9月28日(水) 2011 J2リーグ戦 第5節
徳島 1 - 0 熊本 (19:04/鳴門大塚/2,424人)
得点者:27' 佐藤晃大(徳島)


徳 島
18佐藤 11津田
13柿谷14濱田
16斉藤8倉貫
6西嶋22島村
26橋内20ペ スンジン
 21オ スンフン 
後半26分 津田 知宏 → 徳重 隆明
後半38分 倉貫 一毅 → ディビッドソン 純マーカス
後半45分+1 佐藤 晃大 → 衛藤 裕


熊 本
 32ソン イニョン 
13大迫27ファビオ
7片山22吉井
5エジミウソン
8原田24筑城
28菅沼4廣井
18南
後半12分 片山 奨典 → 田中 達也
後半27分 廣井 友信 → 福王 忠世
後半35分 吉井 孝輔 → 長沢 駿


中二日と中三日のチーム同士の試合とは思えない、互いにボールも人もよく動く好ゲームと思えるスタートでした。ただスカパー! の解説者も言うとおり、基本的にはホームの徳島がポゼッションして、熊本が守るという戦前の予想通りの構図。前回対戦と同様に、ミスの少ない徳島。前からくる徳島。いったんボールを渡してしまうと、なかなか奪うことが難しい。

そんな“余裕”を持って回してくる相手に対して、これをどこまで我慢できるか。自分たちの姿をどこまで“余裕を持って”見渡せているか、と思いながら序盤を見守っていましたが…。徐々に徐々に力量の差が見え始め、それがミスという形になって現れ、先制を許してしまいます。前回同様追いつけず守りきられた試合展開。それは、これもまた前回対戦時に書いた「1点というわずかな差のようだが、大きな差」という印象そのままでした。

震災の影響による第5節日程のミッドウィークでの実施。チームは前節の栃木戦を終えると、熊本には帰らず、そのまま徳島に移動しました。疲れはある。しかし、連勝という“勢い”を持って乗り込んだ敵地。しかも、誰が考えても中心選手だといえるドウグラスやエリゼウ、三田を欠く徳島の状況。つけいる隙は十分と思われたのですが、それでもやはり徳島の選手層は厚かった。皮肉でもなんでもなく、正直なところ前節対戦した栃木との差は、そこにもあるように思えました。

「相手は前線にいい選手が揃っていました。それでも、いつもだったらしっかり凌いで徐々にこちらのペースに持ってくるのですが、あそこでパスミスから失点してしまったのは大きかったと思います」と筑城は言う。攻めていたのは熊本。中盤でのパスミスから奪われて、右サイドの濱田に。クロスに合わせるそぶりの津田に引っ張られて、その後ろの佐藤にダイレクトで決められる。カウンターとまでは行かないが、後手に回り混乱し、下がりながらの守備の隙を突かれたという感じ。余裕のないなかでは徳島の詰めを防ぎきれない。そんな印象でした。

前節のエントリーで、彼我の戦力の差を読み切って“なりふり構わず、現実的に闘う”と書いたように、この試合、あの前半を“なりふり構わず”凌ぎ続けることができなかったことが悔やまれます。

徳島を相手に先制されると、極端にゲームの幅が狭くなってしまう。高木監督も「徳島と照らし合わせて見た時に、個人の判断やプレーが少し劣っていたかもしれません。それを何とかチームとして埋めていかないと今日のような結果になってしまう」と。

もちろん。先制はされましたが、追加点を与えなかったことは評価しておきたい。中二日の連戦のアウェー。徳島相手の好守の激しい展開のなか、これまでだったら足が止まる時間帯が来てもおかしくなかったし、一瞬、過去の大量失点のイメージもよぎりましたが、よくふんばった。相手の詰めの精度にも助けられましたが、そう思います。

後半12分で投入された、徳島にとっては“未知”の存在の田中達也が、鋭い飛び出し、切れのあるドリブルで、流れを変える。いいですねえ。徳島がやや下がり気味になっていくきっかけをつくりました。

なかなか2点目を奪えないことで、終盤、徳島もある程度引かざるを得ない状況になり、ミスも目立ち始めました。引いた相手にはパワープレーが有効になるわけで。残り10分になって長沢が入り、イニョン、ファビオとの3タワーでの攻撃には迫力がありました。実際に、あれだけエリア内のゴール近くでボールが動き、ボールに触れる“高さ”の優位がはっきりしていると、何が起こっても不思議ではないし、十分に何かが起こりそうな匂いだったのですが…。

正直、引き分けまで持っていけるかどうか、というのが今のわがチームにとっての、このゲームの“真価”だったのではないでしょうか。後はある意味で何を言っても結果論でしかないと思います。

徳島からすれば積極補強を始めてから3シーズン目ともいえる今季。これだけの戦力を得て、この流れのなかで上がれなかったら後はないといったプレッシャーもあるのではないでしょうか。美濃部監督の試合後のコメントも、もう勝ち点3と言う結果だけしか見てないし、次節のFC東京戦に気持が行っているのがわかります。徳島は昇格の挑戦権をなんとか持ったまま、東京戦を迎えられた。

思えば、熊本が青の時代、大塚FCは部厚い白い壁として立ちはだかっていました。最初の対戦はJFL2001年のシーズン。5月、大津球技場。1-6で見事に粉砕されたことが強く残っています。その時のエントリーには「サッカーの試合の勝ち負けというより、チームが負けたような」とまで書いているくらいです。ただ、その時も大塚のサポーター席で色々と互いの事情を語り合ったことは懐かしい思い出です。だからと言う訳ではありませんが、そんな徳島との今シーズンの戦いが終わった今、現時点での昇格圏内のチームのなかで心情的には“頑張れ徳島”とエールを送りたい。先輩に対しておこがましい言い方ですが。

