8月27日(土) 2011 J2リーグ戦 第26節
東京V 5 - 2 熊本 (18:03/国立/4,602人)
得点者:12' マラニョン(東京V)、37' マラニョン(東京V)、43' 小林祐希(東京V)、62' ソンイニョン(熊本)、78' 河野広貴(東京V)、85' 根占真伍(熊本)、90'+3 市川雅彦(東京V)


東京ヴェルディ
11マラニョン 19阿部
13井上7河野
5佐伯21小林
37中谷18森
23高橋17土屋
 26柴崎 
後半36分 井上 平 → 飯尾 一慶
後半42分 阿部 拓馬 → 巻 誠一郎
後半45分+2 河野 広貴 → 市川 雅彦


熊 本
9長沢17斉藤
 14武富 
23根占22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
2チョ ソンジン28菅沼
 18南 
前半38分 吉井 孝輔 → 廣井 友信
ハーフタイム 齊藤 和樹 → ソン イニョン
後半26分 長沢 駿 → 田中 達也


何と書き出していいのか、正直困っています。「散々でしたね」と書くべきなのか。言ってしまえばそうなんでしょうが、どうも今のわれわれの心境とは完全にはフィットしないような気がします。

局面から言えば、5失点のうち最後の失点を除けば、全てDFのミスでした。1点目は市村が、何故に左SBが前線でというような中谷の猛烈なプレスにあわてて出した横パス。これを菅沼が受け損ねたところを、死角から狙っていたマラニョンに奪われた。2点目も、DF2人に対して前線2人のプレスに、菅沼のトラップをマラニョンに奪われたときに雌雄が決している。3点目は、最終列に下がっていたエジミウソンからのパスミス。そして最も残念だったのは、1点返して流れをつかもうかとしていたときの4失点目。スローインのバウンドしたボールに、途中から入った廣井が見事に“かぶって”しまった。目を覆いたくなりました。

今日の熊本は、いつもより以上に攻撃的でした。両SBの位置を高く上げ、そのカバーのため二人のCBの間に臨機応変でエジミウソンが下がる。これまでなら点がどうしても欲しいという時間帯に見せていたパワープレイぎみのシフトですが、今日は出だしからそうしている。それほど先制点にこだわっていたのでしょうし、確かに前線では武富が何度か裏を取り、久々の先発となった斉藤も、落ち着いてボールに絡んでいきました。

確かにそのために守備ラインが薄くなった。最初から守備陣に負担を掛けすぎたのだと。その綻びをヴェルディに突かれた。そう思いました。戦前「守備からリズムを作る」(スカパー)と指揮官は言っていたはずなのに、どうして? これではまるで2年前のようではないかとも。リーグのなかでも上位の得点数、攻撃力を誇るヴェルディに対して、これは“撃ち合い”に持ち込もうとしたということなのかと。それは戦術的なミスとも言えるのではないかと。

しかし、それぞれの局面はDFのミスではあっても、それは攻撃に転じたときのミスでした。「少し前の選手の動きが止まった時に、どうしても横パス、しかも奪われてはいけないエリアで横パスをしてしまった」「オフの選手の動きがもっとあれば、ボールホルダーもボールを蹴ったかもしれない」(J’s goal)。ディフェンダーのありえないミスではあるものの、それは前にいる選手の“動き”に実は責任があった。高木監督は、試合後すぐの会見で、これはチーム全体のミスであることを指摘し、得点を決めた根占も「前半の失点も自分のミスから」と認めていました。

菅沼の一発レッドは、判定として正直厳しすぎると思いました。そして、このまま試合が壊れてしまうことが残念だと。いいパフォーマンスを見せていた斉藤も、ゲームプラン崩壊の犠牲になって、後半から交代を余儀なくされてしまいました。

まさに散々でしたが、この試合の一筋の光明は、代わって入ったイニョンの初ゴール。そして強化指定選手になったばかりの大学生・田中達也のスキルを見られたことでしたね。イニョンについては、前節の強烈なボレーシュートを例に上げるまでもなく、とてつもない運動能力を持っていると感じさせます。長い手足で飛ぶように走り回る姿は、まるで中央アジアの草原から連れてきた野生馬の様。ちょうど1年前、ファビオを褐色の馬になぞらえたように、熊本は2頭目の駿馬を手に入れました。そういえばイニョンは顔立ちも馬面ですよね(笑)。

後半17分、攻め上がった土屋のシュートをセーブした南が、素早く前線に送る。長沢がヘッドで反らし、イニョンがDFラインを破るとダイレクトで決めました。溜飲が下がるとはこのことでしょう。

田中達也もいい。久々に熊本に強引なドリブルという攻撃の“起点”をもたらしましたね。ヴェルディのディフェンス陣が、手を出すしか止められなかった。何かを起こす予感がします。もっと長く見ていたかった。

