3月25日(日) 2012 J2リーグ戦 第5節
熊本 3 - 3 湘南 (16:04/熊本/4,687人)
得点者:12' 廣井友信(熊本)、23' 馬場賢治(湘南)、34' 大迫希(熊本)、55' 古橋達弥(湘南)、79' 大槻周平(湘南)、87' 武富孝介(熊本)


一言でいえば面白かった。観戦するスポーツとしてのサッカーの魅力を堪能したゲームだったと言えました。しかし戦前は、4連勝で首位を走る湘南をこの時点で迎えるのは、正直なところキツイなあと思っていました。撃ち合いを演じて、3連敗を免れるとともに、湘南の連勝にストップをかけた。引き分けとはいえ、あの展開で追いついた引き分けは、逆の場合とは全く違った印象が残りました。

福王と藤本主税がベンチにも不在となった布陣。二人とも連戦からくる疲労性の故障ではないかと思われますが。前節、町田戦のエントリーで、われわれは最初と最後に藤本のコメントを引用しました。今シーズンのチームのなかで、この選手の役割、重みは言うまでもありません。それだけに、明らかに疲れているのか、そのパフォーマンスは期待に応えるものではありませんでした。監督としても前節の途中交代といい、この試合といい、苦渋の判断を迫られたのではないかと想像しました。

熊 本
 27ファビオ 
14武富19五領
9片山13大迫
10養父8原田
4廣井3高橋
 22吉井 
 18南 
後半20分 原田 拓 → 根占 真伍
後半25分 五領 淳樹 → 白谷 建人
後半42分 大迫 希 → 崔 根植


湘 南
 18古橋 
15岩上17馬場
23高山5古林
6永木7ハン グギョン
22大野2鎌田
 3遠藤 
 27阿部 
前半42分 岩上 祐三 → 坂本 紘司
後半26分 古橋 達弥 → 大槻 周平
後半43分 鎌田 翔雅 → 島村 毅


吉井が一列下がったものの、この急造DFラインの危なっかしさは、致し方ないともいえます。ただ一方で、藤本のポジションに代わりに入った五領は十分に気を吐いた。この初スタメンのルーキーのアイデア豊かでテクニカルなプレーが、熊本の前線の起爆剤になり、アタッキングサードのパス回しを見違えるほど活性化させたことに、観た人の誰もが異論はないでしょう。

12分、養父のFKはGKがパンチング。クリアを拾った片山が入れる。ファビオがこれを落として、五領が胸トラップからアウトで裏に入れる。右からファビオがシュート。そのこぼれ球を前線に残っていた廣井がしっかり押し込む。熊本としてはこの5試合で初めての先制点でした。

そのあと、DFラインのクリアを馬場にブロックされて、そのままダイレクトに決められ同点にされますが、五領がサイドで高山と競い勝って入れる。養父と大迫のワンツー。右サイドを破って入れたボールのクリアを、今度は大迫が決めて、前半を勝ち越して折り返します。湘南にとっては「何だ?」という思いだったでしょう。特に「あの19番は何者なのだ?」と。全く未知の選手。

思えば、藤本主税には厳しいマークが着き過ぎていました。二人、三人。藤本はいわば熊本の”アイコン”であり、熊本の攻撃は必ずそこを通過することがわかりきっていた。「熊本は攻撃の起点である藤本を潰せばいい」。多少の違いはあっても、そういうスカウティングはあったのではないでしょうか。もちろん、味方もそうわかっていても藤本にボールを集めた。攻撃のリーダーたる藤本に預ける。連敗にはそのあたりの“依存”が見て取れました。ところが、その”アイコン”が突然に無くなったことで、湘南は守りのフォーカスを失った。熊本は逆に3人目、4人目が動くことを余儀なくされた。藤本がいないことで”結果的に”…。そう言えなくもないのではないでしょうか。

初スタメンとは言っても「これまで緊張したことはない」と豪語する五領。彼にとっても、連続得点で湘南の連勝を支える無名の大卒ルーキー岩上の活躍や、同サイドで対峙する昨年のチーム得点王・高山の存在、あるいは若手で占める湘南の平均年齢の低さそのものが、モチベーションを上げるには十分だったに違いない。藤本の故障はアクシデントだったとしても、そういうモチベーションの”シナリオ”を描いて高木監督が背中を叩いて、このルーキーを送り出したのでないかと想像するのは、ちょっと深読み過ぎるでしょうか。