こちらも、また、中二日で迎える次のホームゲームに向けて、「彼我の戦力の差を読み切って、なりふり構わず、現実的に闘う」。その道を突き進むだけです。その道の先にわれわれの昇格戦線が見えてくるように…。気がつけば中二日の土曜日はホーム草津戦。第5回を数える“くまもとサッカーフェスタ”でまた盛り上がることでしょう。さて、われわれはと言えば、選手同様、中二日のエントリーにはやや息切れ気味です。今回はこのへんで…。

9月25日(日) 2011 J2リーグ戦 第29節
栃木 0 - 1 熊本 (18:03/栃木グ/4,411人)
得点者:50' 大迫希(熊本)


勝因は?と考えても、これといって思いつかないような。日頃から熊本を見ているものからすれば、地味なとても地味な試合内容とその結果。ほとんど、ノーチャンスで勝ってしまったような。しかし、実はサッカーというのはこうやって勝つんだというような、勝ち点というのは、こうやって積み上げていくんだ、というような。そんな気持ちがした勝利でした。

「今節の熊本戦で勝利だけが求められるならば、内容など要らない、不細工でも構わない。死に物狂いで満点解答を出すだけだ」。J's GOALのプレビューを書いた大塚秀毅氏の文章は、これは?と驚くほど気合いが入っていました。

この人の文章はJFL時代の私設ブログの頃から読んでいますが、あの頃はもっと冷静沈着な文体だったような…。さらには、「結果だけを追求して鳥取に前節2‐0で勝ち切った熊本。」「栃木は3トップでも、2トップでも対応可能なノウハウを持ち合わせている。」(熊本は)「堅牢な栃木の守備ブロックを破るために、ショートカウンターに活路を見出すのか、それともパスワークを駆使するのか。」といったあからさまな上から目線の表現。確かに長く昇格圏内に位置していた今季の栃木から見れば、今の熊本は格下と思われてもしかたがないのかも知れません。ただ、中心選手のパウリーニョを怪我で欠いてからこのかた、みるみる順位を落としてきた。直前の2連敗。昇格戦線に食らい付いていくためには、どうしてもこの試合は落とせない。そういった気持ちが文脈を熱くさせていたのか。これがこの試合に臨む栃木サイドを代表する空気だったのかもしれません。

それにしても、とんでもないピッチだということが、スカパー!の画面越しにも伝わってきます。相手も同じ条件であるにせよ、これでは戦術自体までも影響されてしまう。有料興行の舞台装置としてはいかがなものか。さすがに、J's GOALの記録も芝状況は「不良/乾燥」という、普段はあまりお目にかからない表記となっていました。

栃 木
18崔 根植 9リカルド ロボ
11河原14水沼
10高木2西澤
29堤19赤井
3大久保4大和田
 1柴崎 
後半23分 堤 俊輔 → 入江 利和
後半34分 崔 根植 → 廣瀬 浩二
後半40分 赤井 秀行 → 宇佐美 宏和


熊 本
 32ソン イニョン 
13大迫27ファビオ
7片山22吉井
5エジミウソン
8原田15市村
28菅沼4廣井
18南
後半21分 ソン イニョン → 長沢 駿
後半22分  吉井 孝輔 → 筑城 和人
後半45分+1 片山 奨典 → チョ ソンジン


もはやレギュラー解説者とも言える水沼氏が、この日の注目選手にU―22帰りの息子の名前を上げる。家族自慢を良しとしない古い考え方(笑)のわれわれとしては、このことからすでに気にくわない。昨年までの栃木のキーマン・佐藤悠介氏の「今日の栃木は試合の入り方がいいですね」というピッチレポートの弾んだ声。それに「私もそう思ってました」と応える水沼氏。われわれが知っている栃木以上でも以下でもない感じなのに。これは前節、前々節と、相当苦しい内容だったことを想像させてくれます。

確かに、開始すぐにCKからのこぼれ球をロボが強烈シュート。大久保のロングスローからファーサイドにいた河原に打たれる。カウンター攻撃から水沼が駆け上がってのクロスにロボのヘッド等々、前半7本の栃木のシュートのうち、決定的なものが多分3本ほどありました。しかし、結果論から言うわけでは決してありませんが、これまた何故か不思議に点を取られるという気がしなかった。GK南も前節以来“当たっている”感じがしますが、それとは別に、何故かわかりませんが、そんな気がする試合がたまにありますよね。

「中途半端なボールの処理が悪くて、前半は栃木にゴール前までボールを持ってこられた。そういうリスク管理をもう少しやらないと、ゴール前まで持ってこられる」。PA付近で最後に身体を張る場面が多かった原田は、そう反省します。しかし、ディフェンシブサードに入ってきたら球際に強くいく。PAでも詰めを怠らない。そんな選手たちの守りの意識の高さが、前節以来顕著になってきたように感じます。

この日の決勝点になった先制点は後半開始早々。スローインからの流れ。右サイドをPAまで運んで片山に渡る。大久保と大和田に挟まれた小柄な片山が、うまく反転してボールを流した。熊日のコメントを読むと、シュートだったようですが、ファーに流れたところに大迫が詰めた。難しい体勢でしたが、蹴りこんだボールは、GKの股の間を抜けてゴールに吸い込まれていきました。

