7月24日(日) 2011 J2リーグ戦 第22節
F東京 5 - 0 熊本 (18:34/国立/18,195人)
得点者:44' ロベルトセザー(F東京)、48' 羽生直剛(F東京)、67' 谷澤達也(F東京)、73' 徳永悠平(F東京)、87' ルーカス(F東京)


熊本にとっては初見参となる国立競技場で、FC東京との2度目の対戦は、おもいもかけぬワンサイドゲームになってしまいました。堅守を誇ったチームが5失点。それも同じくリーグ1の堅守を誇るチームから突きつけられた現実は厳しいものでした。

前回対戦時は0-1の惜敗。そのときのエントリーを読むと「最後まで自分たちのサッカーで互角に戦った」と書いています。しかし同時にいかんともしがたい「個の技術の差」についても触れていました。前節から首位に立っているFC東京は、あの試合が浮上のきっかけになったという。熊本が浮上のきっかけを与えてしまったツケは、積もり積もってここで支払うことになってしまいました。

FC東京
 9ロベルトセザー 
 22羽生 
27田邉39矢澤
10梶山4高橋
14中村2徳永
6今野3森重
 1塩田 

熊 本
9長沢 27ファビオ
7片山14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王2チョ・ソンジン
 18南 

彼我の力の差が大きいことは指揮官もわかっていたと思います。しかし、真正面からいくしかないということも。開始早々押し込んだ熊本は、原田が高いクロス。それを繋いで落ちたところにエジミウソンのシュートは惜しくもバーを越える。立ち上がりはよし。という感じでした。

しかし、中盤からどんどん上がってくる東京に対して守備組織が後手にまわる。スカパー!解説の元FC東京監督・城福氏が、「熊本はボールの奪いどころがはっきりしない」と指摘したように、ジリジリとバイタルエリアを広げてしまう。東京は昨年の柏のようなチーム。とにかくミスがない。半端なプレスではパスミスをしてくれない。前回対戦時は「熊本得意のプレスがうまく“はまらない”。組織的な守備がかみ合わない」「うまく剥がして攻撃を組み立てる」と書きましたが、剥がされるのではなく、一瞬にしてタテにスピードアップされて置いていかれるという感じ。結果、怖がってプレスに行けなくなる。セカンドが全く取れなくて更に一方的になってしまう。余裕をなくしているので、セカンドが読めていないという悪循環。

試合開始直後にエジミウソンがベンチに対して何か懸命に確かめようとしていました。多分、試合前の想定と大きく違っていることがあったのか。しかし、あの瞬間に修正できるような対応力を求めるのは酷だったでしょう。とにかく前半は、凌ぐしかないという展開でした。

ただ、前半終了間際の退場劇までは、南の好守もあって千葉戦のようないくら撃たれても、入りっこないというようなリズムになっていたのも事実。FC東京の大熊監督も、試合後「攻撃に関しては、0-0で前半を折り返してしまうと、サッカーなのでわからなくなる。ああいったPKがあって、相手が10人にならなければわからない展開だった」と述懐しています。

強くプレスに行けない理由は、もうひとつありました。この試合がJで初めての笛というロバート・マッドレーというイングランドの審判。その判定の基準がわかりにくいという不安、躊躇。試合が進むにつれ接触プレーでは割と積極的に笛を吹くということがわかってきましたが時既に遅し。FC東京に完全に支配されたあとでした。

最初の根占のプレーに対するPKの判定は実に微妙でしたね。思い浮かんだのは、アジア杯準決勝の韓国戦。ロングボールを追うパク・チソンに、今野が同じようにショルダーチャージでPKを与えたシーンでした。あのときの解説者は「ショルダーはショルダーだけど、今野はボールを見てなかったということかな…」。そう言っていた。今日の判定はどうだろうかと。とにかく、一発レッドは全くの論外でした。よりによってこんなゲームで“研修”とは。

ゲームプランはこれで完全に崩壊しましたね。「(FC東京は)11人でやっとという相手だと思います。1人少ない状況では、思うようにゲームコントロールができなかった。やはり、自分たちが思い描いていたゲームにすることが不可能だった」と言う高木監督。しかし2点目を奪われた後、ソンジンに代えて矢野、武富に代えて松橋を入れ、4-4-1から3-4-2に変更したあたりは、少し中盤でボールが持てるようになった。ただ、3バックのリスクはいかんともしがたく、カウンターぎみの東京の攻撃、谷澤のドリブルをCBに入っていたエジミウソンが倒して再びPKを与えてしまいました。