「相手に対して圧力をかけようということで後半に少しシステムを変えて」と湘南の曹監督が後述するように、それまで養父や原田に収まっていたボールを奪うために、後半湘南は2トップにシステム変更したようです。結果、セカンドボールがほとんど湘南の手中になる。熊本のDFラインが押し下げられる。屈しきれず、DF裏にこぼれたボールを古橋に決められ同点。79分にはカウンターから崩されて、途中交代の大槻に決められ逆転。

スタンドで見ていたわれわれは、これが「今季の湘南の強さ」そのものだと感嘆に近い思いで感じ入っていました。「湘南の勝ちパターンにはまったかも知れない」と。指揮官の修正の成果も見逃せないが、なにより今季の湘南は諦めずに走りきる。恐れるほどに走ってくる。それも後半、相手の足が止まるに従って…。走ることが何の苦痛でもない。そんなチームの統一感。

しかし、先制はしたものの同点にされ逆転され3連敗を喫する。そんな無様な結末を覆してくれたのは、選手たちの「ホームの意地」に他ならなかったでしょう。最後の時間帯。力を振り絞るように波状攻撃。CKを得ると87分、養父のキックがクリアされるところを、武富が躊躇せずダイレクトで振り抜く。それは林立するディフェンダーの、まるで針の穴に糸を通すようなわずかな隙間を抜けて、ゴールマウスに吸い込まれていきました。

両監督の試合後のコメントは、まるで二人が対談をしたかのようにきっちりと噛み合っていて、興味深いものでした。

湘南・曹監督は、「全体としては引き分けが妥当というとおかしいですが、最後に追いつかれたのも含めて、ポジティブに行った結果の勝点1だったかなと捉えています」とコメントした。高木監督も「勝点としては、お互いに3を取り合うというゲームで、非常にアグレッシブに両チームともプレーしていたと思いますし、勝点3を取るという中でのゴールへ向かう姿勢とか、ピッチ上でのプレーには非常に満足しています」と振り返る。

高木監督はさらに言う。「今日はホームだということ、ホームの地の利、ホームでやることによってサポーターの皆さんの後押しの力を借りてやろうという話もして、この試合に臨みました。とにかく、90分間持たせようという気持ちは必要ないと。スタートから100%でやっていこうと。そういう風にやっていけば、例えば疲れても、さっきも言ったようにホームですし、サポーターやいろんな人たちの声援が力となって、90分やれるもんだよという話はしました」と。

それが。その結果が、曹監督に「前半、熊本さんの、サッカーの本質を分からせてもらうような球際の強さだったりとか、セカンドボールの早い拾いだとか、そういうところに戸惑ってちょっと後手を踏んでしまった」と言わしめた。

”システム変更”、”風の影響”…。ほかの多くの変数をマネジメントしなければいけないなかで、最も本質的なことを表現しているこの両指揮官のコメントが、この引き分けの試合を”奇しくも”言い表しているような気がして仕様がありません。

グッドゲーム。もう一度、繰り返しそう言いたいと思います。

3月20日(火) 2012 J2リーグ戦 第4節
町田 1 - 0 熊本 (13:04/町田/4,351人)
得点者:59' 北井佑季(町田)

藤本主税が、「行っては取られての繰り返しでメリハリがなかったし、テンポも同じになってしまった」とこの試合を振り返るように、それは熊本だけでなく、お互いに非常に速い展開だが、速いだけでミスも多くて、なかなか決定機に結びつかない。そんなゲームだったと思います。開幕戦と同じように空回り感のあった主将は、カードを一枚貰うと、疲労も考慮されたのか、途中交代でベンチに下げられてしまいました。

今、どうしようもない脱力感に襲われています。もちろん失点のところのミスは、確かにミスであって、どうしようもないが、まあ「守備は、あそこ以外はピンチはなかったと思う」(廣井)というように、「事故っぽいところもあった」失点シーンでもありました。

今季昇格組の町田との初対戦。JFL時代に対戦経験がないと言っても、松本に関しては既知の選手も在籍し、天皇杯のテレビ実況などもあって幾分かのイメージがある。しかし、この町田というチームに関しては、少なくともわれわれにとっては全く未知のチームでした。スカウティングに定評のある高木監督も、「ここまでの3試合をすべて見て、特徴をスピード感も含めて見たつもりなんですけど、映像と実際の体感するスピードは違います。『おや?』という部分もあった」と正直に述懐しています。急造とはいえ、さすがにアルディレス流にオーガナイズされたチームといった印象でした。

