイト監督は、「ファビオ選手への対応がうまくできていなくて」後半ファンゲッセルを入れたあたり、事前のスカウティング不足は否めませんでしたね。もちろん、その的確な修正から(熊本の足が止まり始めたこともありますが)攻勢に転じてきたのは、さすがに千葉の底力という感じもしましたが。

今季のファビオ選手のパフォーマンスには、色々な声がありますが、ドワイトに限らず敵将からの評価は高い(嫌がられている)。今日のような空中戦も交えた現代サッカーを見ていて、ふと思いました。彼の1.5列目の起用は、旧来型のタイプのプレーを求めているのではないのだと。シャドーストライカーという言葉がありますが、いわば“高さのシャドー”とでも言うような…。長身を2トップに置いたツインタワーという戦術のチームは、他にもありますが、ファビオの使われ方はちょっと違う。それは、長沢がいわば仲間と同じように、裏に飛び出すこともできるし、もちろんファビオも出来るから。要するに二人とも速さもあって足技もうまいということ。そこがワントップ、オーロイの使われ方、中盤への降りてき方とは完全に違うところ。だから1.5列目なのだろうし、試合中はほぼ流動的なのだと。ときは“エジミウソンのシャドー”としても効いている。うまく表現できないわれわれのこの仮説ですが、確信が持てるまでもう少しこの布陣を見守っていきたいと思いました。

さて、昨年と同じような状況で、同じような時期に迎えた首位チームとの直接対戦。昨年の柏戦のときも「今の自分たちの実力を測るうえで格好の物差しになる」とわれわれは書きました。しかし、昨年の柏とは互いの物差しの目盛り自体に大きな差があったのも事実です。精度の高い柏の物差しに対して、こちらのものは小学生が使う30センチ物差しのようなというとあんまりでしょうか。しかし、今日のこの千葉との戦いでは、互いの物差しの単位は全く違わなかった。われわれの物差しの精度も、ミリ単位以上に精密になってきたような。

千葉との第一戦は、偶然ですが昨年(開幕戦)と同じように1対1の引き分けとなりました。その昨シーズン、後半戦では0-2での完封負けでした。しかし、今シーズンはそうはさせない。もちろんドワイト監督も今度はしっかりとスカウティングしてくるでしょうし、われわれにはまた“決勝点となる追加点”という宿題が残されたままですが。さて決着をつける次の戦い。互いの順位関係はどうなっているのか。昇格を争う立場でのしびれる状況になっているかも知れない。いやそうであってほしい。そう思うとワクワクします。

5月14日(土) 2011 J2リーグ戦 第12節
水戸 0 - 0 熊本 (13:05/Ksスタ/2,694人)


引き分けドローの試合は、往々にして評価が分かれるものですが、今日の試合に限って言えば「勝てなかった」というより「負けなくてよかった」という気持ちのほうが強いようです。「見た目は我々の方が押しているけど、実際にゲームをコントロールしているのは水戸さんだった」と言う試合後の高木監督には、若い頃から苦楽を共にした敵将・柱谷へのリスペクトと多少のリップサービスが含まれているのかも知れませんが…。しかし、今日のような展開、昨年までの熊本だったら、最後の時間帯に(攻めるにしても、守るにしても)こらえきれず失点してしまっていた。そんな試合をドローに持ち込んだことに関しては、一定の評価が出来ると思いました。しかし同時に、昇格戦線を覗くリーグ戦のなかで、勝ち点1しか奪えなかった結果に関しては悔しくて、残念で仕方がない。この結果は結果として呑み込んでしまわなければならない。今はそんな心境です。

試合前、熊本のファンやサポーターに代わってアルデラス代表から、5月4日と8日の熊本のホームゲームにおいて実施した東日本大震災復興支援の募金活動「水戸のホームゲームに茨城、水戸の地域の皆さんを招待するための募金活動」で集まった募金の贈呈セレモニーが行われたようです。この日のケーズデンキスタジアムも、危険性のあるメインスタンドは封鎖され、まだゴール裏の一部には陥没箇所があるようでした。まさに“被災地”でることを感じさせます。感謝の気持ちを込めた水戸サポーターからの「ロアッソ熊本」コール。そしてそれに応えるように熊本ゴール裏からも「FC水戸」コール。わがクラブが標榜する「絆」がチームの垣根を越えて結ばれた瞬間のようで、胸が熱くなりました。しかし同時に、あの等々力競技場での川崎の「煽りビデオ」にあったように、懸命に勝ち点3を取りに行くことが、対戦チームとして最も大事なミッションなんだとも思いました。

