6月29日(水) 2011 J2リーグ戦 第2節
京都 0 - 1 熊本 (19:04/西京極/4,015人)
得点者:59' ファビオ(熊本)


熊本と京都。暑さ、寒さの気候は良く似た街。19時からのナイトゲームというのに気温は32度と報告されて。今季ひとつの楽しみであった京都との初対戦。本来は3月13日に行われるはずであった第2節が、東日本大震災以降の中断で延期され、この蒸し暑いミッドウィークの夜に変則的に押し込まれて中三日の連戦に。選手の体力消耗が心配されました。

学生時代を京都で送ったわれわれの一人は、所属していた草サッカーチームで天皇杯の県予選に挑み、京都紫光クラブ(もちろんトップチームではなかった)と戦ったことが寂しい選手経歴のなかの唯一の自慢でした。しかも所属チームの名前も「赤」に由縁があったりして。個人的にこの初めての対戦を心待ちにしていた。「あの京都紫光から発展したサンガといよいよわがホームチームが対戦する日が来た」のだなどと、勝手に感慨にひたってしまいました。

当時から京都紫光は育成に定評があり、京都の子ども達にとって、京都紫光の下部組織、育成チームに所属しているということは、それはそれはステータスでした。その育成の伝統が、今の京都サンガにも受け継がれている。久保、駒井、伊藤。3人とも京都の下部組織上がり(久保に至っては2種登録の17歳)。チーム事情とはいえ全て10代を配置した今日の京都の3トップはしかし、Jの公式戦で全く見劣りしないどころか、何度も熊本ゴールを脅かしました。

京 都
31久保
22駒井25伊藤
19内藤
15中村18加藤
4秋本
3森下2酒井
6染谷
1水谷

熊 本
9長沢11宇留野
 14武富 
25西森23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

富山に少し似ている」(スカパー!)と戦前、高木監督が評していたように、京都のシステムは3-3-3―1から派生した3-4-3。しかし試合が始まって見えてきた戦術は、まさしく甲府時代に大木監督が敷いていた「クローズ」。ボールサイドに何人もが集まり、狭い局面でショートパスを繋いでいきます。

熊本は前線からの相手プレッシングに押されると同時に、中盤でも数的有利を作られて後手後手に回る。潰し合いの時間帯を経て、完全に京都がペースを掴むと、久保が持ち込んで右足でふわりとクロス。ゴール前の駒井のヘッドはバー直撃で事なきを得る。再び久保がバイタルから狙う。南がパンチングで逃れる。左から運ばれ久保がエリア・イン。南を交わしてシュートするも枠を外れる。今度は伊藤のスルーパスに久保が右から打つもサイドネット。

あれだけ支配されて、撃たれても、しかし、不思議にそれほどのヒヤヒヤ感はなかったのが正直な気持ちです。とにかく我慢、我慢。攻め込まれること自体にはリスクがある。しかし、そのリスクをうまくコントロールしているような印象。GK南の好セーブも、このリズムあってのものだと…。

試合後、「京都のパスワークの中に、なかなかついて行けず」と表現した指揮官。開幕戦以来の先発となった宇留野も、キャプテンマークを巻いた長沢にもボールが収まる場面のない前半でした。後半開始から宇留野に代えて、ベンチに温存していたファビオを投入。前線に高さを加え「2ターゲット」にすることで「だいぶ収まるようになって、そこから少しリズムが変ってきた」(高木監督)のは、テレビのこちら側でも感じられました。

そして迎えた59分。左からのCK。ニアに低く蹴られた西森のキックボール。京都DFのクリアは高くバウンド。ゴールを背にしていたファビオが、「ここぞ!」とばかりに豪快にオーバーヘッド。GKも為す術もなくゴールネットに突き刺さります。ファンが待ちに待ったファビオの今季初ゴールは、その日のスカパー!アフターゲームショーのベストゴールにも選ばれるスーパーゴールになりました。

熊本は武富に代えて片山を入れると、エジミウソンと西森のダブルボランチにして4-4-1-1。長沢が相手DFとの小競り合いで、この日2枚目のイエローを貰い退場すると、更に4-4-1に。やるべきことがハッキリした熊本は、2列のブロックでスペースを埋めると、がっちりと守備を固めました。その陣形を3-4-3の京都の“矛”が突くも、固い防御に跳ね返される。唯一危なかったのは65分、内藤がカットインして放った速いシュート。南の背後にカバーに入った(何故そこに入っていたのかも不思議なほどなのですが)福王がヘッドではね除け、胸をなで下ろしました。値千金のプレーでした。