町 田
7勝又 25平本
17鈴木16庄司
15柳崎26コリンマーシャル
2津田3藤田
14薗田5田代
 21相澤 
後半10分 コリン マーシャル → 北井 佑季
後半23分 庄司 悦大 → 太田 康介

熊 本
 20白谷 
14武富11藤本
7片山24筑城
10養父22吉井
4廣井3高橋
 4福王 
 18南 
後半22分 藤本 主税 → 根占 真伍
後半30分 筑城 和人 → 崔 根植
後半36分 武富 孝介 → 原田 拓

今節も試合の入りは良かったと思います。特に前節京都にしてやられた球際の強さに関しては、見違えるものがあったし、相手のシステムにも十分スペースがあったように見えました。しかし町田も前半の途中から徐々に当たり慣れてくる。何より熊本が高い位置で奪ったボールを、自身のパスミスで繋ぎ損ねて、相手にペースを与えてしまったのがなんともいただけませんでした。自滅とも表現できるかも知れません。

行って戻っての消耗戦のなかで、一瞬の相手のスキをついて、高い位置でボールを奪えたときに、「はあぁ…」と溜息が出てしまうような情けないパスミス。こんなゲームではチャンスは数少ないもの。そこは必ず決定機に持ち込みたいものなのに…。

守備がうまく行くときは、攻撃がうまくいかない。そんな不安定な天秤測りのようなチーム状況なのか。いや、どうも攻守の間にある「奪ってから攻撃に転じる瞬間」に問題がありそうです。これもまた前節京都戦の強い影響からか。奪ってから速い京都の強烈なイメージが、そうさせたのではないかと。しかし、それは攻め急ぐだけのプレーにしか見えず、受け手のいないところに出されるパスで、自ら好機を潰すことに終始しました。

まあ一言でいえば連携が熟していないということなんでしょうが、方向性と大きさ(パススピード)、そして時間と空間という意味では、チームの“4元ベクトル”が、特に攻撃に転じる瞬間にチグハグでまだまだ共有されているとは言えません。

高木監督の「奪ったボールを2本3本つなぐことで視野が広がり展開できたりとか、周りもサポートもできるという状況になるんですけど、今日はそこまで持っていくことができなかった。それは残念です」という台詞は昨年も聞いたことがあるように思います。課題は大きく示され続けているということなのでしょうし、他のどんなチームにとっても同じく大きな課題ではないでしょうか。そしてその課題克服ができたチームが結果も伴ってくるのでしょうね。“奪った瞬間”と“奪われた瞬間”。これもまたハーフタイムを挟んだ90分間、連続した時間軸のなかでゲームが行われるサッカーの醍醐味だと実感するところです。

いずれにしても、この“奪った瞬間”のことだけでなく、京都、町田とそれぞれ違いのあるチームに連敗して突き付けられたたくさんの課題は、貴重な経験なのだと前向きにとらえるしかない。引きずらずに、一回開き直って立て直しを図る必要がありそうです。それはわれわれファンにとっても。

藤本が言うように、「今が一番悪い時」「これからは上がっていくだけだ」というくらいに考えていこう。次は4戦連勝中の湘南を迎える。さあホームゲームです。

3月17日(土) 2012 J2リーグ戦 第3節
京都 2 - 0 熊本 (13:04/西京極/2,901人)
得点者:32' 宮吉拓実(京都)、60' 中山博貴(京都)

試合が終わった瞬間の気分は、翌日の熊日が言うとおり「点差以上の完敗」という感じでした。同じくパスサッカーを追及するスタイルでは、あくまで「京都が上だった」と。しかし、よくよく振り返ってみると、ちょっと違った印象が浮かび上がってきました。負け惜しみともちょっと違うような・・・。

高木監督の「京都さんに対して、我々は10回やったら、多分1回勝てれば、今の我々の実力では一回勝てればいいかな、という位のチーム力の差と個人の差が非常にあったと」(J's goal)というコメントは、敗軍の将としては潔く、そう言ってしまいがちです。全体的に力の差があって、どうしようもなかったみたいな評価ですが、果たしてそうかなと思ったりもします。