財政難もあってか、水戸は昨年以上に若返りを図っている。大卒1、2年目を中心としたスタメン構成。最後尾にベテランGK本間がどっしりと控える。なんだか、JFL時代に大学チームを相手にしたときのやり難さを思い出させる。

水 戸
13岡本 11常盤
22小幡7小池
8村田6西岡
3保崎2岡田
20塩谷5加藤
 1本間 

熊 本
9長沢 30仲間
23根占14武富
8原田5エジミウソン
2チョ・ソンジン15市村
16矢野4廣井
 18南 

この日、日本中の各会場を襲った強風。それを追い風にして、前半は熊本がやや優位に試合を進めます。開始早々、右サイドで何度も拾いなおすとクロスを入れる。近距離からの武富のシュートをGK本間が横っ飛びで防ぎますが、反対サイドにこぼれたボールに今度は長沢が詰めてダイレクトで打つ。決定的でしたが、DFにブロックされてしまいます。

熊本は市村が何度も上がって攻撃を形づくる。水戸も左SBの保崎を使う。同サイドで崩しあうような展開が続きます。保崎が奥まで抉って上げたクロスには、熊本のDFラインがきっちり跳ね返しますが、熊本の攻撃もバイタルで長沢のポストプレーまでは行くものの、裏をとる局面では堅くブロックされてしまう。エリア内ではうまく足元に収まらず、フィニッシュに至る前に詰められる。そんなもどかしさのあった30分頃、左から右に回して市村が打つ。DFに当たったこぼれ球を拾った武富がループ気味にコントロールしたシュートは、惜しくもバーを越えていきました。

後半の15分、あるいは仲間に代えてファビオを入れてからの25分まで。前半を含めたこの時間帯までに先制点が取れなかったことが、今日の試合を難しいものにしてしまいました。もちろんこの時間帯にも、武富の絶妙のクロスにファーの根占が合っていれば。あるいは、右サイドでファビオ、根占と作り直して、市村のクロスに長沢のヘッディングシュートと、惜しい場面があったのですが、水戸もFKから長身DF加藤の頭が触れば1点ものという場面を作ります。とにかくスカパー解説の加藤久さんが言うように「水戸もやられたら、必ずやり返すことが出来ている」。易々と主導権は渡さないぞというしぶとさを見せます。

後半、熊本に向かい風となるはずだった強風が、ピタリと止んでしまったことは幸いでしたが、その代わり照り返すピッチ上の気温がどんどん上がっていったように見えました。試合後の水戸の選手たちが口々に匂わせているように、水戸は後半熊本の足が止まり始めるのを見越して走り勝つ、一発撃ち込んでノックアウトするという戦略だったのでしょう。ハーフタイムでの柱谷監督の「どこかでスプリントをかけるタイミング」という言葉が表すように。熊本はこの罠にまんまと嵌ってしまうところでした。プレッシングが甘くなり、中盤にスペースが出来始める。テレビ画面越しに聞こえる「ここから!ここから!」と選手を鼓舞するピッチサイドの声は、高木監督のものだと思われました。

2枚代えで入った遠藤と小澤がかき回す。熊本も片山、宇留野と入れて活性化を図ります。もはや1点を争う展開に。徐々に水戸のチャンスの数が上回ってくる。決定的なピンチだったのは84分頃。南からのキックを、水戸が中盤ヘッドで跳ね返すと、岡本が頭で反らして前掛かりだった熊本DFの裏を取る。途中投入の島田が右サイドをドリブルで持ち込むと、ブロックに入った矢野を交わしてクロス。島田の対応にGK南もつり出され、無人になったゴールにFW岡田が打ち込むだけ。絶体絶命のこのシーンに立ちはだかったのはソンジン。ヘッドでなんとかクリアします。胸を撫で下ろした瞬間でした。