今季、セットプレーからはなかなか点が取れないものの、スローインから“作る”のはとてもうまくなった。狭いところを通していって、3人目、4人目の動きでゴール近くに“展開”する。大きな武器になっているように思います。

「あそこまで相手が引くとは思っていなかったが、どうしても1点リードしたチームは引く傾向にあり、1点取られると厳しいことを改めて痛感した」。栃木の赤井のコメントは、何をいまさらといった感がありますが、長沢、筑城を投入した後半25分あたりから熊本は、意を決したように引きこもって守ることに徹しました。

対する栃木は、完全にスペースを消され、前線に高さの武器を持たないなかでの“パワープレー”という放り込みに終始するしかなかった。大迫の言うように「ピッチが良ければ栃木のほうがドリブルで仕掛けられたと思うが、ピッチが悪くてロングボールやワンタッチプレーが多かったことが僕達にとっては良かった。ドリブルがなかったので、そのあたりに関しては怖さがなかった」のかもしれません。

前半終了時には「栃木の時間帯のほうが長かった」と声を弾ませていた解説の水沼氏が、失点から一転してイライラ感を募らせます。遂には「(栃木の選手たちからは)どうしても勝ち点3をとらないといけないというようには見えない」とまで表現し、不機嫌になってしまいました。熊本側から見れば、勝ち点3を取りにいくのに必死なのは全く同じなわけで。勝てない、大量失点の苦しい時期を知っているからこそ、そこのところは熊本のほうが、はるかに貪欲だった。ただそれだけのことと思います。

やはり、後半。放り込みで押し込まれた長い時間帯も、この日バス一台を仕立てて駆けつけた関東サポーターを中心としたゴール裏と一体になって跳ね返しているような。エジミウソンからDFライン、そして南からその後ろのゴール裏まで続く熊本陣内のような。スカパーのカメラワークもあって、テレビのこちら側のわれわれにも特にそんな印象が残りました。

守り切れる自信があった。プレーの選択は明確で、リスクを徹底的に排除していた。とにかく跳ね返す。クリア。チャンスになれば、前の3人で攻める。同じような場面が延々と続いた印象。先制すると、こんなにサッカーが楽になる。こんなに自分たちで試合が運べる(マネジメントできる)。改めてそう感じます。

敵将・松田監督は先制されて追いつけないことを問われてこう答えました。「サッカーとはそういうスポーツだと思う。相手が完全に引いた時には、特にそうなる。相手が2点目を取りに来た時には、まだチャンスがあるが。我々も先制した試合は勝率が高い。だから、サッカーとはそういうスポーツだと思う」。

ライターの大塚氏は試合後のレポートに、「熊本の勝因は、徹底していたこと」だと書きました。「『0‐1』で逃げ切ることだけを考えていた」その“リアリズム”に栃木は屈したのだと。そして最後には「2点目を狙えるようにならないと、チームとしての成長はない」とお説教されてしまいました(笑)。

原田が「うちは常に全力を出さないと勝てない。次の徳島(9/28@鳴門大塚)は強いし、個々の能力はあっちが上。勝てないところは気持ちやハードワークで勝負したい」と言う。前節に続いて快勝でも劇的でもない勝利。こうやって、いっぱいいっぱいで戦い続け、ゲームを掴み取る。油断も、慢心も、プレッシャーも、緩みもない。目の前の状況に無心で“対応”していく。ワンプレー、ワンプレーを必死に取り組む。水沼氏が試合後言っていた「栃木は上位とやるときは、まず守備から入って、素晴らしいサッカーをする…。下位とやるとポゼッションできてしまってうまくいかない…」。そういった“気分”とは、ちょっと次元が違いすぎて論点が噛み合わないのですが。

彼我の戦力の差を読みきって、なりふり構わず、現実的に闘うということ。それを本当の“リアリズム”と呼んでほしい。「内容など要らない、不細工でも構わない。死に物狂い」で勝利したのは熊本のほうだったのですから…。

9月18日(日) 2011 J2リーグ戦 第28節
熊本 2 - 0 鳥取 (19:03/熊本/5,200人)
得点者:11' 大迫希(熊本)、40' ソンイニョン(熊本)

鳥取とのJでの初対戦です。でも、どうしても昔話をしたくなるのが年寄りの悪い癖。あれはようやく熊本のトップカテゴリーがJFLとなった“青の時代”の2001年3月。倉敷で行われた西日本社会人大会。枯れ芝のピッチで、同期でJFLに昇格したSC鳥取とのいわゆるプレシーズンマッチを戦った。そのときは0-1で負け。なかなか簡単な相手はいないリーグだと思い知らされた。そしてあれから10年の歳月を隔てて、所属選手も大幅に入れ替わり、互いに紆余曲折を経て名前も変わり、こうして今この舞台で再び戦う。ロッソ時代の対戦成績も1勝1敗2引分で全くの五分。馴染みはあるけれど、相性がいいとはあまり言えない。われわれにとっての鳥取はそんなチームです。

高木監督が「最終的には、内容よりも勝負にこだわったという結果」になったと評した試合。確かに1ヶ月前の大分戦以来5試合ぶりの勝利。勝つには勝ったが、とにかく引き分けでもなく、勝ちが欲しかった。「勝つ事が今の我々にとっては重要なエネルギーになる」。それが指揮官の正直な心情なのでしょう。