その後は完全に東京のモード。バイタルエリアの狭いところを鋭くパスで通しているように見えますが、実は熊本の守備が厳しく行けていないせいでもある。そこを見計らって徳永がミドルシュートで4点目。手を休めない東京は、復帰したルーカスを投入。梶山からのクロスを右足でピタリと止めると、すかさずアウトに蹴りこみ5点目としました。

結局は”止める、蹴る”がすべて。大熊監督が最後のルーカスのゴールを褒めて若い選手にも見習ってほしいと言っていたのもその点だし、高木監督が”質の部分に差がある”と言っていた点も、結局そこに集約されそうです。

われわれから見ても、これまで広島にも、C大阪にも、柏にも感じたことのない差を感じたのは事実。まあ、必ずどこかで突き当たることだし、場所も国立。J1の雰囲気をはっきりと感じたということでしょう。いや雰囲気どころか、広島も、C大阪も、柏も昇格後、J1上位を占めたように、このFC東京は間違いなく今のJ1でも上位のパフォーマンスだと思います。

ミスがあって負けたわけではない。メンバーがそろっていなかったわけでもない、コンディションに問題もない。ひとつひとつのプレーで負けたわけで、とてもわかりやすい。容易ではないが、質の高いワンプレーを積み上げていくしかない。そう思います。

最近、あまりにも引き分けが多い戦いで、何となく感じていた閉塞感、不完全燃焼。これがすっきりとしたようにも感じます。前回対戦のとき書いた「シーズンを通して“積み上げ”、“成長”していく」ということからすれば、あの対戦から1ヵ月半の間に、更に東京に大きく水をあけられていたのだと。もちろん、この結果を消化して、前に向くには時間がかかるでしょう。しかし、このゲームは、熊本が次のステージに行くための(ステップアップとも違う)、大きな技術・戦術のレベルアップを迫るもの。指揮官の「クオリティーの部分、質の部分ではもっともっと突っ込んだトレーニングをしていかなければいけない」というコメントに決意が滲んでいると思います。

今回ばかりは、長いシーズンこんなこともあるとか、サッカーはこんなもんだとか、切り替え切り替え! などということで通り過ごしてはいけないとも思いました。横浜FCや甲府、湘南や徳島などなど、過去大敗を喫した相手にも、必ずその差を少しずつ縮めていったように。いつか必ずFC東京に…。その思いはわれわれにも必要だと思います。



7月17日(日) 2011 J2リーグ戦 第21節
熊本 1 - 1 富山 (19:05/熊本/25,005人)
得点者:22' 苔口卓也(富山)、74' 根占真伍(熊本)

試合前日の土曜日、夕方に床屋のイサムちゃんの店へ。椅子に腰掛けると、テレビにはスカパーの栃木・鳥栖戦のライブ映像が(スカパーのJ2を放送しているっていう床屋も珍しいですが…)。「堤が栃木に期限付きで移籍だそうですね。オレ割と好きな選手だったんですよ」などと旬な話題を振ってくる。「明日は動員かかってますよね」とも。でも最後はいつものように「今、誰が一番年俸が高いッスかね?」などという“興味”に行ってしまうところは、まるで「浮世床」です。そしてその動員の結果が2万5千人ということに。本当に隔世の感があります。

試合開始1時間半ほど前に、第二空港線側から休み休み自転車で向かいましたが、今まで目撃したことがない車の列、列。大渋滞。いくら動員試合とは言え、ここまでのものは経験したことがなかった。スタジアム・グルメの屋台はどこも長い行列で。強い西日の差しこむバックスタンドはあふれんばかりの人でごった返して。そして丁度、まるで約束したかのようなタイミングで、キックオフと同時に太陽は山影に隠れていきました。