ヴェルディというチームのDNAは南米気質で、ムラがある代わりに、乗せたら止められない。そんな印象があります。もちろんマラニョン個人は、元々その代表格。これまでの対戦(甲府時代)では、彼をイライラさせることで潰してきた。そんなチームと、マラニョンを早い時間に大いに気分よくさせてしまった。そこも敗因ではありました。

それでも、それでもです。0-3から、ひとり少ない状態で2点をとったこと。ここは結構、小さくはない。高木監督は、「後半はイケイケドンドンにしろ、ある程度高い位置、特にサイドの選手を高く出していく中で指示を伝えたことに関しては、非常にそれを遂行してくれた」と評価しています。われわれもこの“イケイケ”のモチベーションが、もう一歩、これまでの熊本に足りなかったもののひとつだと思っていました。残念ながらその勢いに4点目の失点が水を差した感もありますが…。0-1だろうが0-5だろうが、失うのは勝ち点3のみ。引き分けだって勝ち点2を失うわけで。しかし、あのままゼロだったら本当に救いようがなかった。散々な敗戦ですが、そこは評価できる点だったのではと思います。

闘う気持ちは十分に見えたと。

「まずは精神面から立て直した方がいいと思います」との監督コメントでした。こんな流れになってしまって、単純にゲームから課題を見つけて、これを修正して、というようなものだけではないけれど…。しかし、一気に精神面と言うことで、思考停止してしまうようではいけないだろうと思います。ミスからの失点であること。それはチーム全体のミスであること。そこからの自滅であることをまず受け止めないといけない。

ただ、監督はすでにミスの原因を探り、前に向こうとしている。スカウティングされ、研究され、厳しくマークされたなかで、さてどうするのか。これからどう積み上げを図っていくのか。このカテゴリーで上を目指していくという本当の戦いが、まさしくこの逆境という形の試練となっている。われわれファンは、応援することしかできません。確かにがっくりするけれど、われわれも下を向いている場合じゃない。なんのこれくらい。まだ絶望の底に足が着いたわけでもなんでもない。

合流間もない岡山戦からDFの要を任され、大量失点の流れにはまってしまった菅沼も、一度外から落ち着いて試合を眺めるいい機会になるのでは。そしてその菅沼を欠くDFラインの構成がどうなるのか、それがどんな結果をもたらすのか。われわれの興味は、既に次の戦いに向かおうとしています。

8月21日(日) 2011 J2リーグ戦 第25節
熊本 0 - 1 徳島 (19:04/熊本/5,345人)
得点者:53' 島村毅(徳島)


この試合の前に、高木監督は「大分戦の勝利で何かを達成したわけではない」(スカパー!)と言って、選手達を戒めたといいます。練習の際には、このところの熊本の天候のように、雷が落ちたとも伝えられる。それはDFの菅沼が言うように「『連勝しよう』という強い気持ちよりも『このまま行けば大丈夫』という甘い雰囲気」(熊日)が、結局試合の中身に反映した。そういうことなのでしょうか。

今季、安定して昇格圏内に留まり続けている徳島のことを「レギュラークラスが同じポジションに二人ずついるようなチーム」だと表現していた指揮官。確かに柿谷こそ故障で欠くものの、その穴には島田。トップにはドウグラスと津田。守りにはエリゼウという布陣は十分脅威でした。対する熊本は、エジミウソンと原田という“中心選手”を累積警告で欠くゲームだということ。まず、われわれの興味はそこがどうカバーできるのか。あるいは、これまでと違う選手起用が新たな可能性を示してくれるのか。ということでした。

熊 本
9長沢26田中俊一
 27ファビオ 
25西森22吉井
 23根占 
24筑城15市村
2チョ ソンジン28菅沼
 18南 
後半12分 西森→片山
後半18分 田中→武富
後半32分 根占→ソン イニョン


徳 島
9ドウグラス 11津田
17衛藤10島田
8倉貫16斉藤
6西嶋22島村
2三木4エリゼウ
 21オ スンフン 
後半19分 ドウグラス→佐藤
後半32分 衛藤→徳重
後半43分 島田→濱田


2トップの一画に入った田中俊一、開始早々から初先発の起用に応える“けれん味”のないプレーぶりを発揮してくれました。右サイドで貰って自らのスピードを活かして持ち上がりクロス。あるいはスローインから吉井が上げたクロスにニアに飛び込む。タイミングこそ合いませんでしたが、まるで吉井のクロスを引き出したかのような動きに、これまでの熊本にはないプレーを見たように感じました。