今節のエポックは新布陣。というより、開幕以来、出場停止の試合を除いて、全試合スタメンの長沢を控えに回したこと。後方の司令塔として、定位置だった原田をベンチスタートさせたこと。DFの真ん中二人の選択も、後方からの正確なロングボールフィーダーの福王を控えにして、菅沼、廣井できました。スカパー!の山崎アナ、風戸レポーターが口を合わせて言っていたのは、事前取材時、監督が選手起用について相当考えこんでいたということ。悩みに悩んだ末のシステムが、イニョンをトップに大迫、武富をシャドーに置いた4-3-2-1の俗に言うクリスマスツリー。徹底的に高さを活かすことを突き詰めればいい。前節そう書いたわれわれでしたが、これは“高さ”のサッカーからの転換を意味するものだったのでしょうか。

熊 本
 32ソン イニョン 
13大迫14武富
7片山22吉井
5エジミウソン
24筑城15市村
28菅沼4廣井
18南
前半34分 武富 孝介 → 齊藤 和樹
後半23分 ソン イニョン → 長沢 駿
後半30分 片山 奨典 → 原田 拓

鳥 取
 9ハメド 
 16金 
7小井手10実信
6服部14吉野
25奥山27丁
4戸川3加藤
 48小針 
ハーフタイム 吉野 智行 → 住田 貴彦
後半17分 キム ソンミン → 梅田 直哉
後半25分 小井手 翔太 → 岡野 雅行

「今までの2トップで、コンビネーションとかが機能しない部分があった。例えばスペースへのランニングだったり、縦に行ける選手を置く方が、今日のゲームでは効果的かなと思って、そういう構成にした」というのは高木監督。確かに、わかりやすい動機です。タテに行ける選手。そういう目でみると確かにどこをとっても縦に行くシフトだなと。そして対する松田監督は、「うちのセンターバックに対して相手のフォワード、ボランチに対して相手のオフェンシブ、そこが相手にとってすごくはまっていた。うちは逆に、そこでプレッシャーがかかったために中央に侵入できなかった。その面はゲームが始まってすぐに感じました」と。

鳥取のカウンターの切れ味。そのボールの出どころと連動性。そういった“相手”あってのこの新布陣。指揮官が選んだのは、相手を詳細にスカウティングしたうえで、今選択しうる最良のコンディションの選手たちと、相手の良さを消し、自身の良さを発揮するためのシステムだったのでしょう。

鳥取は縦に行けなかった。それはさらに今日の熊本が、前から行かず、自陣でしっかりブロックを作って、ハーフウェイラインを超えたところからファーストディフェンスを始めるという戦術をとったことにもよると思います。鳥取は凹型に攻めるしかなかった。中盤3人の吉井と片山のところでの守備の負担は、確かに大変でしたが、鳥取はサイド、サイドに持ってはいけるものの、市村、筑城の両SBの上がりを抑えた今日の熊本は、しっかりとスペースを埋めて、PAへの侵入を阻み続けました。

凸型攻撃の熊本でしたが、得点は決してカウンターではなく、しっかりとシフトアップして人数を掛けた攻撃からでした。9試合ぶり念願の先制点は、ポゼッションから。大迫が吉井に預けるとそのまま走りこむ。吉井はワンタッチで縦に入れる。武富がDFを背負いながら、これもワンタッチで走りこんできた大迫へ。大迫が迷わずシュートという、流れるような一連の連携プレーでした。

前節は武富。今節は大迫と、チームにとって“鍵”を握っていると書いたプレーヤーの得点が重なりました。昨年の途中出場から徐々に先発に名を連ね、90分間走れるようになった。そろそろ“結果”が欲しかった。生え抜きの大迫のゴールで、スタンドは沸きに沸きました。

イニョンの追加点も、類まれなる運動神経、彼の個人技によるところはあります。高木監督は「広島に入ってきたばかりの久保竜彦を見るようなんだ」と言ったとか。なるほど確かに、そこから撃ってくるかという意外性とボディバランスは、確かに久保を彷彿させます。ただしこの場面、相手ボールの守勢の局面。高い位置での連動したプレッシングで、相手DFがバックパスのミスをした。組織的守備から生まれた得点だったということも忘れてはならないことだと思います。

前半2点先取しての折り返しは、いつ以来のことでしょう。しかし、ハーフタイムのスモーキングエリア、はしゃいだ声は聞こえず、何故か皆、異様なほどに考え込んで黙りこくっている。皆、このままでは終わらないのではないかと思っている。2-0というサッカーにとって難しい点差を知っている。かつて“引き分け王”の異名をとった鳥取の、異様なまでの粘りを知っている。けれど、勝ちたい。今日こそは、この大事な2点を守りきって、勝利を喜びたい。そんな緊張感にも似た雰囲気に包まれていました。

思ったとおり、鳥取は後半早々から圧を掛けてきました。最後の南のところでなんとか防ぐ熊本。もうひとつ、この日、熊本を苦しめた“変数”に、この季節にしては異常に高い湿度がありました。プレーが止まるたびに選手たちは給水に走る。前半途中で武富が打撲系?のアクシデントで痛む。この穴は斎藤がうまく埋めました。しかし、後半イニョンに疲れが見えると、長沢に交代。片山も足を攣って原田と交代。とうとう早い段階で3枚のカードを使い切ってしまいます。

そのたびごとにシステム変更。終盤、頼みの大迫までが足を攣ってしまう場面も、もう交代カードはない。最後は、筑城を右SB、市村を一列上げると、守備の負担を軽減させるために大迫をトップに、長沢を2列目に配置。この、アクシデントとも言える“変数”に対応していくベンチワークも、この試合、われわれをうならせた見どころではありました。