「いつもいい内容で勝てるわけではないし、こういう押し込まれても我慢してもぎとった勝ちはこのチームには今までなかった勝ち方なのでチームとして成長している証拠だと思います。」(南のブログより)

1-0での逃げ切りという試合は何度もありましたが、今日の試合のような勝ち方は初めてのような気がします。噛み合わず、不調でも、意思統一ができて、やれることを我慢して続け、やられながらもゲーム全体をコントロールし、逃げに逃げてつかんだ勝ち点3。“こんな勝ち方”ができた。それができたこと自体が、大きな進歩ではなかろうかと。

シーズン序盤から苦戦が続いているようだった京都は、しかしやはり底力を感じさせる強敵でした。大幅な若返りが成功したら、これは相当怖いチームになるぞと。育成年代の台頭。17歳の久保の将来性…。11月の再戦。今度のホーム戦が楽しみです。

さて、上位陣が安定して勝ち星を加えた感のある今節。“昇格圏”というのはめったに負けないことだなとも言えるようです。そこに食らい付いた熊本の勝ち点3。大きな価値があります。次節は中二日で鳥栖との九州ダービー。前節も書きましたが「次の戦いはすでに始まっています」。

6月25日(土) 2011 J2リーグ戦 第18節
熊本 2 - 1 愛媛 (19:03/熊本/3,877人)
得点者:13' 長沢駿(熊本)、32' 長沢駿(熊本)、65' 齋藤学(愛媛)


前節大分戦の後、選手たちはエジミウソンの提案で選手たちだけで意見を出し合う時間を持ったといいます。相当なショックを受けた大分戦。この経験をどう活かし、どう修正してくるのか。われわれは前回のエントリーで、この愛媛戦を、シーズンの分岐点に差し掛かったと書きましたが…。

愛媛は、FC東京との引き分けを含めここ5試合負け無し。確かに登り調子な印象を受けます。戦前、高木監督も「愛媛は洗練された、穴のないチーム」、「3位にいるのは実力があるから。今、うちよりも強い」、「先制されたら勝てる可能性は低くなるだろう」(スカパー)と述べていたそうです。しかし相手に対するレスペクトは必要だけれども、ここまでのコメントはどうなんだろうという怪訝な気持ちもありました。熊本と愛媛。JFL昇格の経緯から、過去の対戦成績から。微妙な位置関係にあるチーム。思い至ったのは、恐らく高木監督は、この試合にあたって、愛媛をはっきり「格上」と位置づけて入ろうとしたのではないか。自分も、選手も迷うことのないように。そして絶対に先制されないような入り方をしようと。そんな戦略的な意図のこもったコメントではなかったかと想像してみました。

さて、愛媛の試合をあまり観ていないわれわれでも、とにかく斉藤学という選手がいいらしい、自由を与えられてどんどん飛び出してくる。そんな噂は聞いていました。開始5分、ダイヤゴナルに右に流れた斉藤がパスを受けると左に走ったジョジマールにすばやく送る。二人の絶妙のコンビネーションを目の当たりにして、すぐに納得がいきました。

熊 本
9長沢14武富
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

愛 媛
 9ジョジマール 
27斎藤11石井
10杉浦17大山
 4渡邊 
7前野13関根
28高杉18池田
 1川北 

序盤、熊本は意図的にロングボールを蹴っていきます。「雨は想定していなかった」(スカパー)という高木監督の、絶対に先制されたくないという意識、リスク回避のための臨機応変な戦術だったともとれます。そんな熊本の攻勢。前からのプレッシャーとその“高さ”に、明らかに愛媛DFは押されているようでした。

先制のシーンは武富が「(シュートの)ミスキック、良いアシストになった」(熊日)と苦笑いしたそうですが、そもそもこの武富のシュートは、その前に武富が左サイドを“意を決し”たようなドリブルで突破し、狙ってとって、自らが蹴ったコーナーキックからのもの。さらにそれを3度跳ね返されて拾いに拾ったセカンドボールをキープしての4次攻撃から生まれたものでした。波状攻撃を受けると、ディフェンダーはリスク回避に傾く。下がり気味になり、ラインコントロールも余裕がなくなる。スタンドから見ていたわれわれには、低くて速いクロスに見えたんですが、これに長沢が飛び込んで角度を変えた。長身FWが見せた今季初のヘッドでのゴールでした。

先制点を得たい。そんなチーム全員のゴールを狙う意識が表れていましたね。特に武富は、柏の元同僚・酒井のU―22代表での活躍が大いに刺激になっているに違いありません。