しかし、試合直前まで滝のように降り続いた雨によって、さすがのKKのピッチコンディションも“重馬場”。ガッチリと向き合う戦いになりましたが、その悪環境のなかで徐々に、技量の差、戦力の差が現れてきます。高木監督が敗因のひとつとして言及したのは「やっぱりボールを止めること…」。止める技術の差。われわれが見ていても、ルーズボールを単純にヘッドではね返さずに、ちょっと無理かなという体勢でも何とか胸トラップしてマイボールにしようとする徳島のプレーの質、その体幹の強さは目立つものがありました。

くさびのパスから一転、前を向いた島田が、ソンジンに付かれながらも強引にシュート。これは南が好セーブ。次第しだいに押し上げられてくる。一気呵成にという感じではなく、一枚二枚と徐々に後方から増えてくる感じ。少しの出足の遅れで後手に回る熊本。それが次々と悪循環になってプレスやパスにも“躊躇”が生まれている感じ。ジリジリと自陣から出られなくなってきます。

「プレッシャーをかけても、前節の大分戦のようにボールを取りきることができなくて、奪っても攻撃にしっかりとつなげられなかった」(J’s goal)。そういう吉井の感想からは、冒頭言われるような気の緩みなどと云うより、ただただ徳島の技術と、それを裏打ちする運動量に、たじろいだという印象を受けます。

そんな吉井も、やや中に絞り気味ではあったのですが、ワンボランチとしてエジミウソンの代役を務めたのは根占。遜色なく務めていましたが、攻撃に転じたときの展開力という意味では差を感じました。前半から妙に選手間の距離が遠い。前線とDFラインが間延びしてしまっていることも、この日の熊本の欠点でした。だからロングパス一辺倒に陥ったのか。あるいは前節の早いクロスからの展開の好イメージが残っていたからなのか。それにしても大きなサイドチェンジがない。

ただし、サッカーはわからないもの。このままの圧力を受け続ければ、いつかは徳島に点が入ってもおかしくないだろうとも見える一方、劣勢ながら前半を凌ぎきってしまうと、その圧力にも順応して、後半熊本にも勝機がある。そうも思えました。

しかし失点の場面は、熊日が「魔の時間帯」と書き、J’s goalの井芹記者も「悪癖」と表現した、まさに後半の立ち上がりでした。中央で与えたFK。島田が濡れたピッチを利用した速いグラウンダーのキックは壁をすり抜けゴールマウスに。南がキャッチしきれず弾く。詰めるドウグラス。南もボールを抑えに掛かりますが、奪ったドウグラスは素早く中に入れた。ボールは根占に当たって、ファーに構えていた島村の足元へ。落ち着いて流し込まれました。

今回は、南がこぼしたところに味方の詰めがなかったわけではない。ソンジンを含めて3人が走りこんでいます。しかしボールはドウグラス側にこぼれた。不運にも見えました。ただ、弾いたところに詰められての失点。がっちり守り切れないという意味では、何ら変わらないことなのかも知れない。さらにその前の局面で言えば、前半からキレキレのプレースキックを蹴っていた島田、そこに安易に自陣でFKを与えること自体が問われることなのかも知れません。南は自身のブログで「自分自身も反省しなければならない」と前置きしながらも、こぼれ球への意識の希薄さを嘆き、「それは逆に攻撃の部分でもそうで、キーパーが弾いたボールを貪欲につめてゴールするとかそういうゴールがほとんどない事もそこにつながる」と書きました。「要は『絶対にマイボールにする』という様な、ボールへの執着心みたいなものがチーム全体として足りない」と。

ここから、田中は残して西森に代えて片山を投入するあたりまでは、前節と似通った展開にも見えました。前への推進力を手に入れ、相手の疲れを待って、まずは同点。そして逆転へと…。しかし、大分戦と違っていたのは、徳島・美濃部監督が「先制点を取るのが鍵だった。自分たちのペースに持っていけた」と言うように、一転守りに軸足を移してきた。それもしっかりブロックを作りながら、高い位置で奪うことを心がけて、追加点は狙う。

単調な攻撃に終始する熊本は、変わって入った片山どころか、今日は市村さえもうまく使うことができませんでした。というよりも、熊本の攻撃の要は市村だということは周知の事実で、そこを使わせないようにしている。そして長沢に対する対処。高さ頼みの長いボールばかりでは、簡単に跳ね返される。ちょうどわれわれがオーロイを封じたときのように…。

研究されているなあ…。つくづくそう感じます。それは上位陣のどのチームからも「難敵・熊本」と呼ばれる“称号”と引き換えの、これもひとつの試練なのでしょう。レギュラー二人を欠くこの試合。二日前の重要な練習を非公開にしたのも、少しでも相手をかく乱しておきたい。そんな意図がありはしないかと思いました。

後半、徳島の守備の秩序だったところが際立って見えました。枚数で上回るところ、必ず身体を投げ出すところ。行き当たりばったりではない“堅固”な守備陣形が叩き込まれているように感じる。こんなに守備堅いチームだったでしょうか。最後の15分は、徳島が引いてきたこと、体力的な問題もあっていい形もありました。しかし、崩れない。崩されない。読まれている。対応されている。最後の最後にはGKスンフンが大きな壁になって立ちはだかりました。