しかしどうなんでしょうか。この大動員は果たしてチームの戦いに奏功したのか否かという意味では、ちょっと複雑な感じです。キックオフの笛が鳴っても、そこかしこで席を探して動いているスタンド。“買い物”に席を立ったままの人々。選手入場にマフラーを掲げても、どこかしらざわついたままのスタンドに、観ているこちらも集中力をそがれてしまいます。

熊 本
9長沢 27ファビオ
13大迫14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王18矢野
 18南 

富 山
10苔口
17木本8大西
7朝日
16谷田6西野
15平出
28福田2足助
4江添
21飯田

今日の試合は、前半の失点が全てと言ってもいいかも知れません。12分には市村からのクロスに長沢があと一歩早ければ。17分にも長沢のトラップから振り向きざまのシュートなど、熊本の攻勢が強かったのですが。22分、熊本が原田も上がっての攻撃のあと。富山はGKからすばやくそのサイドの大西に。そしてハーフウェイラインほどの大西は前線の苔口に。苔口は、福王の視界の外から鋭いスピードで裏を取ってきた。苔口の足元に収まったときは、時すでに遅しでした。“あっさり”“シンプル”という感じて、富山の先制弾が突き刺さります。まさしくワンチャンス。富山は最初のシュートを得点に結び付けました。

高木監督は「相手も押し込まれる時間があれば、カウンターというのは1つの狙いとしてある。それをスカウティングでも映像でも、言葉でも伝えた中で、ああいうシーンを作られてしまうのは、僕の力不足なのか…」と嘆きました。

大西と苔口のコンビネーションから奪われた先制ゴール。よくよく見ると、カウンターの切れ味というよりも、いったんタメてスローダウンして、熊本ディフェンスのタイミングをひとつ外して、フッと油断させてのラストパス。福王からすれば追いつけると思ったパスだった。しかし苔口の入り方がうまかった。戦前「知っているからこそ怖さが分かる」(J‘sゴール)と元同僚(セレッソ)の苔口のことを評していた福王でしたが、完全にしてやられた。高木監督が警戒に警戒していたものとはちょっと違うような。「その前の苔口選手がオフの時のポジショニングが良かったのかということを考えれば、非常に回答しづらいシーン」とまわりくどく言っているように、ちょっと残念な失点シーンでした。

富山に先制点を与えたことで、ゲームのコントロールを完全に相手側に奪われてしまったことがこの試合をさらに難しくしてしまいました。熊本はその後も波状攻撃。しかしゴールは割れない。狭いところ狭いところにボールを運んでしまう。ロングボールを多用して縦には揺さぶれるのですが、3-3-3-1の弱点たる横方向をワイドに揺さぶることはできない。

それでも35分には原田の鋭いFKにGKが弾いたところをエジミウソンとファビオが詰めますが富山がクリア。スローインから長沢が落としてエジミウソンのシュートはバーの上。惜しい場面は続きます。しかし、前半のうちに追いついておきたい熊本でしたが、富山の組織的な守りに対して、どことなく手詰まり感があったのも確かです。

「まず0-0の時間を長くしようということで入っています。J1を狙うチームにとっては、僕達みたいなチームとの引き分けは痛いと思います。いろいろなものを利用していかないと、僕たちは勝点を取れない状況です」と安間貴義監督。

苦手意識とまではいかないまでも、何とも言えない戦いにくさを感じる富山。現状での戦力面のウィークポイントなど、自らのポジションを正確に受け止めたうえでの知将・安間監督の知恵。熊本との心理面のやり取りも含めて「いろいろなものを利用する」戦い。前節・鳥栖に勝ち、そして熊本に引き分けたこの流れは、最高の結果なのでしょう。彼我の戦力差を冷徹なまでに見切ったうえで仕掛けてくる安間の“弱者の戦略”。恐るべしと言わざるを得ません。

そして2万5千人の大観衆。初めての経験。応援はパワーにもなるけれど、プレッシャーにもなりかねない。もともとリスクマネジメントが徹底している熊本。大観衆の存在が試合運びをより保守的にしたかもしれない。それは逆に言えば、この相手の大観衆をも敵将は巧妙に利用したのかもしれません。