京 都
13宮吉 31久保
15中山10工藤
23中村7チョン ウヨン
6ファン テヨン8安藤
3染谷4秋本
 1水谷 
後半19分 中村 充孝 → 内藤 洋平
後半29分 チョン ウヨン → 倉貫 一毅
後半37分 宮吉 拓実 → 長沢 駿


熊 本
 9チェ クンシク 
14武富11藤本
7片山22吉井
8原田10養父
4廣井5矢野
 6福王 
 18南 
前半26分 武富 孝介 → 大迫 希
後半17分 崔 根植 → 白谷 建人
後半31分 吉井 孝輔 → 五領 淳樹


誰の目から見ても、熊本はこれまでの2節と比較して、試合の入り方は良かった。序盤は可能性を感じさせる試合運びでした。しかし、32分に京都のCKをクリアしたあと、この日デビュー戦だという左SBのファン・テヨンが跳ね返して預けたボールを、そのまま追い越して要求する。そして左サイドから迷わず低くて速いクロス。中央の宮吉に点で合わせて先制点を奪います。

さらに追加点は後半15分。CBの福王の小さなクリアが高い位置で奪われて、右につながれ安藤がクロスを上げる。飛び込んできた中山に、右足ボレーで豪快に突き刺されました。

確かにミスがらみではある。それを見逃さない京都のうまさとも言えるでしょう。しかし、サッカーの、J2というカテゴリーでは、力の差がそのまま試合結果に直結することのほうが珍しいと常々思っているわれわれからすれば、京都のあの2得点は、まさにあれだけのパス、シュートは、本番のゲーム中にそうそう見られるものではない、奇跡の連続とも言える代物でした。それより何より、今日の京都を褒めるべきはその守備でしょう。前線から中盤から。そして決してアタッキング・サードに入らせない守備。熊本のパスの出し手が、養父や藤本や原田だとわかって潰しにかかる守備。その点では、戦前高木監督が京都に関して「守備は”個”に頼っている印象もある」とスカウティングしていたのは、ちょっと誤りではなかったのかと悔やまれます。

一体、養父の言うように「こっちがやりたいことをトライ出来なかったというのが一番、今悔しい」。「今日に関してはやってきたことを出来なかったので、やっぱりそれではシュートの本数も少なくなるのも当たり前だと思うので、やはり練習で積み重ねてきたことを試合でやれば、またいい試合ができると思います」という、彼の目からみた落ち着いた振り返りが、この試合を一番言い表しているのではないかと。

ただ、これはもう見ていて明らかだったのは、同じく養父の言う「相手のプレスが良かったというのがありますし、ちょっと後手後手になったのかなと思います」という局面に関して。京都は、プレスというより強く激しくボディコンタクトすることを意識した、笛がなるかどうかギリギリのところで勝負していた。チャージの質が高かった。熊本の判断を遅らせ、プレーの精度を奪っていた。それが熊本の選手の積極性を失わせ、プレーを躊躇させた。いわゆる”ビビらせた”のではないでしょうか。3バックがあそこまで下がってしまうのでは、サイドを使われても仕様がない。前節までの2試合では、ハーフタイムの修正が機能した熊本だったのですが、この日は京都の大木監督の「もっとやれる」「怖がらずに前に出ていこう」、この言葉こそ、本当は熊本に必要な指示だったのではないかと。終盤で滅多打ちにあった印象から、「完敗」と思い勝ちですが、実は試合運びからすれば、勝敗は紙一重ではなかったかと。途中でくじけた。ビビってしまった。「京都は強い」と思ってしまった。その瞬間、負けが決まってしまった。養父のコメントは、それを指摘しているようにも聞こえます。

もうひとつ、武富の前半での負傷交代が、思った以上に熊本に大きなダメージを与えたのではないかと。どうも、武富がピッチサイドで傷んでいる時間帯から、大迫に交代したあたり。崔根植の「結果的なものだけみれば、全然出来なかったですけど、前半は熊本がやりたいプレーをできたかなと思いました」というコメントと合わせて、このあたりがこの試合のターニングポイントだったように思います。武富は今のチームの攻撃の要であり、ゲームプランの柱となる存在。彼の離脱は、シーズン序盤の熊本にとって、大きな痛手とならなければいいのですが・・・。

