2011.10.31 札幌戦。完敗
10月30日(日) 2011 J2リーグ戦 第33節
札幌 3 - 0 熊本 (13:05/札幌厚別/9,337人)
得点者:13' 河合竜二(札幌)、70' 近藤祐介(札幌)、90'+3 岡本賢明(札幌)

寒い北海道。遠い厚別の地まで応援に行かれた皆さん、大変ご苦労さまでした。
前エントリーでわれわれが「重要な山場」と書き、キャプテン南もブログで「ここ1番というゲームを落としてきたロアッソがメンタル的にも強くなる、自信を得て一皮剥けるような、そんなターニングポイントになるような試合に、明日はしたい」と意気込んでいた試合。3連勝を賭けて、ここで勝てば、ようやく上位陣のしっぽを捕まえられようかという大事な一番。しかし、札幌の壁は厚く、崩せませんでした。

「立ち上がりがすべてだったかな」と言う高木監督。「立ち上がりはどうしてもラフになっていくとは予想していました。そういう部分を決めるか決めないかの差が、今日のスコアにつながったと思います」と。

札 幌
 11ジオゴ 
 13内村 
32近藤8砂川
10宮澤4河合
7高木2日高
37奈良23山下
 16李 
後半14分 ジオゴ → 古田 寛幸
後半17分 内村 圭宏 → 岡本 賢明
後半45分 砂川 誠 → 岩沼 俊介


熊 本
 30仲間 
14武富13大迫
25西森22吉井
 8原田 
24筑城15市村
4廣井28菅沼
 18南 
ハーフタイム 仲間 隼斗 → ソン イニョン
後半18分 武富 孝介 → 片山 奨典
後半28分 吉井 孝輔 → 根占 真伍


カウンターぎみにサイドチェンジして右サイドに回された展開。高木がくさびのように入れて、宮澤が受ける。上がってきた河合が抑えたようにミドルで射抜きました。前節の大迫のミドルを思い起こさせるような先制弾。めったに入るシュートではないことも確かですが、われわれは、前節のあの大迫のシュートは、鳥取DFの寄せの甘さが打たせてくれたもの、と思っていました。まさに、あのあたりのエリアでの厳しさ。ひとつひとつ潰していくしかない。

この0-3というスコアは先制されたゲームの流れとして致し方ない部分もあります。後半も追加点を奪われるまで決して悪くない。我慢に我慢を重ね、焦れることなく戦っていた。ただ、アッタッキングゾーンで噛み合わない。敵の潰しも早い。強い。しかし、それはまさに今シーズンの札幌の勝ち方そのもののように見えました。それほど多くないチャンスを一気に集中して決めて、堅く堅く守る。先制点を取った試合は14勝で負け知らず。その戦い方の、まさに“すべて”が凝縮された立ち上がり。

5連戦の最後の試合。わかっていることでしたが、長沢、ファビオ、エジミウソンを同時に欠いた先発フォーメーション。高木監督はこの試合に何を求め、どんなサッカーを目指したのか。スタメン11人に何を託そうとしていたのでしょうか。

後半からのイニョンの投入について「彼は瞬発的なスピードはないがパワーがあって、サイドでもキープができるので、そこを起点にしていきたいと考えました。札幌さんがかなり下がった状態でしたので、我々のターゲットにしたかったのですが、相手にとってもターゲットになってしまいました」と指揮官は明かします。明らかに起点ができなかった前半。起点にはなるが、相手にも狙われる。スタメンでなかったのはイニョンにはまだ、それを跳ね返すことはできないとの判断だったのか。

ホーム開幕の東京V戦のエントリーで「正直“高さの麻薬”にはまりそう」と書きました。「これまで、どちらかと言えば小柄でスピード、テクニックがチームカラーだったように感じていた“固定観念”。それが、まったく別次元の高さを手に入れてしまいました」と、今シーズンのチームが大きく変身したことを書いています。この開幕スタメンにさらにエジミウソン、イニョン、菅沼が加わり、平均身長の上がった熊本。そして今日、久しぶりに見る高さのない熊本。以前の熊本。そこにどうしても一抹の頼りなさを感じてしまいました。

連戦の最後。今シーズンのチームの背骨の3人が同時に欠ける事態で、仕方が無いかなあ、とも思えました。確かに選手は闘っていたと思います。しかし、この19歳、20歳、21歳の3トップで呼吸を合わせる練習の機会はそう多くはなかったでしょう。

誰が出ても、誰が出なくても同じサッカーができる、パフォーマンスが変わらない、みたいなことは理想だし、言うのは簡単です。しかし、こうやって目の前で見てみると、なかなか難しい。厳しいと感じます。2点目を取られたあとぐらいからガタッと運動量が落ちたのは、連戦の疲れというより、深夜までかかって鳥取から帰熊して、中二日で北海道に飛び立った移動の疲れなのか。いや、そんな言い訳はできない。ホームの札幌だって、前節は徳島。その前は鳥取、京都と、ずっとアウェーが続いていたのですから…。多分にメンタルの差ではなかったかと思うのです。

若さや経験不足を言うなら札幌はどうだ。CBの一画を努めた奈良は、2種登録のまだ高校生でデビューから2試合目だというし、途中から入った古田にしても、20歳のプレーヤーです。しかし、昇格圏を争うこの時期の“痺れる”試合で、しっかりと一員として役割を果たしている。それは、試合前の「選手だけのミーティングで『昇格争いのプレッシャー』を楽しもうと話し合った」(ELGOLAZO Web版)ことの成果だったろうし、この大事な試合でベテラン河合が真っ先に点をとって、みんなを楽にさせたということもあるでしょう。

試合後のブログで南は「こういう試合で点をとる、決定的な仕事ができる選手がでてこないとなかなか大一番で勝つ、ひいては昇格するっていう事は難しいなとあらためて今日感じました」と吐露しています。吉井は「ただがむしゃらに頑張るだけではなく、札幌の河合さんのように、考えてプレーできるようにならないと」とコメントしました。足りないもの(コト)が、まだまだたくさんあることを示された敗戦。しかし、足りないことのレベルはだいぶ上がっているようにも思います。