試合終了の笛が鳴ったとき、がっくりと膝を着き、長い間起き上がれなかった筑城の姿が、胸を打ちました。辛抱強く待っていたこの出場機会。辛抱強く準備を続けた日々。ようやく叶ったこの日の相手は古巣の徳島。「自分を手放したチームに負けたくない」(熊日)。そう公言していましたし、それにふさわしい奮闘ぶりでした。それだけに彼は、この敗戦が受け止めがたかったのでしょう。多分、われわれよりも、誰よりも。

南は、この敗戦を「ちょっとの差かもしれないけど、そこを埋めていくのが難しいし、ちょっとの差ではなくて大きな差なのかもしれない」と総括しました。また、「皆さんに合わす顔がないぐらいの感じなので、帽子をかぶって失礼します」と冗談で交わした高木監督。きっと会見の途中まで帽子をかぶっていることすら失念していたのかもしれない。これまでこんな言動はあまり見せなかっただけに、それくらい、“何とも言えない”内容だったということなのでしょうか。どうしようもなくやられたわけはないけれど、決してコンディションがいいとは言えない相手に、僅差とは言え、大きな差を感じさせられた試合。監督の胸の内はわれわれが窺うことのできないものだけれど、そこにある危機感は想像以上に大きいものではないでしょうか。

徳島の斉藤は「簡単には得点をさせてもらえなかった。最後はああいう形で取れたけど、こぼれ球を狙うとか、貪欲さが試合の中では必要になる」「内容が悪くても勝ちきるチームにならないと上がれないと思うし、J1を戦う土台はできていかない。こういう接戦をものにできる強さを、もっとつけていきたい」とコメントしました。足りないもの、ちょっとの差。大きな差を見事に言い当てているように思えます。

美濃部監督は「われわれはちょっと前まで最下位にいたチーム。2位で居ても常に謙虚な気持ちでチャレンジャーとして、次もしっかりとしたいい準備をするだけ。ハードワークするだけ」と言い切りました。この徳島だって長い、苦しい時間をたどって来ているわけで。まだまだ、われわれの道のりは長い。そう感じざるを得ませんでした。

8月13日(土) 2011 J2リーグ戦 第24節
熊本 2 - 1 大分 (19:05/熊本/8,935人)
得点者:52' 三平和司(大分)、79' 長沢駿(熊本)、90'+3 市村篤司(熊本)

ここまでの興奮は、昨年の開幕・千葉戦以来ではないでしょうか。そう言えばあのときも最後に決めたのは市村でした。

3引き分けからアウェー3連敗。その中身は3試合無得点、そして10失点という、ファンであるわれわれでさえ気持ちが折れそうになるような厳しい状況。久々のホームで迎える相手は大分。前回対戦以来3バックに変更し、このところ好調を維持する難敵でした。

熊 本
9長沢13大迫
 27ファビオ 
25西森22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
2チョ ソンジン28菅沼
 18南 

大 分
 11チェ ジョンハン 
8西19前田
14イ ドンミョン9三平
32宮沢14井上
24姜 成浩6土岐田
 4作田 
 1清水 

熊本は長沢の相方に大迫を起用。その大迫が開始から飛ばします。前線で受けてサイドの市村から吉井。深いところからクロスを上げる。こぼれ球をまた大迫が拾って市村のシュート。対する大分は、西が持つと長い距離をドリブルでカウンター。相変わらずこの男の変則的なドリブルは捕まえづらい。

長いボールを多用しながら相手を押し込み、サイドでは西森、吉井が厳しくプレスを掛ける。アタッキングサードでも縦に行こうとする姿勢が見える熊本。しかしフィニッシュまでにはなかなか結びつかない。ジリジリするような前半の展開でした。

後半開始早々、先制は大分。前線に高く上がったイージーなボール。エリア内で三平が受けると鋭く反転してシュート。これは南が好反応で防いだものの。3度続いたCK、低く速いそのボールに、中央から三平が頭で合わせてゴールネットを揺らしました。

今季、先制されて勝利したことはない。そんな不安なデータが嫌でもスタジアムを覆ってきます。それにしてもCKを与える数が多い。自陣のゴール近くに押し込まれ、サイドで突っかけられている結果でした。しかし、それは先制したものの、大分がさらに追加点を奪いにきているからでもありました。もし、あの時間帯から守りに入られたら、もっと難しいことになっていた。そう思います。