「判断の部分が悪いというのがあったので、そういう個人的なミスというか、そういうところを直せばすぐに修正できると思うので、次の試合は絶対に勝ちたい」。中二日で迎える町田戦に対して、”すぐに修正できる”と断言する養父のコメントは頼もしいものがあります。”パスサッカー”を標榜する相手に負けたからといって、今季目指している自分たちのサッカーに自信を失ったり、それを曲げる必要はまったくないと思います。

3月11日(日) 2012 J2リーグ戦 第2節
熊本 2 - 1 鳥取 (16:04/熊本/5,817人)
得点者:10' 小井手翔太(鳥取)、46' 武富孝介(熊本)、52' 藤本主税(熊本)


「花冷え」というには厳しすぎる寒風に足が遠のいたのか、J加盟以来のホーム開幕戦としては最低の入場者数に、少々落胆しました。直前(金曜日)の社長交代劇の影響と関係がないとも言えないのかも知れない。微妙なファンの心理。何がきっかけになるかわからない熊本人の気質。

経営的には待ったなしの状況。ややタイミングを逸した感じですが、それでも他にも多くのクラブが似たり寄ったりの財政のなか、いち早く財務状況を開示し、さらには代表者が責任をとる形で辞意を表明したことは、「公的資金が投入されている」会社としてのケジメなのだろうし、県民クラブとしてのコンプライアンスに他ならなかったのでしょう。後任の池谷氏の経営手腕を不安視する声もありますが、実業団時代の選手兼大企業ビジネスマンの感覚をあなどるなかれという気がします。それよりこういったケジメ、責任の取り方が、この先慣例となってしまうのだろうか、という危惧のほうが少しします。

熊 本
 9チェ クンシク 
14武富11藤本
7片山26田中
8原田10養父
4廣井5矢野
 6福王 
 18南 
ハーフタイム 田中 俊一 → 大迫 希
後半25分 廣井 友信 → 高橋 祐太郎
後半31分 チェ クンシク → 白谷 建人


鳥 取
29福井 8美尾
17鶴見7小井手
22森10実信
3加藤2尾崎
4戸川6柳楽
 48小針 
後半19分 鶴見 聡貴 → ケニー クニンガム
後半26分 尾崎 瑛一郎 → 奥山 泰裕
後半35分 小井手 翔太 → 岡野 雅行

鳥取の吉澤監督が「ある程度予想していた」というとおり、熊本は前節・福岡戦の途中から試した3バックを、スタートから敷いてきました。そしてこれもまた福岡と同様、鳥取も前からの速く厳しいプレスで全開の勢いでゲームに入ってきた。熊本はそれに押されるように、立ち上がり、ああいった形で引いてしまった。あそこまで自陣ゴール近くでプレーされると、非常にリスクが高まる。さらには激しい向かい風が、ボールごと自陣に押しとどまることを手伝ってしまいました。

開始早々ともいえる10分での失点。大きなサイドチェンジが右サイドの小井手に渡ると、がら空きのスペースからクロスを入れられる。エリア内で福井が戻すところに再び走り込んで来た小井手。豪快にゴールを割られます。3バックの弱点を崩すお手本のようなカウンター。その後も執拗にサイドを攻められました。

しかし、これまた前節福岡戦と同様に、前半30分前後から徐々にペースを奪い返していく。武富からのパスを奪うように田中がPAのなかに猛スピードで入っていく。エンドラインぎりぎりからクロス。田中らしいケレン味のないプレー。チームのエンジンが温まってきた感じ。スカパー解説の池ノ上氏も「あとは崩すときのシフトチェンジだけ」だと。

ハーフタイムを挟んで確実に修正してきた熊本。高木監督の指示もやはり「相手の陣地でプレーすることを心がけ、シュートをもっと打っていこう」というもの。昨シーズンとは違う今シーズンの戦いができているかどうか。ここが一番大事なところ。後半から田中に代えて鳥取キラーとも言える大迫を投入しました。

象徴的なのは、武富が2試合連続で得点できていることではないでしょうか。後半も開始早々、ハーフウェイラインからのリスタートを左側からつなぐと、養父がスルーパス。クンシクがこれをスルーするところに走りこんでいたのは武富。角度のないところを打ち抜いて同点にします。「タケ(武富)には俺が持ったら走れというのは言っていた」(J’s goal)と言うのは養父。一方の武富も「養父さんが前を向いた時に前に走っていれば、そこしかないっていうところにボールが出てくる」と呼応している。狭いところを通す、そして3人目の動きという意味でも、これまでの熊本にはなかった得点シーン。