勝手な想像ですが、もしかして高木監督は、今日の若い3トップにチームの歴史を変えるような“仕事”を期待して送り出したのかもしれない・・・。

それにしても、よくコロコロと選手が滑って転んでいましたが、ちょっと異様に見えました。2点目のときもDFが滑っている。よく見ると南も足をとられているような。何なのか。素朴に原因が知りたいところでした。

10月26日(水) 2011 J2リーグ戦 第7節
鳥取 0 - 1 熊本 (19:03/とりスタ/1,994人)
得点者:53' 大迫希(熊本)

相手FWハメドがすべてだったのかも知れないなと思った試合でした。2週間前の天皇杯2回戦、0-3の敗戦時、1得点2アシストしたこのコートジボワール人を止められなかった。菅沼が語るように「ハメドにやられないように、個人的にも強く(当たりに)いった。前半はやらせなかったと思う」というところが今日の熊本の最終ラインの意図であり、そこに集中していました。

最近5試合(天皇杯含めて)3勝1敗1分と、決して悪くない状態の鳥取。連戦という両チーム共通のテーマのもと、土曜日にホームで札幌に勝ち、そのまま中3日でホームゲームに臨む鳥取。対する熊本は日曜日のホームから中2日でアウェー戦。このあたりのコンディションはなかなかデリケートに影響してくるのかと思いました。10月も下旬のナイトゲーム。寒冷前線の影響もあって気温は14度。グラウンドコートを着て入場した熊本のイレブンでしたが、試合開始後すぐに汗が吹き出している様子が画面からもわかる。これも、それが疲れからなのか、それともそれほど開始から走っているということなのか。

鳥 取
 9ハメド 
7小井手10実信
6服部13美尾
 28三浦 
3加藤2尾崎
23水本4戸川
 48小針 
前半12分 加藤 秀典 → 鈴木 伸貴
後半18分 小井手 翔太 → キム ソンミン
後半37分 鈴木 伸貴 → 奥山 泰裕


熊 本
 27ファビオ 
14武富13大迫
25西森22吉井
8原田
24筑城2チョ ソンジン
4廣井28菅沼
18南
後半13分 武富 孝介 → 片山 奨典
後半27分 吉井 孝輔 → 根占 真伍
後半37分 ファビオ → ソン イニョン


前半。スカパー!の解説者が「ガイナーレの攻めで、熊本は両SBが上がれない」「前節は両SBが高い位置から攻撃の起点になっていたのに」と、1試合だけのにわか勉強で指摘していましたが、われわれから見ると天皇杯の敗戦のイメージから、ハメドにまずサイドのスペースを与えないように慎重に入っているだけだと映りました。そしてボールを持ち、侵入してこようとするハメドに対しては、必ず二人で対応して左(左利き)を切る。実にしっかり対応していました。

前回のリーグ戦。KKウィングで対戦したときは、そのレポートに彼のことを鳥取の「ゲームメーカー」と書きました。パスも出せて、自分で点も決める。こういうタイプの外国人は、他のチームでもよく見ますが、いかんせん“チームの状況=彼のパフォーマンス”になってしまうきらいがある。自由が与えられる反面、“戦術はハメド”と揶揄されるような。調子に乗せたら怖い。しかし的確に押さえ込んだらチーム全体が動かない。前回ホーム対戦時はそれに成功し、アウェーの天皇杯では失敗した。そして今回はそのリベンジでした。

リベンジという意味では、もうひとつありました。南のブログで明かされた、試合前のミーティングでの高木監督の言葉。今日は絶対勝たなければいけない理由があると。天皇杯時に得点を決めたあと、ハメドが熊本のゴール裏を挑発し侮辱した行為を思い出させ、「自分達のせいでサポーターまで馬鹿にされたんだっ。俺は絶対に許せない。だから今日はサポーターのためにも絶対にリベンジしなきゃいけないんだっ!!」と。南でなくてもこのセリフに「燃えないはずはない」。ハメドはすでに前の試合で、熊本の選手たちに“火”を着ける理由を与えていたのでした。

南が書きます。「今日は“どうしても勝つんだ”って気持ちが後ろから見ていてもみんな溢れているように見えてホント心強かった」「みんな疲労もピークだったと思うけど、今日が4試合の中で1番動けてたと思う」と。戦術だけでなく、そこにメンタルも加わった。だから90分間、あそこまで前線からプレスを掛け続けられたのだと思います。

エジミウソン、長沢が傷んでいるなかで、前節、先発から外した原田、吉井、大迫をスタメンに。市村をベンチに置いて筑城、ソンジンでスタート。後は選手の状態を見ながら、武富、ファビオ、吉井を下げていく。吉井、根占が復帰したことが、熊本の“総力戦”にとっては、やはり大きい。そのなかでも、ワントップを任されたファビオの献身的な追い込みは目を見張るものでした。

後半8分。先制点かつ決勝点になった大迫のシュートの場面。熊本は鳥取が作る2列のブロックを右サイドから崩して攻める。鳥取のクリア。それを高い最終ラインで押し返すと、ボールをトラップしたのは右サイドの大迫。自身のトラップボールがワンバウンドしたところを、すかさず思い切って打つ。ゴールからはまだ30メートルもあった距離からでしたが、ドライブがかかったシュートは、若干前目に出ていたGK小針の伸ばした手をあざ笑うかのように、ゴールに吸い込まれていきました。

「ゴールキーパーのポジションを見ていて打ったと、彼の口から聞くことができるのなら、非常に成長したと思う」という高木監督に対して、「完全には見えていないですけど(笑)、前に出ているという感覚は、いつも持っているので。自分としては、自分が持っている力が出たシュートだったのかな、と思います」とインタビューに答えた大迫。それでいい。ちょっと前まで90分間フルに走れなかったこの生え抜きの“逸材”は、今年一番の成長を見せ、今やチームに欠かせない存在になっている。