2点目もラッキー(アンラッキー)とも見えるでしょうが、バルバリッチ監督はきっぱりと「前半の2失点はミスで自ら与えたゴール」と表している点はさすがだと思いました。これも武富が入れたスローインをファビオに当てて、それを自らダイレクトでシンプルに長沢を狙って(今度こそ)クロスを入れたもの。多分、クロスとしてはミスキックでしょう。しかし、非常に速いタイミングから(相手DFの準備が遅れる)、濡れたピッチで、エリア内に、胸トラップを強いるような、速いボールが入ったから起きたこと。胸トラップはハンドボールのリスクがある。あの状況、ディフェンダーも余裕があれば、両手をもっと背中側に組んで対応したところでしょう。これをアンラッキーだ、あるいは審判のせいだ、などとしてしまえば成長はない。ミスを認めるバルバリッチの愛媛。これからも手強いぞ。と感じさせます。

そのPK。誰が蹴るのか皆が躊躇しているように見えました。そしてエジミウソンが置こうとしたボールを長沢が貰いにいきました。「何試合も点が取れていなかったし、チームも勝ちきれていなかったので、勝つことだけを考えて、常にゴールを狙っていた。点が取れない間は苦しい時間だったが、このプレッシャーを楽しみながらやっていければと思っていた」と。

これまで清水の4年間ではわずか7試合の出場にとどまっており、エースフォワードとして、チームの“結果”を“背負う”責任とその重圧は初めてのものでしょう。チームの苦戦状況の理由を一身に背負い、しかもPKは苦手だとコメントしたこの若きエースは、しかしこの大事な得点機に自ら志願することで、全てのプレッシャーを振り払おうとしていたのかも知れません。GKの頭上に豪快に蹴りこむと、「どうだ」とばかりのガッツポーズ。駆け寄るチームメイト。またひとつの成長を見た。そんな気がしました。

熊本としては、言うまでもなく後半の入り方が課題でしたが、原田が蹴ると見せかけて片山がゴールを狙ったFKのサインプレーや、長沢が右サイドから一騎で持ち込んでDFを交わしシュートを放つなど、愛媛ゴールを脅かします。まずまず。

愛媛は石井、大山を内田、越智に二枚替え。これはシステム的な変更ではなく、単にフレッシュな選手を入れただけでしたが、さすがに頃合いを見た采配でした。熊本のボールへの出だしが遅れてきた時間帯。陣形が間延びし、セカンドが拾えなくなってくる。65分、一瞬気の抜けた感じ。後方からの縦パスを斉藤がダイレクトで前線のジョジマールに送る。左に流れたジョジマールが福王を交わすと、走り込んできた斉藤に再び戻す。斉藤はマークしていた矢野からうまく逃げると難なくシュートを放ちました。呆気にとられたような、鮮やかなコンビプレー。斉藤。やはりただ者ではありませんでした。

熊本はファビオに代えて大迫を入れる。スカパー解説の池之上さんの評価は辛口でしたが、今日のファビオは悪くはなかったと思います。どちらかというとワントップ気味の長沢の下に、ファビオと武富がいて、長沢と出入りを繰り返したファビオは、序盤で長沢が競ったボールをDFの裏でトラップしてエリア内で打ったり、クロスボールを中央の長沢がつぶれてファーに待ちかまえていたり。われわれが思う“高さのシャドー”といったプレーが随所に見られました。フィットしてきている、あと少し。もう少し。ゴールこそ決まればという感じです。

熊本は疲れのみえる武富に代えて西森が今季初登場。最初、4-1-4-1にして相手とがっぷり四つのシステムかと思われたのですが、すぐに左SBに入って原田とエジミウソンのダブルボランチに。愛媛が縦に入れてくるパスを中盤の底で封じる戦略に出ました。

しかしこの時間帯は完全に愛媛のものでした。後半に強いという愛媛の評判が頭をよぎる。雨の影響からかこの日はなかなかボールが手につかない感じの南でしたが、愛媛の意外性のあるミドルを素晴らしい反応で防ぐ。ゴール前の混戦もエジミウソンを始めフィールドプレーヤーが最後に掻き出す場面が幾度あったでしょうか。

ラスト5分。自陣でボールを回す熊本。なんだか攻めるのか守り切るのか意思統一ができていない感じ。ベンチは最後のカードに筑城を選択して、ハッキリと意思表示。攻めてもシンプルなプレーに終始して時間を使い切りました。待ち望んだ勝ち点3を手にした瞬間、殊勲の長沢は両手でガッツポーズを取ったあと膝を抱えるように座り込んだ。その代わりスタンドのファンは皆立ち上がり、ゴール裏のチャントと共にタオルをぐるぐると振り回し続けました。