決して3点目を取りにいくことを放棄したわけではなかっただろうと思いますが、鳥取の圧力の強さ、重なる選手のアクシデントによって、熊本の狙いはカウンター攻撃に絞られてしまいました。確かに、前半から相手にボールを持たせすぎ、揺さぶられすぎていた。守備の時間のこの長さと、この湿度の高さは、選手から体力を奪うのに十分だったことでしょう。もはや熊本は、奪っても前線に大きく蹴りだすだけに終始している。繋いで攻撃に転じるどころか、カウンターにさえ繋げない。

PAに入り込むボールは掃きだす。服部が前線に上がってくるところはエジミウソンが潰す。終盤、鳥取は“あの”俊足・岡野を投入しますが、この時間帯には岡野の得意とする大きなスペースは、どこにもありませんでした。

後半の内容は、決して“褒められた”ものではなかったでしょう。もっと狡猾で、もっと力で押してくる相手には通用しなかったかもしれない。しかし、この展開で、このチームコンディションでは仕方がなかった。これが精一杯だったと。試合後、「修正するポイントや、個々でリカバリーするところはもちろんあると思いますけども、今日のゲームに関してはそういうところを見るのではなくて、純粋に勝ちの喜びを味わいたいなと思います」と指揮官に言わしめた。その意味もそこにあったのだと思います。

しかし、勝利の影に隠されている小さくない評価。それは単純に言えば、ハメドをほぼ完璧に抑えたこと。この鳥取のキーマンを、90分間自由にさせなかったこと。途中から中盤まで下がったハメド。自身の突破力だけでなく、視野の広い、精度の高いパスは脅威だった。下がってからのハメドに対しては、持たせるが、出させないような、そんな対応に見えました。それによって鳥取の攻撃はさらに封じ込められたような。しかし、その能力は凄みがあった。セットプレーのキッカーも務める彼こそ、鳥取のゲームメーカーに違いありませんでした。天皇杯を含めて、あと2度対戦する相手。まだまだ油断できない相手だと心すべきだと思いました。

長沢を先発から外した新布陣。それは高さからの転換なのか?と書きました。迷いに迷ったという指揮官の選んだ道は、ひょっとしたらそうなのかもしれません。あるいは長沢のコンディションを考慮した結果なのかも知れない。ただ言えることは、“引き出し”の数が増えたということは事実だと。“高さだけ”からの転換とも言えるのかも知れない。イニョンのゴールに、長沢も発奮せざるを得ない。ファビオも然り。チームとしては、確実にオプションの幅を広げたのは間違いない。

それはいつか書きましたが、選手に90分間の熾烈な運動量を要求するわがチームの戦術にとっては、有意義なオプションなのに違いない。そんなポジティブな意気込みを持って、さあいよいよ次節。今期好調な栃木との、この時期にしての初めての一戦に臨みます。負けられない。いや絶対に勝ちたいと思います。

9月11日(日) 2011 J2リーグ戦 第27節
岐阜 1 - 1 熊本 (19:04/長良川/3,145人)
得点者:50' 嶋田正吾(岐阜)、62' 武富孝介(熊本)

展開が良くないですね。このところずっと。もちろんそれは自分たちが招いていることではあるんですが。先制されて追いかける展開ばかり。振り返ってみたらワンサイドゲームの敗戦も含めて、実に7月17日の富山戦から8試合連続で先制点を許しています。もともと1点先取してしぶとく守り抜くのが身上のチーム。(それに加え「サッカーにはアクシデントでの1失点はあり得る」と指揮官が常々折り込むのならば、複数得点を取らなければ勝てないというのが宿命なのですが)どうしてもビハインドから追いかけるとなると、守りから入るチーム性格上、追いつくのが精一杯。(追いつくことが出来るようになったと見るべきなのか)。もちろん相手次第のことですが、ここにわがチームの現状を測るひとつの尺度があるのかも知れません。

エジミウソン不在の試合でした。前日の熊日の予想フォーメーションには入っていただけに、ベンチにも入っていないのが驚きでしたが、スカパー!実況の情報によると、前々日に体調不良を訴えたとか。かつて「エジミウソン依存症」と書いたわれわれにとっては、そこは(彼がいないことでどうなるのか)が注目点でしたが、ダブルボランチの一画に原田を上げ、基本原田が守備からボールの散らし役、吉井は運動量活かして前線に顔を出す。左SBにはこれまた運動量と守備への貢献度が高い筑城が頑張り、いいバランスで機能していました。

もう一点の注目はCBの選手起用。出場停止明けで菅沼が帰ってくるのか。その相方はソンジンなのか。しかし答えは前節と同じく福王と廣井。現状での真ん中2枚の正直なチョイスだったろうと。疑問の余地のないところでした。

岐 阜
16西川 14嶋田
27押谷35地主園
20三田23橋本
7菅2野田明弘
17野垣内4田中
 1野田恭平 
後半23分 地主園 秀美 → ブルーノ
後半36分 西川 優大 → 佐藤 洸一
後半43分 ブルーノ → 阪本 一仁


熊 本
9長沢 17斎藤
13大迫14武富
8原田22吉井
24筑城15市村
6福王4廣井
 18南 
後半13分 齊藤 和樹 → ソン イニョン
後半27分 長沢 駿 → ファビオ
後半37分 武富 孝介 → 宇留野 純


同期対決。これまで3勝3敗3引分と、まったく五分の対戦成績。確かに今季は最下位に沈んではいるものの、われわれからすれば、決して“相性”がいいとは言いがたい相手。油断などあろうはずもない。しかし岐阜は、立ち上がりからイージーなミスが目立ち、圧力も掛けてこない。これが現状の順位に甘んじる所以なのか。ボールが持てる熊本は、ほとんど敵陣で支配できる。ただ反面、その相手のミスに付け込む迫力や、スピードが出てこないのも事実。敵陣に居るはずなのに“ゴールは遠かった”と言わざるを得ない展開でした。