残り5分は、まるで最終ラウンドを戦うボクサーのように必死の“打ち合い”になりました。最後の力を振って攻め、さらにそれを上回る力を振り絞ったディフェンス。アディショナルタイムには熊本が連続してCKのチャンス。しかし、遂に押し込むことができないまま、無念のホイッスルが鳴り響きました。

試合の結果とデータだけを見て、熊本の決定力を嘆く向きも多いかも知れません。しかし決定力を確率論の結果として見るわれわれは、この日作った好機の数が、それほど多くはなかったことを課題としてとらえたいと思います。それも“崩し切った”という質的にみた好機という意味で。むしろ高木監督から目からは、柱谷監督の術中に嵌ったと言えるような展開でもありました。現役選手の頃から闘将と呼ばれた柱谷氏。われわれはどちらかと言うと、その頃から、まるでマムシのような狡猾な恐ろしさを感じていましたが…。

試合が終わるなり、人目をはばからず号泣するFW岡田。ソンジンに阻まれ、幻となった決勝点に対する自責の念からなのでしょう。途中負傷して、頭には包帯を巻いている。それでなくても泥臭いプレーを連発していました。熱いものを持っている男なのだなと。熱い想いがこの試合に向わせていたのだと。

加藤久さんは「柱谷監督が引き継いだときの状況からすれば、よくここまで作ってきたなと思う」と述べました。いい監督とは、戦術家であると同時に、モチベーターでなければならないとは、いつかこのブログでも書いたような気がします。高木監督も稀代のモチベーターだと言われていますが、この柱谷監督も相当なものです。

まんまと柱谷監督の戦術に嵌るところだった試合。それを跳ね返すだけの“力”と、そしてなによりも“熱さ”。そんな底力がいつの間にかわれわれのチームにも備わっていたことを、「一定の評価」と表現しました。また、勝ちきれなかったと表現してしまえば同じですが、同じドローでも今日は選手たちに拍手を送れる引き分けでした。たくさんの“変数”のなかで戦っていくリーグ戦のなかで、昨シーズンとりこぼした引き分けの内容とは、全く違った印象を持ちました。それに、スコアレスといえどもこんな手に汗握る熱い試合、ナイスゲームであったと。「柱谷、侮るなかれ」。試合後にがっちり握手し、健闘を称えあった高木監督も、次の対戦での決着に期するものがあるはずです。


5月8日(日) 2011 J2リーグ戦 第11節
熊本 1 - 0 札幌 (16:03/熊本/5,709人)
得点者:41' 長沢駿(熊本)


「ポイント3以上に大きい勝ち点がとれた。」(熊日)試合後、高木監督はいつになくオーバーな表現でこの試合を振り返りました。テレビのインタビューからも、日頃冷静沈着な指揮官から、その高揚感が伝わってくる。監督が“美学”とする1-0の勝利で終わったことからなのか…。いや、どうもそうではない理由が、監督の表情から伝わってきました。

熊 本
 9長沢 
 30仲間 
7片山14武富
8原田5エジミウソン
2チョ・ソンジン15市村
16矢野4廣井
 18南 

札 幌
 22三上 
 7高木 
32近藤15古田
18芳賀10宮澤
6岩沼2日高
23山下4河合
 16李 

29度を越える気温。連戦での疲れを考慮して、熊本はシステムと戦術を変えて臨みました。ファンにとってなにより嬉しかったのは、怪我で出遅れていたエジミウソンがホームKKウイングに初登場・初先発。それも原田とのダブルボランチとは意表を突かれました。そして、更にファンをわくわくさせたのは、実際に目の前にしたエジミウソンのプレーの数々。的確なポジショニングで相手の攻撃の芽を潰す。マイボールに絡むときの、意図のあるダイレクトパス。まるで熟練の技を極めた“ゲームの黒子”のように、熊本にリズムをもたらします。「この日を待っていた。自分にとってはスタートと同じ。」(スカパー!)と言うエジミウソンの、この段階でのチームへのフィットぶりには驚くばかりで、「これはきわめて信頼性が高いオプションだ」と思わず唸りました。

前線から無闇に奪いに行かず、このダブルボランチのところできっちりとブロックを作る。というのが今日の熊本の基本戦術だったようです。対する札幌は、その壁を破り切れない。ただ、フォーメーション的にもがっぷり四つの両チームが、鍔迫り合いのように押し合う時間帯が長いこと続き、そこから少しだけ札幌の方にポゼッションが傾きかけたかなと思われたときでした。