白熱した好ゲームだったと思います。池之上さんは、“ちょっとの運”が熊本に軍配を上げたように表現していましたが、前述したPKの場面といい、われわれは互角の相手に対して熊本が周到な準備を行い、意図的なワンプレーを積み重ね、ほんの“ちょっとの差”をつけてねじ伏せたのだと感じました。

愛媛はシーズン前の練習試合を見たときも、すでに出来上がっている印象でしたが、さらに成長が感じられ今後も侮れない相手に違いないでしょう。そして、その愛媛を退けた熊本もこの試合で勝ち得たものは大きい。若きエースだけでなく、チーム全体が一皮剥けたと言ったら喜びすぎでしょうか。しかし、今週はそんな勝利の余韻に浸っている暇もなく、水曜日はアウェー京都戦。3勝3分6敗の勝ち点12で16位に“低迷”している京都ですが、ここ3試合は2勝1分と徐々に本来の力を発揮し始めているようです。大分戦の教訓を愛媛戦に生かした熊本。さて初顔合わせの京都に対してはどんなモチベーションで臨むのか。分岐点に差し掛かっての連戦。次の戦いはすでに始まっていますね。

6月19日(日) 2011 J2リーグ戦 第17節
大分 2 - 2 熊本 (19:05/大銀ド/6,637人)
得点者:13' 松橋章太(熊本)、48' 土岐田洸平(大分)、53' 西弘則(大分)、89' 矢野大輔(熊本)


“ぼやーっ”とした雰囲気がありましたね。試合前からわれわれファンにもなんとなく。前節FC東京に惜しくも敗れ、しかしそれは、今現在の僅かな実力差だと気持ちを切り替えたまではよかったんですが。次の試合からは連勝していこう、連勝していけるだろう。そういう気持ちが下位に沈む相手に対して「負けはしないだろう」という、慢心というか気持ちの隙を作っていたのかも知れません。

大 分
18イ ドンミョン 20森島
11チェ ジョンハン8西
32宮沢6土岐田
36安川2藤川
25阪田26池田
 1清水 

熊 本
9長沢10松橋
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

今季初先発の松橋のゴールで先制。左サイド奥へのスルーパスに原田が懸命に追いついて上げたクロス。中央でDFがこぼしたところを泥臭く押し込んだ松橋らしい得点でした。前半は全く熊本のペース。片山が左から持ち込むがシュートはポストに嫌われるといった絶好機もあって、よくありがちな、根拠のない“なんとなく”このまま行けそうな雰囲気。確かに早い時間帯の先制点で、前半は余裕もって試合を進められたのでしょう。しかし、逆に、相手にとっては早い時間帯の失点は、気持ちを立て直す余裕もあって、メンタル的にはそれほどのダメージはなかったのではないかと。ちょうど水前寺の千葉戦のときの熊本のように。

そして後半。熊本の立ち上がりは、明らかに真空の時間帯でしたね。「2失点した時間帯は何が起きたかわからない。気を失ったような空白の時間だった」と試合後、高木監督が言うように。熊本ゴール前での混戦に高く上がったボールは土岐田の足元に。片山のチェイシングを素早く剥がすと同点弾を打ち込みます。これで浮き足だったのか、続いても左サイド奥まで持ち込まれ入れられたグラウンダーのクロスに、西が合わせてあっという間に逆転されてしまいます。

「あの失点は正直言って修正をかける時間はないし、選手が何を感じ、どう考えてプレーしたのか全くわからない。初めての経験をさせてもらった」という、戦術家の高木監督としては異例のコメント。この時間帯のチーム全体の当惑ぶりが伝わってきます。ハーフタイムでの相手方の修正に対応できないところがあったのか? それとも単純なミスということだったのか? 今シーズン、正真正銘の流れのなかでの初めての失点。それも短い時間に連続して。監督のショックも相当大きかっただろうと想像されます。

その後も続く大分の攻勢。前半10本ものシュートを放った熊本でしたが、後半は押し込まれ続ける。「パスミスだけで50回以上あった」と指揮官が嘆くように、大きなサイドチェンジのパス、あるいは縦に入れるパスがことごとく読まれ、相手の攻撃の起点にさえなってしまいます。

熊本は松橋に代えて大迫。長沢を諦め武富を投入。特にこの日の長沢は完全に“消されて”いました。「(清水の育成の頃から見ているので)性格も含めて全て長沢のことは“わかっている”」と豪語した敵将・田坂監督ではありましたが…。