われわれが感じたことは、監督、選手も一致していたようです。
「点を取れるときに取っていれば、ゲームオーバーになる試合だった。その表現が近いと思う。ゲームを支配しながらも点は取られる。我々にとっては少しもったいない試合運びだった」と総括したのは高木監督。大迫は「前半立ち上がりは岐阜のほうがミスをしてくれた。そこで決められるようにしないといけない」と。同じく筑城も「前半のいい時間帯に1点が入っていれば、流れは変わったと思う」と。

“決定力”などという曖昧なことばは使いたくないと日頃から思っていますが、こと前半に関していえば、決定機さえ作れていない。前半のシュート数4本が如実にそれを表していると思います。ただ、CKに関していえば前半でも9本、試合全体では14本も得ている。それはこの試合、敵PA近くに鋭く攻め込んでいることの証しなのですが、このセットプレーという“決定機”が全く活かされなかった。ゴールを脅かすことが皆無だった。この問題は大きいと思います。

こんな試合展開は、ときおり訪れる敵のセットプレーやカウンターが妙に怖い。失点の場面は後半早々、岐阜サイドでの展開。ピンボールのように敵味方に跳ね返るボールが押谷に収まると、すかさず前線ひとりの嶋田に絶妙のスルーパス。前掛かりになっていたバックラインのギャップをみごとに突かれる。ベストの動きだしとパスとシュートがきれいにつながってしまった。油断、そして予測が足りなかったといえばそれまでなんですが…。

「190cmの相手に対し、うちは174cm、178cmのハンディがある。1人がしっかり競って自由にさせず、こぼれをカバーリング、ピックアップを我慢しながら続けて、相手の攻撃のリズムを遮断しようとした。そこから相手が前がかりになっているので、そこを突こうと想定して、今日は臨みました」。敵将・木村監督のプランどおり、我慢していた岐阜に先制点を許し、2点取らなければ勝てないという展開をまた招いてしまいます。

追いかける熊本はイニョンを投入。ただ、岐阜のカウンターの残像があるのか、前節のようなパワープレーにはなかなか行けない。同点に追いついたのは後半17分、市村からのクロスがファーに抜ける。大迫がこれを拾ってイニョンに預ける。イニョンがエリア外から意表を突いた強烈シュート。GK野田が弾いたボールを、詰めていた武富が押し込んだ。ようやく訪れた武富の初ゴール。前節同様、献身的に動き回っていた武富の努力が報われた。そして全員で繋いだゴールでした。

それにしてもソン・イニョン。並はずれた運動能力とヴェルディ戦でも書きましたが、それに加えて、局面における突き抜けた対応力。相手も予測不能な意外性のあるプレー。それでいて、長沢にちょこんと出した別のシーンのように細かい動きもあり、段々周囲と息が合ってきたような。期待が膨らみます。

追いついた時間は前節より早かったものの、その後、岐阜は前線にブルーノを入れて巻き返す。最終的には解説者がノーガードの打ち合いと表現したような、オールコートを使った攻撃の応酬。前節のこともあり、アディショナルタイム4分まで諦めず勝利を信じましたが、岐阜も最後まで走り続ける。どちらかというとこの最後の4分間は岐阜のものにも見えました。ホーム2連敗中の岐阜としては、この試合なんしても勝ちたかった。そして、勝てると思った試合だったのでしょう。相手にそう思わせてしまったことも、熊本の失敗でした。

全体がよく俯瞰できないテレビ観戦でしたが、解説者のコメントに考えさせられたことがひとつありました。夏場になっての熊本の停滞をアナウンサーに問われていわく、「高さのある前線にロングボールを当てていく、セカンドを拾っていくという熊本の戦術は、縦にも早いので運動量がどうしても要求される。選手の消耗も激しい戦い方」。多分そういったニュアンスだったと思います。

今日も決してセカンドが拾えているとは言えない。いや、このところずっと拾えていないと言っていいでしょう。攻撃の、あるいはゲームのリズム、主導権を握れているわけではない。ボールを支配していても、ゲームを支配していたとは言えない内容だったのだと思えました。

もともと前線に向けたハイボールは、敵味方フィフティフィフティ。パスの距離が長くなりロングボールになればなるほど、その五分五分度合いが高まるのは必然。今日も長沢が競り勝ったボールは、相手ボランチの足元に収まるシーンが多かった。奪われて、今度は奪い返すために守備をする。そしてマイボールを前線に送り続ける繰り返し。身体的疲労もあるでしょうが、精神的疲労も募ります。確かに高さは相手に対しても脅威であり、競り続けるDFにとっても体力を消耗させる。セカンドを拾う相手にしても同じ。しかしこれは、拾いにいく味方にとっても同じ。運動量を求めるしかない。五分五分の状況を上回るために要求される運動量は(高さで競る選手を含めて)果てしなく厳しい。「高さ」という戦術の厳しさがそこにあると。いや、そもそも「高さ」という戦術があるのかと。