スカパー解説者は、熊本は後半、特に先制してから、見違えるくらいに運動量、前線からのプレスが厳しく、守備がはまっていた。と分析していました。「点をとってから元気になった」と。しかし決してそうではない。鳥取サイドの言葉を借りても、「今日はなかなかパスの出しどころがなかった。相手の守備、こちらのパスの受け方、両方に原因があった。裏へのパスも相手が対応していました。うまく守備ではめられているシーンが多くて、そのときにどうするか。後半になったら、もう少し回せるかと思ったけど、相手もペースが落ちませんでした」(戸川健太)。

「前半、相手の前からのプレッシャーは予想していました。それを裏返そうと、前節、(前々節の)岡山戦と同じ意識で入ったつもりです。ただ、結果的に攻撃が単発になり、むやみにスピードが上がり過ぎた。(中略)スピードが上がり過ぎて、うまく活用できなかった。そこが体力的にも、あとあとに響く結果になってしまったと思います。後半、相手は体力面で、90分間を通してアグレッシブに継続してきた。それが、自分たちがボールをうまく動かせなかったことと比例して、ゲームをうまく運べなかった要因だった」(松田岳夫監督)と。

前半は両者拮抗していたものが、後半、鳥取の運動量が急激に落ちたことで、熊本が“見違えるように”活性化したように見えた、ということではなかろうかと。つまり熊本は90分間、一貫してパフォーマンスは変わっていない。実はそれがこの試合の熊本の一番評価されるべきところだと思うのです。

この連戦の4試合目というのに、選手全体のきわめて高い集中力、連動性と豊富な運動量。そのあたりを、まるで軽く煙に巻くように「われわれの方が少しコンディションが良かったのかな」と答えた高木監督でした。

さらに「(先制した後に)2点目を取りにいくということは、ハーフタイムに選手たちからも声が出ていましたし、僕自身も望んでいたことです。そのあたりをもう少し貪欲にいかなければいけないかなと思っています」と指揮官は言うものの、その後も途絶えることがなかった前線から連動したディフェンスは、貪欲に2点目を狙ったというよりも、むしろ相手の攻撃の目をつむための“守備的な”ものと思えました。ファーストディフェンダーから、二人目、三人目と、解説者が丁寧に分析してくれたほど、実にお手本のような組織的守備を見た思いがしました。熊本の2列のブロックを崩せない鳥取は、ハメドがどんどん中盤まで降りてくるという状況に陥る。それは前回勝利したゲームの再現でした。

アディショナルタイム3分を、コーナーでキープして時間を使う熊本。終了のホイッスルが鳴るときに、焦れてそのコーナー付近までボールを奪いにきていたハメドの、苦しげにゆがんだ表情がそこにありました。

先制してからもあれだけ前線からいって、しかもコンパクトにしようとしてラインを高く保てば、必然的に裏をとられるリスクは高まる。しかし、そういった相手のプレーの意図や精度を奪うくらいに、前線から追い込んでいたといことでもあると思います。結局、90分間運動量が落ちないで守備が機能し続けた熊本。何度も繰り返しになりますが、今日はそれしか言えません。

サッカーは所詮、生身の人間のやるゲーム。ひとりひとりの、またチーム全体のコンディションがいかに直接的に影響してくるかがわかるゲームでもあり、またメンタルがそれをどう補うのかということも考えさせられたゲームでした。「次の試合までにできるだけ良い状態にして、連戦の最後を勝利で終えるように頑張っていきたい」という当たり前のような指揮官のコメントですが、これはまったくの本音でしょう。

次節は、ファビオとソンジンが累積で欠場。武富も痛めているという情報があり心配されます。エジミウソンと長沢の故障は癒えるのか。相手は昇格圏を争う札幌。連戦の最終戦にして、本当の“総力”が試される戦いになりそうです。札幌厚別アウェー戦。38試合のなかの1試合とはいえ、この状況においては、色々なことが試されるとても重要な山場のように思えてきました。

10月23日(日) 2011 J2リーグ戦 第32節
熊本 2 - 1 水戸 (17:04/熊本/9,461人)
得点者:31' 小池純輝(水戸)、78' ファビオ(熊本)、84' 根占真伍(熊本)


「相手よりも走ろう!戦おう!頑張ろう!」
「後半、立ち上がりから、どんどん前からプレッシャーをかけていこう。」
「勢いを持って戦おう!」
広報を通じて知らされるハーフタイム時の監督コメントは、往々にしてメンタルを重視した言葉が多い。おそらくそれだけでなく戦術的なことも話されているとは思うのですが、もちろんそれらは具体的に明かすことはできないのでしょう。しかし、今日の試合において高木監督は、15分間のほとんどを“檄”を飛ばすことに費やしたのではないか。誰もがそんなふうに想像してしまうような前半の内容でした。

5連敗、7試合勝ちの無い厳しい状況から一転、ここ5試合負けなしで好調の水戸は、父親の死去のため不在の柱谷監督に代わって、急遽秋葉忠宏ヘッドコーチがこの試合の指揮をとることに。これは結果論になるのかも知れませんが、今日の試合の流れを左右する遠因になったのかもしれません。

連戦の中間となる3試合目。熊本はスタメンを3人入れ替えてきました。累積欠場の片山はともかく、市村、大迫もベンチ。代わって右SBを努めるのはソンジン。宇留野と西森は、前節の途中出場こそ“アイドリング”の意味があったのか。果たしてこれはターンオーバーなのか。いずれにしても、総力戦とは言ってはみたものの、過酷な連戦日程を見せつけられたようで、ちょっと不安もかき立てられたのが試合前の正直な気持ちでした。

熊 本
 9長沢 
14武富11宇留野
25西森27ファビオ
 5エジミウソン 
24筑城2チョ ソンジン
4廣井28菅沼
 18南 
ハーフタイム エジミウソン → 原田 拓
後半19分 宇留野 純 → ソン イニョン
後半32分 西森 正明 → 根占 真伍


水 戸
30鈴木 9吉原
28小澤7小池
24ロメロ フランク8村田
4尾本6西岡
20塩谷5加藤
 1本間 
後半11分  ロメロ フランク → 岡田 佑樹
後半35分 吉原 宏太 → 島田 祐輝
後半41分 西岡 謙太 → 遠藤 敬佑