逆転弾も武富から。相手CBのまごつく処理を狙った守備。クンシクに出たボールを、走りこんできた藤本に優しくロブで渡す。藤本主税はトラップ一発で、DFから遠い左足にぴたりと収めると、GKの動きを落ちついて見極め、ゴールに流し込みました。この一連のプレーが、しかも一瞬のスピードのなかで行われたのです。

歓喜のスタジアム。殊勲の藤本が、思い切りよくゴール裏の看板を越えてチームメイトを手招きする。“お約束”の阿波踊りの周りに、ほとんど全ての選手がピッチ看板を越えて集まって喜びを分かち合っている。こんなシーンも、しばらく熊本にありませんでした。

その後の残された長い時間に、熊本にも幾度かピンチが訪れたことを思えば、ダメ押しの3点目を取れなかったことに不満は残ります。ただ、65分頃に見せた波状攻撃。スローインからサイドでパス交換。養父のクロスに大迫。こぼれ玉に武富。さらに拾って養父。片山に返して藤本が入ってきてシュート。などなど・・・。アタッキングサードで人数をかけ、次々にエリアに人が入って切り崩すパスワークに、まったく鳥取が翻弄されている時間帯がありました。

このゲームでの武富、クンシク、藤本そして養父、前3人とパサーのこの4人の関係性が今シーズンの戦いをはかるひとつのバロメーターであり、とても興味深い点でした。

また、ファビオとクンシクのチョイスについて高木監督は「根植(クンシク)の方が点を取るためにシュートを打たなくてはいけない中で、足を振れる」「ファビオの場合はシュートシーンでもなかなか振れない。点を取れるポジションに入れるか入れないか、そして入った時にシュートを打てるか打てないか、それが大きな差」と語っています。ファビオについてのこの指摘は昨シーズンからあったもの。チームとしてのその課題に早速、ひとつのオプションを試しているということでしょうか。クンシクは、怪我で出遅れた分、まだまだ身体は重そうでしたが、フィジカルの強さを感じさせました。そして絶妙のアシストに見られるように、足元の柔らかさ、判断の早さも。

今シーズンの戦いということで言えば、今節、スタートから3バックに変更した狙いと、手応えを問われて「それなりに良かったんじゃないかなと思います。短い時間で準備した割には、選手たちがよく理解してやってくれた」とさらりと受け答え、「変更した理由は言えません(笑)」とはぐらかしている。高木監督からファンに対して出されたクイズのようなものでしょうか。

奇しくも東日本大震災の1周年の日と重なったこの日。膨大な数の犠牲者、いまだ避難生活を送っている多くの人々のことに思いをはせて、日本中の人々が祈りを捧げました。センターサークルでたたずむ選手たちとともに黙祷を捧げながら、この日、ホーム開幕を迎えられた自らの“平穏”に感謝するしかありませんでした。毎週の一喜一憂を与えてくれる、このサッカーのある暮らしへの感謝を。「養父のスルーパスを観に来るだけでも楽しい」「主税の阿波踊りをまた観たい」そう思える今季を。もっともっと多くの人に知ってもらいたい。そう思いました。

3月4日(日) 2012 J2リーグ戦 第1節
福岡 2 - 1 熊本 (15:05/レベスタ/7,379人)
得点者:21' 坂田大輔(福岡)、25' 城後寿(福岡)、56' 武富孝介(熊本)

アウェーながら、しょっぱなからバトルオブ九州となった開幕戦は、J1降格組の福岡に一日の長ありという感じで黒星を喫しました。1300人もの赤いサポーターが現地に駆けつけ、冷たい雨のなか、ホーム福岡に負けない“声”を送るその音量は、残念ながらこの日はテレビ観戦となったわれわれに、さながら冬眠の虫に春を告げる「啓蟄」を思い起こさせました。起きろ!さあ、サッカーシーズンの到来だと。

コイントスでエンドのチェンジを求める藤本主税。新主将としての初めてのその仕事は、しかしいつもどおりの高木采配でもありました。がっぷり四つに組んだ感じの序盤。左SBの片山がえぐってマイナスのクロスに吉井が走りこむ。右サイドからファビオが入れるとそこにも吉井。前線に人数をかけたいい形の攻撃。しかし今季福岡に新加入の坂田が前を向くと怖い。短いパス回しからミスをすると福岡の反転が早い。手薄な反対サイドで一気にアタッキングサードまで持ち込まれる。