「少し長いボールが多かったりする中で、もう少し動かしてサイド、もしくは長いボールを入れる時でも、形を作った中で入れるということがもっと出来れば、セカンドボールを取れたり高さを上手く使える」。前節、高木監督が要求したこの言葉が、すでにその答えを示していたのだなと思いました。セカンドを拾う意味でも、それはあったのだと。“高さ”との距離が遠すぎるからフィフティフィフティどころか相手に有利になってしまう。ならば近づけばいい。あるいは近づく時間をタメることができれば…。極端に言えば、長澤もファビオもスローインからの競り合いでは全く負けていないように。「高さ」が戦術なのではなく、「高さを活かすこと」が戦術なのだと。

だとしたら、どうなんでしょう。ここにきて高さこそが武器だということがはっきりしているのなら。そして相手もそこの対応をしてきているのなら。それを上回るようにもっともっと高さを“活かせ”ばいい。相手が嫌がることをもっともっと追求すればいいと思います。

そしてもうひとつ望みたいのは、意外性のあるプレー。今節のイニョンのミドルがしかり。前節の同点弾を生んだファール奪取のプレーは、吉井の果敢な意表を突く飛び出しから生まれました。当たり前のプレーでは通用しない。予測され、必ず対応されるのが、このカテゴリーのスキル。ゴールは常に偶然ではなく、この意外性からしか生まれない。

特にアタッキングサードにおいての、意外性のあるプレー。意表を突いたプレー。相手のイメージを上回るプレー。それは相手を欺くような。この位置で、そんな体勢で。なぜ?ともいうような…。それを可能にするのは、技術なのか。精度なのか。果たしてフィジカルなのか。もちろんそれは個人技だけでなく、連携という意味でも…。

このところ90分間の出場を果たしている大迫が、「相手はマンツーマンで見ているので、僕が仕掛ければサイドバックが空く。そこはうまく使えたけど、フィニッシュが甘かった」と言うように、しばらく封じ込められていた感のある熊本の両サイドがここ数試合は攻撃にからんで、今節は大いに期待を持たせる展開ではありました。対面の武富には初ゴールという結果が伴った。この二人の成長も熊本の鍵を握っている。

冒頭書いて改めて気づかされた8試合続くビハインドの展開。実は、このわがチームの不調は、FC東京戦の大敗からではではなく、その前の試合、あの微妙な雰囲気の大観衆の富山戦から始まっていたのではないかと疑っていたわれわれです。しかし同時に、あの富山戦では、なんとか追いついて帳尻を合わせた。ここに「チームの現状を測るひとつの尺度があるのかも知れない」とすれば、あの不調が始まった時点まで状態が戻ってきた。2点目をとられないで、追いつけるようになった。ポジティブに考えれば、そう捉え直すこともできる。そう思いませんか。

9月4日(日) 2011 J2リーグ戦 第4節
熊本 1 - 1 湘南 (19:04/熊本/4,238人)
得点者:27' 永木亮太(湘南)、90'+4 原田拓(熊本)


4分間のアディショナルタイムも残り1分というところ。試合終了直前に追いつかれた湘南。終了のホイッスルを聞いて座り込む相手GK・西部を清水の元同僚・長沢が助け起こします。湘南の選手たちが受けたダメージの大きさが想像できます。前回対戦から勝利がなく、さらにここで熊本を下せば、順位が入れ替わるという戦いだっただけに。

両者とも“FK”から得点を取り合い痛み分けという結果は、小川主審が笛を吹く試合の象徴的な内容だったろうと思います。今日も、まるでビデオを何度も一時停止するような笛の数で試合を止め、その判定に関して(どちらかといえば熊本の)選手たちをナーバスにさせました。しかし、「ヘッドダウンせずに点を取りに行く、前向きな姿勢を90分、点を取られた後も続けた結果がこういう流れになった」と高木監督が評価するように、選手たちの諦めない気持ちが最後の最後にようやく同点弾に結びつきました。

連敗中の熊本。高木監督が、前節の敗戦後、「精神的な立て直しが必要」と語ったほど最悪のチーム状態。月が変わって9月。台風の影響もあるものの、めっきり秋風を感じるスタジアムに、われわれの気持ちも“切り替わり”たいという一心。子ども連れが減って、ちょっと閑散感のあるスタンドでしたが、いつもどおり定位置に陣取る。お互い名前こそ知らないけれど、いつもの見覚えのある顔、顔が周りを埋めはじめます。

熊 本
9長沢 27ファビオ
13大迫14武富
5エジミウソン22吉井
8原田15市村
6福王4廣井
 18南 
後半10分 ファビオ → ソン イニョン
後半20分 エジミウソン → 根占 真伍
後半31分  武富 孝介 → 田中 達也


湘 南
 31ファン スンミン 
14菊池10アジエル
8坂本6永木
 15ハン グギョン 
4山口5臼井
26遠藤3大井
 21西部 
後半6分 ファン スンミン → 佐々木 竜太
後半39分 アジエル → 高山 薫


熊本は福王、廣井のCB。エジミウソンと吉井のダブルボランチに変更してきた。アジエルを含めた湘南の3トップへの対策。そして大量失点の続く守備組織の立て直しが今節のテーマ。立ち上がりは悪くない。東京V戦でイージーなミスを連発し、自滅した反省か。気持が前に向いているのが感じられます。福王のハッキリとしたプレー。そして最後尾から繰り出す攻撃的ロングパスは健在。中盤陣もボールへの執着心を見せます

「相手のセットプレーには注意したい」(スカパー!)と言っていたのも高木監督。18分頃、アジエルのFKにニアの坂本がフリーでヘッド。これは南がキャッチ。逆に22分頃には大迫がトリックプレーでFK。長沢の頭には合わず。しかし、これがこの日の得点シーンの予兆だったのかもしれません。