南のブログの言葉を借りれば、前半は「正直今季1、2を争うくらいひどい内容」。サイドで詰まってはバックパス。ロングフィードもラインを割る。連携というレベルではなく、全く個々人がバラバラな感じが伝わってきます。

水戸の前線。鈴木、吉原という元日本代表のテクニックに翻弄される。それに切れ味のある小池、小澤が2列目から飛び出してくる。これが5戦負けなしの原動力か。対する熊本の守備の危なっかしさ、バタバタ感は、目を覆いたくなるほどでした。

吉原が小澤に渡す。左サイドに傾いていた熊本。一転、右にチェンジされ危ないクロスを入れられます。続いてもボールに行ったソンジンが抜かれ、吉原にクロスを入れられる。右サイドを徹底的に狙われている。そんな危険な雰囲気が漂っていた時、やはり右サイドから吉原に早いタイミングでクロスを入れられ、走り込んだ小池に押し込まれてしまいました。

前節、栃木戦と同じように、絶対に取られてはいけない先制点をとられてしまった。カウンターとも言えない攻撃に、あっさりと後手を踏み、ゴールへ向けて後ろ向きに走るディフェンス陣。何度も何度も繰り返し見せられる光景。そしてその後も覇気のないプレーぶりに、ハーフタイムに控え室に戻るイレブンに対して、容赦ないブーイングが浴びせられました。

「練習なのかメンタルの部分なのか、伝え方がまずかったかもしれないし、それが前半の内容のないサッカーになってしまった」と高木監督は振り返りました。「流れが変わったのは…、気持ちじゃないかと思う。後半は違うチームのようになっているので、前半の戦い方が大事」と筑城は言います。ではいったい何が流れを変えたのか?これが、この試合を語る大きなテーマに違いありません。

少なくとも現場(スタジアム)では、後半から見違えてよくなったとは感じられませんでした。後半もようやく33分。同点に追いついてから、俄然エンジンが掛かったようにしか見えなかった。しかし録画を改めて確認したら(結果を知っているからかも知れませんが)、この長い33分という時間、我慢して我慢して食らい付いているように見える。「勝ちたい」という気持ちが、徐々に水戸を上回ってきているように見えるのも贔屓目というものでしょうか。

痛んだエジミウソンをハーフタイムで諦め、原田を投入。さらに後半19分には宇留野に代えてイニョン、32分には西森を根占に。早い時間帯から繰り出した仕掛け。根占の投入が仕上げとなって熊本の逆転劇の舞台が整いました。

原田から左のスペースにボールが出る。イニョンが素早く走り込んでのクロスに、ファビオがDFと重なりながら身体で押し込んだような同点弾。6分後には、廣井がプレスからインターセプト。再びイニョンを左サイドに走らせ、今度はグラウンダーのクロス。中央に走り込んだ廣井が流して、上がってきたのは根占。低く抑えた弾道で、強烈にミドルをぶち込みました。

ここ数試合、途中投入でも“消えていた”感のあるイニョンが、2得点ともに絡む働き。当のイニョンは「流れが変わったのは、原田選手が入って空いているスペースに自分も入ってボールが動くようになったからだと思う。水戸が前に出てきていたので、やりやすかった部分もある」と分析します。確かに水戸は引いて守るでもなく、2点目を奪うべくさらに圧をかけるでもなく。何故?と思うほどバイタルエリアが空いていました。

さらに根占は「交代で入る時には、前がかりに行って相手にプレスをかけることと、(原田)拓さんよりも高い位置で受けてFWと絡むこと、リズムを作る事を考えて、監督からもそういう指示があった」と証言する。どうやらエジミウソンが痛んで原田に交代したことが、不幸中の幸いだったのかも知れない。以前、われわれもエジミウソン依存症と表現したことがありましたが、彼がいないことで、皮肉なことにようやくスイッチ(監督はギアチェンジと言っていますが)が入ったということもあるかもしれない。システムも、スカパー中継ではイニョンが入った時点で3-3-3-1に変わったと表現していました。DFは菅沼、廣井、ソンジンの3枚で対応して、中盤を厚くした。これもまた要因のひとつなのかと。いずれにしても、この交代カード3枚が見事に局面を打開するきっかけになったことは間違いないでしょう。

「…ぬるいところが出た」「…もっとやろうという気持ちが足りない」「…ボールをもらいたくないのか、ミスしたくないという気持ちがあったのか…情けない」「誰もができるプレーしかできていなかった」。総じてまだ若い水戸の選手達を引っ張る吉原は、そう言って悔やみました。柱谷監督がいればまた違ったマネジメントをみせただろうということは、容易に想像できることでした。

最後に長沢が見せた気持ち。これまでなら、イニョンが入れば長沢が退く形でしたが、一列下がることによって、その足元のうまさが活かせる格好になった。終了間際のプレー、捻挫なのか痛みに悶絶する。メディカルスタッフからは×が出る。しかしもちろんもう交代カードは使い果たしている。自らピッチに戻っていく長沢。解説の池之上氏が言う。「できることはある。できることをやればいいだけ」と。その気持ちが他の選手たちにも伝わったからでしょう。あのアウェー鳥栖戦を思い起こさせるような、長い長い6分ものアディショナルタイムを、全員で凌ぎ、1点差を守りきりました。

試合前、満杯のゴール裏で繰り広げられた見事なコレオグラフィー。詰めかけた9000人以上のファン。今日は負けるわけにはいかなかった。栃木戦のような負け方は絶対できなかった。内容はといえば、相変わらず決して褒められたものではなかったのが確かなところです。でもようやく「勝ちたい」という気持ちが相手より上回るのが見えた。そしてそれが結果となって実を結んだ。この期に及んでこんなことを褒めているのもなんですが、今日のところはシーズン2度目の逆転劇に酔いしれるのも悪くはないでしょう。

10月19日(水) 2011 J2リーグ戦 第6節
熊本 0 - 1 栃木 (19:04/熊本/3,189人)
得点者:9' 水沼宏太(栃木)