同点弾は、大分の一瞬の気の緩みを突いた、ゲームがエアポケットに入ったような瞬間でした。右から運んだボール。市村からのパスをダイレクトで前へ送る大迫。後半途中から入ったイニョンがスルー(あるいはワンタッチか)する格好になって、裏を狙う長沢の足元に。「ゴールは見ていなかった。多分このくらいだろうという感覚で打った」という長沢。打つしかない。迷うことなく、この角度しかないというところに流し込みました。

俄然、スタジアムがうねり、沸き立つ。マフラーが振り回される。このときスカパーの実況では、山崎アナが「喜んでいる時間はありません」「同点ではいけません」と叫んでいる。勝ち越し点を狙うべく早く切り替えろということでしょう。しかし、4試合ぶりの得点。もっともっと喜びを爆発させて、エネルギーを開放していい。駆け寄る菅沼は大きく両手でスタンドを煽って、“さあ、もっと行くぞ、後押ししてくれ”と言わんばかり。そのホームの盛り上げで、一気に流れを引き寄せようと。選手たちこそ必死でした。

これまでの展開だと、追いかけながらも、逆に自分たちが疲れ、集中力を削がれていく、そんな時間帯でした。しかし、今日はなんとしても勝ちたいという気持ちがそうはさせなかった。加えて、これまでは途中交代のコマが、うまくはまらず、全体を動かしなおすことができなかった。しかし今日のイニョン、片山、そして最後に武富というコマは、ぴったりと歯車を噛み合わせ、力強い動力でチームを“縦”に推進しました。

終盤まで続く激しい攻防。大分サポーターが掲示した「白黒はっきりつけようぜ」という横断幕どおり、互いにそう思っているから懸命に声を出す。引き分けはない。いや、熊本はどんな相手であろうと、どんな格好であろうと、今日こそ勝ちたいんだと。

アディッショナルタイムが4分と告げられても両サポーターはヒートアップしている。1分、2分…大分の攻撃が続き、われわれも半ば諦めかけたそのとき、サイドバックに代わった西森のアーリークロスが中央の長沢を越えて、奥の武富の足元に。鋭いシュートはGKが弾く。天を仰ぐ武富。しかし、上がってきた市村がヘッドで入れなおす。ボールは長沢の足元にこぼれる。大分DFに何人も囲まれて突付きあい。その混戦に走り込んだ市村が詰めて足を伸ばした。ボールはゴールに転がり込む。逆転の瞬間でした。

熊本の勝利を告げる長いホイッスルが吹かれ、スタンドも選手たちも、誰もかれもが連敗の重苦しさから解き放たれた喜びを全身で表現するなか、エジミウソンは他の選手を手招きして、集まろうと呼びかけました。それは、勝利を一緒に喜び合うため、この勝利は全員のもの、一人ひとりが懸命にがんばったからこそのひとつの勝利。だからこそ皆でひとつになろうと…。それほどに大きな意味を持った一勝でした。

「長いトンネルをやっとくぐりきった」。試合後、指揮官はホッとした表情で、そう表現しました。「まず、勝利で終えることが我々のチームに本当に必要なことだったので、勝点3を取れたことがいちばんの収穫です」と。

もちろん試合の中身は、前節までとはだいぶ様相が異なってはいて、いい方向に向かいつつあるな、と思いながら見ていましたが、同時に、完全に抜け出すにはもう少し時間がかかるかなという印象もありました。先制されたときは正直4連敗も覚悟しました。

けれど、1点を取るからまた点がとれる。ひとつ勝つから次も勝てる。結果オーライということでもなく、いいイメージを忘れてしまうことで悪循環に陥っていたチーム。とにかく結果が欲しかった。追いついて、最後の最後に逆転できたことも、今日の大きな“精神的収穫”のひとつに違いありません。

菅沼の「この流れに乗って次も勝てば大きく前進できると思う。勝ち続けることが大事だと思います」というコメント。21歳のプレーヤーの言葉とは思えない。“勝ち続けることが大事”。このあたりは勝者のメンタリティーというべきものをすでに備えているような感じさえ受けます。

チーム内で意見しあって出た結論として市村は、「自分たちは球際に強く行き、気持ちで走って、初めて勝てるチーム」(熊日)と語っています。吉井は「戦う気持ちを見せるしかなかった」と。大迫も「僕達のサッカーは走ることがいちばんなので、それを意識して前からプレッシャーをかけた」と。

両サイドからの早めのボール投入も交えた攻撃が、前節までの手詰まり感を打開したと感じます。高さはある。跳ね返されれば、拾いに走る。エリア内で勝負するところに持ち込まないと何も起こらない。前線(バイタル)でのボール争奪に関して、大迫の起用とそのプレーは意図があったし、光っていたと思います。

「今日は大迫を最後まで使い切ろうと思っていた」という高木監督。試合後のゴール裏には長沢とともに、その大迫の姿が。マイクパフォーマンスに招かれ、サポーターのコールを受ける。初ゴールこそ“幻”に終わったものの、今日の頑張りは、賞賛を受けるに値するものでした。