アグレッシブなのはいいにしても、ちょっと危険なエリアでのファウルが熊本側に多い。不用意と言われても仕方ないような。決定的に破られているわけでもないのに、大量失点の残像がそうさせてしまうのか。この主審の今日のジャッジ基準を早く頭に入れてほしい。誰もがいつかやられるぞと心配したように、結局、このファウルからのFKで失点してしまいます。

主審の壁までの距離の歩測に納得がいかないエジミウソンが、ボールまで計り直すように歩み寄ってイエローを示される。ざわつく場内。アジエルが囮になって、永木が蹴ったFK。直線的にゴールに突き刺さる見事なキック。ニアサイドを壁に任せて、右寄りに位置していた南。見送るしかありませんでした。

内容は熊本。そのなかでのセットプレーからの一撃。そうも言えました。時間はまだまだたっぷりあると。けれど、愚直なくらいロングボールを送り続ける攻撃面では、どうしても“高さ”頼みに偏っているように見えてしまう。相手も完全に対応していて、なかなかセカンドが拾えない状況が続くと、それが“うまくいってない”ことの原因のように映ってしまう。前半はともかく、後半もずっとそんな状況が続くと、ファンの気持ちにモヤモヤしたものが充満していきます。

しかし、敵将・反町監督からは「前に大きな選手を並べて、向こうの2トップは走力もありますし、ヘディングの力もあるので、理にかなった攻撃かなというふうに思いました」(J’s goal)とも見えている。高木監督からは、「少し長いボールが多かったりする中で、もう少し動かしてサイド、もしくは長いボールを入れる時でも、形を作った中で入れるということがもっと出来れば、セカンドボールを取れたり高さを上手く使える」と注文がつきました。

「問題点は我々が2点目を取れなかったと、それに尽きる」と反町監督が言うように、湘南は中盤でつないで、大きくボールを動かして、ミスも少ないものの、これも慣れてしまうと、対応ができるもの。タテに切り裂いてくる迫力には乏しいような(アジエルは例外でしたがが…)、そんな印象も受けました。

そんななかで「後半は相手もリトリートしてきて、崩すというよりも蹴ってセカンドボールを拾うということを考えていた」と言うのは廣井。反町監督の意図とは逆に、湘南は1点の重みに耐えかねて、明らかに引き気味になっていきます。前線からのプレッシャーもダウン。確かに、前半、あれだけ飛ばしてくれば、どこかでスローダウンするというのは必然ではあったのでしょうが…。

相手が引けば、高さも、パワーもあるツートップ。イニョンを投入した後半はまさしく、ずっとパワープレーをしているような感覚に陥りそうでした。ただ、目に見えて大迫の運動量が落ちてくる。田中達也が準備するも、直前で武富が足を攣ってしまい大迫は残す。その大迫もまた最後には足を攣る。カードを一枚貰っていたエジミウソンも根占と途中交代。しかしエジミウソンも前半から、フィールド全てに顔を出すほど走り回っていた。今日は全ての選手に最初から“飛ばして”いくことが求められていたに違いありません。

幾度かあった決定機。そのたびに、すわ「同点か」と前の席の男性グループが立ち上がりかける。こちらも見逃さないためには、立ち上がったり座ったりの繰り返し。アディショナルタイムに入って、久しぶりに腕時計をストップウォッチ・モードにセットしてみた。4分。長いようで、短いような時間。GK西部からのキックを自陣で跳ね返すと、前線にすばやく送る。イニョンがそらして田中。そこに猛然と走りこんできたのは吉井。そのスピードに、たじろぐようにファールを犯した。“気迫”に押されたと言っても過言ではないかも知れません。そして、間接FKから原田の今季初得点。絶対に決めなければいけない痺れる場面で、決めてくれました。

反町監督が「最終的には力づくで1点もぎ取られたというゲームだった」と総括したように、2点目を取りに来る湘南の意図を上回る圧力、迫力が熊本にあったということでしょう。「向こうの交代選手のパワーというのが、かなりアップだった」とも言わしめた。

ただし、引き分けは引き分け。湘南の手のひらから勝ち点2を払いのけ、勝ち点1をもぎとったことを、手放しで「良し」とすべきか…。翌日の熊日の見出しは「3連敗を免れる」としていますが、われわれは最近、サッカーのリーグ戦での「引き分け」に対して、ややネガティブに考えています。勝ってはじめて連敗は止まると。引き分けを“負けていない”というポジティブ評価にして、課題を曖昧にしてきたツケがこの苦境を呼んだのではなかろうかと。三角形は黒で塗るべきではないだろうかと…。

それでも、スコアレスや追いついた引き分け、追いつかれた引き分け。同じ引き分けで結果は勝ち点1でも内容は大きく違うという意見に異論はありません。ただ、一番共感を覚えたのは、「次に勝つことで今日の引き分けが生きてくると思う」と前を向いた武富の言葉でした。

ほぼ後半のすべての時間帯を攻め続け、精魂尽き果て、がっくりと膝を着いた選手たち。最後に追いついたこの結果には胸を張れ。今日の結果は、次の試合に絶対つながる…。そんな気持ちで、スタンドに挨拶にきた彼らに拍手を送るわれわれの耳元に、「さぁ、9月は負け無しだ!」。前の席のグループからそんな元気な声も聞こえてきました。


9月3日(土)第91回天皇杯1回戦(宮崎市生目の杜運動公園陸上競技場)
宮崎産業経営大(宮崎)5 – 1 熊本教員蹴友団
得点者:村山、OG、五領、島屋、藤山(宮崎)、増村(PK)(熊本)