こんなに点を取るって難しいことだったのか。そんな印象を受けたゲームでした。チャンスも作れている。ゴール前まで運べている。しかし何とも攻撃が“薄い”。決定力という曖昧な概念よりも、決定機をどれだけ作れるかという確率論の視点に立つわれわれからすれば、それは“崩しきれていない”からというしかない。PAに入るか入らないかの位置から、崩しきらないうちにフィニッシュしている。それは「積極的に打った」と言える一方、「持ち込んだ後のアイデアがない」あるいは「焦って打った」「打たされた」とも言える。バレーボールでいえば、パスワークで振り切れなかった敵の3枚ブロックに、それでも果敢に打つスパイク。アメフトでいえば、DFを振り切れていないレシーバーに対して、それでも投げるロングパスのようで。もちろん、それでも決めてしまう個人の技量というのも必要なのでしょうけれど…。

10位の熊本と6位の栃木。しかしその勝ち点差はわずかに2点。この試合、一発で順位が入れ替わる状況でした。

キャプテン南の試合前日のブログ。「栃木は現在8試合勝ちがないらしいので、逆に明日は間違いなく難しい試合になる」と言っていたとおり。「前半からとばして先手をとれるかどうか?そこがゲームを大きく左右するキーポイントになる」と。「相手に“今日はイケるんじゃないか?”と思わせない事がすごく大事」。そう一番恐れていたことが、その通りになってしまいました。

熊 本
 9長沢 
7片山13大迫
14武富27ファビオ
5エジミウソン
24筑城15市村
4廣井28菅沼
18南
後半15分 長沢 駿 → ソン イニョン
後半28分 大迫 希 → 宇留野 純
後半39分 市村 篤司 → 西森 正明


栃 木
9リカルド ロボ 18チェ クンシク
11河原14水沼
10高木13本橋
24那須川16宇佐美
5落合23渡部
 21武田 
後半22分 河原 和寿 → 杉本 真
後半30分 崔 根植 → サビア
後半45分 本橋 卓巳 → 赤井 秀行

開始9分。熊本が得たFKを大迫が蹴る。ファーサイドの廣井のヘッドでの折り返しはGK武田の手の内に。そのまま武田がパントキックのように前線にフィードする。一人が反らして、前線に走りこんだには水沼。うまくトラップして筑城を切り離すとシュート。南が触ったものの勢いは衰えず、ゴールネットを揺らします。「絶対に止めなきゃいけないボールだった。完全に自分のミスです」と南が翌日のブログで悔やんでいるように、早い段階であってはならない失点。しかし、彼だけの責任ではなく、「エアポケットみたいなところ」(栃木・松田監督)をうまく突かれたチーム全体の失点でした。

武富の「前半がもったいなかった。相手もアウェイで勢いを持ってきて、そこでひるんだというか、ちょっと消極的になってしまった」というように、8試合勝利の無い、後がない栃木の開始早々からの猛ダッシュ。細心の注意をもってリスクを潰していくべき時間帯だったのですが…。愛媛戦の引き分けという内容を“整理”していなかったのか。あの「良かった時間帯」のイメージをまだ引きずり、「今日は勝てるだろう」という慢心が潜んではいなかったでしょうか。

高木監督は「ひと言で言えば、今日のゲームはセカンドボールの勝敗如何で流れが変わるような展開で、1stハーフは腰の抜けたようなプレーが多かった」と。そして、絶対に与えてはならない先制点を与えてしまった。今の熊本、1点先制されると、それを跳ね返すには、スタメン自体をいじらないと難しいような空気さえ流れます。重い。早々とイニョンがウォームアップを始めていました。

前半終盤には、左サイドで片山、武富のパス交換から、片山がえぐってクロス。DFのクリアを拾った武富が至近距離から打ちますが、GKに阻まれる。後半中頃にも、ショートコーナーから片山が入れたグラウンダーのクロスがポストに当たって、跳ね返りがイニョンの身体に当たりましたが枠の外。決定的な瞬間は幾度かありました。しかし、ゴールネットは揺らせない。

栃木の球際のアグレッシブさは、90分間通して続いている。ボールを奪ったら、シンプルに且つ速く繋いでくる。わずか1点では、「今日はいける」という確信はなかったはずですが、何故かこちら側からは妙に落ちついて見える。何か、むき出しではなく静かな闘志という感じ。それが、「今日は絶対に勝ちたい」という気持ちの強さだったのでしょう。

しかし、スカパーの放送で解説の池之上氏が言うほどには押されておらず、いったん押し込まれた流れを押し返すところまでもっていったのではなかったでしょうか。サイドで押し込んで、相手が下がり始めると、熊本の高さが生きてくる。高木監督も、先のコメントに続けて、「ただ、そこでやめずに、後半はボールを奪うという事からスタートして、ある程度相手の陣内でプレーする事ができた」と。慌てることなく、栃木の追加点への圧力を受けとめながら、凌いで凌いで、少しずつ押し返すリズムを作っていった。栃木側も重心が少しずつ後ろにかかっていったため、結局2点目を奪えなかった。

もちろん、先制されて、逆転どころか結局は同点にも追いつけなかった。熊本からすればそれが事実であり結果です。ゲーム自体は互いに攻守の切り替えが非常に速く、体をぶつけ合い激しい闘志を前面に出したゲームでしたが、お互いにまたミスも多かった。この季節のナイトゲーム。ミッドウィークに駆けつけたスタンドのファンの冷え込む身体を、白熱の温度で温めるには至りませんでした。

何より、筑城のコメントを借りるまでもなく「逆転できるようにならないといけないなと思います。早い時間に失点して、焦りは無かったけど、逆に0-1になって、『今回こそは』という気持ちはあった」というように。しかし、その1点が遠い。本当に遠い。

一方で、井芹さんがJ’s goalのプレビューで書いていた“総力戦”(われわれも同意見でしたが)というなかで、逆に戦力の薄さを認めざるを得ないことも残念でした。根占をケガで欠き、ここでまた原田を膝の怪我で欠くという状況。長沢は、前節の愛媛戦の解説者・大西氏のアドバイスが聞こえたのか(笑)、今日は胸トラップでマイボールにする形が多かったのは評価できます(千葉のオーロイのプレーで怖かったのは、あの“モール”を作るようなプレーだった)。しかし、疲れているのか、あるいはポストプレーに徹しているかのように、どうも消極的で動きに生彩を欠く。迫力に欠ける印象でした。久しぶりにベンチに入り、途中から出場した宇留野も西森も、うまく試合に入っていけませんでした。