大迫に代えて仲間。武富に代えて西森。熊本が同点に追いついたのは、ようやく後半も30分近くになってからでした。市村からのクロスに長沢のヘッドはどんぴしゃでしたがGKがクリア。拾って再び市村が入れる。中の仲間に当たってこぼれたところを根占が一閃。隙間のないエリア内でボールはゴールに突き刺さる。同点弾。吠えるスタジアム。そのとき2万5千人のスタンドが、ようやく一体になった感じがしました。

すぐさま熊本は福王を下げてソンジンを入れる。それも前線に入れて3タワーのパワープレーに。正直、あまりわれわれの好みの戦術ではありませんでしたが、エリア内に林立する富山の人数に対しては“高さ”で勝負するという選択だったのかも知れません。そしてこの素早い決断は、高木監督の何が何でも勝つという強い意思を感じるには十分でした。

終わってみれば両者のシュート数は熊本の13に対して富山の3。7回あったCKも、同じくFKも、熊本は十分には活かすことができませんでした。“あっさり”と奪った先制点のあと、しっかり富山に守られて焦らされた熊本。なんとか同点弾を沈めてドローに追いつくことが、今の精一杯の実力だったのかも知れません。

6勝2敗8分。3試合連続引き分けという結果。引き分け数は実にリーグトップ。こうなってくると引き分けの受け入れ方も微妙になってきます。メンタル的には“負けない熊本”であり“切れない熊本”。そして“波の少ない熊本”ということなんですが…。同じく上位陣がうまいぐあいに引き分けなどで足踏みしたこの節。浮上のチャンスを棒に振ったのかも知れないが、結果幸いだったかも知れない。いやいや、ここで迷ってどうする。熊本はまだまだ全くの発展途上。今シーズン、まだ一度も好調の波に乗ったことがない。我慢、我慢。時は必ずやってくるのだと。

さて、そんな複雑な気分の深夜未明。わがなでしこジャパンのワールドカップ初優勝という歴史に残る感動のシーンも、眠い目をこすりながら“目撃”しましたが、われわれの世代としては、サッカーの元日本代表にして日本代表監督も務めたあの森孝慈氏の突然の訃報に触れないわけにはいかないでしょう。選手として68年のメキシコ五輪で銅メダルを獲得するなど、日本サッカー界のために力を尽くされた森氏。そのご冥福を心よりお祈りします。


7月9日(土) 2011 J2リーグ戦 第20節
千葉 1 - 1 熊本 (19:03/フクアリ/9,646人)
得点者:5' 長沢駿(熊本)、9' 竹内彬(千葉)

昇格候補の最右翼・首位の千葉に対して、勝ち点3を譲らず1に止めた。あのフクアリのアウェーの地で勝ち点1をもぎ取った試合。戦術もパフォーマンスも拍手に値するものがありました。そして、この結果が必ずやシーズン最後に“効いて”くるのだと信じたい。そんな価値あるドローゲームでした。

熊本と同時に関東も梅雨明け宣言をしたこの日のナイトゲーム。29度という気温に、スカパー!の実況アナは、幾度も「この暑さが」と表現していましたが、湿度を見れば56%。熊本と比べるべくもない好環境に思えました。

千 葉
 8オーロイ 
 11米倉 
9深井10林
20伊藤7佐藤
4青木13山口
5マークミリガン3竹内
 1岡本 

熊 本
27ファビオ 9長沢
7片山14武富
5エジミウソン23根占
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

前線に長沢が復帰。試合が動いたのは思いのほか早かった。右コーナーから弧を描いて放たれた原田のキック。マークに付いていたオーロイの前、一瞬早く飛び込んだ長沢が頭で反らすとゴールに突き刺さる。ここのところずっと試合の入り方が良いと感じてはいましたが、開始5分での先制弾で、フクアリの千葉サポーターを慌てさせます。

高木監督が千葉対策として、後半に千葉サポーター側のゴールに向かって攻める時の千葉の迫力やスタジアムの盛り上がりを警戒してか、千葉が第2節で対戦した湘南と同様に前半キックオフ時のエンドをホーム側にした(J's GOAL)といいます。細かいけれど小さくはない配慮。結果的にはそれも大いに奏功したのだと思いました。