福 岡
11高橋 15坂田
19成岡10城後
8鈴木7末吉
2キム ミンジェ4和田
27堤6山口
 1神山 
後半22分 堤 俊輔 → 小原 章吾
後半32分 末吉 隼也 → 岡田 隆


熊 本
 27ファビオ 
14武富11藤本
10養父22吉井
 8原田 
7片山25西森
4廣井3高橋
 18南 
後半16分 西森 正明 → 白谷 建人
後半26分 吉井 孝輔 → 福王 忠世
後半33分 武富 孝介 → 大迫 希


この日がJリーグデビューとなったCBの高橋祐太郎が、一枚イエローをもらったすぐあとのことでした。キム・ミンジェのクロスを祐太郎が防ぎますが、目の前にこぼれてきたボールを坂田が迷わずダイレクトで一閃。アウトに掛かった強烈なシュートは南の手をかすめ、ポストに当たるとゴールに吸い込まれました。「とにかくゴールという結果を常に追求してやっていきたい」(J’s goal)と言っていたという坂田。敵ながらその技量の高さを褒めるしかないゴールでした。

ただ、時間的にも5分もたたないうちでの連続失点はいただけなかった。福岡の厳しいプレスに後手を踏み始めると、最終ラインからのパスミスをすかさず奪われ回される。再びキム・ミンジェが鋭いクロスを上げると、二列目から飛び込んできた城後に高い打点のヘディングを決められてしまいました。

この一戦にあたり指揮官は、選手たちにあの屈辱的な一昨年のシーズンの6対1の福岡戦のビデオを見せて、奮起を促したと伝えられます。しかし今日も、試合序盤の短時間での2失点は、あの大量失点の予感さえ漂わせ始めました。短く繋いでいく戦術が、高い位置からプレスをかける福岡の圧力に気後れしたかのように、ミスを連発している。いかにも取られ方、取られ所が悪い。頼みの藤本主税でさえ、気迫がどこか空回りしているような。「プロ17年目なのに緊張した。それがみんなに伝染したのかな」(熊日)と。

回しても回させられているような。そんなもどかしい前半の熊本に対して、スカパー解説者の吉村寿洋氏は「あと一点取られるようなら、どこかで戦術を変える必要がある」と言い、同じ頃NHKでは山本昌邦氏が、「どんなスタイルのサッカーを目指すのか、これまで練習してきたことをぶれずに一年間やり通すのかが試される。それが開幕戦」とコメントしました。多くの不安を抱かせながらも、わがチームは一途に後者の道を選ぶ。それが後半になって奏功し始めます。

藤本と養父から絡んで武富や片山を走らせる。養父の広い視野から徐々に絶妙のパスが出始める。56分、右サイドでつないで武富からファビオにパス。奥まで運ぶとグラウンダーのクロス。藤本がニアにDFを引っ張ると、そこに武富が走りこんでいる。左足に当てるように押し込んで1点。

福岡の足が止まってきたとみるや指揮官は前線に白谷を送りこみます。原田を一列下げて3バックにして攻撃に厚みを与える。疲れの見える武富に代えて大迫。防戦一方の様相の福岡。しかし追撃もあと一歩及ばない。最後の最後に“感じ合わない”といった連携の未熟さが見えます。ロスタイムはうまく時間を使われて、福岡に逃げ切りを許してしまいました。

「負けて良かったということは、間違いなく我々の世界ではないのですが、リーグ戦という長いスパンで考えた時に、ゲームの中で修正が出来たのは非常に良かった」(J’s goal)。試合後、高木監督はそう述懐しています。その修正点とは「もっとボールを動かすということ」だったと言います。

返す返すも前半の出来、あの連続失点が試合運びとしては最悪でした。それは開幕戦独特の雰囲気からくる気負いも作用したのでしょう。あのバタバタした時間帯をもう少しうまく持ちこたえ、乗り越えていけるようにならなくては…。とは言っても、誰が見てもわかるように、今年の熊本は昨シーズンとは違う、今年の戦術で戦うこと、貫き通すことをこの開幕戦で示してくれたのではないかと思います。42試合の長丁場を戦っていく確かなベースを感じることはできたと思います。落しはしましたが、2012シーズン開幕の一戦。勝ち点3は失ったものの、得るものも確かにあったゲームでした。