それは、自陣でボールを奪った瞬間から攻撃に転じる速さの勝負でした。武富がドリブルで駆け上がる。バランスを崩していた札幌の守備陣が、慌てて追う、詰める。4人、5人。自分に十分に引きつけたところで、武富は追走し、追い越してきた長沢に絶妙のスルーパス。スピードに乗ったまま足元にうまく収めた長沢は、GKの動きを見透かすようにゴールにたたき込みました。雄叫びを上げる長沢。駆け寄る武富。目の覚めるようなカウンター攻撃が、この試合の決勝点になりました。

もちろん熊本は、ここから守りに終始し追加点を諦めたわけではありません。ただ、好機の数は少なかった。しかし、札幌も砂川、岡本、果てはチアゴと、次々にカードを切ってきますが、攻撃のスピードは一向に上がらない。唯一、岡本がエリア内で切り替えしてシュートを打った場面ぐらいか。それ以外は、熊本が札幌のパスを寸断し、攻撃の形すら作らせなかった。ファビオ、吉井、松橋とカードを切り、攻撃的姿勢と集中力の維持に成功しました。「ゲームをコントロールすることができた。」高木監督の試合後のこの言葉は、自身とともに、チーム全体、選手全員に向けられた言葉なのでしょう。

札幌は愛媛、湘南に連敗した後、降格組のFC東京とは引き分け、前節は草津を下して今節を迎えました。いうなればやや上り調子で来ていた。一方わが熊本は、草津に敗戦から前節は北九州に痛い引き分け。おもい返せば、勝利ではあったものの、その前の岐阜戦の後半からどうも“噛み合わない”“不調”が始まっていたのかも知れない。中断期のTMで結果がともなわず、「選手のふがいなさは、自分が選手に伝えきれていないということ。自分の指導のふがいなさが悔しい」という意味の心情を吐露した指揮官の、あの思いが実はずっと続いていたのかも知れません。

そういう状況で迎えたこの試合。勝ったという“結果”はもちろんですが、これまで突きつけられた数々の課題に、中3日という時間のなかで選手たちが見事な“修正力”を見せた。アグレッシブで、攻守にリズムがあり、そしてバランスを崩さない…。昇格を狙うチームの戦いとは…。言いたかったことが、選手に伝わったという実感が持てた。人知れず苦悩していた指揮官本人だけが知る、そんな高揚感だったのではないでしょうか。

札幌の石崎監督が「がっちり守る相手を崩しきれず」と表現し、高木監督は「攻守の切り替えの速さで相手を上回った」とコメントした。もちろん熊本は堅固なシステムではあったけれど、守備を固めていたわけではなく、バランスよく攻めていました。再三指摘されているとおり、今日はあまり前から行かなかっただけ。しかし、この両監督の試合内容に対する評価の“ギャップ”はとても興味深い。それは、それぞれが置かれている状況や課題を如実に反映しているのかも知れない。同じ試合を戦う両チーム、置かれた状況や課題によって、全く違ったゲームと映ってしまう。今日の試合はそんなことまで考えさせてくれました。

5試合を終えて勝ち点10。昨年はこの時点で勝ち点11。しかし、ここから以降の10試合で積み上げた勝ち点は12でした。もう4度目になる、このリーグ戦のリズム感。黄金週間の最後を“快勝”で乗り切ったものの、チームもわれわれも、ゆめゆめ油断はないと心得たいものです。

5月4日(水) 2011 J2リーグ戦 第10節
熊本 0 - 0 北九州 (15:03/熊本/6,948人)


完封負けに泣いた前節以上に、“不完全燃焼”感の募るゲームでしたね。再三の好機をものに出来ず、それでも諦めずに粘って繋いで。最後の最後、アディショナルタイム4分に訪れた3度のCKのチャンス。これを力ずくで押し込めば、そこまで90分間のモヤモヤした欲求不満も、この日KKを取り囲んだ黄砂と共に、一気に吹き飛ばしたのでしょうが…。

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
14武富23根占
 8原田 
2チョ・ソンジン15市村
6福王4廣井
 18南 