しかし4分後には千葉も同点に追いすがる。中央で与えたFK。林の強烈な無回転シュートを弾くしかなかった南。それをDF竹内に詰められて押し込まれました。FKの瞬間、千葉は3人の選手がゴールに向かって走り詰めていた。林のぶれ球から拾って押し込む。千葉のこのデザインされたセットプレーは警戒すべきでした。

順序こそ逆でしたが、長沢と竹内。前回対戦と全く同じプレーヤーが点を決める。その後は全く互角の展開。ポゼッションで千葉に圧倒されるかと危惧していましたが、さにあらず。早いパス回しでボールを保持するのは熊本。千葉に奪わせない。奪っても回すだけで速攻を仕掛けない千葉。ただひとつ、前半終了間際のカウンターから深井の思い切りの良いミドルは南がなんとかセーブ。深井らしいプレー。彼にフリーで撃たせてはいけない。集中力を要する相手でした。

前半の戦い。解説者は、(気候条件などもあって)千葉はまだ“行って”ない、“抑えて”いる。との見方を示していました。ドワイト監督の「後半、もっとアグレッシブにいこう」というハーフタイムコメントが伝えられると、やはりそうだったのだと。しかし試合後の監督コメント、選手コメントを見れば、そうではなかったようにもまた感じる。見ているわれわれは、やはり、前回対戦のような千葉の出方だったような。意図的に行ってないのでもなく、抑えているわけでもなく。微妙に「行きにくさ」を感じていたのではないかと。それほど熊本がオーガナイズされていたと言えるのではないでしょうか。

いつも感じるのですが、テレビ画面で見るとこのスタジアムはカメラ位置、カメラワークに迫力があって、ゲームのスピード感が伝わってくる。本来根占は中央に絞りぎみなので気づきませんでしたが、この日はいつもと違って中盤はボックス型だったらしい。武富が右サイドだったのでしょうか。前回対戦時、「次はドワイト監督もしっかりスカウティングしてくるだろう」と書きましたが、そのスカウティングの裏をかく狙いがあったのか。さらに前線での長沢、ファビオという2枚の高さに威圧されている様子も見える。強豪・千葉に一歩も譲らずがっちりはまった互角の勝負は、「勝利」の期待感も含めて見ているわれわれをワクワクさせました。

しかし、後半、出だしの片山のプレーと退場劇が、この試合全体の流れや性格を根本から変えてしまいました。うまく後半のゲームに入れなかったのか。あるいはサイドからの攻撃は徹底して潰すという戦術理解に忠実にいった結果なのか。全く解せない立て続けのファールプレーだったのですが…。まあ、それはともかくとして、熊本は10人になった。しかも後半6分。残り時間40分もある状況でした。

ここで熊本は京都戦でも見せた4-4-1のシフトに。ファビオを迷いなく左サイドハーフに下げます。ここで選手交代が必要でなかったこともよかった、そんなファビオのユーティリティーがあったこともチーム力だろうと思いました。そして徹底して守る。すべてクリアする。中途半端につないで攻めることはしない。確実につなげる場面だけ押し上げる。セットプレーをとれればその得点機会だけをうかがう。じつに分かりやすい。カウンターもあまり意識しない、フリーランニングもないから体力も温存できる。そんなこともあったかもしれません。

「結論で言うと、結果的には勝点1でしたが、それが我々にとってはOKなのか。それとも、もちろんサッカーにはアクシデントは付き物ですけども、ひょっとしたら10人でも点が取れたんじゃないかという、そういうことを考えれば(勝点)1で本当によかったのかな(?)と」高木監督。

10人という条件を瞬時に受け入れて、ゲームに向かう姿勢を全員で共有しながら軌道修正するということ。解説者も「熊本は4-4-1でうまくラインを作っている。なかなかはいっていくのは難しい」と述べ、 J's GOALレポーターも「(熊本の)目の前の2ラインは綺麗で見事だった」と書いていました。

テレビを見ているわれわれでもいい加減にしたら、と思うくらいだったので、選手は一層そう思ったことでしょう。監督の戦術批判ともとれる青木良太のコメント「相手が10人になってからは、相手がゴール前を固めてきていたので、ミドルシュートを打つとか工夫が必要だったと思う。ただ、ドワイト監督からサイドからボールを入れろという指示があったので、サイドからの攻撃に偏ってしまった…」と。前回対戦のときにも感じたことですが、千葉というチーム、監督の戦術的な統率が相当強いんだなと。