終了間際、大迫がエリア右奥まで追いかけて鋭くクロスを上げる。矢野がDFに寄せられながらもうまく頭に当ててゴール。熊本が同点に追いついて、昨シーズン以来、三度目となる大分とのカードはまたも引き分けに終わりました。

この梅雨空のようなどんよりした結果。完全な負け試合。連敗しなかったこと、それだけが救いだったと言うしかない。確かに、以前だったら、あの流れであれば3-1とか4-1でやられていたようなゲーム展開。切り替えて、凌いで、なんとか帳尻を合わせた。そこはやはり強くなった部分かなと思います。

このカテゴリー、ギリギリに張りつめて、集中していなければ、それは油断であり、緩みであり、隙ありということなのでしょう。どのチームも基本的な戦力に大差はない。経験値や戦術の浸透や、メンタル面で優劣があるくらい。若いチームだろうが、3連敗中であろうが、あっと言う間に持っていかれる。そんな戒めを改めて感じさせました。

試合前にはエジミウソンと旧交を温めていたらしい大分のFW森島は、しかし試合中は何度もそのエジミウソンと“やり合う”姿が見られた。ときには熱くなって詰め寄るほどに。そんな森島は試合後、引き分けの悔しさに涙を流していたと聞きます。また、これまで見た大分の数試合でも“消える”時間の多かった西。その西に今日の熊本は翻弄されていました。後半のエリア内でのドリブルからのシュートには肝を冷やした。「絶対に負けたくなかった」と言う西。今シーズン一番の切れ味ではなかったのでしょうか。

「武者震い」するぐらいの緊張感。キックオフの笛の前のそんな状況が好きです。目の前のひとつの試合に寄せる強い思い。そのチーム全体の思いがどれほど結集されるのか。そしてそれが、90分間持続できるか。シーズンを通してできるか。

前のエントリーで「長いシーズン、どんなチームにも好不調の波が訪れる。この指揮官は、むしろ好不調に左右されない安定性から土台を作っているのかもしれない」と書きました。正直言って、今の熊本は好不調でいえば不調の波の上にいるのではないでしょうか。しかし、そんななかでも引き分けに持ち込むことができたのはひとつの“安定性”とも言えるのかと。しかし本当の勝者の安定性のためには、メンタルという要素がとてつもなく大きいことを実感します。

チームもわれわれファンにとっても我慢の試合が続く(としか言いようがないのですが…)。“50回以上のパスミス”と嘆いた指揮官。おそらくこの試合も徹底したビデオ分析をするのでしょう。その原因を特定して修正に取り組む一週間になるに違いありません。次節は愛媛をホームに迎えます。いつの間にか昇格圏の3位に位置する“好調”愛媛。しかし、簡単なゲームなどひとつもないのと同じく、どのチームに対しても勝機は100%ある。前を行くチームの背中だけはハッキリと見える位置にいたい。そろそろリーグ戦の分岐点に差し掛かってきたようです。

6月12日(日) 2011 J2リーグ戦 第16節
熊本 0 - 1 F東京 (19:04/熊本/5,204人)
得点者:20' ロベルトセザー(F東京)


大雨警報発令中の熊本。試合は中止ではなかろうか思っていました。まさかあれだけの長時間、降り続いた大雨、さすがのKKのピッチも冠水状態では?とも想像していましたが…。しかし何のことはない。前半こそ、激しい雨の時間帯に、一瞬ボールが水しぶきをたてていたぐらい。芝が剥げるどころか、逆に鏡のようなピッチコンディション。これはもう、すごいとしか言いようがありませんでした。このKKウィングというスタジアムの基本設計の確かさと、日頃の整備に脱帽、感謝ですね。しかも、避難勧告も出る豪雨の中、スタンドも閑散かと思われましたが、駐車場は満杯。5000人を超えるファンが詰めかけ、これにも正直驚かされた。(われわれと同じような)サッカー馬鹿の多さに呆れてしまいそうです。

そして、こんな大雨とは予想しなかっただろう東京サポ。楽しんでいましたね、サッカーを。ゴール裏ゲートからの登場には、昔、東京キッドブラザースがやっていた「ハーメルンの笛吹き男」の場面が思わず浮かび(古い!)、懐のあるユーモアやウィットを感じさせました。思えば、07年の天皇杯準々決勝「広島・FC東京戦」がここKKウィングで行われたときも、東京サポは同じように登場してきた。時節柄、みんながサンタクロースの格好でした。あのときは、Jリーグチームのサポーターってただただすごいなと素直に感動していた。しかし今、ホームに迎える公式戦の対戦相手なのです。