大分の選手たちの試合後のコメントも、熊本の選手コメントと表裏で符号しており、とても興味深いものがありました。結局、ロングボールは完全に織り込んでいたこと、それでも玉際で負けたと。逆転され、ピッチを手で叩きつけ、天を仰ぎ、またガックリ首をうなだれ。これほど悔しがる姿は見ているものを清々しくさえさせてくれます。2000人の大サポーターを引き連れて乗り込んで来た大分。その背負った期待に応えることのできなかった無念さを選手たち皆がストレートに露わにして。選手とファンが同じ場所で戦っているんだなあと。われわれより長い歴史、多くの経験を積んできたクラブ。今また生まれ変わりを果たそうとしている過渡期なのでしょうか。このチームの好敵手となれたことをうれしく、そして刻んできた長い時間を少し羨ましくも思いました。

8月6日(土) 2011 J2リーグ戦 第3節
岡山 4 - 0 熊本 (19:03/カンスタ/5,455人)
得点者:46' 竹田忠嗣(岡山)、70' 久木田紳吾(岡山)、73' チアゴ(岡山)、90'+3 ストヤノフ(岡山)

スカパーの解説者が言うように、「シュートが枠にいくかどうか、それが入ったかどうか」と言ってしまえば、確かにごもっともではあります。しかし、熊本のシュートは十分に崩し切れていないから枠にいかない。ゴールが遠い。われわれはそう思います。いつものようにボールが保持できていた前半。そして、これもまたいつものように崩しきれず。岡山にしてもカウンターはあるもののミスも多い。「互いに前半はゼロで凌ぐのが狙い」と解説者は言いますが、とんでもない。熊本は前半のうちに先制点が欲しかったはず。ただ、「相手が5バックのときに前掛かりになるな」という高木監督の戦前の指示(スカパーから)が効きすぎているのか、攻めているにしても、どうも“重心”が後ろにあるようなチームバランスを感じます。

急逝した松田直樹選手を偲んでスタジアムには半旗が掲げられ、キックオフ前には追悼セレモニーが行われた今節。トピックスは、G大阪からレンタルされたオリンピック代表候補のDF菅沼のいきなりの先発。そしてこれもまた先日加入が発表されたばかりの韓国人FWソン・イニョンはベンチスタート。連敗中とはいえ、熊本にとってフレッシュなニュース。この二人がどんなプレーをするか。それはこの試合のもうひとつの楽しみなテーマでした。

岡 山
 10チアゴ 
22臼井45石原
14小林2澤口
8千明18竹田
23植田4近藤
 5ストヤノフ 
 21真子 

熊 本
9長沢11宇留野
 14武富 
7片山23根占
 5エジミウソン 
8原田15市村
2チョ・ソンジン28菅沼
 18南 

前半、お互いが引いてしまうような。守りを固めてしまうと有効な攻撃が繰り出せない。熊本で言えば、真ん中でエジミウソンにボールが預けられて、原田にまわって、出しどころが見つからずに、下げる。の繰り返し。相手のゴールマウスがテレビ画面に入ってこない。ここ数試合ずっと。対する岡山には大きなサイドチェンジで崩したいという意図は見える。右サイドから左の小林へ。しかし出し手と受け手の間で再三のミスが重なり、脅かすまではいかない(ただ警戒する市村がなかなか上がれない状況は作っていましたが)。こんな前半を総括して高木監督はハーフタイムに「相手のペースになっている」と叱咤しました。さらに「相手が下がった時は攻めて行かないと」とも。

これは言葉尻だけをとらえるとするなら、戦前の「前掛りに…」という指示との関係で選手は当惑するだろうコメントだろうと思いました。(あくまでわれわれは公表された情報から判断するしかすべがないので、それが真実なのか、真意はどこにあるのかまでは斟酌できかねるのですが)。そして、対する景山監督は「チャンスの際は勇気を持って大胆な攻撃を行ないシュートまで持って行くこと」と。この言葉に従うように、岡山がゲームプランを達成する後半になりました。

「前からそんなにプレッシャーがこなかったんで、余裕を持ってしまったところがあったんだと思います」。試合後の菅沼のコメントは状況をよく把握していると思います。後半開始早々、右サイド(熊本の左サイド)に大きなボールを送る岡山。そのファーストディフェンスが非常に曖昧。繋がれて縦に入れられると、菅沼を含めたDFラインが大きく下げられた。そこにクロス。菅沼のゴールマウスぎりぎりのクリアは小さくて、そこを岡山・竹田に詰められました。まるでまだ目を覚ましていないような後半の時間帯で、熊本がビハインドの状況に陥り、そしてこの先制されたこと自体が、そのあとの展開を決定づけてしまいました。失点の場面はどれもマークが付ききれていない。ある意味で初歩的なミス。対応が後手に回っているツケだともいえるでしょう。