北九州
11池元4長野
 21安田 
14森村17木村
 5桑原 
22多田13関
16福井26宮本
 31佐藤 

セカンドボールをほとんど支配、ポゼッションは完全に熊本側にあり、一方的に攻め立てたように見えますが、「前半はシュートを打つ意識が足りなかった」(熊日)と根占が試合後に応えているように、終始敵陣でボールを保持しているのにも関わらず、30分過ぎまでゴールは狙えませんでした。

前節の左サイド、筑城、片山から2枚とも代え、ソンジン、武富のコンビネーションはそうそう悪くは見えなかったのです。前日、韓国U-22代表合宿への召集が発表されたばかりのソンジンが、積極的にサイドを上がる姿にも、なんだか逞しさと自信を感じ。このままロンドン五輪に代表として出場したらと思うとワクワク感が募ります。前節は持ち味を消された仲間も、前線で執拗に追い続ける。中盤でのプレスも効いて、ボールは熊本側にこぼれる。

しかし北九州は、ともに攻撃的なはずの両SB関と多田がサイドのスペースを埋めることに終始し、その4バックの前にはベテラン桑原が、フォアリベロよろしく中盤の底で蓋をする。それでも熊本は、仲間のつっかけたボールを長沢が拾ってエリア内左からシュート。続いても武富のクロスにファビオがヘッドで叩きつける。長沢が落として武富がシュート。ファビオが一度右の仲間にあずけたあと自らシュート。と再三、再四ゴールに迫り始める。しかしいずれもGK佐藤の好守に阻まれてしまいます。

前半終了間際のCKのチャンスに中央で競った福王が倒れたまま、かなりの時間微動だにしない。ガツンと敵DFの頭が当たった様子。起き上がれず担架で運ばれる。大きなアクシデントでした。後半、この穴を矢野が埋めますが、熊本は最後列からサイドを大きく使うボールの配給者を失うことになります。

後半の決定機は63分、原田のFKにGKがパンチングで飛び出す。ボールを拾ったファビオ、浮かせないように撃ったダイレクトボレーでしたが、しかしわずかにバーの上を越えて行ってしまう。立ち上がりかけたスタンドのファンは、ため息と共に座りなおします。

武富に代えて大迫。仲間に代えて片山。大迫、長沢で2トップを組む。バイタルエリアのこぼれ球を拾うのは、相変わらず一方的に熊本。とにかく我慢強く耐え、守る北九州。しかし残り時間は15分。熊本の運動量が目に見えて落ちてくると北九州も少しずつ形が作れるようになる。レオナルド、林と攻撃的な選手を入れて、最後に“勝ち逃げ”しようという狙い。残り10分、北九州が攻める。このまま北九州のゲームプランにはまってしまうわけにはいかない。いずれにしてもこの試合を決めるのは、もはやどちらかに転がる1点だけ。そんな状況で訪れた、冒頭のロスタイムのシーンでしたが、勝利の女神は黄砂の影にかくれて、微笑んでくれませんでした。

まるで先の中断期間中のTMを見るようだったというのが、われわれの共通した印象でした。開幕戦のとき書いた、長沢やファビオという“高さの麻薬”にはまってしまい、攻撃が単調になった印象もありますが、録画を見直すとそれほどでもない。それよりなにより北九州の桑原にしてやられた。開幕戦で戦った東京Vになぞらえるなら、この立ちはだかる壁はまるで土屋。ならばこの狡猾な守備のベテランを“剥ぐ”ことが必要だったなと。サイドを抉ってバイタルを広げ、そこからのクロスで高さを生かすということや、桑原をサイドに引き出すこととか…。ブロックと言うより団子のような北九州の守備陣形。草津戦でも感じましたが、これだけ守られた経験はあまりなかったことです。

ここのところ、色々な選手を先発や途中交代で起用しています。それも色々なポジションで。しかし、なかなか結果が伴わないので、監督の起用法自体に迷いがあるようにも傍からは見えてくる。ただ、まるで固定化されていたようなレギュラー陣で戦ってきたこれまで(昨年まで)と違い、戦える選手層が厚くなったとも言えるのではないでしょうか。毎年苦しんでいたこの黄金週間の連戦を思えば、この過密日程を戦いながら、一方で、多くの選手を試すことができているのかも知れない。