栃木では、大津高出身の落合が10試合ぶりにCBの一画に入り、15試合ぶりのボランチ本橋とともに、大きな壁となって立ちはだかり、先制点を決めた水沼は、無尽蔵の運動量で、90分間攻守に走り回っていました。(試合後のインタビューの爽やかさに、親父殿と違って好印象を受けてしまったのは余談です(笑))。

果たして、スタメンというファーストチョイスがその時その時のベストチョイスになっているのかどうか。チーム全体が納得して、というか、落ち着いてゲームに入れていないような。ベンチにもベンチのベストメンバーが入っているのか。何か、どこかに心配事をかかえたままのような。ないものねだりをしても仕方はないのですが…。われわれのような一ファンは、そうやってヤキモキするしかありません。

もう日曜日には次の試合がやってきます。直近5戦負けなしの水戸。それでなくても相性がいいとは思えない相手。前回対戦も「負けなくてよかった」と言えるような内容の引き分けでした。相当、心しなければやられる。このままではまずい。今、われわれはそういう心境です。

10月16日(日) 2011 J2リーグ戦 第31節
愛媛 1 - 1 熊本 (16:04/ニンスタ/2,869人)
得点者:52' 原田拓(熊本)、80' 福田健二(愛媛)


残り10試合となったリーグ戦。これから2週間で5連戦というこれまでにない過密日程に際し、高木監督は戦前、「ここからがラストスパート」と表現していたらしい。先制点をわがものにしたものの、追加点を奪えず追いつかれてのドロー。それにしても試合後の監督のコメントは全体的にポジティブに映る。それは、この5連戦をひとつの“ユニット”として捉え、どう“戦い抜くか”また、そのためにどう選手のモチベーションを持っていくかという考えでいるからではないでしょうか。

愛 媛
27齋藤 8内田
25東10杉浦
4渡邊6田森
7前野28高杉
5大野18池田
 1川北 
前半42分 齋藤 学 → 金 信泳
後半15分 杉浦 恭平 → 大山 俊輔
後半31分 池田 昇平 → 福田 健二


熊 本
 9長沢 
14武富13大迫
7片山27ファビオ
5エジミウソン
8原田15市村
4廣井28菅沼
18南
後半15分 原田 拓 → 筑城 和人
後半33分 長沢 駿 → ソン イニョン
後半37分 武富 孝介 → 齊藤 和樹


熊本と同じように、得点力不足に悩む愛媛。前線での動きだしが少ないため、DFラインのボール回しにもたつく。そんなスカウティングもあったのでしょう、開始早々から熊本が前線から積極的に連動したプレスを強め、愛媛を自陣に釘付けにします。

スカパー!解説者の大西氏も何度か指摘していた「愛媛のスイッチ」の入り方。とにかくマイボールになってからの展開が、いかにも遅い。慎重になっているのか、意図がはっきりしていないのか。「チームとしてボール回しは安全に、2タッチで回したり、もちろん奪われない方がいいけど、ダイレクトプレーとかも考えた方がいいと思う。後ろは特に失点したくない気持ちがあると思うが、そこで勇気を持つことやプレーの質、意識の問題は変えないといけない」。愛媛のFW内田が試合後、そう正直にコメントしていました。

熊本は前半を支配したように見えましたが、この、愛媛のあまりにも悪すぎる前半と差し引きすれば(愛媛バルバリッチ監督は「12歳の子供のサッカーのようだ」と自軍の戦いぶりを酷評していますが)、実は結局、これといって決定機を作れなかったように、あまり褒められたものではなかったと思いました。先週の天皇杯。鳥取に遠征して見てきた知り合いからも、「まったく鳥取戦から改善していない」との声が聞こえました。

それでも先制点を奪うことで、十分に勝機を感じました。後半7分。ファビオがドリブルで前を向きかけたところを内田に後ろから引っかけられる。ゴール正面30メートルからのFK。原田の蹴ったボールは壁の左側を巻いて、ゴール右角に落ちていく。ようやくセットプレーをものにしました。

ところが逆に、先制されたことで、愛媛に自動的に“スイッチ”が入ってしまいます。失点直後、アーリークロスの処理にまごつく熊本のDFライン。こぼれたところをエリア内から内田に打たれますが、南が好セーブ。続いても縦に入ったパスを大野が強烈シュート。これも南がなんとかキャッチ。動きも判断も、格段にスピードアップした愛媛。バルバリッチの言う「ウチの選手たちはそもそもプレッシャーに弱い。ボールを持った選手の半径7~8mのところの相手が来てもプレッシャーに感じることはないが、それだけで恐怖心を感じてしまっている」というようなプレッシャーや恐怖心が、先制されたことで一気に吹っ切れたということでしょうか。

スイッチの入った愛媛に対して、先制直後から逆にフワフワッとスイッチの切れてしまったような熊本。前線からのプレスが効かなくなり、中盤で後手を踏み、最終ラインがバタバタしてしまう。“精神的なスイッチ”だけで、こうも変化してしまうものでしょうか。テレビ画面ではよくわからなかったのですが、バルバリッチ監督は失点直後、4-3-3へのシステム変更を命じていたようです。(J’s goalレポート)

後半35分、サイドで繋がれて、左サイド奥で内田に粘られ、クロスを入れられる。途中から入っていた福田にニアで合わされると、南も為す術がありませんでした。

今日は、武富の奮闘がひとつの光明でした。スピードを生かし、身体を張ってプレーし、多くのチャンスに絡みました。「勝ちたい一心でプレーしたし、勝てると思っていた。今日はそれ以外考えていなかった」と悔しがるように、5連戦の初戦、天皇杯での良くない負け方の直後の、先制できた試合。とにかく結果が欲しかった。