0-4という結果。しかし、この際、大量失点というのはあまり関係ないように思います。監督が言うように「先制されて、リスクを背負わなければいけなかったですし、常に有利な一手は岡山にあったと思うので、常にそういう展開になるのは、今日のゲームを考えれば当然なのかなと」ということ。今のチームの状況を考えると、そういった悪循環がより大きく出てしまう。それだけのことでしょう。

残念だったのは、むしろ攻撃面。「『ボールを運ぶ』というのは、ボールを取った瞬間に、前に出ていく選手がいないということ、入ってもサポートにいく選手がいないということ。これでは攻撃につながらないし、得点にもつながらないし」と指揮官が嘆くように。久しぶりの先発の宇留野は、しかし、その存在感を十分に発揮していたと思います。このところの熊本にないダイアゴナルな動き出しなどで、ボールを引き出し、結果再三のCKのチャンスを作っていた。しかし、全体的な戦局のなかで、後半ファビオと交代せざるを得なかった。戦術的変換。確かにファビオを入れてからの熊本のサッカーも醍醐味はありました。しかし、宇留野を失ったことも大きく影響したのではないでしょうか。

DFラインを2人入れ替えるというのは、相当な判断だったと思います。菅沼は試合勘から遠ざかっていたはずですが、その能力の片鱗は十分に魅せてくれました。しかし、失点に関してはその前の流れはあるにしても、CBの責任は逃れられないものがあるでしょう。ソンジンはチアゴに対する手当てが一番だったのか。そしてソン・イニョンを使うためにもピッチに必要だったのではないでしょうか。言葉の問題として。

指揮官がその二人に対して「非常によかった」と、想像以上の高評価を口にしているのには“意図”が感じられると思います。「チームで競争していく中で二人を選んだという感じ」と言うように、層が薄かったDF陣のなかで安住していられない競争環境をどうしても作りたい。そんな意図が見え隠れしています。ここしばらく、このポジション争いは“見所”だと思います。

「我々は同じ絵を描けていないということも個人とチームっていうことを含めて、大きな差を感じたゲームでした。そういう意味では自分の指導力不足も思います」。同じ絵が描けていないから、ダイレクトプレーが少ない。個々のプレーの精度というより、お互いの“絵が”一緒でないから、プレーが噛み合うことが少ない。それはプレーヤーにとって“迷い”という最も厄介な病気につながっているような。

問題は守備なのか、攻撃なのか。いや、結局のところそれはメンタルに行き着くのではないかというのが、われわれの推論です。選手の足がすくんでいるように感じるのはこのところずっと。どのプレーも中途半端に見えます。FC東京戦での戦いからという見方も多いのですが、われわれはその前の2万5千人動員のホーム戦から始まっているのではないかとも思っているのです。勝てないけれど、負けてもいないという流れだったこの頃。ホーム2万5千人の前でゲーム。ミスを極度に恐れた試合運び。チームは、守りにバランスが傾いて、メンタルまでもが守りに(リスク回避に)いってしまって、体が動かなくなってしまっているのではと。

出口は何か。何がきっかけでブレイクスルーするのか。ちょうど今日の岡山が1点を得たあと、自信溢れるプレースタイルにチーム全体がガラリと変わったように…。少なくとも、もっともっと“走る”こと。相手がミスばかりするから「大丈夫なんだ」と合わせてしまわないように。そんな意識改革のためには、菅沼ももちろんですが、可能性を見せたソン・イニョン、そして仲間といった若いメンバーの奮起に期待したいところです。そして、しばらく無風状態だった主力メンバーに投げ入れられた新戦力。高いレベルでのチーム内での競争は、当たり前ですが、低迷脱出のための一番の策かもしれません。


7月31日(日) 2011 J2リーグ戦 第23節
湘南 1 - 0 熊本 (19:03/平塚/7,751人)
得点者:51' 高山薫(湘南)


「内容に関しては正直、負けるには惜しいなあというゲームをやってくれた」。
指揮官の試合後のコメントは、今季初の連敗に肩を落とすわれわれの気持ちとは少し違って、全体的に冷静なものでした。「今日のゲームに関しては、そんなに劣っているとかどうしようもできないというゲームではなかった。たぶん細かいところ」との総括。おそらく前節の大敗から一週間、どう切り替えて、どう課題をとらえてくるかが最も重要だったこの試合、「切り替えて選手たちはプレーしてくれた」という評価もあったためでしょうか。いやいやインタビューに対して話すことが全て真意だとは限らない。高木監督の胸中には、もっと別の思いがあったのでは? それを悟られないために意図的な話をしたのでは? と考えるのはわれわれの深読みでしょうか。