草津戦の後半からずっと攻め続けたまま、決定機を決められずに無得点。しかし、長いシーズンが終わって振り返ったとき、この頃が“土台作り”だったねと思いたいものです。しばらくはチームもファンも辛抱が必要なのかも知れない。連戦のなかで、このエントリー自体が不完全燃焼だと言われそうですが(笑)、精一杯のポジティブな気持ちを探してみました。落ち込んでいる暇もない。中3日で札幌戦なのですから。

4月30日(土) 2011 J2リーグ戦 第9節
草津 1 - 0 熊本 (13:04/正田スタ/3,258人)
得点者:17' 熊林親吾(草津)


勝ったゲームのあとはメンバーをいじらない。サッカーで言われる鉄則どおり、熊本の先発は前節と同じ布陣で臨みました。互いに初ゴールを上げ「気をよくしている」はずの長沢と仲間の両FWに託して。しかし、手堅く守る草津のDFに、特に仲間の方は持ち味を出し切れずに終わりましたね。一方の草津。前節の大分戦を見た時に、まず思ったのはやはりMF熊林という存在。SHに置かれているけれどサイドを抉るタイプではなく、基本はいいポジショニングからトリッキーなパスで人を使う選手。ただ、要所要所ではエリア内に顔を出す。ダイヤモンドの熊本のシステムで、この男を誰(と誰)が見るべきだろうか。などと戦前、考えていた。その草津のキーマンに、まんまとこの日のたった1点の、それも決勝点を挙げられてしまいました。

草 津
18萬代 8アレックス
14熊林19後藤
6櫻田30松下
23永田24古林
3御厨5中村
 22北 

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 8原田 
24筑城15市村
6福王4廣井
 18南 

前から厳しくプレスを掛けていくというのは両チーム共通の戦術。試合開始直後、まず攻勢を得たのは熊本の方でした。仲間、片山の果敢なチェイシングからエリア内に落ちたボールに長沢が前を向く。すばやく左足で放ったシュートは、しかしGKが辛うじてクリア。続いては仲間が競り合いから粘って右サイドを上がってくる市村にパス。ラインぎりぎりまで切れ込んだ市村が高く上げたクロスは、ゴール前の長沢のポイントとはややズレましたが、身体が流れながらも長沢は頭に当てる。191センチの高さの成せる技でしたが、シュートは左ポストに嫌われてしまいました。

今日も行けるぞ! 先制点は時間の問題。このときまではわれわれもそんな予感がしていたのですが、振り返ると前半ハッキリとしたチャンスは、このふたつのシーンだけ。長沢やファビオの高さに手を焼きながらも粘り強く押し返してきた草津は、17分、スローインからアレックスが熊本の右サイドを抉ると、対峙していた筑城を振り切ってエリア侵入。マイナスで出したグラウンダーのパス。ニアの萬代がスルーしたところに走りこんだ熊林の強烈なダイレクトシュートが、熊本ゴールに突き刺さりました。

ゴールの後、テレビ画面では「いまのはファールじゃないのか?」とでも言いたげに線審を振り返る原田の顔が映し出されます。アレックスに派手に振り払われてもんどり打ってしまった筑城。線審の目の前の出来事だっただろうに、「今年は随分、手を使ってもよくなったようだ」と負け惜しみの嫌味が心に浮かぶわれわれ。ただ、この線審のジャッジ、今日の試合はファールに対して消極的だということは間違いないと言えました。

前節、熊本は2点をリードしたあとからリズムを失うというメンタル面の弱さを見せました。今節は1点のビハインドからどう転じるのかという、長いシーズンこれから何度もあるだろう展開に早くも直面しました。

しかし、画面越しに見るかぎりでは、活き活きとエンジンが掛かってきたように見えるのは草津側。自陣でしっかりとブロックを作って、守りから追加点を狙う。筑城と片山の連係が悪いのか、左サイドを突破されるシーンが多い。草津の右SB古林が、思い切り良く攻撃に参加してくる。守備には難があるといわれるルーキーだけに、本来そこを押し込みたかったのですが…。