確かに終盤は“集中砲火”とも言える千葉の猛攻にさらされました。しかしなんだか不思議と点を取られる気がしない。ゴール前のオーロイにどんどん入れてくる。確かにその高さは脅威だけど、クロスの中央では福王、矢野が跳ね返す。そんな千葉の“当たり前”のような攻撃に助かっている。こぼれるところには必ずエジミウソン。深井や林はクロス供給者となって、ゴールから遠い。数的不利を利用されて“崩される”ことこそ脅威なのに、崩されていない。残り5分でのソンジンと西森の投入は最終的な“仕上げ”でした。5バックにして、オーロイにはソンジンがマークに付く。福王はスイーパー役に回ります。

最後まで仕留め切れなかった千葉。翌日の熊日によれば「試合終了のホイッスルと同時に約1万人の千葉サポーターが静まり返った」のだと。ある意味“四面楚歌”といえるアウェー・フクアリ。しかしたった“一面”だけど、その力が今日は非常に大きかった。前半、長沢のゴールを呼び寄せ、そして後半の猛攻を跳ね返し続けた南を後ろから支えたのは、叫び続け、跳び続けた赤いゴール裏サポーターの“後押し”だったんだと思いました。


7月2日(土) 2011 J2リーグ戦 第19節
熊本 0 - 0 鳥栖 (19:04/熊本/6,795人)

同じ引き分けと言っても、痛恨の引き分けと、いい内容のドローとふたつあると思うのですが、今日の試合は大いに拍手を送っていいものだったと思いました。確かに90分間ゴールレスのゲームに、ストレスを感じたファンも多かったかも知れません。しかし、高木監督が試合後、「本来のサッカーの面白い部分というのが見えたんじゃないか」と言う意味も伝わったし、敵将・尹晶煥監督が「どちらもディフェンシブに戦っていた」と言うのも、けして消極的な戦い方をしたという意味ではなく、リーグ1位、2位という被シュート数の少なさを争うチーム同士が、互いの攻撃の芽を潰すことに全力を注入した結果だったと思います。

「3連戦をチーム全体の総力で戦いたい」(スカパー)と述べていた高木監督は、エジミウソンの疲労を考慮してか、その位置に原田、左SBには筑城を配してきました。そして出場停止で長沢を欠く試合であること。これがこの試合のひとつのポイントでもありましたが、その代わりとしてトップの位置に、前節初ゴールを決めたことで気をよくしているだろうファビオ。その相方にはルーキーの斎藤を初先発させました。しかし、幾分の攻撃力の低下は否めなかったのではないか。いや、前線の守備力という意味でも大きな損失だったかも知れません。それだけ彼の存在が、今シーズン、層が厚くなってきた今の熊本の中でも、戦術的に替えのきかないプレーヤーのひとりになっているんだと感じました。

熊 本
27ファビオ17斎藤
 14武富 
7片山23根占
 8原田 
24筑城15市村
6福王16矢野
 18南 

鳥 栖
 9豊田 
 18野田 
10金民友25早坂
15丹羽8永田
3磯崎4田中
20呂2木谷
 21室 

前半20分過ぎまでは熊本の時間帯でした。右サイドの市村を使って起点を作れていたし、セカンドボールをよく拾って波状攻撃を仕掛けました。しかし「伝統的にハードワークができるチーム」(高木監督)と評されるとおり、鳥栖のアグレッシブな球際、攻撃への切り替えのスピードに、徐々に押され始めます。相手の両FWは動きにキレがありましたね。連戦のなかでもコンディションのいい二人をチョイスしたのかもしれない。岐阜に快勝した前節は野田、池田のコンビ、愛媛に敗れた前々節は豊田、池田のコンビでした。このあたりの柔軟な先発起用も見逃せない尹晶煥の戦略でした。

ポゼッションはあったが、しっかり守られていた。さらに後半は一方的だったと言えるかも知れません。熊本は1本のシュートも打たせてもらえませんでした。まとめてしまえば、前半は野田に、後半は豊田に、見事に攻略されていた。相手が10人になるまでは、やられている試合でしたが、「我々は救われた部分もありました」(高木監督)ということも含めて負けなかった。