それにしても湘南は引いてきましたね。一昨年とは全く違うチームになっていた。あの湘南が引いてカウンターとは…。それもこれも、前々節千葉に金星を上げたものの、それを挟んで大分や東京V、徳島、鳥取に3点、4点を奪われる大敗が続いていたからか。この“大波”から這い上がろうとするように、あの湘南が古豪の“プライド”をかなぐり捨てて、引いて守りから入った。とにかく勝ち点を取るために。しかしその裏側には、知将・反町監督が見た熊本の“弱点”も計算にあったのかも知れません。

湘 南
23高山 17佐々木
8坂本14菊池
15ハン グギョン6永木
4山口5臼井
26遠藤3大井
 21西部 

熊 本
9長沢10松橋
 14武富 
25西森22吉井
 5エジミウソン 
8原田15市村
6福王16矢野
 18南 

全然想定していなかった」高木監督は(もちろん選手たちも)、しかし湘南の“その手”に乗ることを選びました。ボールを保持する側に立つこと。そのうえで点を奪うこと。何故ならそれは現在熊本が突きつけられている“課題”そのものだったからではないでしょうか。そして結論から言えば、課題の克服にはならなかった。まんまと反町・湘南の罠(ゲームプラン)にはまるようにショートカウンターで先制されると、がっちり守られたまま追いつくことも叶わなかった。まるで以前の熊本が湘南に対して敷いていた戦術そのものではないか。そんなことを思わせる試合でした。

「ボールを保持しているのは熊本だが、好機を作ったのは湘南」。前半の印象を聞かれたこの日のスカパー!解説の倉田氏(元FC岐阜監督)の言葉が、試合全体を物語っていました。出場停止の根占の代わりに吉井がダブルボランチの一画に入るものと思われたのですが、開始早々から熊本のシステムはエジミウソンのワンボランチ。そして武富がトップの下を張るダイヤモンド型の中盤。これもまた攻撃的な布陣であることを示していたのですが、いかんせん前を向けない。足元ばかりのパスは、次の相手を探しているうちに潰され、「そこで縦に」という動き出しもない。とにかくボールを動かそうとDFラインで回して、最終的には長いボールを選びますが、サイドにもスペースがないために競り負けてしまいます。保持はしている。しかし崩し切れない。いや言ってしまえば、崩そうとしていない。崩そうとするアクションを狙われてカウンターに繋がるのを極度に畏れている。勝負しない。ボールを下げる。戦う気持はどこへ…。そんな風にも見えました。

もうひとつ心配されたのは、このところ感じる“エジミウソン依存症”とでも言っていいような症状。もともと、守備の要として、ワンボランチあるいはサイドバックが上がったときにDFラインに入るエジミウソンへの守備の負担が大きかったのは事実です。もちろん期待以上のスキルを発揮してくれている。だからこそでしょうが、選手の深層心理のなかにエジミウソンへの依存心が知らず知らずのうちに芽生えてしまってはいないかと。当然、攻撃に際しても中盤の底はかならずパスが通過するポジションであるのは間違いがない。しかし、それ以上に“攻撃の判断”までもエジミウソン一人に依存してはいないだろうかと。

それにしても、何でもない局面で、守備陣形に大きな穴が空く。失点の場面も、決してカウンターと呼べるほど対応が遅れたわけでもなく、人数が足りなかったせいでもない。いとも“簡単にかわされる”、“ミスが重なる”。そういった印象。まるで選手たちの足がすくんでしまっているような。何がそうさせるのか…。

大敗の次の試合。選手起用にしても、変えてのぞむ、変えないでいく。両方あったと思います。高木監督が悩みに悩み、そして出した結論です。しかし、そこにはきっと迷いもあったのではないかと。さらにそのうえで相手はスカウティングとは違ったスタイルでくることがある。“変数”がいっぱいある。それがサッカー。

“何も得るもののない試合だった”とは、敗戦後のインタビューでよく語られるフレーズです。冒頭、高木監督のインタビューを深読みしてしまいましたが、ある意味そんな風にも見えた試合だったと思います。しかし、監督がそれを言って、そう評価しても、それこそ何も得るものはない。ここは、難しい局面。監督は選手のパフォーマンスを評価し、次に繋げる方向でリードした、とも見えます。このところの敗因に占める選手のメンタルの比重を思って。いや、実は、監督自身にも迷いがあるのかも。それを絶対に悟られないために…とも。

どうも心理面の悪循環を心配してしまいます。であるならばいっそのことシンプルに考えることも必要なのではと。帰るところに帰って。もう一度、今季の熊本のサッカーの出発点から組み立て直してはと。まだ、一度も好調の“波”には乗っていない熊本が、初めて直面する不調の“波”。次節、岡山も相当に心して掛からなければいけない難敵。ここがまさに踏ん張りどころに違いありません。