熊 本
9長沢30仲間
 27ファビオ 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

FC東京
 9ロベルトセザー 
 22羽生 
39谷澤27田邉
10梶山4高橋
14中村2徳永
6今野3森重
 20権田 

今や日本代表の不動のCBとも言える今野、そして各年代代表でもあった森重が守るFC東京の最終ラインはとても高い位置にある。自然、熊本は押し込まれます。20分、左サイドで与えたFKからの流れ。ゴール前に上げられたクロスに対してはヘッドで競り勝ったものの、こぼれたボールが詰めていたセザーの元へ。これをダイレクトに打たれて先制を許してしまいました。

しかし、その後は熊本も反転攻勢。徳永のクリアボールを拾った長沢がフリーで打つ。あるいは大きなサイドチェンジから市村がエリア内に持ち込む。原田のクロスから長沢が繋いで右から根占など、東京ゴールを襲います。先制されても千葉戦のときのように、追いつくのは時間の問題。そんな雰囲気さえ感じられたのですが…。激しく降り続く雨は、選手に“重く”のしかかっていたようです。この悪環境下では、やはり個の技術の差が浮き彫りにされたのではないでしょうか。まさしくスカパー!!解説者の池之上さんが言うように(パスを受ける側の)「右足なのか左足なのか。どのタイミングなのか、そこのところ」といった紙一重の差が。

後半に関していえば、熊本得意のプレスがうまく“はまらない”。組織的な守備がかみ合わない。と言った印象。そこをうまく剥がして攻撃を組み立てるFC東京のうまさ。あるいは熊本の最終ラインにボールを回させて、奪いどころを狙っているような。目指しているサッカーのお手本を見せられているような気もしました。それでも熊本は、よく我慢してチャンスをうかがったと思うし、決定機も作っていた。しかし、その絶対数が少なかった。こちらがミスをしてチャンスを潰していた場面も多かったし、アイデアが足りない部分も見えました。この後半には反省材料がてんこ盛りでしょう。

それにしてもまたセットプレーからの失点だということが残念です。今季の6失点のうち、草津戦の1点以外はすべてセットプレーから(その草津戦もスローインのリスタートからだったんですが…)。何かが緩んでしまうのか? あるいは数的優位を作って守り、シュートを打たせない確率論のサッカーで、セットプレーではそうはいかないからなのか? きっちり守っているのでセットプレーを与える機会が増えるからなのか? 逆に、今シーズン、セットプレーからの得点が、未だに無い。これも何なのか? 課題は尽きません。

U-22代表の正GK権田の力量にも感心させられました。最後アディッショナルタイムの好機も潰され。その反応と安定感。権田と南。Jリーグ全体を通しても屈指のGK同士の“締まった”ゲームだったと言えるのかも知れません。

「今日のゲームの攻撃に関しては、とにかく自分たちのサッカーをやってみろと、そういう意味でのトライをして、よくやってくれたと思います。」敗れはしたものの、高木監督の言葉には一定の評価とどこかしら満足感も感じられました。

「特別なことは僕自身もやってないですし、選手も決定力を高めるとか、百発百中のストライカーになれというのは難しいことなので、今やっていることを継続してやっていくことが重要なことだと思います。このチームはそうやって少しずつ良くなっていくとか、悪い部分は修正していくことが必要なので、それで安定性が出るようにやっていきたいなと思います」とも。

先制した試合はいい結果に繋がっている。先制されても2点目は取られていない。2点目をとられなければ、サッカーはどう転ぶか最後までわからない。それは今日の試合もできているわけで。「切れて」「混乱して」大敗を喫してしまう、そんな試合になるどころか、最後まで自分たちのサッカーで互角に戦った。同じJ1級のスター軍団だった柏と昨年対戦したときと比べ、内容が全く違っているのは確かです。

長いシーズン、どんなチームにも好不調の波が訪れる。この指揮官は、むしろ好不調に左右されない安定性から土台を作っているのかもしれません。それはいわばシーズンを通して“積み上げ”、“成長”していくということなのでしょう。その成長を測るうえで、今のFC東京は格好の判断材料だったと思います。もちろん勝ちたかった。たった1点差を覆せなかった。ではその1点の差以上に力の差があったのか、なかったのか。それは観る人によってもまた違ってくるでしょう。ついつい“決定力不足”などという言葉を使って総括したり、比べたりしがちですが…。

「ひとつの場所へたどりつく道はひとつではない」(ドラマ「クリミナル・マインド」シーズン1#16)―などどいう格言を無理やりですが引っ張り出してみました。熊本は熊本なりの道をたどって行けばいい。このチームの成長のあり様をシーズンを通してしっかりと見届けたい。そう思います。
自分たちの子どもと同年代とも言っていいくらい。そんな年ごろの彼が下した決断は、われわれの胸にもずっしりと響いてくる重いものでした。