後半34分、鳥栖・磯崎が2枚目のイエローで退場。この退場劇からの試合の流れ、勝ちにいくのか守るのか。あと1枚の残っていた交代カードの切り方。このあたりが試合の一番の見所ではなかったでしょうか。後半40分。鳥栖の攻勢にさらされ続け、このまま守りきっての引き分けも御の字かと思われた時間帯でした。ここで熊本は温存していたエジミウソンを入れる。これにスカパー解説の池ノ上さんは「しぶい!」とひと言唸りました。人数の少ない相手に対して前掛かりになりそうなチームを締める役割なのだと。もちろんチャンスがあれば行く、という余地は残しながら…。

まったくの想像だろうし、事実その後、そんな展開で終わりましたが、われわれの眼にはそのときのエジミウソンというカードは攻撃の狼煙(のろし)に見えてしまいました。鳥栖とは中断期間中の練習試合で数度対戦して、いいところなくやられている。しかし確かその頃の試合にエジミウソンはまだ間に合っていなかったのではなかったでしょうか…。今や熊本の軸として君臨するエジミウソン。本来この試合、鳥栖を破るためにはエジミウソンを当然使いたかったはず。エジミウソンの熊本で勝負したかったはずだと。

しかしこの連戦で疲労による“もしも”の故障があることも怖い。それはシーズンを通してのリスク管理だったのでしょう。エジミウソンの温存は、そんな苦渋の選択だったのではと。そして、ここでエジミウソンを敢えて入れるということ。そのタイミングがきたということ。それは高木監督の実は深い判断だったろうと…。

われわれシロウトもこの時点で、スコアレスで相手は引いてくるということで、松橋よりも大迫。あとDFを1枚、攻撃的なカードに変えたい。という感じでシミュレーションしていたのですが。更にここ数試合をみると、熊本の場合、そこにボランチの枚数、最終ラインの枚数まで「変数」として絡んでくるので、筑城→エジミウソンというのはなかなか面白い判断だなと。全くもって推測の域を出ませんが、ここはとてもサッカーらしい(サッカー観戦の醍醐味ともいえる)楽しみ方をさせてもらいました。

連戦下のコンディションが選手起用や戦術面にもはっきりと影響しているのがわかったこの試合。もちろん相手もおなじ条件、しかも“ハードワーク”を根幹に据える者同士の戦い。こんな連戦の最後に当たるのは、お互いに嫌な相手だったのではないかと思うし、ある意味“もったいない”感じもするバトル・オブ・九州のタイミングでした。しかも体力の消耗戦のようで、実は神経戦とも言えたこの日のゲーム。まるで睨み合い、鍔競り合いのような。“気”を抜いた瞬間にやられる、集中力の持続が問われる。われわれはここに冒頭の「本来のサッカーの面白い部分というのが見えたんじゃないか」という監督の言葉の意味を感じとった次第です。

試合後の様子は、鳥栖の肩の落とし方のほうが大きかったように見えました。“流れ”からしたら、そう思えたのも当然かも知れない。後半多くの決定機を得たにも関わらず、枠を外し続けた鳥栖のエース豊田に対して、ゴール裏からは「ここで気落ちするな」「やれる。やれる」と鼓舞する声がした。そこには「勝てた試合を落とした」という空気が前提としてありました。しかし、鳥栖のGK室は「勝つこともできたかもしれないし、負けていたかもしれない」とコメントした。後ろで守っていた選手には、また違った認識があった。そこがまたサッカーの(サッカーらしい)面白いところでもあります。

南、原田ほか、選手コメントはすでに次の試合に向いている。そして指揮官においては、「現状の中で選手たちをレベルアップさせていくための要因には、この3連戦はなったかもしれないと思います」と言っている。多くのことを得た3連戦。その結果が2勝1分というのは、願ってもないほどほどの成果なのかも知れない。しかし、上をみればやはりなかなか負けなくなった上位陣。昇格ラインの3位東京との勝ち点差が(1ゲーム以上の)4に開きました。これからどれだけ食いついていけるか、離れても諦めない戦いができるか。次節はアウェイでの首位・千葉戦。昇格への本当の厳しい戦いがいよいよ始まります。