熊本のボールホルダーには、草津の選手が2人、3人と参集する。前線にくさびのボールやハイボールが入るその一瞬前に、DFが相手FWに対して身体を当てて“存在を示す”のは、ディフェンダーの“駆け引き”の一つでもありますが、鍛えられた草津の両CBのそれはガツンと強い。このいわば球際の強さというよりボディコンタクトの強さに、徐々に仲間の存在感がメンタル面とともに奪われていったように思われました。

試合は後半へ。まず熊本はその仲間を諦めて斉藤を投入。試合に入っていくため、自分のリズムを作っていくために、とにかくボールをたくさん触ろうという斉藤。この動きが全体をアグレッシブに、連動性を高め熊本が攻勢を得ます。長沢がポストプレーで落として、走りこむファビオにアシスト。しかしファビオのシュートはゴール右に反れていく。ここは決めたかった。前線でのチェイスからファビオが奪って一騎ドリブル。追いすがるDF2人のプレスバックに後ろから倒されるがファールの笛はない。

ジワリジワリと攻勢を強める熊本。それはまるで前節の岐阜の試合と逆の展開。アナウンサーが言うように、誰がみても「草津が堪える時間帯」。そして攻勢のまま15分、20分が過ぎ、高木監督の顔がゆがんで見える。「決めるべきは、この時間帯なのだが…」という心境がにじむような表情。このまま攻勢を失いたくない指揮官は、片山に代えて大迫というカードを切ってきます。さっそく長沢がエリア左に持ち出して、走りこんでくる大迫にパス。しかしこれは足元に入りすぎて撃てない。ほとんど草津陣内でゲームが進む。熊本はアタッキングサードに人数を掛けて次々と入り込んでいきますが、最後のところで阻まれる。

パスは繋がる、ボールは廻る。完全にゲームを支配する展開。怒涛のような波状攻撃。しかし、ゴールは遠い…。いつも思うのですが、こんな時間帯に必要なのは“凄み”。相手を怯ますほどの凄み。全員の「この時間帯だ」という意識、全員の“集中力”の連動。それは“気”の集中、“気”の連動。日本語に昔から「一気に」という言葉があるように。あるいは反面「気が抜けた」と表現するように。

90分のなかで移り変わる“時間帯”を感じることもサッカーの大きな見所ではありますが、一方の優位がそうそう長くは続かないこともよくわかっていました。両者に疲れが見える残り10分、草津はラフィーニャを入れて打開策を図る。熊本は筑城に代えて田中を投入。2ボランチ、3バックにしたのかも知れませんが、テレビではよくわかりませんでした。

天秤は再び草津の方に傾き始め、熊本の集中力は徐々に分断され拡散していきました。3試合目にしてホーム開幕戦という草津の勝利への執着心もさることながら、相手の集中力を途切れさせるほんの些細なところでの時間の使い方といった櫻田や松下のベテランらしい“駆け引き”にもうならされました。草津は、スタミナに難のある熊林に代えて田中で守備固め。最後は古林に代えて佐田で時間を稼ぎ、逃げ切りを図りました。

さて、この日がJデビューとなった斉藤、持ち味を出して後半の攻勢のきっかけをつくりました。しかし、ゴールに近いところではもう少し積極性が欲しかった。カードの切り方としては、斉藤先発、仲間後半投入のほうが妥当なのかとも。田中もデビュー戦でしたが、短い時間のなかで試合に入っていくのは難しかったでしょう。いわば、残り10人が連動している“気”のなかに途中から入っていくことが。あるいは逆に分散し始めた“気”を再度ひとつにまとめることが。そこがカードを切るベンチワークとしても難しく、悩みどころなのではないでしょうか。「初めての出場であの状況は難しかったと思う。」という試合後の高木監督のコメントも、そういう意味が込められているように思われました。

後半、立ち上がりから長い時間帯を支配した熊本。負けはしたけれど、悪くはない。しかし…。なんだかわれわれの稚拙な文章ではうまく表現できない熊本の課題に関して、南のブログが明快にシンプルに代弁してくれていました。
「もっと“勝ちきる強さ”やなりふり構わず点をとれるチームになっていかないと」
「まだまだそのへんの“力強さ”みたいなものが今のロアッソには備わってない」

勝ちきる強さ、力強さ、凄み…。今シーズン、最初の敗戦には、今シーズン、越えなくてはならない課題がびっしり詰まっていましたね。