今日9日付けの熊日朝刊に掲載されていた記事。被災地から帰ってきた彼は、池谷GMに「夢に出てくる。いても立ってもいられない」そう話していたそうです。

プロサッカー選手として踏み出したばかりの23歳の若者が、生まれ育った故郷・東松島で目にした光景は、おそらくは言葉では表現しがたいような、われわれには想像もつかないようなものだったのでしょう。

「選手を続けて行く事が良いのか悩み続けた」というコメントに、彼が受けたショック、無常感、何をすることも、前に進むことができない心境、悩み、苦しみ、葛藤した様子が窺われます。

「故郷に帰り、小さな力かも知れませんが、故郷の為に何かをしたいと考えています」と。澄んだ、真っ直ぐな目線。その記事写真は、今シーズンのプレス用写真には違いありませんでしたが、今にも彼の肉声が聞こえてきそうな気がしました。何者にも止められない強い意志とともに。

すでにチームを離れているような報道なので、今週末のJ2リーグ戦に出場することは叶わないかもしれません。昨年の天皇杯愛媛FC戦の後半44分からの途中出場だけが彼のプロとしての公式戦績になりました。

Jの記録には残らないかもしれないけれど、われわれファンに深い感銘を残して、熊本の歴史に確かな記憶を刻んで、加藤健太は故郷に帰って行きます。

人生はサッカーだけではない。その気になれば、人生のいたるところにサッカーは見つけられる。

がんばれ加藤。また会おう。

6月4日(土)  2011 J2リーグ戦 第15節
富山 1 - 1 熊本 (17:04/富山/2,390人)
得点者 : 28' 森泰次郎(富山)、77' 片山奨典(熊本)


上位陣がいずれも足踏みしてくれたこの節、結果的にはわがチームもまたお付き合いする格好になりました。「追いつけたのは少し成長した点だが、勝ちきれないのはまだまだということ」(熊日朝刊)という試合後の南の談話。それが全てを言い表しているような気がします。

安間監督率いる富山、昨シーズンの対戦でその3―3―3―1の斬新なシステムに翻弄された印象が強く残っていました。ただ、一方で今回は密かな期待も。変則とも言えるこのシステムに対しては、うちの中盤ダイヤモンドが“はまる”のではないかと。前回の対戦時も、後半途中に藤田を投入し中盤をダイヤモンドにしてからは攻勢を得た。それを思い出したからです。そういう意味でもこの試合、今シーズン一貫してトップ下を勤めるファビオに対する期待が大きかったのは確かです。そして次々と飛び出してくる富山の2列目、3列目に対しての対処。中盤の底のエジミウソンの働きの重要性も。そのエジミウソンの腕に、この試合のキャプテンマークが巻かれていました。

富 山
10苔口
7朝日8大西
9黒部
15平出6西野
25森
24松原19池端
27吉川
1内藤


熊 本
9長沢14武富
 27ファビオ 
23根占22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
16矢野4廣井
 18南 

開始早々、ロングフィードに長沢が飛び出す。うまく体を入れてDF3人を置き去りにしキーパーと1対1の決定的チャンス。しかしシュートは枠を外れます。この日、先発初出場の富山のDF松原は相当緊張していたらしい。「たら」「れば」は御法度ですが、ここを決めていたら、完全にこのルーキーを自滅させることができたのでしょう。しかし逆にこれで目が覚めた松原に、長沢が完全に密着される。まるでオーロイに熊本がしたことのように、長沢から制空権を奪ってしまいました。

それにしても安間監督によく研究されていましたね。それは現地のゴール裏からも感じられたらしい。富山のキープレーヤーの大西が、その攻撃性を封印して、左SBの原田を密着マーク。上がらせないだけでなく、ここが熊本のボールの出所とまで見切って自由にさせませんでした。当然、市村への大きなサイドチェンジのパスも通らない。サイドが隙の3バックの背後をなかなか突けずに、逆に密集する中へ中へと絞り込まれていくようでした。

立ち上がりのバタバタ感から次第に富山も落ち着いてきました。セットプレーからのロングボール。ポストで落として右に流れたところに俊足の苔口が走り込みクロスを入れるとファーにも何人も飛び込んでいる。富山らしい攻撃、熊本の危ない場面。失点は続くCKの流れからでした。クリアボールをボランチの森が詰めてきてミドルで打つ。DFに当たって角度を変えたシュートが、熊本のゴール左角に転がり込んでしまいます。