ここ数試合の徹底したリアリズムが見えない。そう思った試合でした。追加点を狙いながらも、時間の経過を読みながらなりふり構わず守り切る、みたいな。もちろん、先制したあと追加点を奪いにいくことが、今のわがチームの課題ではあることは確かです。しかし、残念なことに1点が“虎の子”であることも受入れなければならない事実。その判断の切り替えに関して、いかにも中途半端。前半の愛媛の良くないイメージを持ったまま、切り替えられずにゲームを続けてしまったような。前半でかなり飛ばしていたわけですから、スタミナ的にも厳しくなってくる。流れが完全に入れ替わってしまった。その“潮目”を見切って、対応を変えることができなかったのが“敗因”ではないか。そう思えるのです。

先制した直後から流れが悪くなって、筑城が準備されるときには、左SBに入って原田を一列上げて、ダブルボランチにするのかと思いました。中盤に蓋をして、サイドに起点を設けて追加点を狙うのかと。しかし、前半でもらったイエローのリスク回避からか、原田との直接交代に終わった。
前線に圧を掛けてきた愛媛に対して、熊本の前線からのプレスはことごとく空振り。DFからはアバウトなクリアボールが蹴られるばかり。もっと前で持てれば全体の押し上げも効いたのでしょうが、チグハグ感は否めませんでした。やはりそこには、愛媛の前半のイメージが尾を引いていたと。スイッチが入ったことに気がついていたとしても、油断がなかったとは言えないように思えました。

「必死で頑張ったので比較的やり切った感はあると思う」「やりたいことは徐々にできているので、我々としては収穫もあった」「今日の試合をベースに足りないところ、あとは早くコンディションを戻していい状態で戦えるように頑張りたい」。

冒頭書いたとおり、高木監督のコメントはあくまでポジティブに徹し、次の水曜日の試合に向けてのマネジメントを始めているように思われます。連戦を総力戦と捉え、アウェーに限らずベンチメンバーにも色々な工夫がされるのではないかと。この時期において「やりたいことは徐々にできている」とは。と、皮肉のひとつも言いたくなりますが、最後まであるべき姿を追い求める指揮官の気持ちもわからないではありません。これは多分に選手たちに向けられたメッセージに他ならないだろうし。

一方のバルバリッチは「12歳の子供のサッカー」に続けて「熊本はパスをつないだりポゼッションから攻めるチームではなく、ロングボールに頼った攻撃をしてくるチームだと考えればそんなに難しい相手ではなく、やるべきことをやってポゼッションをすれば2点差で勝つことを期待してもおかしくない相手だと考えていたが、攻めても気持ちややる気が出てこないと勝てる相手などいない。」と熊本を見下し、選手を突き放したうえで、さらには「このクオリティーの中で残りの試合をやるしかない」とまで言い放っています。もし、これもまた選手を鼓舞するための劇薬表現だとするなら…。わが指揮官とこの旧ユーゴ出身の敵将と、実に対照的で興味深いものがあります。

ただ、J’s goalレポートの近藤氏も指摘するように、引き分けに終わり両者それぞれ順位を落とした今節、「この試合で両チームは前進することができていない」ということだけが事実。「どれだけ収穫を得ても評価されるのは結果」であり、リーグはそういう最終局面に来ているとも思うのです。

10月10日(月) 第91回天皇杯 2回戦
鳥取 3 - 0 熊本 (13:00/とりスタ/3,125人)
得点者:8' ハメド(鳥取)、75' キム ソンミン(鳥取)、86' 吉野 智行(鳥取)

10月1日(土) 2011 J2リーグ戦 第30節
熊本 1 - 0 草津 (13:03/熊本/6,797人)
得点者:17' ファビオ(熊本)

今日から10月。久々のホームのデーゲーム。試合前、周辺の芝生の上でお弁当を広げる家族連れ。子供たち。ゲートをくぐる高揚感。リーグ戦もいよいよ終盤。富山戦の一部混乱した運営の反省からか、今日のサッカーフェスタに関しては明らかに動員が控えてあるようにも感じます。

ただ、この秋晴れの天気。気温も徐々に上がってピッチ上27度という環境は、中二日の3連戦の最終戦の今日、選手たちのコンディションにどう影響を及ぼすのか。われわれはまだ前節の悔しさ引きずっていて、やはり、絶対に先制を許さないこと、そのための徹底したリスクマネジメントを期待して、息を詰めて見守っていました。不用意なミスだけは勘弁してくれよ、と。

熊 本
 9長沢 
7片山13大迫
8原田27ファビオ
5エジミウソン
24筑城15市村
6福王28菅沼
18南
後半33分 原田 拓 → 西森 正明
後半34分 長沢 駿 → ソン イニョン
後半45分+1 大迫 希 → 仲間 隼斗

草 津
19後藤 8アレックス
14熊林6櫻田
2戸田30松下
23永田24古林
3御厨5中村
 22北 
後半14分 後藤 涼 → 萬代 宏樹
後半28分 熊林 親吾 → 佐田 聡太郎
後半36分 櫻田 和樹 → 林 勇介


「ただ、ゲームの入り方で言うと、前節(5節)からの改善点というのがいくつかあったと思いますし、短期間でも選手が理解してくれて、それがゲームにつながっていったと思います」。高木監督が試合後そう回想するように、試合開始から攻撃に人数を掛けることが出来ている熊本。久しぶりに先発に入った長沢がボールを収めると、ファビオや大迫が追い越してくる。そのフォローに片山、市村もついている。この日、初めての先発でコンビを組んだ福王、菅沼のDF連携も無難。守りの局面でも「前からプレスをかけることができた」(高木監督)。前節は、プレスがかからない、あるいはプレスが単発でやすやすとかわされていましたが、今日は、きちんと狙いが定まっていたし、組織的だと言えました。

一方の草津。自陣からなかなか抜け出せない。松下、戸田の両ボランチ、果ては熊林までもが押し込まれていて、縦に一発、キック&ラッシュを試みても、前線との距離が遠すぎる。回しながらビルドアップを試みるもパスミスが出る。前のアレックスもなんだか精彩を欠いているような。前節の熊本と同じように、草津は鳥取から直接アウェー2連戦の熊本に移動してきた。しかも「ナイトゲームからデーゲームと、短期間の中で時間帯も変わり気候も変わるという、非常にタフな環境」と副島監督が表現したように、少しばかりそこにはホーム側にアドバンテージがあったかも知れません。