事故といえば事故だし、クリアが小さい、クリアのセカンドに詰めていない、と言えば言えるし…といった失点でした。もちろん、先制されて慌てるほど、今の熊本は”若く”はないという落ち着きは確かにありました。しかし、それにしても同点に追いつくまでに時間がかかりすぎました。前線でボールが収まらない熊本。縦のボールが通らない。後半すぐに指揮官はファビオを諦め、片山を投入。吉井に代えて大迫。突っかけていく選手が前線で増えることによって、徐々に熊本がポゼッションを獲得する。市村が対峙する朝日を押し込み始めます。

ようやくの77分、根占からのパスに後方から走り込む市村。猛スピードのまま右サイドを突くと相手DFは付ききれない。速いクロスはファーサイドにこぼれて、フリーの片山のシュートが突き刺さる。完全に崩しきった一連の攻撃。やはり今日も市村のオーバーラップからでした。

ここからゲームはオープンな展開に。富山も勝ちたい。YKKのDNAを感じさせる鋭いカウンター攻撃。たぶんあの時代の選手はもはや朝日しか残っていないはずなのですが…。残り時間10分。ここで熊本はエジミウソンを下げて宇留野を投入。われわれは高木監督の強いメッセージを込めた交代と感じました。「点を取りに行く」という意志を、チームにだけでなく、彼のこと、彼の怖さをよく知っているはずの敵将・安間監督にも示す。

主導権の奪い合いはしかし、互いのゴールを揺らすことはできず、終了間際には前節・北九州に押し込まれた経験を逆に活かすように、富山が熊本のゴールを脅かし、それでも守りきった熊本が勝ち点1をもぎ取ったという終わり方になりました。

アウェイで勝ち点1。先制されたが、点を取りに行って追いついた。これで6試合負けなし…。これまでなら「悪くない結果だ」。そう言ってしまいそうです。しかし、今募るこのモヤモヤ感は何なのでしょう。評価の難しいゲーム。われわれが感じるこの難しさは何なのでしょうか。「昇格争いをしている熊本から勝ち点1を取れたのはとても大きい(熊日朝刊)」という安間監督のコメントはいかにも謙虚すぎるし、鵜呑みにはできません。が、あの戦略家に単なるスカウティングということだけでなく“研究”されていたということ。研究される対象になってしまったということは確かなようです。

この試合、前半だけならよく言う“何も得るもののない試合”だったし、全く安間監督にしてやられた試合ということだったでしょう。しかし、追いついた熊本。その修正力、復元力には確かなものが感じられました。ハーフタイムで監督が指示するだけでなく、選手一人一人にもそういったゲーム観が感じられる。ベンチには局面を打開できそうな選手がいる。選手の疲労度ではなく、戦術的な交代が目に付く。そういうチーム全体の成長も実感できていると思うのです。

前々節・千葉戦のエントリーで“試合後の高木監督のコメントを読んで、この戦術家がその試合に臨んだスカウティングやゲームプランを、素人分析ながらもあれこれと推測することが、われわれの楽しみのひとつになってきています”と書きました。この試合でも高木監督は気になるコメントを残しています。「自分の中でもまだ考えの整理がついていないが」と前置きし、主に前半の問題点を分析した後、「ここでは具体的には言えないが、自分に大きなミスがあって本来なら追加点が取れたかもしれないのに奪うことができなかった」(J'sGOAL)と。喰い付かずにはおれません。

思うに、大迫、その次の宇留野を入れたあたりの、選手起用なのか順番なのか。あるいは指示した”役割”について戦術的な反省があったのか。素人目にはそれ以上のことは読み取れませんが、ただ、それが追加点を奪いに行って、奪えなかったことと直結した反省であり、勝ち点1という結果に全然満足していないということだけは確かなようです。

冒頭の南の言葉が、このモヤモヤ感を言い表しているのでしょう。後半同点に追いつくことができるようになった”強さ”はしかし、昇格を目指すチームが持つべき逆転する”強さ”にまでは至っていないということ。それはわれわれファンにとっても言えることで、なんだかんだ言ってもまだ一喜一憂の根性が抜けていないような。強者の、上位の、昇格する者のメンタリティーが、まだ身についていないのかなと。

次節、いよいよ強敵、難敵・FC東京をホームに迎えます。これまた「相手のいいところを消すようなスカウティング」を得意とする高木監督にとっては、腕の見せ所のようなカード。監督の戦術、選手たちの闘志、そしてわれわれファンの総力。FC東京をねじ伏せて昇格ラインをはっきりと見据えたい。さあ、負けられない試合がずっと続きます。