前回対戦では前半17分に草津・熊林に先制点を奪われ、そのまま終了まで持っていかれた。とても嫌な、整理のつきにくい負け方でした。今日は、まったく同じように前半17分に熊本がファビオのゴールで先制し、これを守り切るというミラーゲームのような展開となりました。

その先制のシーン。またもスローインからの攻撃でした。前半14分あたりから、右サイドで1回、2回、3回と押し込んだまま、スローインを続ける。市村が「得点のところは粘り勝ちという感じ」と言うように。そして4回目のスローイン。長沢から市村が再び貰うと二人を相手にしながらも失わず、片山に渡す。片山は思い切ってサイド奥に仕掛けると、利き足ではない右足でグラウンダーのボールを入れる。ニアのDFが触って、角度も高さも変わったボールをファビオが躊躇せずダイレクトボレーで突き刺します。競り勝つ長沢、市村の粘り、片山の意外性、ニアに詰めた大迫の働き、そしてファビオの思い切り。全てがつながった得点。そしてこの、高さを生かした相手陣内の深いところでのスローインからの組み立て、キープ、押し込み、連続攻撃はなかなかの武器になっているなと確信させました。

ファビオの今シーズンようやくの2点目。今季新たな役割を与えられ、その戸惑いからか、なかなか結果が出ていなかったこと。「若い選手ですけど、外国人選手なのでやっぱり点を取ってもらわないと困るということは、常々彼にも話をしています。そういう意味では、今日は冗談も交えながら厳しく言った」という高木監督。それは試合前、すね当てをはめているファビオに、「シュート打たないし、危ないところにもいかないんだから、すね当てなんかいらないだろ」という、しゃれにもとれないような“叱咤激励”だったらしい。それに対してきっぱりと「今日は点を取る」と言い切ったというファビオ。得点後に駆け寄ったファビオに、監督が足を撫でてやるという意外なパフォーマンスを見せたのも、そのすね当てを尊重した、そういう“伏線”があったからなのかと知りました。

多分、熊本の得点力の鍵は、かなりの部分、実はファビオが握っていると思っています。彼自身が「私への期待と要求も大きいと思うので、それに応えられるようにもっと努力していきたい」とはっきりとそれを自覚している。今日は、得点のほかにも、玉際で粘ってマイボールにする場面が随所に見られた。終盤戦に向けて、この褐色の駿馬の活躍。期待していい材料だと思いました。

もう一人目立っていたのは片山。得点シーンのアシストはもちろんですが、カウンターから左サイドをドリブルで突っかけたシーン、あるいは預けられて思い切りよくシュートを選択したシーン。前節、前々節ぐらいからでしょうか?明らかに昨季の切れ味を取り戻しつつあると思わせます。大迫と頻繁にサイドチェンジして、呼吸も合ってきた。これも期待です。

後半は、お互いにミスの多さ、精度の低さが目立ってしまったような。ずーっと膠着状態が続くような戦い。神経戦のような、潰しあいのような。ただ最近、前半は入りが悪く後半は調子を上げるという草津の反撃の芽を、注意深く剥いでいくということは出来ていたのかなと。

時間の経過とともに、熊本はさらにセーフティーになっていく。勝ちきるために。全然面白くないけど、全然構わない。それでいい。熊本の強さを押し出して勝つというより、相手を消して、潰して、凌いで勝つ。1点差では実に怖い時間帯。草津もDFの中村を上げてパワープレーに出る。アディショナルタイム5分間は、自陣に釘付け。熊本のゴール近くでの局面が続きました。

今日もまた快勝でも劇的でもない勝利。地味な、実に地味な勝利。

高木監督が「後半の出来に関して“悪いな”という印象はないです」と言う。そのベースには「相手がボールを持っている時のディフェンスに関しては非常に良かった」というように、ある程度安定感、安心感があったような。それは集中できていたということとも同義語なのでしょう。今日は後半途中で退いた熊林も、「何となく作っているけどシュートまで行けてない」と言うように、結果、草津には前後半合わせてシュート3本しか打たせなかった。それはやはり組織的な守備が戻ってきたとも言えるのかも知れません。

ただ、相変わらずディフェンシブサードで与えるFKの数が多い。草津には熊林、松下ほか、どこのチームを見渡しても用心すべきプレースキッカーが必ずいる。セットプレーからの守りに難のあるわがチームだけに、ここは改善点が残る。失点はもっと減らせると思います。

勝ち点40。残すところあと10試合。高木監督は、「目の前の一戦一戦を戦うことが、われわれに“残された道”」とコメントしました。これから天皇杯を間に挟み、そこからまた怒涛の連戦に入るリーグ日程。非常に微妙な順位。デリケートな時期に差し掛かり、選手のモチベーションを気にしながら、チームの力をさらに積み上げて行こうとするために、とても言葉を選んだ表現だったと思いました。キャプテンの南はゴール裏に向かって、「最後まで昇格を諦めない」ときっぱりと言い放ちました。

この試合の観戦のために来熊した大東チェアマンは、試合当日の熊日朝刊に掲載されたインタビューのなかで、来期導入予定のプレーオフ制度に言及していました。3位から6位までの昇格プレーオフには、「多くのクラブにJ1を経験して欲しい」という狙いが込められていると。また、「リーグは間違いなく盛り上がるだろう」とも。導入されれば、10位くらいまでは最終盤まで“昇格圏”を争うことなるわけで。まさに今の熊本あたりになります。一戦一戦、目の前の試合を戦うことには変わりはありませんが、その一戦一戦の“痺れ”度合いは格段に違うだろうなと容易に想像できます。ファンの盛り上がりも違うだろうと。
しかし、同じ記事でチェアマンが、「熊本はJ1昇格の要件は満たす。あとは成績だけ」といわば“お墨付き”をくれたのですから、今季、まだこれから最終コーナーを回ったところで直線一気。わずか鼻の差でも昇格圏内に食い込む。そんな痺れる状況を今年のうちに味合うことを決して諦めるわけにはいきません。